===本実施の形態に係る引違い戸10について===
本実施の形態に係る引違い戸10について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、引違い戸10の正面模式図である。図2は、引違い戸10の横断面図である。
なお、以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の引違い戸10を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。
本実施の形態に係る引違い戸10は、テラス戸等の所謂4枚建の引違い戸10である。この引違い戸10は、窓枠20と、相互に突き合わされる一対の障子30を含む複数の(4つの)障子30と、を有している。
窓枠20は、上枠22と下枠24と左右の(二つの)縦枠26とを備えている。そして、窓枠20は、これら4つの枠体が矩形状に枠組みされて、全体として開口を形成している。上枠22と下枠24は、左右方向に延びた長尺状の部材であり、縦枠26は、上下方向に延びた長尺状の部材である。
4つの障子30(便宜上、中央左障子31、中央右障子33、左障子35、右障子37と呼ぶ)は、前記開口を閉塞するように窓枠20に取り付けられている。そして、4つの障子30は、窓枠20内に摺動開閉可能に建て込まれている。つまり、4つの障子30は、開閉される際に、窓枠20に摺動しながら、左右方向に移動するようになっている。
なお、4つの障子30の各々は、框30aと、框30aに取り付けられたガラス30bと、を備えている。
左右方向における中央に位置する2つの障子30、すなわち、中央左障子31(第一障子に相当)と中央右障子33(第二障子に相当)が、前述した相互に突き合わされる一対の障子30である。換言すれば、中央左障子31と中央右障子33との間には、突き合わせ部38が設けられている。すなわち、中央左障子31と中央右障子33は、框30aとして、それぞれ突合せ框(左突合せ框32及び右突合せ框34)を備えている。なお、中央左障子31を開ける際には、中央左障子31を左側(図1の矢印参照)へ移動させ、中央右障子33を開ける際には、中央右障子33を右側(図1の矢印参照)へ移動させるようになっている。
また、左右方向における左側には、左障子35が設けられている。すなわち、左障子35は、中央左障子31の左側に位置しており、双方の障子の間には、召し合わせ部39が設けられている。なお、左障子35を開ける際には、左障子35を右側(図1の矢印参照)へ移動させるようになっている。
また、左右方向における右側には、右障子37が設けられている。すなわち、右障子37は、中央右障子33の右側に位置しており、双方の障子30の間には、召し合わせ部39が設けられている。なお、右障子37を開ける際には、右障子37を左側(図1の矢印参照)へ移動させるようになっている。
なお、2つの召し合わせ部39には、それぞれ障子30の開閉が行われないようにするためのクレセント錠44が設けられている。
また、4つの障子30の各々には、ハンドル部40が設けられており、操作者が当該ハンドル部40(具体的には、ハンドル部40の把手41)を把持して障子30の開閉を容易に行えるようになっている。なお、ハンドル部40は、中央左障子31においては左突合せ框32に、中央右障子33においては右突合せ框34に、左障子35においては左戸先框35aに、右障子37においては右戸先框37aに、それぞれ取り付けられている。なお、突き合わせ框に取り付けられているハンドル部40(このハンドル部40は、4つの障子全体の中央に位置しているため、以下では、便宜上、中央ハンドル部42とも呼ぶ)については、次項で詳しく説明する。
===中央ハンドル部42について===
次に、中央ハンドル部42について、詳しく説明する。中央ハンドル部42としては、前述したとおり、左突合せ框32に取り付けられた中央ハンドル部42(以下、第一ハンドル部50とする)と、右突合せ框34に設けられた中央ハンドル部42(第二ハンドル部70とする)とが設けられている。ここで、双方の中央ハンドル部42の構成については、共通する部分もあるが、相違点も存在する。そのため、以下では、先ず、第一ハンドル部50について説明し、これに引き続いて、第二ハンドル部70について説明する。
