続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化して実施するための形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る電子部品実装用基板10は、ジルコニアを含有するアルミナ基板11とその一方の主面12に設けられる第一の金属層13とで構成される。アルミナは熱伝導性、機械的信頼性、絶縁耐圧性、光学的反射特性等の材料特性に優れ、安価で購入できるため、電子部品実装用のセラミック材料として広く利用されている。またアルミナにジルコニアを含有させることでアルミナ基板11の機械的信頼性を高めることができ、同時にアルミナ基板11の表面の光学的反射率も高めることができる。ところがジルコニアは高価で熱伝導率が低い材料であるため、ジルコニアの含有量が多すぎるとアルミナ基板11における製造コストの増大や熱伝導率の低下が問題となる。本発明ではアルミナ基板11におけるジルコニアの含有量を0.5〜30wt%の範囲内とすることにより、アルミナ基板11における製造コストの増大や熱伝導率の低下を必要最小限に抑えながら、前記の機械的信頼性と光学的反射率を同時に向上させることができる。
電子部品実装用基板10では、アルミナ基板11の表面に露出する全結晶粒に対するジルコニア結晶粒14の割合を面積比であらわした場合、一方の主面12と他方の主面15とでは前記の面積比が異なっている(図1ではジルコニア以外の結晶粒の図示を省略している)。電子部品実装用基板10では、一方の主面12と他方の主面15におけるそれぞれの前記面積比を同一にせず、その違いを積極的に利用することにより、ジルコニアの含有量を増大させてアルミナ基板11の製造コストを増大させることも熱伝導率を低下させることもなく、電子部品実装用基板10の機械的信頼性や光学的反射特性を高めることができる。
電子部品実装用基板10において、パワートランジスタ素子やパワーLED素子などの電子部品16を実装するための第一の金属層13は、電子部品16の実装形態に合わせた回路パターンで構成される。第一の金属層13をアルミナ基板11の一方の主面12に設ける際の加熱・冷却工程では、第一の金属層13とアルミナ基板11の線膨張率の差に起因する熱応力が発生する。この熱応力は、厚み方向においては第一の金属層13と一方の主面12の接合界面付近で大きくなり、面内方向においては個々の回路パターンのコーナー部で最大となる。このような熱応力は第一の金属層13とアルミナ基板11の接合界面における機械的信頼性を低下させる。
たとえば第一の金属層13が銅である場合、銅の線膨張率はアルミナの線膨張率よりも大きいため、銅の熱収縮による引っ張りモードの熱応力がアルミナ基板11の内部に発生する。この引っ張りモードの熱応力はアルミナ基板11にクラックを発生させる。
ところで、アルミナ基板11におけるジルコニア結晶粒14の面積比は、他方の主面15よりも一方の主面12の方が大きい。このためアルミナ基板11の表面における機械的強度は他方の主面15よりも一方の主面12の方が高い。したがって、第一の金属層13を一方の主面12に設けることにより、第一の金属層13とアルミナ基板11における線膨張率の差に起因する熱応力に対する耐性が高められる。この結果、前記の引っ張りモードの熱応力によってアルミナ基板11にクラックが発生して第一の金属層13が剥がれたり、アルミナ基板11の絶縁耐圧性が低下したりする不具合を防止することができる。
さらに、ジルコニア結晶粒14の面積比が他方の主面15よりも一方の主面12の方が大きいことにより、アルミナ基板11の表面における光学的反射率についても他方の主面15よりも一方の主面12の方が高くなる。したがって、第一の金属層13を一方の主面12に設けることにより、パワーLED素子を第一の金属層13に実装して用いる際に、回路パターン間の隙間に露出するアルミナ基板11の表面における光学的反射率を高め、パワーLED素子の発光を効率よく照射方向に反射することができる。その結果、パワーLEDの発光効率を高めることができる。
アルミナ基板11の板厚については、熱放散性を高めるためには板厚を薄くする方が良いが、機械的信頼性と絶縁耐圧性と光学的反射特性を高めるためには板厚は厚い方が良い。これらのバランスを取るため、アルミナ基板11の厚さは0.2〜1.2mmに設定されることが好ましい。
一方、第一の金属層13を構成するための材料としては金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、マンガン、チタンやそれらの合金を用いることができる。
板状の材料を第一の金属層13として一方の主面12に接合する場合、たとえば銅板を一方の主面12に接合する方法としては、DCB法やチタンを添加した銀ろうを接合材として用いる活性金属接合法などを適用することができる。またアルミニウム板を一方の主面12に接合して第一の金属層13を設けるための方法としては、アルミニウムろうを接合材として用いる方法を適用することができる。
