JP6204405B2 - ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス基板の製造方法に関する。
フラットパネルディスプレイ用のガラス基板は、一般的に、ガラス原料を加熱して得られた溶融ガラスをガラス基板へと成形する工程を経て製造される。ガラス基板の製造工程は、例えば、ガラス原料を溶解して溶融ガラスを得る工程、溶融ガラスが内包する微小な気泡を除去して清澄する工程、溶融ガラスを攪拌して均質化する工程、及び溶融ガラスを成形装置に供給する工程を含む。ガラス原料を溶解する工程の後の工程においては、耐火レンガに起因するガラス基板の欠点を防止するとともに、溶融ガラスの温度を調整するために、白金又は白金合金製の管あるいは槽を含む、白金又は白金合金製の容器が用いられる。ガラス基板の製造工程において、白金又は白金合金製の容器を用いる場合、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧又は水素分圧と、容器の内側の溶融ガラス中の水蒸気分圧又は水素分圧との関係が問題になる。以下、白金又は白金合金製の容器を「白金容器」と略す。
フラットディスプレイ用のガラス基板は、高い温度安定性と低い欠点レベルが要求される。このような要求に合致させる為、ガラス原料の溶融には、酸素バーナーを使用することが多く、溶融ガラス中の水素分圧が上昇しやすい。溶融ガラス中の水素分圧が上昇し、白金容器の内側の水蒸気分圧が白金容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧よりも高くなると、溶融ガラス中のOH基が酸素と水素とに解離する。すると、水素のみが白金容器の壁を透過して白金容器の外側へ移動し、白金容器の内側に残された酸素が白金容器の内壁面近傍の溶融ガラス中に酸素泡を形成することで、溶融ガラスの泡品質を悪化させる。
このような問題を防止する技術として、白金容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧を、白金容器の内側の溶融ガラス中の水蒸気分圧よりも高くする技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、清澄工程を、溶融ガラス中の気泡を浮上脱泡させて除去する第1工程と、溶融ガラス中のガス成分を溶融ガラス中に吸収させる第2工程とに分け、第1工程における白金容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、第2工程における白金容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧よりも低くする技術が知られている(例えば、特許文献2)。この技術によれば、製造設備の長寿命化及び電力消費の抑制を図りながら、効果的にガラス中の気泡を抑制することができる。
特表2001−503008号公報 特許第5002731号公報
しかしながら、ガラス基板の泡品質を向上させるために、ガラス基板の製造工程において白金容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を上昇させると、白金容器の放熱量が増加し、溶融ガラスを必要な温度に加熱するためのエネルギーが増加する。
また、設備の周囲の水蒸気分圧の調整には、設備周囲を囲い、その中に蒸気を供給する方法をとることが多いが、広い範囲の水蒸気分圧を高めに維持するには多量の蒸気が必要であり、省エネ上、好ましくない。
さらには、安定生産のためには、第2工程の製造装置においても、データ収集、点検、補修のために、作業者が高い水蒸気分圧に保たれた装置周囲のスペースに定期的に立ち入る必要がある。装置周囲の環境は高温であり、さらに高い水蒸気分圧に維持された状況は作業環境として劣悪である。安全衛生の見地からも、本当に必要な箇所以外では水蒸気分圧を少しでも低くしたい。
そこで、本発明は、従来よりもガラス基板の製造に必要なエネルギーを削減し、作業環境を改善しつつ、かつガラス基板の泡品質の悪化を防止することが可能なガラス基板の製造方法を提供する。
本発明の一態様は、清澄された溶融ガラスを白金又は白金合金製の容器内でスターラーの回転により攪拌して均質化する工程を有するガラス基板の製造方法である。この態様に係る製造方法は、前記攪拌工程において、前記溶融ガラスの粘度を500ポアズ以上かつ2000ポアズ以下にすると共に、前記容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.6kPa以上かつ6.0kPa以下とする。
上記の態様のガラス基板の製造方法は、前記攪拌工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり1.2kPa以上としてもよい。
また、上記の態様のガラス基板の製造方法は、前記攪拌工程の前に、ガラス原料を溶解させて溶融ガラスをつくる溶解工程と;白金又は白金合金製の容器内で、前記ガラス原料に含まれる清澄剤がガス成分を放出する第1の温度範囲内の最高温度まで前記溶融ガラスの温度を上昇させ、前記溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去する第1脱泡工程と;白金又は白金合金製の容器内で、前記第1の温度範囲の最高温度よりも前記溶融ガラスの温度を低下させ、前記溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去するとともに、前記溶融ガラス中にガス成分を吸収させて気泡を縮小させる第2脱泡工程と;前記第2脱泡工程の後、前記溶融ガラスの温度を低下させることで前記溶融ガラス中に残存する気泡中の酸素を前記溶融ガラスに吸収させて泡径を縮小させ、さらに前記溶融ガラスの温度を低下させることで前記気泡の内圧を低下させ、前記気泡を消滅させる吸収工程と;を有し、前記攪拌工程の後に、前記溶融ガラスの温度を成形に適した温度まで低下させる成形温度調整工程と、を有する。そして、前記第1脱泡工程、前記第2脱泡工程、前記吸収工程及び前記成形温度調整工程における前記容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、前記攪拌工程における前記容器の周囲の水蒸気分圧よりも低くする。
