JP6209631B2 - 非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents
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得られたスラリーAを減圧処理又は減圧処理後に加圧処理して、炭素材料を含む水が開気孔内に充填された遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得る工程(II)、並びに
得られた遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程(III)
を備える、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法を提供するものである。
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法は、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を混合してスラリーAを得る工程(I)、
得られたスラリーAを減圧処理又は減圧処理後に加圧処理して、炭素材料を含む水が開気孔内に充填された遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得る工程(II)、並びに
得られた遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程(III)
を備える。
本発明で用いる遷移金属複合酸化物とは、二次電池の負極活物質として用いられる遷移金属複合酸化物であれば特に制限されないが、具体的には例えば、Li4Ti5O12、TiNb2O7、及びTi2Nb10O29等が挙げられる。
原料化合物であるチタン化合物としては、酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸等の含水酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、アナターゼ型TiO2が好ましい。原料化合物であるリチウム化合物としては、リチウム酸化物又はリチウム水酸化物が挙げられ、具体的には、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、炭酸リチウムが好ましい。
また、水熱法による製造方法を用いる場合、原料化合物として上記チタン化合物及びリチウム化合物を混合してスラリーを得た後、反応温度180〜220℃、圧力0.5〜1.0MPaで、10〜20時間が水熱反応させ、反応後のスラリーを乾燥することにより、Li4Ti5O12を得ることができる。
原料化合物であるニオブ化合物としては、水酸化ニオブ等を用いることができ、原料化合物であるチタン化合物としては、硫酸チタニルや硫酸チタン等の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、又は有機酸等を用いることができる。かかるチタン化合物には、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはSn、Zr、Fe、Bi、Cr、Mo、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよく、異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
原料化合物であるニオブ化合物としては、ニオブ酸化物又はニオブ水酸化物が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、五酸化ニオブ(Nb2O5)が好ましい。原料化合物であるチタン化合物としては、酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸等の含水酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、アナターゼ型TiO2が好ましい。かかるチタン化合物には、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはSn、Zr、Fe、Bi、Cr、Mo、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよく、異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
噴霧乾燥により得られる、遷移金属複合酸化物からなる造粒体aの粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD50値で、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜15μmである。ここで、粒度分布測定におけるD50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。したがって、適宜噴霧乾燥装置の運転条件を最適化することにより、かかる造粒体aの粒径を調整すればよい。
なお、焼成する際の雰囲気は、遷移金属複合酸化物中のチタンの価数を+4価とするため、酸素雰囲気下とする必要があり、簡便性及び経済性の観点から大気雰囲気とするのが最も好ましい。焼成に用いる装置としては、焼成雰囲気及び温度の調整が可能な装置であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式の装置も使用することができる。
かかる水溶性炭素材料とは、25℃の水100gに、水溶性炭素材料の炭素原子換算量で0.4g以上、好ましくは1.0g以上溶解する炭素材料を意味し、遷移金属複合酸化物粒子の気孔を充填する炭素源として機能する。かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて、効果的に導電性を有する炭素源としての機能を発揮させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、及びデキストリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、グルコースがより好ましい。
かかる水不溶性炭素材料は、遷移金属複合酸化物粒子の気孔内に効果的に充填させる観点から、予め水に分散させて用いることが好ましい。
なお、得られたスラリーA中では、遷移金属複合酸化物粒子Xが浸漬された状態であり、本発明では、かかるスラリーAをこの状態のままで用い、次なる工程(II)に移行する。
なお、スラリーAを減圧処理するのではなく、遷移金属複合酸化物粒子Xのみを減圧処理に付した後に、かかる遷移金属複合酸化物粒子Xを炭素材料を含む水に浸漬することによっても、同等の効果が得られる可能性があるものの、この際には、遷移金属複合酸化物粒子から飛散した微粉末が減圧ポンプに吸い込まれる等の設備トラブルが生じやすくなり、製造効率が低下してしまうおそれがあるため、本発明では、遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を含むスラリーAを減圧処理に付する。
減圧処理は、減圧処理で生じる遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内からの空気の吸い出しによって生じる発泡が収まるまで行えばよく、減圧処理の時間は、減圧処理開始時からこの発泡が停止した時点までの時間を意味する。かかる減圧処理によって、遷移金属複合酸化物粒子の気孔内は、炭素材料を含む水によって充填されるが、かかる充填をより確実にする観点から、減圧処理後に続いて加圧処理を行うのがより好ましい。
以下の方法にしたがって各測定を行い、製造条件等も含め、得られた結果を表1に示す。
測定装置((株)島津製作所製FlowSorbIII 2305)を用いて、実施例及び比較例で得られた遷移金属複合酸化物からなる二次粒子の窒素吸着法によるBET比表面積を測定した。
5Lポリ容器に、アナターゼ型TiO2(関東化学(株)製) 243.2g、Nb2O5(関東化学(株)製)797.4g、及び水1000mLと共に、φ1mmのジルコニアボール13kgを入れ、混合・粉砕処理を24時間行った。その後、湿式ふるいでジルコニアボールを洗浄、及び除去した後、フィルタープレスで固液分離した。
