JP6197541B2 - リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本開示は、リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池に関する。
近年、高温においても結晶安定性及び熱的安定性に優れた正極活物質として、リン酸鉄リチウム(LiFePO)に代表されるポリアニオン系正極活物質が検討されている。LiFePOを正極活物質として有する非水電解質電池は、電動工具用途において実用化されている。この電池の放電容量は、160mAh/gと高い。正極活物質表面への電子電導性炭素質担持技術により、この電池のハイレート性能も優れている。
しかしながら、LiFePOの作動電位はLi/Li基準に対して3.42Vであり、汎用電池に用いられている正極活物質の作動電位に比べて低い。このため、LiFePOはエネルギー密度および出力特性の点で不十分である。
そこで、LiFePOよりも高い作動電位を有するポリアニオン正極活物質として、LiVOPOが提案されている。
LiVOPOは結晶構造が異なるα−LiVOPOとβ−LiVOPOがリチウムイオン二次電池用正極材料として用いられることが知られている。
β−LiVOPOを正極活物質として有する非水電解質電池は、C/50という低レート放電において、100mAh/gという容量が得られることが知られている。(特許文献1)また、別の製造方法で作製されたβ−LiVOPOにおいてもC/40という低レート放電においてのみ140mAh/gという高容量が得られることが知られている。
特開2003−68304号公報
J. Barker, et. al., J. Electrochem. Soc., 151 (6) A796−800(2004)
しかしながら、その初回充放電効率は85%程度と低いものである(非特許文献1)。そのため、β−LiVOPOを正極活物質として用いた非水電解質電池は、初回の充放電に伴う効率が十分ではなく、より高い電池容量を使うために初回充放電効率の改善が必要である。
また、一般的にβ−LiVOPOと比較して、リチウムイオン二次電池用正極材料としての特性に乏しいとされるα−LiVOPOについても、リチウムイオン二次電池用正極材料として用いるためには同様の課題を改善する必要がある。
本発明における1つの目的は、優れた初回充放電効率を有するリチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料(以下、「本正極材料」ということがある。)は、LiVOPOで表される第一の化合物と、(VO)(P)で表される第二の化合物を含んでいる。
これら第一の化合物及び第二の化合物を含む正極材料は、これを含むリチウムイオン二次電池の初回充放電効率を向上させることができる。
その理由は、初回充電時にLiVOPO結晶構造内から脱離したリチウムのうち、初回放電の際にLiVOPO結晶構造内に取り込まれないLiイオンが、(VO)(P)中に吸蔵されることにより初回充放電効率が向上したと考えられる。
本正極材料では、第一の化合物に対する第二の化合物の含有量の割合が、0.1wt.%以上10.0wt.%以下であることが好ましい。
上記範囲の第二の化合物を含むことによって本正極材料の初回充放電効率をさらに高められる。
その理由は、第二の化合物が0.1wt.%以下の含有量ではLi挿入時に十分なLiを吸蔵することができず、初回充放電効率の改善がなされない。また第二の化合物が10.0wt.%以上の含有量では、Liを吸蔵していない該第二の化合物が残留することにより初回充放電効率が低下すると考えられる。
本発明によれば、優れた初回充放電効率を有するリチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の模式断面図である。 実施例1に係るリチウムイオン二次電池用正極材料のX線回折図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
<リチウムイオン二次電池用正極材料>
リチウムイオン二次電池用正極材料(以下「本正極材料」と言うことがある。)は、LiVOPOで表される第一の化合物と、(VO)(P)で表される第二の化合物を含む。第一の化合物は、一般式がLiVOPOで表されるリン酸リチウムバナジウムである。
LiVOPOで表される第一の化合物は結晶構造の異なるα−LiVOPOとβ−LiVOPOのいずれか、または両方を含む。
第一の化合物、LiVOPOにおける、Vの一部(たとえば5wt.%程度)はFe,Mnなどに代表される遷移金属に置換されてもよいし、欠損していてもよい。
第二の化合物、(VO)(P)における、Vの一部(たとえば5wt.%程度)はFe,Mnなどに代表される遷移金属に置換されてもよいし、欠損していてもよい。
第二の化合物は第一の化合物の1次粒子と混在していてもよいし、第一の化合物の2次粒子と混在していてもよい。第二の化合物は第一の化合物の1次粒子または2次粒子の表面に付着していてもよい。
また、第二の化合物は、第一の化合物の1次粒子または2次粒子の表面の一部分、または全面を被覆している状態でもよい。
第一の化合物に対する第二の化合物の含有量の割合は、0.1wt.%以上10.0wt.%以下の範囲で含まれることが好ましい。
<本正極材料の製造方法>
次に、本正極材料の製造方法について説明する。本正極材料の製造方法は、前駆体合成工程と、熱処理工程と、第二の化合物混合工程とを備える。前駆体混合工程では、リチウム源。リン酸源、バナジウム源、還元剤および水を含む混合物(水溶液)を、全量乾燥する。これにより、前駆体が得られる。また、本正極材料は固相法、水熱法、ゾルゲル法および気相法などを含む既存の任意の方法によっても合成することができる。熱処理工程では、得られた前駆体の熱処理がされる。
<前駆体合成工程>
