以下、実施の形態によるブレーキ装置を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、4個の車輪、例えば左,右の前輪2(FL,FR)と左,右の後輪3(RL、RR)とが設けられている。これらの各前輪2および各後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する回転部材(ディスク)としてのディスクロータ4が設けられている。即ち、各前輪2は、液圧式のディスクブレーキ5により各ディスクロータ4が挟持され、各後輪3は、後述する電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキ31により各ディスクロータ4が挟持される。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)毎に制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者(ドライバ)によって踏込み操作される。ブレーキペダル6には、ブレーキランプスイッチ(BLS)、ペダルスイッチ、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作センサ(ブレーキセンサ)6Aが設けられている。
ブレーキ操作センサ6Aは、車両の常用ブレーキ(サービスブレーキ)の操作を検出するもので、駐車状態の推定可能な検知手段となるものである。ブレーキ操作センサ6Aは、ブレーキペダル6の踏込み操作の有無ないしその操作量を検出し、その検出信号を後述の液圧供給装置用コントローラ13に出力する。また、ブレーキ操作センサ6Aの信号(情報)は、例えば、後述の車両データバス16、または、液圧供給装置用コントローラ13と後述の駐車ブレーキ制御装置25とを接続する信号線(図示せず)を介して伝送される(駐車ブレーキ制御装置25に出力される)。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達される。倍力装置7は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ8との間に設けられた負圧ブースタや電動ブースタ等からなり、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ8に伝える。このとき、マスタシリンダ8は、マスタリザーバ9から供給されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ9は、ブレーキ液が収容された作動液タンクを構成している。なお、ブレーキペダル6により液圧を発生する機構は、上記に限らず、ブレーキバイワイヤ方式の機構等、ブレーキペダル6の操作に応じて液圧を発生する機構としてもよい。
マスタシリンダ8に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して液圧供給装置11(以下、ESC11という)に送られる。このESC11は、マスタシリンダ8からの液圧をブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配、供給する。これにより、前述の如く車輪(各前輪2、各後輪3)毎に制動力が付与される。
ESC11は、各ディスクブレーキ5,31とマスタシリンダ8との間に配設されている。ESC11は、その作動を制御する液圧供給装置用コントローラ13(以下、コントロールユニット13という)を有している。コントロールユニット13は、ESC11の駆動制御をすることにより、ブレーキ側配管部12A〜12Dから各ディスクブレーキ5,31にブレーキ液を供給することで、各ディスクブレーキ5,31のブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、例えば倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロックブレーキ制御(ABS)、トラクション制御、横滑り防止を含む車両安定化制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
コントロールユニット13は、マイクロコンピュータ等により構成され、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。また、コントロールユニット13は、図1に示すように、車両データバス16等に接続されている。なお、ESC11の代わりに、公知技術であるABSユニットを用いてもよい。さらには、ESC11を設けずに(省略し)、マスタシリンダ8から直接ブレーキ側配管部12A〜12Dに接続する構成としてもよい。
車体1には、運転席(図示せず)の近傍に位置して車両のシステムをオン,オフする起動スイッチとしてのイグニッションスイッチ17が設けられている。イグニッションスイッチ17は、例えば、走行用のエンジンのみが搭載された(走行用の電動モータが搭載されていない)エンジン式の車両では、エンジンスイッチ、キースイッチとも呼ばれ、走行用のエンジンと走行用の電動モータとの両方が搭載されたハイブリッド式の車両や走行用の電動モータのみが搭載された(エンジンが搭載されていない)電動式の車両では、パワースイッチとも呼ばれるものである。
イグニッションスイッチ17は、運転者により操作され、車両の駆動装置(エンジン、走行用の電動モータ)を始動ないし駆動可能状態(レディー状態)にしたり、その他の機器の電源をオン,オフするものである。イグニッションスイッチ17は、駐車状態の推定可能な検知手段となるもので、イグニッションスイッチ17は、直接または図示しない制御装置等を介して車両データバス16に接続されている。これにより、イグニッションスイッチ17のオン(通電,起動),オフ(非通電,停止)の情報(信号)は、車両データバス16により伝送される。
車両データバス16は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCANを含んで構成され、車両に搭載された多数の電子機器、コントロールユニット13および後述の駐車ブレーキ制御装置25等との間で車載向けの多重通信を行うものである。この場合、車両データバス(CAN)16に送られる車両情報としては、イグニッションスイッチ17、ブレーキ操作センサ6Aからの信号の他、例えば、ベルトスイッチ18、ドアロックスイッチ19、ドア開スイッチ20、着座スイッチ21、速度センサ22、シフトセンサ23からの検出信号の情報が挙げられる。
また、車両情報としては、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、傾斜センサ、Gセンサ(加速度センサ)、ステレオカメラ、ミリ波レーダ等(いずれも図示せず)からの検出信号等の情報も挙げられる。なお、図1および図2では、ベルトスイッチ18、ドアロックスイッチ19、ドア開スイッチ20、着座スイッチ21、速度センサ22、シフトセンサ23を一まとめにして表しているが、これら各スイッチ18〜21ないし各センサ22,23は、例えば、それぞれ直接または図示しない制御装置等を介して車両データバス16に接続されるものである。
ここで、ベルトスイッチ(ベルトセンサ)18は、車両の運転者のシートベルトの装着,解除を検出するものである。ドアロックスイッチ(ドアロックセンサ)19は、車両のドアの施錠,解錠を検出するものである。ドア開スイッチ(ドア開センサ)20は、車両のドアの開,閉を検出するものである。着座スイッチ(着座センサ)21は、運転者の着席,離席を検出するものである。速度センサ22は、例えば車輪2,3の回転速度を検出する車輪速センサ、または、車両のトランスミッションの回転軸の回転速度を検出する車速センサにより構成され、車両の速度を検出するものである。シフトセンサ(セレクトセンサ、トランスミッションセンサ)23は、車両のトランスミッションの位置(シフトレバーの位置)を検出するものである。
これら各スイッチ18〜21ないしセンサ22,23は、それぞれ車両に配設され、イグニッションスイッチ17、ブレーキ操作センサ6A等と共に、車両の駐車状態を推定可能な検知手段を構成している。検知手段は、車両状況を表す各種の状態量に対応した信号(検知信号)を出力し、後述する駐車ブレーキ制御装置25は、検知手段の信号に基づいて、運転者に駐車の意図があるか否かを推定する。即ち、検知手段は、運転者に駐車の意図があるか否かの推定に用いる信号(各種の状態量の情報)を出力するものである。
車体1には、運転席(図示せず)の近傍に位置して操作指示手段としての駐車ブレーキスイッチ(パーキングスイッチ)24が設けられ、該駐車ブレーキスイッチ24は運転者によって操作される。駐車ブレーキスイッチ24は、運転者からの駐車ブレーキの作動要求(保持作動の要求、解除作動の要求)となる作動要求信号を、後述の駐車ブレーキ制御装置25へ伝達するものである。即ち、駐車ブレーキスイッチ24は、後述する電動モータ43Bの駆動(回転)に基づいてディスクブレーキ31のブレーキパッド33を保持作動または解除作動させるための作動要求信号を、駐車ブレーキ制御装置25に対して出力するものである。
