以下、実施形態による電動ブレーキシステムについて、当該電動ブレーキシステムを4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4〜図10に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。
まず、図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左,右の前輪2(FL,FR)と左,右の後輪3(RL,RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。これらの前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する被制動部材(回転部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキ5により制動力が付与され、後輪3用のディスクロータ4は、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキ31により制動力が付与される。これにより、各車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル6には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)6Aが設けられている。ブレーキ操作検出センサ6Aは、ブレーキペダル6の踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を液圧供給装置用コントローラ13に出力する。ブレーキ操作検出センサ6Aの検出信号は、例えば、車両データバス16、または、液圧供給装置用コントローラ13と駐車ブレーキ制御装置19とを接続する信号線(図示せず)を介して伝送される(駐車ブレーキ制御装置19に出力される)。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、倍力装置7を介して、油圧源として機能するマスタシリンダ8に伝達される。倍力装置7は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ8との間に設けられた負圧ブースタまたは電動ブースタとして構成され、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ8に伝える。このとき、マスタシリンダ8は、マスタリザーバ9から供給されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ9は、ブレーキ液が収容された作動液タンクにより構成されている。ブレーキペダル6により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル6の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ8内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して、液圧供給装置11(以下、ESC11という)に送られる。ESC11は、各ディスクブレーキ5,31とマスタシリンダ8との間に配置され、マスタシリンダ8からの液圧をブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配する。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与する。この場合、ESC11は、ブレーキペダル6の操作量に従わない態様でも、各ディスクブレーキ5,31に液圧を供給すること、即ち、各ディスクブレーキ5,31の液圧を高めることができる。
このために、ESC11は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成される専用の制御装置、即ち、液圧供給装置用コントローラ13(以下、コントロールユニット13という)を有している。コントロールユニット13は、ESC11の各制御弁(図示せず)を開,閉したり、液圧ポンプ用の電動モータ(図示せず)を回転,停止させたりする駆動制御を行うことにより、ブレーキ側配管部12A〜12Dから各ディスクブレーキ5,31に供給されるブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、種々のブレーキ制御、例えば、倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロックブレーキ制御(ABS)、トラクション制御、車両安定化制御(横滑り防止を含む)、坂道発進補助制御、自動運転制御等が実行される。
コントロールユニット13には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。図1に示すように、コントロールユニット13は、車両データバス16に接続されている。なお、ESC11の代わりに、公知のABSユニットを用いることも可能である。さらに、ESC11を設けずに(即ち、省略し)、マスタシリンダ8とブレーキ側配管部12A〜12Dとを直接的に接続することも可能である。
車両データバス16は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を備えており、車両に搭載された多数の電子機器、コントロールユニット13、および駐車ブレーキ制御装置19等との間で車両内での多重通信を行う。この場合、車両データバス16に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ6A、マスタシリンダ液圧(ブレーキ液圧)を検出する圧力センサ17、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ、シフトセンサ、加速度センサ、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号による情報(車両情報)が挙げられる。
車体1内には、運転席(図示せず)の近傍に駐車ブレーキスイッチ(PKBSW)18が設けられている。駐車ブレーキスイッチ18は、運転者によって操作されるものである。駐車ブレーキスイッチ18は、運転者からの駐車ブレーキの作動要求(アプライ要求、リリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、駐車ブレーキ制御装置19へ伝達する。即ち、駐車ブレーキスイッチ18は、電動モータ43Bの駆動(回転)に基づいてブレーキパッド33(図2参照)をアプライ作動またはリリース作動させるための信号(アプライ要求信号、リリース要求信号)を、コントロールユニット(コントローラ)となる駐車ブレーキ制御装置19に出力する。
運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動側(駐車ブレーキON側)に操作されたとき、即ち車両に制動力を与えるためのアプライ要求(保持要求、駆動要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ18からアプライ要求信号(制動要求信号)が出力される。一方、運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動解除側(駐車ブレーキOFF側)に操作されたとき、即ち車両の制動力を解除するためのリリース要求(解除要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ18からリリース要求信号が出力される。
この場合、車両が停車中には、後述の駐車ブレーキ制御装置19が静的制御され、車両が走行中には、駐車ブレーキ制御装置19が動的制御される。静的制御では、例えば運転者が駐車ブレーキスイッチ18を引き上げたとき(制動ON操作しているとき)にアプライ状態となり、駐車ブレーキスイッチ18を押し下げたとき(制動OFF操作しているとき)に、リリース状態とすることができる。一方、動的制御では、例えば運転者が駐車ブレーキスイッチ18を引き上げ続けているとき(制動ON操作しているとき)にアプライ状態となり、駐車ブレーキスイッチ18から手を離したとき(制動OFF操作したとき)に、リリース状態とすることができる。
車両が停車中にアプライ要求があったときには、駐車ブレーキ制御装置19を介して後輪3用のディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力が付与された状態、即ちアプライ状態となる。その後、ブレーキパッド33が第1の目標推力値に到達(電動モータ43Bへの給電が第1の目標電流に到達)するとアプライ状態が停止され、後述のブレーキパッド33の推力を保持した状態(保持状態)となる。この場合、第1の目標推力値は、車両が駐車するのに十分な制動力を付与するものである。
このような静的制御では、左,右のディスクブレーキ31は、異なるタイミングで動作する。具体的には、車両が停車中にアプライ要求があったときには、まず左側のディスクブレーキ31が動作を開始し、所定時間sが経過した後で右側のディスクブレーキ31が動作を開始する。これにより、後述の電動アクチュエータ43を始動させるときの突入電流を左,右で異なるタイミングで発生させることができ、バッテリ14への負荷を軽減することができる。
また、車両が停車中にリリース要求があったときには、駐車ブレーキ制御装置19を介してディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側とは逆方向に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力の付与が解除された状態、即ち保持状態からリリース状態になる。
この場合、左,右のディスクブレーキ31は、異なるタイミングで動作する。具体的には、車両が停車中にリリース要求があったときには、まず左側のディスクブレーキ31が動作を開始し、所定時間が経過した後で右側のディスクブレーキ31が動作を開始する。これにより、電動アクチュエータ43を始動させるときの突入電流を左,右で異なるタイミングで発生させることができ、バッテリ14への負荷を軽減することができる。なお、リリース要求は、駐車ブレーキスイッチ18から送信されるだけでなく、例えば、アクセルペダル(図示せず)の操作に基づいて、コントロールユニット13から送信されてもよい。
駐車ブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が4km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、駐車ブレーキ制御装置19での駐車ブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。