次いで、水1000mLに、固液分離により得られた脱水ケーキ固形分 538gを加え(スラリー濃度が35質量%に相当)、超音波攪拌機(IKA、T25)で10分間撹拌して全体が均一に呈色するスラリーを得た後、得られたスラリーを噴霧乾燥(スプレードライヤー;藤崎電機(株)製 MDL−050M)して、造粒体a1を得た。その後、かかる造粒体a1を大気雰囲気下1100℃で4時間焼成して、TiNb2O7のみからなる二次粒子X1を得た。二次粒子X1の窒素吸着法によるBET非表面積は、1.7m2/gであった。また、かかる二次粒子X1の平均粒子径は10μmであった。
製造例1で得られた二次粒子X1を100g分取し、グルコース 6.2g(100質量部の二次粒子X1に対し、炭素原子換算量で5.3質量部に相当)とともに水200mLと混合し、超音波攪拌機(T25)を用いて大気圧下で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーA1を得た。
得られたスラリーA1をガラス製耐圧容器内に入れ、かかるガラス製耐圧容器内の圧力を0.01MPaとして10分間減圧処理を行い、二次粒子X1からの細かな発泡が生じていないことを確認した後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した。
次いで、減圧処理後のスラリーA1を吸引ろ過して、気孔内にグルコース水溶液が充填された複合体Y1を得た。
スラリーA1の減圧処理後、ガラス製耐圧容器内の圧力を0.3MPaとして10分間加圧処理を行った後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した以外、実施例1と同じにして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb2O7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
スラリーA1の減圧処理を行わなかった以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb2O7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
スラリーA1の減圧処理を圧力0.05MPaで行った以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb2O7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
5Lポリ容器に、アナターゼ型TiO2(関東化学(株)製) 1768g、Li2CO3(関東化学(株)製) 654g、及び水1000mLと共に、φ1mmのジルコニアボール 13kgを入れ、混合・粉砕処理を24時間行った。その後、湿式ふるいでジルコニアボールを洗浄、及び除去した後、フィルタープレスで固液分離した。
次いで、水1000mLに、固液分離により得られた脱水ケーキ固形分 538g(スラリー濃度が35質量%に相当)を加えた後、超音波攪拌機(T25)で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーを得た後、得られたスラリーを噴霧乾燥(MDL−050M)して、造粒体a2を得た。その後、かかる造粒体a2を、大気雰囲気下800℃で10時間焼成して、Li4Ti5O12のみからなる二次粒子X2を得た。
得られた二次粒子X2のBET比表面積は3.4m2/gであった。
得られた二次粒子X2を100g分取し、グルコース 6.2g(100質量部の二次粒子X2に対し、炭素原子換算量で5.3質量部に相当)とともに水200mLと混合し、超音波攪拌機(T25)を用いて大気圧下で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーA2を得た。
得られたスラリーA2をガラス製耐圧容器内に入れ、かかるガラス製耐圧容器内の圧力を0.01MPaとして10分間減圧処理を行い、二次粒子X2からの細かな発泡が生じていないことを確認した後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した。
次いで、減圧処理後のスラリーA2を吸引ろ過して、気孔内にグルコース水溶液が充填された複合体Y2を得た。
スラリーA2の減圧処理後、ガラス製耐圧容器内の圧力を0.3MPaとして10分間加圧処理を行った後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した以外、実施例1と同じにして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li4Ti5O12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
スラリーA2の減圧処理を行わなかった以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li4Ti5O12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
スラリーA2の減圧処理を圧力0.05MPaで行った以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li4Ti5O12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
実施例及び比較例で得られた非水電解質二次電池用負極活物質、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比90:3:7の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを厚さ20μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80 ℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、負極とした。
次いで、φ15mmに打ち抜いたLi箔を正極とし、電解液としてエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1 mol/Lの濃度で溶解したものを用い、セパレータに高分子多孔フィルム(ポリプロピレン製)を用いて、露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
作成したTiNb2O7からなる負極を有するリチウム二次電池について、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧3Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電として、1CAおよび20CAにおける放電容量を測定(測定装置:北斗電工(株)製 HJ−1001SD8)した。また、Li4Ti5O12からなる負極を有するリチウム二次電池については、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧2.5Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電とした。
結果を表1に示す。
Claims (4)
- 開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、グルコース及び水を混合してスラリーAを得る工程(I)、
得られたスラリーAを減圧処理後に加圧処理して、炭素材料を含む水が気孔内に充填された遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得る工程(II)、並びに
得られた遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程(III)
を備える、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。 - 工程(II)の減圧処理が、圧力0.005〜0.04MPaで行う処理である請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
- 工程(II)の加圧処理が、圧力0.11〜0.5MPaで行う処理である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
- 遷移金属複合酸化物粒子X 100質量部に対する炭素材料の添加量が、炭素原子換算量で0.5〜15質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
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