以下、実施形態による電動ブレーキ装置を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4および図5に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左右の前輪2(FL,FR)と左右の後輪3(RL、RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。車輪(各前輪2、各後輪3)は、車体1と共に車両を構成している。車両には、制動力を付与するためのブレーキシステムが搭載されている。以下、車両のブレーキシステムについて説明する。
前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する被制動部材(回転部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキである前輪側ディスクブレーキ5により制動力が付与される。後輪3用のディスクロータ4は、電動パーキングブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキである後輪側ディスクブレーキ6により制動力が付与される。
左右の後輪3に対応してそれぞれ設けられた一対(一組)の後輪側ディスクブレーキ6は、液圧によりブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧して制動力を付与する液圧式のブレーキ機構(液圧ブレーキ)である。図2に示すように、後輪側ディスクブレーキ6は、例えば、キャリアと呼ばれる取付部材6Aと、ホイルシリンダとしてのキャリパ6Bと、制動部材(摩擦部材、摩擦パッド)としての一対のブレーキパッド6Cと、押圧部材としてのピストン6Dとを備えている。この場合、キャリパ6Bとピストン6Dは、シリンダ機構、即ち、液圧によって移動してブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧するシリンダ機構を構成している。
取付部材6Aは、車両の非回転部に固定され、ディスクロータ4の外周側を跨いで形成されている。キャリパ6Bは、取付部材6Aにディスクロータ4の軸方向への移動を可能に設けられている。キャリパ6Bは、シリンダ本体部6B1と、爪部6B2と、これらを接続するブリッジ部6B3とを含んで構成されている。シリンダ本体部6B1には、シリンダ(シリンダ穴)6B4が設けられており、シリンダ6B4内にはピストン6Dが挿嵌されている。ブレーキパッド6Cは、取付部材6Aに移動可能に取付けられ、ディスクロータ4に当接可能に配置されている。ピストン6Dは、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧する。
ここで、キャリパ6Bは、ブレーキペダル9の操作等に基づいてシリンダ6B4内に液圧(ブレーキ液圧)が供給(付加)されることにより、ブレーキパッド6Cをピストン6Dで推進する。このとき、ブレーキパッド6Cは、キャリパ6Bの爪部6B2とピストン6Dとによりディスクロータ4の両面に押圧される。これにより、ディスクロータ4と共に回転する後輪3に制動力が付与される。
さらに、後輪側ディスクブレーキ6は、電動アクチュエータ7と押圧部材保持機構8とを備えている。電動アクチュエータ7は、電動機としての電動モータ7Aと、該電動モータ7Aの回転を減速する減速機構(図示せず)等を含んで構成されている。電動モータ7Aは、ピストン6Dを推進するための推進源(駆動源)となるものである。押圧部材保持機構8は、ブレーキパッド6Cの押圧力を保持する保持機構を構成している。
この場合、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転をピストン6Dの軸方向の変位(直動変位)に変換すると共に該ピストン6Dを推進する回転直動部材8Aを含んで構成されている。回転直動部材8Aは、例えば、雄ねじが形成された棒状体からなるねじ部材8A1と、雌ねじ穴が内周側に形成された推進部材となる直動部材8A2とにより構成されている。
押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転をピストン6Dの軸方向の変位に変換すると共に、電動モータ7Aにより推進したピストン6Dを保持する。即ち、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aによりピストン6Dに推力を与え、該ピストン6Dによりブレーキパッド6Cを推進してディスクロータ4を押圧し、該ピストン6Dの推力を保持する。押圧部材保持機構8は、例えば、スピンドルナット機構等の回転直動変換機構として構成されている。
これにより、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aと共に、電動パーキングブレーキの電動機構を構成している。電動機構は、電動モータ7Aによってブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧して制動状態を保持する。電動機構(即ち、電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8)は、後述のパーキングブレーキ制御装置24と共に、電動ブレーキ装置を構成している。
後輪側ディスクブレーキ6は、ブレーキペダル9の操作等に基づいて発生するブレーキ液圧によりピストン6Dを推進させ、ブレーキパッド6Cでディスクロータ4を押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、後輪側ディスクブレーキ6は、後述するように、パーキングブレーキスイッチ23からの信号等に基づく作動要求に応じて、電動モータ7Aにより押圧部材保持機構8を介してピストン6Dを推進させ、車両に制動力(パーキングブレーキ、必要に応じて補助ブレーキ)を付与する。
即ち、後輪側ディスクブレーキ6は、電動モータ7Aを駆動し、回転直動部材8Aによりピストン6Dを推進することにより、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧して保持する。この場合、後輪側ディスクブレーキ6は、パーキングブレーキ(駐車ブレーキ)を付与するためのアプライ要求となるパーキングブレーキ要求信号(アプライ要求信号)に応じて、ピストン6Dを電動モータ7Aで推進して車両の制動を保持することが可能となっている。これと共に、後輪側ディスクブレーキ6は、ブレーキペダル9の操作に応じて、液圧源(後述のマスタシリンダ12、必要に応じて液圧供給装置16)からの液圧供給により車両の制動が可能となっている。
このように、後輪側ディスクブレーキ6は、電動モータ7Aによりディスクロータ4にブレーキパッド6Cを押圧し該ブレーキパッド6Cの押圧力を保持する押圧部材保持機構8を有し、かつ、電動モータ7Aによる押圧とは別に付加される液圧によりディスクロータ4にブレーキパッド6Cを押圧可能に構成されている。
一方、左右の前輪2に対応してそれぞれ設けられた一対(一組)の前輪側ディスクブレーキ5は、パーキングブレーキの動作に関連する機構を除いて、後輪側ディスクブレーキ6とほぼ同様に構成されている。即ち、図1に示すように、前輪側ディスクブレーキ5は、取付部材(図示せず)、キャリパ5A、ブレーキパッド(図示せず)、ピストン5B等を備えているが、パーキングブレーキの作動、解除を行うための電動アクチュエータ7(電動モータ7A)、押圧部材保持機構8等を備えていない。しかし、前輪側ディスクブレーキ5は、ブレーキペダル9の操作等に基づいて発生する液圧によりピストン5Bを推進させ、車輪(前輪2)延いては車両に制動力を付与する点で、後輪側ディスクブレーキ6と同様である。即ち、前輪側ディスクブレーキ5は、液圧によりブレーキパッドをディスクロータ4に押圧して制動力を付与する液圧式のブレーキ機構(液圧ブレーキ)である。