また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)や、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、駐車ブレーキ制御装置19での駐車ブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。
さらに、車両の走行時に駐車ブレーキスイッチ18によるアプライ要求があった場合、具体的には、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いる動的駐車ブレーキ(動的アプライ)の要求があった場合に、駐車ブレーキ制御装置19を介して後輪3用のディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、補助ブレーキとしての制動力が付与された状態、即ちアプライ状態となる。
その後、ブレーキパッド33が第2の目標推力値に到達(電動モータ43Bへの給電が第2の目標電流に到達)するとアプライ状態が停止され、後述のブレーキパッド33の推力を保持した状態(保持状態)となる。この場合、第2の目標推力値は、走行中の車両が停車するための制動力を付与するものであるから、例えば第1の目標推力値よりも小さい値に設定されている。
この場合、左,右のディスクブレーキ31は、一緒のタイミングで動作する。具体的には、車両が走行中にアプライ要求があったときには、左側のディスクブレーキ31と右側のディスクブレーキ31とを同時に動作させる。これにより、車両の走行中に緊急停止制御を行った場合によるディスクブレーキ31の応答性や安定性を向上することができる。
次に、左後輪3側と右後輪3側とに設けられる電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31の構成について、図2を参照しつつ説明する。なお、図2では、左後輪3のディスクブレーキ31と右後輪3のディスクブレーキ31とのうちの一方のみを示している。
車両の左,右にそれぞれ設けられた一対のディスクブレーキ31は、電動式の駐車ブレーキ機能が付設された液圧式のディスクブレーキとして構成されている。ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ制御装置19と共にブレーキシステムを構成する。ディスクブレーキ31は、車両の後輪3側の非回転部分に取付けられる取付部材32と、制動部材(摩擦部材)としてのインナ側,アウタ側のブレーキパッド33と、電動アクチュエータ43が設けられたブレーキ機構としてのキャリパ34とを含んで構成されている。
この場合、ディスクブレーキ31は、ブレーキパッド33をブレーキペダル6の操作等に基づく液圧によりピストン39で推進させ、ディスクロータ4をブレーキパッド33で押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキスイッチ18からの信号に基づく作動要求や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABS制御に基づく作動要求に応じて、電動モータ43Bにより(回転直動変換機構40を介して)ピストン39を推進させ、ディスクロータ4をブレーキパッド33で押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。
取付部材32は、ディスクロータ4の外周を跨ぐようにディスクロータ4の軸方向(即ち、ディスク軸方向)に延びディスク周方向で互いに離間した一対の腕部(図示せず)と、該各腕部の基端側を一体的に連結するように設けられ、ディスクロータ4のインナ側となる位置で車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部32Aと、ディスクロータ4のアウタ側となる位置で前記各腕部の先端側を互いに連結する補強ビーム32Bとを含んで構成されている。
インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、ディスクロータ4の両面に当接可能に配置され、取付部材32の各腕部によりディスク軸方向に移動可能に支持されている。インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、キャリパ34(キャリパ本体35、ピストン39)によりディスクロータ4の両面側に押圧される。これにより、ブレーキパッド33は、車輪(後輪3)と共に回転するディスクロータ4を押圧することにより車両に制動力を与える。
取付部材32には、ホイールシリンダとなるキャリパ34がディスクロータ4の外周側を跨ぐように配置されている。キャリパ34は、取付部材32の各腕部に対してディスクロータ4の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体35、このキャリパ本体35内に設けられたピストン39、回転直動変換機構40、電動アクチュエータ43等を備えている。キャリパ34は、ブレーキペダル6の操作に基づいて発生する液圧によって作動するピストン39を用いてブレーキパッド33を推進する。
キャリパ本体35は、シリンダ部36とブリッジ部37と爪部38とを備えている。シリンダ部36は、軸線方向の一方側が隔壁部36Aによって閉塞され、ディスクロータ4に対向する他方側が開口された有底円筒状に形成されている。ブリッジ部37は、ディスクロータ4の外周側を跨ぐように該シリンダ部36からディスク軸方向に延びて形成されている。爪部38は、シリンダ部36と反対側においてブリッジ部37から径方向内側に向けて延びるように配置されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36は、図1に示すブレーキ側配管部12Cまたは12Dを介してブレーキペダル6の踏込み操作等に伴う液圧が供給される。このシリンダ部36は、隔壁部36Aと一体形成されている。隔壁部36Aは、シリンダ部36と電動アクチュエータ43との間に位置している。隔壁部36Aは、軸線方向の貫通穴を有しており、隔壁部36Aの内周側には、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転可能に挿入されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36内には、押圧部材(移動部材)としてのピストン39と、回転直動変換機構40とが設けられている。なお、実施形態においては、回転直動変換機構40がピストン39内に収容されている。但し、回転直動変換機構40は、ピストン39を推進するように構成されていればよく、必ずしもピストン39内に収容されていなくてもよい。
ピストン39は、ブレーキパッド33をディスクロータ4に向けて、または、ディスクロータ4から遠ざかる方向に移動させる。ピストン39は、軸線方向の一方側が開口しており、インナ側のブレーキパッド33に対面し、軸線方向の他方側が蓋部39Aによって閉塞されている。このピストン39は、シリンダ部36内に挿入されている。
ピストン39は、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)へ電流が供給されることにより移動することに加えて、ブレーキペダル6の踏込み等に基づいてシリンダ部36内に液圧が供給されることによっても移動する。この場合に、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)によるピストン39の移動は、直動部材42に押圧されることによって行われる。また、回転直動変換機構40はピストン39の内部に収容されており、ピストン39は、該回転直動変換機構40によりシリンダ部36の軸線方向に推進されるように構成されている。
回転直動変換機構40は、押圧部材保持機構として機能する。具体的には、回転直動変換機構40は、シリンダ部36内への液圧付加によって生じる力とは異なる外力、即ち、電動アクチュエータ43により発生される力によってキャリパ34のピストン39を推進させると共に、推進されたピストン39およびブレーキパッド33を保持する。これにより、駐車ブレーキはアプライ状態または保持状態となる。
一方、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43によりピストン39を推進方向とは逆方向に退避させ、駐車ブレーキをリリース状態(解除状態)とする。そして、左,右の後輪3用に左,右のディスクブレーキ31がそれぞれ設けられるので、回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43も、車両の左,右それぞれに設けられている。
回転直動変換機構40は、台形ねじ等の雄ねじが形成された棒状体を有するねじ部材41と、台形ねじによって形成される雌ねじ穴が内周側に形成された直動部材42とにより(スピンドルナット機構として)構成されている。直動部材42は、電動アクチュエータ43によりピストン39に向けて、または、ピストン39から遠ざかる方向に移動する被駆動部材(推進部材)となる。即ち、直動部材42の内周側に螺合したねじ部材41は、電動アクチュエータ43による回転運動を直動部材42の直線運動に変換するねじ機構を構成している。この場合、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとは、不可逆性の大きいねじ、実施形態においては、台形ねじを用いて形成することにより押圧部材保持機構を構成している。
押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)は、電動モータ43Bに対する給電を停止した状態でも、直動部材42(即ち、ピストン39)を任意の位置で摩擦力(保持力)によって保持するようになっている。なお、押圧部材保持機構は、電動アクチュエータ43により推進された位置にピストン39を保持することができればよく、例えば、台形ねじ以外の不可逆性の大きい通常の三角断面のねじやウォームギヤとしてもよい。
直動部材42の内周側に螺合して設けられたねじ部材41には、軸線方向の一方側に大径の鍔部であるフランジ部41Aが設けられている。ねじ部材41の軸線方向の他方側は、ピストン39の蓋部39Aに向けて延びている。ねじ部材41は、フランジ部41Aにおいて、電動アクチュエータ43の出力軸43Cに一体的に連結されている。また、直動部材42の外周側には、直動部材42をピストン39に対して回り止め(相対回転を規制)しつつ、直動部材42が軸線方向に相対移動することを許容する係合突部42Aが設けられている。これにより、直動部材42は、電動モータ43Bが駆動することにより直動し、ピストン39に接触して該ピストン39を移動させる。
