以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態によるエンジン100の構成について説明する。なお、以下では、エンジン100におけるクランクシャフト40の延びる方向をX方向とし、水平面内でクランクシャフト40に直交する方向をY方向とし、シリンダ2aの延びる垂直方向をZ方向として説明を行う。なお、エンジン100は、本発明の「内燃機関」の一例である。
本発明の第1実施形態による自動車用のエンジン100は、図1に示すように、アルミニウム合金製のシリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3を含むエンジン本体10を備えている。また、ガソリン機関からなるエンジン100は、エンジン本体10のX2側の側端部(縁部2b)に組み付けられるとともにタイミングチェーン4を覆う樹脂製のタイミングチェーンカバー20(以降、TCC20と称する)と、シリンダヘッド1の上側(Z1側)に組み付けられるヘッドカバー30とを備えている。なお、エンジン本体10は、本発明の「内燃機関本体」の一例である。また、タイミングチェーンカバー(TCC)20は、本発明の「カバー部材」の一例である。
シリンダヘッド1の内部には、動弁系タイミング部材を構成するカムシャフト45(破線で示す)およびバルブ機構(詳細は図示せず)などが配置されている。シリンダヘッド1の下方(Z2側)に接続されるシリンダブロック2の内部には、ピストン11(破線で示す)がZ方向に往復動するシリンダ2a(破線で示す)が形成されている。また、シリンダヘッド1には、シリンダブロック2に形成された複数(4つ)のシリンダ2aのそれぞれに吸気を導入する吸気装置(図示せず)が接続されている。
また、シリンダブロック2とシリンダブロック2の下方(Z2側)に接続されるクランクケース3とによって、エンジン本体10の内底部にクランク室3aが形成されている。クランク室3aには、ピストン11およびコンロッド(図示せず)を介して回転可能に接続されたクランクシャフト40が配置されている。なお、図1においては、クランクシャフト40を概略棒形状に図示しているが、実際には、クランクシャフト40は、各シリンダ2aの直下において回転軸が偏心されたクランクピンとこのクランクピンを挟み込むバランスウェイトとがクランクジャーナルに接続されて構成されている。
また、クランク室3aの下部(Z2側)には、エンジンオイル(以降、単にオイルと呼ぶ)を溜めるオイル溜め部3bが設けられている。オイルは、図示しないオイルポンプによりオイル溜め部3bからエンジン本体10内の上部に汲み上げられてカムシャフト45を含む動弁系タイミング部材や、ピストン11の外周面などの摺動部に供給される。そして、その後、自重により落下(滴下)してオイル溜め部3bに戻される。
TCC20は、図2に示すように、エンジン本体10(図1参照)のX2側の側断面形状に重なるような平面形状を有している。また、TCC20は、紙面手前側(矢印X2方向)に膨らむ本体部21を有しており、本体部21の下部側(Z2側)でかつY方向の中央部近傍に貫通孔22aを有するボス部22(図3参照)が形成されている。貫通孔22aは、本体部21を厚み方向に貫通しており貫通孔22aにクランクシャフト40の前端部40a(図1参照)が挿通されるように構成されている。
また、TCC20は、貫通孔22aを中心に互いに反対方向(矢印Y1方向および矢印Y2方向)に配置された一対の端部23を有している。また、フランジ状に形成された各々の端部23には、厚み方向に貫通する貫通孔24aを有するボス部24が形成されている。なお、図2では、TCC20に対して後述するリテーナ50が配置される際の平面的な様子を示しており、背後(紙面奥側)に存在するシリンダブロック2の図示を省略している。
また、TCC20は、図3に示すように、シリンダヘッド1およびシリンダブロック2(図1参照)に対して取り付けられる端部23の裏面側(シール面側)に溝部21aが形成されている。溝部21aは、貫通孔22aよりも内側をZ方向に延びており、溝部21aには後述するシール部材7(図5参照)が嵌め込まれるように構成されている。また、TCC20は、図1に示すように、貫通孔22aにクランクシャフト40のX2側の前端部40aが挿通された状態でエンジン本体10の側部(シリンダヘッド1およびシリンダブロック2の縁部2b)にボルト90を用いて取り付けられている。
