以下、実施形態によるブレーキ装置について、当該ブレーキ装置を4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4〜図8に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。
図1ないし図6は、第1の実施形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左右の前輪2(FL,FR)と左右の後輪3(RL、RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。車輪(各前輪2、各後輪3)は、車体1と共に車両を構成する。
前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する回転部材(被制動部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキ5により制動力が付与され、後輪3用のディスクロータ4は、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキ31により制動力が付与される。これにより、各車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて各ディスクブレーキ5,31は、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル6には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)6Aが設けられている。ブレーキ操作検出センサ6Aは、ブレーキペダル6の踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を液圧供給装置用コントローラ13に出力する。ブレーキ操作検出センサ6Aの検出信号は、例えば、車両データバス16、または、液圧供給装置用コントローラ13と駐車ブレーキ制御装置22とを接続する信号線(図示せず)を介して伝送される(駐車ブレーキ制御装置22に出力される)。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、倍力装置7を介して、油圧源として機能するマスタシリンダ8に伝達される。倍力装置7は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ8との間に設けられた負圧ブースタまたは電動ブースタとして構成され、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ8に伝える。このとき、マスタシリンダ8は、マスタリザーバ9から供給されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ9は、ブレーキ液が収容された作動液タンクにより構成されている。ブレーキペダル6により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル6の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ8内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して、液圧供給装置11(以下、ESC11という)に送られる。ESC11は、各ディスクブレーキ5,31とマスタシリンダ8との間に配置され、マスタシリンダ8からの液圧をブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配する。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与する。この場合、ESC11は、ブレーキペダル6の操作量に従わない態様でも、各ディスクブレーキ5,31に液圧を供給すること、即ち、各ディスクブレーキ5,31の液圧を高めることができる。
このために、ESC11は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成される専用の制御装置、即ち、液圧供給装置用コントローラ13(以下、コントロールユニット13という)を有している。コントロールユニット13は、ESC11の各制御弁(図示せず)を開,閉したり、液圧ポンプ用の電動モータ(図示せず)を回転,停止させたりする駆動制御を行うことにより、ブレーキ側配管部12A〜12Dから各ディスクブレーキ5,31に供給されるブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、種々のブレーキ制御、例えば、倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロックブレーキ制御(ABS)、トラクション制御、車両安定化制御(横滑り防止を含む)、坂道発進補助制御、自動運転制御等が実行される。
コントロールユニット13には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。図1に示すように、コントロールユニット13は、車両データバス16に接続されている。なお、ESC11の代わりに、公知のABSユニットを用いることも可能である。さらに、ESC11を設けずに(即ち、省略し)、マスタシリンダ8とブレーキ側配管部12A〜12Dとを直接的に接続することも可能である。
車両データバス16は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を構成している。車両データバス16は、車両に搭載された多数の電子機器、コントロールユニット13および駐車ブレーキ制御装置22等との間で車両内での多重通信を行う。この場合、車両データバス16に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ6A、マスタシリンダ液圧(ブレーキ液圧)を検出する圧力センサ17、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ、シフトセンサ、加速度センサ、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号による情報(車両情報)が挙げられる。
車体1内には、運転席(図示せず)の近傍となる位置に、駐車ブレーキスイッチ(PKBSW)21が設けられている。駐車ブレーキスイッチ21は、運転者によって操作される操作指示部となるものである。駐車ブレーキスイッチ21は、運転者の操作指示に応じた駐車ブレーキの作動要求(保持要求となるアプライ要求、解除要求となるリリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、駐車ブレーキ制御装置22へ伝達する。即ち、駐車ブレーキスイッチ21は、電動モータ43Bの駆動(回転)に基づいてピストン39延いてはブレーキパッド33(図2参照)をアプライ作動(保持作動)またはリリース作動(解除作動)させるための作動要求信号(保持要求信号となるアプライ要求信号、解除要求信号となるリリース要求信号)を、コントロールユニット(コントローラ)となる駐車ブレーキ制御装置22に出力する。
運転者により駐車ブレーキスイッチ21が制動側(アプライ側)に操作されたとき、即ち、車両に制動力を付与するためのアプライ要求(保持要求、駆動要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ21からアプライ要求信号が出力される。この場合は、駐車ブレーキ制御装置22を介して後輪3用のディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力が付与された状態、即ち、アプライ状態(保持状態)となる。
一方、運転者により駐車ブレーキスイッチ21が制動解除側(リリース側)に操作されたとき、即ち、車両の制動力を解除するためのリリース要求(解除要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ21からリリース要求信号が出力される。この場合は、駐車ブレーキ制御装置22を介してディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側とは逆方向に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力の付与が解除された状態、即ち、リリース状態(解除状態)となる。
