以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
図1は、本発明の実施形態である積載物搬送装置10の全体構成を示す斜視図である。図2は、下階側において第2の台車46から第1の台車36へ第3の台車52を移動させるときの積載物搬送装置10の配置構成を示す図である。
積載物搬送装置10は、エレベータの昇降に用いられる巻き上げ機や制御盤等の部品をエレベータの昇降路の直上に設けられている機械室へ建物内の階段に沿って搬入する揚重装置である。積載物搬送装置10は、第1搬送レール18a,18b、第2搬送レール22a,22b、第3搬送レール26a,26b、第4搬送レール30a,30b、ウィンチ32、第1の台車36、第2の台車46、および、第3の台車52を備えている。2本の第1搬送レール18a,18bは、下階側階段11に設置されている。2本の第1搬送レール18a,18bは、第1の台車36を走行させるため長尺のレールを対向配置して構成されている。各第1搬送レール18a,18bは、長手方向と直交する方向における断面が、例えば、略L字状を成す鋼材等によって形成されている。第1搬送レール18a,18bは、複数の支持フレーム18c、および、複数の脚部18dを有している。これらの複数の支持フレーム18cは、対向配置された第1搬送レール18a,18bを着脱可能に連結している。第1搬送レール18a,18bの複数の脚部18dは、上記の支持フレーム18cが第1搬送レール18a,18bに連結されている部分の直下方にそれぞれ取り付けられている。
また、第1搬送レール18a,18bには、図1に示すように、踊り場14aに近接する位置および下階の床面14bに近接する位置に連結用孔18e,18fがそれぞれ設けられている。これらの連結用孔18e,18fは、後述するストッパーピンを挿通して第1の台車36を固定するための孔である。
第2搬送レール22a,22b、第3搬送レール26a,26b、および、第4搬送レール30a,30bについては、上記の第1搬送レール18a,18bとほぼ同様の構成を備えているため、第1搬送レール18a,18bと構成が共通している部分については説明を省略し、構成の異なる部分のみ説明する。
2本の第2搬送レール22a,22bは、上階側階段12において長手方向の両端部が上階の床面14cおよび踊り場14aにそれぞれ設置されるように配置されている。なお、本実施形態では、下階側階段11および上階側階段12の昇り方向が上面視において反対方向となる折れ曲がった階段を例に挙げて説明しているが、階段の形状はこれに限定されるものではない。例えば、下階側階段および上階側階段の昇り方向が上面視において略L字状を成す折れ曲がった階段に第1搬送レール18a,18bおよび第2搬送レール22a,22bをそれぞれ設置するものとしても良い。
2本の第3搬送レール26a,26bは、第1搬送レール18a,18bと第2搬送レール22a,22bとを接続するように踊り場14aに設置されており、第2の台車46を水平方向に走行させるレールである。これにより、第2の台車46を第3搬送レール26a,26bに沿って真っすぐ走行させることができる。本実施形態では、第2の台車46が第3搬送レール26a,26bの上を走行しているが、第3搬送レール26a,26bを設けないものとしてもよい。この場合は、踊り場14aを第2の台車46が直接走行すればよい。
第3搬送レール26a,26bは、2つの固定用金具26cおよび滑車28a,28bを有している。これらの2つの固定用金具26cは、対向配置されている2本の第3搬送レール26a,26bのうち、踊り場14aの奥側に配置された第3搬送レール26bの各階段11,12と反対側の側面部に着脱可能に取り付けられている。
また、上記の滑車28a,28bは、踊り場14aに設置されている。より具体的には、滑車28a,28bは、第3搬送レール26bの固定用金具26cに回転自在にそれぞれ取り付けられている。これにより、踊り場14aに滑車28a,28bを固定するためのアンカーボルト等を取り付ける必要が無く、踊り場14aに取り付けに伴う傷がつくことを抑制できる。なお、踊り場14aに滑車28a,28bの取り付けに伴う傷が残っても構わない場合には、踊り場14aに直接設置するようにしてもよい。
本実施形態では、2つの滑車28a,28bを用いる例を挙げているが、例えば、上面視において、第1搬送レール18a,18b、および、第2搬送レール22a,22bが踊り場を挟んで下階側階段および上階側階段に略L字状に配置されている場合等、1つの滑車だけで牽引方向を変更できる場合には滑車を1つだけ設けるようにしてもよい。