<<<第一ハンドル部50について>>>
ここでは、本実施の形態に係る第一ハンドル部50について、図1乃至図8を用いて説明する。以下では、先ず、第一ハンドル部50の構成について説明し、その後に、第一ハンドル部50の動作について説明する。
図3は、第一ハンドル部50の正面図である。図4は、第一ハンドル部50の側面図である。図5は、第一ハンドル部50の背面図である。図6は、図5のA−A断面図である。図7は、第一ハンドル部50の上面図である。図8は、第一ローラー64と第二受け部88の位置関係を示した概念図である。なお、図8においては、便宜上、第一ローラー64と第二受け部88を図面上で重ねて表示している。
<第一ハンドル部50の構成について>
第一ハンドル部50は、第一把手52と、第一支軸54と、第一台座56と、裏板58と、第一突出当接部の一例としての第一蹴り出し部61と、を有している。
第一把手52は、中央左障子31の開閉を行う操作者により把持される部分である。この第一把手52は長尺状の部材であり、当該第一把手52の長手方向における下端部が、後述する第一支軸54に固定されている。また、第一把手52は、図2及び図4に示すように、見込み方向において中央左障子31や後述する第一台座56よりも室内側に位置している。
また、第一把手52の長手方向は、操作者により操作されていない状態(以下、非操作状態と呼ぶ)において、図3の実線部や図4に示すように、上下方向に沿っており、また、後述する第一台座56の長手方向に沿っている。そして、操作者が、非操作状態の中央左障子31を開ける際には、第一把手52を把持して中央左障子31を左側へ引くこととなるが、この際に、第一把手52は、後述する第一支軸54と一体的に回動することにより、当該第一支軸54を回動させる。そして、第一把手52の長手方向は、図3の二点鎖線部に示すように、傾く(左側に倒れる)こととなる。
操作者によって操作された第一把手52の回動力を、第一支軸54が、後述する裏板58に伝達する機能を有する。この第一支軸54は、図4に示すように、その長手方向が見込み方向に沿うように、第一台座56に回動自在に取り付けられている。
また、図4及び図7に示すように、第一支軸54の長手方向一端部は、第一把手52に固定されており、図6に示すように、第一支軸54の長手方向他端部は、第一台座56内において裏板58に取り付けられている。そのため、第一把手52が回動すると、第一支軸54が当該第一支軸54の中心軸周りに回動して、裏板58を回動させるようになっている。
なお、第一支軸54は、図5に示すように、第一台座56の中心に設けられている。すなわち、第一支軸54は第一台座56の長手方向における中央に設けられ、かつ、第一台座56の幅方向における中央に設けられている。
第一台座56は、裏板58及び第一蹴り出し部61を収容し、左突合せ框32に直接的に取り付けられる部材である。この第一台座56は、図5及び図6に示すように、長尺状の部材であり、その長手方向が上下方向に沿うように、中央左障子31に設けられている。また、図1に示すように、第一台座56は、左突合せ框32の上下方向における中央よりも若干下側に位置している。
第一台座56は、図5に示すように、その上下方向中央部に位置する第一収容部56aと、その上下方向両端部に位置する第一固定部56bと、を有している。そして、第一収容部56aによって形成された空間に裏板58及び第一蹴り出し部61が収容され、第一固定部56bにて第一台座56が左突合せ框32にネジ止めされている。また、第一支軸54は、第一収容部56aを貫通した状態で、第一収容部56aに回動自在に支持されている。
さらに、第一台座56の右側の側面(つまり、第一台座56から見て中央右障子33側及び左障子35側のうちの中央右障子33側の側面)には、図4及び図5に示すように、第一穴部56cが設けられている。この第一穴部56cは、図4に示すように、第一台座56の上下方向における上部(換言すれば、第一収容部56aの上下方向における上端部)に備えられている。この第一穴部56cは、第一蹴り出し部61(具体的には、後述する第一ローラー64)が第一台座56から突出する際に通過する穴となっている(詳細については後述する)。
