以下、実施形態によるブレーキシステムを、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4および図7に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、「ステップ1」=「S1」とする)。
図1ないし図4は、第1の実施形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左右の前輪2(FL,FR)と左右の後輪3(RL、RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。車輪(各前輪2、各後輪3)は、車体1と共に車両を構成している。車両には、制動力を付与するためのブレーキシステムが搭載されている。以下、車両のブレーキシステムについて説明する。
前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する被制動部材(回転部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキである前輪側ディスクブレーキ5により制動力が付与される。後輪3用のディスクロータ4は、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキである後輪側ディスクブレーキ6により制動力が付与される。
左右の後輪3に対応してそれぞれ設けられた一対(一組)の後輪側ディスクブレーキ6は、電動ブレーキ装置を構成している。即ち、電動ブレーキ装置は、車両の左右両輪(左右の後輪3,3)に設けられている。そして、後輪側ディスクブレーキ6は、後述の液圧供給装置16および制動用制御装置17と共に、ブレーキシステムを構成している。図2に示すように、後輪側ディスクブレーキ6は、例えば、キャリアと呼ばれる取付部材6Aと、ホイールシリンダとしてのキャリパ6Bと、制動部材(摩擦部材、摩擦パッド)としての一対のブレーキパッド6Cと、押圧部材としてのピストン6Dとを含んで構成されている。
取付部材6Aは、車両の非回転部に固定され、ディスクロータ4の外周側を跨いで形成されている。キャリパ6Bは、取付部材6Aにディスクロータ4の軸方向への移動を可能に設けられている。ブレーキパッド6Cは、取付部材6Aに移動可能に取付けられ、ディスクロータ4に当接可能に配置されている。ピストン6Dは、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧する。
この場合、キャリパ6Bは、ブレーキペダル9の操作等に基づいてシリンダ6B1内に液圧(ブレーキ液圧)が供給(付加)されることにより、ブレーキパッド6Cをピストン6Dで推進する。このとき、ブレーキパッド6Cは、キャリパ6Bの爪部6B2とピストン6Dとによりディスクロータ4の両面に押圧される。これにより、ディスクロータ4と共に回転する後輪3に制動力が付与される。
さらに、後輪側ディスクブレーキ6には、電動アクチュエータ7と押圧部材保持機構8とが設けられている。電動アクチュエータ7は、電動機としての電動モータ7Aと、該電動モータ7Aの回転を減速する減速機構(図示せず)とを含んで構成されている。電動モータ7Aは、ピストン6Dを推進するための駆動源となるものである。押圧部材保持機構8は、ブレーキパッド6Cの押圧力を保持する保持機構を構成している。この場合、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転をピストン6Dの軸方向の変位(直動変位)に変換すると共に該ピストン6Dを推進する回転直動部材8Aを含んで構成されている。
即ち、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転をピストン6Dの軸方向の変位に変換すると共に、電動モータ7Aにより推進したピストン6Dを保持する。換言すれば、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aによりピストン6Dに推力を与え、該ピストン6Dによりブレーキパッド6Cを推進しディスクロータ4を押圧し、該ピストン6Dの推力を保持する。押圧部材保持機構8は、例えば、スピンドルナット機構等の回転直動変換機構として構成されている。
後輪側ディスクブレーキ6は、ブレーキペダル9の操作等に基づいて発生するブレーキ液圧によりピストン6Dを推進させ、ブレーキパッド6Cでディスクロータ4を押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、後輪側ディスクブレーキ6は、後述するように、駐車ブレーキスイッチ23からの信号等に基づく作動要求に応じて、電動モータ7Aにより押圧部材保持機構8を介してピストン6Dを推進させ、車両に制動力(駐車ブレーキないし補助ブレーキ)を付与する。
即ち、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ機構)を構成する後輪側ディスクブレーキ6は、電動モータ7Aを駆動(し、回転直動部材8Aによりピストン6Dを推進)することにより、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧して保持する。この場合、後輪側ディスクブレーキ6は、駐車ブレーキを付与するためのアプライ要求となる駐車ブレーキ要求信号(アプライ要求信号)に応じて、ピストン6Dを電動モータ7Aで推進して車両の制動を保持することが可能となっている。これと共に、後輪側ディスクブレーキ6は、ブレーキペダル9の操作に応じて、液圧源(後述のマスタシリンダ12、必要に応じて液圧供給装置16)からの液圧供給により車両の制動が可能となっている。
このように、後輪側ディスクブレーキ6は、電動モータ7Aによりディスクロータ4にブレーキパッド6Cを押圧し該ブレーキパッド6Cの押圧力を保持する押圧部材保持機構8を有し、かつ、電動モータ7Aによる押圧とは別に付加される液圧によりディスクロータ4にブレーキパッド6Cを押圧可能に構成されている。
一方、左右の前輪2に対応してそれぞれ設けられた一対(一組)の前輪側ディスクブレーキ5は、駐車ブレーキの動作に関連する機構を除いて、後輪側ディスクブレーキ6とほぼ同様に構成されている。即ち、図1に示すように、前輪側ディスクブレーキ5は、取付部材(図示せず)、キャリパ5A、ブレーキパッド(図示せず)、ピストン5B等を備えているが、駐車ブレーキの作動、解除を行うための電動アクチュエータ7(電動モータ7A)、押圧部材保持機構8等を備えていない。しかし、前輪側ディスクブレーキ5は、ブレーキペダル9の操作等に基づいて発生する液圧によりピストン5Bを推進させ、車輪(前輪2)延いては車両に制動力を付与する点で、後輪側ディスクブレーキ6と同様である。
なお、前輪側ディスクブレーキ5は、後輪側ディスクブレーキ6と同様に、電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよい。また、実施形態では、電動ブレーキ装置(駐車ブレーキ装置)として、電動モータ7Aを備えた液圧式のディスクブレーキ6を用いている。しかし、これに限定されず、電動ブレーキ装置(駐車ブレーキ装置)は、例えば、電動キャリパを備えた電動式ディスクブレーキ、電動モータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを備えたディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキをアプライ作動させるケーブルプラー式駐車ブレーキ装置等を用いてもよい。即ち、電動ブレーキ装置は、電動モータ(電動アクチューエータ)の駆動に基づいて摩擦部材(パッド、シュー)を回転部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力の保持と解除とを行うことができる構成であれば、各種の電動ブレーキ機構(電動駐車ブレーキ機構)を用いることができる。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル9が設けられている。ブレーキペダル9は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて各ディスクブレーキ5,6は、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル9には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ(ブレーキスイッチ)、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)10が設けられている。