駐車ブレーキスイッチ24が制動側(駐車ブレーキON側)に操作されたとき、即ち、運転者からの保持要求(駆動要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ24から保持作動の作動要求信号が出力される。この場合は、駐車ブレーキ制御装置25を介して後輪3側のディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3側のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力が付与された状態、即ち、保持状態(アプライ状態)となる。
なお、本明細書では、駐車ブレーキをかける(アプライする)こと、即ち、駐車ブレーキとしての制動力を付与することを、「保持」という言葉を用いて説明する。これは、電動モータ43Bの駆動により後述のブレーキパッド33に所定の押圧力(推力)を付与し、そのときのピストン39およびブレーキパッド33の位置を押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)により保持することから、この言葉を用いるものである。
一方、駐車ブレーキスイッチ24が制動解除側(駐車ブレーキOFF側)に操作されたとき、即ち、運転者からの解除要求があったときは、駐車ブレーキスイッチ24から解除作動の作動要求信号が出力される。この場合は、駐車ブレーキ制御装置25を介してディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側とは逆方向に回転させる電力が給電される。これにより、後輪3側のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、解除状態(リリース状態)となる。
なお、駐車ブレーキは、例えば車両が停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って4km/h未満の状態が所定時間継続したとき)や、エンジンが停止(エンスト)したとき、シフトレバー(セレクトレバー、セレクトスイッチ)をP(パーキング)に操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、駐車ブレーキ制御装置25での駐車ブレーキの保持判断ロジックによる自動的な保持要求(自動保持要求)に基づいて、自動的に制動力を付与(オートアプライ)する構成とすることができる。また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って5km/h以上の状態が所定時間継続したとき)や、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N(ニュートラル)以外に操作されたとき等、駐車ブレーキ制御装置25での駐車ブレーキの解除判断ロジックによる自動的な解除要求(自動解除要求)に基づいて、自動的に制動力を解除(オートリリース)する構成とすることができる。
駐車ブレーキ制御装置25は、後述する左,右一対のディスクブレーキ31と共に電動ブレーキシステム(ブレーキ装置)を構成するものである。図2に示すように、駐車ブレーキ制御装置25は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)26を有し、駐車ブレーキ制御装置25には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。
駐車ブレーキ制御装置25は、制御手段(コントローラ、コントロールユニット)を構成するもので、後述するディスクブレーキ31の電動モータ43Bを制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させるものである。即ち、駐車ブレーキ制御装置25は、電動モータ43Bを駆動することにより、ディスクブレーキ31を駐車ブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(保持・解除)させるものである。
ここで、駐車ブレーキ制御装置25は、車両の運転者が駐車ブレーキスイッチ24を操作したときに、該駐車ブレーキスイッチ24から出力される作動要求信号(保持作動信号、解除作動信号)に基づいて、後述の電動モータ43Bを駆動し、ディスクブレーキ31の保持(アプライ)または解除(リリース)を行う。また、駐車ブレーキ制御装置25は、駐車ブレーキスイッチ24からの作動要求信号の他、前述の駐車ブレーキの保持・解除の判断ロジックに基づいて、電動モータ43Bを駆動し、ディスクブレーキ31の保持または解除を行う。
このように、駐車ブレーキ制御装置25は、駐車ブレーキスイッチ24の作動要求信号や前述の駐車ブレーキの保持・解除の判断ロジックに基づく要求(作動要求)があったときに、その要求に応じたディスクブレーキ31の保持または解除を行うものである。このとき、ディスクブレーキ31では、電動モータ43Bの駆動に基づいて、押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39およびブレーキパッド33の保持または解除が行われる。
図1ないし図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置25は、入力側が駐車ブレーキスイッチ24等に接続され、出力側はディスクブレーキ31の電動モータ43B等に接続されている。より具体的に説明すると、図2に示すように、駐車ブレーキ制御装置25の演算回路(CPU)26には、後述する記憶部(メモリ)27に加えて、駐車ブレーキスイッチ24、車両データバス(CAN)16、後述する電圧センサ部28、モータ駆動回路29、電流センサ部30等が接続されている。車両データバス16からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、前述の各種車両情報を取得することができる。
なお、車両データバス16から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサ(例えば、操舵角センサ、アクセルセンサ、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ブレーキ操作センサ6A、速度センサ22、傾斜センサ、Gセンサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、ベルトスイッチ18、ドアロックスイッチ19、ドア開スイッチ20、着座スイッチ21、シフトセンサ23等)を駐車ブレーキ制御装置25(の演算回路26)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。
また、駐車ブレーキ制御装置25の演算回路26は、車両データバス16に接続された他の制御装置(例えばコントロールユニット13)から前述の判断ロジックに基づく駐車ブレーキの要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによる駐車ブレーキの保持・解除の判定を、駐車ブレーキ制御装置25に代えて、他の制御装置、例えばコントロールユニット13で行う構成とすることができる。即ち、コントロールユニット13に駐車ブレーキ制御装置25の制御内容を統合することが可能である。
駐車ブレーキ制御装置25は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなる記憶部(メモリ)27(図2参照)を有し、この記憶部27には、前述の駐車ブレーキの保持・解除の判断ロジックのプログラムに加え、後述の図4ないし図6に示す処理プログラム、即ち、温度異常フラグのON,OFFの処理に用いる処理プログラム(図4)、駐車ブレーキの保持の制御処理に用いる処理プログラム(図5)、駐車ブレーキの解除の制御処理に用いる処理プログラム(図6)等が格納されている。また、記憶部27には、温度異常フラグのON,OFFの判定値となる後述の所定温度(制限閾値、復帰閾値)、後述の図7および図8に示す判定マップ(運転者の駐車意図の有無を判定するための対応関係)等も格納されている。さらに、記憶部27には、温度異常フラグの状態(ONまたはOFF)が更新可能(書き換え可能)に記憶される。
なお、第1の実施の形態では、駐車ブレーキ制御装置25をESC11のコントロールユニット13と別体としたが、駐車ブレーキ制御装置25をコントロールユニット13と一体に構成してもよい。また、駐車ブレーキ制御装置25は、左,右で2つのディスクブレーキ31を制御するようにしているが、左,右のディスクブレーキ31毎に設けるようにしてもよく、この場合には、駐車ブレーキ制御装置25をディスクブレーキ31に一体的に設けることもできる。
図2に示すように、駐車ブレーキ制御装置25には、電源ライン15からの電圧を検出する電圧センサ部28、左,右の電動モータ43B,43Bをそれぞれ駆動する左,右のモータ駆動回路29,29、左,右の電動モータ43B,43Bのそれぞれのモータ電流を検出する左,右の電流センサ部30,30等が内蔵されている。これら電圧センサ部28、モータ駆動回路29、電流センサ部30は、それぞれ演算回路26に接続されている。
