JP6206017B2 - バイオマス原料からの酢酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオマス原料から効率的に酢酸を製造する方法に関する。
バイオマス資源は、水と炭酸ガスと太陽エネルギーから光合成により生産される有機資源であり、エネルギー源または化学原料として利用可能である。バイオマス資源は、バイオマス資源から生産される生産物の生産量と生産物の利用量を調和させることができれば、炭酸ガスの排出量を増加させないで利用できる再生可能資源である。
バイオマスとしては、廃棄物系バイオマス、未利用バイオマス、資源作物、及び新作物などがある。廃棄物系バイオマスは、生活や産業活動を営む過程で不要物として排出される有機性廃棄物である。未利用バイオマスとは、農地にすき込まれたり、山林に放置されたりする農作物の非食用部(例えば、トウモロコシの茎・葉など)や間伐材などである。資源作物とは、食料や木材の生産を目的とせず、物質・エネルギー資源を得ることを目的として、現在の休耕地や未利用地などで栽培される植物である。新作物とは、従来からの手法による品種改良や遺伝子組換技術によって生産性などの機能が改善された資源作物である。
バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、リグニン及び細胞内含有成分等の成分により構成されており、成分比はバイオマスの種類によって異なる。例えば、木質系バイオマスは、約50%のセルロース、20〜25%のヘミセルロース、20〜25%のリグニン、約5%の細胞内含有成分から構成されている。これらの成分は工業的な利用が可能である。
バイオマスに含まれるセルロースや糖類(オリゴ糖、グルコース、キシロース)から酢酸生産菌を用いて酢酸を生産することができる。酢酸は工業用途として重要であり、合成樹脂や接着剤等の原料として用いられている。また、酢酸を原料として化学変換によりエタノールを生産することもできる。
例えば、特許文献1には、炭素、窒素及び無機物質の同化源を含有する水性栄養培地の存在下で嫌気的発酵槽でClostridium thermoaceticumを発育させて炭水化物を酢酸に転化させる方法が記載されている。この方法は、特定のClostridium thermoaceticum菌株を用いる方法であり、特に、所定のpH、温度及び初期酢酸濃度で供給バッチ発酵を行うことを特徴とする方法である。
特許文献2には、Clostridium thermoaceticumを絶対嫌気状態でグルコース、メタノール及び炭酸ガス源を主成分とする複合基質によって培養した後、分離液を取出し、前記分離液から酢酸を採取する酢酸の製法が記載されている。
特許文献3には、リグノセルロースを分解処理した処理液とClostridium thermoaceticumを使用してCysteine・HCl・H2O添加量を0.05〜0.1g/Lにして酢酸発酵する酢酸の製造方法が報告されている。
特開昭62−171689号公報 特開平6−165685号公報 特開2012―50345号公報
本発明の課題は、バイオマス原料から効率的に酢酸を製造する方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、バイオマス原料を化学的に処理することで得た懸濁液を固液分離して固形分と液体分に分離し、前記液体分中で酢酸生産菌を培養することにより、効率的に酢酸を製造できることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1) バイオマス原料に化学的処理を施し、化学的処理が施されたバイオマス原料を含む懸濁液を固液分離して固形分と液体分に分離し、前記液体分中で酢酸生産菌を培養して酢酸を製造する工程を含む、バイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(2) 酢酸生産菌を培養する前の液体分に含まれるフルフラール類の濃度が0.5質量%以下である、(1) に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(3) 固液分離により得られた液体分からフルフラール類を分離する工程を含む、(1) 又は(2)に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(4) 固液分離により得られた液体分からフルフラール類を分離する方法が、液体分を反応槽中で加熱処理し、加熱処理した処理液からフルフラール類含有蒸気相を分離して取り出す方法である、(3)に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(5) 前記反応槽の排出口から排出された処理液の少なくとも一部を前記反応槽の供給口に循環させる、(4)に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(6) バイオマス原料の化学的処理の前に機械的処理を行う、(1)から(5)の何れかに記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(7) 液体分中で酢酸生産菌を培養することにより得られる培養液中の酢酸濃度が、0.5質量%以上である、(1)から(6)の何れかに記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