裏板58は、第一支軸54の回動力を第一蹴り出し部61に伝達する機能を有しており、第一台座56に収容されている。この裏板58は、図5に示すように、基部58aと、当該基部58aから見込み方向に(図5において、紙面を貫く方向に)立ち上がった立ち上がり部58bと、を有している。
基部58aは、面外方向が見込み方向に沿った平板状の部分である。この基部58aの略中央部には、図5に示すように、第一支軸54が嵌め込まれている。すなわち、基部58aの略中央部には、嵌合穴58cが設けられており、当該嵌合穴58cに第一支軸54が嵌め込まれている。そのため、裏板58(基部58a)は、第一支軸54と一体的に回動することができるようになっている。
また、基部58aの長手方向における一端部には、リベット59(本実施の形態においては段付きリベット)が設けられている。このリベット59は、図6に示すように、その長手方向が見込み方向に沿った状態で、基部58aに取り付けられている。そのため、裏板58(基部58a)が回動すると、リベット59が揺動するようになっている。そして、当該リベット59には、第一蹴り出し部61が係合しており、リベット59の揺動により、第一蹴り出し部61が回動するようになっている。
立ち上がり部58bは、図5に示すように、基部58aの縁部から見込み方向に立ち上がった部分である。そして、当該立ち上がり部58bのうちの、基部58aの長手方向における他端部に位置する部分(換言すれば、リベット59の反対側に位置する部分)には、付勢部材として第一コイルスプリング60が設けられている。
すなわち、図5に示すように、第一コイルスプリング60の一端部は裏板58(立ち上がり部58b)に固定されている一方で、他端部は第一台座56に固定されている。そして、かかる状態で、第一コイルスプリング60は、図5において裏板58を反時計回りに回動させる方向へ付勢している。なお、第一コイルスプリング60によって付勢されている裏板58は、当該裏板58の右下部58dと左上部58eが第一台座56に接触することで、その回動が止められている。
第一蹴り出し部61は、操作者により操作される第一把手52の回動により、第一台座56の上部から突出して中央右障子33(具体的には、中央右障子33に設けられた後述する第二受け部88)に当接する部材である。
すなわち、中央左障子31が閉じた状態で中央左障子31を開くために操作者が第一把手52を操作すると、第一蹴り出し部61が中央右障子33に当接することとなる。その際に、第一蹴り出し部61及び第一蹴り出し部61が設けられている中央左障子31は、右から左へ向かう方向(つまり、中央左障子31を開ける方向)に中央右障子33から反作用力を受ける。そして、この反作用力は、操作者が中央左障子31を開く際に操作者を助ける(サポートする)力となる。つまり、当該反作用力は、操作者が中央左障子31を開く際の始動力となる。このように、本実施の形態に係る第一ハンドル部50は、当該第一蹴り出し部61を有していることで、サポート(アシスト)付きハンドルとなっている。
第一蹴り出し部61は、操作者により操作されていない状態において、第一台座56に収容されている。この際に、第一蹴り出し部61の長手方向が、第一台座56の長手方向(すなわち、上下方向)に沿った状態となっている。
第一蹴り出し部61は、第一アーム62と、回動軸63と、第一ローラー64と、を備えている。第一アーム62は、回動軸63(本実施の形態においては、段付きリベット)によって第一台座56に、回動軸63に対して回動自在となるように固定されている。つまり、第一蹴り出し部61は、回動軸63(回動軸63は回動しない)を中心に回動できるようになっている。
第一アーム62の長手方向における一端部には、挿入穴62aが設けられ、当該挿入穴62aにリベット59が挿入されている。そして、リベット59は、当該挿入穴62a(第一アーム62)に対して相対回動可能となっている。したがって、裏板58が回動してリベット59が揺動すると、第一アーム62がリベット59により押されて、第一アーム62が回動軸63を中心に回動するようになっている。すなわち、裏板58の回動力は、リベット59を介して第一アーム62に伝達される。