駐車ブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が6km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、駐車ブレーキ制御装置22での駐車ブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)や、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、駐車ブレーキ制御装置22での駐車ブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。オートアプライ、オートリリースは、駐車ブレーキスイッチ21が故障したときに、自動的に制動力の付与または解除を行うスイッチ故障時補助機能として構成してもよい。
さらに、車両の走行時に駐車ブレーキスイッチ21によるアプライ要求があった場合、より具体的には、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いる等の動的駐車ブレーキ(動的アプライ)の要求があった場合は、例えば、駐車ブレーキスイッチ21が制動側に操作されている間(制動側への操作が継続している間)制動力が付与され、操作が終了すると制動力の付与が解除される。このとき、駐車ブレーキ制御装置22は、車輪(各後輪3)の状態、即ち、車輪がロック(スリップ)しているか否かに応じて、これを解除するために制動力の付与と解除とを交互に行う構成(ABS制御)とすることもできる。
次に、左右の後輪3,3側に設けられる電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31,31の構成について、図2を参照しつつ説明する。なお、図2では、左右の後輪3,3に対応してそれぞれ設けられた左右のディスクブレーキ31,31のうちの一方のみを代表例として示している。
車両の左右にそれぞれ設けられた一対のディスクブレーキ31は、電動式の駐車ブレーキ機能が付設された液圧式のディスクブレーキとして構成されている。ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ制御装置22と共にブレーキシステムを構成する。ディスクブレーキ31は、車両の後輪3側の非回転部分に取付けられる取付部材32と、摩擦部材(制動部材)としてのインナ側,アウタ側のブレーキパッド33と、電動アクチュエータ43が設けられたブレーキ機構としてのキャリパ34とを含んで構成されている。
この場合、ディスクブレーキ31は、ブレーキパッド33をブレーキペダル6の操作等に基づく液圧によりピストン39で推進させ、ディスクロータ4をブレーキパッド33で押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキスイッチ21からの信号に基づく作動要求や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABS制御に基づく作動要求に応じて、電動モータ43Bにより(回転直動変換機構40を介して)ピストン39を推進させ、車両に制動力を付与する。この場合、ディスクブレーキ31は、車両の左右輪毎、実施形態では、左右の後輪3,3にそれぞれ設けられている。
取付部材32は、ディスクロータ4の外周を跨ぐようにディスクロータ4の軸方向(即ち、ディスク軸方向)に延びディスク周方向で互いに離間した一対の腕部(図示せず)と、該各腕部の基端側を一体的に連結するように設けられ、ディスクロータ4のインナ側となる位置で車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部32Aと、ディスクロータ4のアウタ側となる位置で前記各腕部の先端側を互いに連結する補強ビーム32Bとを含んで構成されている。
インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、ディスクロータ4の両面に当接可能に配置され、取付部材32の各腕部によりディスク軸方向に移動可能に支持されている。インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、キャリパ34(キャリパ本体35の爪部38とピストン39)によりディスクロータ4の両面側に押圧される。これにより、ブレーキパッド33は、車輪(後輪3)と共に回転するディスクロータ4を押圧することにより車両に制動力を与える。
取付部材32には、ホイールシリンダとなるキャリパ34がディスクロータ4の外周側を跨ぐように配置されている。キャリパ34は、取付部材32の各腕部に対してディスクロータ4の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体35と、このキャリパ本体35内に摺動可能に挿嵌して設けられたピストン39とを備えている。キャリパ34には、後述する回転直動変換機構40と電動アクチュエータ43とが設けられている。キャリパ34は、ブレーキペダル6の操作に基づいてブレーキパッド33をピストン39で推進するブレーキ機構となるものである。
キャリパ本体35は、インナ側のシリンダ部36とブリッジ部37とアウタ側の爪部38とを備えている。シリンダ部36は、軸線方向の一方側が隔壁部36Aによって閉塞され、ディスクロータ4に対向する他方側が開口された有底円筒状に形成されている。ブリッジ部37は、ディスクロータ4の外周側を跨ぐように該シリンダ部36からディスク軸方向に延びて形成されている。爪部38は、シリンダ部36と反対側においてブリッジ部37から径方向内側に向けて延びるように配置されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36は、図1に示すブレーキ側配管部12Cまたは12Dを介してブレーキペダル6の踏込み操作等に伴う液圧が供給される。このシリンダ部36は、隔壁部36Aと一体形成されている。隔壁部36Aは、シリンダ部36と電動アクチュエータ43との間に位置している。隔壁部36Aは、軸線方向の貫通穴を有しており、隔壁部36Aの内周側には、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転可能に挿入されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36内には、押圧部材(移動部材)としてのピストン39と、回転直動変換機構40とが設けられている。なお、実施形態においては、回転直動変換機構40がピストン39内に収容されている。ただし、回転直動変換機構40は、ピストン39を推進するように構成されていればよく、必ずしもピストン39内に収容されていなくてもよい。即ち、押圧部材保持機構となる回転直動変換機構40は、車両の非回転部位に設けられていればよい。
ピストン39は、ブレーキパッド33をディスクロータ4に対して離接する方向(ディスクロータ4に近付く方向、ディスクロータ4から遠ざかる方向)に移動させる。ピストン39は、軸線方向の一方側が開口しており、インナ側のブレーキパッド33に対面する、軸線方向の他方側が蓋部39Aによって閉塞されている。このピストン39は、シリンダ部36内に挿入されている。
ピストン39は、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)へ電流が供給されることにより移動することに加えて、ブレーキペダル6の踏込み等に基づいてシリンダ部36内に液圧が供給されることによっても移動する。この場合に、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)によるピストン39の移動は、直動部材42に押圧されることによって行われる。また、回転直動変換機構40はピストン39の内部に収容されており、ピストン39は、回転直動変換機構40によりシリンダ部36の軸線方向に推進されるように構成されている。
