JP2012017325A - フルフラールの製造方法およびその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造する方法を提供する。
【解決手段】
セルロース含有バイオマスを原料としてフルフラールを製造する方法であって、
(1)セルロース含有バイオマスを加水分解し、加水分解物を少なくとも精密濾過膜に通じて濾過してフルフラール粗精製液を製造する工程、
(2)フルフラール粗精製液をナノ濾過膜に通じて濾過し、透過側からフルフラール精製液を回収する工程、および
(3)フルフラール精製液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過側からフルフラール濃縮液を回収する工程、
を含む、フルフラールの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造する方法に関する。
コーンストーバー、麦わら、竹などのセルロース含有バイオマスは、キシラン成分を含み、その加水水解物であるキシロースの脱水反応によりフルフラールが生成する。セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造する方法として、硫酸を使用する方法(特許文献1および非特許文献1)や、水熱処理による方法(特許文献2)が開示されている。しかし、従来の方法では、セルロース含有バイオマスから得られるフルフラールは含水物であるため、その蒸留、脱水あるいは分留に多大なエネルギーを投入する必要があった。また、セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造する場合には、キシロース等の糖が不純物として生成されることが避けられないが、フルフラールはアルデヒド基を有し、不安定な化合物であるため、加熱するとフルフラール重合物あるいは糖複合体を形成し、その収率が低下するという課題があった。
また、セルロース含有バイオマスから糖液を製造する工程で、糖の不純物としてフルフラール等の発酵阻害物質が生成すること、ナノ濾過膜によって糖とフルフラールを分離できることが開示されている(特許文献3)。しかし、ナノ濾過膜ではフルフラールを濃縮することができないため、フルフラールを高収率で製造するという観点での課題は解決されていなかった。
特開平6−298763号公報 特開2005−248037号公報 WO2009/110374
Zeitsh, K.J. "The chemistry and technology and its many by-products"sugar series, 13, Elesevier 2000 (first edition)
本発明は、セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造するにあたり、不純物として生成される糖、酢酸および無機イオンなどを効率よく分離し、かつフルフラールを濃縮する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、精密濾過膜、ナノ濾過膜および逆浸透膜を併用することにより課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]から構成される。
[1]セルロース含有バイオマスを原料としてフルフラールを製造する方法であって、
(1)セルロース含有バイオマスを加水分解し、加水分解物を少なくとも精密濾過膜に通じて濾過してフルフラール粗精製液を製造する工程、
(2)フルフラール粗精製液をナノ濾過膜に通じて濾過し、透過側からフルフラール精製液を回収する工程、および
(3)フルフラール精製液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過側からフルフラール濃縮液を回収する工程、
を含む、フルフラールの製造方法。
[2]前記工程(2)のフルフラール粗精製液をpH4〜8に調整することを特徴とする、[1]に記載のフルフラールの製造方法。
[3]前記工程(3)のフルフラール精製液をpH2〜5に調整することを特徴とする、[1]または[2]に記載のフルフラールの製造方法。
[4]前記工程(3)の逆浸透膜がポリアミド系逆浸透膜であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
[5]前記工程(3)のフルフラール精製液を50℃未満に調整することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
[6]前記工程(3)のフルフラール濃縮液から有機溶媒による抽出および/または蒸留によりフルフラールを回収する工程を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
[7]セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造するための装置であって、セルロース含有バイオマスの加水分解装置およびこれと連結した固液分離装置、固液分離によって得られる溶液を回収する精密濾過膜原水槽およびこれと連結した精密濾過膜、精密濾過膜による濾過で得られたフルフラール粗精製液を回収する精密濾過膜濾液槽およびこれと連結したナノ濾過膜、フルフラール精製液を回収するナノ濾過膜濾液槽、ナノ濾過膜非透過液槽およびこれと連結した逆浸透膜、フルフラール濃縮液を回収する逆浸透膜非透過液槽、ならびに逆浸透膜透過液槽、を構成として含む装置。
本発明により、セルロース含有バイオマスから低消費エネルギーかつ高収率でフルフラールを製造することができる。