ここで、図5に示すように、クランクシャフト40は、TCC20の貫通孔22aに対応する部分にオイルシール5が装着されている。また、オイルシール5は、外周部がTCC20の貫通孔22aの内周面に直接的に嵌め込まれてTCC20により保持されているわけではなく、アルミニウム合金製のリテーナ50に保持されている。そして、リテーナ50が所定の取付構造を有してエンジン本体10側に取り付けられることによって、オイルシール5がクランクシャフト40のTCC20の近傍に装着されるように構成されている。また、オイルシール5によって、クランクケース3(図1参照)内のオイルがクランクシャフト40まわりからエンジン本体10(図1参照)の外部に漏れ出ないように構成されている。なお、リテーナ50は、本発明の「オイルシール固定部材」の一例である。
リテーナ50は、図1および図4に示すように、本体部51のX方向に沿った中央部に貫通孔52aを有するボス部52が形成されている。貫通孔52aは、本体部51を厚み方向に貫通しており貫通孔52aにクランクシャフト40の前端部40a(図1参照)が挿通されるように構成されている。また、リテーナ50の断面構造として、図5に示すように、ボス部52の貫通孔52aの内周面には、Y方向に沿って内径を小さくするように突出する円環状の抜止部52bが形成されている。また、貫通孔52aにはオイルシール5が外側(X2側)から内側(X1側)に向かって圧入されて固定されている。また、圧入されたオイルシール5は、抜止部52bによってシリンダブロック2側(X1側)に過剰にずれ動くのが防止されている。
また、リテーナ50を裏側(内側表面50b側)から見た場合、図4に示すように、リテーナ50は、一対の端部53を有している。端部53は、貫通孔52aを中心に互いに長手方向(Y1方向およびY2方向)に延びた腕部51aの先端に形成されている。また、各々の端部53には、後述するノックピン11が嵌合される取付穴54aと、後述するボルト90が挿通される取付孔55aを有するボス部55とが、Z方向に互いに隣接して設けられている。この場合、Y1側の端部53には、取付穴54aとボス部55(取付孔55a)とが1つずつ設けられ、Y2側の端部53には、1つの取付穴54aと、取付穴54aを上下(Z方向)から挟むように一対のボス部55(取付孔55a)が設けられている。また、取付穴54aおよび取付孔55aは、端部53を厚み方向に貫通している。なお、内側表面50bは、本発明の「対向面」の一例である。
また、図5に示すように、リテーナ50の端部53に対応するシリンダブロック2の縁部2bの部分には、その一部が矢印X2方向に突出するようにノックピン11が固定されている。金属製のノックピン11は、シリンダブロック2のY1側の縁部2bおよびY2側の縁部2bの各々に設けられた固定穴2cに所定の深さだけ圧入されている。また、ノックピン11の外径はリテーナ50の取付穴54aの内径よりもごく僅かだけ小さい。これにより、リテーナ50がTCC20の外側から外側表面20a上に被せられた状態で、Y1側の端部53の取付穴54aは、Y1側に対応するノックピン11(図1参照)に嵌合され、かつ、Y2側の端部53の取付穴54aは、Y2側に対応するノックピン11に嵌合される。そして、この状態で、3つのボス部55の取付孔55aにボルト90がそれぞれ挿通されてボス部55の下面がシリンダブロック2の縁部2bの固定穴2dに直接固定されるように構成されている。
これにより、TCC20をY方向に跨ぐようにしてリテーナ50をシリンダブロック2に組み付ける際に、シリンダブロック2に対するリテーナ50の取付面内(Y−Z平面内)の位置決めが行われるように構成されている。また、ノックピン11と取付穴54aとの嵌合により金属製のシリンダブロック2に対して金属製のリテーナ50が精度よく組み付けられることにより、貫通孔52aの中心がクランクシャフト40の軸心に対して精度よく位置合わせされる。また、これにより、オイルシール5がクランクシャフト40に対して精度よく圧入されている。
また、図3に示すように、TCC20は、X2側となる外側表面20aにおけるボス部22まわりに円環状の溝部21bが形成されている。また、図5に示すように、溝部21bには、弾性を有する材料からなる円環状のシール部材6が嵌め込まれている。そして、シール部材6は、溝部21bから外側表面20a上に露出する部分を介して、TCC20と対向するリテーナ50のボス部52まわりの内側表面50bの部分に接触している。すなわち、リテーナ50(ボス部52)とTCC20(ボス部22)との間にシール部材6が配置されており、シール部材6は、矢印X1方向に押し潰れた状態となってTCC20(ボス部22)のシール部材6の近傍に対応する外側表面20aの部分とリテーナ50(ボス部52)の内側表面50bとに密着されている。