回転直動変換機構40は、押圧部材保持機構として機能する。具体的には、回転直動変換機構40は、シリンダ部36内への液圧付加によって生じる力とは異なる外力、即ち、電動アクチュエータ43により発生する力によってピストン39を推進させ、推進したピストン39(延いてはブレーキパッド33)を保持する。これにより、駐車ブレーキはアプライ状態(保持状態)となる。一方、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43によりピストン39を推進方向とは逆方向に退避させ、駐車ブレーキをリリース状態(解除状態)とする。そして、左右の後輪3用に左右のディスクブレーキ31がそれぞれ設けられるので、回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43も、車両の左右それぞれに設けられている。
回転直動変換機構40は、台形ねじ等の雄ねじが形成された棒状体を有するねじ部材41と、台形ねじによって形成される雌ねじ穴が内周側に形成された直動部材42とにより(スピンドルナット機構として)構成されている。直動部材42は、電動アクチュエータ43によりピストン39に向けて、または、ピストン39から遠ざかる方向に移動する被駆動部材(推進部材)となる。即ち、直動部材42の内周側に螺合したねじ部材41は、電動アクチュエータ43による回転運動を直動部材42の直線運動に変換するねじ機構を構成している。この場合、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとは、不可逆性の大きいねじ、実施形態においては、台形ねじを用いて形成することにより押圧部材保持機構を構成している。
押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)は、電動モータ43Bに対する給電を停止した状態でも、直動部材42(即ち、ピストン39)を任意の位置で摩擦力(保持力)によって保持するようになっている。なお、押圧部材保持機構は、電動アクチュエータ43により推進された位置にピストン39を保持することができればよく、例えば、台形ねじ以外の不可逆性の大きい通常の三角断面のねじやウォームギヤとしてもよい。
直動部材42の内周側に螺合して設けられたねじ部材41には、軸線方向の一方側に大径の鍔部であるフランジ部41Aが設けられている。ねじ部材41の軸線方向の他方側は、ピストン39の蓋部39Aに向けて延びている。ねじ部材41は、フランジ部41Aにおいて、電動アクチュエータ43の出力軸43Cに一体的に連結されている。また、直動部材42の外周側には、直動部材42をピストン39に対して回り止め(相対回転を規制)しつつ、直動部材42が軸線方向に相対移動することを許容する係合突部42Aが設けられている。これにより、直動部材42は、電動モータ43Bが駆動することにより直動し、ピストン39に接触して該ピストン39を移動させる。
電動アクチュエータ43は、キャリパ34のキャリパ本体35に固定されている。電動アクチュエータ43は、駐車ブレーキスイッチ21の作動要求信号や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABSの制御に基づいて、ディスクブレーキ31を作動(アプライ・リリース)させる。電動アクチュエータ43は、隔壁部36Aの外側に取付けられたケーシング43Aと、該ケーシング43A内に位置してステータ、ロータを備え電力(電流)が供給されることによりピストン39を移動させる電動モータ43Bと、該電動モータ43Bのトルクを増大する減速機(図示せず)と、該減速機による増大後の回転トルクを出力する出力軸43Cとを含んで構成されている。電動モータ43Bは、例えば、直流ブラシモータ等の電動のモータとして構成されている。出力軸43Cは、シリンダ部36の隔壁部36Aを軸線方向に貫通して延びており、ねじ部材41と一体に回転するように、シリンダ部36内においてねじ部材41のフランジ部41Aの端部に連結されている。
出力軸43Cとねじ部材41との連結機構は、例えば、軸線方向には移動可能であるが回転方向には回り止めされるように構成することができる。この場合は、例えばスプライン嵌合や多角形柱による嵌合(非円形嵌合)等の公知の技術が用いられる。なお、減速機としては、例えば、遊星歯車減速機やウォーム歯車減速機等が用いられてもよい。また、ウォーム歯車減速機等、逆作動性のない(不可逆性の)公知の減速機を用いる場合は、回転直動変換機構40として、ボールねじやボールランプ機構等、可逆性のある公知の機構を用いることができる。この場合は、例えば、可逆性の回転直動変換機構と不可逆性の減速機とにより押圧部材保持機構を構成することができる。
運転者が図1ないし図3に示す駐車ブレーキスイッチ21を操作したときには、駐車ブレーキ制御装置22を介して電動モータ43Bに給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転される。このため、回転直動変換機構40のねじ部材41は、一方向に出力軸43Cと一体に回転され、直動部材42を介してピストン39をディスクロータ4側に推進(駆動)する。これにより、ディスクブレーキ31は、ディスクロータ4をインナ側およびアウタ側のブレーキパッド33間で挟持し、電動式の駐車ブレーキとして制動力を付与した状態、即ち、アプライ状態(保持状態)となる。
一方、駐車ブレーキスイッチ21が制動解除側に操作されたときには、電動アクチュエータ43により回転直動変換機構40のねじ部材41が他方向(逆方向)に回転駆動される。これにより、直動部材42(および液圧付加がなければピストン39)は、ディスクロータ4から離れる方向に駆動され、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、解除状態(リリース状態)となる。
この場合、回転直動変換機構40では、ねじ部材41が直動部材42に対して相対回転されるとき、ピストン39内での直動部材42の回転が規制されているため、直動部材42は、ねじ部材41の回転角度に応じて軸線方向に相対移動する。これにより、回転直動変換機構40は、回転運動を直線運動に変換し、直動部材42によりピストン39が推進される。また、これと共に、回転直動変換機構40は、直動部材42を任意の位置でねじ部材41との摩擦力によって保持することにより、ピストン39およびブレーキパッド33を電動アクチュエータ43により推進された位置に保持する。
シリンダ部36の隔壁部36Aには、該隔壁部36Aとねじ部材41のフランジ部41Aとの間にスラスト軸受44が設けられている。このスラスト軸受44は、隔壁部36Aと共にねじ部材41からのスラスト荷重を受け、隔壁部36Aに対するねじ部材41の回転を円滑にする。また、シリンダ部36の隔壁部36Aには、電動アクチュエータ43の出力軸43Cとの間にシール部材45が設けられ、該シール部材45は、シリンダ部36内のブレーキ液が電動アクチュエータ43側に漏洩するのを阻止するように両者の間をシールしている。
また、シリンダ部36の開口端側には、該シリンダ部36とピストン39との間をシールする弾性シールとしてのピストンシール46と、シリンダ部36内への異物侵入を防ぐダストブーツ47とが設けられている。ダストブーツ47は、可撓性を有した蛇腹状のシール部材であり、シリンダ部36の開口端とピストン39の蓋部39A側の外周との間に取付けられている。
なお、前輪2用のディスクブレーキ5は、駐車ブレーキ機構を除いて、後輪3用のディスクブレーキ31とほぼ同様に構成されている。即ち、前輪2用のディスクブレーキ5は、後輪3用のディスクブレーキ31が備える、駐車ブレーキとして作動する回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43等を備えていない。しかし、ディスクブレーキ5に代えて、前輪2用に電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31を設けられてもよい。
なお、実施形態では、電動アクチュエータ43を備えた液圧式のディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、例えば、電動キャリパを備えた電動式ディスクブレーキ、電動アクチュエータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを備えたディスクブレーキ、電動アクチュエータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキをアプライ作動させる構成等、電動アクチューエータ(電動モータ)の駆動に基づいて摩擦部材(パッド、シュー)を回転部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力を保持させることができる構成であれば、上述の実施形態の構成でなくともよい。