図1は、本発明のフルフラールの製造方法における製造フロー概略である。 図2は、本発明のフルフラールの製造方法に使用する装置概略である。
本発明は、前述のセルロース含有バイオマスを図1に示すフローにしたがって処理することによりフルフラールを製造することを特徴とする。本発明で使用するセルロース含有バイオマスは、フルフラールの原料となるキシラン成分を含んでいれば特に限定されないが、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、ビートパルプ、綿実殻、パーム空果房、稲わら、麦わら、竹、笹、などの草本系バイオマス、あるいはシラカバ、ブナなどの樹木、廃建材などを使用することができる。
以下、本発明のフルフラールの製造方法に関して、工程順に説明する。
工程(1):セルロース含有バイオマスを加水分解し、加水分解物を少なくとも精密濾過膜に通じて濾過してフルフラール粗精製液を製造する工程。
フルフラールは、主にセルロース含有バイオマスの成分であるキシランに由来しており、キシランが加水分解によってキシロースに分解され、キシロースが、加水分解過程、あるいはさらに追加的な処理によって分子内脱水され、フルフラールに変換される。
工程(1)の加水分解としては、酸処理、水熱処理、蒸気爆砕などが例示される。酸処理としては、硫酸、塩酸、硝酸などの酸、好ましくは硫酸を使用し、加熱することでフルフラールを含む水溶液を製造することができ、具体的には、酸濃度が0.1〜60重量%の酸をセルロース含有バイオマスに添加し、10〜250℃の範囲になるよう加熱すればよい。また、水熱処理は、前述の酸を添加せず、水のみを添加し、100〜300℃の温度範囲で、1分〜数時間加熱処理を行えばよい。また、蒸気爆砕とは、水熱処理に類似しているが、100〜300℃のスチームによる加圧条件下にてセルロース含有バイオマスを処理し、その後圧力開放することで、セルロース含有バイオマスの繊維構造を破壊する方法である。こうした酸処理、水熱処理、爆砕処理に関しては、他の文献に多く記載されており公知の方法が使用できる。なお、セルロース含有バイオマスの加水分解として、前記処理液にさらにセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどの酵素を添加し、単糖の生成を促す操作を行うことによって、後述の工程(2)のナノ濾過膜に通じて濾過する操作において、こうした単糖成分を非透過液として分離回収できるため、フルフラールだけでなく、単糖を効率的に得ることができる。
前記加水分解物には未分解のセルロース含有バイオマス由来の固形物が含まれているため、後述の工程(2)に供する前にこれらの固形物を除去する必要がある。こうした固形物は、少なくとも精密濾過膜に通じて濾過することによって除去することができる。使用する精密濾過膜は特に限定されないが、平均細孔径0.01〜10μmの精密濾過膜を好ましく使用することができる。精密濾過膜の材質は、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミック、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))などが例示できるが特に限定されるものではないが、工程(1)で使用される精密濾過膜の素材は、上述素材のうち、対汚性、薬品耐性、強度、濾過性といった観点において、ポリフッ化ビニリデン製の精密濾過膜であることが好ましい。精密濾過膜による精密濾過の方法としては、圧濾過、真空濾過、クロスフロー濾過、遠心濾過などがあるが、膜の目詰まりが少ないクロスフロー濾過であることが好ましい。また濾過操作として、定圧濾過、定流量濾過、非定圧非定流量濾過に大別されるが特に限定されない。
前述の通り、加水分解物から固形物を除去する際は少なくとも精密濾過膜で固形物を除去すればよいが、場合によっては、他の固液分離手法を組み合わせてもよく、限定されるものではない。他の固液分離の手法の具体例としては、プレス濾過、遠心分離が挙げられる。また、精密濾過膜に通じて得られた濾液を、さらに限外濾過膜に通じて濾過し、タンパク質成分あるいは高分子成分を除去する操作を加えてもよい。こうすることで、後述の工程(2)で使用するナノ濾過膜の膜寿命を延ばすことができる。
工程(1)により得られるフルフラール粗精製液には、少なくともフルフラールを含んでいればよく、その濃度、純度、不純物組成、等は限定されるものでないが、セルロース含有バイオマスの加水分解によって、フルフラールの他に、グルコースやキシロース等の糖や、酢酸やギ酸などの有機酸が不純物として含まれうる。また、セルロース含有バイオマスに由来する無機イオンも不純物として含まれうる。
工程(2):フルフラール粗精製液をナノ濾過膜に通じて濾過し、透過側からフルフラール精製液を回収する工程。
工程(2)は、フルフラール粗精製液から不純物である糖、有機酸、無機イオンなどを分離してフルフラール精製液を製造することを目的としている。「ナノ濾過膜に通じて濾過する」とは、フルフラール粗精製液を、ナノ濾過膜に通じて濾過することであり、本操作により、溶解している糖、特にグルコース、キシロース、オリゴ糖を非透過側に阻止または濾別し、一方で純度が高められたフルフラール精製液を透過側から回収することができる。なお、非透過側に単離されるグルコースおよびキシロース溶液は、フルフラールなどの発酵阻害物質を含まず、また糖濃度が高められているため、微生物発酵の糖原料として使用することもできる。