つぎに金属膜を第一の金属層13として一方の主面12に形成するための方法としては、アルミニウム融液にアルミナ基板を浸漬する方法、金属粉末とフリットを含む厚膜導体ペーストをアルミナ基板の表面に塗布したのちに焼成する方法(厚膜法)、モリブデン粉末とマンガン粉末を含むペーストをアルミナ基板表面に塗布したのちに加湿水素雰囲気中で焼成する方法(Mo−Mn法)、レジネート(有機金属化合物)を含むペーストをアルミナ基板の表面に塗布したのちに焼成する方法、真空蒸着やスパッタリングなどの気相中で金属膜を成膜する方法、無電解めっき法、などを適用することができる。このほか、焼成前のグリーンシート表面にタングステン粉末やモリブデン粉末を含む厚膜導体ペーストを塗布したのち、グリーンシートと厚膜導体ペーストを同時に焼成する方法(コファイア法)を適用することもできる。
また第一の金属層13の表面に金、銀、ニッケルなどのめっき皮膜を設けても良い。金やニッケルのめっき被膜は第一の金属層13における表面の酸化を防止する効果がある。第一の金属層13の表面が酸化されると半田濡れ性やワイヤボンディング性などが低下し、電子部品16の実装工程における不良率が高まる。また銀めっき皮膜は第一の金属層13の光学的反射率を高める効果がある。
とくに電子部品16としてパワートランジスタ素子を第一の金属層13に実装する場合、電子部品実装用基板10には、高電圧が掛かっても絶縁性を保持できること、パワートランジスタ素子が発する熱を効率よく放散すること、大電流を流しても導通回路(第一の金属層)が損傷を受け断線しないこと、が要求される。段落番号0033に記載したとおり、絶縁性や放熱性などの観点よりアルミナ基板11の板厚については0.2〜1.2mmに設定することが好ましい。つぎに第一の金属層13については厚さ0.1〜1.0mmの銅またはアルミニウムからなることが好ましい。銅やアルミニウムの厚みをそのように設定することにより、電子部品実装用基板10の熱放散性が高まり、さらに大電流を第一の金属層13に流しても導通回路に損傷が生じないようにすることができる。
アルミニウムは銅よりも柔らかいため、第一の金属層13とアルミナ基板11における線膨張率の差に起因する熱応力が小さくなり、第一の金属層13として銅を適用するよりもアルミニウムを適用する方が電子部品実装用基板10の機械的信頼性が高くなる。しかしながら第一の金属層13としてアルミニウムを適用する場合、大気中ではアルミニウム表面に酸化膜(アルミナ)が形成され、アルミニウムの表面にニッケルなどのめっき皮膜を設けないとパワートランジスタ素子(電子部品16)を実装するための良好な半田濡れ性を確保できない。このため銅を適用する場合に比べて余分なコストがかかる。したがって、車載用等の高い信頼性が要求される場合を除き、パワートランジスタ素子を実装するための第一の金属層13としては一般的に銅が適用される。また、銅の厚さを0.1〜1.0mmとするには金属膜を形成するよりも板状の材料(銅板)を接合する方が容易で低コストである。
第一の金属層13としての銅板とアルミナ基板11との接合にはDCB法や活性金属接合法を適用することができる。これらのうち、アルミナ基板11に対する銅板の接合強度がそれほど問題にならない場合には、より低コストで、より熱放散性の高いDCB法を適用する方が好ましい。
またとくに電子部品16としてLEDなどの発光素子を第一の金属層13に実装する場合、第一の金属層13の表面に銀めっき被膜を設けることでその光学的反射率が高まり、LEDなどの発光効率も高まる。パワートランジスタ素子に比べるとLEDなどの発光素子を駆動するための電流値は小さいため、第一の金属層13として、厚膜法やコファイア法で形成される1〜100μm程度の膜厚の金属膜や、レジネートを印刷して焼成する方法、真空蒸着、スパッタリング、無電解めっき法、などで形成される0.1〜10.0μm程度の膜厚の金属膜などを適宜用いることができる。しかしながら電子部品16が比較的大きな駆動電流で作動するパワーLED素子である場合は、前記のパワートランジスタ素子と同様の理由から、第一の金属層13をDCB法または活性金属接合法でアルミナ基板11に接合される厚さ0.1〜1.0mmの銅板としても良い。
図2に示すように、本発明の変形例である電子部品実装用基板10aでは、アルミナ基板11における、ジルコニア結晶粒14の面積比が小さい方の他方の主面15aに第二の金属層17が設けられている。この電子部品実装用基板10aでは第二の金属層17が設けられることにより、図1に示す電子部品実装用基板10よりも熱放散性が高い。
図1に示す電子部品実装用基板10では、電子部品16から発せられる熱は、まず、第一の金属層13の内部で面内方向と厚さ方向に拡散されたのちにアルミナ基板11の一方の主面12に達し、次に、アルミナ基板11の内部で面内方向と厚さ方向に拡散されたのちに他方の主面15に達し、さらに、電子部品実装用基板10が取り付けられる外部基板(図示しない)に向けて放散される。電子部品実装用基板10はその外部基板に取り付けられた状態でパワーモジュールやパワーLEDなどの電子機器に組み込まれる。