なお、前輪側ディスクブレーキ5は、後輪側ディスクブレーキ6と同様に、電動パーキングブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよい。また、実施形態では、電動パーキングブレーキとして、電動モータ7Aを備えた液圧式のディスクブレーキ6を用いている。しかし、これに限定されず、電動パーキングブレーキは、例えば、電動ドラム式のパーキングブレーキを備えたディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることによりパーキングブレーキをアプライ作動させるケーブルプラー式電動パーキングブレーキ等を用いてもよい。即ち、電動パーキングブレーキは、電動モータ(電動アクチュエータ)の駆動に基づいて摩擦部材(パッド、シュー)を回転部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力の保持と解除とを行うことができる構成であれば、各種の電動パーキングブレーキ機構を用いることができる。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル9が設けられている。ブレーキペダル9は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて各ディスクブレーキ5,6は、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル9には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ(ブレーキスイッチ)、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)10が設けられている。
ブレーキ操作検出センサ10は、ブレーキペダル9の踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号をESC制御装置17に出力する。ブレーキ操作検出センサ10の検出信号は、例えば、車両データバス20、または、ESC制御装置17とパーキングブレーキ制御装置24とを接続する通信線(図示せず)を介して伝送される(パーキングブレーキ制御装置24に出力される)。
ブレーキペダル9の踏込み操作は、倍力装置11を介して、油圧源(液圧源)として機能するマスタシリンダ12に伝達される。倍力装置11は、ブレーキペダル9とマスタシリンダ12との間に設けられた負圧ブースタ(気圧倍力装置)または電動ブースタ(電動倍力装置)として構成されている。倍力装置11は、ブレーキペダル9の踏込み操作時に、踏力を増力してマスタシリンダ12に伝える。
このとき、マスタシリンダ12は、マスタリザーバ13から供給(補充)されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ13は、ブレーキ液が収容された作動液タンクとなるものである。ブレーキペダル9により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル9の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ12内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管14A,14Bを介して、液圧供給装置16(以下、ESC16という)に送られる。ESC16は、各ディスクブレーキ5,6とマスタシリンダ12との間に配置されている。ESC16は、マスタシリンダ12からシリンダ側液圧配管14A,14Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dを介して各ディスクブレーキ5,6に分配、供給する。即ち、ESC16は、ブレーキペダル9の操作に応じた液圧(ブレーキ液圧)を、各車輪(各前輪2、各後輪3)に設けられたディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)へ供給するためのものである。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与することができる。
ここで、ESC16は、液圧ブレーキ(前輪側ディスクブレーキ5、後輪側ディスクブレーキ6)の液圧を制御する液圧制御装置である。このために、ESC16は、複数の制御弁と、ブレーキ液圧を加圧する液圧ポンプと、該液圧ポンプを駆動する電動モータと、余剰のブレーキ液を一時的に貯留する液圧制御用リザーバ(いずれも図示せず)とを含んで構成されている。ESC16の各制御弁および電動モータは、ESC制御装置17と接続されており、ESC16は、ESC制御装置17を含んで構成されている。
ESC16の各制御弁の開閉と電動モータの駆動は、ESC制御装置17により制御される。即ち、ESC制御装置17は、ESC16の制御を行うESC用コントロールユニット(ESC用ECU)である。ESC制御装置17は、マイクロコンピュータを含んで構成され、ESC16(の各制御弁のソレノイド、電動モータ)を電気的に駆動制御する。この場合、ESC制御装置17は、例えば、ESC16の液圧供給を制御するため、および、故障を検出するための演算回路、駆動回路(いずれも図示せず)等が内蔵されている。
ESC制御装置17は、ESC16の各制御弁(のソレノイド)、液圧ポンプ用の電動モータを個別に駆動制御することにより、ブレーキ側配管部15A−15Dを通じて各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧(ホイールシリンダ液圧)を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、それぞれのディスクブレーキ5,6毎に個別に行う。
この場合、ESC制御装置17は、ESC16を作動制御することにより、例えば以下の(1)−(8)等の制御を実行することができる。
(1)車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪2,3に適切に制動力を配分する制動力配分制御。
(2)制動時に各車輪2,3の制動力を自動的に調整して各車輪2,3のロック(スリップ)を防止するアンチロックブレーキ制御(液圧ABS制御)。
(3)走行中の各車輪2,3の横滑りを検知してブレーキペダル9の操作量に拘わらず各車輪2,3に付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステアおよびオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御。
(4)坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御。
(5)発進時等において各車輪2,3の空転を防止するトラクション制御。
(6)先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御。
(7)走行車線を保持する車線逸脱回避制御。
(8)車両進行方向の障害物との衡突を回避する障害物回避制御(自動ブレーキ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御)。
ESC16は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時においては、マスタシリンダ12で発生した液圧を、ディスクブレーキ5,6(のキャリパ5A,6B)に直接供給する。これに対し、例えば、アンチロックブレーキ制御等を実行する場合は、増圧用の制御弁を閉じてディスクブレーキ5,6の液圧を保持し、ディスクブレーキ5,6の液圧を減圧するときには、減圧用の制御弁を開いてディスクブレーキ5,6の液圧を液圧制御用リザーバに逃がすように排出する。
さらに、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ディスクブレーキ5,6に供給する液圧を増圧または加圧するときは、供給用の制御弁を閉弁した状態で電動モータにより液圧ポンプを作動させ、該液圧ポンプから吐出したブレーキ液をディスクブレーキ5,6に供給する。このとき、液圧ポンプの吸込み側には、マスタシリンダ12側からマスタリザーバ13内のブレーキ液が供給される。
ESC制御装置17には、車両電源となるバッテリ18(ないしエンジンによって駆動されるジェネレータ)からの電力が、電源ライン19を通じて給電される。図1に示すように、ESC制御装置17は、車両データバス20に接続されている。なお、ESC16の代わりに、公知のABSユニットを用いることも可能である。さらに、ESC16を設けずに(即ち、省略し)、マスタシリンダ12とブレーキ側配管部15A−15Dとを直接的に接続することも可能である。