ブレーキ操作検出センサ10は、ブレーキペダル9の踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を制動用制御装置17に出力する。ブレーキ操作検出センサ10の検出信号は、例えば、車両データバス20を介して他の制御装置(図示せず)に伝送される。
ブレーキペダル9の踏込み操作は、倍力装置11を介して、油圧源(液圧源)として機能するマスタシリンダ12に伝達される。倍力装置11は、ブレーキペダル9とマスタシリンダ12との間に設けられた負圧ブースタ(気圧倍力装置)または電動ブースタ(電動倍力装置)として構成され、ブレーキペダル9の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ12に伝える。
このとき、マスタシリンダ12は、マスタリザーバ13から供給(補充)されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ13は、ブレーキ液が収容された作動液タンクにより構成されている。ブレーキペダル9により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル9の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ12内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管14A,14Bを介して、液圧供給装置16(以下、ESC16という)に送られる。ESC16は、マスタシリンダ12と各ディスクブレーキ5,6との間に配置されている。ESC16は、マスタシリンダ12からシリンダ側液圧配管14A,14Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dを介して各ディスクブレーキ5,6に分配、供給する。即ち、ESC16は、ブレーキペダル9の操作に応じた液圧(ブレーキ液圧)を、各車輪(各前輪2、各後輪3)に設けられたディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)へ供給するためのものである。これにより、車輪2,3のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与することができる。
ここで、ESC16は、複数の制御弁と、ブレーキ液圧を加圧する液圧ポンプ(いずれも図示せず)と、該液圧ポンプを駆動する電動モータ16Aと、余剰のブレーキ液を一時的に貯留する液圧制御用リザーバ(図示せず)とを含んで構成されている。ESC16(の各制御弁および電動モータ16A)は、制動用制御装置17に接続されている。ESC16の各制御弁の開閉と電動モータ16Aの駆動は、制動用制御装置17により制御される。即ち、制動用制御装置17は、ESC16の制御を行うESC用制御装置(ESC用ECU)である。なお、後述するように、制動用制御装置17は、ESC16の制御を行うESC用制御装置であることに加えて、後輪側ディスクブレーキ6(の電動モータ7A)の制御を行う駐車ブレーキ用制御装置(駐車ブレーキ用ECU)でもある。
即ち、第1の実施形態では、ESC用制御装置(ESC用コントロールユニット)と駐車ブレーキ用制御装置(駐車ブレーキ用コントロールユニット)とを、一つの制動用制御装置17で構成している。後述するように、制動用制御装置17は、マイクロコンピュータを含んで構成され、ESC16(の各制御弁のソレノイド、電動モータ16A)を電気的に駆動制御する。これに加えて、制動用制御装置17は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを電気的に駆動制御する。制動用制御装置17の構成については、後で詳しく説明する。
制動用制御装置17は、ESC16の各制御弁(のソレノイド)、液圧ポンプ用の電動モータ16Aを個別に駆動制御することにより、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dから各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御をそれぞれのディスクブレーキ5,6毎に個別に行う。
この場合、制動用制御装置17は、ESC16を作動制御することにより、例えば以下の(1)〜(8)等の制御を実行することができる。
(1)車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪2,3に適切に制動力を配分する制動力配分制御。
(2)制動時に各車輪2,3の制動力を自動的に調整して各車輪2,3のロック(スリップ)を防止するアンチロックブレーキ制御(液圧ABS制御)。
(3)走行中の各車輪2,3の横滑りを検知してブレーキペダル9の操作量に拘わらず各車輪2,3に付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステアおよびオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御。
(4)坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御。
(5)発進時等において各車輪2,3の空転を防止するトラクション制御。
(6)先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御。
(7)走行車線を保持する車線逸脱回避制御。
(8)車両進行方向の障害物との衡突を回避する障害物回避制御(自動ブレーキ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御)。
ESC16は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時においては、マスタシリンダ12で発生した液圧を、ディスクブレーキ5,6(のキャリパ5A,6B)に直接供給する。これに対し、例えば、アンチロックブレーキ制御等を実行する場合は、増圧用の制御弁を閉じてディスクブレーキ5,6の液圧を保持し、ディスクブレーキ5,6の液圧を減圧するときには、減圧用の制御弁を開いてディスクブレーキ5,6の液圧を液圧制御用リザーバに逃がすように排出する。
さらに、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ディスクブレーキ5,6に供給する液圧を増圧または加圧するときは、供給用の制御弁を閉弁した状態で電動モータ16Aにより液圧ポンプを作動させ、該液圧ポンプから吐出したブレーキ液をディスクブレーキ5,6に供給する。このとき、液圧ポンプの吸込み側には、マスタシリンダ12側からマスタリザーバ13内のブレーキ液が供給される。
制動用制御装置17には、車両電源となるバッテリ18(ないしエンジンによって駆動されるジェネレータ)からの電力が、電源ライン19を通じて給電される。図1に示すように、制動用制御装置17は、車両データバス20に接続されている。なお、ESC16の代わりに、公知のABSユニットを用いることも可能である。さらに、ESC16を設けずに(即ち、省略し)、マスタシリンダ12とブレーキ側配管部15A〜15Dとを直接的に接続することも可能である。
車両データバス20は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を構成している。車両に搭載された多数の電子機器(制動用制御装置17を含む各種のECU)は、車両データバス20により、それぞれの間で車両内の多重通信を行う。この場合、車両データバス20に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22からの検出信号(出力信号)による情報(車両情報)が挙げられる。