上記の滑車28aは、上面視において、対向配置された第1搬送レール18a,18bの間の距離を2等分する中間線を搬送方向(すなわち、第1搬送レール18a,18bの長手方向)に沿って延長した延長線上に位置している。同様に、滑車28bは、上面視において、対向配置された第2搬送レール22a,22bの間の距離を2等分する中間線を搬送方向(すなわち、第2搬送レール22a,22bの長手方向)に沿って延長した延長線上に位置している。これにより、第1搬送レール18a,18bの上を第1の台車36が走行するときに、走行方向とウィンチ32による牽引方向とがほぼ同じ方向となる。その結果、第1の台車36を安定した状態で牽引することができる。
第4搬送レール30a,30bは、上階の床面14cに設置されている。第3搬送レール26a,26bと同様に第2の台車46を水平方向に走行させるレールである。なお、第3搬送レール26a,26bと同様に、第4搬送レール30a,30bを設けないものとしてもよい。また、上階側階段12が直接機械室につながっている場合も第4搬送レール30a,30bを設けないものとしてよい。
ウィンチ32は、2本の第4搬送レール30a,30bのうち、上階の床面14cの奥側の第4搬送レール30aの側面部にブラケット32aを介して着脱可能に取り付けられている。なお、本実施形態では、第4搬送レール30a,30bにウィンチ32が取り付けられているが、上階の床面14cに直接設置するようにしもよい。
ウィンチ32は、後述する第1の台車36を牽引するためのワイヤーロープ34を有している。このワイヤーロープ34の先端部には、係止部34aが設けられている。この係止部34aは、環状を呈している。
ウィンチ32は、第1の台車36が第1搬送レール18a,18bの上を走行するときには、上記の滑車28a,28bにワイヤーロープ34を架け渡して第1の台車36を牽引する。また、ウィンチ32は、第1の台車36が第2搬送レール22a,22bの上を走行するときには、上記の滑車28a,28bにワイヤーロープ34を架け渡さずに第1の台車36を牽引する。これにより、第1搬送レール18a,18bおよび第2搬送レール22a,22bの上をそれぞれ走行する第1の台車36を単一のウィンチ32によって牽引することができる。
積載物搬送装置10は、図2に示すように、複数の固定用ジャッキ60をさらに備えている。これらの複数の固定用ジャッキ60は、各搬送レール18a,18b,22a,22b,26a,26b,30a,30bと、これらの各搬送レールの周囲を囲む建物側壁11aとの間に突っ張った状態でそれぞれ取り付けられている。各固定用ジャッキ60の構成は同一であるため、第1搬送レール18a,18b、および、建物側壁11aの間にそれぞれ設けられている固定用ジャッキ60のみを例に挙げて説明する。固定用ジャッキ60は、軸方向に伸縮する機能を有している。固定用ジャッキ60は、回転軸60a、筺体60b、および、調整用つまみ60cを有している。この固定用ジャッキ60の回転軸60aは、筺体60bを貫くように設けられている。この回転軸60aの軸方向の両端部は、平面状に形成されている。固定用ジャッキ60の調整用つまみ60cは、筺体60bに内蔵された、例えば、ウォームギア等を介して上記の回転軸60aを回転駆動して軸方向に伸縮させる機能を有している。このため、例えば、スパナ等の工具で調整用つまみ60aを回転させることによって、固定用ジャッキ60を軸方向に伸縮させることができる。固定用ジャッキ60は、第1搬送レール18a,18bと各建物側壁11aとの間に突っ張った状態で取り付けられており、第1搬送レール18a,18bを両側面側から押圧することによって固定している。これにより、例えば、アンカーボルト等を用いて第1搬送レール18a,18bを下階側階段11に固定しなくとも、第1搬送レール18a,18bを強固に固定することができる。その結果、アンカーボルトの設置等によって建物側壁11aに傷を付けることが無いため外観を損なわずに第1搬送レール18a,18bを設置することができる。なお、本実施形態では、固定用ジャッキ60を用いて第1搬送レール18a,18bを固定する例を挙げているが、例えば、積載物の重量が比較的軽い場合には、固定用ジャッキ60を用いないものとしてもよい。また、設置状況に応じて、各搬送レール18a,18b,22a,22b,26a,26b,30a,30bのうち、一部の搬送レールにのみ固定用ジャッキ60を用いるものとしてもよい。