また、フルフラール粗精製液に不純物として酢酸、ギ酸などの有機酸を含む場合、「ナノ濾過膜に通じて濾過する」ことにより、非透過液として有機酸を効率よく分離することができる。フルフラールは、酸性条件下において重合し、ポリマー化する性質を有するため、セルロース含有バイオマスの加水分解物に有機酸が含まれる場合、フルフラールの濃縮および精製単離過程でフルフラールと有機酸が共存することによって回収されるフルフラールの収率を低減させ、また膜ファウリングなど操作性を低減させる要因になることが本発明者によって見出されているため、本発明では「ナノ濾過膜に通じて濾過する」ことによって有機酸を分離除去することが求められる。
また、不純物である有機酸として酢酸およびギ酸が含まれる場合のナノ濾過膜による分離条件としては、フルフラール粗精製液のpHを5〜8の範囲に調整することが好ましい。酢酸のpKaは4.8(25℃、無限希釈)であり、また、酢酸濃度が増加すると、pKaは下がる傾向にある。例えば、フルフラール粗精製液のpHが4.8の場合、解離状態の酢酸イオン(CHCOO)は概ね50%、pH5の場合は62%、pH5.8の場合は94%、pH6.5の場合は98%、pH8の場合は99.9%となる。ギ酸のpKaは3.77(25℃、無限希釈)であり、酢酸よりも低いpKaを有するため、同じpH条件下では、酢酸の方がよりイオン化した状態で存在し、例えば、フルフラール粗精製液のpH4の場合は解離状態のギ酸イオン(CHOO)が62%、pH5の場合は94%、pH5.8の場合は99%となる。すなわち、pH5〜8の範囲に調整することによって、フルフラール粗精製液の酢酸およびギ酸を、酢酸イオンおよびギ酸イオンの状態にすることができ、これによってナノ濾過膜の非透過液として、酢酸を除去することができる。その一方で、フルフラール粗精製液のpHが8を超えると、糖の透過率が増大する、すなわち、ナノ濾過膜の透過液として、フルフラールに加えキシロース、グルコースなどの単糖の濃度が高くなる場合がある。
工程(2)で使用するナノ濾過膜とは、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。本発明で使用されるナノ濾過膜の素材には、酢酸セルロース含有ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。複合膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載の、ポリスルホンを膜素材とする支持膜にポリアミドの機能層からなるナノフィルターを構成させた複合膜を用いることができる。こうしたナノ濾過膜の性能を評価する方法として、フルフラールおよび糖の透過率(%)を算出することで評価できる。透過率(%)の算出方法を式1に示す。
透過率(%)=(透過側のフルフラールまたは糖濃度/非透過液のフルフラールまたは単糖濃度)×100・・・(式1)。
式1におけるフルフラールまたは単糖濃度は、高い精度と再現性を持って測定可能な分析手法であれば限定されないが、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどが好ましく使用できる。本発明で使用するナノ濾過膜は、低い単糖の透過率であることが好ましく、その一方で高いフルフラールの透過率を示すナノ濾過膜であることが好ましい。
ナノ濾過膜の中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有するポリアミドを機能層としたポリアミド系ナノ濾過膜が好ましい。特にフルフラール粗精製液に酢酸、ギ酸などの有機酸が不純物として含まれてしまう場合、ポリアミド系ナノ濾過膜を使用することによって、有機酸を効率よく除去することができる。また、操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適しており、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの機能層を支持体に有してなるナノ濾過膜がより適している。
ポリアミド系ナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物がより好ましい。
前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレンビスジアニリン、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、ジアニシジン、3,3’,4−トリアミノビフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルエーテル、3,3’−ジオキシベンジジン、1,8−ナフタレンジアミン、m(p)−モノメチルフェニレンジアミン、3,3’−モノメチルアミノ−4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、N,N’−(4−アミノベンゾイル)−p(m)−フェニレンジアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ベンゾチアゾール等の芳香環を有する一級ジアミン、ピペラジン、ピペリジンまたはこれらの誘導体等の二級ジアミンが挙げられ、中でもピペラジンまたはピペリジンを単量体として含む架橋ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜は耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることから好ましく用いられ、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするナノ濾過膜がより好ましく用いられる。架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜の具体例としては、東レ株式会社製の架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜のUTC60が挙げられる。