さらに、車両データバス20に送られる車両情報としては、例えば、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ(傾斜センサ)、シフトセンサ(トランスミッションデータ)、加速度センサ(Gセンサ)、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号(出力信号)による情報(車両情報)も挙げられる。
ここで、M/C圧力センサ21は、シリンダ側液圧配管14A,14Bにそれぞれ設けられ、それぞれの配管内圧力(液圧)、即ち、該配管内圧力(液圧)に対応するマスタシリンダ12のM/C液圧を、配管系統(プライマリ側、セカンダリ側)毎に検出するものである。即ち、M/C圧力センサ21は、ディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)へ供給されるM/C液圧を検出するものである。なお、図1では、M/C圧力センサ21をマスタシリンダ12とESC16との間に設けているが、例えば、M/C圧力センサ21をESC16内に設けてもよい(内蔵してもよい)。
一方、W/C圧力センサ22は、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dにそれぞれ設けられ、それぞれの配管内圧力(液圧)、即ち、該配管内圧力に対応するディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)内のW/C液圧を個別に検出する。なお、図1では、W/C圧力センサ22をESC16とキャリパ5A,6Bとの間に設けているが、例えば、W/C圧力センサ22をESC16内に設けてもよい(内蔵してもよい)。M/C圧力センサ21およびW/C圧力センサ22は、例えば、ブレーキ操作検出センサ10と同様に、制動用制御装置17に接続されている。
車体1内には、運転席(図示せず)の近傍となる位置に、操作スイッチとしての駐車ブレーキスイッチ(PKB−SW)23が設けられている。駐車ブレーキスイッチ23は、運転者によって操作される操作指示部となるものである。駐車ブレーキスイッチ23は、運転者の操作指示に応じた駐車ブレーキの作動要求(保持要求となるアプライ要求、解除要求となるリリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、制動用制御装置17へ伝達する。即ち、駐車ブレーキスイッチ23は、電動モータ7Aの駆動(回転)に基づいてピストン6D延いてはブレーキパッド6Cをアプライ作動(保持作動)またはリリース作動(解除作動)させるための作動要求信号(保持要求信号となるアプライ要求信号、解除要求信号となるリリース要求信号)を制動用制御装置17に出力する。
運転者により駐車ブレーキスイッチ23が制動側(アプライ側)に操作されたとき、即ち、車両に制動力を付与するためのアプライ要求(制動保持要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ23からアプライ要求信号(駐車ブレーキ要求信号)が出力される。この場合は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側に回転させるための電力が、制動用制御装置17を介して給電される。このとき、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転に基づいてピストン6Dをディスクロータ4側に推進(押圧)し、推進したピストン6Dを保持する。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力が付与された状態、即ち、アプライ状態(制動保持状態)となる。
一方、運転者により駐車ブレーキスイッチ23が制動解除側(リリース側)に操作されたとき、即ち、車両の制動力を解除するためのリリース要求(制動解除要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ23からリリース要求信号が出力される。この場合は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側とは逆方向に回転させるための電力が、制動用制御装置17を介して給電される。このとき、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転によりピストン6Dの保持を解除する(ピストン6Dによる押圧力を解除する)。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力の付与が解除された状態、即ち、リリース状態(制動解除状態)となる。
駐車ブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、制動用制御装置17での駐車ブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が6km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、制動用制御装置17での駐車ブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。オートアプライ、オートリリースは、駐車ブレーキスイッチ23が故障したときに、自動的に制動力の付与または解除を行うスイッチ故障時補助機能として構成することができる。
さらに、車両の走行時に駐車ブレーキスイッチ23によるアプライ要求があった場合、より具体的には、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いる等の動的駐車ブレーキ(動的アプライ)の要求があった場合も、制動用制御装置17は、駐車ブレーキスイッチ23の操作に応じて制動力の付与と解除を行う。例えば、制動用制御装置17は、駐車ブレーキスイッチ23が制動側に操作されている間(制動側への操作が継続している間)制動力を付与し、その操作が終了すると制動力の付与を解除する。このとき、制動用制御装置17は、車輪(各後輪3)の状態、即ち、車輪がロック(スリップ)するか否かに応じて、自動的に制動力の付与と解除(電動ABS制御)を行う構成とすることができる。なお、本明細書では、走行中に後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを用いて制動力を付与することも「駐車ブレーキ」と表現する場合がある。
制御装置としての制動用制御装置17は、後輪側ディスクブレーキ6および液圧供給装置16と共に、ブレーキシステムを構成している。図3に示すように、制動用制御装置17は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)24を有し、制動用制御装置17には、バッテリ18(ないしエンジンによって駆動されるジェネレータ)からの電力が電源ライン19を通じて給電される。演算回路24は、例えば、同じ処理を並列に行うと共に互いに処理結果に相違がないかを監視するデュアルコア(二重回路)とし、一方のコア(回路)が故障しても他方のコア(回路)でバックアップできるように構成している。
制動用制御装置17は、前述したように、ESC16の各制御弁の開閉と電動モータ16Aの駆動を制御し、各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する。これに加えて、制動用制御装置17は、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aの駆動を制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。
即ち、制動用制御装置17は、左右の電動モータ7A,7Aを駆動することにより、ディスクブレーキ6,6を駐車ブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(アプライ・リリース)させる。このために、制動用制御装置17は、入力側が駐車ブレーキスイッチ23に接続され、出力側は各ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aに接続されている。
