JP6209131B2 - リチウム空気二次電池及びリチウム空気二次電池用正極の製造方法 - Google Patents
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Description
(リチウム空気二次電池の基本構成)
はじめに、図1を参照して、本実施形態に係るリチウム空気二次電池10について説明する。
図1に示すリチウム空気二次電池10は、例えば、正極接合具1、電極ケース2、正極3、セパレータ4、負極5、負極接合具6、負極支持体7、Oリング8及び負極端子9を含んで構成されている。なお、図1に示す本実施形態に係るリチウム空気二次電池10は、円柱型のセルとして構成した例を示しているがこれに限定されず、角型、ボタン型、コイン型又は扁平型などの所望の形状とすることができる。
また、負極支持体7の内側には、セパレータ4と接するように負極5が配置され、さらに、この負極5に負極接合具6の一端面が接触するように配置されている。当該負極接合具6の他端面は、負極支持体7とともに負極端子9と接触している。
ポリマー電解質とするには、例えば、ポリエチレンオキシドなどを用いればよい。
ゲル電解質とするには、例えば、ポリプロプレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロースなどを用いればよい。
正極3は、図1に示すように、正極接合具1で固定されている一方の面で空気と接触し、他方の面で非水電解液NEと接触している。正極3には、カーボンを用いることによって形成された、非水電解液NEが漏出しない程度の大きさの孔(ナノスケールの孔)が複数存在している。正極3は、当該孔によって空気中の酸素を正極活物質として用いることができるようになっている。従って、正極3では、正極活物質である酸素の電気化学的酸化還元反応が進行する。なお、正極3上での放電反応は次の式(1)、(2)のように表すことができる。正極3の製造方法については後述する。
2Li++O2+2e- → Li2O2 ・・・(1)
又は
2Li++1/2(O2)+2e- → Li2O ・・・(2)
バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを用いることができる。
揮発性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やアセトンなどの有機溶媒を挙げることができるが、空気金属電池の正極の製造に用いられているものであればこれらに限定されることなく用いることができる。
製造過程においてバインダーを含む場合、前記した混合物(触媒)とカーボンとバインダーとの混合比は、混合物(触媒):カーボン:バインダーで、例えば、質量比で5:3:2などとすることができるが、これに限定されるものではなく、本発明の所望の効果を奏する限り、任意の比とすることができる。
正極3には、例えば、前記した触媒以外の触媒や貴金属、有機材料などを添加することができる。前記した触媒以外の触媒としては、例えば、酸化コバルト、酸化セリウムなどを挙げることができる。貴金属としては、例えば、Pt、Pd、Au、Agなどを挙げることができる。有機材料としては、例えば、コバルトフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、Feポルフィリンなどを挙げることができる。
また、負極5には、例えば、リチウム原子を含む合金、酸化物、窒化物または硫化物などの負極活物質を添加することができる。リチウム原子を有する合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金などを挙げることができる。リチウム原子を有する金属酸化物としては、例えば、リチウムチタン酸化物などを挙げることができる。また、リチウム原子を含有する金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物などを挙げることができる。
図1を参照して、本実施形態に係るリチウム空気二次電池10の作製方法について説明する。
本実施形態に係るリチウム空気二次電池10は、例えば、次のようにして作製することができる。
はじめに、電極ケース2の一方の開口部に正極3を入れ、ストッパ2aまで押し込んで配置する。そして、正極接合具1を一方の開口部に嵌め込むことにより正極3を固定する。
次に、電極ケース2の他方の開口部に非水電解液NEを注入し、セパレータ4を挿入する。また、円形に切り抜いた負極5を負極接合具6に圧着させる。
そして、圧着させた負極5及び負極接合具6を負極支持体7とともに電極ケース2の他方の開口部に挿入し、ストッパ2aでセパレータ4を挟み込んで固定する。
次いで、Oリング8を電極ケース2に取り付け、負極端子9を嵌め込み、固定する。
このようにすることにより、リチウム空気二次電池10を作製することができる。
次に、図2〜4を参照して、本実施形態に係るリチウム空気二次電池10用正極3の製造方法について説明する。なお、図1を参照して説明したリチウム空気二次電池10と同一の要素については同一の符号を付し、当該要素についての詳細な説明は省略する。
混合工程S1は、硫化マンガンと酸化マンガンとを混合して混合物を得る工程である。硫化マンガンと酸化マンガンとの混合は、一般的な混合機を用いることにより行うことができる。混合物中(触媒中)における金属イオンのモル比を硫化マンガン:酸化マンガンで、3:1から1:3とする場合は、硫化マンガンと酸化マンガンとの添加量を調節して混合工程S1で行っておくのが好ましい。