ナノ濾過膜は一般にスパイラル型の膜モジュールとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜モジュールとして好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜モジュールの具体例としては、例えば、酢酸セルロース含有のナノ濾過膜であるGE Osmonics社製ナノ濾過膜のGEsepa、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200、NF−270またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−620またはSU−610が挙げられ、より好ましくはポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−620またはSU−610であり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−620またはSU−610である。
工程(2)におけるナノ濾過膜による濾過は、圧力をかけてもよく、その濾過圧は、0.1〜8MPaの範囲であることが好ましい。濾過圧が0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。また、濾過圧が0.5〜7MPaの範囲であれば、膜透過流束が高いことから、糖溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、1〜6MPaの範囲であることが特に好ましい。
工程(3):フルフラール精製液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過側からフルフラール濃縮液を回収する工程。
工程(3)における「逆浸透膜に通じて濾過する」とは、工程(2)のナノ濾過膜の透過液として得られたフルフラール精製液を、逆浸透膜に通じて濾過することであり、本操作により、フルフラールを非透過側に阻止または濾別することで、フルフラール濃縮液を得ることを言う。逆浸透膜とはRO膜とも呼ばれるものであり、「1価のイオンを含めて脱塩機能を有する膜」と一般的に定義される膜であり、数オングストロームから数ナノメートル程度の超微小空隙を有していると考えられる膜で、主として海水淡水化や超純水製造などイオン成分除去に用いられる。工程(3)で得られるフルフラール濃縮液に含まれるフルフラール濃度は特に限定されないが、好ましくは1〜100g/Lの範囲で設定され、より好ましくは、10〜30g/Lの範囲である。30g/Lを超えても濃縮することは可能であるが、フルフラールの逆浸透膜の非透過液としての損失が増大すること、また濃縮されたフルフラールによる溶媒作用によって、ナノ濾過膜の機能層破れるということが課題として生じる。また、10g/L以下であると、フルフラール濃縮液からフルフラールを抽出あるいは蒸留する場合のエネルギーを多大に要するという課題がある。
工程(3)で使用する逆浸透膜の性能を評価する方法として、フルフラールおよび単糖の透過率(%)を算出することで評価できる。透過率(%)の算出方法を式2に示す。
透過率(%)=(透過側のフルフラール濃度/非透過液のフルフラール濃度)×100・・・(式2)。
式2における対象化合物濃度は、高い精度と再現性を持って測定可能な分析手法であれば限定されないが、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどが好ましく使用できる。
工程(3)における逆浸透膜の濾過条件としては、フルフラール精製液のpHを2〜5の範囲に調整して濾過することが好ましい。フルフラール精製液のpHを2〜5の範囲に調整して濾過処理することで、フルフラールの逆浸透膜透過率が低下し、フルフラールの収率(濃縮効率)を高めることができる。なお、pH、逆浸透膜、フルフラール回収率との相関関係は明確ではない。
本発明で好ましく使用される逆浸透膜の素材としては、酢酸セルロール系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう)またはポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族および/または芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。本発明で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、ポリアミド系逆浸透膜として、SUL−G10、SUL−G20、SU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720P、UTC80、SU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA(以上、東レ株式会社製)、NTR−759HR(以上、日東電工株式会社製)、GE Sepa-AD、Sepa-AG、Sepa-AK(以上、GE Osmonics社製)、BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040(以上、Filmtec社)、ACM−1、ACM−2、ACM−4(以上、TRISEP社)、TFC−HR、TFC−ULP(以上、KOCH社)、Desal-3B、Desal-3VLP、Desal-11(以上、DESAL社)、HS−5330(以上、東洋紡株式会社製)を例示することができる。一方、酢酸セルロース系逆浸透膜としては、SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200(以上、東レ株式会社製)、GE Sepa-SE、Sepa-SG(以上、GE Osmonics社)、HA−5330、HKC-3035v(以上、東洋紡株式会社製)を例示することができる。なお、前述した逆浸透膜のうち、ポリアミド系の逆浸透膜が、フルフラールの回収率という観点で好ましく使用できる。