次に、図3を用いて、上述した第1の台車36、第2の台車46、および、第3の台車52の具体的構成について説明する。
図3(a)は、積載物搬送装置10に含まれる第1の台車36を示す図である。同図(b)は、第1の台車36の固定に用いられるストッパーピン42を示す図である。同図(c)は、第2の台車46を示す図である。同図(d)は、第3の台車52を示す図である。図中に示す「矢印」Xは、前後方向を示す。第1の台車36は、積載物を略水平に保持しつつ上述した第1搬送レール18a,18bおよび第2搬送レール22a,22bの上を走行可能に構成されている。第1の台車36は、天板36a、4つのタイヤ36b、2つの側板38、および、支持フレーム40を有している。この天板36aは、前後方向Xに長い略長方形状の金属製部材から形成されている。第1の台車36の天板36aは、第1搬送レール18a,18bおよび第2搬送レール22a,22bの上を走行する際に、後述する第3の台車52を搭載する積載面36cを上面に有している。この積載面36cは、前後両端部に後述する第3の台車52の固定用孔に対応して固定用孔36dがそれぞれ設けられている。また、天板36aの前面側中央部には、フック36eが設けられている。このフック36eは、上述したワイヤーロープ34の係止部34aを引っ掛ける部分である。
第1の台車36の側板38は、天板36aの後側の両側面部をそれぞれ着脱可能に支持している。これらの側板38は、上下方向に長い金属製の板状部材で構成することができ、傾斜調整用孔38aが上下方向に3つ等間隔で設けられている。これに対し、第1の台車36の天板36aには、傾斜調整用孔38aに対応する位置にネジ孔(不図示)が設けられており、側板38のいずれかの傾斜調整用孔38aを適宜選択してネジ(不図示)をねじ込むことによって天板36aを固定することができる。これにより、例えば、第1搬送レール18a,18bの傾斜角に応じて天板36aの傾斜角を調整し、上記の積載面36cを略水平に保持する。第1の台車36の支持フレーム40は、上下方向の厚みが薄い略直方体状の金属製部材である。この支持フレーム40は、天板36aの前側の両側面部をそれぞれ回転可能に支持するとともに、天板36aの後側の両側面部をそれぞれ支持する上記の側板38を固定支持している。
また、第1の台車36の支持フレーム40は、前後方向Xと直交する両側面部の前後両端部にタイヤ36bがそれぞれ回転可能に取り付けられている。また、この支持フレーム40の上記両側面部の中央にはストッパ挿入用孔40aが設けられている。ストッパ挿入用孔40aは、図3(b)に示すストッパーピン42を挿入するための孔である。ストッパーピン42は、上述した第1搬送レール18a,18bの連結用孔18eまたは連結用孔18fのいずれかと第1の台車36のストッパ挿入用孔40aとに差し込まれて第1の台車36を第1搬送レール18a,18bの所定の位置に固定する機能を有している。
第1の台車36の側板38には、ブレーキ機構44がそれぞれ設けられている。これらのブレーキ機構44は、後輪側のタイヤ36bにそれぞれ対応して設けられている。第1の台車36の各ブレーキ機構44は、ブレーキレバー44aおよびブレーキシュー44bをそれぞれ有している。各ブレーキレバー44aを操作することによって、ブレーキシュー44bがタイヤ36bに圧接する。これにより、第1の台車36を停止させることができる。
第2の台車46は、上述した第3搬送レール26a,26bと下階の床面14bを走行可能に構成されている。第2の台車46は、図3(c)に示すように、基体部46a、天板46b、積載面46c、4つのタイヤ46d、および、伸縮式支柱48を有している。基体部46aは、前後方向Xに長い略直方体状を呈する金属製の部材であり、前後両端部にタイヤ46dが回転可能にそれぞれ取り付けられている。第2の台車46の伸縮式支柱48は、基体部46aの上面の中央部に設けられており、箱状の外観を呈している。伸縮式支柱48は、側面部に設けられた調整用ボルト48aを、例えば、スパナ等の工具によって回転させることによって、例えば、内蔵されたウォームギア等を介して伸縮機構が駆動され、天板46bの位置を上下方向に移動させる。