また、第一アーム62の長手方向における他端部には、第一ローラー64が設けられている。そして、第一アーム62が回動すると、当該第一ローラー64が第一台座56の上部(つまり、第一台座56の上下方向における中央よりも上側)から突出して(すなわち、第一台座56の第一穴部56cを通過して)、中央右障子33に当接するようになっている。つまり、第一ローラー64は、第一蹴り出し部61のうち中央右障子33に当接する部分に設けられている。
なお、前述した通り、第一蹴り出し部61は、第二受け部88に当接する。第二受け部88は、第一蹴り出し部61を受けるための樹脂製の部材であり、図2及び図8に示すように、中央右障子33の右突合せ框34に取り付けられている。この第二受け部88は、左右方向において、前述した第一穴部56cに対向する位置、換言すれば、第一台座56に収容された第一ローラー64に対向する位置に、位置している。そして、第一ローラー64が、第一穴部56cを通過して第一台座56の上部から突出した際には、第二受け部88に当接し、第二受け部88が第一ローラー64を受け止めるようになっている。
<第一ハンドル部50の動作について>
次に、第一ハンドル部50の動作について説明するが、先ず、前述した非操作状態における第一ハンドル部50の様子について説明する。
非操作状態においては、第一把手52が操作者により操作されていないため(第一把手52に操作者が触れていないため)、第一コイルスプリング60の付勢力により、裏板58が第一台座56に押しつけられている。つまり、裏板58の状態は、図5に示すような状態となっており、裏板58の右下部58dと左上部58eが第一台座56に接触している。
そして、かかる接触状態において、リベット59は、図5に示すように、第一台座56の幅方向(つまり、左右方向)において、第一台座56の短手方向中央よりも第一把手52から遠い側に位置している。そして、かかる際には、第一蹴り出し部61は、第一台座56内に収まっており、第一台座56から突出していない。
また、当該接触状態において、第一把手52の状態は、図3の実線部や図5に示すような状態となっており、第一把手52の長手方向は、上下方向に沿っており、また、第一台座56の長手方向に沿っている。
操作者が、非操作状態の中央左障子31を開ける際には、第一把手52を把持して中央左障子31を左側へ引くこととなる。かかる際に、第一把手52は、図3において反時計回りに回動し、図3の二点鎖線部分に示すように、傾く(左側に倒れる)こととなる。
第一把手52が回動すると、当該第一把手52と一体的に第一支軸54及び裏板58が回動する。裏板58は、第一コイルスプリング60の付勢力に抗して図5において時計回りに回動し、第一台座56に押しつけられている状態から解放される(第一台座56から離れる)。そして、裏板58の回動により、リベット59が、揺動し、第一台座56の幅方向(つまり、左右方向)において、第一台座56の短手方向中央よりも第一把手52から近い側に位置することとなる。
リベット59が揺動すると、当該リベット59に押されて第一アーム62(第一蹴り出し部61)が、図5において反時計回りに回動する。そして、第一アーム62が回動すると、第一ローラー64が第一台座56の上部から突出して(すなわち、第一穴部56cを通過して)、第二受け部88に当接する。その際に、中央左障子31(第一ローラー64)は、右から左へ向かう方向(つまり、中央左障子31を開ける方向)に中央右障子33(第二受け部88)から反作用力を受ける。そして、この反作用力は、操作者が中央左障子31を開く際の始動力となり、操作者は小さい力で中央左障子31を開けることができる。
<<<第二ハンドル部70について>>>
次に、本実施の形態に係る第二ハンドル部70について、図9乃至図14を用いて説明する。以下では、先ず、第二ハンドル部70の構成について説明し、その後に、第二ハンドル部70の動作について説明する。
図9は、第二ハンドル部70の正面図である。図10は、第二ハンドル部70の側面図である。図11は、第二ハンドル部70の背面図である。図12は、図11のA−A断面図である。図13は、第二ハンドル部70の上面図である。図14は、第二ローラー84と第一受け部68の位置関係を示した概念図である。なお、図14においては、便宜上、第二ローラー84と第一受け部68を図面上で重ねて表示している。