実施形態による4輪自動車のブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ8内で発生した液圧は、シリンダ側液圧配管10A,10B、ESC11およびブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配され、左右の前輪2と左右の後輪3とにそれぞれ制動力が付与される。
後輪3用のディスクブレーキ31について説明する。キャリパ34のシリンダ部36内にブレーキ側配管部12C,12Dを介して液圧が供給され、シリンダ部36内の液圧上昇に従ってピストン39がインナ側のブレーキパッド33に向けて摺動的に変位する。これにより、ピストン39は、インナ側のブレーキパッド33をディスクロータ4の一側面に対して押圧する。このときの反力によって、キャリパ34全体が取付部材32の前記各腕部に対してインナ側に摺動的に変位する。
この結果、キャリパ34のアウタ脚部(爪部38)は、アウタ側のブレーキパッド33をディスクロータ4に対して押圧するように動作し、ディスクロータ4は、一対のブレーキパッド33によって軸線方向の両側から挟持される。それによって、液圧に基づく制動力が発生される。一方、ブレーキ操作が解除されたときには、シリンダ部36内への液圧供給が停止されることにより、ピストン39がシリンダ部36内へと後退するように変位する。これによって、インナ側とアウタ側のブレーキパッド33がディスクロータ4からそれぞれ離間し、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の運転者が駐車ブレーキスイッチ21を制動側(オン)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置22からディスクブレーキ31の電動モータ43Bに給電が行われ、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転駆動される。電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43の回転運動を回転直動変換機構40のねじ部材41を介して直動部材42の直線運動に変換し、直動部材42を軸線方向に移動させてピストン39を推進する。これにより、一対のブレーキパッド33がディスクロータ4の両面に対して押圧される。
このとき、直動部材42は、ピストン39から伝達される押圧反力を垂直抗力とした、ねじ部材41との間に発生する摩擦力(保持力)により制動状態に保持され、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ43Bへの給電を停止した後にも、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとにより、直動部材42(延いては、ピストン39)は制動位置に保持される。
一方、運転者が駐車ブレーキスイッチ21を制動解除側(オフ)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置22から電動モータ43Bに対してモータが逆転するように給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cは、駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、ねじ部材41と直動部材42とによる制動力の保持が解除され、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43の逆回転の量に対応した移動量で直動部材42を戻り方向に、即ち、シリンダ部36内へと移動させ、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ31)の制動力を解除する。
次に、駐車ブレーキ制御装置22について、図3を参照しつつ説明する。
制御手段としての駐車ブレーキ制御装置22は、左右一対のディスクブレーキ31,31と共にブレーキシステムを構成する。駐車ブレーキ制御装置22は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)23を有し、駐車ブレーキ制御装置22には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。
駐車ブレーキ制御装置22は、左後輪3側と右後輪3側のディスクブレーキ31,31の電動モータ43B,43Bを制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。即ち、駐車ブレーキ制御装置22は、左右の電動モータ43B,43Bを駆動することにより、ディスクブレーキ31,31を駐車ブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(アプライ・リリース)させる。このために、図1ないし図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置22は、入力側が駐車ブレーキスイッチ21に接続され、出力側は各ディスクブレーキ31,31の電動モータ43B,43Bに接続されている。
駐車ブレーキ制御装置22は、運転者の駐車ブレーキスイッチ21の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求、ABS制御による作動要求に基づいて、左右の電動モータ43B,43Bを駆動し、左右のディスクブレーキ31,31のアプライ(保持)またはリリース(解除)を行う。このとき、各ディスクブレーキ31,31では、各電動モータ43Bの駆動に基づいて、押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39およびブレーキパッド33の保持または解除が行われる。即ち、駐車ブレーキ制御装置22は、ピストン39(延いてはブレーキパッド33)の保持作動(アプライ)または解除作動(リリース)のための作動要求信号に応じて、ピストン39(延いてはブレーキパッド33)を推進するべく電動モータ43Bを駆動制御する。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置22の演算回路(CPU)23には、記憶部としてのメモリ24に加えて、駐車ブレーキスイッチ21、車両データバス16、電圧センサ部25、モータ駆動回路26、電流センサ部27等が接続されている。車両データバス16からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。
なお、車両データバス16から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサを駐車ブレーキ制御装置22(の演算回路23)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。また、駐車ブレーキ制御装置22の演算回路23は、車両データバス16に接続された他の制御装置(例えばコントロールユニット13)から前述の判断ロジックやABS制御に基づく作動要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによる駐車ブレーキのアプライ・リリースの判定やABSの制御を、駐車ブレーキ制御装置22に代えて、他の制御装置、例えばコントロールユニット13で行う構成とすることができる。即ち、コントロールユニット13に駐車ブレーキ制御装置22の制御内容を統合することが可能である。
駐車ブレーキ制御装置22は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ24を備えている。メモリ24には、前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックやABSの制御のプログラムが格納されている。これに加え、メモリ24には、図4ないし図6に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、作動要求信号(アプライ要求信号、リリース要求信号)に対する電動モータ43Bの制御可否の判断と、その判断に応じて制御可否を切り換えてディスクブレーキ31の締結(制動付与)または解除(制動解除)を行うための処理プログラムが格納されている。