制動用制御装置17は、運転者の駐車ブレーキスイッチ23の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求に基づいて、左右の電動モータ7A,7Aを駆動し、左右のディスクブレーキ6,6のアプライ(保持)またはリリース(解除)を行う。このとき、後輪側ディスクブレーキ6では、各電動モータ7Aの駆動に基づいて、押圧部材保持機構8によるピストン6Dおよびブレーキパッド6Cの保持または解除が行われる。このように、制動用制御装置17は、ピストン6D(延いてはブレーキパッド6C)の保持作動(アプライ)または解除作動(リリース)のための作動要求信号に応じて、ピストン6D(延いてはブレーキパッド6C)を推進するべく電動モータ7Aを駆動制御する。
図3に示すように、制動用制御装置17の演算回路24には、記憶部としてのメモリ25に加えて、駐車ブレーキスイッチ23、車両データバス20、モータ駆動回路26,27,28等が接続されている。車両データバス20からは、ESC16の制御、および、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。また、図示は省略するが、制動用制御装置17には、ブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22が接続されている。
なお、車両データバス20から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサを制動用制御装置17(の演算回路24)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。また、制動用制御装置17の演算回路24は、車両データバス20に接続された他の制御装置から前述のアプライ・リリースの判断ロジックに基づく作動要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによる駐車ブレーキのアプライ・リリースの判定を、制動用制御装置17に代えて、他の制御装置で行う構成とすることができる。
制動用制御装置17は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなる記憶部としてのメモリ25を備えている。メモリ25には、ESC16の制御プログラム、電動駐車ブレーキ(電動モータ7A)の制御プログラムが格納されている。これに加え、メモリ25には、図4に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ブレーキペダル9の操作時に液圧失陥状態に応じて電動モータ7A,7Aの駆動(アプライ、リリース)を行う処理プログラムが格納されている。
図3に示すように、制動用制御装置17には、ESC16の電動モータ16Aを駆動するESCモータ駆動回路26、ESC16の制御弁(のソレノイド)を駆動する制御弁駆動回路(図示せず)、一方(例えば左)の後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを駆動する一側モータ駆動回路27、他方(例えば右)の後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを駆動する他側モータ駆動回路28が内蔵されている。さらに、図示は省略するが、制動用制御装置17には、電源ライン19からの電圧を検出する電圧センサ、電動モータ7A,7A,16Aのそれぞれのモータ電流を検出する電流センサ等も内蔵されている。ESCモータ駆動回路26、制御弁駆動回路、一側モータ駆動回路27、他側モータ駆動回路28、電圧センサ、電流センサは、それぞれ演算回路24に接続されている。
これにより、制動用制御装置17の演算回路24では、例えば、電流センサ部により検出されるESC16の電動モータ16Aの電流値、さらには、前述のブレーキ操作検出センサ10により検出されるブレーキ操作の有無、M/C圧力センサ21およびW/C圧力センサ22により検出される液圧値等に基づいて、ディスクブレーキ5,6に対する液圧供給が正常か否かを判定することができる。また、制動用制御装置17の演算回路24では、駐車ブレーキのアプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部により検出される電動モータ7A,7Aのモータ電流の変化(電流値の変化)に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド6Cとの当接・離接の判定、電動モータ7Aの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)を行うことができる。
ところで、前述の特許文献1の技術によれば、常用ブレーキシステムが左右両輪のうちの一方の車輪側で故障または劣化したときに、運転者がブレーキ操作をすると、一方の車輪側で電動駐車ブレーキが作動し、他方の車輪側で液圧ブレーキが作動する可能性がある。この場合、電動駐車ブレーキの応答速度と液圧ブレーキの応答速度との差に伴って、例えば、車両の挙動が変化する等、運転者を含む乗車人員に違和感を与える可能性がある。
これに対して、実施形態では、制動用制御装置17は、ブレーキペダル9の操作時にディスクブレーキ5,6(のキャリパ5A,6B)に対する液圧失陥を検出した場合に、当該液圧失陥状態に応じて、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを制御する。この場合、制動用制御装置17は、左右どちらか一方の車輪2、3に設けられたディスクブレーキ5,6に対する液圧が失陥したときに、ESC16による他方または左右両輪2,3のディスクブレーキ5,6への液圧供給を禁止し、(左右両方の)後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動し後輪側ディスクブレーキ6,6で制動を行う。
このために、制動用制御装置17は、ESC16を含むブレーキ液圧供給回路(即ち、マスタシリンダ12、シリンダ側液圧配管14A,14B、ESC16、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15D、キャリパ5A,6B、ピストン5B,6Dにより構成される液圧供給回路)を監視する。より詳しくは、制動用制御装置17は、ブレーキ操作検出センサ10の信号(ブレーキ操作の有無)、M/C圧力センサ21の信号(M/C液圧)、W/C圧力センサ22の信号(W/C液圧)、ESC16の各制御弁および電動モータ16Aの駆動状態等に基づいて、ディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)に対する液圧供給が正常か否かを検出(判定)する。
そして、制動用制御装置17は、ESC16の制御弁、電動モータ16A、ESCモータ駆動回路26、シリンダ側液圧配管14A,14B、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dの不調、異常、故障を含む液圧失陥を検出(判定)した場合、ブレーキペダル9の操作時に、液圧失陥状態に応じて、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動する。このとき、制動用制御装置17は、液圧失陥状態として、いずれの車輪2,3のディスクブレーキ5,6に対する液圧供給の失陥であるかを検出(判定)する。
制動用制御装置17は、例えば、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6のうちの左後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときは、ESC16の制御弁の開閉を制御することにより、右後輪側ディスクブレーキ6(または、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6)への液圧供給を禁止する。逆に、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6のうちの右後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときは、ESC16の制御弁の開閉を制御することにより、左後輪側ディスクブレーキ6(または、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6)への液圧供給を禁止する。この状態で、制動用制御装置17は、ブレーキペダル9の操作に応じて、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動することにより、車両に制動力を付与する。