前駆体合成工程では、まず、上述したリチウム源、リン酸源、バナジウム源および還元剤を水に投入することによって、これらが分散した混合物(水溶液)を調製する。なお、混合物を調製する際は、例えば、最初に、リン酸源、バナジウム源及び水の混合物を還流した後、還流後の混合物にリチウム源を加えてもよい。
上記工程にて得られた混合物(水溶液)を、全量乾燥する。これにより前駆体が得られる。この乾燥では、乾燥機および電気炉などの、外部から熱を加えることが出来る既存の任意の装置を用いることができる。
リチウム源は、例えば、LiNO、LiCo、LiOH、LiCl、LiSO及びCHCOOLiからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
リン酸源は、例えば、HPO、NHPO、(NHHPO及びLiPOからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
バナジウム源は、例えば、V、VO、V及びNHVOからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。なお、二種以上のリチウム源、二種以上のリン酸源又は二種以上のバナジウム源を併用してもよい。この場合、各原料の混合比は、調整される。
還元剤は、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、過酸化水素、ヒドラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。なお、二種以上の還元剤を併用してもよく、適宜各還元剤の混合比を調整して用いることができる。
上記の前駆体合成工程は、常温で実施されてもよいし、オイルバスなどを用いて常温以上の温度で実施してもよい。
<熱処理工程>
熱処理工程では、前駆体合成工程により得られた前駆体が、不活性雰囲気または酸化雰囲気中で熱処理される。これによりLiVOPOを合成することができる。
熱処理雰囲気は、例えば窒素、アルゴンなどの不活性ガスおよび酸素や大気のような酸化性ガスからなる群より選ばれる、少なくとも一種、または一種以上の混合気体を含む。
熱処理の温度は、400℃〜750℃で行うことが好ましく、500℃〜650℃であることがより好ましい。熱処理温度が低すぎる場合LiVOPO相が生成されにくい。このため前駆体の構造を維持し、LiVOPO結晶構造が十分に生成しないため、充放電特性が低下する傾向がある。熱処理温度が高すぎる場合LiVOPO相が分解されやすくなるため、目的化合物が得られなくなる。熱処理の温度を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
前駆体混合工程、熱処理工程の条件を調整することにより、得られるLiVOPO相の結晶構造を制御することができる。
<第二の化合物混合工程>
第二化の合物は(VO)(P)で表される化合物である。第二の化合物混合工程では、前述の工程により得られた第一の化合物LiVOPOに、第二の化合物が混合される。
第二の化合物は、第一の化合物から電気化学的にLiを脱離することにより合成することができる。
また第二の化合物は、第一の化合物から化学的にLiを脱離することによっても合成することができる。
前記第一の化合物を化学的、または電気化学的に処理することによるいずれか、または両方の手法により得られた第二化合物を取り出し、第一の化合物に混合することができる。
この工程における混合では、ボールミルあるいはビーズミルなどの既存の混合装置を用いることができる。
第二の化合物は、前述した前駆体合成工程、熱処理工程のいずれかまたは複数の工程にて第一の化合物に混合してもよい。
また、前駆体合成工程にて、リチウム源、バナジウム源、リン酸源の比率を、第一の化合物LiVOPOの化学量論組成からずらすことによって、第二の化合物を生成し、混合することもできる。
第一の化合物に対する第二の化合物の含有量の割合は、0.1wt.%以上10.0wt.%以下であることが好ましく、1.0wt.%以上8.0wt.%以下であることがより好ましい。
第二の化合物の含有量が上記範囲の量あることにより、初回放電時に第一の化合物に挿入しきれないLiイオンを十分に吸蔵することができる。これにより本正極材料の初回充放電効率が向上すると考えられる。
第二の化合物の含有量が0.1wt.%より少ない場合、含有量が少な過ぎるため上記の効果得られにくい。第二の化合物の含有量が10.0wt.%より多い場合、未反応物として残留するため初回充放電効率が低下すると考えられる。
<リチウムイオン二次電池用正極>
続いて、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極(以下「正極」とも言う。)について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る正極10は、集電体12と、上記正極活物質とを含み集電体12上に設けられた正極活物質層14と、を備える。
正極10の集電体12としては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔を使用できる。集電体12上に設けられる正極活物質層14は、上記正極活物質、決着剤、及び必要に応じた量の導電材を含む層である。
前記決着剤は、上記正極活物質を正極集電体12に結着することができれば特に限定されず、公知の決着剤を使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。これらの導電助剤は、活物質や導電材等の構成材料同士を結着するのみならず、それらの構成材料と集電体との結着にも寄与している。更に、上記の他に、決着剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加剤、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体を用いてもよい。また、導電性高分子を用いてもよい。