図2の電子部品実装用基板10aでも熱拡散の状況はそれと同様であるが、他方の主面15aに達した熱はさらに第二の金属層17の内部で面内方向と厚さ方向にさらに拡散させられ、その後に外部基板(図示せず)に向けて放散されるため、図2に示す電子部品実装用基板10aは図1に示す電子部品実装用基板10よりも熱放散性が高い。
また電子部品実装用基板10aでは、第一の金属層13とアルミナ基板11の線膨張率の差に起因する反りを、第二の金属層17を設けて電子部品実装用基板10aの表裏の反りバランスを取ることで低減することができる。そのため電子部品実装用基板10aを外部基板に取り付けやすくなる。
電子部品実装用基板10aにおいて、第一の金属層13は電子部品16の実装形態に合わせた回路パターンで構成される。第一の金属層13はパターン間に隙間が無いベタパターンであることもあるが、ほとんどの場合はパターン間に隙間を有する回路パターンの形態を取る。一方、第二の金属層17は面内方向の熱の拡散効果を高めるためにパターン間の隙間が無いベタパターンの形態を取る。また、前記の反りの低減効果を高めるためには、第一の金属層13と第二の金属層17のそれぞれの厚さを同一かそれに近いものとし、回路パターン間の隙間も含む第一の金属層13の外形面積と、第二の金属層17の外形面積(=ベタパターンの面積)も同一かそれに近いものとするのがよい。
また、電子部品実装用基板10aをパワーモジュールやパワーLEDなどの電子機器に組み込む際、電子部品実装用基板10aを組み込むための外部基板(図示せず)と第二の金属層17とを、半田などの金属接合材を使った機械的信頼性や熱放散性が高い方法で取り付けることができる。
第一の金属層13はジルコニア結晶粒14の面積比が大きい方の一方の主面12a、第二の金属層17は同面積比が小さい方の他方の主面15aに、それぞれ設けられる。第一の金属層13はほとんどの場合に回路パターンで構成される。そのため第一の金属層13は、金属とアルミナの線膨張率の差に起因する熱応力が最大となる、個々の回路パターンのコーナー部を第二の金属層17よりも多く保持する。熱応力による第一の金属層13とアルミナ基板11の接合界面における機械的信頼性を向上させるため、第一の金属層13は、ジルコニア結晶粒の面積比が小さい方の他方の主面15aではなく、同面積比が大きい方の一方の主面12aに設けられる。
第二の金属層17は第一の金属層13と同様の材料や方法を用いて形成することができるが、第二の金属層17と第一の金属層13には同一の材料と同一の形成方法を適用する方が好ましい。そうすることで工程を共用することができ、製造コストや不良発生率を抑えることができる。
図3に示すように、本発明のもう一つの変形例である電子部品実装用基板10bでは、第一の金属層18及び第二の金属層19がDCB法で直接接合される銅板であり、アルミナ基板11の両主面における算術平均粗さ(Ra)が異なる。ジルコニア結晶粒14の面積比が小さい方の他方の主面15bにおける第二の算術平均粗さ(Ra)20が、同面積比が大きい方の一方の主面12bにおける第一の算術平均粗さ21よりも、大きい。
また図3に示す電子部品実装用基板10bにおいても、図2に示す電子部品実装用基板10aと同様、第一の金属層18は(ほとんどの場合)パターン間の隙間が有る回路パターンであり、第二の金属層19はパターン間の隙間の無いベタパターンである。段落番号0046に述べたように反りを抑制するために、第一の金属層18のパターン間の隙間を含む外形面積と第二の金属層の外形面積を同一かそれに近いものとする場合、DCB法による銅板の接合面積については第一の金属層18よりも第二の金属層19の方が大きくなる。
ところで、DCB法におけるCu−O共晶液相のように、固体表面に対する液体の濡れ性は固体表面の粗さに敏感であり、以下に示すWenzelの式で表される。
cosθw = r × cosθ
θw : 粗い面上での液体の接触角
θ : 同じ材質で平坦な面での液体の接触角
r : 平坦な面に対する粗い面の面積比をあらわす表面粗さ係数(r≧1)
Wenzelの式はθ<90度である親水性の固体表面ではθw<θとなることを示している。接触角が小さい方が液体の濡れ性は高いため、平坦な面よりも粗い面の方が濡れ性が高いことになる。さらにWenzelの式はθ<90度である親水性の固体表面では表面粗さ係数rが増加するにつれてθwが小さくなり、濡れ性が増すことも示している。
よって、他方の主面15bにおける第二の算術平均粗さ20は、一方の主面12bにおける第一の算術平均粗さ21よりも大きいため、DCB法におけるCu−O共晶液相の濡れ性は一方の主面12bよりも他方の主面15bの方が高い。このため、単位面積当たりのボイド発生率は一方の主面12bよりも他方の主面15bの方が低くなる。