さらに、駐車ブレーキ制御装置22のメモリ24には、作動要求信号に応じた作動の完了により、回転直動変換機構40によるピストン39の保持状態または解除状態が記憶される。具体的には、メモリ24には、回転直動変換機構40によるピストン39の状態(例えば、保持状態、解除状態、不明状態)が、状態(ステータス)の変更となる毎に記憶される。即ち、駐車ブレーキ制御装置22の演算回路23では、ディスクブレーキ31(のピストン39)の状態が保持状態、解除状態、不明状態のいずれであるかを判定し、その判定結果が、随時、または、作動処理の区切りのタイミングでメモリ24に記憶される。
具体的に述べると、演算回路23では、回転直動変換機構40によるピストン39の保持が完了すると、保持フラグがONとなり、ピストン39の解除が完了すると、解除フラグがONとなる。メモリ24には、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が、保持フラグがONのときは「保持状態(締結状態)」として記憶され、解除フラグがONのときは「解除状態」として記憶される。
また、例えば、電動モータ43Bの駆動を開始してから保持フラグまたは解除フラグがONになるまでの間に電動モータ43Bの駆動が終了した場合、例えば、駐車ブレーキ制御装置22への電力供給が断たれた場合等、「保持状態」と「解除状態」のいずれでもないときは、メモリ24には、「不明状態」として記憶される。即ち、「解除状態」から「保持状態」へ作動が開始されたときや、「保持状態」から「解除状態」へ作動が開始されたときに、メモリ24には、「不明状態」が記憶されるようになっている。
メモリ24に記憶される回転直動変換機構40の状態(ピストン39の状態)は、電源ライン15の電力が不安定な状態となり一時的に電力が低下したとき、即ち、駐車ブレーキ制御装置22への電力供給が断たれ(システムダウンし)、その後電力が回復してシステムが再起動したときでも直ちに利用できるように、電力の供給がなくても記憶を維持できる不揮発性の記憶装置(メモリ)、例えばEEPROMに記憶する。
なお、実施形態では、駐車ブレーキ制御装置22をESC11のコントロールユニット13と別体としたが、駐車ブレーキ制御装置22をコントロールユニット13と一体に構成してもよい。また、駐車ブレーキ制御装置22は、左右で2つのディスクブレーキ31,31を制御するようにしているが、左右のディスクブレーキ31,31毎に設けるようにしてもよく、この場合には、それぞれの駐車ブレーキ制御装置22をディスクブレーキ31に一体的に設けることもできる。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置22には、電源ライン15からの電圧を検出する電圧センサ部25、左右の電動モータ43B,43Bをそれぞれ駆動する左右のモータ駆動回路26,26、左右の電動モータ43B,43Bのそれぞれのモータ電流を検出する左右の電流センサ部27,27等が内蔵されている。これら電圧センサ部25、モータ駆動回路26、電流センサ部27は、それぞれ演算回路23に接続されている。
これにより、駐車ブレーキ制御装置22の演算回路23では、アプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部27,27により検出される電動モータ43B,43Bのモータ電流の変化に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド33との当接・離接の判定、電動モータ43B,43Bの駆動による推力の判定、電動モータ43B,43Bの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)等を行うことができる。この場合、演算回路23は、例えば、モータ電流値が予め設定した保持閾値または解除閾値に達したときに、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が保持状態または解除状態になったと判定し、電動モータ43Bの駆動を停止する。この処理は、例えば、左右のディスクブレーキ31毎(左右の電動モータ43B毎)に独立して行う。
さらに、駐車ブレーキ制御装置22は、電流や電圧に基づいてモータ駆動回路26,26および電動モータ43B,43Bを含む電動アクチュエータ43,43の異常診断を行う。例えば、駐車ブレーキ制御装置22の演算回路23は、電源ライン15からの電圧VB(駐車ブレーキ制御装置22に入力される電圧)、左右の電動モータ43B,43Bのモータ電流値に応じて、左右のディスクブレーキ31,31の異常、より具体的には、左右の回転直動変換機構40や電動アクチュエータ43の異常を検出(診断)する。
この場合、後述するように、駐車ブレーキ制御装置22は、例えば、アプライ動作中またはリリース動作中のモータ電流値の変化や、アプライ動作またはリリース動作が完了するまでに要する時間等に基づいて、回転直動変換機構40の異常がどのような異常であるかを判定する。また、駐車ブレーキ制御装置22は、異常の判定を、左右のディスクブレーキ31毎(左右の電動モータ43B毎)に独立して行う。これにより、両輪正常であるか、左輪異常であるか、右輪異常であるか、両輪異常であるかを判断することができる。
ここで、回転直動変換機構40の異常を検出した場合、その異常がどのような異常であっても、その異常を全て故障と判定し、その時点から電動モータ43Bの駆動を完全に禁止する構成とすることが考えられる。しかし、この場合は、駐車ブレーキの保持(アプライ)または解除(リリース)が過剰に制限される可能性がある。
そこで、実施形態では、駐車ブレーキ制御装置22は、異常検出手段(図5のS12,S13,S18、図6のS32,S33,S38)と、作動継続可否検出手段(図5のS19、図6のS39)と、作動再開許可手段(図4のS3、図5のS20、図6のS40)とを有している。
異常検出手段は、作動要求信号(アプライ要求信号、リリース要求信号)に応じた作動時における所定時間内での状況(例えば、所定時間内でのモータ電流値の変化の状況)に応じて回転直動変換機構40の異常を検出する(図5のS12、図6のS32)。そして、異常検出手段は、異常を検出すると、回転直動変換機構40の作動を停止すべく、電動モータ43Bの駆動を停止する(図5のS13,S18、図6のS33,S38)。
ここで、回転直動変換機構40の異常は、例えば、次のように検出することができる。
(a).アプライ動作中、電動モータ43Bの駆動の開始から所定時間t1[ms]の間に、モータ電流値が閾値a1[A]以上となり、その状態が所定時間t2[ms]継続した場合は、例えば、回転直動変換機構40が動かない異常(スタック異常)が発生したと考えられる。
(b).リリース動作中、モータ電流値が閾値a2[A]以上となり、その状態で所定時間t3[ms]継続した場合は、例えば、回転直動変換機構40が動かない異常(スタック異常)が発生したと考えられる。
(c).アプライ動作中、直動部材42がピストン39(の蓋部39A)に当接する前の空走区間で、モータ電流値が閾値a3[A]以上となり、その状態が所定時間t4[ms]継続した場合は、例えば、回転直動変換機構40に効率低下の異常が発生したと考えられる。
(d).アプライ動作中、直動部材42による押圧力が増大する区間で、モータ電流値が下側閾値a4[A]から上側閾値a5[A]を通過する時間がそのときの電圧に応じて定まる所定時間t5[ms]より短い場合は、例えば、回転直動変換機構40に効率低下の異常が発生したと考えられる。
(e).リリース動作のときに、電動モータ43Bの駆動の開始から所定時間t6[ms]経過してもリリースが完了しなかった(モータ電流値がリリース完了の値にならなかった、最後退位置に対応する変化が現れなかった)場合は、例えば、回転直動変換機構40に効率低下の異常が発生したと考えられる。
(f).アプライ動作のときに、アプライ状態が所定時間t7[s]継続した場合、例えば、回転直動変換機構40の空転の異常が発生したと考えられる。
(g).リリース動作のときに、モータ電流値の変化に山がなく、アプライ状態が所定時間t8[s]継続した場合、例えば、回転直動変換機構40の空転の異常が発生したと考えられる。