また、上記の態様のガラス基板の製造方法は、前記吸収工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり0.8kPa以上としてもよい。
また、上記の態様のガラス基板の製造方法は、前記第2脱泡工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり0.7kPa以上としてもよい。
また、上記の態様のガラス基板の製造方法は、前記成形温度調整工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり0.6kPa以上としてもよい。
また、上記の態様のガラス基板の製造方法は、前記攪拌工程において、前記スターラーの回転速度を1rpm以上かつ15rpm以下としてもよい。
本発明のガラス基板の製造方法によれば、従来よりもガラス基板の製造に必要なエネルギーを削減し、作業環境を改善しつつ、かつガラス基板の泡品質の悪化を防止することができる。
本発明の実施形態に係るガラス基板製造装置の概略図である。 図1の装置の一部を示す概略平面図である。 本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法のフロー図である。 図3に示す各工程の溶融ガラスの温度変化を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係るガラス基板製造方法について詳細に説明する。
本実施形態において製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板である。本実施形態のガラス基板は、例えば以下の組成を有する。以下に示す組成の含有率表示は、質量%である。
SiO:50〜70%、
Al:0〜25%、
:0〜15%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜15%、
RO:5〜30%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有するものである)、
R’O:0〜0.5%(ただし、R’はLi、Na及びKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有するものである)、
を含有するガラスであることが、好ましい。
本実施形態のガラス基板の製造方法を適用する場合は、ガラス組成物が、上記各成分に加えて、質量%表示で、SnO:0.01〜1%(好ましくは0.01〜0.5%)、Fe:0〜0.2%(好ましくは0.01〜0.08%)を含有し、環境負荷を考慮して、As、Sb及びPbOを実質的に含有しないようにガラス原料を調製してもよい。
図1は、本実施形態のガラス基板製造装置100の一例を示したものである。ガラス基板製造装置100は、溶解槽101、清澄槽102、攪拌槽103、成形装置104、導管105a、105b、105c、および、加湿装置106を有する。
溶解槽101は、レンガ等の耐火物により構成され、溶融ガラスを収容する液槽と、液槽上の空間である上部空間とを備える。上部空間の壁面には、燃料と酸素等のガスとを燃焼して火焔を発するバーナーが設けられている。液槽には、電気加熱装置が設けられている。電気加熱装置は、液槽の壁面に設けられた一対以上の電極により構成され、電極間に電圧を加えて溶融ガラスに通電することにより、溶融ガラスにジュール熱を発生させ、溶融ガラスを加熱する。
清澄槽102は、溶融ガラスを収容する白金又は白金合金製の管状の容器により構成され、容器本体に電流を流すことで、容器の温度を上げ、容器中の溶融ガラスを加熱する。なお、図1には明示されていないが、清澄槽102は、流す電流量を変えることで、ガラスの加熱量を調整できるよう、2つ以上の部分から構成されても良い。
攪拌槽103は、白金又は白金合金製の溶融ガラスを収容する容器と、白金又は白金合金製の回転軸と、回転軸に取り付けられた白金又は白金合金製の複数の攪拌翼とを備える。この回転軸と攪拌翼をスターラーという。攪拌槽103およびスターラーは、それぞれ1つ設置しても、それぞれ複数を設置しても良い。
成形装置104は、上部に溝を有し、垂直方向の断面形状が略五角形の耐火物製の成形体を備える。成形装置104は、成形体を溢れ出て成形体の底の先端で合流した溶融ガラスを下方に延伸するローラー、及び、ガラスを所定の温度に調整するための温度調節装置を備える。なお、本実施形態では、成形装置104をダウンドロー方式の成形装置として記載したが、成形方法が異なっても本発明を適用することは可能である。
導管105a、105b、105cは、白金又は白金合金製の管状の容器であり、管の中を流れる溶融ガラスの温度を調節するための温度調節機能を備えている。温度調節の方法としては、前記清澄槽102と同様、容器に通電しても良いし、容器の周りに配したヒーターで間接的に加熱しても良いし、或いは、水冷、空冷の冷却パイプを併設しても良い。
加湿装置106は、水を蒸発させて蒸気を生成するボイラー106aと、蒸気を供給する蒸気管106bから構成される。図2は、本実施形態のガラス基板製造装置100の一部の平面図を示す。清澄槽102の周囲には、囲い201、202が設けられている。導管105b及び攪拌槽103の周囲には、同様に囲い203が設けられている。囲い203の内側で、攪拌層103の周囲には囲い204が設けられている。すなわち、攪拌層103は囲い204及び囲い203によって二重に囲われている。また、導管105cの周囲にも囲い205が設けられている。蒸気管106bは、個々の囲い202から205の内側の雰囲気に蒸気を供給するように分岐管を有している。蒸気管106bは、それぞれの分岐管に調節弁を備えており、個々の囲い202から205の雰囲気に供給する蒸気の流量を調節できるように構成されている。