(8) 酢酸生成菌がクロストリジウム(Clostridium)属の微生物である、(1)から(7)の何れかに記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
本発明により、バイオマス原料から効率的に酢酸を製造することが可能となる。
図1は、本発明によるバイオマス原料からの酢酸の製造方法の第一の例を示す図である。 図1は、本発明によるバイオマス原料からの酢酸の製造方法の第二の例を示す図である。
1:原料供給ライン
2:原料移送ライン
3:加熱処理液移送ライン
4:固形分移送ライン
5:液体分移送ライン
6:処理液排出ライン
7:蒸気相移送ライン
8:循環ライン
9:フルフラール類濃縮液回収ライン
10:液相移送ライン
11:処理液排出ライン
I:破砕処理装置
CO:加熱処理装置
S:固液分離装置
BR:反応槽
EV:蒸留装置
RE:培養槽
以下、本発明の酢酸の製造方法をさらに詳しく説明する。なお、本明細書に記載される材料、方法及び数値範囲などの説明は、当該材料、方法及び数値範囲などに限定することを意図したものではなく、また、それ以外の材料、方法及び数値範囲などの使用を除外するものでもない。
<バイオマス原料>
本発明で用いるバイオマス原料としては、六炭糖及び/又は五炭糖を構成糖として含む材料であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、木質系原料であれば、樹木、林地残材、間伐材、廃材等のチップ又は樹皮、製材工場等から発生するおが屑、街路樹の剪定枝葉、建築廃材等が挙げられ、広葉樹、針葉樹共に用いることができる。草本系としてナフ、稲藁、麦わら、コーンコブ、バガス等の農産廃棄物、油用作物やゴム等の工芸作物の残渣及び廃棄物、草本系エネルギー作物のエリアンサス、ミスカンサスやネピアグラス等のリグノセルロース系バイオマスが挙げられる。なお、油用作物やゴム等の工芸作物の残渣及び廃棄物としては、例えば、EFB( Empty Fruit Bunch)が挙げられる。また、バイオマスとしては、木材由来の紙、古紙、パルプ、パルプスラッジ、スラッジ、下水汚泥等、食品廃棄物、等を原料として利用することができる。これらのバイオマスは、単独、あるいは複数を組み合わせて使用することができる。また、バイオマスは、乾燥固形物であっても、水分を含んだ固形物であっても、スラリーであっても用いることができる。
木質系の原料としては、ユーカリ(Eucalyptus)属植物、ヤナギ(Salix)属植物、ポプラ属植物、アカシア(Acacia)属植物、スギ(Cryptomeria)属植物等が利用できる。この中でも、ユーカリ属植物、アカシア属、ヤナギ属植物が原料として大量に採取し易いため好ましい。木本性植物由来の原料の中では、林地残材(樹皮、枝葉を含む)、樹皮が好ましい。例えば、製紙原料用として一般に用いられるユーカリ(Eucalyptus)属又はアカシア(Acacia)属等の樹種の樹皮は、製紙原料用の製材工場やチップ工場等から安定して大量に入手可能であるため、特に好適に用いられる。
<機械的処理>
本発明では、必要に応じ、バイオマス原料に機械的処理を施してもよい。機械的処理としては、切断、裁断、破砕、磨砕等の任意の機械的手段が挙げられ、バイオマス原料を次工程の化学的処理工程で糖化され易い状態にすることである。使用する機械装置については特に限定されないが、例えば、切出し装置、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー、レファイナー、ニーダー、ボールミル等を用いることができる。
機械的処理の前工程又は後工程として、異物(石、ゴミ、金属、プラステック等のバイオマス原料以外の異物)を除去するための洗浄工程や洗浄した原料に含まれる水を脱水するための脱水工程を導入することもできる。
バイオマス原料を洗浄する方法としては、例えば、原料に洗浄水を供給して原料に混合されている異物を除く方法、あるいは、バイオマス原料を水中に浸漬し異物を沈降させて取り除く方法等が挙げられる。また、メタルトラップ、洗浄ドレーナー等の洗浄装置を用いて異物をバイオマス原料から分離する方法が挙げられる。