なお、所定時間t1〜t8、モータ電流値a1〜a5は、回転直動変換機構40の様々な異常を精度よく検出できるように、実験、シミュレーション、計算等により予め求めておく(予め設定しておく)。
異常検出手段は、上記(a)〜(g)のいずれかの異常を検出すると、電動モータ43Bの駆動を停止する。この場合、異常検出手段は、運転者に対して電動駐車ブレーキに異常が発生した旨を報知するために、例えば、運転席の前方に設けられた計器パネルの注意ランプ(報知装置)を点灯する(報知装置に対して報知指令を出力する)構成とすることができる。一方、作動継続可否検出手段は、異常検出手段によって異常が検出されたときに、異常を検出する際の電動モータ43Bへの制御内容、すなわち電動モータ43Bへ供給するモータ電流値と当該モータ電流値を出力する所定時間(供給時間)とから回転直動変換機構40の作動継続が可能か否かを検出(判定)する。
即ち、作動継続可否検出手段は、異常検出手段によって検出された異常が、例えば、上記(c)、(d)、(g)の場合は、回転直動変換機構40の作動継続が可能であると判定する。一方、作動継続可否検出手段は、例えば、上記(a)、(b)、(e)、(f)の場合は、回転直動変換機構40の作動継続が可能でないと判定する。即ち、作動継続可否検出手段は、検出された異常が、アプライまたはリリースが可能な異常であるか不可能な異常であるかを区別する。なお、(g)の場合は、回転直動変換機構40の作動継続が可能でないと判定してもよい。
さらに、作動再開許可手段は、作動継続可否検出手段により、回転直動変換機構40の作動継続が可能であることが検出(判定)されたときに、回転直動変換機構40の作動の再開を可能とする。即ち、作動再開許可手段は、作動継続が可能である場合は、異常検出手段により異常を検出した後の操作指示による作動要求信号がアプライ要求信号であればアプライ作動を再開し、異常検出手段により異常を検出した後の操作指示による作動要求信号がリリース要求信号であればリリース作動を再開する。この場合は、例えば、計器パネル(報知装置)に電動駐車ブレーキに異常が発生した旨の注意ランプ(報知情報)が点灯(出力)していても、アプライ作動またはリリース作動を行うことができる。運転者は、注意ランプの点灯に基づいて、修理工場に修理を依頼することができる。
次に、駐車ブレーキ制御装置22の演算回路23で行われる制御処理について、図4ないし図6を参照しつつ説明する。なお、図5の処理は、図4のS5のアプライ制御処理に対応し、図6の処理は、図4のS7のリリース制御処理に対応する。図4の制御処理は、例えば、駐車ブレーキ制御装置22に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。
駐車ブレーキ制御装置22が起動することにより、図4の制御処理が開始されると、S1では、駐車ブレーキスイッチ21の操作による作動要求信号があるか否かを判定する。S1で「NO」、即ち、作動要求信号がないと判定された場合は、S2以降の処理を行わずに、リターンに進む。一方、S1で「YES」、即ち、作動要求信号があると判定された場合は、S2に進む。S2では、故障フラグがOFFであるか否かを判定する。故障フラグは、後述する図5のS17または図6のS37の処理によりONになる。S2で「NO」、即ち、故障フラグがOFFでない(ONである)と判定された場合は、S3に進む。
S3では、作動継続可能フラグがONであるか否かを判定する。作動継続可能フラグは、後述する図5のS20または図6のS40の処理によりONになる。S3で「NO」、即ち、作動継続可能フラグがOFFである(ONでない)と判定された場合は、S4以降の処理を行わずに、リターンに進む。この場合は、回転直動変換機構40の異常が検出されており、かつ、その異常が作動継続できないものであるため、作動要求としてアプライ要求、リリース要求があっても、電動モータは駆動しない(電動モータ43Bの停止が維持される)。また、この場合は、運転者に対して電動駐車ブレーキに故障が発生した旨を報知するために、例えば、運転席の前方に設けられた計器パネルの警告ランプ(報知装置)を点灯する(報知装置に対して報知指令を出力する)。警告ランプは、例えば、電動駐車ブレーキに異常が発生した旨を報知する注意ランプとは別のランプとしてもよいし、同じランプとしてもよい。
一方、S2で「YES」、即ち、故障フラグがOFFと判定された場合、または、S3で「YES」、即ち、作動継続可能フラグがONと判定された場合は、S4に進む。S4では、作動要求信号がアプライ要求であるか否かを判定する。即ち、S4では、作動要求信号が、駐車ブレーキスイッチ21の操作によるアプライ要求、前述の判断ロジックによるオートアプライ要求(必要に応じて、ABS制御によるオートアプライ要求)であるか否かを判定する。S4で「YES」、即ち、アプライ要求であると判定された場合は、S5に進む。
S5では、アプライ制御処理(後述の図5の制御処理)が行われ、アプライ制御処理が終了する(図5の処理でリターンまで進む)と、リターンする(図4のリターンを介してスタートに進み、S1以降の処理を繰り返す)。
一方、S4で「NO」、即ち、作動要求信号がアプライ要求ではないと判定された場合は、作動要求信号がリリース要求である、即ち、駐車ブレーキスイッチ21の操作によるリリース要求、前述の判断ロジックによるオートリリース要求(必要に応じて、ABS制御によるオートリリース要求)があるとして、S7に進む。
S7では、リリース制御処理(後述の図6の制御処理)が行われ、リリース制御処理が終了する(図6の処理でリターンまで進む)と、リターンする。
次に、S5のアプライ制御処理について、図5を参照しつつ説明する。
図4のS4で「YES」と判定され、S5に進むことにより、図5のアプライ制御処理が開始されると、S11では、電動モータ43Bの駆動を開始する。即ち、電動モータ43Bに対して、制動側(アプライ側)に回転させるための電力を供給する。続くS12では、保持機構である回転直動変換機構40の異常を診断する。具体的には、電流センサ部27,27により所定時間内でのモータ電流値の変化の状況を検出する。続くS13では、回転直動変換機構40の異常を判定する。即ち、上記(a)〜(g)のうちのアプライ動作中の異常、即ち、(a),(c),(d),(f)のいずれかの異常が検出された否かを判定する。
S13で「NO」、即ち、異常なしと判定された場合は、S14に進む。S14では、モータ電流値が所定保持電流、即ち、アプライを完了すべき電流閾値(電動モータ43Bを停止すべき電流値)になったか否かを判定する。所定保持電流(電流閾値)は、アプライの完了を精度よく判定できるように、実験、シミュレーション、計算等により予め求めておく(予め設定しておく)。S14で「NO」、即ち、モータ電流値が所定保持電流になっていないと判定された場合は、S12の前に戻り、S12以降の処理を繰り返す。一方、S14で「YES」、即ち、モータ電流値が所定保持電流になったと判定された場合は、S15に進む。S15では、電動モータ43Bを停止する。即ち、電動モータ43Bに対する給電を停止し、S21で、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が保持状態(アプライ状態)である旨をメモリ24に記憶してから、リターンする(図5のリターンを介して図4のS1に進む)。
S13で「YES」、即ち、異常ありと判定された場合は、S16に進む。S16では、後述の作動継続可能フラグがONであるか否かを判定する。S16で「YES」、即ち、作動継続可能フラグがONであると判定された場合は、S14に進む。一方、S16で「NO」、即ち、作動継続可能フラグがOFFであると判定された場合は、S17に進み、故障フラグをONにした後、S18で電動モータ43Bを停止する。即ち、電動モータ43Bに対する給電を停止する。このとき、運転者に対して電動駐車ブレーキに異常が発生した旨を報知するための注意ランプ(報知装置)を点灯する(報知装置に対して報知指令を出力する)。続くS19では、保持機構である回転直動変換機構40の異常が作動継続可能な異常か否かを判定(検出)する。具体的には、回転直動変換機構40の異常が、上記(a),(c),(d),(f)のうちの(c),(d)であるか否かを判定する。