前記導電材は、特に限定されず、公知の導電材を使用することができる。例えば、カーボンブラック類、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属粉、炭素材料及び金属粉の混合物、ITOのような導電性酸化物が挙げられる。
<正極の製造方法>
上述した正極10は、例えば、上述の活物質、決着剤、及び、必要に応じた量の導電材をそれらの種類に応じた溶媒、例えばPVDFの場合はN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒に添加してスラリーを作成し、このスラリーを集電体12の表面に塗布し、乾燥させることにより製造できる。
<リチウムイオン二次電池>
続いて、上述した活物質を含む電極を備えるリチウムイオン二次電池について図1を参照して簡単に説明する。
リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容する外装体50、及び積層体30に接続された一対のリード60,62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、上述のとおりである。負極20は、負極集電体22上に負極活物質層24が設けられた物である。正極活物質層14及び負極活物質層24がセパレータ18の両側にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部は外装体50の外部にまで延びている。
負極集電体22としては、銅箔等を使用できる。また、負極活物質層24としては、負極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電材を含むものを使用できる。バインダー及び導電材については、正極で例示したものを利用できる。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)等を含む粒子が挙げられる。
負極20の製造方法は、正極10の製造方法と同様にスラリーを調整して集電体に塗布すればよい。
電解質溶液は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質溶液としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解質溶液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCF、CFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)、LiBOB(リチウムビス(オキサラート)ボレート)等の塩が使用できる。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
なお、本実施形態において、電解質溶液は液状以外にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状電解質であってもよい。また、電解質溶液に代えて、固体電解質(固体高分子電解質又はイオン伝導性無機材料からなる電解質)が含有されていてもよい。
また、セパレータ18も、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
外装体50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。外装体50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、外装体50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、合成樹脂膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましい。
リード60,62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
<リチウムイオン二次電池の製造方法> 続いて、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、上述した活物質を含む正極10と、負極20と、正極と負極との間に介在するセパレータ18と、リチウム塩を含む非水電解質溶液と、を外装体50内に封入する工程を備える。
例えば、上述した活物質を含む正極10と、上記負極20と、上記セパレータ18とを積層し、正極10及び負極20を、積層方向に対して垂直な方向から、プレス器具で加熱加圧し、正極10、セパレータ18、及び負極20を密着させる。そして、例えば、予め作製した袋状の外装体50に、上記積層体30を入れ、上記リチウム塩を含む非水電解質溶液を注入することにより、リチウムイオン二次電池を作製することができる。なお、外装体に上記リチウム塩を含む非水電解質溶液を注入するのではなく、積層体30を予め上記リチウム塩を含む非水電解質溶液に含浸させてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本正極材料をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<リン酸リチウムバナジウム合成>
0.2molのHPOと180mlの蒸留水とを含む溶液を攪拌した。この溶液に、0.1molのVを加え攪拌を継続した。その後、溶液にヒドラジンを添加し攪拌を継続した。その後、溶液に0.1molのLiOH・HOを加えた。この混合溶液を8時間攪拌した。これにより原料混合溶液を得た。得られた原料混合溶液を、乾燥機によって90℃で24時間乾燥した。
乾燥後に得られた固体を粉砕し、粉末状の前駆体(LiVOPO)を得た。
得られた粉末状の前駆体を、大気雰囲気中550℃で4時間熱処理した。得られた材料のXRD測定結果を図2に示す。この結果より、得られた材料はβ−LiVOPOであることを確認した。