また、図5に示すように、TCC20における端部23の裏面側(X1側となる内側表面20b側)に形成された溝部21aには、弾性を有する材料からなるシール部材7が嵌め込まれている。そして、シール部材7は、溝部21aから内側表面20b上に露出する部分を介して、シリンダブロック2のTCC20と対向する縁部2bに接触している。すなわち、シリンダブロック2(縁部2b)とTCC20(端部23のX1側表面)との間にシール部材7が配置されており、シール部材7は、矢印X1方向に押し潰れた状態となってシリンダブロック2の縁部2bとTCC20の端部23のX1側表面とに密着されている。これにより、TCC20は、フランジ状に形成された端部23と縁部2bとの間にシール部材7が挟み込まれることによってシリンダブロック2から矢印X2方向に所定の離間距離(約0.5mm以上約3mm以下)を有して浮かされた状態で固定されている。
したがって、エンジン100では、図1に示すように、エンジン本体10(シリンダヘッド1およびシリンダブロック2)の側方(X2側)の縁部2bに沿ってTCC20がシール部材7を介在させてボルト90を用いて矢印X1方向に取り付けられる。そしてこの状態で、貫通孔22aから外側に突出するクランクシャフト40に対応するTCC20の部分の外側表面20a上をY方向に跨ぐようにしてリテーナ50がシール部材6を介在させて手前側(X2側)から取り付けられるように構成されている。これにより、TCC20には、図2に示すように、リテーナ50がTCC20に対して重ねられた領域Sが存在している。なお、領域Sは、本発明の「オイルシール固定部材およびカバー部材が互いに重なる領域」の一例である。
ここで、第1実施形態では、図3に示すように、樹脂製のTCC20には、外側表面20aから遠ざかる矢印X2方向(紙面手前方向)に延びる周状壁26が形成されている。周状壁26は、外側表面20aの所定領域において継ぎ目なく周状に形成されており、外側表面20aには、周状壁26によって囲まれた領域20cが設けられている。また、領域20cの中心部には、ボス部22が配置されている。そして、図5に示すように、シリンダブロック2(エンジン本体10)にTCC20およびリテーナ50がこの順に取り付けられた状態では、周状壁26によってリテーナ50およびTCC20が互いに重なる領域S(図2参照)が取り囲まれるように構成されている。なお、矢印X2方向は、本発明の「第1方向」の一例である。
すなわち、エンジン100では、TCC20の外側表面20aに周状に設けられた周状壁26によって、リテーナ50およびTCC20の間に周状壁26により取り囲まれた空間101が形成されるように構成されている。言換すると、周状壁26と、TCC20の外側表面20aのうちの領域20cと、領域20cに矢印X2方向に対向するリテーナ50の平坦な内側表面50bの部分とによって、空間101を構成する空間構造体が構成されている。そして、リテーナ50およびTCC20の間の空間101は、ヘルムホルツ共鳴部を構成している。
また、第1実施形態では、領域S(図2参照)内にヘルムホルツ共鳴部となる空間101を形成する周状壁26は、先端26aが矢印X1方向に対向するリテーナ50の平坦な内側表面50bの部分との間に隙間Tを有するように形成されている。すなわち、先端26aは、内側表面50bには接触していない。また、隙間Tを有する空間101の入口部(開口部)は平面視において周状に形成されている。そして、周方向に環状に繋げられた隙間Tは、ヘルムホルツ共鳴部としての空間101が消音効果を発揮する共鳴周波数を有するように所定の大きさに調整されている。したがって、環状に繋げられた隙間Tの体積は、先端26aの幅と対向間隔(隙間の大きさ)と先端26aの周長との積により得られる。そして、隙間Tは、空間101の形状によって、クランクシャフト40の旋回動作などが発生源となるエンジン本体10の振動に起因して発生する騒音や、特にTCC20の内側でかつクランクシャフト40の近傍における動弁系タイミング部材の振動に伴う騒音(タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合動作における動作音など)の最大値およびその近傍の値に対応した周波数が打ち消されるような大きさに設定されている。なお、クランクシャフトタイミングスプロケット41は、本発明の「スプロケット」の一例である。