したがって、ボイド発生率が高い一方の主面12bに接合面積の小さい第一の金属層18を設け、一方、ボイド発生率が低い他方の主面15bに接合面積の大きい第二の金属層19を設ける構成にすることで、銅板とアルミナ基板11の接合界面に発生するボイドの総面積を低減することができる。その結果、電子部品実装用基板10b(DCB基板)の熱放散性を高めることができる。この効果はアルミナ基板11の物理的な表面形状に依るものであり、アルミナ基板11がシリカを含むかどうかには依らない。
表1に電子部品実装用基板10bに関する諸因子の相互関係をまとめた。
以下に、図4〜7を参照しながら本発明の電子部品実装用基板に係る実施例1〜5及び5(B)について説明する。
表2は主原料のアルミナと副原料のジルコニアにおける平均粒径と比重をそれぞれ示したものである。アルミナ原料は平均粒径が0.8〜1.5μm程度であることが好ましい。平均粒径が0.8μm以下になると、グリーンシートを成形する際、溶剤が蒸発する乾燥プロセスでグリーンシートにクラックが発生しやすくなる。また一般に原料粒径が小さくなると購入価格も高くなる。平均粒径が1.5μmよりも大きくなるとアルミナの焼結性が低下する。
一方、ジルコニア原料の平均粒径は1.0μm以下であることが好ましい。ジルコニアの原料粒径を小さくすることで低温で焼結することが可能になり焼成工程におけるエネルギーコストを低く抑えることができる。またジルコニア原料の平均粒径をアルミナ原料の平均粒径よりも小さくすることにより、アルミナとジルコニアを混合粉砕したあとの混合分散状態を高めることができる。また焼結中に粒成長してできるジルコニア結晶粒のサイズを1μm程度に近づけるとアルミナ基板表面の光学的反射率が高くなるため(特許文献3参照)、ジルコニア原料の平均粒径はそれよりも小さくする方が良い。
本実施例で使用したジルコニア原料には3種類あり、それぞれ平均粒径が異なる。ジルコニア(A)の平均粒径が最も大きく、ジルコニア(C)の平均粒径が最も小さい。ただしジルコニア(C)を単独で溶質中に分散させた際は、粒子の凝集により平均粒径1.00μmの2次粒子となる。ジルコニア(B)はイットリア(Y2O3)を3mol%含有する部分安定化ジルコニアである。また、材料固有の特性としてアルミナよりもジルコニアの方が比重が高い。
表3は本発明に係る実施例1〜5における、セラミック原料の配合比率を示したものである。実施例1〜5では主原料アルミナに配合する副原料ジルコニアの種類や比率がそれぞれ異なっている。このほか、ジルコニア以外の副原料としてイットリアやマグネシア(MgO)が配合されている。なお、アルミナ基板の熱伝導率を高めるには副原料をできるだけ減らしてアルミナの純度を高めることが有効であるため、DCB法においてボイド低減効果があるとされるシリカ(特許文献4参照)は配合していない。よって焼結後のアルミナ基板に含まれるシリカの量は不純物レベルでしかなく、実施例1〜5におけるアルミナ基板は実質的にシリカを含まない。
イットリアは焼成時にジルコニアに固溶することで、ジルコニアの安定化剤として作用する。イットリアは、ジルコニアに固溶して焼結体中のジルコニア結晶粒の結晶構造を安定化させ、単斜晶よりも正方晶の割合を多くする作用がある。正方晶の割合が多いとアルミナ基板の機械的強度が高まる。さらに、ジルコニアとイットリアを別々にアルミナに添加するよりも、あらかじめイットリアを1.5〜3.5mol%の範囲で固溶させて部分安定化したジルコニア(表2におけるジルコニア(B)に相当)をアルミナに添加する方がジルコニア結晶粒における正方晶の割合が多くなる。このため、ジルコニアとイットリアを別々にアルミナに添加するよりも部分安定化したジルコニアをアルミナに添加する方がアルミナ基板の機械的強度が高まる(特許文献3参照)。また、マグネシアは焼結温度を低下させる作用がある。
実施例1ではアルミナにジルコニア(C)が4.00wt%添加され、さらにイットリアが0.19wt%、マグネシアが0.30wt%添加されている。
実施例2ではアルミナにジルコニア(A)が4.00wt%添加され、さらにイットリアが0.25wt%添加されている。
実施例3ではアルミナにジルコニア(B)が11.00wt%添加され、さらにマグネシアが0.30wt%添加されている。ジルコニア(B)はイットリアが3mol%固溶された部分安定化ジルコニアである。
実施例4では、実施例2と同じく、アルミナにジルコニア(A)が添加され、その添加量は実施例2よりも多い23.00wt%である。アルミナにはさらにイットリアが0.75wt%添加されている。
実施例5では、実施例3と同じく、アルミナにジルコニア(B)が添加され、その添加量は実施例3よりも多い23.00wt%である。アルミナにはさらにマグネシアが0.30wt%添加されている。
実施例1〜5のスラリー製造においては、まず、表3に示される配合比率の混合原料と、トルエンやブタノールなどの有機溶剤と、ポリカルボン酸系の分散剤とをそれぞれ配合し、ボールミルで粉砕混合を行った。つぎにポリビニルブチラールなどの有機質バインダーや、フタル酸系の可塑剤を追加混合した。この後、真空脱泡装置を使って有機溶剤をスラリーから蒸発除去し、スラリー中の泡抜きと粘度調整を同時に行った。その結果、均質で成形に適正な粘度を持つスラリーを得た。なお、溶剤として水を用いて、分散剤、有機質バインダー、可塑剤もそれぞれ水系に対応するものを用いてもよい。