車両データバス20は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を構成している。車両に搭載された多数の電子機器(例えば、ESC制御装置17、パーキングブレーキ制御装置24等を含む各種のECU)は、車両データバス20により、それぞれの間で車両内の多重通信を行う。この場合、車両データバス20に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ10、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ(傾斜センサ)、シフトセンサ(トランスミッションデータ)、加速度センサ(Gセンサ)、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号(出力信号)による情報(車両情報)が挙げられる。
さらに、車両データバス20に送られる車両情報としては、ホイルシリンダ圧を検出するW/C圧力センサ21、マスタシリンダ圧を検出するM/C圧力センサ22からの検出信号(情報)も挙げられる。W/C圧力センサ21およびM/C圧力センサ22は、例えば、ブレーキ操作検出センサ10と同様に、ESC制御装置17に接続されている。W/C圧力センサ21およびM/C圧力センサ22の検出信号は、W/C液圧、M/C液圧の情報として、ESC制御装置17から車両データバス20に送られる。車両に搭載された多数の電子機器(各種のECU)は、W/C液圧、M/C液圧を含む各種の車両情報を、車両データバス20を通じて入手することができる。
次に、パーキングブレーキスイッチ23およびパーキングブレーキ制御装置24について説明する。
車体1内には、運転席(図示せず)の近傍となる位置に、電動パーキングブレーキのスイッチとしてのパーキングブレーキスイッチ(PKB−SW)23が設けられている。パーキングブレーキスイッチ23は、運転者によって操作される操作指示部となるものである。パーキングブレーキスイッチ23は、運転者の操作指示に応じたパーキングブレーキの作動要求(保持要求となるアプライ要求、解除要求となるリリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、パーキングブレーキ制御装置24へ伝達する。即ち、パーキングブレーキスイッチ23は、電動モータ7Aの駆動(回転)に基づいてピストン6D延いてはブレーキパッド6Cをアプライ作動(保持作動)またはリリース作動(解除作動)させるための作動要求信号(保持要求信号となるアプライ要求信号、解除要求信号となるリリース要求信号)を、パーキングブレーキ用コントロールユニット(パーキングブレーキ用ECU)となるパーキングブレーキ制御装置24に出力する。
運転者によりパーキングブレーキスイッチ23が制動側(アプライ側)に操作されたとき、即ち、車両に制動力を付与するためのアプライ要求(制動保持要求)があったときは、パーキングブレーキスイッチ23からアプライ要求信号(パーキングブレーキ要求信号、アプライ指令)が出力される。この場合は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側に回転させるための電力が、パーキングブレーキ制御装置24を介して給電される。このとき、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転に基づいてピストン6Dをディスクロータ4側に推進(押圧)し、推進したピストン6Dを保持する。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、パーキングブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力が付与された状態、即ち、アプライ状態(制動保持状態)となる。
一方、運転者によりパーキングブレーキスイッチ23が制動解除側(リリース側)に操作されたとき、即ち、車両の制動力を解除するためのリリース要求(制動解除要求)があったときは、パーキングブレーキスイッチ23からリリース要求信号(パーキングブレーキ解除要求信号、リリース指令)が出力される。この場合は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側とは逆方向に回転させるための電力が、パーキングブレーキ制御装置24を介して給電される。このとき、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転によりピストン6Dの保持を解除する(ピストン6Dによる押圧力を解除する)。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、パーキングブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力の付与が解除された状態、即ち、リリース状態(制動解除状態)となる。
パーキングブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、パーキングブレーキ制御装置24でのパーキングブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。また、パーキングブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が6km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、パーキングブレーキ制御装置24でのパーキングブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。オートアプライ、オートリリースは、パーキングブレーキスイッチ23が故障したときに、自動的に制動力の付与または解除を行うスイッチ故障時補助機能として構成することができる。
さらに、車両の走行時にパーキングブレーキスイッチ23の操作があった場合、より具体的には、走行中に緊急的にパーキングブレーキを補助ブレーキとして用いる等の動的パーキングブレーキ(動的アプライ)の要求があった場合は、例えば、パーキングブレーキスイッチ23の操作に応じてESC16による制動力の付与と解除を行うようにすることができる。この場合は、例えば、パーキングブレーキ制御装置24は、パーキングブレーキスイッチ23の操作に応じた制動指令(例えば、液圧要求信号、目標液圧信号)を、車両データバス20または前記通信線を介して、ESC制御装置17に出力する。これにより、ESC16は、パーキングブレーキ制御装置24から制動指令に基づいて、パーキングブレーキスイッチ23が制動側に操作されている間(制動側への操作が継続している間)液圧による制動力を付与し、その操作が終了すると液圧による制動力の付与を解除する。
一方、車両の走行時にパーキングブレーキスイッチ23の操作があった場合に、ESC16による制動力の付与と解除に代えて、例えば、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aの駆動による制動力の付与と解除を行うようにすることができる。この場合は、例えば、パーキングブレーキ制御装置24は、パーキングブレーキスイッチ23が制動側に操作されている間(制動側への操作が継続している間)制動力を付与し、その操作が終了すると制動力の付与を解除する。このとき、パーキングブレーキ制御装置24は、車輪(各後輪3)の状態、即ち、車輪がロック(スリップ)するか否かに応じて、自動的に制動力の付与と解除(ABS制御)を行う構成とすることができる。
制御装置(電動機制御装置)としてのパーキングブレーキ制御装置24は、後輪側ディスクブレーキ6(の電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8)と共に、電動ブレーキ装置を構成している。パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aを制御すると共に、電動パーキングブレーキの制動の保持または解除の制動状態を記憶する。このために、図3に示すように、パーキングブレーキ制御装置24は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)25およびメモリ26を有している。パーキングブレーキ制御装置24には、バッテリ18(ないしエンジンによって駆動されるジェネレータ)からの電力が電源ライン19を通じて給電される。