なお、図2では、装置の周りを囲いで囲って、そこに蒸気を供給する構造を記載したが、装置を囲いで覆う代わりに、白金もしくは白金合金製の容器の周りに配置したバックアップレンガもしくは保温材の中に、直接、蒸気を導入しても良い。また、バックアップレンガや保温材の間に空間を設けて、そこに蒸気を供給しても良い。また、囲いの材質に関しては、雰囲気温度に耐えられ、且つ、水蒸気の流れを遮断できる材質であれば、特に限定されない。例えば、ブリキ板、耐熱性のカーテン等を本実施形態の囲いとして用いることができる。
また、本実施形態のガラス基板製造装置100は、図1においてTで示した位置に温度計(熱電対)が設置されている。温度計は、清澄槽102、攪拌槽103および導管105a、105b、105cの外面の近傍に配置されるか又はこれらの外面に接触することで、これらの容器の表面の温度を測定し、その温度に基づいて容器内部の溶融ガラスの温度を求める。各温度計の間の溶融ガラスの温度は、温度勾配を推定することにより求めることができる。温度計の設置場所は、図1に示されているものに限られず、温度計をより多くの場所に設置すれば、溶融ガラスのより正確な温度変化を測定できる。なお、溶融ガラスの温度は、熱電対以外のセンサなどにより測定してもよい。
次に、上述の製造装置を用いた本実施形態のガラス基板の製造方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法の一例のフロー図である。図4は、各工程におけるガラスの温度変化を示すグラフである。
図3に示すように、ガラスの製造方法は、溶解工程S1、第1脱泡工程S2、第2脱泡工程S3、吸収工程S4、攪拌工程S5、成形温度調整工程S6、および、成形工程S7を有する。
溶解工程S1は、溶解槽101においてガラス原料を溶解する工程である。溶解槽101に投入されたガラス原料は、溶解槽101において約1550℃以上の温度に加熱されて溶解し、溶融ガラスとなって溶解槽101から流れ出る。溶解槽101から流れ出た溶融ガラスは、清澄に適した温度になるように、導管105aおよび清澄槽102の内部でさらに加熱される。
第1脱泡工程S2では、清澄剤が溶融ガラス中でガス成分を放出し、このガス成分がガラス中の気泡の中に侵入し、気泡を大きくして浮上速度を速めることで、溶融ガラス中の気泡が浮上脱泡される。第1脱泡工程S2は、主に清澄槽102の前半部分において行われる。第1脱泡工程S2では、図4に示すように、溶融ガラスがガラス基板の製造工程における最高温度T1まで加熱される。溶融ガラスの温度が高くなると、気泡の泡径がさらに拡大するのと同時に、粘度が低くなることで気泡の浮上速度が速くなり気泡の浮上脱泡が促進される。
清澄剤を用いると、ガラス原料に含まれるガス成分の凝集による気泡生成及び当該気泡の溶融ガラス外への放出作用を助長することによって、溶融ガラスの清澄を促進することができる。例えば、本実施形態においては、酸化スズを清澄剤として用いることができる。酸化スズは、高温で、SnO→SnO+1/2O↑の反応で酸素を放出するが、この反応は、第1の温度範囲において、効率的に進行させることができる。第1の温度範囲はガラスの種類によって異なるが、例えば、1600℃以上かつ1740℃以下とすることができる。第1の温度範囲の下限は、例えば1600℃以上かつ1650℃以下の範囲で適宜選択することができる。また、第1の温度範囲の上限は、例えば1650℃以上かつ1740℃以下の範囲で適宜選択することができる。すなわち、第1脱泡工程S2は、ガラス原料に含まれる清澄剤がガス成分を放出する第1の温度範囲内で溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去する工程である。なお、図4では、徐々に溶融ガラスの温度を上げていく温度履歴を示したが、溶融ガラスの温度を一気に最高温度T1まで上げ、その後、最高温度T1に維持しても良い。
第2脱泡工程S3は、溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去する第1脱泡工程S2の後、溶融ガラスの温度を最高温度T1から下降に転じ、清澄剤によるガス成分の放出を止めつつ、まだガラス温度が高温であるため、気泡の浮上による脱泡を続ける工程である。第2脱泡工程S3では、清澄剤からのガス成分の放出は止まり、清澄剤のガスの再吸収は始まっているが、同時に、まだ充分高温の為、気泡の浮上脱泡が続いている。すなわち、第2脱泡工程S3は、溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去するとともに、溶融ガラス中にガス成分を吸収させて気泡を縮小させる工程である。第2脱泡工程S3は、例えば、溶融ガラスの温度が最高温度T1に達した後、溶融ガラスの温度が下降に転じた点から開始され、酸化スズの酸素放出反応が活発化する第1の温度範囲の下限の温度に低下するまで行われる。第2脱泡工程S3は、主に清澄槽102の後半部分において行われる。
吸収工程S4は、溶融ガラスの温度を急速に下げ、清澄剤が酸素吸収反応を起こすようにしむけ、浮上脱泡しきれずに残った小泡の中の酸素を溶融ガラス中に吸収することで気泡の径を縮小させる工程である。吸収工程S4では、気泡の径を縮小させた後、溶融ガラスの温度をさらに低下させることで気泡の内圧を低下させ、径が縮小した気泡を溶融ガラス中に吸収消滅させる。吸収工程S4では、最終的には攪拌に適した温度までガラス温度を低下させる。すなわち、吸収工程S4は、第2脱泡工程S3の後、溶融ガラスの温度を低下させることで溶融ガラス中に残存する気泡中の酸素を溶融ガラスに吸収させて泡径を縮小させ、さらに溶融ガラスの温度を低下させることで気泡の内圧を低下させ、気泡を消滅させる工程である。吸収工程S4は、主に導管105bにおいて行われる。