スラリーを乾燥して溶剤を蒸発除去させてグリーンシートを成形する方法としては、ドクターブレード法、ダイコート法、ロールコンパクション法、押し出し成形法、などがある。
このうち、ドクターブレード法とダイコート法は、どちらもPETフィルムなどのキャリアシート上に所定の厚みにスラリーを塗布し、熱風や遠赤外線などで加熱乾燥して溶剤を雰囲気(大気、窒素など)中に蒸発させ、グリーンシートを作製する方法である。ドクターブレード法はキャリアシート上に設けたスラリータンクよりキャリアシートにスラリーを流し、その塗布厚みをキャリアシートと刃物形状部材(ドクターブレード)との隙間で制御する。ダイコート法はダイヘッドのスリットからスラリーを吐出すると共に、キャリアシートを塗布方向に動かして塗膜を形成する方法であり、塗布厚みの制御はスラリーの吐出量やキャリアシートの移動速度を調整することで行われる。これらの方法では成形時のスラリーに含まれる溶剤量が多く粘度が低い状態で乾燥を開始する。さらに塗膜からの溶剤蒸発はキャリアシート側に向けては進行せず、雰囲気側に向けてのみ進行するので、塗膜の厚み方向に対し、乾燥の進行状態の連続的なタイムラグが必然的に生じる。このため、乾燥後のグリーンシート中における各原料粒子の配置状態に対し、溶剤中での原料粒子の重力沈降過程や乾燥の進行速度などが影響しやすい。その結果、グリーンシートの表裏で原料粒子同士の配置が異なる状態が生じやすい。
本発明に係る実施例1〜5ではドクターブレード法を適用した。ダイコート法は積層セラミックスコンデンサなどに用いられる厚さ10μm以下の極薄シートの成形に適用される方法である。焼結後の板厚が0.2〜1.2mm程度になるようなグリーンシートの成形についてはダイコート法を適用することも可能であるが、比較的簡素な塗工機構を持つドクターブレード法の方が取り扱いやすい。
一方、ロールコンパクション法は、スラリーを噴霧乾燥して作製した造粒粉末を、回転する一対のロール間に供給してロール間の圧縮力でシートを成形する方法である。また押し出し成形法は可塑性を有する程度に溶剤や有機質バインダーをセラミック粉末と練り込んだ状態のもの(坏土と呼ばれる)を口金から押し出してシートを成形する方法である。どちらの方法においても、溶剤中での原料粒子の重力沈降過程や乾燥の進行速度などは乾燥後のグリーンシート中における各原料粒子の配置状態にまったく影響しない。そのためグリーンシートの表裏で原料粒子同士の配置は同一になる。
つぎに、ドクターブレード法またはダイコート法で成形されたグリーンシートの表裏におけるジルコニア原料粒子の配置状態について考える。図4(a)、(b)、(c)に示すように、スラリーをPETフィルム40の上に薄く塗布し、それを熱風や遠赤外線で乾燥して溶剤を蒸発除去すると、グリーンシート41a、41b、41cがそれぞれPETフィルム40の上に設けられる。
図4(a)に示すグリーンシート41aでは、大気や窒素などの雰囲気に接する側(これ以降、雰囲気側と表現する)のグリーンシート表面42aよりもPETフィルム40に接する側(これ以降、PETフィルム側と表現する)のグリーンシート表面43aの方がジルコニアの原料粒子44の存在割合が大きい。
図4(b)に示すグリーンシート41bでは、PETフィルム側のグリーンシート表面43bよりも雰囲気側のグリーンシート表面42bの方がジルコニアの原料粒子44の存在割合が大きい。
図4(c)に示すグリーンシート41cでは、雰囲気側のグリーンシート表面42cとPETフィルム側のグリーンシート表面43cとでジルコニアの原料粒子44の存在割合は同一である。表3に示す実施例1〜5の原料配合に対し、ロールコンパクション法や押し出し成形法を適用してグリーンシートを作製した場合はこのグリーンシート41cのようになる。
溶剤含有量が大きく低粘度のスラリーをPETフィルム状に塗布し、熱風や遠赤外線で乾燥することでグリーンシートを成形するドクターブレード法またはダイコート法では、溶剤の液物性(液温、粘度、比重)、セラミック原料の粒子物性(粒子径、比重、粒子表面の電荷)、熱風や遠赤外線による乾燥条件(最高温度、乾燥室内の温度分布、乾燥時間、熱風の風速)、同種または異種のセラミック原料粒子同士の相互作用、分散剤やバインダーなどの有機高分子とセラミック原料粒子との相互作用など、非常に多くの要因が乾燥後のグリーンシートの状態に影響する。このため、グリーンシート表面に存在するジルコニアの原料粒子44の状態が、図4(a)、(b)、(c)、のどれに相当するかを事前に予測することは極めて困難である。
したがって、表2に示す主原料と副原料を表3に従って配合して均質なスラリーを製造後、ドクターブレード法またはダイコート法でグリーンシートを成形する場合においても、混合粉砕後のスラリー中における原料の粒子径、使用する溶剤種、熱風や遠赤外線による乾燥条件などを調整すればグリーンシート表面に存在するジルコニア原料粒子44の状態は、図4(a)、(b)、(c)のどの状態にもなり得ると考えられる。ただし、段落番号0074に記載した理由により、図4(c)の状態に調整することは極めて難しい。