これにより、駐車ブレーキ制御装置25の演算回路26は、例えば、駐車ブレーキの保持や解除を行うときに、電動モータ43Bのモータ電流値に基づいて、該電動モータ43Bの駆動を停止することができる。この場合、演算回路26は、駐車ブレーキの保持を行うときは、例えばモータ電流値が保持閾値(そのときに発生すべき推力に対応する電流値)に達したときに、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が保持状態になったと判定し、電動モータ43Bの駆動を停止する。一方、駐車ブレーキの解除を行うときは、演算回路26は、例えば、モータ電流値が予め設定した解除閾値に達したときに、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が解除状態になったと判定し、電動モータ43Bの駆動を停止する。
ところで、運転者による駐車ブレーキスイッチ24の不必要な繰り返し操作(連続操作)等により、電動モータ43Bの駆動による駐車ブレーキの保持と解除が短い間隔で繰り返されると、電動モータ43Bの温度上昇に伴って、該電動モータ43Bのトルクが低下するおそれがある。即ち、電動モータ43Bへの通電の繰り返しに伴って、電動モータ43Bの温度が上昇すると、電動モータ43Bのコイル抵抗、回路抵抗が増大する。これにより、電動モータ43Bの入力電流が低下し、電動モータ43Bから出力されるトルクが低下する。この場合に、トルクの低下が大きいと、ブレーキパッド33を押圧する押圧力(推力)が低下し、停車に必要な制動力を付与できなくなるおそれがある。そこで、電動モータ43Bの温度が高くなった場合に、電動モータ43Bの駆動を禁止することが考えられる。しかし、電動モータ43Bの温度が高い場合に常に電動モータ43Bの駆動を禁止すると、その禁止中は、必要な駐車ブレーキの解除、保持を行うことができなくなる。
これに対し、実施の形態では、駐車ブレーキ制御装置25は、推定温度算出手段(後述する図4のステップ1の処理)と、駆動禁止手段(後述する図4のステップ3と図5のステップ15の処理)と、保持動作制御手段(後述する図5のステップ11とステップ17の処理)とを有している。推定温度算出手段は、電動モータ43Bの温度を推定して温度推定値(モータ温度推定値)を算出するものである。
ここで、電動モータ43Bの温度は、例えば、一定時間における電動モータ43Bの作動回数により推定することができる。また、一定時間における駐車ブレーキスイッチ24の操作回数により推定することもできる。また、一定時間におけるモータ電流値の積算値により推定することもできる。また、駐車ブレーキ制御装置25の基板上の温度センサ(サーマルセンサ)のセンサ値(FET温度等)により推定することもできる。さらに、電動モータ43Bに温度センサを設け、そのセンサ値を(温度推定値として)用いる構成としてもよい。
駆動禁止手段は、推定温度算出手段により算出される温度が所定温度を超えていると、該所定温度よりも低い温度となるまで、押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39の解除状態で、駐車ブレーキスイッチ24からの保持作動の作動要求信号による電動モータ43Bの駆動を禁止するものである。即ち、駆動禁止手段は、後述する図9に示すように、電動モータ43Bの温度(温度推定値)が制限閾値を超える(温度異常フラグがONになる)と、復帰閾値よりも低い温度となる(温度異常フラグがOFFになる)までは、駐車ブレーキスイッチ24から保持作動の作動要求信号が出力されても、駐車ブレーキを解除状態から保持状態にするための電動モータ43Bの駆動を禁止するものである。この場合、駐車ブレーキを保持状態から解除状態にするための電動モータ43Bの駆動は禁止しない。
ここで、所定温度(制限閾値、復帰閾値)は、電動モータ43Bの駆動の禁止と解除の判定を行うための判定温度(閾値)となるものである。所定温度は、電動モータ43Bの駆動により停車に必要な押圧力(推力)を出力させることができる最大の温度(限界温度)として設定することができる。この場合、所定温度は、禁止と解除との両方の境界値として一の値を設定することができる他、禁止の所定温度(制限閾値)と解除の所定温度(復帰閾値)とを異ならせて設定することもできる。具体的には、電動モータ43Bの駆動を禁止する所定温度(制限閾値)に対し、禁止を解除する所定温度(復帰閾値)を小さく設定する。
制限閾値は、停車に必要な押圧力(推力)を出力させることができる最大の温度(限界温度)として設定する。一方、復帰閾値は、例えば、その温度で駐車ブレーキの保持と解除とをそれぞれ1回ずつ行っても、そのときの電動モータ43Bの駆動により制限閾値にまで達しないような値に設定する。これにより、電動モータ43Bの駆動の禁止が解除された後に、駐車ブレーキの保持や解除を行っても、直ちに禁止の状態に戻ってしまうことを抑制することができる。所定温度(制限閾値、復帰閾値)は、電動モータ43Bの温度とトルク(制動力)との関係から電動モータ43Bの駆動の禁止とその解除を適切に行うことができるように、予め実験、シミュレーション、計算等によりその値を求め、記憶部27に記憶させておく。
一方、保持動作制御手段は、駆動禁止手段による電動モータ43Bの駆動禁止中に、ベルトスイッチ18、ドアロックスイッチ19、ドア開スイッチ20、着座スイッチ21、イグニッションスイッチ17、速度センサ22、シフトセンサ23、ブレーキ操作センサ6A等の検知手段(駐車状態を推定可能な駐車ブレーキスイッチ24以外の検知手段)の信号に応じて、電動モータ43Bを駆動して押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39の保持を行うものである。即ち、保持動作制御手段は、駆動禁止手段により電動モータ43Bの駆動が禁止されていても、即ち、温度異常フラグがONでも、車両の状況に対応する検知手段の信号に基づいて、運転者に駐車の意図があることを推定できるときは、電動モータ43Bを駆動し、駐車ブレーキを解除状態から保持状態にするものである。
この場合、検知手段により図7および図8に示す検知がされたときに、運転者に駐車の意図がある、換言すれば、駐車ブレーキの解除と保持が繰り返し行われる可能性が低いと推定することができる。即ち、図7の「1」の欄に示すように、イグニッションスイッチ(IGN SW)17がオンからオフになったときに、運転者に駐車の意図があると推定することができる。
また、イグニッションスイッチ17がオフになっても車両データバス16から車両情報を取得できるときは、図7の「2〜5」の欄に示すように、イグニッションスイッチ17がオンからオフになり、かつ、下記の(a)〜(d)のうちの少なくともいずれかを検出したときに、運転者に駐車の意図があると推定することができる。
(a).ベルトスイッチ(ベルトSW)18によりシートベルトが解除されたこと(装着→脱着)。
(b).ドアロックスイッチ(ドアロックSW)19によりドアが解錠されたこと(固定→解除)。
(c).ドア開スイッチ(ドア開SW)20によりドアが開いたこと(閉→開)。
(d).着座スイッチ(着座SW)21により運転者が離席したこと(座→立)。
一方、イグニッションスイッチ17がオンのときは、図8の「6〜11」の欄に示すように、下記の(e)〜(g)の3点全てを検出し、かつ、上記の(a)〜(d)のうちの少なくともいずれかを検出したときに、運転者に駐車の意図があると推定することができる。
(e).速度センサ22により車両が停車していること(停車検出)。
(f).シフトセンサ23によりトランスミッションの位置(SP:シフトポジション)が走行状態となるドライブ(D)、リバース(R)、ロー(L)、変速段(例えば1速ないし7速のいずれか)等以外(例えば、P:パーキング、N:ニュートラル)を選択していること(N)。
(g).ブレーキ操作センサ6Aであるブレーキランプスイッチ(BLS)によりブレーキペダル6が踏まれていないこと(OFF)。
なお、運転者の駐車の意図の推定は、図7および図8に示す検知の類型以外の条件を用いてもよい。例えば、イグニッションスイッチ17がオフの場合に、シートベルトの解除と運転者の離席との両方を検出したときに、運転者に駐車の意図があると推定する構成としてもよい。この場合は、条件(入力情報)を増やすことにより、駐車の意図の判定精度をより向上できる。即ち、図7および図8に示す検知の条件(入力情報)を選択する(組み合わせの追加、削除をする)ことにより、駐車の意図の判定精度を調整することができる。
また、ドア開スイッチ20では、ドアが開いて閉まったこと(閉→開→閉)を検出するようにしてもよい。また、ブレーキ操作センサ6Aは、ブレーキランプスイッチ(BLS)に代えて、マスタシリンダ8の液圧、シリンダ側液圧配管10A,10Bの液圧、ブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dの液圧を検出する液圧センサ、マスタシリンダ8のピストンの変位若しくは倍力装置7の内部部品の変位を検出する変位センサ等の、ブレーキペダル6が踏まれているか否かを検出できるセンサを用いる構成としてもよい。