得られたβ−LiVOPOの重量に対して(VO)(P)を0.1重量部の比率で秤量し、混合したものを正極活物質、つまりリチウムイオン二次電池用正極材料とした。さらに本正極材料とカーボンブラックとを3分間遊星型ボールミルを用いて混合することにより、(VO)(P)を含むβ−LiVOPOとカーボンブラックの混合粉末を得た。
<ハーフセルの作製>
上記のβ−LiVOPO/(VO)(P)/カーボンブラックの混合粉末と、PVDF(ポリふっ化ビニリデン)とを、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)に添加することによって、正極用塗料を調製した。正極用塗料中の固形分であるβ―LiVOPO、カーボンブラック及びPVDFの比率は、β−LiVOPO:カーボンブラック:PVDF=84質量部:8質量部:8質量部に調整された。
正極用塗料を、厚みが20μmのアルミニウム箔に塗布した。塗布した正極用塗料を乾燥した後、圧延することにより、正極を得た。次に、Li箔を所定の大きさに切断して銅箔(厚み15μm)に貼り付けることにより、負極とした。正極及び負極を、それらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで積層し、積層体(素体)を得た。正極、負極には、それぞれ、外部引き出し端子としてアルミニウム箔(幅4mm、長さ40mm、厚み80μm)、ニッケル箔(幅4mm、長さ40mm、厚み80μm)を超音波溶接した。この外部引き出し端子には、前もって無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)を巻き付け熱接着させた。これは外部端子と外装体とのシール性を向上させるためである。電池外装体はアルミニウムラミネート材料からなり、その構成は、PET(12)/Al(40)/PP(50)のものを用意した。PETはポリエチレンテレフタレート、PPはポリプロピレンである。かっこ内は各層の厚み(単位はμm)を表す。なおこの時PPが内側となるように製袋した。上の積層体を電池外装体に入れ、これに電解液である1MLiPF/EC+DEC(30:70体積比)を注入した後、電池外装体を真空ヒートシールし、実施例1の電極評価用ハーフセルを作製した。
<初回充放電効率の測定>
実施例1のハーフセルを充電した後、放電することによって、実施例1のハーフセルの充電容量と放電容量(単位:mAh/g)を測定した。この測定では、正極活物質であるβ−LiVOPOの理論容量を159mAh/gとした。充電では、上限充電電圧は4.3V(VS.Li/Li)とした。充電は、充電レート0.1Cで、正極の電圧が上限充電電圧に達し、かつ、充電電流が1/20Cまで減衰するまで、行った。放電では、下限放電電圧を、2.8V(VS.Li/Li)とした。放電レートは、0.1Cとした。0.1Cは、10時間の定電流放電によって放電終了となるような電流値である。
この測定結果から、初回の充電レート0.1Cにおける、活物質1グラム当たりの放電容量に対する、初回の放電レート0.1Cにおける、活物質1グラム当たりの放電容量の比(初回充放電効率)を求めた。測定温度は25℃で行った。表1に、実施例1のハーフセルの、初回充放電効率を示す。
(実施例2)
(VO)(P)の混合量を0.3wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例2の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例3)
(VO)(P)の混合量を0.8wt.%としたことを除いて、実施例と同様の方法で実施例3の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例4)
(VO)(P)の混合量を1.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例4の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例5)
(VO)(P)の混合量を1.5wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例5の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例6)
(VO)(P)の混合量を2.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例6の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例7)
(VO)(P)の混合量を3.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例7の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例8)
(VO)(P)の混合量を5.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例8の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例9)
(VO)(P)の混合量を7.6wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例9の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例10)
(VO)(P)の混合量を8.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例10の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例11)
(VO)(P)の混合量を8.2wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例11の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例12)