ところで、図4(a)又は図4(b)に示されるグリーンシート41a又は41bを焼成することで、図1〜3に示されるアルミナ基板11に相当する焼結体が得られる。ジルコニアを含有するアルミナ基板は広く一般に製造されているが、その両主面におけるジルコニア結晶粒の面積比の差については、前述したようにグリーンシートの表面におけるジルコニアの原料粒子44の状態を成形前に予測することが困難であることもあり、これまで特に注目されておらず、それを積極的に活用する例もない。
つぎに実施例5に係るグリーンシート表面におけるジルコニアの組成比を表4に示す。表4に示される値は、グリーンシートを大気中で600℃に加熱して有機成分を加熱分解除去したサンプルを5個用意し、PETフィルム側の表面と雰囲気側の表面における成分組成を電子プローブマイクロアナライザーを使ってそれぞれ測定した結果である。その際、電子プローブマイクロアナライザーではジルコニウム(Zr)とイットリウム(Y)を分離して測定することが困難であったため、測定データを解析する際はイットリアは存在しないと仮定した上で、アルミナ、ジルコニア、マグネシアの組成比をそれぞれ算出した。その結果、雰囲気側よりもPETフィルム側の表面の方がジルコニアの組成比が高いことが分かった。このことから実施例5に係るグリーンシートは図4(a)に該当する状態であると結論された。
図5(a)、(b)は実施例5に係るグリーンシートを1550〜1650℃の温度範囲に保持して焼成したアルミナ基板の両主面を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。なお、このグリーンシートは表4のデータを取得するのに用いたものと同一である。白い粒子50はジルコニア結晶粒であり、図1〜3におけるジルコニア結晶粒14に相当する。それ以外の濃い灰色の粒子51はほとんどがアルミナの結晶粒であるが、一部はスピネル(MgAl2O4)の結晶粒である。
図5(a)は、図4(a)におけるグリーンシート41aのPETフィルム側の表面43aに対応するアルミナ基板の焼結体表面である。また図5(b)は、図4(a)におけるグリーンシート41aの雰囲気側の表面42aに対応するアルミナ基板の焼結体表面である。アルミナ基板表面に露出する全結晶粒に対するジルコニア結晶粒50の割合を面積比で表すため、画像解析ソフトを使って図5(a)、(b)の前記面積比をそれぞれ求めた。その結果、図5(a)における前記面積比は24.19%、図5(b)における前記面積比は19.95%であり、前者の方が4.24%大きい。この結果は表4に対応しており、アルミナ基板の両主面における前記面積比の違いは、焼成前のグリーンシートの状態を反映したものである。
図6は、図5と同様に実施例1〜5に係るアルミナ基板表面におけるジルコニア結晶粒の面積比を画像解析により算出した結果を示している。その際、各実施例においてそれぞれ3〜9個のサンプルの表裏を走査型電子顕微鏡で観察したのち画像解析を行った。評価に用いた各アルミナ基板の厚さは段落番号0033に記載したように0.2〜1.2mmの範囲内になるように調整され、、実施例1では0.25〜0.32mm、実施例2では0.22〜0.28mm、実施例3〜5では0.29〜0.35mm、であった。図6の縦軸はPETフィルム側の焼結体表面におけるジルコニア結晶粒の面積比から、雰囲気側の同面積比を引いた値である。その差はすべて正の値になっており、PETフィルム側の焼結体表面におけるジルコニア結晶粒の面積比の方が、雰囲気側における同面積比よりも大きいことを示している。このことから実施例5だけでなく実施例1〜4のグリーンシートもすべて図4(a)の状態になっていたと考えられる。なお実施例1〜4(および後述する5(B))においてもグリーンシートの焼成は、1550〜1650℃の温度範囲に保持して行った。
図6に示すように、実施例1におけるジルコニア結晶粒の面積比の差は0.31〜0.71%、実施例2における同面積比の差は0.59〜1.88%、実施例3における同面積比の差は0.68〜6.40%、実施例4における同面積比の差は0.24〜4.30%、実施例5における同面積比の差は2.30〜8.70%、の範囲内であった。また、ジルコニア含有量が増えるにつれて面積比のばらつきが大きくなる傾向があった。このようにジルコニア結晶粒の面積比の差は9.0%以下であることが望ましい。これ以上にジルコニア結晶粒の面積比の差を大きくするには焼成前のグリーンシートにおける表裏のジルコニア粒子の存在比率の差を大きくする必要がある。その場合、グリーンシートの表裏における焼結収縮の差が顕著になり、焼結後にアルミナ基板の反りが大きくなる。
電子部品を実装するための第一の金属層を実施例1〜5のアルミナ基板におけるPETフィルム側の焼結体表面に設けることで、図1に示す本発明の一実施の形態に掛かる電子部品実装用基板10を実現することができる。さらには雰囲気側の焼結体表面に第二の金属層を追加で設けることで図2に示す同電子部品実装用基板10aを実現することができる。