熱処理工程S2は、混合工程S1で得た混合物を熱処理する工程である。熱処理工程S2の条件としては前記したように、例えば、大気雰囲気下、常圧で600〜700℃で5〜12時間、より好ましくは600℃で5時間とすることができる。熱処理工程S2は、例えば、従来公知の電気炉を用いることにより行うことができる。
正極製造工程S3は、混合工程S1で混合した混合物又は熱処理工程S2で熱処理を行った混合物を用いて正極3を製造する工程である。正極製造工程S3では、混合工程S1で混合した混合物又は熱処理工程S2で熱処理を行った混合物を用いて正極3を製造できればよく、特定の手法に限定されるものではないが、以下に説明する態様にて正極3を製造するのが好ましい。
図3に示すように、正極製造工程S3の一態様は、スラリー調製工程S31と、第1の正極作製工程S32と、を含む。
スラリー調製工程S31は、熱処理工程S2で熱処理を行った混合物と、カーボンと、バインダーと、を揮発性溶媒中に分散させてスラリーを調製する工程である。混合物とカーボンとバインダーとの混合比は、前記したように、例えば、質量比で5:3:2とするのが好ましい。
第1の正極作製工程S32は、スラリー調製工程S31で調製したスラリー中の揮発性溶媒を揮発させて乾燥した後、所定の形状の正極3を作製する工程である。
スラリー中の揮発性溶媒を揮発させて乾燥する手段としては、例えば、自然乾燥、温風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥などが挙げられる。
正極3は、例えば、スラリーを用いて厚さ約0.05〜0.5mm程度のシート状に成形し、当該シートを例えば打ち抜き機で打ち抜いたり、切り抜き機で切り抜いたりすることにより、所定の形状のものを容易に得ることができる。
また、図4に示すように、正極製造工程S3の他の態様は、スラリー調製工程S33と、第2の正極作製工程S34と、を含む。
なお、正極製造工程S3の他の態様におけるスラリー調製工程S33の内容は、図3を参照して説明した正極製造工程S3の一態様におけるスラリー調製工程S31の内容とまったく同様であるので、その説明を省略する。
第2の正極作製工程S34は、スラリー調製工程S33で調製したスラリーを正極集電体に塗布し、スラリー中の揮発性溶媒を揮発させて乾燥し、正極3を作製する工程である。つまり、この第2の正極作製工程S34は、スラリーを正極集電体に塗布する点が、第1の正極作製工程S32と異なっている。従って、第2の正極作製工程S34によって作製された正極3は、図1には図示しない正極3内に、又は正極3の少なくとも一方の面に、正極集電体を有している。このように、正極集電体を有していると、電流を正極活物質である酸素へ効果的に供給することができるようになり、電池の出力等を高性能化することができる。
なお、正極集電体へのスラリーの塗布と乾燥を所定の回数終えて正極3とする場合は、最終的に冷間プレス及び熱間プレスのうちの少なくとも一方を行うのが好ましい。このようにすると、正極3の強度を高め、非水電解液NEの漏洩を防止することができる。当該効果は、熱間プレスを行うことによってより確実に得られるため、熱間プレスを必ず行うようにするのが好ましい。
表1のNo.1〜20に示すように、硫化マンガン(表1において「MnS」と表記する。)と、MnO、MnO2、Mn2O3、Mn3O4の中から選択される1種類の酸化マンガン(表1において「MnxOy」と表記する。)とを、金属イオンのモル比がMnS:MnxOyで、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3となるようにそれぞれ混合し、600℃以上で5時間熱処理を行い、混合物の触媒を得た。
また、比較のため、触媒を添加せずにカーボンとバインダーのみからなる正極(質量比6:4)を前記と同様にして作製した(表1のNo.21の「カーボンのみ」)。
なお、カーボンは、ケッチェンブラックEC600JD(ライオン(株)製)を用い、バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン社製ポリフロン PTFE Mシリーズ M−112)を用いた。
表面をテフロン(登録商標)でコーティングした電極ケース2(正極3と接触する部分はコーティングしない)の片側に、製造したNo.1〜21に係る正極3を配置し、表面をテフロンでコーティングした正極接合具1を嵌め込むことにより正極3を固定した。
次に、前記電極ケース2の正極3の反対側に非水電解液NEを注入した後にセパレータ4を挿入し、円形に切り抜いた金属リチウム製の負極5を負極接合具6に圧着させた状態で負極支持体7とともに、セパレータ4を電極ケース2で挟み込むようにして嵌め込んだ。
さらに、Oリング8を電極ケース2に取り付け、負極端子9を嵌め込んだ。
なお、非水電解液は、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶解したものを使用した。
No.1〜21に係るリチウム空気二次電池の各サイクル(初回、20回目、50回目)における放電容量を、混合物(触媒)中の金属イオンのモル比(MnS:MnxOy)とともに表1に示す。なお、表1に示す容量は、以後の比較のために正極に含まれるカーボンの質量当たりの容量(mAh/g)で記した。
これに対し、No.21に係るリチウム空気二次電池は、正極をカーボンのみとしていたので、リチウム空気二次電池としての作動を確認することができなかった。
また、比較のため、No.21に係るリチウム空気二次電池の初回充放電曲線を図5中の(c)として示した。