より詳しくは、例えば、左前輪側ディスクブレーキ5および右後輪側ディスクブレーキ6の液圧配管と右前輪側ディスクブレーキ5および左後輪側ディスクブレーキ6の液圧配管とをそれぞれ別系統としたX配管の場合を考える。この場合に、例えば、左後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときは、ESC16の制御弁の開閉を制御することにより、右後輪側ディスクブレーキ6(または、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6)への液圧供給を禁止する。逆に、右後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときは、ESC16の制御弁の開閉を制御することにより、左後輪側ディスクブレーキ6(または、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6)への液圧供給を禁止する。このとき、左右の前輪側ディスクブレーキ5,5に対する液圧供給が可能であれば、制動用制御装置17は、左右の前輪側ディスクブレーキ5,5に対する液圧供給を可能としつつ、ブレーキペダル9の操作に応じて後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動することにより、車両に制動力を付与することができる。
これに対して、例えば、X配管の一方の系統が失陥することにより、左後輪側ディスクブレーキ6だけでなく該左後輪側ディスクブレーキ6と同系統の右前輪側ディスクブレーキ5に対する液圧も失陥したときは、ESC16の制御弁の開閉を制御することにより、他方の系統の左前輪側ディスクブレーキ5および右後輪側ディスクブレーキ6への液圧供給を禁止する。逆に、X配管の他方の系統が失陥することにより、右後輪側ディスクブレーキ6だけでなく該右後輪側ディスクブレーキ6と同系統の左前輪側ディスクブレーキ5に対する液圧も失陥したときは、ESC16の制御弁の開閉を制御することにより、一方の系統の右前輪側ディスクブレーキ5および左後輪側ディスクブレーキ6への液圧供給を禁止する。
このとき、制動用制御装置17は、全てのディスクブレーキ5,6への液圧供給を禁止した状態で、ブレーキペダル9の操作に応じて、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動することにより、車両に制動力を付与することができる。なお、制動用制御装置17の制御、即ち、図4に示すブレーキペダル9の操作時の電動駐車ブレーキ(電動モータ7A,7A)の制御に関しては、後で詳しく述べる。
実施形態による4輪自動車のブレーキシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル9を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置11を介してマスタシリンダ12に伝達され、マスタシリンダ12によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ12内で発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管14A,14B、ESC16およびブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dを介して各ディスクブレーキ5,6に分配され、左右の前輪2,2と左右の後輪3,3とにそれぞれ制動力が付与される。
この場合、各ディスクブレーキ5,6では、キャリパ5A,6B内のブレーキ液圧の上昇に従ってピストン5B,6Dがブレーキパッド6Cに向けて摺動的に変位し、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4,4に押し付けられる。これにより、ブレーキ液圧に基づく制動力が付与される。一方、ブレーキ操作が解除されたときには、キャリパ5A,6B内へのブレーキ液圧の供給が停止されることにより、ピストン5B,6Dがディスクロータ4,4から離れる(後退する)ように変位する。これによって、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4,4から離間し、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の運転者が駐車ブレーキスイッチ23を制動側(アプライ側)に操作したときは、制動用制御装置17から後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aに給電が行われ、電動モータ7A,7Aが回転駆動される。後輪側ディスクブレーキ6,6では、電動モータ7A,7Aの回転運動が押圧部材保持機構8,8により直線運動に変換され、回転直動部材8A,8Aによりピストン6D,6Dが推進する。これにより、ブレーキパッド6C,6Cによりディスクロータ4,4が押圧される。このとき、押圧部材保持機構8は、例えば、螺合による摩擦力(保持力)により制動状態を保持される。これにより、後輪側ディスクブレーキ6,6は、駐車ブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ7A,7Aへの給電を停止した後にも、押圧部材保持機構8,8により、ピストン6D,6Dは制動位置に保持される。
一方、運転者が駐車ブレーキスイッチ23を制動解除側(リリース側)に操作したときには、制動用制御装置17から電動モータ7A,7Aに対してモータが逆転するように給電される。この給電により、電動モータ7A,7Aが駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、押圧部材保持機構8による制動力の保持が解除され、ピストン6Dがディスクロータ4から離れる方向に変位することが可能になる。これにより、後輪側ディスクブレーキ6,6は、駐車ブレーキとしての作動が解除(リリース)される。
次に、制動用制御装置17の演算回路24で行われる制御処理について、図4を参照しつつ説明する。図4の制御処理は、例えば、制動用制御装置17に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。
制動用制御装置17が起動する等により、図4の制御処理が開始されると、制動用制御装置17は、S1で、車輪速度、液圧、減速度等の車両情報(車両データ)を取得する。車両情報は、例えば、制動用制御装置17に接続されたブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、またはW/C圧力センサ22の一方、もしくは両方から取得することができる他、車両データバス20からも必要な情報を取得することができる。
S1に続くS2では、S1で取得した車両情報(例えば、ブレーキ操作情報、M/C液圧情報)に基づき、ブレーキペダル9が踏まれているか否かを判定する。この判定は、ブレーキスイッチ、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ10の信号(情報)、M/C圧力センサ21の信号(情報)を用いて行うことができる。この場合に、例えば、M/C液圧が1MPa未満の状態が所定時間(例えば、30mSec)以上継続した場合に、ブレーキペダル9が踏まれていないと判定し、1MPa以上の状態が所定時間(例えば、30mSec)以上継続した場合に、ブレーキペダル9が踏まれていると判定することができる。