従来、ジルコニアを含有するアルミナ基板では図5と6に示されるような表裏の非対称性は注目されていなかった。本発明ではその非対称性を積極的に活用することにより、電子部品実装用基板の機械的信頼性と光学的反射特性を向上させることができる。
つぎに、図7に示すように、実施例3及び5に係るアルミナ基板中におけるジルコニア(B)の含有量を増大させると、抗折強度が増大する一方で、熱伝導率が低下する傾向がある。図7では部分安定化ジルコニア原料であるジルコニア(B)の含有量を変化させ、0、0.5、2、5、10、20、30wt%の7条件に対する抗折強度と熱伝導率の測定値をそれぞれプロットしている。黒印は抗折強度、白印は熱伝導率をあらわしている。
抗折強度の測定は板厚0.3mmのアルミナ基板を用いて3点曲げ法で実施した。その際PETフィルム側の焼結体表面(図5(a)に相当)が破壊開始面になるように強度測定機にアルミナ基板を設置した。ジルコニアを含有しない場合(含有量0wt%)に比べ、ジルコニア含有量を0.5wt%以上含有することで抗折強度が高くなっている。0.5〜5wt%の範囲内では強度の変化はほぼ一定で、5〜30wt%の範囲内ではその含有量が増えると抗折強度が増大する傾向がある。
一方、熱伝導率はレーザーフラッシュ法で測定した。ジルコニアを含有しない場合(含有量0wt%)に比べ、ジルコニア含有量が2wt%まではその含有量が増えると熱伝導率が高くなる傾向が見られた。ジルコニア含有量が2wt%のときの熱伝導率のピーク値は30.3W/mKであった。一方、2〜30wt%の範囲ではジルコニア含有量が多くなると熱伝導率が低下する傾向があった。ジルコニア含有量が30wt%のときの熱伝導率は19.2W/mKであった。
このようにジルコニア含有量を増大させると抗折強度は高くなる傾向があるが、同時に熱伝導率は低下する傾向がある。ジルコニア含有量が30wt%を超えると、ジルコニアを含有しない一般的なアルミナ基板よりも熱伝導率が低くなり、電子部品実装用基板に実装された電子部品が発する熱を効率よく放散することが困難になる。したがって抗折強度と熱伝導率を電子部品実装用基板として好適な値にするにはジルコニアの含有量は30wt%以下であるのが良い。また、ジルコニア含有量が0.5wt%未満になるとジルコニアを含有することによる強度向上効果を十分に得ることができないため、ジルコニア含有量は0.5wt%以上であるのが良い。
表5は実施例1、3、5、5(B)に係るアルミナ基板表面の光学的反射率(以下、反射率と呼ぶ)を示したものである。板厚は段落番号0033に記載したように0.2〜1.2mmの範囲内になるように調整され、より具体的には、実施例1では0.25〜0.32mm、実施例3と5では0.29〜0.35mmになるように調整した。また実施例5(B)は実施例5と同じ原料配合であるが、実施例5よりも板厚が大きい、0.63〜0.70mmになるように調整した。反射率測定はコニカミノルタ製分光測色計CM−3700dで行われ、可視光領域の波長420〜740nmにピークを持つ光に対するアルミナ基板表面の反射率を波長10nm毎にそれぞれ示してある。ジルコニアの含有量が多いほど、また板厚が大きいほど反射率が高くなっているが、これはアルミナ基板の内部における光線の散乱がジルコニア結晶粒により促進されてアルミナ基板表面における光線の拡散反射率が向上するためである(特許文献3を参照)。また、実施例1、3、5、5(B)に係るアルミナ基板において、不純物であるFeおよびTiの含有量を、FeをFe2O3に、TiをTiO2にそれぞれ換算して示した場合、Fe2O3、TiO2のそれぞれの含有量は、アルミナ基板の全重量に対して0.05wt%以下であった。これらの不純物は光を吸収し、アルミナ基板表面の光学的反射率を低下させる作用があるため、できるだけ少なくする必要がある。
表5における各実施例のいずれにおいても、PETフィルム側の焼結体表面(=ジルコニア結晶粒の面積比が大きい)の方が雰囲気側の焼結体表面(=ジルコニア結晶粒の面積比が小さい)よりも、すべての波長において反射率が高いため、前者から後者の値を引いた値(差)はすべて正値になっている。実施例1では差は0.07〜0.24%、実施例3では差は0.06〜1.49%、実施例5では差は0.11〜0.23%、実施例5(B)では差は0.03〜0.11%、であった。このようにPETフィルム側の焼結体表面と雰囲気側の焼結体表面における反射率の差は2.00%以下であることが好ましい。これ以上に反射率の差を大きくするには、アルミナ基板の表裏におけるジルコニア結晶粒の面積比の差を大きくすることが必要となる。同面積比の差を大きくするには焼成前のグリーンシートの表裏におけるジルコニア粒子の存在比率の差を大きくする必要がある。その場合、グリーンシートの表裏における焼結収縮の差が顕著になり、その結果、焼結後にアルミナ基板の反りが大きくなる。