これにより、エンジン100では、TCC20の外側表面20aに周状に設けられた周状壁26により、クランクシャフト40の旋回動作などが発生源となるエンジン本体10の振動に起因してTCC20の内側に発生する騒音(放射音)がエンジン本体10の外部に拡散しにくいように構成されている。つまり、隙間Tの体積と空間101の体積との比率に基づいてヘルムホルツ共鳴が起こされるように調整されている。また、周状壁26の先端26aは隙間Tを介してリテーナ50の内側表面50bとは非接触となるので、リテーナ50と周状壁26(TCC20)との擦れ合いも生じずヘルムホルツ共鳴部としての空間101の形状が維持されており周状壁26には機械的変質(変形)は生じない。このようなヘルムホルツ共鳴部としての空間形状が維持された空間101によって、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)のうちの特定の周波数帯域(放射音が最大値およびその近傍となる周波数)が、エンジン100の使用時間に関係なく打ち消されるように構成されている。
また、第1実施形態では、図2および図5に示すように、周状壁26によって取り囲まれたリテーナ50およびTCC20の間の空間101は、タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合部分41aに重なるように配置されている。したがって、エンジン本体10の騒音源の1つになるタイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41とが噛み合う噛合部分41aは、クランクシャフト40の延びる方向から見て周状に設けられた周状壁26によって取り囲まれている。
また、図4に示すように、リテーナ50の端部53におけるボス部55よりも内側寄りの本体部51の部分に、矢印X1方向(紙面手前側)に所定の突出高さを有して突出する当接部56が設けられている。また、当接部56は、本体部51のZ1側の端部からZ2側の端部に亘って連続的に形成されている。これにより、図5に示すように、TCC20のシール部材6の近傍に対応する外側表面20aの部分がリテーナ50の内側表面50bに対して隙間を有して配置された状態で、リテーナ50の当接部56は、シール部材7の近傍でかつシール部材7が設けられた側とは反対側から端部23のX2側表面に当接するように構成されている。
また、TCC20は、本体部21の断面がヘッドカバー30側(Z1側)に開口されるフランジ状の端部25aと、本体部21の断面がクランクケース3側(Z2側)に開口されるフランジ状の端部25bとを有している。そして、端部25aをヘッドカバー30の取付部30aに対して下方から対向させた状態でTCC20とヘッドカバー30とがボルト(図示せず)を用いて結合され、端部25bをクランクケース3の取付部3cに対して上方から対向させた状態でTCC20とクランクケース3とがボルト(図示せず)を用いて結合されている。なお、端部25aと取付部30aとの間、および、端部25bと取付部3cとの間には、図示しないシール部材が挟み込まれている。
また、図1に示すように、TCC20の内部においては、クランクシャフトタイミングスプロケット41と、シリンダヘッド1の内部に組み込まれたカムシャフト45の駆動用のカムシャフトタイミングスプロケット42とがタイミングチェーン4によって繋がれている。また、TCC20の外部においては、クランクシャフト40の前端部40aには、クランクプーリ(図示せず)が取り付けられている。そして、エンジン100に取り付けられる冷却水循環用のウォータポンプや車内空調用のコンプレッサなどの補機類は、クランクプーリに掛けられたベルトにより駆動される。また、クランクシャフト40の後端部40bは、変速機などからなる動力伝達部(図示せず)に接続されている。第1実施形態におけるエンジン100は、上記のように構成されている。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第1実施形態では、上記のように、クランクシャフト40の延びる方向(X方向)から見てリテーナ50およびTCC(タイミンチェーンカバー)20が互いに重なる領域Sを取り囲むように周状に設けられるとともにリテーナ50およびTCC20の互いに対向する矢印X2方向に突出する周状壁26をTCC20の外側表面20aに設けることによって、TCC20の外側表面20aに周状に設けられた周状壁26により、クランクシャフト40の旋回動作などが発生源となるエンジン本体10の振動に起因して発生する騒音や、特にTCC20の内側でかつクランクシャフト40の近傍における動弁系タイミング部材の振動に伴う騒音(タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合動作における動作音など)を周状壁26の内側(領域20c)に囲い込むことができる。