さらに、検知手段についても、図7および図8に示すスイッチやセンサ以外の検出器(スイッチ、センサ、カメラ)を用いてもよい。例えば、ステアリングホイール(ハンドル)を握っている(把持している)か否かを検出するステアリングセンサを設け、該ステアリングセンサの検出信号(情報)に応じて、例えば運転者がステアリングホイールから所定時間(例えば、1分程度の長時間)手を離したことを検出した場合に、運転者に駐車の意図があると推定する構成としてもよい。また、運転者を映す室内カメラを設け、この室内カメラの検出信号(情報)に応じて、例えば運転者が降車したことを検出した場合に、運転者に駐車の意図があると推定する構成としてもよい。
何れにしても、保持動作制御手段は、運転者に駐車の意図があると推定したときは、温度異常フラグがONでも、電動モータ43Bを駆動し、駐車ブレーキを解除状態から保持状態にする(オートアプライする)。これにより、電動モータ43Bの温度が高いときにも、必要な駐車ブレーキの保持を行うことができ、車両を駐車状態にできなくなる(例えば、運転者がブレーキペダル6から足を外せなくなる)ことを抑制することができる。このような駐車ブレーキ制御装置25で行われる電動モータ43Bの制御処理に関しては、後で詳しく述べる。
次に、左,右の後輪3,3側に設けられる電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31,31の構成について、図3を参照しつつ説明する。なお、図3では、左,右の後輪3,3に対応してそれぞれ設けられた左,右のディスクブレーキ31,31のうちの一方のみを示している。
車両の左,右にそれぞれ設けられた一対のディスクブレーキ31は、電動式の駐車ブレーキ機能が付設された液圧式のディスクブレーキとして構成されている。ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ制御装置25と共にブレーキシステム(ブレーキ装置)を構成するものである。ディスクブレーキ31は、車両の後輪3側の非回転部分に取付けられる取付部材32と、摩擦部材としてのインナ側,アウタ側のブレーキパッド33と、後述の電動アクチュエータ43が設けられたブレーキ機構としてのキャリパ34とを含んで構成されている。
この場合、ディスクブレーキ31は、ブレーキパッド33をブレーキペダル6の操作等に基づく液圧により後述のピストン39で推進することにより、ブレーキパッド33をディスクロータ4に押圧し、車輪(後輪3)に制動力を付与するものである。これに加えて、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキスイッチ24からの制動要求信号や前述の駐車ブレーキの保持の判断ロジックに基づく要求(作動要求)に応じて、電動モータ43Bにより(回転直動変換機構40を介して)ピストン39を推進することにより、ブレーキパッド33をディスクロータ4に押圧し、車輪(後輪3)に制動力を付与するものである。
取付部材32は、ディスクロータ4の外周を跨ぐようにディスクロータ4の軸方向(即ち、ディスク軸方向)に延びディスク周方向で互いに離間した一対の腕部(図示せず)と、該各腕部の基端側を一体的に連結するように設けられ、ディスクロータ4のインナ側となる位置で車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部32Aと、ディスクロータ4のアウタ側となる位置で前記各腕部の先端側を互いに連結する補強ビーム32Bとを含んで構成されている。
インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、摩擦部材を構成するもので、ディスクロータ4の両面に当接可能に配置され、取付部材32の前記各腕部によりディスク軸方向に移動可能に支持されている。インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、後述のキャリパ34(キャリパ本体35、ピストン39)によりディスクロータ4の両面側に押圧されるものである。
取付部材32には、ディスクロータ4の外周側を跨ぐようにキャリパ34が配置されている。キャリパ34は、取付部材32の前記各腕部に対してディスクロータ4の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体35と、このキャリパ本体35内に設けられたピストン39とにより大略構成されている。キャリパ34には、後述する回転直動変換機構40と電動アクチュエータ43とが設けられている。キャリパ34は、ブレーキパッド33をブレーキペダル6の操作に基づいてピストン39で推進するブレーキ機構を構成するものである。
キャリパ本体35は、シリンダ部36とブリッジ部37と爪部38とにより構成されている。シリンダ部36は、軸方向の一側が隔壁部36Aとなって閉塞されディスクロータ4に対向する他側が開口端となった有底円筒状に形成されている。ブリッジ部37は、ディスクロータ4の外周側を跨ぐように該シリンダ部36からディスク軸方向に延びて形成されている。爪部38は、ブリッジ部37を挟んでシリンダ部36の反対側に延びるように配設されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36は、図1に示すブレーキ側配管部12Cまたは12Dを介してブレーキペダル6の踏込み操作等に伴う液圧が供給される。このシリンダ部36には、後述の電動アクチュエータ43との間に位置して隔壁部36Aが一体形成されている。隔壁部36Aの内周側には、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転可能に装入されている。キャリパ本体35のシリンダ部36内には、押圧部材としてのピストン39と後述の回転直動変換機構40等とが設けられている。
なお、実施の形態においては、回転直動変換機構40がピストン39内に収容されるように構成されているが、回転直動変換機構40によってピストン39が推進されるようになっていれば、必ずしも回転直動変換機構40がピストン39内に収容されていなくともよい。
ここで、ピストン39は、開口側となる軸方向の一側がシリンダ部36内に挿入され、インナ側のブレーキパッド33に対面する軸方向の他側が蓋部39Aとなって閉塞されている。また、シリンダ部36内には、回転直動変換機構40がピストン39の内部に収容して設けられ、ピストン39は、該回転直動変換機構40によりシリンダ部36の軸方向に推進されるようになっている。回転直動変換機構40は、押圧部材保持機構を構成するもので、シリンダ部36内への前記液圧付加とは別に、キャリパ34のピストン39を外力、即ち、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)により推進させ、推進したピストン39およびブレーキパッド33を保持することにより、駐車ブレーキを保持状態(アプライ状態)とする。一方、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)によりピストン39を推進方向とは逆方向に退避させ、駐車ブレーキを解除状態とする。そして、左,右の後輪3に対応して左,右のディスクブレーキ31をそれぞれ設けることから、回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43も、車両の左,右それぞれに設けられている。
回転直動変換機構40は、台形ねじ等の雄ねじが形成された棒状体からなるねじ部材41と、台形ねじからなる雌ねじ穴が内周側に形成された推進部材となる直動部材42とにより構成されている。即ち、直動部材42の内周側に螺合したねじ部材41は、後述の電動アクチュエータ43による回転運動を直動部材42の直線運動に変換するねじ機構を構成している。この場合、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとは、不可逆性の大きいねじ、実施の形態においては、台形ねじを用いて形成することにより押圧部材保持機構を構成している。
この押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)は、電動モータ43Bに対する給電を停止した状態でも、直動部材42(即ち、ピストン39)を任意の位置で摩擦力(保持力)によって保持するようになっている。なお、押圧部材保持機構は、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)により推進された位置にピストン39を保持することができればよく、例えば、台形ねじ以外の不可逆性の大きい通常の三角断面のねじやウォームギヤとしてもよい。
直動部材42の内周側に螺合して設けられたねじ部材41は、軸方向の一側に大径の鍔部となるフランジ部41Aが設けられ、軸方向の他側がピストン39の蓋部39A側に向けて延びている。ねじ部材41は、フランジ部41A側で後述する電動アクチュエータ43の出力軸43Cに一体的に連結されている。また、直動部材42の外周側には、直動部材42をピストン39に対して回り止め(相対回転を規制)し、軸方向の相対移動を許す係合突部42Aが設けられている。