バイオマス原料に異物が含まれていると、破砕や磨砕等の機械的処理に要する消費電力が増加したり、機械的処理で用いるレファイナーのディスク(プレート)等の装置の部品を破損させる可能性がある。また、異物が原因となって配管が詰まる等の製造工程内でトラブルを起こす等の問題が発生するため、洗浄工程を導入することが望ましい。
<化学的処理>
本発明では、バイオマス原料に化学的処理を施す。化学的処理としては、アルカリ薬品、又は、亜硫酸ナトリウムとアルカリ薬品とを含有する溶液に浸漬する化学的処理を挙げることができるが、特に限定されない。アルカリ薬品としては、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種以上のアルカリ薬品を使用することができるが、特に限定されない。また、オゾン、二酸化塩素などの酸化剤による化学的処理も可能である。
化学的処理で使用する薬品の添加量は、状況に応じて任意に調節可能である。添加量は、薬品コスト低下の面から、またセルロースの溶出・過分解による収率低下防止の面から、バイオマス原料の絶乾100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。化学的処理における薬品の水溶液への浸漬時間及び処理温度は、使用する原料や薬品によって任意に設定可能であるが、処理時間20〜90分、処理温度80〜200℃が好ましい。処理条件を厳しくすることで、原料中のセルロースの液側への溶出又は過分解が起こる場合もあるため、処理時間は70分以下、処理温度は180℃以下であることが好ましい。
<固液分離>
化学的処理を施したバイオマス原料は、固液分離装置で固形分(残渣)と液体分(濾液)に分離する。固液分離を行う装置としては、スクリュープレス、スクリーン、フィルタープレス、ベルトプレス、ロータリープレス等を用いることができる。スクリーンとしては、振動装置が付加された振動スクリーンなどを用いることができる。
固液分離装置で分離された液体分(濾液)は、図1に示すように培養槽REへ移送することができる。または、固液分離装置で分離された液体分(濾液)は、図2に示すように、反応槽BRに移送し、その後に、培養槽REへ移送してもよい。
<フルフラールの除去・回収>
図2においては、固液分離装置で分離された液体分(濾液)は、反応槽BRに移送される。なお、反応槽BRの設置は本発明においては必須ではない。反応槽BRにおいては、好ましくは、固液分離装置で分離された液体分に酸を添加し処理することができる。酸は特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等を用いることができる。
反応槽BRにおいては、加熱処理を行うことができる。加熱処理の温度としては、120〜250℃で行うことができるが、140〜230℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。
図2の装置によってバッチ式で行う場合は、加熱処理後に反応槽BRの上部のバルブ(蒸気相移送ライン7)を開き、蒸気相を取り出して蒸留装置EVへ移送し、蒸留装置EVでフルフラール濃縮液を分離することができる。
図2の装置によって連続式で行う場合は、反応槽BRの上部のバルブV(蒸気相移送ライン7)の代替として減圧バルブを用い、加熱処理を行いながら減圧バルブを開いて蒸気相を取出す。蒸気相は蒸留装置EVへ移送し、蒸留装置EVでフルフラール類含有濃縮液を分離することができる。
反応槽(バッチ式、連続式)から取り出した蒸気相を蒸留装置EVへ移送する前にコンデンサー(凝縮器)で凝縮してもよい。フルフラール類を含有する蒸気相を蒸留濃縮する蒸留装置EVは、複数の装置を直列あるいは並列で設置してなる装置であってもよい。
図2の装置を用いる方法では、蒸気相を除去した後の反応槽BRの底部の処理液排出ライン6から排出される処理液(液相)には単糖類、オリゴ糖類等の糖類が含まれている。処理液排出ライン6から排出される処理液を循環ライン8を経由して反応槽BRの入口(液体分移送ライン5)へ循環供給することもできる。蒸気相を除去した後の液相(糖類等含有水溶液)を反応槽BRに供給される液体分(固液分離で分離された液体分)に供給することもできる。この操作により、オリゴ糖類や単糖類がフルフラール類に分解されるため、フルフラール類を回収する場合には、フルフラール類の収率を向上させることができる。
フルフラール類としては、フルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。オリゴ糖類としては、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられ、前記オリゴ糖にアラビノース、マンノース、グルコース、キシロース、グルクロン酸、4−O−メチルグルクロン酸等が側鎖として付加したオリゴ糖も含まれる。単糖類としては、キシロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、マンノース等が挙げられる。