電動アクチュエータ43は、電動機構を構成し、キャリパ34のキャリパ本体35に固定されている。電動アクチュエータ43は、駐車ブレーキスイッチ18の作動要求信号や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABSの制御に基づいて、ディスクブレーキ31を作動(アプライ・リリース)させる。電動アクチュエータ43は、隔壁部36Aの外側に取付けられたケーシング43Aと、該ケーシング43A内に位置してステータ、ロータ等を備え電力(電流)が供給されることによりピストン39を移動させる電動モータ43Bと、該電動モータ43Bのトルクを増幅する減速機(図示せず)と、該減速機による増幅後の回転トルクを出力する出力軸43Cとを含んで構成されている。
電動モータ43Bは、例えば、直流ブラシモータとして構成することができる。出力軸43Cは、シリンダ部36の隔壁部36Aを軸線方向に貫通して延びており、ねじ部材41と一体に回転するように、シリンダ部36内においてねじ部材41のフランジ部41Aの端部に連結されている。
出力軸43Cとねじ部材41との連結機構は、例えば、軸線方向には移動可能であるが回転方向には回り止めされるように構成することができる。この場合は、例えばスプライン嵌合や多角形柱による嵌合(非円形嵌合)等の公知の技術が用いられる。なお、減速機としては、例えば、遊星歯車減速機やウォーム歯車減速機等が用いられてもよい。また、ウォーム歯車減速機等、逆作動性のない(不可逆性の)公知の減速機を用いる場合は、回転直動変換機構40として、ボールねじやボールランプ機構等、可逆性のある公知の機構を用いることができる。この場合は、例えば、可逆性の回転直動変換機構と不可逆性の減速機とにより押圧部材保持機構を構成することができる。
運転者が図1ないし図3に示す駐車ブレーキスイッチ18を操作したときには、駐車ブレーキ制御装置19を介して電動モータ43Bに給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転される。このため、回転直動変換機構40のねじ部材41は、一方向に出力軸43Cと一体に回転され、直動部材42を介してピストン39をディスクロータ4側に推進(駆動)する。これにより、ディスクブレーキ31は、ディスクロータ4をインナ側およびアウタ側のブレーキパッド33間で挟持し、電動式の駐車ブレーキとして制動力を付与した状態、即ち、アプライ状態ないし保持状態となる。
一方、駐車ブレーキスイッチ18が制動解除側に操作されたときには、電動アクチュエータ43により回転直動変換機構40のねじ部材41が他方向(逆方向)に回転駆動される。これにより、直動部材42(および液圧付加がなければピストン39)は、ディスクロータ4から離れる方向に駆動され、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、リリース状態ないし推力解除状態となる。
この場合、回転直動変換機構40では、ねじ部材41が直動部材42に対して相対回転されるとき、ピストン39内での直動部材42の回転が規制されているため、直動部材42は、ねじ部材41の回転角度に応じて軸線方向に相対移動する。これにより、回転直動変換機構40は、回転運動を直線運動に変換し、直動部材42によりピストン39が推進される。また、これと共に、回転直動変換機構40は、直動部材42を任意の位置でねじ部材41との摩擦力によって保持することにより、ピストン39およびブレーキパッド33を電動アクチュエータ43により推進された位置に保持する。
シリンダ部36の隔壁部36Aには、該隔壁部36Aとねじ部材41のフランジ部41Aとの間にスラスト軸受44が設けられている。このスラスト軸受44は、隔壁部36Aと共にねじ部材41からのスラスト荷重を受け、隔壁部36Aに対するねじ部材41の回転を円滑にする。また、シリンダ部36の隔壁部36Aには、電動アクチュエータ43の出力軸43Cとの間にシール部材45が設けられ、該シール部材45は、シリンダ部36内のブレーキ液が電動アクチュエータ43側に漏洩するのを阻止するように両者の間をシールしている。
また、シリンダ部36の開口端側には、該シリンダ部36とピストン39との間をシールする弾性シールとしてのピストンシール46と、シリンダ部36内への異物侵入を防ぐダストブーツ47とが設けられている。ダストブーツ47は、可撓性を有した蛇腹状のシール部材であり、シリンダ部36の開口端とピストン39の蓋部39A側の外周との間に取付けられている。
なお、前輪2用のディスクブレーキ5は、駐車ブレーキ機構を除いて、後輪3用のディスクブレーキ31とほぼ同様に構成されている。即ち、前輪2用のディスクブレーキ5は、後輪3用のディスクブレーキ31が備える、駐車ブレーキとして作動する回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43等を備えていない。しかし、ディスクブレーキ5に代えて、前輪2用に電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31を設けてもよい。
また、実施形態では、電動アクチュエータ43を有する液圧式のディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、例えば、電動キャリパを有する電動式ディスクブレーキ、電動アクチュエータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを有するディスクブレーキ、電動アクチュエータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキをアプライ作動させる構成等、電動アクチューエータ(電動モータ)の駆動に基づいて制動部材(パッド、シュー)を被制動部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力を保持させることができるブレーキ機構であれば、その構成は、上述の実施形態のブレーキ機構でなくともよい。
次に、左,右のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43を制御する駐車ブレーキ制御装置19について、図3を参照しつつ説明する。
制御装置としての駐車ブレーキ制御装置19は、左,右一対のディスクブレーキ31と共に電動ブレーキシステムを構成する。駐車ブレーキ制御装置19は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)20を有し、駐車ブレーキ制御装置19には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。
駐車ブレーキ制御装置19は、左,右のディスクブレーキ31を独立して(個別に)制御している。具体的には、駐車ブレーキ制御装置19は、各ディスクブレーキ31の電動モータ43Bを個別に制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。
即ち、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右のディスクブレーキ31の各電動モータ43Bを個別に駆動制御することにより、ディスクブレーキ31を駐車ブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(アプライ・保持・リリース)させる。このために、図1ないし図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置19は、入力側が駐車ブレーキスイッチ18に接続され、出力側は各ディスクブレーキ31の電動モータ43Bに接続されている。
駐車ブレーキ制御装置19は、運転者の駐車ブレーキスイッチ18の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求、ABS制御による作動要求に基づいて、電動モータ43Bを駆動し、ディスクブレーキ31のアプライ、保持、リリース(解除)を行う。このとき、ディスクブレーキ31では、電動モータ43Bの駆動に基づいて、押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39およびブレーキパッド33の推力増加、保持、解除が行われる。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路(CPU)20には、メモリ(記憶部)21に加えて、駐車ブレーキスイッチ18、車両データバス16、電圧センサ部22、モータ駆動回路23、電流センサ部24等が接続されている。車両データバス16からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。
なお、車両データバス16から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサを駐車ブレーキ制御装置19(の演算回路20)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。また、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20は、車両データバス16に接続された他の制御装置(例えばコントロールユニット13)から前述の判断ロジックやABS制御に基づく作動要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによる駐車ブレーキのアプライ・リリースの判定やABSの制御を、駐車ブレーキ制御装置19に代えて、他の制御装置、例えばコントロールユニット13で行う構成とすることができる。即ち、コントロールユニット13に駐車ブレーキ制御装置19の制御内容を統合することが可能である。
駐車ブレーキ制御装置19は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ21を備えている。メモリ21には、前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックやABS制御部のプログラムに加え、図4、図5に示す処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。また、メモリ21には、ブレーキパッド33が第1の目標推力値に達するための目標電流値や、第2の目標推力値に達するための目標電流値、処理プログラムで用いる各種の計算式、係数(速度閾値)等も格納されている。
なお、実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19をESC11のコントロールユニット13と別体としたが、駐車ブレーキ制御装置19をコントロールユニット13と一体に構成してもよい。また、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右で2つのディスクブレーキ31を制御するようにしているが、左,右のディスクブレーキ31毎に設けるようにしてもよく、この場合には、駐車ブレーキ制御装置19をディスクブレーキ31に一体的に設けることもできる。