S19で「YES」、即ち、回転直動変換機構40の異常が(c)または(d)であると判定された場合は、S20に進み、S12で検出された異常が作動継続可能な異常であることを記憶するため、作動継続可能フラグをONにし、S22で、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が不明状態である旨をメモリ24に記憶してから、リターンする。このリターンを介して図4のS1の処理にて作動要求信号の入力を待ち、作動要求信号があったときに、S2,S3の処理を介して、S4に進み、これ以降の処理でアプライ制御、若しくは、リリース制御を再開する。このように、故障フラグがONになっていても、作動継続可能フラグがONになっているため、異常検出で電動モータ43Bが停止した状態からアプライ要求やリリース要求によって作動を再開することができ、アプライ制御処理、リリース制御処理が行われる。この場合、作動継続可能フラグがONになっているため、アプライ制御処理(図5の処理)では、S16で「YES」と判定され、S14に進むことにより、作動を再開(継続)することができる。なお、必要に応じて、例えば、S15とリターンとの間にS51を設け、作動継続可能フラグをOFFにすることができる。
一方、S19で「NO」、即ち、回転直動変換機構40の異常が(a)または(f)であると判定された場合は、S20に進むことなく(作動継続可能フラグをONにすることなく)、S22で回転直動変換機構40によるピストン39の状態が不明状態である旨をメモリ24に記憶してから、リターンに進む。このリターンを介して図4のリターンに進み、S1の処理を繰り返す。この場合、即ち、S19から(S20に進むことなく)リターンに進んだ場合(故障フラグがONで作動継続可能フラグがOFFである場合)は、S2とS3で「NO」と判定されるため、作動要求信号(アプライ要求やリリース要求)があっても、アプライ制御処理、リリース制御処理が行われない(電動モータ43Bの駆動が禁止される)。
次に、S7のリリース制御処理について、図6を参照しつつ説明する。
図4のS4で「NO」と判定され、S7に進むことにより、図6のリリース制御処理が開始されると、S31では、電動モータ43Bの駆動を開始する。即ち、電動モータ43Bに対して、制動解除側(リリース側)に回転させるための電力を供給する。続くS32では、保持機構である回転直動変換機構40の異常を診断する。具体的には、電流センサ部27,27により所定時間内でのモータ電流値の変化の状況を検出する。続くS33では、回転直動変換機構40の異常を判定する。即ち、上記(a)〜(g)のうちのリリース動作中の異常、即ち、(b),(e),(g)のいずれかの異常が検出された否かを判定する。
S33で「NO」、即ち、異常なしと判定された場合は、S34に進む。S34では、モータ電流値が所定解除電流、即ち、リリースを完了すべき電流値(電動モータ43Bを停止すべき電流値)になったか否かを判定する。所定解除電流(電流閾値)は、リリースの完了を精度よく判定できるように、実験、シミュレーション、計算等により予め求めておく(予め設定しておく)。S34で「NO」、即ち、モータ電流値が所定解除電流になっていないと判定された場合は、S32の前に戻り、S32以降の処理を繰り返す。一方、S34で「YES」、即ち、モータ電流値が所定解除電流になったと判定された場合は、S35に進む。S35では、電動モータ43Bを停止する。即ち、電動モータ43Bに対する給電を停止し、S41で、回転直動変換機構40によるピストン39の状態が解除状態(リリース状態)である旨をメモリ24に記憶してから、リターンする(図6のリターンを介して図4のS1に進む)。
S33で「YES」、即ち、異常ありと判定された場合は、S36に進む。S36では、作動継続可能フラグがONであるか否かを判定する。S36で「YES」、即ち、作動継続可能フラグがONであると判定された場合は、S34に進む。一方、S36で「NO」、即ち、作動継続可能フラグがOFFであると判定された場合は、S37に進み、故障フラグをONにした後、S38で電動モータ43Bを停止する。即ち、電動モータ43Bに対する給電を停止する。このとき、運転者に対して電動駐車ブレーキに異常が発生した旨を報知するための注意ランプ(報知装置)を点灯する(報知装置に対して報知指令を出力する)。続くS39では、保持機構である回転直動変換機構40の異常が作動継続可能な異常か否かを判定(検出)する。具体的には、回転直動変換機構40の異常が、上記(b),(e),(g)のうちの(g)であるか否かを判定する。
S39で「YES」、即ち、回転直動変換機構40の異常が(g)であると判定された場合は、S40に進み、S32で検出された異常が作動継続可能な異常であることを記憶するため、作動継続可能フラグをONにし、S42で回転直動変換機構40によるピストン39の状態が不明状態である旨をメモリ24に記憶してから、リターンする。このリターンを介して図4のS1の処理にて作動要求信号の入力を待ち、作動要求信号があったときに、S2,S3の処理を介して、S4に進み、これ以降の処理でアプライ制御、若しくは、リリース制御を再開する。このように、故障フラグがONになっていても、作動継続可能フラグがONになっているため、異常検出で電動モータ43Bが停止した状態からアプライ要求やリリース要求によって作動を再開することができ、アプライ制御処理、リリース制御処理が行われる。この場合、作動継続可能フラグがONになっているため、リリース制御処理(図6の処理)では、S36で「YES」と判定され、S34に進むことにより、作動を再開(継続)することができる。なお、必要に応じて、例えば、S35とリターンとの間にS52を設け、作動継続可能フラグをOFFにすることができる。
一方、S39で「NO」、即ち、回転直動変換機構40の異常が(b)または(e)であると判定された場合は、S40に進むことなく(作動継続可能フラグをONにすることなく)、S42で回転直動変換機構40によるピストン39の状態が不明状態である旨をメモリ24に記憶してから、リターンに進む。このリターンを介して図4のリターンに進み、S1の処理を繰り返す。この場合、即ち、S39から(S40に進むことなく)リターンに進んだ場合(故障フラグがONで作動継続可能フラグがOFFである場合)は、S2とS3で「NO」と判定されるため、作動要求信号(アプライ要求やリリース要求)があっても、アプライ制御処理、リリース制御処理が行われない(電動モータ43Bの駆動が禁止される)。
以上より、実施形態では、駐車ブレーキの作動(保持、解除)が過剰に制限されることを抑制できる。
即ち、実施形態では、S12またはS32の処理により、回転直動変換機構40の異常を検出すると、S18またはS38の処理により、電動モータ43Bの駆動を停止する。しかし、S19またはS39の処理により、回転直動変換機構40の作動継続が可能であることが検出されたときは、S20またはS40で作動継続可能フラグがONになるため、作動要求信号があったときに、S3およびS11またはS3およびS31の処理により、電動モータ43Bの駆動が再開され、S16またはS36の処理により電動モータ43Bの駆動が継続する。このため、回転直動変換機構40の異常を検出しても、回転直動変換機構40の作動継続が可能である場合は、作動継続可能フラグをONにすることにより、異常判定による停止後になされる新たなアプライ操作やリリース操作によって、駐車ブレーキの付与または解除を行うことができる。これにより、駐車ブレーキの作動(保持、解除)が過剰に制限されることを抑制できる。この結果、例えば、異常を検出するとそれ以降電動モータの駆動を禁止する構成と比較して、駐車ブレーキを付与できなくなること、または、駐車ブレーキが付与された状態のまま走行することを抑制することができる。
なお、第1の実施形態では、図5のS12,S13,S18の処理、または、図6のS32,S33,S38の処理が、本発明の構成要件である異常検出手段の具体例を示している。また、図5のS19の処理、または、図6のS39の処理が、本発明の構成要件である作動継続可否検出手段の具体例を示している。さらに、図4のS3の処理及び図5のS20の処理、または、図4のS3の処理及び図6のS40の処理が、本発明の構成要件である作動再開許可手段の具体例を示している。