パーキングブレーキ制御装置24は、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aの駆動を制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(パーキングブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。即ち、パーキングブレーキ制御装置24は、左右の電動モータ7A,7Aを駆動することにより、ディスクブレーキ6,6をパーキングブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(アプライ・リリース)させる。このために、パーキングブレーキ制御装置24は、入力側がパーキングブレーキスイッチ23に接続され、出力側は各ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aに接続されている。そして、パーキングブレーキ制御装置24は、運転者の操作(パーキングブレーキスイッチ23の操作)の検出や電動モータ7A,7Aの停止の判定等を行うための演算回路25と、電動モータ7A,7Aを制御するためのモータ駆動回路28,28を内蔵している。
即ち、パーキングブレーキ制御装置24は、運転者のパーキングブレーキスイッチ23の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、パーキングブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求、ABS制御による作動要求に基づいて、左右の電動モータ7A,7Aを駆動し、左右のディスクブレーキ6,6のアプライ(保持)またはリリース(解除)を行う。このとき、後輪側ディスクブレーキ6では、各電動モータ7Aの駆動に基づいて、押圧部材保持機構8によるピストン6Dおよびブレーキパッド6Cの保持または解除が行われる。このように、パーキングブレーキ制御装置24は、ピストン6D(延いてはブレーキパッド6C)の保持作動(アプライ)または解除作動(リリース)のための作動要求信号に応じて、ピストン6D(延いてはブレーキパッド6C)を推進するべく電動モータ7Aを駆動制御する。
図3に示すように、パーキングブレーキ制御装置24の演算回路25には、記憶部としてのメモリ26に加えて、パーキングブレーキスイッチ23、車両データバス20、電圧センサ部27、モータ駆動回路28、電流センサ部29等が接続されている。車両データバス20からは、パーキングブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。また、パーキングブレーキ制御装置24は、車両データバス20または前記通信線を介して、ESC制御装置17を含む各種ECUに情報や指令を出力することができる。
なお、車両データバス20から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサをパーキングブレーキ制御装置24(の演算回路25)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。また、パーキングブレーキ制御装置24の演算回路25は、車両データバス20に接続された他の制御装置(例えばESC制御装置17)から前述の判断ロジックやABS制御に基づく作動要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによるパーキングブレーキのアプライ・リリースの判定やABSの制御を、パーキングブレーキ制御装置24に代えて、他の制御装置、例えばESC制御装置17で行う構成とすることができる。即ち、ESC制御装置17にパーキングブレーキ制御装置24の制御内容を統合することが可能である。
パーキングブレーキ制御装置24は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなる記憶部としてのメモリ26を備えている。メモリ26には、前述のパーキングブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックやABSの制御のプログラムが格納されている。これに加え、メモリ26には、後述の図4および図5に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、パーキングブレーキスイッチ23がアプライ側に操作されたときの制御処理に用いる処理プログラム、図7に示すブレーキパッド6Cの温度と厚さとの関係、図8に示すモータ回転量と推力(クランプ力)との関係等が格納されている。
さらに、パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aによるパーキングブレーキの現在の状態(ステータス)をメモリ26に記憶する。より具体的には、メモリ26には、電動パーキングブレーキの制動の保持または解除の制動状態(保持状態、解除状態、必要に応じて不明状態)が記憶される。この場合、電動パーキングブレーキの状態(換言すれば、押圧部材保持機構8によるピストン6Dの推力保持状態)は、その状態が変更される毎にメモリ26に更新可能に記憶される。即ち、パーキングブレーキ制御装置24の演算回路25では、後輪側ディスクブレーキ6(のピストン6D)の状態が保持状態、解除状態、不明状態のいずれであるかを判定し、その判定結果が、随時、または、作動処理の区切りのタイミングでメモリ26に記憶される。
なお、第1の実施形態では、パーキングブレーキ制御装置24をESC制御装置17と別体としたが、パーキングブレーキ制御装置24とESC制御装置17とを一体に(即ち、1個の制動用制御装置により一体に)構成してもよい。また、パーキングブレーキ制御装置24は、左右で2つの後輪側ディスクブレーキ6,6を制御するようにしているが、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6毎に設けるようにしてもよく、この場合には、それぞれのパーキングブレーキ制御装置24を後輪側ディスクブレーキ6に一体的に設けることもできる。
図3に示すように、パーキングブレーキ制御装置24には、電源ライン19からの電圧を検出する電圧センサ部27、左右の電動モータ7A,7Aをそれぞれ駆動する左右のモータ駆動回路28,28、左右の電動モータ7A,7Aのそれぞれのモータ電流を検出する左右の電流センサ部29,29等が内蔵されている。これら電圧センサ部27、モータ駆動回路28、電流センサ部29は、それぞれ演算回路25に接続されている。これにより、パーキングブレーキ制御装置24の演算回路25では、アプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部29により検出される電動モータ7Aの電流値(の変化)に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド6Cとの当接・離接の判定、電動モータ7Aの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)等を行うことができる。
ところで、前述の特許文献1の技術は、電動モータによる推力(即ち、ブレーキパッドがディスクロータを押圧する押圧力)を推力センサなしで制御するために、推力と相関のあるモータ電流を指標とし、モータ電流が所定値を超えると、電動モータに対する通電を停止する。また、電動モータの駆動を開始したときの突入電流は、推力との相関がないため、無視している。
ここで、ピストンの推力(押圧力)が保持されていない状態(リリース状態)から電動モータの駆動を開始するときは、ブレーキパッドとディスクロータとの間やピストンとこのピストンを押し出すための部材(直動部材)との間に、それぞれ隙間がある。このため、モータ始動直後の突入電流は、推力が発生し始める前に収束する。従って、「モータ始動直後の突入電流」と「推力を発生させるためのモータ負荷上昇による電流上昇」とを、切り分けることができる。例えば、モータ始動から所定時間(マスク時間)は、電流値をモータ停止のための判定に利用しないことで、区別することが可能である。