電動アクチュエータ43は、キャリパ34のキャリパ本体35に固定されている。電動アクチュエータ43は、駐車ブレーキスイッチ24の作動要求信号や前述の駐車ブレーキの保持・解除の判断ロジックに基づいて、ディスクブレーキ31を作動(保持・解除)させるものである。電動アクチュエータ43は、隔壁部36Aの外側に取付けられたケーシング43Aと、該ケーシング43A内に位置してステータ、ロータ等からなる公知技術の電動モータ43Bと、該電動モータ43Bのトルクを増幅する減速機(図示せず)と、該減速機による増幅後の回転トルクを出力する出力軸43Cとを含んで構成されている。出力軸43Cは、シリンダ部36の隔壁部36Aを軸方向に貫通して延び、シリンダ部36内でねじ部材41のフランジ部41A側と一体に回転するように連結されている。
出力軸43Cとねじ部材41との連結手段は、例えば軸方向には移動可能であるが回転方向は回り止めされるように構成することができる。この場合は、例えばスプライン嵌合や多角形柱による嵌合(非円形嵌合)等の公知の技術が用いられる。なお、減速機としては、例えば遊星歯車減速機やウォーム歯車減速機等を用いてもよい。また、ウォーム歯車減速機等、逆作動性のない(不可逆性の)公知の減速機を用いる場合は、回転直動変換機構40は、ボールねじやボールランプ機構等、可逆性のある公知の機構を用いることができる。この場合は、例えば、可逆性の回転直動変換機構と不可逆性の減速機とにより押圧部材保持機構を構成することができる。
ここで、運転者が図1ないし図3に示す駐車ブレーキスイッチ24を操作したときには、駐車ブレーキ制御装置25を介して電動アクチュエータ43の電動モータ43Bに給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転される。このため、回転直動変換機構40のねじ部材41は、例えば一方向に出力軸43Cと一体に回転され、直動部材42を介してピストン39をディスクロータ4側に推進(駆動)する。これにより、ディスクブレーキ31は、ディスクロータ4をインナ側,アウタ側のブレーキパッド33間で挟持し、電動式の駐車ブレーキとして制動力を付与した状態、即ち、保持状態(アプライ状態)となる。
一方、駐車ブレーキスイッチ24が制動解除側に操作されたときには、電動アクチュエータ43により回転直動変換機構40のねじ部材41が他方向(逆方向)に回転駆動される。これにより、直動部材42が回転直動変換機構40を介してディスクロータ4から離れる(離間する)方向に駆動され、ディスクブレーキ31は駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、解除状態(リリース状態)となる。
この場合、回転直動変換機構40では、ねじ部材41が直動部材42に対して相対回転されると、ピストン39内での直動部材42の回転が規制されているため、直動部材42は、ねじ部材41の回転角度に応じて軸方向に相対移動する。これにより、回転直動変換機構40は、回転運動を直線運動に変換し、直動部材42によりピストン39が推進される。また、これと共に、回転直動変換機構40は、直動部材42を任意の位置でねじ部材41との摩擦力によって保持することにより、ピストン39およびブレーキパッド33を電動アクチュエータ43により推進された位置に保持する。
シリンダ部36の隔壁部36Aには、ねじ部材41のフランジ部41Aとの間にスラスト軸受44が設けられている。このスラスト軸受44は、ねじ部材41からのスラスト荷重を隔壁部36Aと一緒に受承し、隔壁部36Aに対するねじ部材41の回転を円滑にするものである。また、シリンダ部36の隔壁部36Aには、電動アクチュエータ43の出力軸43Cとの間にシール部材45が設けられ、該シール部材45は、シリンダ部36内のブレーキ液が電動アクチュエータ43側に漏洩するのを阻止するように両者の間をシールしている。
また、シリンダ部36の開口端側には、該シリンダ部36とピストン39との間をシールする弾性シールとしてのピストンシール46と、シリンダ部36内への異物侵入を防ぐダストブーツ47とが設けられている。ダストブーツ47は、可撓性を有した蛇腹状のシール部材により構成され、シリンダ部36の開口端とピストン39の蓋部39A側の外周との間に取付けられている。
なお、前輪2側のディスクブレーキ5は、後輪3側のディスクブレーキ31と駐車ブレーキ機構を除けばほぼ同様に構成されている。即ち、前輪2側のディスクブレーキ5は、後輪3側のディスクブレーキ31のように、駐車ブレーキの作動(保持・解除)を行う回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43等が設けられていない。しかし、これ以外の点では前輪2側のディスクブレーキ5もディスクブレーキ31とほぼ同様に構成されるものである。また、場合によってはディスクブレーキ5に代えて、前輪2側にも電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31を設ける構成としてもよい。
なお、実施の形態では、電動アクチュエータ43が設けられた液圧式のキャリパ34を有するディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、これに限るものではなく、例えば、電動キャリパを有する電動式ディスクブレーキ、電動アクチュエータにより制動力を付与する電動ドラムを有する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを有するディスクブレーキ、電動アクチュエータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキを保持作動させる構成等、電動アクチューエータ(電動モータ)の駆動に基づいて摩擦部材(パッド、シュー)を回転部材(ディスクロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力を保持させることができるブレーキ機構であれば、その構成は、上述の実施の形態の構成でなくともよい。
実施の形態による4輪自動車のブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ8で発生した液圧は、シリンダ側液圧配管10A,10B、ESC11およびブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配、供給され、左,右の前輪2と左,右の後輪3とにそれぞれ制動力が付与される。
この場合、後輪3側のディスクブレーキ31について説明すると、キャリパ34のシリンダ部36内にブレーキ側配管部12C,12Dを介して液圧が供給され、シリンダ部36内の液圧上昇に従ってピストン39がインナ側のブレーキパッド33に向けて摺動変位する。これにより、ピストン39は、インナ側のブレーキパッド33をディスクロータ4の一側面に押圧し、このときの反力によってキャリパ34全体が取付部材32の前記各腕部に対してディスクロータ4のインナ側に摺動変位する。
この結果、キャリパ34のアウタ脚部(爪部38)は、アウタ側のブレーキパッド33をディスクロータ4に押圧するように動作し、ディスクロータ4は、一対のブレーキパッド33によって軸方向の両側から挟持され、液圧付与に従った制動力が発生される。一方、ブレーキ操作を解除したときには、シリンダ部36内への液圧供給が解除、停止されることにより、ピストン39がシリンダ部36内へと後退するように変位し、インナ側とアウタ側のブレーキパッド33がディスクロータ4から離間することによって、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の運転者が駐車ブレーキスイッチ24を制動側(オン)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置25からディスクブレーキ31の電動モータ43Bに給電が行われ、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転駆動される。電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43の回転を回転直動変換機構40のねじ部材41と直動部材42を介して直線運動に変換し、直動部材42を軸方向に移動させてピストン39を推進することにより、一対のブレーキパッド33をディスクロータ4の両面に押圧する。
このとき、直動部材42は、ピストン39から伝達される押圧反力を垂直抗力とした、ねじ部材41との間に発生する摩擦力(保持力)により制動状態に保持され、後輪3側のディスクブレーキ31は駐車ブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ43Bへの給電を停止した後にも、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとにより、直動部材42(即ち、ピストン39)を制動位置に保持することができる。