攪拌工程S5は、吸収工程S4の後、溶融ガラスを攪拌槽103においてスターラーを用いて攪拌することにより均質化する工程である。撹拌槽103内の溶融ガラスの粘度は、攪拌効率を高める為には、500〜2000ポアズの間に保持されるのが、望ましい。
成形温度調整工程S6は、攪拌工程S5の後、ガラスを板状に成形する成形装置104に溶融ガラスを供給する工程である。この工程では、溶融ガラスが成形に適した温度まで冷却された後、次の成形工程S7が行われる成形装置104へ送られる。
成形工程S7は、溶融ガラスを板状のガラスに成形する工程である。本実施形態では、溶融ガラスは、オーバーフローダウンドロー法により連続的に板状に成形される。成形された板状のガラスは、切断され、ガラス基板となる。
本実施形態においては、第1脱泡工程S2と第2脱泡工程S3との境界Xを、溶融ガラスの温度が最高温度T1に達した後、下降に転じる点とする。すなわち、第1脱泡工程S2は、溶融ガラスの温度が、酸化スズの酸素放出反応が活発化する第1の温度範囲の下限の温度又はその近傍の温度に上昇したときに開始され、最高温度T1に達し、その温度に維持されている間に行なわれる。また、第2脱泡工程S3は、溶融ガラスの温度が最高温度T1に達した後、下降に転じた時に開始され、溶融ガラスの温度がガラス基板の成形に適した温度に低下するまで行われる。
したがって、清澄槽102において、溶融ガラスを加熱もしくは最高温度T1に維持するのに必要な電流値を流している部分が第1脱泡工程S2に相当し、溶融ガラスの温度が下がりだすように電流量を調節した部分からが、第2脱泡工程S3と分けることができる。図2に示すように、本実施形態では、第1脱泡工程S2が行われる清澄槽102の上流側の前半部分が囲い201によって囲われており、囲い201の内側の雰囲気を独立して制御できるようになっている。
また、第2脱泡工程S3と吸収工程S4との境界は、溶融ガラスの温度が最高温度T1から下りだした後、上記第1の温度範囲の下限の温度まで低下した点とすることができる。すなわち、第2脱泡工程S3は、溶融ガラスの温度が最高温度T1に達した後、下りだした点から開始され、溶融ガラスの温度が上記第1の温度範囲の下限の温度に低下するまで行われる。本実施形態では、ガラス基板製造装置100における第2脱泡工程S3と吸収工程S4との境界は、例えば、清澄槽102と導管105bとの接続箇所またはその近傍とすることができる。図2に示すように、第2脱泡工程S3が行われる清澄槽102の下流側の後半部分は囲い202によって囲われている。これにより、蒸気管106bの分岐管に設けられた調節弁を調節することで、囲い202の内側に配置された白金又は白金合金製の容器である清澄槽102の後半部分の周囲の雰囲気を、独立して制御できるようになっている。
吸収工程S4と攪拌工程S5との境界は、溶融ガラスの温度がガラスの攪拌に適した温度に低下した点とすることができる。すなわち、吸収工程S4は、溶融ガラスの温度が上記第1の温度範囲の下限の温度に低下した後に開始され、溶融ガラスの温度がガラスの攪拌に適した温度に低下するまで行われる。本実施形態では、ガラス基板製造装置100における吸収工程S4と攪拌工程S5との境界は、導管105bの攪拌槽103との接続箇所の近傍とすることができる。吸収工程S4が行われる導管105bの清澄槽102との接続箇所またはその近傍から、導管105bの攪拌槽103との接続箇所の近傍までは、囲い203によって囲われている。これにより、蒸気管106bの分岐管に設けられた調節弁を調節することで、囲い203の内側に配置された白金又は白金合金製の容器である導管105bの周囲の雰囲気を、独立して制御できるようになっている。
攪拌工程S5と成形温度供給工程S6との境界は、溶融ガラスの温度では無く、設備の境界と一致する。すなわち、攪拌工程S5と成形温度調整工程S6との境界は、導管105cの攪拌層103との接続箇所の近傍とすることができる。図2に示すように、攪拌工程S5が行われる攪拌槽103および導管105b、105cの端部は、囲い204により囲われている。したがって、蒸気管106bの分岐管に設けられた調節弁を調節することにより、攪拌工程S5が行われる囲い204の内側の白金又は白金合金製の容器である攪拌槽103の周囲の雰囲気を独立して制御できるようになっている。なお、囲い204は囲い203の内側に配置されている。これにより、囲い204の内側の雰囲気の水蒸気分圧を低下しにくくすることができる。
成形温度調整工程S6と成形工程S7との境界は、溶融ガラスの温度が成形に適した温度まで低下する点とすることができ、本実施形態では導管105cの成形装置104との接続箇所の直前とすることができる。成形温度調整工程S7が行われる導管105cの攪拌槽103との接続箇所の近傍から、導管105cの成形装置104との接続箇所の直前までは囲い205によって囲われている。したがって、蒸気管106bの分岐管に設けられた調節弁を調節することにより、成形温度調整工程S6が行われる囲い205の内側の白金又は白金合金製の容器である導管105cの周囲の雰囲気を独立して制御できるようになっている。
本実施形態では、上記の第2脱泡工程S3から成形温度調整工程S7までの各工程において、白金または白金合金製の容器の周囲の雰囲気制御を行う。雰囲気制御は、溶融ガラス中、特に溶融ガラスと白金または白金合金製の容器との界面付近の領域に気泡が形成され、当該気泡がガラス中に残存するのを抑制するために行なう。雰囲気制御とは、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧の制御である。具体的には、容器の周囲の雰囲気に供給する水蒸気量を調節することにより、各工程の雰囲気中水蒸気圧を所定の圧力に維持する。
供給する水蒸気の制御は、蒸気管106bの分岐管に設けられた調節弁による流量の調節により行う。これにより、白金又は白金合金製の容器の内側の水素イオン(H)もしくは水素(H)の外側への移動による溶融ガラス中の水酸化物イオン(OH)からのO発生を抑制し、気泡が溶融ガラス中、特に容器との界面付近の領域に形成されるのを抑制することができる。