S2で「NO」、即ち、ブレーキペダル9が踏まれていないと判定された場合は、リターンする(リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す)。一方、S2で「YES」、即ち、ブレーキペダル9が踏まれていると判定された場合は、S3に進む。S3では、左右両方の後輪3,3のブレーキ液圧が失陥しているか否か、即ち、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧が失陥しているか否かを判定する。この判定は、例えば、S1で取得したM/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22の信号(液圧)、制動用制御装置17の電圧センサ、電流センサの信号(電圧、電流)等から判定することができる。
S3で「YES」、即ち、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧が失陥していると判定された場合は、S4に進む。この場合は、ブレーキペダル9が踏まれているにも拘らず、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧が失陥しているため、左右両方の後輪3,3で電動パーキングブレーキによるアシストを行う。即ち、S4では、左右両方の後輪3,3で電動駐車ブレーキを作動させるべく、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動する。これにより、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6で電動モータ7A,7Aによる制動力を付与する。S4で左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動したら、リターンする。
一方、S3で「NO」、即ち、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧が失陥していないと判定された場合は、S5に進む。S5では、左右一方の後輪3のブレーキ液圧が失陥しているか否か、即ち、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6のうち一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥しているか否かを判定する。この判定も、S3と同様に、S1で取得したM/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22の信号(液圧)、制動用制御装置17の電圧センサ、電流センサの信号(電圧、電流)等から判定することができる。
S5で「YES」、即ち、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6のうち一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥していると判定された場合は、S6に進む。この場合は、正常輪でブレーキ液圧を用いて制動力を発生させないように、即ち、正常である他方の後輪側ディスクブレーキ6でブレーキ液圧による制動力を付与しないように、正常である他方の後輪側ディスクブレーキ6への液圧制御を禁止(中止)する。即ち、正常である他方の後輪側ディスクブレーキ6(および、必要に応じて液圧が失陥している一方の後輪側ディスクブレーキ6)への液圧供給を禁止(中止)する。
この場合、制動用制御装置17は、中止要求(禁止要求)を制御弁駆動回路に出力することにより、ESC16の制御弁を閉位置にする。即ち、他方の後輪側ディスクブレーキ6(および一方の後輪側ディスクブレーキ6)の液圧供給経路に設けられた制御弁を閉位置にすることにより、他方の後輪側ディスクブレーキ6(および一方の後輪側ディスクブレーキ6)に対してブレーキ液圧が供給されないようにする。そして、S6に続くS7では、左右両方の後輪3,3で電動駐車ブレーキを作動させるべく、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動する。
これにより、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6で電動モータ7A,7Aによる制動力を付与することができる。このとき、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対して液圧が供給されないため、電動モータ7A,7Aによって所定(所望)の制動力を確保でき、かつ、制動力を付与しているときの車両安定性を向上することができる。S7で左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動したら、リターンする。
一方、S5で「NO」、即ち、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6のうち一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥していないと判定された場合は、電動駐車ブレーキを作動させずにリターンする。即ち、この場合は、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧が失陥していない(左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧供給が正常である)。このため、S8で左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動させずにリターンする。
なお、第1の実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6を電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動駐車ブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとしている。しかし、これに限らず、例えば、後輪側ディスクブレーキ6を駐車ブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとしてもよい。この場合、図4に示す制御処理は、前後が相違する(リアをフロントに置き換える)以外、同様である。
かくして、第1の実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6(のキャリパ6B)に対する液圧失陥を検出した場合にも、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aによって制動力を付与することができる。このため、走行中に液圧失陥が検出された場合にも、ブレーキペダル9の操作に応じた電動モータ7A,7Aの駆動に基づいて、車両を停止させることができる。しかも、制動用制御装置17は、液圧失陥状態に応じて電動モータ7A,7Aを制御する。具体的には、左右どちらか一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときに、ブレーキペダル9が操作されると、ESC16により他方の後輪側ディスクブレーキ6(または左右両後輪側ディスクブレーキ6,6)への液圧供給が禁止された状態で、左右両後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aによる制動力が付与される。
これにより、「一方の車輪側で電動駐車ブレーキが作動すると共に他方の車輪側で液圧ブレーキが作動すること」、または、「一方の車輪側で電動駐車ブレーキが作動すると共に他方の車輪側で液圧ブレーキと電動駐車ブレーキとの両方が作動すること」を抑制することができる。この結果、ブレーキ操作時の違和感、即ち、一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧失陥を検出した場合のブレーキペダル9の操作時の違和感を抑制することができる。換言すれば、液圧失陥を検出した場合に、正常な他方の後輪側ディスクブレーキ6への液圧供給を禁止することにより、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aによって所定(所望)の制動力を確保することができ、かつ、電動モータ7A,7Aによって制動力を付与しているときの車両安定性を向上することができる。