<第二ハンドル部70の構成について>
第二ハンドル部70は、第二把手72と、第二支軸74と、第二台座76と、第二突出当接部の一例としての第二蹴り出し部81と、を有している。
第二把手72は、中央右障子33の開閉を行う操作者により把持される部分である。この第二把手72は長尺状の部材であり、当該第二把手72の長手方向における下端部が、後述する第二支軸74に固定されている。また、第二把手72は、図2及び図10に示すように、見込み方向において中央右障子33や後述する第二台座76よりも室内側に位置している。
また、第二把手72の長手方向は、非操作状態において、図9の実線部や図10に示すように、上下方向に沿っており、また、後述する第二台座76の長手方向に沿っている。そして、操作者が、非操作状態の中央右障子33を開ける際には、第二把手72を把持して中央右障子33を右側へ引くこととなるが、この際に、第二把手72は、後述する第二支軸74と一体的に回動することにより、当該第二支軸74を回動させる。そして、第二把手72の長手方向は、図9の二点鎖線部に示すように、傾く(右側に倒れる)こととなる。
なお、第二把手72は、第一把手52と同一形状かつ同一寸法を有している。そのため、第一把手52と第二把手72の意匠は同一となっている。したがって、共通の部品を第一把手52と第二把手72の双方に利用できるようになっている。また、第二把手72の上下方向における位置は、第一把手52の上下方向における位置と一致している。
操作者によって操作された第二把手72の回動力を、第二支軸74が、後述する第二蹴り出し部81に伝達する機能を有する。この第二支軸74は、図10に示すように、その長手方向が見込み方向に沿うように、第二台座76に回動自在に取り付けられている。
また、図10及び図13に示すように、第二支軸74の長手方向一端部は、第二把手72に固定されており、図12に示すように、第二支軸74の長手方向他端部は、第二台座76内において第二蹴り出し部81に取り付けられている。そのため、第二把手72が回動すると、第二支軸74が当該第二支軸74の中心軸周りに回動して、第二蹴り出し部81を回動させるようになっている。
なお、第二支軸74は、図11に示すように、第二台座76の中心に設けられている。すなわち、第二支軸74は第二台座76の長手方向における中央に設けられ、かつ、第二台座76の幅方向における中央に設けられている。
なお、第二支軸74は、第一支軸54と同一形状かつ同一寸法を有している。そのため、第一支軸54と第二支軸74の意匠は同一となっている。したがって、共通の部品を第一支軸54と第二支軸74の双方に利用できるようになっている。また、第二支軸74の上下方向における位置は、第一支軸54の上下方向における位置と一致している。
第二台座76は、第二蹴り出し部81を収容し、右突合せ框34に直接的に取り付けられる部材である。この第二台座76は、図11及び図12に示すように、長尺状の部材であり、その長手方向が上下方向に沿うように、中央右障子33に設けられている。また、図1に示すように、第二台座76は、右突合せ框34の上下方向における中央よりも若干下側に位置している。
第二台座76は、図11に示すように、その上下方向中央部に位置する第二収容部76aと、その上下方向両端部に位置する第二固定部76bと、を有している。そして、第二収容部76aによって形成された空間に第二蹴り出し部81が収容され、第二固定部76bにて第二台座76が右突合せ框34にネジ止めされている。また、第二支軸74は、第二収容部76aを貫通した状態で、第二収容部76aに回動自在に支持されている。
さらに、第二台座76の左側の側面(つまり、第二台座76から見て中央左障子31側及び右障子37側のうちの中央左障子31側の側面)には、図10及び図11に示すように、第二穴部76cが設けられている。この第二穴部76cは、図10に示すように、第二台座76の上下方向における下部(換言すれば、第二収容部76aの上下方向における下端部)に備えられている。この第二穴部76cは、第二蹴り出し部81(具体的には、後述する第二ローラー84)が第二台座76から突出する際に通過する穴となっている(詳細については後述する)。