<酢酸の製造>
本発明においては、液体分中で酢酸生産菌を培養することによって酢酸を製造する。酢酸生産菌の培養は、培養槽を用いて行うことができる。本発明の方法で用いる培養槽は、連続的あるいは断続的に酢酸生成菌を培養することができる連続式あるいはバッチ式の培養槽であれば制限なく使用することができる。培養槽の形態は特に限定されない。
培養槽は、複数の培養槽を並列で設置することもでき、複数の培養槽で同時に酢酸生成菌を培養することもできる。また、複数の培培養を直列に連結して設置することもでき、異なる種類の酢酸生産菌を別々に異なる培養槽で培養することもできる。
図1及び図2の方法において、培養槽REへの液体分の供給は、連続的であってもよいし断続的でもよい。培養槽REは、培養中に雑菌の増殖を防止するために予め殺菌しておくことが望ましい。
本発明の方法においては、固液分離で得られた液体分(図1の場合)、又は前記固液分離で得られた液体分からフルフラールを除去するために反応槽BRで処理することにより得られた液体分(図2の場合)を、酢酸生産菌の基質として用いることができる。前記の液体分への栄養源の添加は必須ではないが、必要に応じて酢酸生成菌の生育に必要な栄養源を添加することが望ましい。栄養源は、酢酸生成菌が生育し酢酸の生産に適した栄養源であれば特に制限なく用いることができる。
酢酸生成菌としてはクロストリジウム(Clostridium)属の微生物を用いることができる。クロストリジウム(Clostridium)属の微生物としては、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム サーモアセチカム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム アセチカム(Clostridium aceticum)、等が挙げられるが、特に限定されない。クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム サーモアセチカム(Clostridium thermoaceticum)を用いることが酢酸の生産効率が高いため好ましい。前記クロストリジウム属の微生物は1種を用いてもよいし、2種以上のクロストリジウム属の微生物を混合して用いてもよい。
酢酸生成菌を培養する培地(培養液)のpHは5.0〜8.0の範囲が好ましく、6.5〜7.5の範囲がさらに好ましい。培養中に酢酸が生成すると培養液のpHが低下するが、アルカリ水溶液を添加し培養液のpHが前記pHの範囲になるように制御することが望ましい。
酢酸生成菌を培養する培地(培養液)の温度は、50〜70℃で行うことが望ましく、55〜65℃で行うことがさらに好ましい。
バッチ式で培養を行う場合の培養時間は0.5〜72時間が好ましく、1〜48時間がさらに好ましい。連続式で培養を行う場合の培養槽内での培養液の滞留時間は0.5〜72時間が好ましく、1〜48時間がさらに好ましい。
酢酸生成菌は嫌気性細菌であるため、培養槽内を嫌気状態にして培養を行うことが好ましい。例えば、二酸化炭素、窒素等のガスを培養槽内に吹き込み培養を行うことができる。
本発明では、好ましくは、培養槽RE内へ供給する液体分に含まれるフルフラール濃度を0.5質量%以下になるように制御することができる。培養槽REに供給される液体分に含まれるフルフラール濃度を0.5質量%以下になるように制御することにより、フルフラールが酢酸生産菌に対して及ぼす阻害作用が抑制されて、酢酸生成菌によるオリゴ糖、単糖等からの酢酸への変換が促進される。また、フルフラールを低濃度に維持することにより、フルフラールと糖類(オリゴ糖、単糖)の副反応が抑制されて、酢酸の収率が向上する。
培養槽REに供給される液体分に含まれるフルフラール濃度を0.5質量%以下になるように制御するための手段としては、バイオマス原料の化学的処理の条件(温度、滞留時間、原料の供給量、処理液の取出口の位置など)を最適化することが挙げられる。また、バイオマス原料の化学的処理後の固液分離後の液体分からフルフラールを除去することも可能である。液体分からのフルフラールを除去するための方法としては、例えば、前記の<フルフラールの除去・回収>において説明した方法を挙げることができる。フルフラールは工業用途として利用されているため、酢酸の生産と同時にフルフラールも同時に分離して生産することもできる。
連続式で酢酸生成菌の培養を行う場合、培地の栄養源を必要に応じて適宜添加することができる。添加の方法としては、例えば、滅菌した栄養源の濃縮液を、断続的、あるいは連続的に添加する方法が挙げられる。
前記の方法により、オリゴ糖、単糖が主に酢酸生成菌により酢酸に変換されて、バイオマス原料から効率的に酢酸を生産することができる。