工程(3)におけるフルフラール精製液の温度は、50℃未満に調整して、逆浸透膜に通じて濾過することが好ましい。フルフラール精製液の温度が50℃以上であると、RO膜の非透過側に濃縮されるフルフラール濃度が低下し、収率が低下する。但し、温度、逆浸透膜、フルフラール回収率との相関関係は明確ではない。いずれにせよ、逆浸透膜濾過時におけるフルフラールの回収率を高めるためには、フルフラール水溶液の温度を50℃未満、好ましくは40℃以下、さらに好ましくは35℃以下に調整して濾過処理することが好ましい。フルフラール水溶液の温度下限は、水溶液が固化しない温度であれば下限は限定されないが、必要以上に冷却すると冷却コストが増大するため、10℃以上で任意に設定することが好ましい。
なお、工程(3)で非透過液としてフルフラール濃縮液を得る場合、透過液としては精製水が得られるが、得られた精製水の用途は特に限定されず、工場用水、洗浄水、冷却水、飲料水として使用することができる。
前述した(1)〜(3)の工程を経て製造されたフルフラール濃縮液は、適宜希釈することで抗かび剤、抗菌剤、農薬、殺虫剤などの用途として使用することができる。例えば、フルフラール濃縮液を抗かび剤として使用する場合、一般的に0.5%程度のフルフラール水溶液まで希釈すればよい。また、フルフラール濃縮液を農薬として、例えば麦黒穂病に使用する場合、0.05%程度のフルフラール水溶液まで希釈することで十分な効果を得ることができる。
また、フルフラール濃縮液をさらに濃縮・精製することによってフルフラールを回収することによって、前述の用途に使用してもよい。フルフラール濃縮液からフルフラールを回収する手法としては、フルフラール濃縮液からの有機溶媒による抽出、あるいは蒸留、あるいはこれら二つの操作を組み合わせることで達成することができるが、有機溶媒による抽出を行った後、蒸留することによって好ましく回収される。
フルフラールの抽出に使用する有機溶媒としては、酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルムなどを使用できるが、酢酸エチルであることが好ましい。また、有機溶媒による抽出において、有機溶媒の使用量は少ない程好ましいが、抽出効率等を考えると、フルフラール濃縮液に対して0.1倍量〜1倍量の範囲で設定することが好ましい。
フルフラールの蒸留の条件としては、フルフラール濃縮液中の水あるいは有機溶媒とフルフラールを分離できる条件であれば限定されず、減圧条件下でもよい。なお、分離された水画分はストリッピングを行うことによって、有機溶媒と水に分離でき、これらは再利用することができる。
本発明を実施するための装置概略を図2に示す。図2を用いて、本発明を実施する装置に関して説明する。1はセルロース含有バイオマスの加水分解装置である。加水分解装置としては、熱水処理、粉砕処理、爆砕処理、酸処理、酵素処理などを行えるものであればよい。また、加水分解装置は、複数装置の組み合わせから構成されるものでもよい。2は、固液分離装置である。固液分離装置では、加水分解物に含まれる固形物を除去する装置であり、フィルタープレス、スクリューデカンタ、デラバル遠心、沈降装置、スクリュープレス、ドラムフィルター、ベルトフィルターなどを例示できる。3は、精密濾過膜原水槽を示す。精密濾過膜原水槽は、pH調整可能なセンサー、酸・アルカリタンクをさらに連結してあってもよい。4は、精密濾過膜ポンプである。5は、精密濾過膜である。6は、精密濾過膜濾液槽であり、フルフラール粗精製液が回収される。7は、ナノ濾過膜ポンプであり、5MPa程度まで圧力可能なポンプが好ましい。8はナノ濾過膜またはナノ濾過膜モジュールである。図2のようにナノ濾過膜モジュールをツリー状に配してもよい。9は、ナノ濾過膜濾液槽であり、ナノ濾過膜の透過液であるフルフラール精製液が貯蔵される。10は温調装置であり、フルフラール精製液の温度を調整することができる。11は、ナノ濾過膜非透過液槽であり、糖、酢酸など非透過成分を回収することができる。12は逆浸透膜ポンプであり、13は逆浸透膜、または逆浸透膜モジュールである。14は、フルフラール濃縮液を回収する逆浸透膜非透過液槽である。15は、逆浸透膜透過液槽である。
以下、本発明のフルフラールの製造方法に関し、さらに詳細に説明するために実施例を挙げて説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されない。
(参考例1)単糖濃度の分析方法
単糖濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:ミリQ:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/min)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
(参考例2)フルフラールの分析方法
フルフラールは下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Synergi HidroRP 4.6mm×250mm(Phenomenex製)
移動相:アセトニトリル−0.1% HPO(流速1.0mL/min)