なお、第二台座76は、第一台座56と同一形状かつ同一寸法を有している。そのため、第一台座56と第二台座76の意匠は同一となっている。したがって、共通の部品を第一台座56と第二台座76の双方に利用できるようになっている。
ただし、第一台座56の第一穴部56cと第二台座76の第二穴部76cは、第一台座56(第二台座76)の中心に対して点対称の位置に位置する。そのため、前記部品を第一台座56に用いるときと第二台座76に用いるときとでは、取り付けの際の部品の向きが変更されることとなる。つまり、当該部品を第一台座56に用いるときには、部品の穴部が上側に位置するように取り付けられ、当該部品を第二台座76に用いるときには、部品の穴部が下側に位置するように取り付けられる。つまり、第二台座76の形態は、第一台座56を前記中心周りに180度回転した形態と同じである。
また、第二台座76の上下方向における位置は、第一台座56の上下方向における位置と一致している。
第二蹴り出し部81は、操作者により操作される第二把手72の回動により、第二台座76の下部から突出して中央左障子31(具体的には、中央左障子31に設けられた後述する第一受け部68)に当接する部材である。
すなわち、中央右障子33が閉じた状態で中央右障子33を開くために操作者が第二把手72を操作すると、第二蹴り出し部81が中央左障子31に当接することとなる。その際に、第二蹴り出し部81及び第二蹴り出し部81が設けられている中央右障子33は、左から右へ向かう方向(つまり、中央右障子33を開ける方向)に中央左障子31から反作用力を受ける。そして、この反作用力は、操作者が中央右障子33を開く際に操作者を助ける(サポートする)力となる。つまり、当該反作用力は、操作者が中央右障子33を開く際の始動力となる。このように、本実施の形態に係る第二ハンドル部70は、当該第二蹴り出し部81を有していることで、サポート(アシスト)付きハンドルとなっている。
第二蹴り出し部81は、操作者により操作されていない状態において、第二台座76に収容されている。この際に、第二蹴り出し部81の長手方向が、第二台座76の長手方向(すなわち、上下方向)に沿った状態となっている。
第二蹴り出し部81は、第二アーム82と、第二ローラー84と、を備えている。第二アーム82は、図11に示すように、基部82aと、当該基部82aから見込み方向に立ち上がった立ち上がり部82bと、を有している。
基部82aは、面外方向が見込み方向に沿った平板状の部分である。この基部82aには、図11に示すように、第二支軸74が嵌め込まれている。すなわち、基部82aには、嵌合穴82cが設けられており、当該嵌合穴82cに第二支軸74が嵌め込まれている。そのため、第二アーム82(基部82a)は、第二支軸74と一体的に回動することができるようになっている。
立ち上がり部82bは、図11に示すように、基部82aの縁部から見込み方向に立ち上がった部分である。そして、当該立ち上がり部82bのうちの、基部82a(第二アーム82)の長手方向における一端部に位置する部分(換言すれば、第二ローラー84の反対側に位置する部分)には、付勢部材として第二コイルスプリング80が設けられている。
すなわち、図11に示すように、第二コイルスプリング80の一端部は第二アーム82(立ち上がり部82b)に固定されている一方で、他端部は第二台座76に固定されている。そして、かかる状態で、第二コイルスプリング80は、図11において第二アーム82を時計回りに回動させる方向へ付勢している。なお、第二コイルスプリング80によって付勢されている第二アーム82は、当該第二アーム82の左下部82dと右上部82eが第二台座76に接触することで、その回動が止められている。