一方、運転者が駐車ブレーキスイッチ24を制動解除側(オフ)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置25から電動モータ43Bに対してモータ逆転方向に給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cは、駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、回転直動変換機構40は、ねじ部材41と直動部材42とによる制動力の保持が解除されると共に、電動アクチュエータ43の逆回転に対応した移動量で直動部材42をシリンダ部36内へと戻り方向に移動させ、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ31)の制動力を解除する。
次に、駐車ブレーキ制御装置25の演算回路26で行われる制御処理について、図4ないし図6を参照しつつ説明する。なお、図4ないし図6の処理は、駐車ブレーキ制御装置25に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。
この場合、駐車ブレーキ制御装置25への通電は、例えば、運転者のパワースイッチ、エンジンスイッチ、キースイッチ等のイグニッションスイッチ17の操作によるアクセサリオン(ACCモード)、イグニッションオン(レディーモード)、電源オン(オンモード)等のシステム起動(車両システムの起動、駐車ブレーキ制御装置25の起動)により開始される。
一方、駐車ブレーキ制御装置25への通電の終了(停止)は、運転者のイグニッションスイッチ17の操作によるイグニッションオフ(電源オフ、ロック)が行われた後、直ちに終了するのではなく、運転者の操作の後、ある程度の時間(所定時間:例えば5分程度)の経過後に終了する。この理由は、運転者のイグニッションスイッチ17の操作によるイグニッションオフ(電源オフ、ロック)の後にも、図4ないし図6の処理による駐車ブレーキの保持作動、解除作動を可能にするためである。
ここで、図4は、温度異常フラグのON,OFFの処理を示している。例えば運転者の操作によるアクセサリON、イグニッションON、電源ON等のシステム起動(車両システムの起動、駐車ブレーキ制御装置25の起動)により、図4の処理動作がスタートすると、演算回路26は、ステップ1で、電動モータ43Bの温度を算出する。この電動モータ43Bの温度の算出は、電動モータ43Bの作動回数、駐車ブレーキスイッチ24の操作回数、モータ電流値の積算値、駐車ブレーキ制御装置25の基板上の温度センサ(サーマルセンサ)のセンサ値(FET温度等)に基づいて算出(推定)することができる。さらに、電動モータ43Bに温度センサ(サーマルセンサ)を設け、そのセンサ値を用いる構成としてもよい。
ステップ1で電動モータ43Bの温度を算出したら、ステップ2で、その算出した推定温度が制限閾値以上であるか否かを判定する。制限閾値は、電動モータ43Bの駆動の禁止を開始する所定温度、より具体的には、駐車ブレーキスイッチ24の操作に基づく駐車ブレーキの保持のための電動モータ43Bの駆動の禁止を開始する所定温度となるものである。
ステップ2で、「YES」、即ち、推定温度が制限閾値以上であると判定された場合は、ステップ3に進み、温度異常フラグをONにする。即ち、温度異常フラグがONである旨を、記憶部27に記憶させる。温度異常フラグは、電動モータ43Bの駆動の禁止とその解除に用いるものである。即ち、温度異常フラグがONになると、電動モータ43Bの駆動が禁止される。ステップ3で温度異常フラグをONにしたら、リターンを介してスタートに戻り、ステップ1以降の処理を繰り返す。
一方、ステップ2で、「NO」、即ち、推定温度が制限閾値未満であると判定された場合は、ステップ4に進む。ステップ4では、ステップ1で算出した電動モータ43Bの推定温度が復帰閾値以下であるか否かを判定する。復帰閾値は、電動モータ43Bの駆動の禁止を解除する所定温度、より具体的には、駐車ブレーキスイッチ24の操作に基づく駐車ブレーキの保持のための電動モータ43Bの駆動の禁止を解除する所定温度となるものである。
ステップ4で、「YES」、即ち、推定温度が復帰閾値以下であると判定された場合は、ステップ5に進み、温度異常フラグをOFFにする。即ち、温度異常フラグがOFFである旨を、記憶部27に記憶させる。温度異常フラグがOFFになると、電動モータ43Bの駆動の禁止が解除される。ステップ5で温度異常フラグをOFFにしたら、リターンを介してスタートに戻り、ステップ1以降の処理を繰り返す。
一方、ステップ4で、「NO」、即ち、推定温度が復帰閾値よりも高いと判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ1以降の処理を繰り返す。この場合は、温度異常フラグの状態がそのまま維持される。即ち、温度異常フラグがONであればONのままとなり、OFFであればOFFのままとなる。
ここで、電動モータ43Bの駆動の禁止を解除する復帰閾値は、電動モータ43Bの駆動を禁止する制限閾値よりも小さく設定している。これにより、電動モータ43Bの駆動の禁止が解除された後に、駐車ブレーキの保持や解除を行っても、直ちに禁止の状態に戻ってしまうこと、即ち、禁止と解除が短い間隔で繰り返されることを抑制することができる。
次に、図5は、駐車ブレーキの保持(アプライ)の制御処理を示している。例えば運転者の操作によるアクセサリON、イグニッションON、電源ON等のシステム起動により、図5の処理動作がスタートすると、演算回路26は、ステップ11で、運転者に駐車意図があるか否かを判定する。この判定は、図7および図8に示す判定マップ(判定表)を用いて行うことができる。即ち、検知手段により、図7および図8に示す検知(検出)があれば、運転者に駐車の意図があると推定することができる。
ステップ11で、「NO」、即ち、運転者に駐車の意図がないと判定された場合は、ステップ12に進み、駐車ブレーキスイッチ24が保持側に操作(アプライ操作)されたか否か、即ち、駐車ブレーキスイッチ24から保持作動の作動要求信号が出力されたか否かを判定する。このステップ12で、「NO」、即ち、駐車ブレーキスイッチ24のアプライ操作なしと判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ11以降の処理を繰り返す。この場合は、駐車ブレーキの保持は行われない。即ち、電動モータ43Bを保持側(制動側)に駆動しない。
一方、ステップ11で、「YES」、即ち、運転者に駐車の意図があると判定された場合、または、ステップ12で、「YES」、即ち、駐車ブレーキスイッチ24のアプライ操作ありと判定された場合は、アプライ要求ありとして、ステップ13に進む。ステップ13では、駐車ブレーキが解除状態であるか否かを判定する。この判定は、例えば、駐車ブレーキの状態(ステータス)が変更する毎に、即ち、「保持」から「解除」、または、「解除」から「保持」に変わる毎に、記憶部27に更新可能に記憶される駐車ブレーキの現在の状態から判定することができる。
ステップ13で、「NO」、即ち、駐車ブレーキが解除状態でない(例えば、保持状態である)と判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ11以降の処理を繰り返す。この場合は、ステップ11またはステップ12で「YES」と判定されても(アプライ要求があっても)、電動モータ43Bを保持側(制動側)に駆動しない。一方、ステップ13で、「YES」、即ち、駐車ブレーキが解除状態であると判定された場合は、ステップ14に進む。ステップ14では、車両が停止しているか否か、即ち、停車状態であるか否かを判定する。この判定は、速度センサ22により検出される車両の速度から判定することができる。例えば、車両の速度が0km/hであれば車両が停止(停車)していると判定することができる。
ステップ14で、「YES」、即ち、停車状態と判定された場合は、ステップ15に進む。ステップ15では、温度異常フラグがOFFであるか否かを判定する。この判定は、図4のステップ3またはステップ5の処理により記憶部27に記憶された温度異常フラグの状態から判定することができる。ステップ15で、「YES」、即ち、温度異常フラグがOFFであると判定された場合は、ステップ16に進み、電動モータ43Bを制動側に回転させ、駐車ブレーキを保持作動(アプライ作動)させる。そして、リターンを介してスタートに戻り、ステップ11以降の処理を繰り返す。
一方、ステップ15で、「NO」、即ち、温度異常フラグがONであると判定された場合は、ステップ17に進む。ステップ17では、駐車ブレーキスイッチ24のアプライ操作に基づくアプライ要求によりステップ13に進んだか否かを判定する。ステップ17で、「YES」、即ち、駐車ブレーキスイッチ24のアプライ操作に基づくアプライ要求によりステップ13に進んだと判定された場合は、ステップ16を介することなく、リターンを介してスタートに戻り、ステップ11以降の処理を繰り返す。この場合は、駐車ブレーキスイッチ24のアプライ操作があっても、温度異常フラグがONであるため、電動モータ43Bを保持側(制動側)に駆動しない。即ち、電動モータ43Bの温度が高いため、電動モータ43Bの駆動を禁止することにより、停止するために必要な制動力を得られない保持状態となることを抑制する。