第2の台車46の天板46bは、第1の台車36と同様に、後述する第3の台車52を搭載する積載面46cを上面に有している。この積載面46cは、上面視において、前後方向Xに長い略長方形状を呈しており、後述する第3の台車52を固定するための固定用孔46eが第3の台車52の固定用孔に対応してそれぞれ設けられている。さらに、第2の台車46は、後輪側の各タイヤ46dに対応してブレーキ機構50をそれぞれ有している。これらのブレーキ機構50は、第1の台車36のブレーキ機構44とほぼ同様の構成を有している。
第3の台車52は、第1の台車36、および、第2の台車46に搭載可能に形成されている。第3の台車52は、図3(d)に示すように、天板52a、および、4つのタイヤ52bを有している。天板52aは、上面視において、例えば、略四角形状に形成されている。第3の台車52の天板52aは、積載面52cを上面に有している。積載面52cの4つの角部には、それぞれ固定用孔52dが設けられている。第3の台車52の各固定用孔52dは、第1の台車36に搭載したときに上述した第1の台車36の各固定用孔36dとそれぞれ位置が一致するように配置されている。
同様に、第3の台車52の各固定用孔52dは、第2の台車46に搭載したときに上述した第2の台車46の固定用孔46eともそれぞれ位置が一致するように配置されている。また、第3の台車52は、4つの固定用ピン54をさらに有している。これらの固定用ピン54は、上記の固定用孔52dにそれぞれ着脱自在に挿通されている。このため、第3の台車52が、第1の台車36または第2の台車46に搭載されたときに上記の固定用ピン54を用いて第1の台車36および第2の台車46に第3の台車52を固定することができる。
本実施形態では、第3の台車52に固定用孔52dを4か所設ける例を挙げているが、例えば、第3の台車52の固定用孔を2か所ないし3か所設けてよい。この場合にも、第3の台車52の各固定用孔に対応して各台車36,46に固定用孔を設ければよい。
なお、本実施形態では、固定用ピン54を用いて第3の台車52を第1の台車36または第2の台車46に固定しているが、例えば、車輪止め等を用いて第3の台車52を固定し、あるいは、第3の台車52にブレーキ機構を設けてもよい。
続いて、図2、および、図4〜図6を用いて下階側における積載物搬送装置10による積載物の搬送方法について説明する。
図2は、下階側において第2の台車46から第1の台車36へ第3の台車52を移動させるときの積載物搬送装置10の配置構成を示す図である。図4は、図2に示す積み替え領域Aにおける各台車36,46,52の具体的な配置状態を示す図である。
第2の台車46は、作業者によって第3の台車52を搭載した状態で、例えば、エレベータ等の移動手段を利用して最上階まで移動する。第3の台車52には、積載物70が予め積載されている。図2に示す積み替え領域Aにおいて、第2の台車46から第1の台車36へ第3の台車52の積み替えを行う。以下、積み替え領域Aにおける積み替え手順を具体的に説明する。
図4に示すように、第2の台車46を第1搬送レール18a,18bの横へ移動させて待機させる。一方、第1搬送レール18a,18bの最下端部には、第1の台車36が予め待機している。この際、第1の台車36は、フック36eを介してウィンチ32に牽引された状態で停止しており、ブレーキ機構44によって後輪のタイヤ36bにはそれぞれブレーキがかけられた状態とされている。これにより、積載物70を積載した第3の台車52を第2の台車46から第1の台車36へ移動させる際に、第1の台車36が動かないようにしている。
さらに、上述したように第1搬送レール18a,18bの連結用孔18eから各ストッパーピン42を差し込んで第1の台車36のストッパ挿入用孔40aへそれぞれ挿入することによって、第1の台車36を固定してもよい。この場合には、第1の台車36をより強固に固定することができるので、例えば、積載物70の重量が大きい場合等に好適である。なお、本実施形態では、第1の台車36がブレーキ機構44およびストッパーピン42を有している例を挙げているが、いずれか1つを有するものとしてもよい。また、車輪止め等を別途用いることとし、第1の台車36にストッパーピン42およびブレーキ機構44を設けないものとしてもよい。
作業者は、図4に示すように、第2の台車46の調整用ボルト48aを回転して天板46bの積載面46cの高さを調整して第1の台車36の積載面36cの高さに揃える。そして、第1の台車36の天板36aの後端に第2の台車46の天板46bが当接する位置まで第2の台車46を接近させてからブレーキ機構50によって第2の台車46にブレーキをかける。その後、第3の台車52の固定用孔52d(図3(d)参照)および第2の台車46の固定用孔46e(図3(c)参照)から固定用ピン54を引き抜き、第2の台車46に対する第3の台車52の固定を解除して、第3の台車52を第1の台車36の積載面36cへ移動させる。そして、先ほど引き抜いた各固定用ピン54を第3の台車52の各固定用孔52dおよび第1の台車36の各固定用孔36d(図3(a)参照)へそれぞれ挿入して第3の台車52を第1の台車36に固定する。