また、第二アーム82の長手方向における他端部(換言すれば、第二コイルスプリング80の反対側に位置する部分)には、第二ローラー84が設けられている。そして、第二アーム82が回動すると、当該第二ローラー84が第二台座76の下部(つまり、第二台座76の上下方向における中央よりも下側)から突出して(すなわち、第二台座76の第二穴部76cを通過して)、中央左障子31に当接するようになっている。つまり、第二ローラー84は、第二蹴り出し部81のうち中央左障子31に当接する部分に設けられている。なお、第二ローラー84は、第一ローラー64と同一形状かつ同一寸法を有しているため、共通の部品を第一ローラー64と第二ローラー84の双方に利用できるようになっている。
なお、前述した通り、第二蹴り出し部81は、第一受け部68に当接する。第一受け部68は、第二蹴り出し部81を受けるための樹脂製の部材であり、図2及び図14に示すように、中央左障子31の左突合せ框32に取り付けられている。この第一受け部68は、左右方向において、前述した第二穴部76cに対向する位置、換言すれば、第二台座76に収容された第二ローラー84に対向する位置に、位置している。そして、第二ローラー84が、第二穴部76cを通過して第二台座76の下部から突出した際には、第一受け部68に当接し、第一受け部68が第二ローラー84を受け止めるようになっている。
<第二ハンドル部70の動作について>
次に、第二ハンドル部70の動作について説明するが、先ず、前述した非操作状態における第二ハンドル部70の様子について説明する。
非操作状態においては、第二把手72が操作者により操作されていないため(第二把手72に操作者が触れていないため)、第二コイルスプリング80の付勢力により、第二蹴り出し部81(第二アーム82)が第二台座76に押しつけられている。つまり、第二蹴り出し部81(第二アーム82)の状態は、図11に示すような状態となっており、第二蹴り出し部81(第二アーム82)の左下部82dと右上部82eが第二台座76に接触している。そして、かかる接触状態において、第二蹴り出し部81は、第二台座76内に収まっており、第二台座76から突出していない。
また、当該接触状態において、第二把手72の状態は、図9の実線部や図11に示すような状態となっており、第二把手72の長手方向は、上下方向に沿っており、また、第二台座76の長手方向に沿っている。
操作者が、非操作状態の中央右障子33を開ける際には、第二把手72を把持して中央右障子33を右側へ引くこととなる。かかる際に、第二把手72は、図9において時計回りに回動し、図9の二点鎖線部分に示すように、傾く(右側に倒れる)こととなる。
第二把手72が回動すると、当該第二把手72と一体的に第二支軸74及び第二蹴り出し部81(第二アーム82)が回動する。第二蹴り出し部81(第二アーム82)は、第二コイルスプリング80の付勢力に抗して図11において反時計回りに回動し、第二ローラー84が第二台座76の下部から突出して(すなわち、第二穴部76cを通過して)、第一受け部68に当接する。その際に、中央右障子33(第二ローラー84)は、左から右へ向かう方向(つまり、中央右障子33を開ける方向)に中央左障子31(第一受け部68)から反作用力を受ける。そして、この反作用力は、操作者が中央右障子33を開く際の始動力となり、操作者は小さい力で中央右障子33を開けることができる。
===本実施の形態に係る引違い戸10の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係る引違い戸10は、窓枠20と、窓枠20内に摺動開閉可能に建て込まれ、相互に突き合わされる少なくとも一対の障子30(中央左障子31及び中央右障子33)を含む複数の障子30と、一対の障子30のうちの中央左障子31の左突合せ框32に取り付けられた第一ハンドル部50及び前記一対の障子30のうちの中央右障子33の右突合せ框34に取り付けられた第二ハンドル部70と、を有している。
そして、第一ハンドル部50は、第一台座56と、該第一台座56に取り付けられた第一支軸54と、該第一支軸54を中心に回動する第一把手52と、該第一把手52の回動により第一台座56の上部から突出して中央右障子33に当接する第一蹴り出し部61と、を備えている。また、第二ハンドル部70は、第二台座76と、該第二台座76に取り付けられた第二支軸74と、該第二支軸74を中心に回動する第二把手72と、該第二把手72の回動により第二台座76の下部から突出して中央左障子31に当接する第二蹴り出し部81と、を備えている。そのため、相互に突き合わされる一対の障子30(中央左障子31及び中央右障子33)に、利便性の高いハンドル部40を導入することが可能となる。