すなわち、周状に設けられた周状壁26によってエンジン本体10の騒音(放射音)を外部に漏れにくくすることができる。この際、たとえば、エンジン本体10とともに振動するTCC20の振動エネルギを摩擦エネルギ(熱エネルギ)に変換してTCC20の振動低減とこれに伴う騒音低減とを図るような場合と異なり、エンジン100では時間経過とともに機械的変質を起こすことのない周状壁26を用いてエンジン本体10の騒音をこの周状壁26の内側(領域20c)に囲い込む構成を適用するので、騒音低減効果は経時的に劣化(低下)することもない。その結果、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)の抑制効果を長期に亘って維持することができる。
また、第1実施形態では、TCC20の外側表面20aに周状の周状壁26を設けることによって、樹脂製のTCC20の剛性を向上させることができるので、エンジン本体10の振動が樹脂製のTCC20に顕著に伝わるのを抑制することができる。これによっても、エンジン100の長期に亘る使用に影響されることなく、エンジン本体10の振動に伴うTCC20の振動に起因してエンジン本体10から外部に拡散する騒音(放射音)レベル自体を低減させることができる。
また、第1実施形態では、周状壁26によって取り囲まれたリテーナ50およびTCC20の間の空間101は、ヘルムホルツ共鳴部を構成するとともに、周状壁26の先端26aと、周状壁26の先端26aが対向するリテーナ50の内側表面50bとの間の隙間Tの大きさを調整することにより、放射音が最大値およびその近傍となる周波数となるような共鳴周波数を有するように設定する。これにより、周状壁26が取り囲むことにより、リテーナ50およびTCC20の間にヘルムホルツ共鳴部となる空間101を容易に形成することができる。そして、ヘルムホルツ共鳴部が消音効果を発揮する共鳴周波数(たとえば放射音が最大値およびその近傍となる周波数)を有するように、ヘルムホルツ共鳴部としての空間101の入口部(開口部)の隙間Tの大きさ(周状壁26の先端26aとリテーナ50の内側表面50bとの間の隙間Tの大きさ)が調整されるので、周状壁26によって取り囲まれたリテーナ50およびTCC20の間の空間101(ヘルムホルツ共鳴部)によってエンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)のうちの特定の周波数帯域を有効に打ち消すことができる。この際、周状壁26の先端26aは、隙間Tを介してリテーナ50の内側表面50bとは非接触となるので、リテーナ50と周状壁26(TCC20)との擦れ合いも生じずヘルムホルツ共鳴部としての空間101の形状が維持される。その結果、エンジン本体10の振動エネルギを摩擦エネルギに変換するなどして騒音低減を図る場合と異なり、時間経過とともに機械的変質を起こさない周状壁26による騒音の継続的な拡散抑制効果に加えて、ヘルムホルツ共鳴部として機能し続ける空間101によっても、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)レベル自体を効果的に低減することができる。
また、第1実施形態では、エンジン本体10は、タイミングチェーン4およびクランクシャフトタイミングスプロケット41を含み、クランクシャフト40の延びる方向から見て、周状壁26によって取り囲まれたリテーナ50およびTCC20の間の空間101を、タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合部分41aに重なるように配置する。これにより、エンジン本体10の騒音源の1つになるタイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41とが噛み合う噛合部分41aを、クランクシャフト40の延びる方向から見て周状に設けられた周状壁26によって容易に取り囲むことができる。したがって、噛合部分41aから放射(拡散)される騒音がTCC20とリテーナ50との重なった空間101に相当する部分(領域20c)を矢印X2方向に貫通して外部に拡散するのを効果的に抑制することができる。