次に、図5ないし図7は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、液圧供給装置の制御を行う制御装置と電動ブレーキ装置の制御を行う制御装置とをそれぞれ別々の制御装置により構成したことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5において、ESC用制御装置31は、ESC16の制御を行うESC用ECUである。ESC用制御装置31は、第1の実施形態の制動用制御装置17と同様に、マイクロコンピュータを含んで構成され、ESC16の各制御弁(のソレノイド)、液圧ポンプ用の電動モータ16Aを駆動制御する。ESC用制御装置31は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aの制御は行わない点で、第1の実施形態の制動用制御装置17と相違する。
ESC用制御装置31には、ブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22、車両データバス20が接続されている。ESC用制御装置31は、ブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22により検出された情報(検出結果)を車両データバス20に出力する。
また、ESC用制御装置31は、ESC16を含むブレーキ液圧供給回路(即ち、マスタシリンダ12、シリンダ側液圧配管14A,14B、ESC16、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15D、キャリパ5A,6B、ピストン5B,6Dにより構成される液圧供給回路)を監視する。これと共に、ESC用制御装置31は、ディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)に対する液圧失陥を検出する。ESC用制御装置31は、その検出結果(失陥情報)を、車両データバス20を介して駐車ブレーキ制御装置32に出力する。
一方、制御装置としての駐車ブレーキ制御装置32は、後輪側ディスクブレーキ6(の電動モータ7A)の制御を行う駐車ブレーキ用制御装置(駐車ブレーキ用ECU)である。駐車ブレーキ制御装置32は、第1の実施形態の制動用制御装置17と同様に、マイクロコンピュータを含んで構成され、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを駆動制御する。駐車ブレーキ制御装置32は、ESC16の制御を行わない点で、第1の実施形態の制動用制御装置17と相違する。
駐車ブレーキ制御装置32は、ESC用制御装置31を含む各種の制御装置(ECU:Electronic Control Unit)と車両データバス20を介して接続されている。車両データバス20からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。また、駐車ブレーキ制御装置32には、駐車ブレーキスイッチ23が接続されている。
駐車ブレーキ制御装置32は、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを制御することにより、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。なお、駐車ブレーキ制御装置32は、左右で2つの後輪側ディスクブレーキ6,6を制御するようにしているが、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6毎に設けるようにしてもよく、この場合には、それぞれの駐車ブレーキ制御装置32を後輪側ディスクブレーキ6に一体的に設けることもできる。
図6に示すように、駐車ブレーキ制御装置32は、演算回路33、記憶部としてのメモリ34、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aをそれぞれ駆動するモータ駆動回路35,36を含んで構成されている。メモリ34には、電動駐車ブレーキ(電動モータ7A)の制御プログラムが格納されている。これに加えて、メモリ34には、図7に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ブレーキペダル9の操作時に液圧失陥状態に応じて電動モータ7A,7Aの駆動(アプライ、リリース)を行う処理プログラムが格納されている。
駐車ブレーキ制御装置32は、第1の実施形態の制動用制御装置17と同様に、ブレーキペダル9の操作時にディスクブレーキ5,6(のキャリパ5A,6B)に対する液圧失陥を検出した場合に、当該液圧失陥状態に応じて、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを制御する。この場合、駐車ブレーキ制御装置32は、左右どちらか一方の車輪2、3に設けられたディスクブレーキ5,6に対する液圧が失陥したときに、ESC16による他方または左右両輪2,3のディスクブレーキ5,6への液圧供給を禁止し、(左右両方の)後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動し後輪側ディスクブレーキ6,6で制動を行う。なお、ディスクブレーキ5,6の液圧失陥は、ESC用制御装置31により検出(判定)することができる。この場合、駐車ブレーキ制御装置32は、ESC用制御装置31による液圧失陥の情報(判定結果)を、車両データバス20を介して取得することができる。
次に、駐車ブレーキ制御装置32の演算回路33で行われる制御処理について、図7を参照しつつ説明する。図7の制御処理は、例えば、駐車ブレーキ制御装置32に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。
駐車ブレーキ制御装置32が起動する等により、図7の制御処理が開始されると、駐車ブレーキ制御装置32は、S11で、車輪速度、液圧等の車両情報(車両データ)を取得する。車両情報は、車両データバス20から取得することができる。
S11に続くS12では、S11で取得した車両情報(例えば、ブレーキ操作情報、M/C液圧情報)に基づき、ブレーキペダル9が踏まれているか否かを判定する。この判定は、ESC用制御装置31から車両データバス20を介して取得されるブレーキ操作検出センサ10の信号(情報)、M/C圧力センサ21の信号(情報)を用いて行うことができる。
S12で「NO」、即ち、ブレーキペダル9が踏まれていないと判定された場合は、リターンする(リターンを介してスタートに戻り、S11以降の処理を繰り返す)。一方、S12で「YES」、即ち、ブレーキペダル9が踏まれていると判定された場合は、S13に進む。S13では、左右の後輪3,3のうちの少なくともいずれかの後輪3のブレーキ液圧が失陥しているか否か、即ち、少なくともいずれかの後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥しているか否かを判定する。この判定は、例えば、S11で車両データバス20を介して取得したESC用制御装置31の情報(液圧失陥情報)から判定することができる。
S13で「YES」、即ち、少なくともいずれかの後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥していると判定された場合は、S14に進む。S14では、正常輪でブレーキ液圧を用いて制動力を発生させないように、即ち、正常の後輪側ディスクブレーキ6でブレーキ液圧による制動力を付与しないように、正常の後輪側ディスクブレーキ6(および、必要に応じて液圧が失陥している後輪側ディスクブレーキ6)への液圧制御を禁止(中止)する。
この場合、駐車ブレーキ制御装置32は、中止要求(禁止要求)を、車両データバス20を介してESC用制御装置31に出力することにより、ESC16の制御弁を閉位置にする。即ち、ESC用制御装置31は、駐車ブレーキ制御装置32からの中止要求(禁止要求)に基づいて、正常の後輪側ディスクブレーキ6(および、必要に応じて液圧が失陥している後輪側ディスクブレーキ6)の液圧供給経路に設けられた制御弁を閉位置にする。これにより、正常の後輪側ディスクブレーキ6(および、必要に応じて液圧が失陥している後輪側ディスクブレーキ6)に対してブレーキ液圧が供給されないようにできる。