すなわち、上述したとおり、従来は、4枚建の引違い戸等の相互に突き合わされる一対の障子(中央左障子及び中央右障子)の双方(換言すれば、突合せ框の双方)にサポート(アシスト)付きハンドルが設けられた例はなかった。上記サポート(アシスト)付きハンドルを、中央左障子及び中央右障子の各々(中央左障子及び中央右障子の突き合わせ框の各々)に設けた場合には、上下方向における同一位置から互いの蹴り出し部が突出する構造となり、双方のサポート(アシスト)付きハンドル同士で干渉してしまう課題があった。したがって、中央左障子及び中央右障子に取り付けられたハンドル部の少なくとも一方は、サポート(アシスト)なしとなり、操作者にとって利便性の低いものとなっていた。
これに対し、本実施の形態では、中央左障子31の左突合せ框32に取り付けられた第一ハンドル部50においては、第一蹴り出し部61が第一台座56の上部から突出して中央右障子33に当接する。その一方で、中央右障子33の右突合せ框34に取り付けられた第二ハンドル部70においては、第二蹴り出し部81が第二台座76の下部から突出して中央左障子31に当接する。そのため、上下方向において異なる位置から互いの蹴り出し部が突出する構造となり、双方のハンドル部同士で蹴り出し部が干渉してしまう問題がなくなる。したがって、問題なく、中央左障子31及び中央右障子33の双方に、利便性の高いサポート(アシスト)付きハンドルを導入することが可能となる。
また、本実施の形態において、中央左障子31の左突合せ框32には、第二蹴り出し部81を受ける第一受け部68が取り付けられ、中央右障子33の右突合せ框34には、第一蹴り出し部61を受ける第二受け部88が取り付けられていることとした。
そのため、蹴り出し部は受け部から安定した反作用力を受けることができ、操作者が中央左障子31や中央右障子33を開く際に、安定した始動力を得ることが可能となる。
また、本実施の形態においては、第一台座56と第二台座76とは同一形状であり、第一支軸54は第一台座56の中心に設けられ、第二支軸74は第二台座76の中心に設けられていることとした。
そのため、共通の部品を第一台座56と第二台座76の双方に利用できる。また、当該部品を第二台座76として使用する場合の第二台座76の使用形態を、第一台座56として使用する場合の第一台座56の使用形態を前記中心周りに180度回転させたものとすることができ、このようにした場合に、第一支軸54及び第一台座56の上下方向における位置を、第二支軸74及び第二台座76の上下方向における位置と同じ位置とすることが可能となる。
また、本実施の形態においては、第一蹴り出し部61及び第二蹴り出し部81の、中央右障子33及び中央左障子31に当接する部分には、ローラー(第一ローラー64及び第二ローラー84)が設けられていることとした。
そのため、第一蹴り出し部61及び第二蹴り出し部81が摩耗しにくくなり、ハンドル部40が耐久性の高いものとなる。
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
上記実施の形態においては、引違い戸10として、4枚建の引違い戸10を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、5枚建以上の引違い戸10であってもよい。
また、上記実施の形態においては、第一障子として中央左障子31を例に挙げ、第二障子として中央右障子33を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、第一障子が中央右障子33であり、第二障子が中央左障子31であることとしてもよい。すなわち、上記においては、中央左障子31に取り付けられたハンドル部の蹴り出し部が台座の上部から突出し、中央右障子33に取り付けられたハンドル部の蹴り出し部が台座の下部から突出することとしたが、中央左障子31に取り付けられたハンドル部の蹴り出し部が台座の下部から突出し、中央右障子33に取り付けられたハンドル部の蹴り出し部が台座の上部から突出することとしてもよい。