次に、第1の台車36のストッパ挿入用孔40aおよび第1搬送レール18a,18bの連結用孔18eからストッパーピン42を引き抜くとともに、ブレーキ機構44によるブレーキを解除する。そして、上流側のウィンチ32によってワイヤーロープ34を牽引して第1の台車36を走行させる。これにより、第1の台車36を踊り場14aへ向かって移動させることができる。
図5は、踊り場14aの下階側階段11の付近において第1の台車36から第2の台車46へ第3の台車52を移動させるときの積載物搬送装置10の配置構成を示す図である。図6は、図5に示す積み替え領域Bにおける各台車36,46,52の具体的な配置状態を示す図である。図5に示す積み替え領域Bにおいて、第1の台車36から第2の台車46へ第3の台車52の積み替えを行う。以下、積み替え領域Bにおける積み替え手順を具体的に説明する。
第1の台車36は、ワイヤーロープ34を介してウィンチ32に牽引され踊り場14aに近接する位置まで走行する。そして、ウィンチ32による牽引を一旦停止後、ブレーキ機構44によって第2の台車46における後輪側の各タイヤ46dにブレーキをかける。これにより、ワイヤーロープ34を取り外しても第1の台車36が後方へ移動しない状態とする。また、ブレーキ機構44によるブレーキだけでは制動力が不十分な場合には、上述した各ストッパーピン42(図3(b)参照)を図6に示す第1搬送レール18a,18bの連結用孔18fから差し込んで第1の台車36のストッパ挿入用孔40aへそれぞれ挿入することによって、第1の台車36を固定してもよい。また、その他、第1の台車36の各タイヤ46dと第1搬送レール18a,18bとの間に車輪止めをそれぞれ噛ませて停止させるようにしてもよい。
続いて、ワイヤーロープ34の係止部34aを第1の台車36のフック36eから取り外す。さらに、ワイヤーロープ34を滑車28a,28bから取り外して、ワイヤーロープ34を係止部34aの位置が第2搬送レール22a,22bの下端側付近に位置するまでウィンチ32によって巻き取らせる。そして、作業者は、第2の台車46を下階の床面14bから踊り場14aへ移動させる。さらに、作業者は、図5に破線で示すように、第2の台車46を第3搬送レール26a,26bの第1搬送レール18a,18bと対向する位置に設置する。それから、図6に示すように、調整用ボルト48aを回転させて第2の台車46の積載面46cの高さを低くして第1の台車36の積載面36cと高さを揃える。また、第2の台車46のブレーキ機構50によって後輪のタイヤ46dにブレーキをかけた状態にする。そして、第3の台車52を第1の台車36に固定している固定用ピン54を4本とも引き抜いてから、第3の台車52を第2の台車46へ移動させる。第2の台車46へ第3の台車52を移動後、再び固定用ピン54を4本ともそれぞれ第3の台車52の固定用孔52dに上側から差し込んで第2の台車46の固定用孔46eへ挿入して固定する。この状態で、作業者は、第3の台車52を第2搬送レール22a,22bの横まで第3搬送レール26a,26bに沿って走行させる。
次に、図7および図8を用いて積載物搬送装置10による上階側の積載物の搬送方法について説明する。
図7は、踊り場14aの上階側階段12の付近において、第2の台車46から第1の台車36へ第3の台車52を移動させるときの積載物搬送装置10の配置構成を示す図である。図8は、上階側において、第1の台車36から第2の台車46へ第3の台車52を移動させるときの積載物搬送装置10の配置構成を示す図である。
作業者は、上述した積み替え領域Aにおける積み替えと同様の手順によって、図7に示す積み替え領域Cにおいて第3の台車52の積み替えを行い、ワイヤーロープ34を介して第1の台車36をウィンチ32で上階の床面14cの方へ第1の台車36を牽引する。
次に、図8に示す積み替え領域Dにおいて、上述した積み替え領域Bにおける積み替えと同様の手順によって、第3の台車52を第1の台車36から第2の台車46へ移動させる。この際、第4搬送レール30a,30bからウィンチ32を取り外しておいても良い。これにより、第4搬送レール30a,30b周辺の作業スペースが広くなるため、作業がし易くなるという利点がある。