次に、図7および図8は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、作動再開許可手段を、異常判定による停止後に異常が検出された際の作動要求信号に限って当該作動要求信号に基づく作動を再開する構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置22の作動再開許可手段は、異常を検出した際の作動要求信号に限って当該作動要求信号に基づく作動を再開する構成としている。このために、S19またはS39の処理により、回転直動変換機構40の作動継続が可能であることが検出されたときは、作動継続可能フラグを用いず、S23またはS43の処理により、電動モータ43Bの駆動が再開される。そして、S25またはS45の処理により、電動モータ43Bが停止すると、S21´またはS41´で回転直動変換機構40によるピストン39の状態が不明状態である旨をメモリ24に記憶してから、図1の処理にリターンする構成としている。
また、図7に示すように、第2の実施形態のアプライ制御処理では、S19で「NO」と判定されると、(S22を介して)図1の処理にリターンする構成としている。また、図8に示すように、第2の実施形態のリリース制御処理では、S39で「NO」と判定されると、(S42を介して)図1の処理にリターンする構成としている。
ここで、第2の実施形態では、図4のフローチャートにおいて、S3の処理を削除し、S2の処理で「NO」と判定されると、リターンするように変更する。これにより、作動継続可能な異常を検出した際の作動は再開されるが、その再開した作動が完了すると、S17またはS37で故障フラグがONになっているので、それ以降、図4のS2の処理で「NO」と判定されてリターンすることになる。この結果、異常を検出した後は、作動要求信号(アプライ要求やリリース要求)があっても、アプライ制御処理、リリース制御処理が行われなくなる(電動モータ43Bの駆動が禁止される)。
第2の実施形態は、上述の如きアプライ制御処理およびリリース制御処理により、回転直動変換機構40の作動継続が可能である場合は電動モータ43Bの駆動が再開されるもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。
特に、第2の実施形態では、S18またはS38の処理に続くS19及びS23、または、S39及びS43の処理により、当該作動要求信号に基づく作動を再開する構成としている。また、この再開の作動は、S17及びS2、または、S37及びS2の処理により、作動継続が可能である異常を検出した際の作動要求信号に限って行うものとしている。このため、回転直動変換機構40の異常を検出しても、回転直動変換機構40の作動継続が可能である場合は、作動を再開しても、その再開された作動が完了すると、それ以降の作動が停止される。これにより、駐車ブレーキの作動(保持、解除)が過剰に制限されることを抑制できることに加えて、異常が検出された後に作動が繰り返されることも抑制できる。
なお、第2の実施形態では、図7のS12,S13,S18の処理、または、図8のS32,S33,S38の処理が、本発明の構成要件である異常検出手段の具体例を示している。また、図7のS19の処理、または、図8のS39の処理が、本発明の構成要件である作動継続可否検出手段の具体例を示している。さらに、図7のS23(およびS17,S19)の処理、または、図6のS43(およびS37,S39)の処理が、本発明の構成要件である作動再開許可手段の具体例を示している。
上述した各実施形態では、アプライ制御処理およびリリース制御処理の両方で、回転直動変換機構40の作動継続が可能であるときは、電動モータ43Bの駆動を再開する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、アプライ制御処理のみ、または、リリース制御処理のみ、再開を可能とする構成としてもよい。
また、上述した第1の実施形態においては、作動継続可能な異常を検出した後、新たな作動要求があったときには、何回でもその作動要求を受け付けるようにしているが、作動継続可能な異常を検出した後の1回の作動要求だけを受け付けるようにしてもよい。
上述した第2の実施形態においては、作動継続可能な異常を検出した後の1回の作動要求に限って当該作動要求に基づく作動を再開する構成としているが、何回でもその作動要求を受け付けるようにしてもよい。
上述した各実施形態では、押圧部材保持機構である回転直動変換機構40の異常の検出をモータ電流値に基づいて行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、押圧部材保持機構の異常を、例えば、位置センサ、回転センサ等を用いて検出される電動モータの回転位置、押圧部材保持機構の変位、温度センサにより検出される電動モータの温度等を用いて検出する構成としてもよい。即ち、押圧部材保持機構の異常は、押圧部材保持機構の状態量の変化、電動モータの状態量の変化から検出することができる。
上述した各実施形態では、回転直動変換機構40の異常を上記(a)〜(g)のように検出し、そのうちの(c)、(d)、(g)を作動継続が可能な異常とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、上記(a)〜(g)以外の異常を検出してもよいし、作動継続が可能な異常を変更してもよい。即ち、押圧部材保持機構の異常の検出、および、作動継続が可能か否かの検出は、押圧部材保持機構の構成、ブレーキ機構の構成、電動モータの構成、これらの仕様等に応じて様々に設定することができる。
上述した各実施形態では、左右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、左右の前輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよい。また、前輪と後輪の全ての車輪(4輪全て)のブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成してもよい。即ち、車両の少なくとも一対の車輪のブレーキを、電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成することができる。
上述した各実施形態では、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、液圧の供給が不要な電動式ディスクブレーキにより構成してもよい。また、ディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、ドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよい。さらに、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行う構成等、ブレーキ機構は各種のものを採用することができる。この場合に、例えば、液圧の供給が不要な電動式のブレーキ機構を採用した場合は、制御手段は、車両に制動力を常用ブレーキとして与える(ブレーキペダルの操作等によるアプライ要求に基づいて電動モータを駆動する)構成とすることができる。
以上の実施形態によれば、駐車ブレーキの作動(保持、解除)が過剰に制限されることを抑制できる。
即ち、第1の実施形態によれば、異常検出手段が押圧部材保持機構の異常を検出して押圧部材保持機構の作動を停止しても、作動継続可否検出手段により押圧部材保持機構の作動継続が可能であることが検出されたときは、作動再開許可手段により作動が許可される。このため、押圧部材保持機構の異常を検出しても、押圧部材保持機構の作動継続が可能である場合は、異常判定後の新たな作動要求に応じて作動が再開されることにより、制動力の付与または解除を行うことができる。これにより、駐車ブレーキの作動(保持、解除)が過剰に制限されることを抑制できる。この結果、例えば、異常を検出するとそれ以降電動モータの駆動を禁止する構成と比較して、駐車ブレーキを付与できなくなること、または、駐車ブレーキが付与された状態のまま走行することを抑制することができる。
第2の実施形態によれば、作動再開許可手段は、異常を検出した後、1回の作動要求信号に限って当該作動要求信号に基づく作動を再開する構成としている。このため、押圧部材保持機構の異常を検出しても、押圧部材保持機構の作動継続が可能である場合は、作動を再開しても、その再開された作動が完了すると、それ以降の作動が停止される。この場合は、駐車ブレーキの作動(保持、解除)が過剰に制限されることを抑制できることに加えて、異常が検出された後に作動が繰り返されることも抑制できる。