また、第1実施形態では、TCC20は、樹脂製であり、リテーナ50は、アルミニウム合金製である。これにより、エンジン100の軽量化を目的としてTCC20を樹脂製とするとともに、クランクシャフト40に精度よくオイルシール5を装着することを目的としてリテーナ50をアルミニウム合金製として構成した場合であっても、周状に設けられた周状壁26によって、エンジン本体10における騒音低減効果(エンジン本体10の振動に起因した放射音の継続的な低減効果)を有効かつ容易に得ることができる。また、エンジン本体10の側端部に組み付けられるTCC20を樹脂製とすることによって、TCC20を金属部材により構成する場合と比べて、エンジン本体10から拡散する騒音に対する吸音性を向上させやすくすることができる。
(第2実施形態)
次に、図6および図7を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、TCC20側の周状壁26に加えて、リテーナ250にも周状壁257を形成した例について説明する。なお、周状壁257は、本発明の「第1周状壁」の一例であり、周状壁26は、本発明の「第2周状壁」の一例である。また、リテーナ250は、本発明の「オイルシール固定部材」の一例である。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第2実施形態によるエンジン200においては、図7に示すように、アルミニウム合金製のリテーナ250を用いてオイルシール5を保持するように構成されている。ここで、リテーナ250を裏側から見た場合、図6に示すように、本体部51の内側表面250bから遠ざかる矢印X1方向(紙面手前方向)に延びる周状壁257が形成されている。周状壁257は、内側表面250bにおいて周方向に継ぎ目なく周状に形成されており、内側表面250bには、周状壁257によって囲まれた領域250cが設けられている。なお、エンジン200は、本発明の「内燃機関」の一例である。また、内側表面250bは、本発明の「対向面」の一例である。
そして、図7に示すように、シリンダブロック2(エンジン本体10)にTCC20およびリテーナ250がこの順に取り付けられた状態では、周状壁26および周状壁257によってリテーナ250およびTCC20が互いに重なる領域S(図6参照)が取り囲まれるように構成されている。この場合、内側のリテーナ250の内側表面250bに周状に設けられた周状壁257によって、リテーナ250およびTCC20の間に周状壁257により取り囲まれた空間201(領域250c)が形成されている。
また、第2実施形態では、図7に示すように、周状壁257は、先端257aが矢印X1方向に対向するTCC20の外側表面20aとの間に隙間Tを有するように形成されている。すなわち、先端26aに加えて、先端257aもTCC20の外側表面20aには接触していない。また、隙間Tは、平面視で周状に形成されている。また、第2実施形態においても、隙間Tは、ヘルムホルツ共鳴部としての空間201が消音効果を発揮する共鳴周波数を有するように所定の大きさに調整されている。これにより、エンジン200では、リテーナ250およびTCC20の間の空間201によってヘルムホルツ共鳴部が構成されている。なお、外側表面20aは、本発明の「対向面」の一例である。
したがって、エンジン200では、TCC20の外側表面20aに周状に設けられた周状壁26と、リテーナ250の内側表面250bに周状に設けられた周状壁257とにより、クランクシャフト40の旋回動作などが発生源となるエンジン本体10の振動に起因してTCC20の内側に発生する騒音がエンジン本体10の外部に拡散しにくいように構成されている。また、周状壁26および周状壁257によって取り囲まれたリテーナ250およびTCC20の間の空間201(ヘルムホルツ共鳴部)によって、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)のうちの特定の周波数帯域(放射音が最大値およびその近傍となる周波数)が打ち消されるように構成されている。なお、外側表面20aは、本発明の「対向面」の一例である。また、矢印X1方向は、本発明の「第1方向」の一例である。
また、第2実施形態では、内側の周状壁257と外側の周状壁26とは、クランクシャフト40の延びる矢印X2方向に対して直交する方向(Y方向およびZ方向)において所定の間隔を隔てて対向している。すなわち、図7に示すように、周状壁257と周状壁26との間には、所定の間隔を有して迷路のように入り組んだ音道202が形成されている。また、音道202は、平面的に見て周状壁257(周状壁26)に沿って周状に形成されている。