一方、ステップ17で、「NO」、即ち、運転者の駐車意図の検出によるアプライ要求によりステップ13に進んだと判定された場合は、ステップ16に進み、駐車ブレーキを保持作動(アプライ作動)させる。即ち、温度異常フラグがONであっても、電動モータ43Bを制動側に回転させる。これにより、電動モータ43Bの温度が高いとき、例えば、その温度が復帰閾値よりも高いが制限閾値よりも低いとき等に、必要な駐車ブレーキの保持を行うことができる。
一方、ステップ14で、「NO」、即ち、停車していないと判定された場合は、ステップ18に進む。この場合は、車両が走行中にも拘わらず、運転者が駐車ブレーキスイッチ24を保持側に操作した可能性が考えられる。具体的には、常用ブレーキが使用できなくなる等により、緊急停止すべく、運転者が駐車ブレーキスイッチ24を操作した可能性が考えられる。そこで、ステップ18では、動的アプライ、即ち、緊急停止制御を行う。具体的には、車輪2,3がスリップ(ロック)しないような制動力となるように、電動モータ43Bを制動側に回転させる。これにより、走行中の車両を安定して停車させることができる。
次に、図6は、駐車ブレーキの解除(リリース)の制御処理を示している。例えば運転者の操作によるアクセサリON、イグニッションON、電源ON等のシステム起動により、図6の処理動作がスタートすると、演算回路26は、ステップ21で、駐車ブレーキスイッチ24が解除側に操作(リリース操作)されたか否か、即ち、駐車ブレーキスイッチ24から解除作動の作動要求信号が出力されたか否かを判定する。このステップ21で、「NO」、即ち、駐車ブレーキスイッチ24のリリース操作なしと判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ21以降の処理を繰り返す。この場合は、駐車ブレーキの解除は行われない。即ち、電動モータ43Bを解除側に駆動しない。
一方、ステップ21で、「YES」、即ち、駐車ブレーキスイッチ24のリリース操作ありと判定された場合は、リリース要求ありとして、ステップ22に進み、駐車ブレーキが保持状態であるか否かを判定する。この判定は、上述の図5のステップ13と同様に、記憶部27に更新可能に記憶される駐車ブレーキの現在の状態から判定することができる。
ステップ22で、「NO」、即ち、駐車ブレーキが保持状態でない(例えば、解除状態である)と判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ21以降の処理を繰り返す。この場合は、ステップ21で「YES」と判定されても(リリース要求があっても)、電動モータ43Bを解除側に駆動しない。
一方、ステップ22で、「YES」、即ち、駐車ブレーキが保持状態であると判定された場合は、ステップ23に進み、着座スイッチ21がON(運転者が着席している)か否かを判定する。ステップ23で、「NO」、即ち、着座スイッチ21がOFF(運転者が離席している)と判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ21以降の処理を繰り返す。この場合は、駐車ブレーキスイッチ24がリリース操作されているにも拘わらず、運転者が着席していないと考えられるため、電動モータ43Bを解除側に駆動しない。
一方、ステップ23で、「YES」、即ち、着座スイッチ21がON(運転者が着席している)と判定された場合は、ステップ24に進み、電動モータ43Bを解除側に回転させ、駐車ブレーキを解除作動(リリース作動)させる。そして、リターンを介してスタートに戻り、ステップ21以降の処理を繰り返す。このような図6に示す駐車ブレーキの解除の制御処理では、図5に示す保持の制御処理のような、温度異常フラグがONのときの電動モータ43Bの駆動の禁止は行わない。このため、電動モータ43Bの温度が高いときにも、必要な駐車ブレーキの解除を行うことができ、車両が発進できなくなることを抑制することができる。
次に、駐車ブレーキ制御装置25により図4ないし図6に示す処理を行ったときのタイムチャートを、図9を用いて説明する。
例えば、信号待ちや渋滞中の停車しているときに、運転者による駐車ブレーキスイッチ24の不必要な繰り返し操作(連続操作)等に伴って、電動モータ43Bの駆動が保持側と解除側とに短い間隔で繰り返されると、その駆動回数に比例して、電動モータ43Bの温度が上昇する。電動モータ43Bの温度が上昇すると、電動モータ43Bのコイル抵抗、回路抵抗が増大し、電動モータ43Bの入力電流が低下する。これにより、電動モータ43Bから出力されるトルクが低下し、停車に必要な制動力を付与できなくなるおそれがある。また、駐車ブレーキスイッチ24の連続操作により駐車ブレーキ制御装置25の温度(FET温度)が上昇し、駐車ブレーキ制御装置25の不調を招くおそれもある。
そこで、図4のステップ1の処理により電動モータ43Bの温度を算出する構成とし、かつ、停車に必要な推力を発生できる電動モータ43Bの限界温度を制限閾値として設定している。このため、図9の時間軸の「A」の時点で、電動モータ43Bの温度が制限閾値以上となると、図4のステップ2,3の処理により、温度異常フラグがONになる。
ここで、温度異常フラグがONのときに、駐車ブレーキを解除状態から保持状態にするための電動モータ43Bの駆動を禁止することに加えて、保持状態から解除状態にするための電動モータ43Bの駆動も禁止する構成とすると、駐車ブレーキの保持動作に起因して温度異常フラグがONになったときに、駐車ブレーキを解除できず、車両を発進させることができなくなる。そこで、図6に示すように、駐車ブレーキの解除は、温度異常フラグのON,OFFに拘わらず行うことができるように構成している。このため、電動モータ43Bの作動の制限は、図9の時間軸の「B」の時点、即ち、駐車ブレーキの解除が行われた(解除が完了した)時点から開始される。
一方、図9の時間軸の「C」の時点で、運転者が駐車ブレーキスイッチ24をアプライ操作しても、温度異常フラグがONであるため、図5のステップ15の処理により、アプライ作動は行われない(禁止される)。これに対し、図9の時間軸の「D」の時点で、運転者に駐車の意図があると判定されると、温度異常フラグがONであっても、図5ステップ17の処理により、アプライ作動(オートアプライ)が行われる。その後、電動モータ43Bの温度が低下し、図9の時間軸の「E」の時点で、電動モータ43Bの温度が復帰閾値以下になると、図4のステップ4,5の処理により、温度異常フラグがOFFになる。これにより、電動モータ43Bの作動の制限は解除される(電動モータ43Bの駆動の禁止が解除される)。
実施の形態では、温度異常フラグがONのときにも、必要な駐車ブレーキの解除や保持を行うことができる。
即ち、実施の形態では、図4のステップ2とステップ3の処理で、温度異常フラグがONになると、図5のステップ15の処理により、駐車ブレーキスイッチ24からの保持作動の作動要求信号による電動モータ43Bの駆動が禁止される。一方、図6に示す駐車ブレーキの解除の制御処理では、温度異常フラグのON,OFFに拘わらず、駐車ブレーキスイッチ24からの解除作動の作動要求信号による電動モータ43Bの駆動を行うことができる。これにより、例えば信号待ちや渋滞中等の車道(車線内)での一時的な停車のときに、駐車ブレーキの保持に起因して温度異常フラグがONになり、かつ、その後直ちに(温度異常フラグがOFFになる前に)車両を発進させる場合にも、駐車ブレーキを解除して、車両を発進させることができる。この結果、温度異常フラグがONのときにも、必要な駐車ブレーキの解除を行うことができ、車両が車線内で発進できなくなることを抑制することができる。
一方、温度異常フラグがONのときに、検知手段による図7および図8に示す検知(検出)があると、図5のステップ17の処理により、電動モータ43Bを駆動し、駐車ブレーキの保持を行う。このため、温度異常フラグがONのときは、検知手段の信号から推定できる車両の状況に応じて、電動モータ43Bの駆動による駐車ブレーキの保持を行うことができる。即ち、温度異常フラグがONのときは、図5のステップ11の処理により、検知手段の信号から運転者に駐車の意図があると推定できるときに、駐車ブレーキを保持して、車両の停車状態を維持することができる。この結果、電動モータ43Bの温度が所定温度を超えているときにも、必要な駐車ブレーキの保持を行うことができ、車両を駐車状態にできなくなる(例えば、運転者がブレーキペダル6から足を外せなくなる)ことを抑制することができる。
実施の形態では、電動モータ43Bの駆動を禁止する制限閾値に対し、禁止を解除する復帰閾値を小さく設定している。この場合、復帰閾値は、例えば、その温度で駐車ブレーキの保持と解除とをそれぞれ1回ずつ行っても、電動モータ43Bの駆動を禁止する制限閾値にまで達しないような値に設定している。これにより、温度異常フラグがOFFとなった後に、駐車ブレーキの保持や解除を行っても、直ちに禁止の状態に戻ってしまうことを抑制することができる。