駐車ブレーキ制御装置19は、静的制御部と動的制御部とを有している。この場合、駐車ブレーキ制御装置19は、駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されたときに、車両の状態に応じて、ディスクブレーキ31に対して静的制御(静的駐車ブレーキ)と動的制御(動的駐車ブレーキ)とを行う。
静的制御は、車両が停止中に駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作された場合に行われるものである。静的制御部は、例えば駐車ブレーキスイッチ18を引き上げ操作すると、ディスクブレーキ31のブレーキパッド33の推力が第1の目標推力値に達するまでディスクブレーキ31に制動力を発生させる。また、駐車ブレーキスイッチ18を押し下げ操作すると、ディスクブレーキ31の制動力を解除(リリース)させる。
静的制御部が行うアプライ動作およびリリース動作について説明すると、静的制御部は、制動要求信号(アプライ要求信号)に応じて左,右のディスクブレーキ31を異なるタイミングで動作させる。即ち、駐車ブレーキ制御装置19は、車両が停車状態で制動要求信号が出力されたときには、左,右のディスクブレーキ31を異なるタイミングでアプライ動作を開始させるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。これにより、電動アクチュエータ43を始動させるときの突入電流を左,右で異なるタイミングで発生させることができ、バッテリ14等の負荷を軽減することができる。
同様に、駐車ブレーキ制御装置19は、車両が停車状態でリリース要求信号が出力されたときには、左,右のディスクブレーキ31を異なるタイミングでリリース動作を開始させるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。これにより、電動アクチュエータ43を始動させるときの突入電流を左,右で異なるタイミングで発生させることができ、バッテリ14等の負荷を軽減することができる。
一方、動的制御は、車両が走行中に駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作された場合に行われるものである。動的制御部は、例えば駐車ブレーキスイッチ18を引き上げ続けているときには、ブレーキパッド33の推力が第2の目標推力値に達するまでディスクブレーキ31に徐々に制動力を発生させ、駐車ブレーキスイッチ18から手を離したとき(中立位置に戻った時)にはディスクブレーキ31の制動力を解除(リリース)させる、または、そのブレーキ状態を維持する。
動的駐車ブレーキのアプライ動作およびリリース動作について説明すると、駐車ブレーキ制御装置19は、車両が走行状態では、制動要求信号に応じて左,右のディスクブレーキ31を一緒のタイミング(同じタイミング)で動作させる。即ち、駐車ブレーキ制御装置19は、車両が走行状態で制動要求信号(アプライ要求信号)が出力されたときには、左,右のディスクブレーキ31を同じ(一緒の)タイミングでアプライ動作させるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。
これにより、左,右のディスクブレーキ31が略同じタイミングでアプライ動作するから、左,右のディスクブレーキ31の応答性を向上させることができると共に、左,右での制動力の偏りを抑制して、車両の安定性を確保することができる。なお、左,右のディスクブレーキ31を同じ(一緒の)タイミングでアプライ動作させても、動作開始時の左,右のディスクロータ4とブレーキパッド33のクリアランスが異なっている場合等は、実際にアプライ動作のタイミングは、ずれることがある。しかし、本制御により、静的制御部による動作タイミングの左,右のずれより、動的制御部による動作タイミングのずれが小さくなる。
同様に、駐車ブレーキ制御装置19は、車両が走行状態で制動要求信号の出力が停止されたときには、左,右のディスクブレーキ31を同じタイミングでリリース動作させるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。これにより、左,右のディスクブレーキ31が略同じタイミングでリリース動作するから、左,右のディスクブレーキ31の応答性を向上させることができると共に、左,右での制動力の偏りを抑制して、車両の安定性を確保することができる。
なお、左,右のディスクブレーキ31を同じ(一緒の)タイミングでリリース動作させても、動作開始時の左,右のディスクロータ4へのブレーキパッド33の押し付け推力が異なっている場合等は、実際にリリース動作のタイミングは、ずれることがある。しかし、本制御により、静的制御部による動作タイミングの左,右の差より、動的制御部による動作タイミングの差が小さくなる。
また、駐車ブレーキ制御装置19は、ABS制御部を有している。このABS制御部は、左,右のディスクブレーキ31を独立して(別個に)アンチロック制御している。即ち、ABS制御部は、車両が走行状態で制動要求信号が出力されている場合に、左,右の車輪のうち片輪がスリップしたときには、スリップした側のディスクブレーキ31の制動力を解除(リリース)する。また、両輪がスリップしたときには、左,右両側のディスクブレーキ31の制動力を解除(リリース)する。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置19には、電源ライン15からの電圧を検出する電圧センサ部22、左,右の電動モータ43B,43Bをそれぞれ駆動する左,右のモータ駆動回路23,23、左,右の電動モータ43B,43Bのそれぞれのモータ電流を検出する左,右の電流センサ部24,24等が内蔵されている。これら電圧センサ部22、モータ駆動回路23、電流センサ部24は、それぞれ演算回路20に接続されている。
これにより、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20では、アプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部24,24により検出される電動モータ43B,43Bのモータ電流の変化に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド33との当接・離接の判定、電動モータ43Bの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)等を行うことができる。
本実施形態による4輪自動車の電動ブレーキシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ8で発生した液圧は、シリンダ側液圧配管10A,10B、ESC11およびブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配、供給され、左,右の前輪2と左,右の後輪3とにそれぞれ制動力が付与される。
この場合、後輪3側のディスクブレーキ31について説明すると、キャリパ34のシリンダ部36内にブレーキ側配管部12C,12Dを介して液圧が供給され、シリンダ部36内の液圧上昇に従ってピストン39がインナ側のブレーキパッド33に向けて摺動変位する。これにより、ピストン39は、インナ側のブレーキパッド33をディスクロータ4の一側面に押圧し、このときの反力によってキャリパ34全体が取付部材32の前記各腕部に対してディスクロータ4のインナ側に摺動変位する。
この結果、キャリパ34のアウタ脚部(爪部38)は、アウタ側のブレーキパッド33をディスクロータ4に押圧するように動作し、ディスクロータ4は、一対のブレーキパッド33によって軸方向の両側から挟持され、液圧付与に従った制動力が発生される。一方、ブレーキ操作を解除したときには、シリンダ部36内への液圧供給が解除、停止されることにより、ピストン39がシリンダ部36内へと後退するように変位し、インナ側とアウタ側のブレーキパッド33がディスクロータ4から離間することによって、車両は非制動状態に戻される。
次に、駐車ブレーキ制御装置19で行われる制御処理について、図4を参照しつつ説明する。なお、図4の処理は、駐車ブレーキ制御装置19に通電している間、所定時間毎に(所定の制御周期で)繰り返し実行される。
図4の処理動作がスタートすると、演算回路20は、S1で、車両が走行中であるか否かを判定する。この走行中であるか否かの判定は、例えば車両データバス16から取得した車輪速度や車速に基づいて行うことができる。
なお、走行中であるか否かの判定は、アクセルペダルが操作されているか否かの判定、クラッチペダルが操作されているか否かの判定、シフトレバーがP、N(ニュートラル)以外に操作されているか否かの判定と組み合わせて行うこともできる。
S1で「YES」、即ち走行中であると判定された場合は、S2に進む。一方、S1で「NO」、即ち走行中でない(停車中)と判定された場合は、S5に進む。この場合、駐車ブレーキ制御装置19は、静的制御となる。
S2では、左,右方向の両輪非ロック状態であるか否かを判定する。この判定は、例えば、メモリ21から取得した駐車ブレーキの制動状態に基づいて行うことができる。または、車両データバス16から取得した車輪速センサからの信号等に基づいて行ってもよい。S2で「YES」、即ち両輪がロックされていないと判定された場合は、S3に進む。この場合、駐車ブレーキ制御装置19は、動的制御となる。一方、S2で「NO」、即ち少なくとも一方の車輪がロック状態にあると判定された場合には、リターンする。
まず、駐車ブレーキ制御装置19が動的制御を行う場合について説明する。
S3では、駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されたか否かを判定する。即ち、緊急停止制御要求(動的アプライ要求)があるか否かを判定する。S3で「YES」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作している場合には、次のS4に進む。一方、S3で「NO」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作していない場合には、リターンする。
S4では、左,右のブレーキ装置の動作を開始する。即ち、左,右のディスクブレーキ31の緊急停止制御を実施する。この場合、左,右のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43の動作(アプライ作動)を一緒(ほぼ同時)に開始する。