検出方法:UV(283nm)
温度:40℃。
(実施例1)フルフラールの製造例1(工程(1))
セルロース含有バイオマスとして稲わらを使用した。硫酸1%水溶液に稲わらを浸し、160℃で30分オートクレーブ処理した。得られた水解物に水酸化カルシウムを徐々に添加し、pH4となるまで中和した。これを加水分解物1として使用した。また、稲わらを水に浸し、撹拌しながら200℃で20分間オートクレーブ処理した。得られた水解物を水酸化ナトリウム水溶液で、pH4に調整し、これを加水分解物2として使用した。これら加水分解物1および加水分解物2について、固形物を沈降分離させ、その上澄みを採取した。採取した上澄みを、平均細孔径0.45μmのポリフッ化ビニルデン製精密濾過膜(ミリポア社製、“デゥラポア”)で濾過し、フルフラール粗精製液1(加水分解物1由来)および2(加水分解物2由来)をそれぞれ6L得た。フルフラール粗精製液に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で定量した結果を表1および2に示す。
(実施例2)フルフラールの製造例1(工程(2))
実施例1で得られた糖およびフルフラール粗精製液1および2(各6L)をナノ濾過膜に通じて濾過した。ナノ濾過膜は、架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜“UTC60”(東レ株式会社製)を使用し、小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を3MPaで濾過処理を行い、フルフラール精製液1および2(各5L)を得た。また一方で、糖が分離濃縮された非透過液1および2(各1L)を得た。実施例2で得たフルフラール精製液1および2、非透過液(糖濃縮液)1および2に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で定量した結果は表1および2に示す通りであり、フルフラール精製液中1および2には、グルコースおよびキシロースはほとんど含まれておらず、ナノ濾過膜に通じて濾過することでフルフラールの精製純度が向上することが確認できた。
(実施例3)フルフラールの製造例1(工程(3))
実施例2で得られたフルフラール精製液1および2(各5L、pH4)を逆浸透膜に通じて濾過した。逆浸透膜は、架橋全芳香族ポリアミド系逆浸透膜“UTC80”(東レ株式会社製)を使用し、それぞれ小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を5MPaで濾過処理を行い、フルフラール濃縮液1および2(各0.5L)、透過液1および2(各4.5L)を得た。実施例3で得たフルフラール濃縮液1および2、透過液1および2に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で定量した結果は表1および2に示す通りであり、フルフラール濃縮液1および2では、フルフラールが濃縮されることが確認できた。一方で、透過液としては、フルフラールをほとんど含まない精製水を製造できた。
Figure 2012017325
Figure 2012017325
(比較例1)工程(1)で精密濾過膜による濾過を実施しない場合
実施例1の手順で加水分解物1を調整し、その後、固形物を沈降分離させ、その上澄みを採取した。採取した上澄み(6L)を実施例2と同じ手順でナノ濾過膜に通じて濾過したが、約0.5L程度濾過を行った時点でナノ濾過膜のファウリングがおきたため、工程(2)のナノ濾過膜処理を実施することができなかった。
(実施例4)工程(3)におけるフルフラール精製液pHの影響
実施例2で得られたフルフラール精製液1および2(各5L)のpHがそれぞれ、pH1、pH2、pH3、pH4、pH5、pH7になるよう、希硫酸または水酸化ナトリウムで調整した後、逆浸透膜に通じて濾過を行った。濾過は実施例3同様の手順で実施した。その結果、pH7以上、またはpH1以下ではフルフラール(濃度、量)の損失が増えることが判明した。
Figure 2012017325
Figure 2012017325
(実施例5)工程(3)における逆浸透膜の素材の影響
実施例2で得られたフルフラール精製液1(5L、pH4)を、架橋全芳香族系ポリアミド系逆浸透膜“UTC80”(逆浸透膜1;実施例3と同じ)、ポリアミド系逆浸透膜“DESAL−3B”(逆浸透膜2;DESAL社製)、酢酸セルロース系逆浸透膜“GE SEPA CE”(逆浸透膜3;GE Osmonics社製)に通じて濾過処理した。濾過は実施例3と同様の手順で実施した。フルフラール濃縮液のグルコース、キシロース、フルフラールの濃度は表5に示す通りであり、架橋全芳香族ポリアミド系またはポリアミド系逆浸透膜が、酢酸セルロース系逆浸透膜に比べ、フルフラールの濃縮性に優れるという結果を得た。
Figure 2012017325
(実施例6)工程(3)におけるフルフラール精製液温度の影響
フルフラール精製液として実施例2で得たフルフラール精製液1(5L、pH4)、逆浸透膜として架橋全芳香族ポリアミド系逆浸透膜“UTC80”(東レ株式会社製)を使用し、原水温度を10℃、25℃、35℃、50℃に調整したフルフラール精製液1を、実施例3と同様の手順で濾過処理した。得られたフルフラール濃縮液1(4.5L)に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で定量した結果を表6に示す通りであり、フルフラール濃縮液に含まれるフルフラール濃度は、10℃〜35℃では大きな差がないものの、50℃以上ではフルフラールの損失が大きくなることが判明した。