一方、例えば、走行中のサービスブレーキの使用により、ブレーキパッドやディスクロータの温度が上昇した場合を考える。この場合、電動モータを駆動してパーキングブレーキをアプライ(作動)した後、ディスクロータおよびブレーキパッドの温度が低下すると、熱収縮に伴って推力が低下する可能性がある。そこで、この熱収縮を考慮して、アプライから所定時間経過後に、再アプライ(リクランプ、増し締め)することが考えられる。
この場合、即ち、再アプライのときは、ブレーキパッドとディスクロータとの間、および、ピストンとこのピストンを押し出すための部材(直動部材)との間に、隙間がない。このため、電動モータを始動すると、始動直後に突入電流が発生し、かつ、この突入電流が収束しつつ電動モータの負荷の増大に伴って電流値が上昇する。これにより、「モータ始動直後の突入電流」と「推力発生のために使われる電流」との区別が困難になる可能性がある。即ち、再アプライしたときに、電動モータの停止を電流値により制御すると、推力制御精度が低下し、最大推力が増大する可能性がある。
そこで、実施形態では、再アプライのときの推力制御精度を向上し、最大推力を抑制できるように、再アプライのとき(即ち、推力を保持している状態から推力を上昇させるとき)は、モータ回転量、即ち、ピストンの直動量を、推力の代替特性として用いる。即ち、実施形態では、パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aの作動を制御し、電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8による保持作動が完了して電動モータ7Aを停止した後に、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧する方向に電動モータ7Aを作動させる。そして、パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8による保持作動が完了して電動モータ7Aを停止した後に、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧する方向に電動モータ7Aを作動させる場合、電動モータ7Aの回転量が所定値(回転量閾値)に達したときに電動モータ7Aを停止する。
換言すれば、パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aの作動(駆動)を制御することにより、パーキングブレーキのアプライ(保持作動)とリリース(解除作動)を行う。これに加えて、パーキングブレーキ制御装置24は、押圧部材保持機構8による保持作動完了後に、電動モータ7Aを再作動させる。例えば、パーキングブレーキ制御装置24は、保持作動完了(アプライ完了)から所定時間経過後に、電動モータ7Aを再作動(再アプライ)させる。このとき、即ち、保持状態(アプライ状態)から電動モータ7Aをさらに作動して再アプライするとき、パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aの回転量が所定値に達したときに電動モータ7Aを停止する。換言すれば、再アプライのときは、電動モータ7Aの停止を判定する閾値(判定値)として、電動モータ7Aの電流値を用いない。
なお、再アプライは、例えば、アプライしたときにブレーキパッド6Cの温度が高い場合、即ち、アプライ後の温度低下による熱収縮に伴って制動力が低下する可能性がある場合に、アプライから所定時間経過後に行う。この場合、所定時間は、後輪側ディスクブレーキ6の制動力が、ディスクロータ4およびブレーキパッド6Cの熱収縮に伴う制動力の低下により、車両の停止の維持に必要な制動力よりも小さくなる前に、電動モータ7Aの再アプライが開始されるように設定する。このような所定時間は、例えば、計算、実験、シミュレーション等により予め求めておく。また、所定時間は、予め設定した固定値とすることができる他、例えば、アプライしたとき(より具体的には、アプライ完了時)のディスクロータ4またはブレーキパッド6Cの温度、アプライしたときの液圧等に応じて、可変にすることができる。
また、再アプライは、例えば、アプライのときに車両が停止している路面の傾斜(勾配)に応じて目標押圧力を変化させる場合に行う。即ち、路面傾斜に応じた押圧力(傾斜が小さい程小さい押圧力)でアプライし、かつ、その後に車両が完全駐車したとき(運転者が降車したとき)に、最大押圧力等の大きな押圧力で再アプライする。例えば、車両の停車時に路面傾斜に応じた押圧力でアプライした後に、イグニッションスイッチをOFFする等により完全な駐車状態となったとき(停車状態から駐車状態に移行したとき)に、再アプライを行う。完全駐車の再アプライのときに、押圧力を増大させる理由は、例えば船で車両を輸送するとき等、駐車中に路面傾斜が変化するような場合でも、車両の停止を維持できるようにするためである。
また、再アプライのときに電動モータ7Aを停止する回転量の所定値(モータ回転量の閾値)は、例えば、停車を維持するために必要な推力(押圧力)を付与できる値として設定する。例えば、温度低下(熱収縮)を考慮して再アプライを行うときの回転量の所定値は、例えば、制動力の低下に見合う推力(押圧力)を増大できる値として設定する。また、完全駐車の再アプライを行うときの回転量の所定値は、所定の傾斜(例えば、法規等で規定された傾斜)で停車を維持できる推力(押圧力)になるまで推力を増大できる値として設定することができる。
また、パーキングブレーキ制御装置24は、電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8によるによる保持作動が完了したときの保持している力(保持力=押圧力)の大小に応じて、電動モータ7Aを停止する回転量の所定値を変更することができる。例えば、完全駐車の再アプライを行うときは、アプライのときの傾斜(勾配)に応じた押圧力から、再アプライのときの回転量の所定値を可変にすることができる。具体的には、アプライのときの傾斜が緩やかで押圧力が小さい程、再アプライのときに電動モータ7Aを停止する回転量の所定値(アプライ完了からの回転量の所定値)を大きくすることができる。
また、例えば、温度低下(熱収縮)を考慮して再アプライを行うときと、それ以外(例えば、完全駐車)の再アプライを行うときとで、再アプライのときの回転量の所定値を可変にすることができる。即ち、アプライしたときのブレーキパッド6Cの温度が高い場合と、車両が停止している路面の傾斜(勾配)に応じて目標押圧力を変えてアプライを行う場合とで、アプライの保持作動が完了したときの保持している力が相違する可能性がある。そこで、この場合は、例えば、温度低下(熱収縮)を考慮して再アプライを行うときは、完全駐車の再アプライを行うときよりも、電動モータ7Aを停止する回転量の所定値(アプライ完了からの回転量の所定値)を大きくすることができる。これにより、温度低下を考慮した再アプライの保持力(押圧力)を、完全駐車の再アプライの保持力(押圧力)よりも大きくすることができる。
さらに、パーキングブレーキ制御装置24は、例えば、電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8によるによる保持作動が完了したときのブレーキパッド6Cの温度の大小に応じて、電動モータ7Aを停止する回転量の所定値を変更してもよい。例えば、温度低下を考慮して再アプライを行うときは、アプライを行ったときのブレーキパッド6Cの温度から、再アプライのときの回転量の所定値を可変にしてもよい。具体的には、アプライのときの温度が高い程、電動モータ7Aを停止する回転量の所定値(アプライ完了からの回転量の所定値)を大きくしてもよい。
いずれにしても、回転量の所定値は、アプライからの電動モータ7Aの駆動、即ち、再アプライの電動モータ7Aの駆動により、必要な推力を増大(追加)できるように、車両の仕様、電動モータ7Aの仕様、後輪側ディスクブレーキ6の仕様等を考慮して、例えば、実験、計算、シミュレーション等により予め求めておく。