具体的には、駐車ブレーキ制御装置19から左,右両方のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43に給電が行われ、各電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転駆動される。左,右のディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43の回転を回転直動変換機構40のねじ部材41と直動部材42を介して直線運動に変換し、直動部材42を軸方向に移動させてピストン39を推進することにより、一対のブレーキパッド33をディスクロータ4の両面に押圧する。
これにより、左,右のディスクブレーキ31の応答性を向上させることができる。また、片輪にのみ制動力が付与されるのを抑制することができるので、車両の安定性を確保することができる。なお、動的制御中の処理については、後述する図5の処理動作で説明する。
次に、駐車ブレーキ制御装置19が静的制御を行う場合について説明する。
S5では、駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されたか否かを判定する。即ち、車両の駐車を維持するためのアプライ要求(静的アプライ要求)があるか否かを判定する。S5で「YES」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作している場合には、次のS6に進む。一方、S5で「NO」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作していない場合には、リターンする。
S6では、左輪側のディスクブレーキ31の動作(アプライ作動)を開始する。即ち、駐車ブレーキ制御装置19から左輪側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43に給電が行われ、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転駆動される。ディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43の回転を回転直動変換機構40のねじ部材41と直動部材42を介して直線運動に変換し、直動部材42を軸方向に移動させてピストン39を推進することにより、一対のブレーキパッド33をディスクロータ4の両面に押圧する。そして、ブレーキパッド33が第1の目標推力値に到達(電動モータ43Bへの給電が目標電流に到達)したらアプライ状態は停止される。
このとき、直動部材42は、ねじ部材41との間に発生する摩擦力(保持力)により制動状態に保持され、後輪3側のディスクブレーキ31は駐車ブレーキとして作動される。即ち、ブレーキパッド33の推力が保持された状態(保持状態)となり、電動アクチュエータ43への給電を停止した後にも、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとにより、直動部材42(即ち、ピストン39)を制動位置に保持することができる。
次のS7では、所定時間sが経過したか否かを判定する。即ち、左輪側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43が動作を開始してからの経過時間tが予め設定された時間s以上となったか否かを判定する。なお、この所定時間sは、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43が動作を開始してから動作を終了するまで、即ちブレーキパッド33が第1の目標推力値に到達(電動モータ43Bへの給電が目標電流に到達)するまでの間で適宜設定することができる。一例としては、所定時間sは、突入電流のピークを過ぎて電流が減少する程度の時間に設定されている。
S7で「YES」、即ち所定時間sが経過した(t≧閾値s)と判定された場合には、S8に進む。一方、S7で「NO」、即ち所定時間sが経過していないと判定された場合には、リターンする。
S8では、右輪側のディスクブレーキ31の動作を開始する。即ち、左輪側のディスクブレーキ31の動作を開始した後に、右輪側のディスクブレーキ31の動作を開始する。この右輪側のディスクブレーキ31の動作(アプライ状態ないし保持状態)も上述の左輪側のディスクブレーキ31の動作と同様に行われる。
従って、駐車ブレーキ制御装置19は、車両が停車状態(静的制御)でアプライ要求信号が出力されたときには、左,右のディスクブレーキ31を異なるタイミングでアプライ動作を開始させるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。これにより、電動アクチュエータ43の始動させるときの突入電流を、左,右で異なるタイミングで発生させることができ、バッテリ14等の負荷を軽減することができる。
なお、車両の停車中に運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動解除側(オフ)に操作(制動OFF操作)したときには、駐車ブレーキ制御装置19から電動アクチュエータ43に対してモータ逆転方向に給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cは、駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、回転直動変換機構40は、ねじ部材41と直動部材42とによる制動力の保持が解除されると共に、電動アクチュエータ43の逆回転に対応した移動量で直動部材42をシリンダ部36内へと戻り方向に移動させ、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ31)の制動力を解除する。
この場合にも、左,右のディスクブレーキ31を異なるタイミングでリリース動作させるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。これにより、電動アクチュエータ43の始動させるときの突入電流を、左,右で異なるタイミングで発生させることができ、バッテリ14等の負荷を軽減することができる。
次に、駐車ブレーキ制御装置19で行われる緊急停止制御処理(動的制御処理)について、図5を参照しつつ説明する。なお、図5の処理は、駐車ブレーキ制御装置19に通電している間、所定時間毎に(所定の制御周期で)繰り返し実行される。また、上述した図4の制御処理では、緊急停止制御処理の開始条件の一例として、車両の走行中であること、両輪非ロック状態であること、駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作したことの3条件を挙げた。しかし、本発明はこれに限らず、両輪非ロック状態か否かの条件を省いてもよい。即ち、車両の走行中に駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作すると、両輪非ロック状態か否かに拘らず、緊急停止制御処理(動的制御処理)を開始してもよい。
図5の処理動作がスタートすると、演算回路20は、S11で、車両が走行中であるか否かを判定する。この走行中であるか否かの判定は、上述した図4のS1の判定と同様に行われる。
S11で「YES」、即ち走行中であると判定された場合は、S12に進む。一方、S11で「NO」、即ち走行中でない(停車中)と判定された場合は、動的制御から静的制御に切り換わるため、そのままリターンする。
S12では、緊急停止制御の実施中であるか否かを判定する。この判定は、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作しているか否かにより行うことができる。S12で「YES」、即ち緊急停止制御が実施中(アプライ状態または保持状態)であると判定された場合には、S13に進む。一方、S12で「NO」、即ち緊急停止制御が実施中でないと判定された場合には、リターンする。
S13では、左後輪3がスリップしているか否かを判定する。この判定は、例えば車両データバス16から取得した車輪速センサからの信号等に基づいて行うことができる。具体的な一例としては、左後輪3の回転が設定された減速度を超えて低下したか否かによって、左後輪3がスリップ状態か否かを判定することができる。S13で「NO」、即ち左後輪3が非スリップ状態と判定された場合は、S15に進む。
一方、S13で「YES」、即ち左後輪3がスリップ状態と判定された場合には、S14に進む。次のS14では、スリップ状態である左後輪3のディスクブレーキ31をリリース状態にするために、左後輪3のディスクブレーキ31に対して緊急停止解除許可を行い、次のS15に進む。
S15では、右後輪3がスリップしているか否かを判定する。この判定は、S13と同様に、例えば車両データバス16から取得した車輪速センサからの信号等に基づいて行うことができる。S15で「NO」、即ち右後輪3が非スリップ状態と判定された場合は、S17に進む。一方、S15で「YES」、即ち右後輪3がスリップ状態と判定された場合には、S16に進む。次のS16では、スリップ状態である右後輪3のディスクブレーキ31をリリース状態にするために、右後輪3のディスクブレーキ31に対して緊急停止解除許可を行い、次のS17に進む。
S17では、緊急停止制御要求があるか否かを判定する。この判定は、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作しているか否かにより行うことができる。この場合、S12で運転者は既に緊急停止制御を実施している途中であるため、S17では実質的に運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作から制動OFF操作に切換えているか否かを判定するものである。
S17で「YES」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18の制動ON操作を継続し、緊急停止制御要求があると判定された場合には、S18に進む。次のS18では、解除許可側のブレーキ装置の緊急停止解除を行う。具体的には、左,右のディスクブレーキ31のうちS14,S16で緊急停止解除が許可されたディスクブレーキ31は、リリース状態にする。一方、左,右のディスクブレーキ31のうちS14,S16で緊急停止解除が許可されなかったディスクブレーキ31は、非リリース状態として、アプライ状態または制動力の保持状態を継続する。即ち、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右のディスクブレーキ31を独立してアンチロック制御を行う。
これにより、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右の後輪3のうちいずれか一方がスリップ状態となったときには、スリップ状態となった一方の後輪3(例えば左後輪3)のディスクブレーキ31がリリース状態となり、非スリップ状態となった他方の後輪3(例えば右後輪3)のディスクブレーキ31は非リリース状態となるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。このため、S11,S13〜S16,S18は、アンチロック制御を行うABS制御部の具体例を示している。