第2の台車46は、機械室入口72まで移動して積載物70の搬送を終了する。積載物搬送装置10によって機械室入口72まで搬送された積載物70は、例えば、機械室に設置されたトロリーチェーン等の機材によって機械室内へ搬入される。
上記実施形態の積載物搬送装置10によれば、第1の台車36が第1搬送レール18a,18bの上を踊り場14aに近接する位置まで牽引される。そして、第1の台車36の積載面36cの高さと略一致するように第2の台車46の積載面46cの高さを調節し、第1の台車36から第2の台車46に第3の台車52を移動させる。第2の台車46は、第3の台車52を搭載した状態で第3搬送レール26a,26bの上を走行し、第2搬送レール22a,22bの横に至る。そして、第2の台車46の積載面46cの高さを調節して第2搬送レール22a,22bの上に設置された第1の台車36の積載面36cの高さと略一致させる。その後、第1の台車36は、第3の台車52を搭載した状態で第2搬送レール22a,22bに沿って上階まで牽引されて走行する。この際、滑車28a,28bを介してワイヤーロープ34の牽引方向を変更することによって、下階側階段11の第1搬送レール18a,18bおよび上階側階段12の第2搬送レール22a,22bを走行する第1の台車36を単一のウィンチ32で牽引して搬送することができる。その結果、設備コストを抑制しつつ、積載物70を下階側階段11および上階側階段12に沿って搬送することができる。
なお、上記実施形態では、積載物搬送装置10が下階側の第1搬送レール18a,18bから上階の第4搬送レール30a,30bへ積載物70を搬送する例を挙げて説明しているが、反対に、上階の第4搬送レール30a,30bから下階の第1搬送レール18a,18bへ積載物70を降ろし搬送してもよい。
次に、図9〜図11を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。図9は、本発明の実施形態における第1変形例である積載物搬送装置10に含まれる第1搬送レール90を示す図である。以下の説明において、上記実施形態における第1搬送レール18a,18bと構成が異なる部分のみ説明を行い、共通する部分についての説明は適宜省略する。図9に示すように、第1搬送レール90は、複数のレールユニット90aを有している。このレールユニット90aは、2本のレール91a,91bおよび支持フレーム91cから構成されている。この2本のレール91a,91bは、支持フレーム91cを介して互いに対向する状態で固定されている。レールユニット90aの各レール91a,91bは、長手方向の両端部に連結用孔91dがそれぞれ設けられている。
各レールユニット90aは、外側両側面にそれぞれ取り付けけられた連結部材92を介して互いに端部同士を連結されている。これらの連結部材92は、金属製の板状部材である。また、これらの連結部材92には、上述した各レール91a,91bの連結用孔91dに対応する位置にボルト94を挿入するための貫通孔がそれぞれ形成されている。各レールユニット90aは、端部同士を隣接させた状態でボルト94を連結部材92の貫通孔およびレールユニット90aの連結用孔91dに挿通してナット96で締め付け固定されている。
上記構成によれば、第1搬送レール18a,18bよりも長さの短い各レールユニット90aのレール91a,91bを互いに連結して第1搬送レール90が組み立てられる。このため、建物内へのレールの搬入および搬出作業が行い易くなる。その結果、第1搬送レール18a,18bの設置または撤去作業を効率良く行って工期を短縮することができる。
また、上記構成の第1搬送レール90によれば、レールユニット90aの連結数によって第1搬送レール18a,18bの全長を調整できるという利点もある。
なお、本変形例では、第1搬送レール90を例に挙げて説明したが、他の第2搬送レールから第4搬送レールの一部または全部についても、第1搬送レール90と同様に複数のレールを連結して構成するものとしてもよい。