表6に、実施例2〜5に係るアルミナ基板表面の表面粗さを算術平均粗さ(Ra)としてJIS B 0601:’94に準じて測定した値を示す。板厚は段落番号0033に記載したように0.2〜1.2mmの範囲内になるように調整され、実施例2の板厚は0.22〜0.28mm、実施例3〜5の板厚は0.29〜0.35mmになるように調整されている。表6に示すように、実施例2〜5のいずれにおいても、PETフィルム側の焼結体表面(=ジルコニア結晶粒の面積比が大きい)よりも、雰囲気側の焼結体表面(=ジルコニア結晶粒の面積比が小さい)の方が、算術平均粗さ(Ra)が大きくなっている。これは図4に示すように、PETフィルムにスラリーを塗布して乾燥してグリーンシートを製造する際、PETフィルムに接する側のグリーンシート表面(43a、43b、43c)はPETフィルムに倣って平坦になるが、雰囲気側のグリーンシート表面(42a、42b、42c)は自由に乾燥収縮するため表面が相対的に粗くなるためである。
したがって、第一の金属層としての銅板をDCB法によりPETフィルム側の焼結体表面に、第二の金属層としての銅板をDCB法により雰囲気側の焼結体表面に、それぞれ接合することで、図3に示す電子部品実装用基板10bを実現することができる。表6に示すように、雰囲気側の焼結体表面における算術平均粗さ(Ra)は0.10〜1.50μmの範囲内であるのがよい。0.10μmよりも小さいとCu−O共晶液相の濡れ性が低下しDCB法で銅板を接合する際にボイドの発生率が高くなり、1.50μmよりも大きいと機械的強度が低下する。
ここで、実施例1〜5及び5(B)のアルミナ基板を適用して図3に示す電子部品実装用基板10bを実現する際の、関係する諸因子の相互関係を表7にまとめた。
図8に示すパワーモジュール用基板60では、図3に示される電子部品実装用基板10b(DCB基板)と、銅板からなるヒートシンク61と、第一の金属層18に実装されるパワートランジスタ素子62により構成される。パワートランジスタ素子62は第一の金属層18に半田などの金属製接合材(図示せず)で接合されている。第一の金属層18と第二の金属層19は、どちらもDCB法で接合される銅板で構成され、第一の金属層18はパワートランジスタ素子62の実装形態に合わせた回路パターンになっており、第二の金属層19はパターン間の隙間の無いベタパターンになっている。第二の金属層19とヒートシンク61は半田などの機械的信頼性と放熱性が高い金属製接合材(図示せず)で接合されている。パワートランジスタ素子62はボンディングワイヤ63により第一の金属層18と電気的に接続されている。パワーモジュールは、パワーモジュール用基板60にさらに樹脂筐体(図示せず)を取り付け、外部導通端子(図示せず)と第一の金属層18とを電気的に接続するなどの工程を経て組み立てられる。
このように図3に示す電子部品実装用基板10bを適用することで、アルミナ基板11にクラックが発生して、第一の金属層18が剥がれたり、アルミナ基板11の絶縁耐圧が低下したりする不具合を抑制することができる。その結果、アルミナ基板11におけるジルコニア含有量を増量することで製造コストを増大させたり熱放散性を低下させたりすることなく、パワーモジュールの機械的信頼性を向上させることができる。
図9に示すパワーLED用基板70は、本発明に係る電子部品実装用基板71と、リフレクター72と、パワーLED素子74とで構成される。さらに電子部品実装用基板71はアルミナ基板11と第一の金属層73とで構成される。第一の金属層73は厚膜法で形成され、銅粒子とフリットを含むペーストを印刷した後に乾燥し、さらに900℃程度で焼成することによりアルミナ基板11に焼き付けられて形成される。印刷パターンはパワーLED素子74の実装形態に合わせた回路パターンになっている。銅からなる第一の金属層73に銀めっき被膜を設けてパワーLED素子74から発せられる光を効率よく反射できる機能を持たせてもよい。パワーLED素子74は半田などの金属製接合材(図示せず)で第一の金属層73に接合されている。パワーLED素子74と第一の金属層73とはボンディングワイヤ75で電気的に接続されている。リフレクター72はセラミックや金属などで構成され、樹脂や金属からなる接合材(図示せず)によりアルミナ基板11に取り付けられている。
このように図1に示す電子部品実装用基板10を図9における電子部品実装用基板71のように適用することで、他方の主面15よりも機械的強度が高く光学的反射率が高い、一方の主面12に第一の金属層73を設けることができる。このためパワーLED素子74からの発光を、パターン間に露出するアルミナ基板11の表面(一方の主面12)において、照射方向76に効率よく反射させることができる。さらにアルミナ基板11にクラックが発生して第一の金属層73が剥がれる不具合も抑制できる。なお前記の照射方向76への集光には第一の金属層73やリフレクター72のそれぞれの表面における反射も寄与する。この結果、ジルコニア含有量を増量することで製造コストを増大させたり熱放散性を低下させたりすることなく、パワーLEDの発光効率や機械的信頼性を向上させることができる。