一方、S17で「NO」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動OFF操作に切換えている場合には、S19に進む。次のS19では、制動要求信号が出力されていないので、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右のディスクブレーキ31をいずれもリリース状態とする。
かくして、本実施形態によれば、車両が停車状態で駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されたときには、制動要求信号に応じて左,右のディスクブレーキ31を異なるタイミングで動作させる。一方、車両が走行状態で駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されたときには、制動要求信号に応じて左,右のディスクブレーキ31を一緒のタイミングで動作させる。これにより、停車中のブレーキ制御では、左,右のディスクブレーキ31の各電動アクチュエータ43を始動させるときの突入電流を左,右で異なるタイミングで発生させることができるので、バッテリ14への負荷を軽減することができる。
一方、走行中の緊急停止制御では、左,右のディスクブレーキ31を一緒に動作させるので、応答性を向上することができる。また、片輪にのみ制動力が発生させるのを抑制することができるので、車両の安定性を確保することができる。
また、車両が走行状態で制動要求信号があったときには、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右のディスクブレーキ31を独立してアンチロック制御する。このため、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右の後輪3のうちいずれか一方がスリップ状態となったときに、スリップ状態となった一方の車輪のディスクブレーキ31がリリース状態となり、非スリップ状態となった他方の車輪のディスクブレーキ31は非リリース状態となるように、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43と右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43とを制御する。この結果、非スリップ状態となった他方の車輪にディスクブレーキ31によって制動力を付与することができるから、緊急制動中においても、ステアリング操作による回避走行を可能とし、路面状況によっては、車両の制動距離を短くすることができる。
次に、図6ないし図13は、本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、緊急停止制御実施中に車輪が目標車輪減速度に達した場合に、アプライ状態を停止する。また、アプライ状態停止中(保持状態中)に車輪が減速度不足となったら、ブレーキパッドの推力を上げることにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
また、第2の実施形態では、図3に示した駐車ブレーキ制御装置19のメモリ21に、図6〜図10に示す処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。また、メモリ21には、ブレーキパッド33が第1の目標推力値に達するための目標電流値や、第2の目標推力値に達するための目標電流値、また、目標車輪減速度値や減速度不足の設定値、さらに、処理プログラムで用いる各種の計算式、係数、閾値等も格納されている。
そして、左,右のディスクブレーキ31を緊急停止制御しているときには、図6〜図8および図9〜図10に示す処理プログラム(処理手順)に沿って左,右のディスクブレーキ31が制御されるものである。なお、第2の実施形態においても、上述した第1の実施の形態と同様に左,右のディスクブレーキ31は、独立して(個別に)制御されている。
以下、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20で行われる制御処理についてまず、図6〜図8を参照しつつ説明する。
図6〜図8の処理動作がスタートすると、演算回路20は、S21で、車両が走行中であるか否かを判定する。この走行中であるか否かの判定は、上述した図4のS1の判定と同様に行われる。
S21で「YES」、即ち走行中であると判定された場合は、S22に進む。一方、S21で「NO」、即ち走行中でない(停車中)と判定された場合は、動的制御から静的制御に切り換わるため、そのままリターンする。
S22では、緊急停止制御の実施中であるか否かを判定する。この判定は、上述した図5のS12の判定と同様に行われる。S22で「YES」、即ち緊急停止制御が実施中(アプライ状態または保持状態)であると判定された場合には、S23に進む。一方、S22で「NO」、即ち緊急停止制御が実施中でないと判定された場合には、リターンする。
S23では、左後輪3がスリップしているか否かを判定する。この判定は、上述したS13の判定と同様に行うことができる。S23で「NO」、即ち左後輪3が非スリップ状態と判定された場合は、S25に進む。
一方、S23で「YES」、即ち左後輪3がスリップ状態と判定された場合には、S24に進む。次のS24では、スリップ状態である左後輪3のディスクブレーキ31をリリース状態にするために、左後輪3のディスクブレーキ31に対して緊急停止解除許可を行い、次のS33に進む。
S25では、左追加上げ中フラグがON設定されているか否かを判定する。この判定は、後述する図9の処理動作によるS56で左追加上げフラグがON設定されたか否かによるものである。即ち、左後輪3のブレーキパッド33が推力保持中に、左後輪3が減速度不足であると判定されて、ブレーキパッド33の推力を追加的に上昇させるときか否かを判定するものである。
S25で「YES」、即ち左追加上げ中フラグがON設定されていると判定された場合には、S28に進む。なお、左追加上げ中フラグがON設定されていると判定された場合は、左側のディスクブレーキ31が保持状態から一時的にアプライ状態に移行したことを意味している。一方、S25で「NO」、即ち左追加上げ中フラグがOFF設定されていると判定された場合には、例えば左側のディスクブレーキ31が保持状態に到達する前のアプライ状態である。このため、保持状態に移行するか否かを判定するために、次のS26に進む。
S26では、左後輪3が目標車輪減速度値に到達したか否かを判定する。即ち、S26は、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43がアプライ状態にあり、ブレーキパッド33の推力を増加させている状態で、左後輪3が目標車輪減速度値に到達したか否かを判定するものである。この判定は、例えば左後輪3の減速度が0.3G(但し、Gは重力加速度)に到達しているか否かにより判定することができる。
S26で「YES」、即ち左後輪3の減速度が0.3G以上に増加して、目標車輪減速度値に到達していると判定された場合には、S32に進む。一方、S26で「NO」、即ち左後輪3が目標車輪減速度値に到達していないと判定された場合には、S27に進む。
S27では、左側のディスクブレーキ31のブレーキパッド33の推力が目標推力値(第2の目標推力値)に到達したか否かを判定する。ここで、本実施の形態では、ブレーキパッド33の推力を検出する推力センサを有していない。そこで、目標推力値を目標電流に変換(演算)することにより、電流センサ部24から検出される電流値が第2の目標電流値に到達したらブレーキパッド33の第2の目標推力に到達したものと判断している。具体的には、例えば第2の目標推力値が15kNの場合には、第2の目標電流値を10Aと設定することができる。
従って、S27では、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43(電動モータ43B)に流れる電流値が第2の目標電流値(10A)に達したか否かを判定する。S27で「YES」、即ち左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43に流れる電流値が第2の目標電流値(10A)に達したと判定された場合には、左側のディスクブレーキ31のブレーキパッド33が第2の目標推力値(15kN)に到達したものとみなして、次のS32に進む。
一方、S27で「NO」、即ち左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43に流れる電流値が第2の目標電流値(10A)に達していないと判定された場合には、左側のディスクブレーキ31のブレーキパッド33が第2の目標推力値(15kN)に到達していないものとみなして、次のS33に進む。
S28では、左追加上げカウンタ(時間カウンタ)をUPし(上げ)、次のS29に進む。S29では、左追加上げカウンタが閾値以上となったか否かを判定する。この判定は、例えば左追加上げカウンタが30msを経過したか否か(左追加上げカウンタ≧閾値30ms)により行うことができる。
S29で「NO」、即ち左追加上げカウンタが閾値未満と判定された場合には、ブレーキパッド33の推力を追加的に上昇させている途中なので、S33に進む。一方、S29で「YES」、即ち左追加上げカウンタが閾値以上となったと判定された場合には、ブレーキパッド33の推力の追加的な上昇が完了しているので、S30に進む。次のS30では、左追加上げ中フラグをOFFに設定し、次のS31では、左追加上げカウンタをリセットして、S32に進む。
S32では、左ブレーキ装置の緊急停止一時停止許可を行う。即ち、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43の動作を停止(アプライを停止)し、ブレーキパッド33の推力を保持する旨の許可を行う。ここで、S25、S28〜S30を経た場合には、左追加上げ中フラグがON設定されてから30msの間で左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43がアプライ状態となり、その後アプライを停止してブレーキパッド33の推力を保持する保持状態とする許可である。即ち、S25、S28〜S30を経た場合には、左後輪3の減速度が不十分であることから、駐車ブレーキ制御装置19は、左側のディスクブレーキ31のブレーキパッド33の推力を若干上げるように制御している。
また、S26を経た場合には、左後輪3の減速度が十分に上昇しており、これ以上ブレーキパッド33の推力を上げると、左後輪3がスリップ(ロック)してしまう虞がある。そこで、駐車ブレーキ制御装置19は、アプライ状態を停止してブレーキパッド33の推力を保持する保持状態へと制御する許可を行う。一方、S27を経た場合には、左後輪3に十分な制動力が発生しているので、駐車ブレーキ制御装置19は、アプライ状態を停止してブレーキパッド33の推力を保持する保持状態へと制御する許可を行う。