第1脱泡工程S2は、脱泡を促進するため、温度を上げて、清澄剤から酸素を放出させているので、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧が低く、容器内部に酸素泡が生成しても問題ない。逆に、第1脱泡工程S2において容器の周囲の雰囲気中に水蒸気量が多いと、水蒸気により容器から熱が奪われて溶融ガラスを清澄に適した温度に加熱するための電力が必要以上に多くなる。
そこで、本実施形態では、第1脱泡工程S2における白金または白金合金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、第2脱泡工程S3、吸収工程S4、攪拌工程S5及び成形温度調整工程S6の白金または白金合金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧よりも低くする。具体的には、第1脱泡工程S2が行われる清澄槽102の前半部分を囲う囲い201の内側に水蒸気を供給しないようにする。そのため、第1脱泡工程S2において、容器に対する水蒸気の悪影響を抑制することができ、容器から水蒸気によって奪われる熱が減少し、溶融ガラスを効果的に清澄することができる。したがって、製造設備の長寿命化及び電力消費の抑制を図りながら、ガラス中に気泡が残存することを効果的に抑制することができる。
本実施形態では、さらに、第2脱泡工程S3、吸収工程S4及び成形温度調整工程S6における白金または白金合金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧が、攪拌工程S5における白金又は白金合金製の容器の周囲の水蒸気分圧よりも低くなるようにする。本実施形態では、ガラス基板製造装置100によって製造されたガラス基板のβ−OH値を測定する工程を実施する。
ここで、β−OH値とは、IR分光分析法により測定されるガラス中のヒドロキシル含有量の尺度のことである。このβ−OHを測定することによって、ガラス中の水分量を推定することができる。β−OHを測定する位置は任意であり、槽の上部又は底部の外周部、上部又は底部の中心部など任意である。β−OHの測定は、以下のようにして行うことができる。
(1)得られたガラスにて、2700〜2900nmの吸収スペクトルを測定する。
(2)上記の範囲の透過率の最小値をT1とし、2500nmでの透過率をT0とする。
このとき、β−OHの値は、次式により算出される。
β−OH=(1/d)・(log10(T0/T1))
ただし、dは試料の厚み(mm)である。
攪拌工程S5では、溶融ガラスが攪拌され、攪拌槽103の白金または白金合金製の容器の壁面には、常に新しいガラスが供給されている。壁面付近のガラスが動かなければ、ガラス中のOH基が水素と酸素に解離して酸素が発生したとしても、それによりガラス中のOH基も減るので、時間とともに、酸素の発生は抑制されていく。しかし、攪拌槽103の場合、容器の壁面に常に新しいガラスが供給されているので、ガラス中OH基の濃度が減らない。言い換えると、容器内の溶融ガラスがスターラーによって攪拌されることで、容器の壁面付近の外側の溶融ガラスと、容器の壁面から離れた内側の溶融ガラスとが常に入れ替わっている。一方、攪拌工程S5以外の工程では、容器の壁面付近の溶融ガラスの流れは容器の壁面に沿った層流である。しがたって、攪拌工程S5以外の工程において、容器の壁面付近の溶融ガラスと容器の壁面から離れた溶融ガラスとの入れ替わりは、攪拌工程S5に比べて格段に少ない。そのため、攪拌工程S5では、容器の壁面付近の溶融ガラスが動きにくい他の工程に比べ、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を高めに維持し、OH基の解離反応をより強く抑制することが必要である。
もう一つ、攪拌工程S5において容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を高めに維持しなければならない理由として、攪拌槽103では、容器内の溶融ガラスの中でスターラーが回転していることがある。撹拌層103の白金又は白金合金製の容器内の溶融ガラスの粘度は、500ポアズから2000ポアズ程度であり、スターラーの回転速度は、例えば1rpmから15rpmである。このような条件で、スターラーが回転している時、スターラーの攪拌翼の裏側の部分では、その他の部分に比べて溶融ガラスに加わる圧力が下り、溶融ガラス中に溶け込んでいる気体成分が発泡し易くなっている。ここに、攪拌槽103の容器の壁面で生成した酸素泡が入り込んだ場合、その酸素泡の中に、ガラス中のNやSOのガス成分が容易に入り込む。泡中のガス成分が酸素だけの場合、その後、ガラス温度が下がるに従い、容易にガラス中に再吸収される。しかし、泡中にNやSOが入り込むと、これらのガス成分はガラスに再吸収されにくいので、泡が再吸収されずにガラス基板の欠点となる気泡が残ってしまう。
すなわち、攪拌工程S5は、他の工程と比較して、ガラス基板の欠点となる気泡が発生しやすい。したがって、囲い204の内側に供給する水蒸気の流量を比較的多くして、攪拌層103の周囲の水蒸気分圧を比較的高めに維持し、溶融ガラスに酸素泡が発生しにくくする必要がある。
攪拌工程S5では、例えば、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を1.2kPa以上にする。これにより、ガラス基板の欠点となる気泡の発生を防げる。攪拌工程S5において、ガラス基板のβ−OH値0.10/mm当たりの水蒸気分圧が1.2kPaよりも小さいと、泡欠点を十分に抑制できない。例えば、攪拌工程S5では、ガラス基板のβ−OHの値が0.40/mmである場合、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧は(0.4/0.1)×1.2kPa=4.8kPa以上であればよい。ガラス基板のβ−OHの値は、製造条件によって異なるが、例えば0.05/mmから1/mmまでの範囲、あるいは0.1/mmから0.6/mmまでの範囲を取り得る。したがって、本実施形態では、攪拌工程S5において、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、0.6kPa以上かつ12kPa以下、あるいは1.2kPa以上かつ7.2kPa以下とすることができる。