上記した本発明の方法において培養槽から排出される処理液における酢酸濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは0.8質量%以上である。
本発明方法により製造された酢酸を含む培養液は、さらに酢酸の純度を高めるために蒸留装置に移送し培養液を蒸留することにより酢酸の濃度を高めることができる。また、得られた酢酸(又は酢酸を含む水溶液)を水素添加、エステル化等の方法により、酢酸からエタノールに変換することもできる。
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[製造例1]
図1に示す方法で試験を実施した。
[前処理]
<破砕処理>
チップ状のユーカリ・グロブラスの林地残材(樹皮70%、枝葉30%)を20mmの丸孔スクリーンを取り付けた一軸破砕機(西邦機工社製、SC−15)で破砕し原料として用いた。
<化学的処理>
上記原料1kg(絶乾重量)に対して水酸化ナトリウム200gを添加後、水を添加し水溶液の容量を10Lに調製し混合した。図1に示すように、前記原料懸濁液を加熱処理装置COで140℃で1時間加熱した。加熱処理した原料懸濁液をライン3から固液分離装置Sへ移送した。
<固液分離>
化学的処理した原料懸濁液を固液分離装置S:スクリュープレス(富国工業社製、SHX―200X1500L、メッシュサイズ1.2mm)で固形分と液体分に固液分離した。前記スクリュープレスで分離した液体分100Lに硫酸を添加しpHを4.0に調整後、液体分を冷却後、液体分移送ライン5から培養槽REへ移送した。
<培養>
前記液体分(ろ液)に培地A(下記)を添加し、培養槽RE内の培地(化学的処理液を含む)の最終液量が50Lになるように調製した。液量を調製した時点でライン5のバルブを閉じた。培地のpHを6.8に調整した。
培地A(1L当り):KH2PO4 、1.5g、Na2HPO4・12H2O 4.2g、NH4Cl 0.5g、MgCl2・6H2O、酵母エキス2g、レサズリン(0.1%溶液)1ml、NaOH(0.2N)200ml、Na2S・9H2O 2.5g、Cysteine・H2O、ビオチン20mg、p−アミノ安息香酸50mg、葉酸20mg、パントテン酸カルシウム50mg、ニコチン酸50mg、ビタミンB12 1.0mg、塩酸チアミン5mg、塩酸ピリドキシン100mg、チオクト酸50mg、リボフラビン5mg、ニトリロ三酢酸1.5g、MgSO4・7H2O 3g、MnSO4・H2O 500mg、NaCl 1g、FeSO4・7H2O 100mg、Co(NO32・6H2O 100mg、CaCl2 100mg、ZnSO4・7H2O 100mg、CuSO4・5H2O 10mg、AlK(SO4210mg、ホウ酸10mg、Na2MoO4・2H2O 10mg、Na2SeO3 1mg。
次に、培養槽RE内を窒素ガスで置換し嫌気状態にした後、予め前培養した酢酸生産菌を前記培地に添加し、60℃で培養を開始した。ここで酢酸生産菌としては、Clostridium thermocellum(ATCC27405)及びClostridium thermoaceticum(ATCC35608)を各々密度が1x108/mlになるように培地に添加した。24時間培養後、固液分離後の液体分(260質量部/時)をライン5から培養槽REへ連続的に添加した。また、培地Aの10倍濃縮液(20質量部/時)を培養槽RE内に連続的に供給した。一方、培養槽RE内の培養液(280質量部/時)を培養槽REの排出口から連続的に排出した。
培養槽REの供給口へ供給される液体分、及び培養槽REの排出口から排出される培養液に含まれるフルフラール類、酢酸、ギ酸の含有量を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
[フルフラール類の定量]
フルフラール類の定量にはAgilent Technоlоgies社製HPLCシステムを用いた。カラムは、Bio−Rad社製Aminex HPX87P(7.8×300mm)を用い、5mM硫酸を溶離液とし、1ml/minの流速でフルフラール類を溶出させた。検出にはUV−Vis検出器を用いた。フルフラール類の標品として、フルフラールを用い、検量線を作成し、試料中の含有量を求めた。
[有機酸(酢酸、ギ酸)の定量]
酢酸及びギ酸の定量にはAgilent Technоlоgies社製HPLCシステムを用いた。カラムは、Bio−Rad社製Aminex HPX87P(7.8×300mm)を用い、5mM硫酸を溶離液とし、1ml/minの流速で酢酸、ギ酸を溶出させた。検出にはUV−Vis検出器を用いた。酢酸、ギ酸を標品として検量線を作成し、試料中の含有量を求めた。
[製造例2]
加熱処理装置COで160℃で加熱処理した以外は全て製造例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