S14に続くS15では、左右両方の後輪3,3で電動駐車ブレーキを作動させるべく、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動する、即ち、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6で電動モータ7A,7Aによる制動力を付与する。S15で左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動したら、リターンする。
一方、S13で「NO」と判定された場合は、S16に進む。この場合は、左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧が失陥していない(左右両方の後輪側ディスクブレーキ6,6に対する液圧供給が正常である)。このため、S16では、電動駐車ブレーキを作動させない。即ち、S16では、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを駆動させずに、リターンする。
第2の実施形態は、上述の如きESC用制御装置31によりESC16の制御を行い、駐車ブレーキ制御装置32により後輪側ディスクブレーキ6,6(の電動モータ7A,7A)の制御を行うもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。即ち、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、液圧失陥を検出した場合のブレーキ操作時の違和感を抑制できる。換言すれば、液圧失陥に伴って電動モータ7A,7Aにより制動力を付与しているときの車両安定性を向上することができる。
なお、第1の実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6を電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)とした場合を例に挙げて説明した。即ち、第1の実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6を電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動駐車ブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとした場合を例に挙げて説明した。
しかし、これに限らず、例えば、前輪側ディスクブレーキ6を電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)としてもよい。即ち、後輪側ディスクブレーキ6を駐車ブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとしてもよい。
さらに、前輪側ディスクブレーキ5と後輪側ディスクブレーキ6との両方を、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキ、即ち、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)としてもよい。要するに、車両の車輪のうち少なくとも左右一対の車輪のブレーキを、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)により構成することができる。このことは、第2の実施形態でも同様である。
第1の実施形態では、左右どちらか一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときに、他方の後輪側ディスクブレーキ6または左右両後輪側ディスクブレーキ6,6への液圧供給を禁止する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、左右どちらか一方の後輪側ディスクブレーキ6に対する液圧が失陥したときに、他方の後輪側ディスクブレーキ6または左右両後輪側ディスクブレーキ6,6への液圧供給を禁止することに加えて、左右両前輪側ディスクブレーキ5,5への液圧供給も禁止する構成としてもよい。即ち、左右でブレーキの応答速度が異ならないように(同じになるように)液圧供給を禁止する。このことは、第2の実施形態でも同様である。
第1の実施形態では、液圧供給装置、即ち、ブレーキペダル9の操作に応じた液圧をディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)へ供給するための液圧供給装置として、ESC16を含んで構成されたブレーキ液圧供給回路を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、液圧供給装置として、例えば、電動倍力装置を含んで構成されたブレーキ液圧供給回路としてもよい。このことは、第2の実施形態でも同様である。
第1の実施形態では、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)として、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ6を例に挙げて説明した。しかし、ディスクブレーキ式のブレーキ機構に限らず、ドラムブレーキ式のブレーキ機構として構成してもよい。さらに、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行う構成等、ブレーキ機構(電動ブレーキ装置)は各種のものを採用することができる。このことは、第2の実施形態でも同様である。
以上説明した実施形態に基づくブレーキシステムとして、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、ブレーキペダルの操作に応じた液圧を、各車輪に設けられたホイールシリンダへ供給するための液圧供給装置と、電動モータを駆動し、回転直動部材によりピストンを推進し、制動部材を被制動部材に押圧して保持する電動ブレーキ装置と、前記電動モータを制御する制御手段と、を備えるブレーキシステムであって、前記制御手段は、前記ブレーキペダルの操作時に前記ホイールシリンダに対する液圧失陥を検出した場合に、当該液圧失陥状態に応じて、前記電動モータを制御する。
この第1の態様によれば、ホイールシリンダに対する液圧失陥を検出した場合にも、電動モータによって制動力を付与することができる。しかも、制御手段は、液圧失陥状態に応じて電動モータを制御するため、ブレーキ操作時の違和感、即ち、液圧失陥を検出した場合のブレーキペダルの操作時の違和感を抑制することができる。換言すれば、液圧失陥を検出した場合に、電動モータによって所定(所望)の制動力を確保でき、かつ、電動モータによって制動力を付与しているときの車両安定性を向上することができる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記電動ブレーキ装置は、車両の左右両輪に設けられており、前記制御手段は、左右どちらか一方の車輪に設けられた前記ホイールシリンダに対する液圧が失陥したときに、前記液圧供給装置による他方または左右両輪の前記ホイールシリンダへの液圧供給を禁止し、前記電動モータを駆動し前記電動ブレーキ装置で制動を行う。
この第2の態様によれば、左右どちらか一方の車輪に設けられたホイールシリンダに対する液圧が失陥したときに、ブレーキペダルが操作されると、液圧供給装置による他方または左右両輪のホイールシリンダへの液圧供給が禁止された状態で、左右両輪に電動ブレーキ装置による制動力が付与される。これにより、「一方の車輪側で電動駐車ブレーキが作動すると共に他方の車輪側で液圧ブレーキが作動すること」、または、「一方の車輪側で電動駐車ブレーキが作動すると共に他方の車輪側で液圧ブレーキと電動駐車ブレーキとの両方が作動すること」を抑制することができる。この結果、一方の車輪側のホイールシリンダに対する液圧失陥を検出した場合のブレーキ操作時の違和感を抑制することができる。即ち、ホイールシリンダに対する液圧失陥を検出した場合に、正常のホイールシリンダへの液圧供給を禁止することにより、電動モータによる制動力の確保と制動力を付与しているときの車両安定性の向上とを両立できる。