第2脱泡工程S3では、溶融ガラス中に酸素を吸収させる反応を始めるので、必要以上に白金又は白金合金製の容器の外側の水蒸気分圧を下げ、溶融ガラス中の酸素の発生を促進する必要は無い。しかし、第2脱泡工程S3では、容器の外側の水蒸気分圧を攪拌工程S5よりも低くすることで、溶融ガラス中に酸素泡が発生したとしても、溶融ガラスの温度が高いので、溶融ガラス中への酸素の拡散速度が高く、且つ、溶融ガラス中の清澄剤が酸素を吸収する余力も充分に有している。そのため、第2脱泡工程S3では、容器の外側の水蒸気分圧を攪拌工程S5ほど高くする必要は無い。
第2脱泡工程S3では、例えば、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.7kPa以上にする。これにより、ガラス基板の欠点となる気泡の発生を防げる。第2脱泡工程S3において、ガラス基板のβ−OH値0.10/mm当たりの水蒸気分圧が0.7kPaよりも小さいと、泡欠点を十分に抑制できない。例えば、第2脱泡工程S3では、ガラス基板のβ−OHの値が0.40/mmである場合、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧は(0.4/0.1)×0.7kPa=2.8kPa以上であればよい。また、ガラス基板のβ−OHの値が上記の範囲を取りうる場合、第2脱泡工程S3における容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧は、0.35kPa以上かつ7kPa以下、あるいは0.7kPa以上かつ4.2kPa以下とすることができる。
吸収工程S4では、溶融ガラスの温度を下げながら、清澄剤の酸素吸収反応により、溶融ガラス中に酸素を吸収する。この工程では、溶融ガラスの温度が下がり、清澄剤の酸素吸収余力も小さくなっているので、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧を、第2脱泡工程3のそれと等しいかそれよりも高くして、水の分解反応による酸素発生を抑える必要がある。
吸収工程S4では、例えば、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.8kPa以上にする。これにより、ガラス基板の欠点となる気泡の発生を防げる。吸収工程S4において、ガラス基板のβ−OH値0.10/mm当たりの水蒸気分圧が0.8kPaよりも小さいと、泡欠点を十分に抑制できない。例えば、吸収工程S4では、ガラス基板のβ−OHの値が0.40/mmである場合、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧は(0.4/0.1)×0.8kPa=3.2kPa以上であればよい。また、ガラス基板のβ−OHの値が上記の範囲を取りうる場合、吸収工程S4における容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧は、0.4kPa以上かつ8kPa以下、あるいは0.8kPa以上かつ4.8kPa以下とすることができる。
成形温度調整工程S6では、攪拌工程S5と異なり、溶融ガラスの流れが層流となる。この工程では、攪拌工程S5よりもさらに溶融ガラスの温度が低下し、溶融ガラス中の水の拡散速度がさらに小さくなる。そのため、この工程では、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧を、吸収工程S4のそれと等しいか、それよりも高くする。しかし、成形温度調整工程S6では、容器の外側の水蒸気分圧を攪拌工程S5ほど高くする必要は無い。
成形温度調整工程S6では、例えば、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.6kPa以上にする。これにより、ガラス基板の欠点となる気泡の発生を防げる。成形温度調整工程S6において、ガラス基板のβ−OH値0.10/mm当たりの水蒸気分圧が0.6kPaよりも小さいと、泡欠点を十分に抑制できない。例えば、成形温度調整工程S6では、ガラス基板のβ−OHの値が0.40/mmである場合、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧は(0.4/0.1)×0.6kPa=2.4kPa以上であればよい。また、ガラス基板のβ−OHの値が上記の範囲を取りうる場合、成形温度調整工程S6における容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧は、0.3kPa以上かつ6kPa以下、あるいは0.6kPa以上かつ3.6kPa以下とすることができる。
以上説明したように、本実施形態では、他の工程と比較して、酸素泡が発生しやすくかつ発生した気泡がガラス中に残りやすい攪拌工程S5に着目し、攪拌工程S5において容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧の範囲を規定している。すなわち、最もガラス基板の泡欠陥に影響を及ぼす攪拌工程S5において、泡欠陥を効果的に抑制するために有効な、容器の周囲の水蒸気分圧の範囲を、ガラス基板のβ−OHの値に基づいて規定している。