一方、パーキングブレーキ制御装置24は、未保持状態(リリース状態)からブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧する方向に電動モータ7Aを作動させる場合、電動モータ7Aおよび押圧部材保持機構8による保持作動が完了となる電動モータ7Aの電流値に達したときに、電動モータ7Aを停止する。即ち、パーキングブレーキ制御装置24は、リリース状態からアプライする場合、電動モータ7Aの電流値が保持作動完了の電流値に達したときに、電動モータ7Aを停止する。このとき、パーキングブレーキ制御装置24は、付与すべき押圧力となる目標押圧力値に応じて保持作動完了の電流値(電流閾値)を設定する。即ち、パーキングブレーキ制御装置24は、アプライのときは、目標押圧力値に対応する目標電流値(電流閾値)に達するまで電動モータ7Aを駆動する。この場合、電動モータ7Aの停止の電流値(目標押圧力値に対応する電流値)は、例えば、アプライのときの車両が停止している路面の傾斜(勾配)に応じて可変にすることができる。なお、パーキングブレーキ制御装置24によるアプライおよび再アプライのときの電動モータ7Aの制御に関しては、後で詳しく述べる。
実施形態による4輪自動車のブレーキシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル9を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置11を介してマスタシリンダ12に伝達され、マスタシリンダ12によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ12内で発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管14A,14B、ESC16およびブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dを介して各ディスクブレーキ5,6に分配され、左右の前輪2と左右の後輪3とにそれぞれ制動力が付与される。
この場合、各ディスクブレーキ5,6では、キャリパ5A,6B内のブレーキ液圧の上昇に従ってピストン5B,6Dがブレーキパッド6Cに向けて摺動的に変位し、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4,4に押し付けられる。これにより、ブレーキ液圧に基づく制動力が付与される。一方、ブレーキ操作が解除されたときには、キャリパ5A,6B内へのブレーキ液圧の供給が停止されることにより、ピストン5B,6Dがディスクロータ4,4から離れる(後退する)ように変位する。これによって、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4,4から離間し、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の運転者がパーキングブレーキスイッチ23を制動側(アプライ側)に操作したときは、パーキングブレーキ制御装置24から左右の後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに給電が行われ、電動モータ7Aが回転駆動される。後輪側ディスクブレーキ6では、電動モータ7Aの回転運動が押圧部材保持機構8により直線運動に変換され、回転直動部材8Aによりピストン6Dが推進する。これにより、ブレーキパッド6Cによりディスクロータ4が押圧される。このとき、押圧部材保持機構8(直動部材8A2)は、例えば、螺合による摩擦力(保持力)により制動状態を保持される。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、パーキングブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ7Aへの給電を停止した後にも、押圧部材保持機構8により、ピストン6Dは制動位置に保持される。
一方、運転者がパーキングブレーキスイッチ23を制動解除側(リリース側)に操作したときには、パーキングブレーキ制御装置24から電動モータ7Aに対してモータが逆転するように給電される。この給電により、電動モータ7Aがパーキングブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、押圧部材保持機構8による制動力の保持が解除され、ピストン6Dがディスクロータ4から離れる方向に変位することが可能になる。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、パーキングブレーキとしての作動が解除(リリース)される。
次に、パーキングブレーキ制御装置24の演算回路25で行われる制御処理について、図4および図5を参照しつつ説明する。なお、図4の処理は、アプライ制御処理のメインの処理に対応し、図5の処理は、図4中のS3で「YES」と判定されたときに行う閾値設定処理(回転量の所定値の設定処理)に対応する。また、図4の制御処理は、例えば、パーキングブレーキ制御装置24に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図4の制御処理が開始されると(処理ルーチンが起動されると)、パーキングブレーキ制御装置24は、S1で、アプライ作動指令があるか否かを判定する。アプライ作動指令がある場合(アプライ作動指令ONの場合)の例としては、例えば、次の(a)−(d)を挙げることができる。この場合、(b)と(d)は再アプライのアプライ作動指令に対応する。
(a)パーキングブレーキスイッチ23がアプライ方向に操作された場合。
(b)車両走行中にサービスブレーキを多用したためにブレーキパッド6Cの温度(パッド温度)が高くなり、その状態でアプライをした後にパッド温度が低下した場合。
(c)ESC16による液圧の供給(増圧)により車両を停止保持している状態が長時間経過し、電動パーキングブレーキによる駐車保持に切換えるためにESC16(のESC制御装置17)からアプライ指令が出力された場合。
(d)アプライのときに車両が停止している路面の傾斜(勾配)に応じて目標押圧力を変化させる構成で、アプライ後にイグニッションスイッチのOFFの判定やドア開閉センサの開閉の判定等により完全な駐車状態となった場合。
S1で「NO」、即ち、アプライ作動指令がないと判定された場合は、エンドを介してスタートに戻り、S1の処理を繰り返す。一方、S1で「YES」、即ち、アプライ作動指令ありと判定された場合は、S2に進む。S2では、電動モータ7Aの駆動を開始する。即ち、電動モータ7Aをアプライ方向に駆動する。続くS3では、推力保持中であるか否か(現在、アプライが完了して推力を保持している状態であるか否か)を判定する。換言すれば、S3では、今回のアプライがリリース状態からのアプライであるかアプライ状態からの再アプライであるかを判定する。推力保持中であるか否かは、例えば、パーキングブレーキ制御装置24のメモリ26に記憶されている現在の電動パーキングブレーキの状態(保持状態、解除状態、不明状態)が保持状態であるか否かに基づいて判定することができる。
推力保持中であるか否かの判定の目的は、推力保持中でない場合(リリース状態)においては電流値制御(電流値を用いて電動モータ7Aの停止の判定)を行うことが望ましいためである。即ち、推力保持中でない場合は、ディスクロータ4とブレーキパッド6Cとの間にクリアランスが十分にあるため、通電直後に突入電流が発生し一時的に電流が上昇するが、推力発生前に突入電流は収束するため、推力発生のための電流値の上昇と突入電流とを容易に区別することができる。また、推力保持中でない場合には、ディスクロータ4とブレーキパッド6Cとの間、ブレーキパッド6Cとピストン6Dとの間、ピストン6Dと該ピストン6Dを推進させる直動部材8A2との間にクリアランスがある。
これらのクリアランスは、劣化(パッド摩耗量)、使用環境(雰囲気温度、供給電圧)、製造工程での寸法ばらつき、前回のリリース時の制御精度によるばらつきがあるため、必ず同じにはならない。このため、推力保持中でない場合に、モータ回転量制御(モータ回転量を用いて電動モータ7Aの停止の判定)を行う場合には、推力を発生する領域ではないクリアランスを詰めるために必要なモータ回転量を規定することが困難である。そして、クリアランスを詰めるために必要なモータ回転量を誤って設定すると、推力が増減し、推力のばらつきの原因となる。これに対して、電流値制御では、所定の電流値以上となった場合に、電動モータ7Aを停止するため、クリアランスの大小による影響を受けにくくできる。このため、電流値制御は、非ロック状態(リリース状態)での推力制御に用いることが望ましい。