Figure 2012017325
(参考例3)酢酸、ギ酸の分析
酢酸、ギ酸は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。なお各分析サンプルは、3500Gで10分間遠心分離を行い、その上清成分を下記分析に供した。
カラム:Shim−PackとShim−Pack SCR101H(株式会社島津製作所製)の直列
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
(参考例4)無機イオン濃度の測定
カチオンおよびアニオン濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
1)カチオン分析
カラム:Ion Pac AS22(DIONEX社製)
移動相:4.5mM NaCO/1.4mM NaHCO(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
2)アニオン分析
カラム:Ion Pac CS12A(DIONEX社製)
移動相:20mMメタンスルホン酸(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
(実施例7)フルフラール製造例2(工程(1))
セルロース含有バイオマスとして稲わらを使用した。稲わらを固形物濃度10重量%で水を添加し、これを215℃で5分オートクレーブ処理した。固形物を沈降分離させ、その上澄みを採取した。採取した上澄みを、pH5.0に希水酸化ナトリウムにて調整し、平均細孔径0.45μmのポリフッ化ビニルデン製精密濾過膜(ミリポア社製、“デゥラポア”)で濾過し、フルフラール粗精製液3を6L得た。フルフラール粗精製液に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で、また同水溶液に含まれる酢酸・ギ酸の濃度を参考例3記載の方法で、また同水溶液に含まれる無機イオンに関して参考例4記載の方法で、それぞれ定量した結果を表7に示す。
(実施例8)フルフラール製造例2(工程(2))
実施例7で得られたフルフラール粗精製液3(6L、pH5)を実施例2に準じて、ナノ濾過膜に通じて濾過した。濾過により透過液としてフルフラール精製液3(5L)を得た。また一方で、糖、酢酸、ギ酸、2価の無機イオンなどが分離濃縮された非透過液3(1L)を得た。この操作で得たフルフラール精製液3、非透過液3(糖濃縮液)含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で、また同水溶液に含まれる酢酸・ギ酸の濃度を参考例3記載の方法で、また同水溶液に含まれる無機イオンに関して参考例4記載の方法で、それぞれ定量した結果を表7に示す。フルフラール精製液3には、グルコースおよびキシロース、酢酸、ギ酸、無機イオンはほとんど含まれておらず、ナノ濾過膜に通じて濾過することでフルフラールの精製純度が向上することが確認できた。
Figure 2012017325
(実施例9)フルフラール製造例2(工程(3))
実施例8で得られたフルフラール精製液3(5L、pH5)を逆浸透膜に通じて濾過した。逆浸透膜による濾過は、実施例3に準じて実施した。その結果、フルフラール濃縮液3(0.5L)、透過液3(4.5L)を得た。実施例9で得たフルフラール濃縮液3および透過液3に含まれる各成分を参考例1〜4記載の方法で定量した結果を表8に示す。フルフラール濃縮液3では、フルフラールが濃縮されることが確認できた。一方で、透過液としては、フルフラールをほとんど含まない精製水を製造できた。
Figure 2012017325
(実施例10)フルフラール濃縮液からの有機溶媒による抽出および蒸留
フルフラール濃縮液から有機溶媒による抽出を行った。有機溶媒としては、酢酸エチルを使用した。実施例9で得られたフルフラール濃縮液3(0.5L)に対して、酢酸エチルを0.16L添加して、分液ロート内で混合した。その後、酢酸エチル層0.15Lを回収して、フルフラール抽出物を得た。参考例1〜4の手法にて、各成分を分析した結果を表9に示す。また、フルフラール抽出物について、さらにエバポレーターを使用して蒸留(100℃)することにより酢酸エチル留去したところ、フルフラール約8mLを回収することができた。
Figure 2012017325
(比較例2)工程(2)においてナノ濾過膜処理を実施しない場合
実施例8で得られたフルフラール粗精製液3(6L)を、工程(2)のナノ濾過膜に通じる処理を行わずに、工程(3)の逆浸透膜に通じて濾過した。逆浸透膜は、架橋全芳香族ポリアミド系逆浸透膜“UTC80”(東レ株式会社製)を使用し、それぞれ小型平膜濾過装置(GE製 “Sepa”(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を5MPaで濾過処理を行い、フルフラール濃縮液4(0.6L)、透過液4(5.4L)を得た。この操作で得たフルフラール濃縮液4、透過液4含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で、また同水溶液に含まれる酢酸・ギ酸の濃度を参考例3記載の方法で、また同水溶液に含まれる無機イオンに関して参考例4記載の方法で、それぞれ定量した結果を表10に示す。透過液4には、グルコースおよびキシロース、酢酸、ギ酸、無機イオンはほとんど含まれておらず、逆浸透膜に通じて濾過することでフルフラール濃度を高めることはできるが精製度は向上しないことが確認できた。さらにフルフラール濃縮液4(0.5L)に対して、酢酸エチルを0.16L添加して、分液ロート内で混合後、酢酸エチル層0.15Lを回収して得られたフルフラール抽出物2に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で定量した結果についても表10に示す。なお、フルフラール抽出物2についてエバポレーターを使用して蒸留(100℃)することにより酢酸エチル留去しようとしたが、フルフラール重合物が生成することにより溶液粘度が高まってしまい、フルフラールを回収することができなかった。