したがって、本実施形態のガラス基板の製造方法によれば、従来よりも攪拌工程S5における容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を低減することができ、かつ効果的にガラス基板の泡欠陥を抑制することができる。また、攪拌工程S5以外の工程については、攪拌工程S5よりも容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を低下させることができる。したがって、従来よりもガラス基板の製造に必要なエネルギーを削減し、作業環境を改善することができる。
また、攪拌工程S5において、スターラーの回転速度を1rpmから15rpmに規定している。これにより、攪拌に適した粘度の溶融ガラスを、所定の時間内に十分に攪拌して均質化することができる。さらに、上記のように容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を規定されているので、スターラーの回転速度が上記の範囲であれば、スターラーの攪拌翼の裏側において溶融ガラス中に負圧が生じた場合であっても、溶融ガラス中の酸素泡の発生を効果的に抑制し、ガラス基板の泡欠陥を効果的に防止することができる。
また、第2脱泡工程S3以降において、白金又は白金合金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、単純に第1脱泡工程S2よりも高く保つのでは無く、攪拌工程S5において、第2脱泡工程S3以降のその他の工程よりも、容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を選択的に高くしている。言い換えれば、第2脱泡工程S3以降の工程の中でも特に気泡が生成しやすい攪拌工程S5以外の工程に関しては、容器の外側の雰囲気の水蒸気分圧を比較的低くすることができる。そのため、第2脱泡工程S3以降において、従来よりも水蒸気の使用量を低減することができるだけでなく、容器から水蒸気によって奪われる熱量を少なくすることが出来る。したがって、本実施形態によれば、従来よりもガラス基板の製造に必要なエネルギーを削減することができ、かつガラス基板の泡品質の悪化を防止することができる。加えて、第2脱泡工程S3以降の容器の周囲の雰囲気の湿度を従来よりも低下させることができるため、ガラス基板製造装置100のメンテナンスを行う作業員の作業環境を改善することが出来る。
以上、本実施形態のガラス基板の製造方法ついて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
例えば、上述の実施形態では、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板を製造する方法を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明のガラス基板製造方法は、強化ガラス用基板を作成する場合にも適用可能である。強化ガラス用基板の例として、携帯電話、デジタルカメラ、携帯端末、太陽電池のカバーガラス、および、タッチパネルディスプレイのカバーガラスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
また、上述の実施形態では、ガラス基板製造装置によって製造されたガラス基板のβ‐OH値を測定する工程を実施した。しかし、ガラス基板のβ−OHの値が予め分かっている場合には、ガラス基板のβ‐OH値を測定する工程を省略することができる。
[実施例]
上述の実施形態で説明したガラス基板製造装置を用い、上述の実施形態で説明したガラス基板の製造方法によりガラス基板を製造した。
第1脱泡工程では、白金製の容器の周囲の雰囲気に水蒸気を供給しなかった。
ガラス基板製造装置によって製造されたガラス基板のβ―OHの値を測定したところ、0.36/mmであった。第2脱泡工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を2.0kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を7.2kPaとした。吸収工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を2.4kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を8.8kPaとした。攪拌工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を2.5kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を9.0kPaとした。成形温度調整工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を1.25kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を4.5kPaとした。
すなわち、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧は、攪拌工程が最も高く、吸収工程が攪拌工程よりも低く、第2脱泡工程が吸収工程よりも低く、成形温度調整工程が最も低くなるようにした。この条件で製造したガラス基板において、径が100μm以上である泡の個数を測定したところ、0.03個であった。なお、泡の径は、最も長い径である長径と最も短い径である短径を測定し、それらの平均値とした。
次に、第2脱泡工程の白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を以下のように変化させてガラス基板を製造した。