(VO)(P)の混合量を10.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例12の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例13)
(VO)(P)の混合量を11.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例13の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例14)
(VO)(P)の混合量を15.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例14の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例15)
(VO)(P)の混合量を20.0wt.%としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例15の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例16)
(VO)(P)の混合量を0.1wt.%とし、熱処理工程の温度を650℃としたことを除いて、実施例1と同様の方法で実施例16の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、得られた第一の化合物はα−LiVOPOであり、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例17)
(VO)(P)の混合量を1.0wt.%としことを除いて、実施例16と同様の方法で実施例17の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、得られた第一の化合物はα−LiVOPOであり、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例18)
(VO)(P)の混合量を3.0wt.%としたことを除いて、実施例16と同様の方法で実施例18の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、得られた第一の化合物はα−LiVOPOであり、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例19)
(VO)(P)の混合量を5.0wt.%としたことを除いて、実施例16と同様の方法で実施例19の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、得られた第一の化合物はα−LiVOPOであり、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例20)
(VO)(P)の混合量を8.0wt.%としたことを除いて、実施例16と同様の方法で実施例20の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、得られた第一の化合物はα−LiVOPOであり、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(実施例21)
(VO)(P)の混合量を10.0wt.%としたことを除いて、実施例16と同様の方法で実施例21の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、得られた第一の化合物はα−LiVOPOであり、正極材料に第二化合物である(VO)(P)が含まれることがわかった。
(比較例1)
第二の化合物を混合しないことを除いて、実施例1と同様の方法で比較例1の正極材料及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に含まれる第二化合物は確認されなかった。すなわち、活物質はβ−LiVOPOを有することがわかった。
(比較例2)
第二の化合物を混合しないことを除いて、実施例16と同様の方法で比較例2の正極材料及びハーフセル作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、正極材料に含まれる第二化合物は確認されなかった。すなわち、活物質はα−LiVOPOを有することがわかった。
実施例1〜21及び比較例1、2について、充電レート0.1Cにおける、活物質1グラム当たりの初回充電容量に対する、放電レート0.1Cにおける活物質1グラム当たりの初回放電容量の比(初回充放電効率)をそれぞれ求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0006197541
実施例1〜21の初回充放電効率より、LiVOPOで表される第一の化合物と、(VO)(P)で表される第二の化合物を含むリチウムイオン二次電池用正極材料は、優れた初回充放電効率を呈することが分かった。また、またリチウムイオン二次電池用正極材料は、第一の化合物に対する第二の化合物の含有量の割合が、0.1wt.%から10.0wt.%である場合に優れた初回充放電効率を呈することが分かった。

Claims (3)

  1. 一般式LiVOPOで表される第一の化合物と、(VO)(P)で表される第二の化合物を含み、前記第一の化合物に対する前記第二の化合物の含有量の割合が、0.1wt.%以上10.0wt.%以下である、リチウムイオン二次電池用正極材料。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むリチウムイオン二次電池用正極。
  3. 請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を有するリチウムイオン二次電池。
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