図10(a)は、本発明の実施形態における第2変形例である積載物搬送装置10に含まれる第1搬送レール100を示す図である。同図(b)は、同図(a)に示すE-E断面図である。同図(c)は、同図(a)に示すF-F断面図である。上記第1変形例と同様、第1搬送レール18a,18bと構成が異なる部分のみ説明を行う。図10(a)に示すように、第1搬送レール100は、複数のレールユニット102を有している。これらのレールユニット102は、2本のレール104a,104bと支持フレーム106から構成されている。これら2本のレール104a,104bは、支持フレーム106を介して互いに対向する状態に固定されている。図10(b),(c)に示すように、このレール104a,104bは、長手方向と直交する方向における断面が略H字状に構成され、中央部に第1の台車36が走行する路面108が形成されている。そして、レールユニット102のレール104a,104bは、長手方向における両端部に連結用孔110がそれぞれ設けられている。これらの連結用孔110は、図10(c)に示すように、路面108よりも下側に設けられている。また、隣接するレールユニット102は、各連結部材112を介して双方の端部同士が連結されている。これらの連結部材112により、レールユニット102が連結固定されている。
上記のレールユニット102の連結方法によれば、上記第1変形例の第1搬送レール90と同様の効果を得られると伴に、隣接するレールユニット102を固定しているボルト114およびナット116が路面108の周辺に突出しない。このため、第1の台車36は、第1搬送レール100をスムーズに走行することができる。
なお、本変形例では、第1搬送レール100を例に挙げて説明したが、他の第2搬送レールから第4搬送レールの一部または全部についても、第1搬送レール90と同様の構成としてもよい。
上記実施形態では、積載物搬送装置10は、第1の台車36に設けられたフック36eを牽引することによって積載物70の搬送を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1の台車の代わりに第3の台車にフックを設けて牽引するようにしてもよい。この場合の第3変形例における第2の台車120および第3の台車152の構成について図11を用いて説明する。
図11(a)は、本発明の実施形態における第3変形例である積載物搬送装置10に含まれる第2の台車120を示す図である。同図11(b)は、同図(a)に示す第2の台車120と共に使用する第3の台車152を示す図である。以下の説明において、第2の台車120および第3の台車152については、上記実施形態における第2の台車46および第3の台車52と構成が異なる部分のみ説明を行い、共通する部分については説明を省略する。
第2の台車120は、図11(a)に示すように、伸縮式支柱122を有している。この伸縮式支柱122は、略円柱状の外形を有しており、基体部46aに固定支持されている。第2の台車120の伸縮式支柱122は、天板46bを回転可能に支持している。
また、伸縮式支柱122は、調整用ボルト124を外周面に有している。この調整用ボルト124は、上記実施形態における調整用ボルト48aと同様に伸縮式支柱122を上下方向に伸縮させる機能を有している。これにより、第2の台車120の天板46bを回転させて搭載している第3の台車152の向きを変えることができる。
第3の台車152は、図11(b)に示すように、前面側にフック158を有している。このフック158は、ワイヤーロープ34の係止部34aを引っ掛けるためのものである。なお、本変形例では、第1の台車36のフック36eは使用しないため設けないものとしてもよい。
上記構成によれば、第1の台車36よりも高い位置にある第3の台車152を牽引して第1搬送レール18a,18bを踊り場14aまで搬送後、第3の台車152を第2の台車120に移動させて、第3の台車152を第2搬送レール22a,22bの横まで移動させる。この際、第2の台車120の天板46bを回転させて第3の台車52のフック158が上階側階段12と向き合うように前後方向を入れ替える。そして、第3の台車152を第2搬送レール22a,22bの上に設置された第1の台車36へ移動させてから上記同様に第3の台車152を第1の台車36に固定し、第3の台車152のフック158を介してワイヤーロープ34に牽引させる。
この第3変形例によれば、第1の台車36よりも高い位置にある第3の台車152を牽引することができるため、ワイヤーロープ34が各搬送レール26a,26b、30a,30bに擦れ難く、摩耗を抑制することができる。
なお、本発明に係る積載物搬送装置は、上述した実施形態およびその変形例の構成に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等の範囲内で種々の改良や変更が可能であることはいうまでもない。