第2脱泡工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.7kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を2.5kPaとした。吸収工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.8kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を2.9kPaとした。攪拌工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を1.2kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を4.3kPaとした。成形温度調整工程では、ガラス基板のβ−OHの値0.10/mm当たりの白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を0.6kPaとし、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を2.2kPaとした。
すなわち、白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧は、攪拌工程が最も高く、吸収工程が攪拌工程よりも低く、第2脱泡工程が吸収工程よりも低く、成形温度調整工程が最も低くなっている。この条件で製造したガラス基板において、径が100μm以上である泡の個数を測定したところ、0.03個であった。
以上のように、攪拌工程において、ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当りの白金製の容器の周囲の水蒸気分圧を1.2kPa以上とし、攪拌工程における容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を4.3kPaとすることで、泡品質を悪化させることなく、第2脱泡工程、吸収工程および成形温度調整工程における白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、攪拌工程における同水蒸気分圧よりも低下させることができた。
一方、上記の各工程のいずれかにおいて、上記の条件よりも白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を低下させたところ、泡の個数は悪化した。すなわち、攪拌工程、吸収工程、第2脱泡工程および成形温度調整工程において、それぞれ白金製の容器の周囲の水蒸気分圧を、ガラス基板のβ-OHの値0.1/mm当たり1.2kPa以上、0.8kPa以上、0.7kPa以上および0.6kPa以上とすることで、泡品質を悪化させることなく、第2脱泡工程以降の攪拌工程以外の工程における白金製の容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を攪拌工程のそれよりも低下させることができた。
本発明の方法は、溶融ガラスを成形することによりガラス基板を製造する際に有利に用いることができる。
101 溶解槽(白金又は白金合金製の容器)
102 清澄槽(白金又は白金合金製の容器)
103 攪拌槽(白金又は白金合金製の容器)
105a、105b、105c 導管(白金又は白金合金製の容器)
S2 第1脱泡工程
S3 第2脱泡工程
S4 吸収工程
S5 攪拌工程
S6 成形温度調整工程

Claims (5)

  1. 清澄された溶融ガラスを白金又は白金合金製の容器内でスターラーの回転により攪拌して均質化する攪拌工程を有するガラス基板の製造方法であって、
    前記攪拌工程の前に、
    ガラス原料を溶解させて溶融ガラスをつくる溶解工程と、
    白金又は白金合金製の容器内で、前記ガラス原料に含まれる清澄剤がガス成分を放出する第1の温度範囲内の最高温度まで前記溶融ガラスの温度を上昇させ、前記溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去する第1脱泡工程と、
    白金又は白金合金製の容器内で、前記第1の温度範囲の最高温度よりも前記溶融ガラスの温度を低下させ、前記溶融ガラス中の気泡を浮上させて除去するとともに、前記溶融ガラス中にガス成分を吸収させて気泡を縮小させる第2脱泡工程と、
    前記第2脱泡工程の後、前記溶融ガラスの温度を低下させることで前記溶融ガラス中に残存する気泡中の酸素を前記溶融ガラスに吸収させて泡径を縮小させ、さらに前記溶融ガラスの温度を低下させることで前記気泡の内圧を低下させ、前記気泡を消滅させる吸収工程と、を有し、
    前記攪拌工程の後に、前記溶融ガラスの温度を成形に適した温度まで低下させる成形温度調整工程を有し、
    前記第1脱泡工程、前記第2脱泡工程、前記吸収工程及び前記成形温度調整工程における前記容器の周囲の雰囲気の水蒸気分圧を、前記攪拌工程における前記容器の周囲の蒸気分圧よりも低くすることを特徴とする、
    ガラス基板の製造方法。
  2. 前記攪拌工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ-OHの値0.1/mm当たり1.2kPa以上とする、
    請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
  3. 前記吸収工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり0.8kPa以上とする、
    請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
  4. 前記第2脱泡工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり0.7kPa以上とする、
    請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
  5. 前記成形温度調整工程において、前記容器の周囲の水蒸気分圧を、前記ガラス基板のβ−OHの値0.1/mm当たり0.6kPa以上とする、
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
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