実施の形態では、検知手段は、ベルトスイッチ18と、ドアロックスイッチ19と、ドア開スイッチ20と、着座スイッチ21と、イグニッションスイッチ17と、速度センサ22と、シフトセンサ23と、ブレーキ操作センサ6Aとのうちの少なくともいずれか(1つ、若しくはいずれかの組み合わせ)により構成している。このため、図5のステップ11では、検知手段の信号に応じて、運転者に駐車の意図があること、即ち、駐車ブレーキの解除と保持が繰り返し行われる可能性が低いことを、正確に判定することができる。これにより、温度異常フラグがONのときの駐車ブレーキの保持を、その保持が必要なときに行うことができる。
実施の形態では、図5のステップ11で、イグニッションスイッチ17がオンからオフとなったとき、または、イグニッションスイッチ17がオンからオフとなり、かつ、ベルトスイッチ18によりシートベルトが解除されたことと、ドアロックスイッチ19によりドアが解錠されたことと、ドア開スイッチ20によりドアが開いたことと、着座スイッチ21により運転者が離席したこととのうちの少なくともいずれか(1つ、若しくはいずれかの組み合わせ)を検出したときに、運転者に駐車の意図があると判定する。そして、この場合は、温度異常フラグがONであっても、図5のステップ17の処理により、電動モータ43Bを駆動する。これにより、イグニッションスイッチ17がオフで、かつ、温度異常フラグがONのときの駐車ブレーキの保持を、その保持が必要なときに行うことができる。
実施の形態では、図5のステップ11で、イグニッションスイッチ17がオンのときは、速度センサ22により車両が停車していることと、シフトセンサ23によりシフトポジションがNまたはPを選択していることと、ブレーキ操作センサ6Aによりブレーキペダル6が踏まれていないこととの3点を検出し、かつ、ベルトスイッチ18によりシートベルトが解除されたことと、ドアロックスイッチ19によりドアが解錠されたことと、ドア開スイッチ20によりドアが開いたことと、着座スイッチ21により運転者が離席したこととのうちの少なくとも何れか(1つ、若しくはいずれかの組み合わせ)を検出したときに、運転者に駐車の意図があると判定する。そして、この場合は、温度異常フラグがONであっても、図5のステップ17の処理により、電動モータ43Bを駆動する。これにより、イグニッションスイッチ17がオンで、かつ、温度異常フラグがONのときの駐車ブレーキの保持を、その保持が必要なときに行うことができる。
なお、上述した実施の形態では、図4のステップ1の処理が本発明の構成要件である推定温度算出手段の具体例を示し、図4のステップ3と図5のステップ15の処理が本発明の構成要件である駆動禁止手段の具体例を示し、図5のステップ11とステップ17の処理が本発明の構成要件である保持動作制御手段の具体例を示している。
上述した実施の形態では、左,右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、全ての車輪(4輪全て)のブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成してもよい。即ち、車両の少なくとも一対の車輪のブレーキを、電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成することができる。
上述した実施の形態では、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば液圧の供給が不要な電動式ディスクブレーキにより構成してもよい。また、ディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、例えば、ドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよいものである。さらに、例えば、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行う構成等、ブレーキ機構は各種のものを採用することができる。
以上の実施の形態によれば、電動モータの温度が高く該電動モータの駆動を禁止しているときにも、必要な駐車ブレーキの解除や保持を行うことができる。
即ち、実施の形態によれば、駆動禁止手段は、電動モータの温度が所定温度を超えていると、操作指示手段からの保持作動の作動要求信号による電動モータの駆動を禁止する構成としている。換言すれば、電動モータの温度が所定温度を超えていても、操作指示手段からの解除作動の作動要求信号による電動モータの駆動は行うことができる。これにより、例えば信号待ちや渋滞中等の車道(車線内)での一時的な停車のときに、駐車ブレーキの保持に起因して電動モータの温度が所定温度を超え、その後直ちに(所定温度よりも低い温度となる前に)車両を発進させる場合にも、駐車ブレーキを解除して、車両を発進させることができる。この駐車ブレーキの解除後は、電動モータの温度が所定温度よりも低い温度となるまで、操作指示手段からの保持作動の作動要求信号による電動モータの駆動(駐車ブレーキの保持)は行われない。この結果、電動モータの温度が所定温度を超えているときにも、必要な駐車ブレーキの解除を行うことができ、車両が発進できなくなることを抑制することができる。
一方、保持動作制御手段は、駆動禁止手段による電動モータの駆動禁止中に、検知手段の信号に応じて電動モータを駆動し、駐車ブレーキの保持を行う。このため、電動モータの温度が所定温度を超えているときは、検知手段の信号から推定できる車両の状況に応じて、電動モータの駆動による駐車ブレーキの保持を行うことができる。即ち、電動モータの温度が所定温度を超えているときは、検知手段の信号から運転者に駐車の意図があると推定できるときに、駐車ブレーキを保持して、車両の停車状態を維持することができる。この駐車ブレーキの保持後は、電動モータの温度に拘わらず、操作指示手段からの解除作動の作動要求信号による電動モータの駆動(駐車ブレーキの解除)を行うことができる。この結果、電動モータの温度が所定温度を超えているときにも、必要な駐車ブレーキの保持を行うことができ、車両を駐車状態にできなくなる(例えば、運転者が常用ブレーキの制動力を解除できなくなる)ことを抑制することができる。
実施の形態によれば、駆動禁止手段は、電動モータの駆動を禁止する所定温度(制限閾値)に対し、禁止を解除する所定温度(復帰閾値)を小さく設定している。この場合、電動モータの駆動の禁止を解除する所定温度(復帰閾値)は、例えば、その温度で駐車ブレーキの保持と解除とをそれぞれ1回ずつ行っても、電動モータの駆動を禁止する所定温度(制限閾値)にまで達しないような値に設定することができる。これにより、電動モータの駆動の禁止が解除された後に、駐車ブレーキの保持や解除を行っても、直ちに禁止の状態に戻ってしまうことを抑制することができる。
実施の形態によれば、検知手段は、車両の運転者のシートベルトの装着,解除を検出するベルトスイッチと、車両のドアの施錠,解錠を検出するドアロックスイッチと、ドアの開,閉を検出するドア開スイッチと、運転者の着席,離席を検出する着座スイッチと、車両のシステムをオン,オフする起動スイッチと、車両の速度を検出する速度センサと、車両のトランスミッションの位置を検出するシフトセンサと、車両の常用ブレーキの操作を検出するブレーキ操作センサと、のうちの1つ、若しくはいずれかの組み合わせにより構成している。このため、保持動作制御手段は、検知手段の信号に応じて、運転者に駐車の意図があること、即ち、駐車ブレーキの解除と保持が繰り返し行われる可能性が低いことを、正確に判定することができる。これにより、電動モータの温度が所定温度を超えているときの駐車ブレーキの保持を、その保持が必要なときに行うことができる。
実施の形態によれば、保持動作制御手段は、起動スイッチがオンからオフとなったとき、または、起動スイッチがオンからオフとなり、かつ、ベルトスイッチによりシートベルトが解除されたことと、ドアロックスイッチによりドアが解錠されたことと、ドア開スイッチによりドアが開いたことと、着座スイッチにより運転者が離席したこととのうちの少なくともいずれかを検出したときに、電動モータを駆動する構成としている。これにより、起動スイッチがオフで、かつ、電動モータの温度が所定温度を超えているときの駐車ブレーキの保持を、その保持が必要なときに行うことができる。
実施の形態によれば、保持動作制御手段は、起動スイッチがオンのときは、速度センサにより車両が停車していることと、シフトセンサによりトランスミッションの位置が走行状態以外を選択していることと、ブレーキ操作センサによりブレーキペダルが踏まれていないこととの3点を検出し、かつ、ベルトスイッチによりシートベルトが解除されたことと、ドアロックスイッチによりドアが解錠されたことと、ドア開スイッチによりドアが開いたことと、着座スイッチにより運転者が離席したこととのうちの少なくとも何れかを検出したときに、電動モータを駆動する構成としている。これにより、起動スイッチがオンで、かつ、電動モータの温度が所定温度を超えているときの駐車ブレーキの保持を、その保持が必要なときに行うことができる。