一方、推力保持中の場合(アプライ状態)においては、ディスクロータ4とブレーキパッド6Cとの間、ブレーキパッド6Cとピストン6Dとの間、ピストン6Dと該ピストン6Dを推進させる直動部材8A2との間にクリアランスがない。このため、クリアランスの影響を受けにくいことから、推力保持中の場合には、モータ回転量を代替特性として推力を制御することが望ましい。
S3で「NO」、即ち、推力保持中でないと判定された場合は、S4に進む。S4では、マスク時間が経過したか否かを判定する。マスク時間とは、アプライ方向に作動を開始してからの時間であり、突入電流が十分収束する時間を設定する。S4で「NO」、即ち、マスク時間が経過していないと判定された場合は、S4の前に戻り、S4の処理を繰り返す。一方、S4で「YES」、即ち、マスク時間が経過と判定された場合は、S5に進む。S5では、電流値を取得する(読込む)。電流値は、電流センサ部29により検出することができる。S5で電流値を取得したら、S6に進む。
S6では、電流閾値IcutとS5で取得した電流値とを比較する。即ち、S6では、S5で取得した電流値が電流閾値Icut以上であるか否かを判定する。S6で「NO」、即ち、S5で取得した電流値が電流閾値Icut未満であると判定された場合は、S5の前に戻り、S5以降の処理を繰り返す。一方、S6で「YES」、即ち、S5で取得した電流値が電流閾値Icut以上であると判定された場合は、S7に進む。S7では、電動モータ7Aを停止する。S7で電動モータ7Aを停止したら、エンドを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。なお、電流閾値Icutは、例えば、アプライのときの目標押圧力に応じて可変にすることができる。
一方、S3で「YES」、即ち、推力保持中であると判定された場合は、S8に進む。S8では、モータ回転量を積算する。即ち、モータ回転量を、電流と電圧とモータ固有の係数とを用いて毎周期算出し、それを積算することにより、モータ回転量積算値を求める。モータ回転量は、例えば、下記の数1式により算出する。そして、今回の周期で算出したモータ回転量を、前回の周期で算出されたモータ回転量積算値に加算(積算)することにより、モータ回転量積算値を求める。この場合、モータ誤差を考慮してモータ回転量を算出してもよい。
ここで、モータ回転量(モータ回転量積算値)は、ピストン6Dの推進量の代替特性である。即ち、モータ回転量を求めるために、モータ回転量と相関関係あるピストン6Dの推進量を用いてもよい。例えば、センサを用いてピストン6Dの直動量を検出(計測)してもよい。また、モータ回転量として、レゾルバを用いて電動モータ7Aの回転角を検出(計測)してもよい。また、モータ回転量として、回転センサを用いて電動モータ7Aの回転数を検出(計測)してもよい。即ち、モータ回転量(モータ回転量積算値)は、電動モータ7Aの回転量を用いてもよいし、電動モータ7Aの回転量と相関関係のあるピストン推進量等、電動モータ7Aの突入電流の影響を受けずに保持力(押圧力)の変化を検出することができる状態量を、モータ回転量として用いてもよい。この場合、電動モータ7Aの回転量が所定値に達したか否かは、アプライからの電動モータ7Aの変化量、即ち、アプライが完了したときを0とし、この状態からの変化量が所定値(閾値)に達したか否かにより判定することができる。
S8でモータ回転量を積算したら(モータ回転量積算値を算出したら)、S9に進む。S9では、モータ回転量閾値RcutとS8で算出したモータ回転量積算値とを比較する。即ち、S9では、S8で算出したモータ回転量積算値がモータ回転量閾値Rcut以上であるか否かを判定する。S9で「NO」、即ち、S8で算出したモータ回転量積算値がモータ回転量閾値Rcut未満であると判定された場合は、S8の前に戻り、S8以降の処理を繰り返す。即ち、S8でモータ回転量を積算しS9でモータ回転量閾値Rcutと比較することを繰り返す。一方、S9で「YES」、即ち、S8で算出したモータ回転量の積算値がモータ回転量閾値Rcut以上であると判定された場合は、S7に進む。即ち、S7で電動モータ7Aを停止し、エンドを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
ここで、モータ回転量閾値Rcutは、再アプライを行う状況(シーン)に応じて切換えることが望ましい。推力保持状態から再アプライを行う状況としては、例えば、次の(A)−(C)を挙げることができる。
(A)停車状態から駐車状態(完全駐車状態)に遷移した場合の再アプライ。
(B)最初(1回目)のアプライ時にパッド温度が高温であり、かつ、現在のパッド温度が低下した場合の再アプライ(パッド温度リクランプ)。
(C)推力保持中にパーキングブレーキスイッチ23が操作されることによる増し締めの再アプライ。
モータ回転量閾値Rcutは、必要に応じて、それぞれの再アプライについて、異なる値を設定することが望ましい。本実施形態では、上記(A)と(B)の場合を例に挙げて説明する。
図5は、モータ回転量閾値Rcutの設定(選択)の制御処理を示している。この処理は、例えば、図4のS3で「YES」と判定されたときに行う。即ち、図4のS3で「YES」と判定されることにより、図5の制御処理が開始されると、S11では、再アプライがパッド温度リクランプであるか否かを判定する。即ち、S11では、温度低下(熱収縮)を考慮して行う再アプライであるか否かを判定する。S11で「YES」、即ち、再アプライがパッド温度リクランプであると判定された場合は、S12に進む。S12では、モータ回転量閾値Rcutをパッド温度リクランプ用の閾値に設定し、終了する。一方、S11で「NO」、即ち、再アプライがパッド温度リクランプでないと判定された場合は、S13に進む。S13では、モータ回転量閾値Rcutを駐車移行用の閾値に設定し、終了する。この場合、パッド温度リクランプ用の閾値は、例えば、駐車移行用の閾値よりも大きくすることができる。これにより、温度低下(熱収縮)を考慮して再アプライを行ったときの保持力(押圧力)を、完全駐車の再アプライを行ったときの保持力(押圧力)よりも大きくすることができる。
ここで、パッド温度リクランプ(パッド温度による再アプライ)は、パッド温度が高い場合、例えば、パッド温度と相関のあるロータ温度が所定値以上の場合に行う。この場合、ロータ温度は、温度センサにより検出(測定)した値を用いてもよいし、演算により推定した値を用いてもよい。再アプライ時(リクランプ時)の推力、および、再アプライを実施するタイミングは、パッド温度に応じて変更する。図7は、パッド温度とパッド厚さとの関係を示している。パッド温度が高い場合は、熱膨張により厚みが増し、温度が下がると厚みが薄くなる。そこで、再アプライ時のモータ回転量閾値Rcutは、アプライ時(1回目のアプライ時)の推定パッド温度T2のときのパッド厚さと現在のパッド温度T1のときのパッド厚さの差分ΔXとする。そして、モータ回転量とピストン変位(直動量)の関係は、例えば、下記の数2式として表すことができる。この数2式により、ΔXに相当するモータ回転量を閾値に設定する。
一方、停車状態から駐車保持状態(完全駐車状態)へ移行する場合のモータ回転量閾値Rcutは、次のように設定する。即ち、図8は、推力(クランプ力)とモータ回転量(モータ回転量積算値)との関係の一例を示している。駐車移行用の閾値は、停車のためのアプライ(1回目のアプライ)後の推力と駐車保持するために必要な推力との差分に相当する分の推力を発生可能なモータ回転量とすることができる。このとき、推力に対するモータ回転量の特性は、シリンダ剛性、パッド摩擦量、パッド摩擦状態、内機の剛性、無効ストローク(各部の遊び、バックラッシ等)を考慮して設定する必要がある。また、モータ回転量を直接計測せずに推定値を用いる場合は、モニタの誤差を考慮して閾値を設定してもよい。
図6は、電流、推力、および、図4中のS8で積算されるモータ回転量の時間変化の一例を示している。図6に示すように、パーキングブレーキ制御装置24は、保持状態(アプライ状態)から電動モータ7Aをさらに作動して再アプライ(増し締め)するときは、電動モータ7Aの回転量が所定値(モータ回転量閾値)に達したときに、電動モータ7Aを停止する。これにより、電動モータ7Aの停止(アプライ)後からの再作動(再アプライ)のときに、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。