Figure 2012017325
(実施例11)フルフラール製造例3(工程(2))
実施例7で得られたフルフラール粗精製液3(6L、pH5)をpH3に希硫酸を使用して調整した。これをフルフラール粗精製液4(6L、pH3)として、実施例2に準じて、ナノ濾過膜に通じて濾過した。濾過により透過液としてフルフラール精製液4(5L)を得た。また一方で、糖、酢酸、ギ酸、2価の無機イオンなどが分離濃縮された非透過液4(1L)を得た。この操作で得たフルフラール精製液4、非透過液4(糖濃縮液)含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で、また同水溶液に含まれる酢酸・ギ酸の濃度を参考例3記載の方法で、また同水溶液に含まれる無機イオンに関して参考例4記載の方法で、それぞれ定量した結果を表11に示す。フルフラール精製液4には、グルコースおよびキシロース、無機イオンはほとんど含まれていないものの、酢酸およびギ酸は含まれることが確認できた。これは、フルフラール粗精製液のpHが3であるため、酢酸、ギ酸が非解離の状態で存在し、ナノ濾過膜の透過液として回収されたものと考えられた。実施例8(表7)と比較して酢酸、およびギ酸濃度が高いことが分かった。
Figure 2012017325
(実施例12)フルフラール製造例3(工程(3))
実施例11で得られたフルフラール精製液4(5L)を逆浸透膜に通じて濾過した。逆浸透膜による濾過は、実施例3に準じて濾過処理を行い、フルフラール濃縮液5(0.6L)、透過液5(5.4L)を得た。この操作で得たフルフラール濃縮液5に含まれるグルコース、キシロース、フルフラールを参考例1または2記載の方法で、また同水溶液に含まれる酢酸・ギ酸の濃度を参考例3記載の方法で、また同水溶液に含まれる無機イオンに関して参考例4記載の方法で、それぞれ定量した結果を表12に示す。比較例2の工程(2)のナノ濾過膜を実施しない場合(表10)と比較するとグルコース、キシロースおよび無機イオン(アニオン)が除去できており、精製度が向上していることが確認できた。但し、pH5で工程(2)および工程(3)を実施した場合と比較すると、pH3では、逆浸透膜に通じて濾過することでフルフラール濃度を高めることはできるが、酢酸、ギ酸は不純物として除去できないことが確認できた。すなわち、pH3.0では、不純物として酢酸、ギ酸を含まない場合であれば、精製されたフルフラールの濃縮液を得ることができることが確認できた。
Figure 2012017325
1 加水分解装置
2 固液分離装置
3 精密濾過膜原水槽
4 精密濾過膜ポンプ
5 精密濾過膜
6 精密濾過膜濾液槽
7 ナノ濾過膜ポンプ
8 ナノ濾過膜(またはナノ濾過膜モジュール)
9 ナノ濾過膜濾液槽
10 温調装置
11 ナノ濾過膜非透過液槽
12 逆浸透膜ポンプ
13 逆浸透膜(または逆浸透膜モジュール)
14 逆浸透膜非透過液槽
15 逆浸透膜透過液槽

Claims (7)

  1. セルロース含有バイオマスを原料としてフルフラールを製造する方法であって、
    (1)セルロース含有バイオマスを加水分解し、加水分解物を少なくとも精密濾過膜に通じて濾過してフルフラール粗精製液を製造する工程、
    (2)フルフラール粗精製液をナノ濾過膜に通じて濾過し、透過側からフルフラール精製液を回収する工程、および
    (3)フルフラール精製液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過側からフルフラール濃縮液を回収する工程、
    を含む、フルフラールの製造方法。
  2. 前記工程(2)のフルフラール粗精製液をpH5〜8に調整することを特徴とする、請求項1に記載のフルフラールの製造方法。
  3. 前記工程(3)のフルフラール精製液をpH2〜5に調整することを特徴とする、請求項1または2に記載のフルフラールの製造方法。
  4. 前記工程(3)の逆浸透膜がポリアミド系逆浸透膜であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
  5. 前記工程(3)のフルフラール精製液を50℃未満に調整することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
  6. 前記工程(3)のフルフラール濃縮液から有機溶媒による抽出および/または蒸留によりフルフラールを回収する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
  7. セルロース含有バイオマスからフルフラールを製造するための装置であって、セルロース含有バイオマスの加水分解装置およびこれと連結した固液分離装置、固液分離によって得られる溶液を回収する精密濾過膜原水槽およびこれと連結した精密濾過膜、精密濾過膜による濾過で得られたフルフラール粗精製液を回収する精密濾過膜濾液槽およびこれと連結したナノ濾過膜、フルフラール精製液を回収するナノ濾過膜濾液槽、ナノ濾過膜非透過液槽およびこれと連結した逆浸透膜、フルフラール濃縮液を回収する逆浸透膜非透過液槽、ならびに逆浸透膜透過液槽、を構成として含む装置。
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