[製造例3]
加熱処理装置COで180℃で加熱処理した以外は全て製造例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
[製造例4]
加熱処理装置COで200℃で加熱処理した以外は全て製造例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
[製造例5]
加熱処理装置COで250℃で加熱処理した以外は全て製造例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
Figure 0006206017
製造例1〜4では、製造例5と比較して培養槽REの排出口から排出される培養液に含まれる酢酸濃度が高かった。以上の結果から、培養槽の供給口から供給される液体分に含まれるフルフラール濃度が低いほど酢酸の生産量が高いという傾向が見られた。
製造例6
図2に示す方法で試験を実施した。製造例5と同様の方法でチップ状のユーカリ・グロブラスの林地残材(樹皮70%、枝葉30%)を破砕後、加熱処理装置COで加熱処理し、加熱処理後の原料懸濁液を固液分離装置Sで固液分離し固形分と液体分に分離した。固液分離装置Sで分離した液体分に硫酸を添加しpHを4.0に調整後、液体分(200質量部/時)を液体分移送ライン5から連続的に反応槽BRへ移送し、反応槽BRの処理液排出ライン6から連続的に処理液を排出した。反応槽BRで170℃で連続的に加熱処理を行なった。
反応槽BRの蒸気相移送ライン7から蒸気相を取り出し、蒸留装置EVへ移送し、フルフラール類濃縮液回収ライン9よりフルフラール含有水溶液を回収した。
一方、処理液排出ライン6から処理液を連続的に取り出し冷却し、培養槽REへ移送した。培養槽REでは、製造例5と同様の方法でClostridium thermocellum(ATCC27405)、及びClostridium thermoaceticum(ATCC35608)を培養した。培養槽REの供給口へ供給される液体分、及び培養槽REの排出口から排出される培養液に含まれるフルフラール類、酢酸、ギ酸の含有量を製造例5と同様の方法で測定した。結果を表2に示す。
製造例7
図2に示す方法で試験を実施した。製造例6と同様の方法で試験を実施した。但し、反応槽BRから排出された処理液(容量)の20%をライン8を経由して反応槽BRの供給口へ戻し連続的に循環させた。それ以外の操作は全て製造例6と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
Figure 0006206017
培養槽REで酢酸生産を行う前に反応槽BRで固液分離装置で分離された液体分に含まれるフルフラールを除去した場合(製造例6)は、フルフラールを除去しない場合(製造例5)と比較して、酢酸生産量が高かった。また、反応槽BRから排出された処理液の20容量%をライン8を経由して反応槽BRの供給口へ連続的に戻した場合(製造例7)は、反応槽BRから排出された処理液を反応槽BRの供給口へ戻さない場合(製造例6)と比較して、酢酸の生産量が向上した。製造例7では、処理液からフルフラール類が効率的に除去されたためであると考えられる。
本発明によりバイオマス原料から効率的に酢酸を製造することが可能となる。また、酢酸の製造と同時に副産物としてフルフラールを回収することができる。

Claims (4)

  1. バイオマス原料に化学的処理を施し、アルカリ処理が施されたバイオマス原料を含む懸濁液を固液分離して固形分と液体分に分離し、固液分離により得られた液体分を反応槽中で加熱処理し、加熱処理した処理液からフルフラール類含有蒸気相を分離して取り出し、フルフラールを分離した後の液体分を培養槽に移送し、前記培養槽内の液体分中でクロストリジウム(Clostridium)属の微生物を培養して酢酸を製造し、前記反応槽の排出口から排出された処理液の少なくとも一部を前記反応槽の供給口に循環させる、工程を含む、バイオマス原料からの酢酸の製造方法。
  2. クロストリジウム(Clostridium)属の微生物を培養する前の液体分に含まれるフルフラール類の濃度が0.5質量%以下である、請求項1に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
  3. バイオマス原料の化学的処理の前に機械的処理を行う、請求項1又は2に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
  4. 液体分中でクロストリジウム(Clostridium)属の微生物を培養することにより得られる培養液中の酢酸濃度が、0.5質量%以上である、請求項1からの何れか1項に記載のバイオマス原料からの酢酸の製造方法。
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