S33〜S42は、駐車ブレーキ制御装置19が行う右後輪3の制御処理を示すもので、上述した左後輪3の制御処理であるS23〜S32と同様の処理を行いS43に進む。
S43では、緊急停止制御要求があるか否かを判定する。この判定は、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作しているか否かにより行うことができる。この場合、S22で運転者は既に緊急停止制御を実施している途中であるため、S43では実質的に運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作からOFF操作に切換えているか否かを判定するものである。
S43で「YES」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18の制動ON操作を継続し、緊急停止制御要求があると判定された場合には、S44に進み、S24、S34で解除許可された左,右のディスクブレーキ31の緊急停止解除(リリース指令)を行い、次のS45に進む。S45では、S32、S42で一時停止許可された左,右のディスクブレーキ31の緊急停止制御を一時的に停止し(アプライ状態の停止指令)、一時停止許可されたディスクブレーキ31を保持状態にする。これに伴って、図9、図10に示す緊急停止制御一時停止中の処理が実行される。
一方、S43で「NO」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18の制動ON操作が停止し、緊急停止制御要求がないと判定された場合には、S46に進み、左,右のディスクブレーキ31の緊急停止制御を解除(リリース指令)する。これにより、左,右両方のディスクブレーキ31をリリース状態にし、緊急停止制御(即ち、制動状態)を解除する。
次に、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20で行われる緊急停止制御一時停止中(推力保持中)の処理について、図9、図10を参照しつつ説明する。
図9、図10の処理動作がスタートすると、演算回路20は、S51で、車両が走行中であるか否かを判定する。この走行中であるか否かの判定は、上述した図4のS1の判定と同様に行われる。
S51で「YES」、即ち走行中であると判定された場合は、S52に進む。一方、S51で「NO」、即ち走行中でない(停車中)と判定された場合は、そのままリターンする。
S52では、緊急停止制御一時停止中であるか否かを判定する。この判定は、上述した図8のS45でディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43に停止指令がなされているか否かにより行われる。即ち、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作しているときに、左,右のディスクブレーキ31のブレーキパッド33(電動アクチュエータ43)が保持状態となっているか否かを判定する。
S52で「YES」、即ち緊急停止制御一時停止中であると判定された場合には、S53に進む。一方、S52で「NO」、即ち緊急停止制御一時停止中でないと判定された場合には、リターンする。
S53では、左後輪3がスリップしているか否かを判定する。この判定は、上述したS13の判定と同様に行うことができる。S53で「NO」、即ち左後輪3が非スリップ状態と判定された場合は、S55に進む。
一方、S53で「YES」、即ち左後輪3がスリップ状態と判定された場合には、S54に進む。次のS54では、スリップ状態である左後輪3のディスクブレーキ31をリリース状態にするために、左後輪3のディスクブレーキ31に対して緊急停止解除許可を行い、次のS58に進む。
S55では、左車輪(後輪3)が減速度不足であるか否かを判定する。即ち、S55では、ブレーキパッド33により左後輪3のディスクロータ4に制動力が付与されている(保持状態である)が、それによる減速度が十分であるか否かを判定する。この判定は、例えば左後輪3の減速度が設定値である0.2Gに到達しているか否かにより判定することができる。この場合、駐車ブレーキ制御装置19は、上述したアプライ状態中の減速度設定値である目標車輪減速度値(0.3G)よりも小さい設定値である減速度不足の設定値(0.2G)に比べて、左後輪3の減速度が低下したときに減速度不足であると判定している。
従って、S55では、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作したときに、アプライ状態で左後輪3が目標車輪減速度値である0.3Gに達することにより、保持状態となり、その後、減速度が0.2Gよりも落ちたか否かを判定する。また、ブレーキパッド33の推力が目標推力値(15kN)に達した場合に保持状態となり、その後、減速度が0.2Gに達しているか否かを判定する。さらに、ブレーキパッド33の推力を一旦上げた後に、減速度が0.2Gに達しているか否かを判定する。即ち、S55では、緊急停止制御実施中の保持状態で、左後輪3の減速度が0.2Gよりも大きいか否かを判定する。
S55で「YES」、即ち左後輪3の減速度が不足していると判定された場合には、S56に進む。次のS56では、左追加上げフラグをON設定し、次のS57では、左後輪3のディスクブレーキ31をアプライ状態にするために、左後輪3のディスクブレーキ31に対して緊急停止制御実施許可を行い、次のS58に進む。一方、S55で「NO」、即ち左後輪3の減速度が十分であると判定された場合には、S58に進む。
S58〜S62は、駐車ブレーキ制御装置19が行う右後輪3の緊急停止制御一時停止中の制御処理を示すもので、上述した左後輪3の制御処理であるS53〜S57と同様の処理を行いS63に進む。
S63では、緊急停止制御要求があるか否かを判定する。この判定は、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作しているか否かにより行うことができる。この場合、S52で運転者は既に緊急停止制御を実施している途中であるため、S63では実質的に運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動ON操作から制動OFF操作に切換えているか否かを判定するものである。
S63で「YES」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18の制動ON操作を継続し、緊急停止制御要求があると判定された場合には、S64に進み、S54、S59で解除許可された左,右のディスクブレーキ31の緊急停止解除(リリース指令)を行い、次のS65に進む。S65では、S57、S62で制御実施許可された左,右のディスクブレーキ31の緊急停止制御(アプライ指令)を行う。
一方、S63で「NO」、即ち運転者が駐車ブレーキスイッチ18の制動ON操作が停止し、緊急停止制御要求がないと判定された場合には、S66に進み、左,右のディスクブレーキ31の緊急停止制御を解除(リリース指令)する。これにより、左,右両方のディスクブレーキ31をリリース状態にし、緊急停止制御(即ち、制動状態)を解除する。
次に、緊急停止制御時、車輪減速度制御時、スリップ判定成立時の電流、推力、モータ指令の一例を図11〜図13の特性線図を参照して説明する。なお、以下の説明において、ディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43が作動していない停止区間をA区間とし、アプライ作動区間をB区間とし、推力保持中(保持状態)区間をC区間とし、リリース作動区間をD区間とする。
まず、緊急停止制御時の電流、推力、モータ指令の一例を図11の特性線図を参照して説明する。
車両の走行中に運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されると、駐車ブレーキ制御装置19にアプライ要求信号が出力され、A区間(推力解除区間)からB区間(アプライ作動区間)へと移行する。B区間では、特性線Gに示すように、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43をアプライ作動させる。
この場合、特性線Eに示すように、電動アクチュエータ43の電動モータ43Bに電流が供給され、電動モータ43Bが直動部材42を介してピストン39を推進させることにより、ピストン39がブレーキパッド33をディスクロータ4に向けて推進させる。なお、特性線Fに示すように、ブレーキパッド33の推力は、ブレーキパッド33とディスクロータ4とが接触するt1の時点まで一定値となる。
そして、t1の時点でブレーキパッド33がディスクロータ4に接触するから、電動アクチュエータ43の電流が徐々に増加する。これにより、ブレーキパッド33の推力をt1の時点から徐々に増加させ、延いては車両への制動力を徐々に増加させる。そして、特性線Eに示すように、t2の時点で電流センサ部24によって電動アクチュエータ43の電流が第2の目標電流値(10A)に到達したことを検出すると、特性線Fに示すように、ブレーキパッド33の推力が第2の目標推力値(15kN)に到達したものとみなされてアプライ作動が停止され、C区間(保持状態)へと移行する。
C区間では、ブレーキパッド33の推力(15kN)を維持した状態、即ち車両への制動力を維持した状態となっている。この場合、回転直動変換機構40は、直動部材42を任意の位置でねじ部材41との摩擦力によって保持することにより、ピストン39およびブレーキパッド33を電動アクチュエータ43により推進された位置に保持する。
そして、運転者による駐車ブレーキスイッチ18の制動ON操作が停止されると、駐車ブレーキ制御装置19にリリース要求信号が出力され、C区間からD区間(リリース作動区間)へと移行する。D区間では、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43をリリース作動させる(特性線G参照)。この場合、電動アクチュエータ43により回転直動変換機構40のねじ部材41がアプライ状態とは逆方向に回転駆動される。これにより、直動部材42およびピストン39は、ディスクロータ4から離れる方向に駆動され、その後、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除されたA区間へと移行する。
次に、車輪減速度制御時の電流、推力、モータ指令の一例を図12の特性線図を参照して説明する。