以上のように、実施形態では、パーキングブレーキ制御装置24は、アプライ後に再アプライする場合、電動モータ7Aの停止を電動モータ7Aの回転量(回転量積算値)から判定する。このため、アプライ後の再アプライのときに、電動モータ7Aの停止を電動モータ7Aの電流値から判定する構成と比較して、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。この結果、再アプライしたときの最大推力を低減することができ、ディスクブレーキ6(キャリパ6B)の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。さらに、最大推力を低減できることにより、再アプライ後のリリースのときに、リリース開始から推力が抜けるまでの時間を短くできる。これにより、車両発進時の引っかかり感を低減することができ、乗り心地を向上できる。
実施形態では、パーキングブレーキ制御装置24は、未保持状態(リリース状態)からアプライする場合、電動モータ7Aの停止を電流値から判定する。このため、アプライのときに、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。
実施形態では、パーキングブレーキ制御装置24は、アプライしたときの保持している力(即ち、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4を押圧する力、ピストン6Dの推力)の大小に応じて、電動モータ7Aを停止する回転量の所定を変更する。このため、アプライしたときの保持力(即ち、押圧力)が大きくても小さくても(即ち、保持力の大小に拘わらず)、アプライ後の再アプライのときに、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。
なお、実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6を電動パーキングブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動パーキングブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、後輪側ディスクブレーキ6を電動パーキングブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動パーキングブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとしてもよい。さらに、前輪側ディスクブレーキ5と後輪側ディスクブレーキ6との両方を、電動パーキングブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとしてもよい。要するに、車両の車輪のうち少なくとも左右一対の車輪のブレーキを電動パーキングブレーキにより構成することができる。
実施形態では、ブレーキ機構として、電動パーキングブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ6を例に挙げて説明した。しかし、ディスクブレーキ式のブレーキ機構に限らず、ドラムブレーキ式のブレーキ機構として構成してもよい。さらに、ディスクブレーキにドラム式の電動パーキングブレーキを設けたドラムインディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることによりパーキングブレーキの保持を行う構成等、電動パーキングブレーキの構成は各種のものを採用することができる。
以上説明した実施形態に基づくブレーキシステムとして、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、電動機によって制動部材を被制動部材に押圧して制動状態を保持する電動機構と、前記電動機の作動を制御し、前記電動機構による保持作動が完了して前記電動機を停止した後に前記制動部材を前記被制動部材に押圧する方向に前記電動機を作動させた制御装置と、を備える電動ブレーキ装置において、前記制御装置は、前記電動機構による保持作動が完了して前記電動機を停止した後に、前記制動部材を前記被制動部材に押圧する方向に前記電動機を作動させる場合、前記電動機の回転量が所定値に達したときに前記電動機を停止する。
この第1の態様によれば、制御装置は、電動機構による保持作動が完了して電動機を停止した後に(即ち、アプライ後に)、制動部材を被制動部材に押圧する方向に電動機を作動させる場合(即ち、再アプライする場合)、電動機の停止を電動機の回転量から判定する。このため、アプライ後の再アプライのときに、電動機の停止を電動機の電流値から判定する構成と比較して、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。この結果、再アプライしたときの最大推力を低減することができ、ブレーキ機構の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。さらに、最大推力を低減できることにより、再アプライ後のリリースのときに、リリース開始から推力が抜けるまでの時間を短くできる。これにより、車両発進時の引っかかり感を低減することができ、乗り心地を向上できる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記制御装置は、未保持状態から前記制動部材を前記被制動部材に押圧する方向に前記電動機を作動させる場合、前記電動機構による保持作動が完了となる前記電動機の電流値に達したときに、前記電動機を停止する。
この第2の態様によれば、制御装置は、未保持状態から制動部材を被制動部材に押圧する方向に電動機を作動させる場合(即ち、アプライする場合)、電動機の停止を電流値から判定する。このため、アプライのときに、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。
第3の態様としては、第1の態様または第2の態様において、前記制御装置は、前記電動機構による保持作動が完了したときの保持している力の大小に応じて、前記電動機を停止する前記回転量の前記所定値を変更する。
この第3の態様によれば、制御装置は、保持作動が完了したとき(即ち、アプライしたとき)の保持している力(即ち、制動部材が被制動部材を押圧する力)の大小に応じて、電動機を停止する回転量の所定を変更する。このため、アプライしたときの保持力(即ち、押圧力)が大きくても小さくても(即ち、保持力の大小に拘わらず)、アプライ後の再アプライのときに、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。
第4の態様としては、電動機によって制動部材を被制動部材に押圧して制動状態を保持する電動機構と、前記電動機の作動を制御し、前記電動機構による保持作動が完了して前記電動機を停止した後に前記制動部材を前記被制動部材に押圧する方向に前記電動機を作動させた制御装置と、を備える電動ブレーキ装置において、前記制御装置は、車両の停車状態時に前記電動機構による保持作動が完了して前記電動機を停止した後、車両が前記停車状態から駐車状態に移行したときに前記制動部材を前記被制動部材へ押圧する方向に前記電動機を作動させる場合、前記電動機の回転量が所定値に達したときに前記電動機を停止させる。
この第4の態様によれば、制御装置は、車両の停車状態時に電動機構による保持作動が完了して電動機を停止した後(即ち、停車のアプライ後)、車両が停車状態から駐車状態に移行したときに制動部材を被制動部材に押圧する方向に電動機を作動させる場合(即ち、駐車移行の再アプライする場合)、電動機の停止を電動機の回転量から判定する。このため、アプライ後の再アプライのときに、電動機の停止を電動機の電流値から判定する構成と比較して、所望の推力(押圧力)を精度よく付与することができる。この結果、再アプライしたときの最大推力を低減することができ、ブレーキ機構の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。さらに、最大推力を低減できることにより、再アプライ後のリリースのときに、リリース開始から推力が抜けるまでの時間を短くできる。これにより、車両発進時の引っかかり感を低減することができ、乗り心地を向上できる。