図5の(a)に示すように、No.14に係るリチウム空気二次電池は、放電において平均電圧が約2.75Vであり、放電容量は2021mAh/gを示した。また、充電においては平均電圧が4.05Vであり、充電容量は2014mAh/gを示した。
一方、図5の(c)に示すように、No.21に係るリチウム空気二次電池は、放電において平均電圧が約2.70Vであり、放電容量は2031mAh/gを示した。また、充電においては平均電圧が4.30Vであり、充電容量は350mAh/gを示した。
MnSとMnO2を金属イオンのモル比が1:2となるように混合し、600℃で5時間熱処理した混合物と、カーボン粉末(ケッチェンブラックEC600JD(ライオン(株)製))とを、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)中に分散させ撹拌した後、70℃で乾燥したものと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末と、を用意した。そして、混合物、カーボン粉末、PTFE粉末をそれぞれ5:3:2の質量比で混合してロール成形し、厚さ0.5mmのシート状の電極を作製した。そして、作製したシート状の電極を直径23mmの円形に切り抜くことにより、No.22に係る正極を製造した。
図5の(b)に示すように、No.22に係るリチウム空気二次電池は、放電において平均電圧が約2.80Vであり、放電容量は2028mAh/gを示した。また、充電においては平均電圧が3.95Vであり、充電容量は2027mAh/gを示した。
MnSとMnO2を金属イオンのモル比が1:2となるように混合し、600℃で5時間熱処理した混合物と、カーボン粉末(ケッチェンブラックEC600JD(ライオン(株)製))と、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)分散液とを、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)中に分散させ撹拌した後、Tiメッシュ上に塗布し、70℃で乾燥させた。塗布と乾燥を2〜5回繰り返して行い、プレスを行った後、直径23mmの円形に切り抜くことにより、No.23〜26に係る正極を製造した。
1 正極接合具
2 電極ケース
3 正極
4 セパレータ
5 負極
6 負極接合具
7 負極支持体
8 Oリング
9 負極端子
NE 非水電解液
Claims (7)
- カーボンを含有してなり、一方の面が空気と接触し、他方の面が非水電解液と接触する正極と、
金属リチウム及びリチウムイオンのうちの少なくとも一方の吸蔵及び放出が可能な物質を含んでなる負極と、を具備し、
前記正極と前記負極との間に非水電解液を配置して構成されるリチウム空気二次電池であって、
前記正極は、硫化マンガンと酸化マンガンとの混合物を熱処理したものを触媒として含有している
ことを特徴とするリチウム空気二次電池。 - 前記混合物中における金属イオンのモル比が、前記硫化マンガン:前記酸化マンガンで、3:1から1:3であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
- カーボンを含有してなり、一方の面が空気と接触し、他方の面が非水電解液と接触する正極と、
金属リチウム及びリチウムイオンのうちの少なくとも一方の吸蔵及び放出が可能な物質を含んでなる負極と、を具備し、
前記正極と前記負極との間に非水電解液を配置して構成されるリチウム空気二次電池に用いられる正極を製造するリチウム空気二次電池用正極の製造方法であって、
硫化マンガンと酸化マンガンとを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理した混合物を用いて前記正極を製造する正極製造工程と、
を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池用正極の製造方法。 - 前記混合工程において、
前記混合物中における金属イオンのモル比を、前記硫化マンガン:前記酸化マンガンで、3:1から1:3としたことを特徴とする請求項3に記載のリチウム空気二次電池用正極の製造方法。 - 前記正極製造工程が、前記熱処理した混合物と、前記カーボンと、バインダーと、を揮発性溶媒中に分散させてスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記スラリー中の揮発性溶媒を揮発させて乾燥した後、所定の形状の正極を作製する第1の正極作製工程と、
を含むことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のリチウム空気二次電池用正極の製造方法。 - 前記正極製造工程が、前記熱処理した混合物と、前記カーボンと、バインダーと、を揮発性溶媒中に分散させてスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記スラリーを正極集電体に塗布し、前記スラリー中の揮発性溶媒を揮発させて乾燥し、正極を作製する第2の正極作製工程と、
を含むことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のリチウム空気二次電池用正極の製造方法。 - 前記第2の正極作製工程において、前記正極集電体への前記スラリーの塗布と乾燥を3〜5回繰り返して行うことを特徴とする請求項6に記載のリチウム空気二次電池用正極の製造方法。
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