車両の走行中に運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されると、駐車ブレーキ制御装置19にアプライ要求信号が出力されA区間からB区間へと移行する。B区間では、特性線Kに示すように、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43をアプライ作動させる。そして、特性線Hに示すように、t3の時点でブレーキパッド33がディスクロータ4に接触するから、電動アクチュエータ43の電流が徐々に増加する。
これにより、特性線Jに示すように、ブレーキパッド33の推力をt3の時点から徐々に増加させ、延いては車両への制動力を徐々に増加させる。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、図示しない車輪速センサにより検出された後輪3の速度から後輪3の減速度を演算して、減速度が目標車輪減速度値である0.3Gにt4時点で到達したと判定されると、C区間に移行する(特性線L参照)。
C区間では、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43のアプライ作動停止を行う。即ち、後輪3の減速度が0.3Gよりも大きいときには、これ以上ブレーキパッド33の推力を増加させると、後輪3がロック(スリップ)する虞があるため、ブレーキパッド33の推力を維持した状態へと移行している。
C区間では、ブレーキパッド33の推力を維持した状態、即ち車両への制動力を維持した状態となっている。しかし、例えば後輪3の減速度が目標車輪減速度値に達したと判定し、その時点でディスクブレーキ31を保持状態にしても、後輪3の減速度は安定せずに変動する。このため、保持状態に移行してから所定時間が経過して後輪3の減速度が安定したときには、後輪3の減速度が不足していることがある。そこで、駐車ブレーキ制御装置19は、車輪速センサにより検出された後輪3の減速度がt5時点で不足していると検知すると、B区間へ移行する。
B区間では、電動アクチュエータ43を一時的に動作させる。具体的には、駐車ブレーキ制御装置19は、図示しない車輪速センサにより検出された後輪3の速度から後輪3の減速度を演算して、減速度が設定値である0.2Gより低下したと判定されると、電動モータ43Bに電力を供給して、電動アクチュエータ43のアプライ作動を30ms間行う。これにより、ブレーキパッド33の推力を若干上げる(特性線H,J,K,M参照)。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43の動作を停止して、ブレーキパッド33の推力を維持した状態(C区間)へと移行する。
なお、駐車ブレーキ制御装置19は、減速度不足によるブレーキパッド33の推力を若干上げる制御(追加上げ制御)を、目標車輪減速度値に到達してから車輪減速度値が落ち着くまでの所定時間(例えば、100ms〜300ms)を経過してから行っている。また、駐車ブレーキ制御装置19は、ブレーキパッド33の推力を若干上げた後、再度減速度不足によるブレーキパッド33の推力を若干上げる制御でも、車輪減速度値が落ち着くまでの所定時間(例えば、100ms〜300ms)を経過してから行っている。
次に、スリップ判定成立時の電流、推力、モータ指令の一例を図13の特性線図を参照して説明する。
車両の走行中に運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動ON操作されると、駐車ブレーキ制御装置19にアプライ要求信号が出力されA区間からB区間へと移行する。B区間では、特性線Qに示すように、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43をアプライ作動させる。そして、特性線Nに示すように、t6の時点でブレーキパッド33がディスクロータ4に接触するから、電動アクチュエータ43の電流が徐々に増加する。これにより、特性線Pに示すように、ブレーキパッド33の推力をt6の時点から徐々に増加させ、延いては車両への制動力を徐々に増加させる。
特性線Rに示すように、電動アクチュエータ43がアプライ作動しているB区間で、例えば車輪速センサからの信号等に基づいて後輪3がスリップしているとt7の時点で判定されると、B区間からC区間へと移行する。C区間では、電動アクチュエータ43の動作を停止する。即ち、駐車ブレーキ制御装置19は、左,右の後輪3のうちスリップしている後輪3の電動アクチュエータ43をリリース作動させるために、電動モータ43Bへの電流を止めて電動アクチュエータ43を停止させる。
そして、C区間からD区間へと移行し、駐車ブレーキ制御装置19は、電動モータ43Bに電流を供給して、電動アクチュエータ43をリリース作動させる。これにより、ブレーキパッド33の推力は徐々に低下し、その後A区間へと移行する。また、後輪3のスリップが解消したら、B区間へと移行し、駐車ブレーキ制御装置19は、電動アクチュエータ43をアプライ作動させる。
かくして、本実施の形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、左,右のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ制御装置19により独立して制御されている。そして、動的制御中は、車輪のスリップ発生、目標推力達成、および目標車輪減速度達成の3条件でアプライ作動を停止している。特に、車輪減速度は、車輪速センサからリアルタイムで取得できる情報で演算することができる。従って、駐車ブレーキ制御装置19は、路面の状態やブレーキパッド33の状態等の環境の違いに対応して、動的制御中のアプライ作動を停止することができる。これにより、動的制御中のABS制御がなされるのを低減することができるので、車両の制動距離を短くすることができる。
また、目標車輪減速度達成をアプライ作動の停止条件とすることにより、目標推力値(第2の目標推力値)を車両の重量に拘わらず設定することができる。即ち、目標推力値を軽量車両に対応したものとすると、重量車両では制動力不足となり、減速度不足が発生する虞がある。また、目標推力値を重量車両に対応したものとすると、軽量車両では制動力過多となり、ABS制御が頻繁に動作して減速度性能が低下する虞がある。しかし、本実施の形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、目標車輪減速度達成によりアプライ作動を停止させている。これにより、種々の車両の重量や車両に搭載した荷物の重量に関係なく目標推力値を設定することができ、汎用性を向上することができる。
さらに、駐車ブレーキ制御装置19は、ブレーキパッド33の推力を維持している状態(保持状態)で、車輪の減速度不足を監視している。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、車輪の減速度不足を検知したらブレーキパッド33の推力を若干上げるようにアプライ作動させる。これにより、車両の制動距離を短くすることができる。
なお、上述した第2の実施形態では、目標車輪減速度値到達と目標推力到達とにより、ディスクブレーキ31のアプライ動作を停止する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば目標車輪減速度値到達と目標推力到達とのうちいずれか一方のみを適用してもよい。
また、上述した各実施形態では、駐車ブレーキスイッチ18は、引き上げ操作が制動ON操作になり、押し下げ操作が制動OFF操作になるものを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば駐車ブレーキスイッチは、押し込み操作が制動ON操作になり、引き出し操作が制動OFF操作になるものでもよい。制動ON操作、制動OFF操作の具体的な態様は、車両の仕様等に応じて適宜設定されるものである。
上述した各実施形態では、静的制御では、まず左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43の動作を開始してから所定時間経過後に、右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43の動作を開始する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えばまず右側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43の動作を開始してから所定時間経過後に、左側のディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43の動作を開始させてもよい。
上述した各実施形態では、左,右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、左,右の前輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよく、全ての車輪(4輪全て)のブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成してもよい。即ち、車両の少なくとも左,右一対の車輪のブレーキを、電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成することができる。
上述した実施形態では、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば液圧の供給が不要の電動式ディスクブレーキにより構成してもよい。また、ディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、例えば、ドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよいものである。さらに、例えば、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキによりブレーキ装置を構成してもよく、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行うブレーキ装置でもよく、ブレーキ装置は各種のものを採用することができる。この場合に、例えば液圧の供給が不要な電動式のブレーキ機構を採用した場合は、制御装置は、車両に制動力を常用ブレーキとして与える(ブレーキペダルの操作等によるアプライ要求に基づいて電動モータを駆動する)構成とすることができる。
なお、上記実施形態では、動的駐車ブレーキのアプライ動作およびリリース動作は、制動要求信号に応じて左,右のディスクブレーキ31を一緒のタイミング(略同じタイミング)で動作させる例を示した。しかし、これに限らず、動的駐車ブレーキは、静的駐車ブレーキのときより、左,右のディスクブレーキ31の動作タイミングの差を小さくすればよく、完全に同一タイミングとする必要はない。よって、少しタイミングをずらすことで、左,右の突入電流を少しずらし、バッテリ14等の負荷を軽減させ、車輪に対する制動力の増加(アプライ)および減少(リリース)するタイミングを略同タイミングとすればよい。