これにより、TCC20とリテーナ250とが重なる領域S(図6参照)のうち、周状壁257の内側となる領域250cと、領域Sのうち領域250c以外の領域(周状壁26よりも外側の領域)とは、TCC20とリテーナ250とが互いに接触しない(擦れ合わない)音道202によってのみ繋がれている。また、音道202によって、ヘルムホルツ共鳴部としての空間形状が維持された空間201は、共鳴周波数が所定値に設定されている。また、これと同時に、音道202を有して二重構造となった周状壁(周状壁257および周状壁26)によって、より遮音効果の高められた構造が領域S内に形成されている。なお、第2実施形態によるエンジン200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、リテーナ250に向かって矢印X2方向に延びる周状壁26をTCC20に設けるとともに、周状壁26に対してクランクシャフト40の延びる矢印X2方向に対して直交する方向(Y方向およびZ方向)において隙間Tを隔てて対向するように配置され、TCC20に向かって矢印X1方向に延びる周状壁257をリテーナ250に設けるように構成する。これにより、平面視において、周状壁26が周状壁257を外側から周状に取り囲むような周状壁を形成することができる。すなわち、TCC20からリテーナ250に向かって延びる周状壁26と、リテーナ250からTCC20に向かって延びる周状壁257との二重構造となった周状壁(周状壁26および周状壁257)によって、リテーナ250およびTCC20の間の空間201の外縁部近傍領域に音道202からなる迷路構造(遮音構造)を周状に形成することができる。これにより、エンジン本体10の振動に起因してTCC20の内側に発生する騒音がエンジン本体10の外部に漏れ出るのを一層抑制することができる。
また、第2実施形態では、周状壁257によって取り囲まれたリテーナ250およびTCC20の間の空間201は、ヘルムホルツ共鳴部を構成するとともに、周状壁26の先端26aと周状壁26の先端26aが対向するリテーナ250の内側表面250bとの間の隙間Tの大きさ、周状壁257の先端257aと周状壁257の先端257aが対向するTCC20の外側表面20aとの間の隙間Tの大きさ、および、周状壁257と周状壁26との間の隙間Tの大きさをそれぞれ調整することにより、所定の共鳴周波数を有するように設定する。これにより、二重構造となった周状壁(周状壁257および周状壁26)が取り囲むことにより、リテーナ250およびTCC20の間にヘルムホルツ共鳴部となる空間201を容易に形成することができる。そして、ヘルムホルツ共鳴部が消音効果を発揮する共鳴周波数を有するように、ヘルムホルツ共鳴部としての空間201の入口部となる音道202の隙間Tの大きさ(周状壁26の先端26aとリテーナ250の内側表面250bとの間の隙間Tの大きさ、周状壁257の先端257aと周状壁257の先端257aが対向するTCC20の外側表面20aとの間の隙間Tの大きさ、および、周状壁257と周状壁26との間の隙間Tの大きさ)が共に調整されるので、内側の周状壁257によって取り囲まれた空間201(ヘルムホルツ共鳴部)によってエンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)のうちの特定の周波数帯域を有効に打ち消すことができる。
また、この際、周状壁26の先端26aは、隙間Tを介してリテーナ250の内側表面250bとは非接触となり、また、周状壁257の先端257aは、隙間Tを介してTCC20の外側表面20aとは非接触となるので、リテーナ250(周状壁257)とTCC20(周状壁26)との擦れ合いも生じずヘルムホルツ共鳴部としての空間201の形状が維持される。その結果、二重構造となった周状壁(周状壁257および周状壁26)による騒音の継続的な拡散抑制効果に加えて、ヘルムホルツ共鳴部として機能し続ける空間201によっても、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)レベル自体をより一層かつ継続的に低減することができる。
また、第2実施形態では、樹脂製のTCC20に周状の周状壁26を設けるのに加えて、金属製のリテーナ250にも周状の周状壁257を設けることによって、TCC20およびリテーナ250の剛性をそれぞれ向上させることができるので、エンジン本体10の振動がTCC20およびリテーナ250に顕著に伝わるのを抑制することができる。これによっても、エンジン200の長期に亘る使用に影響されることなく、エンジン本体10の振動に伴うTCC20およびリテーナ250の振動に起因してエンジン本体10から外部に拡散する騒音(放射音)レベル自体を低減させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図5、図8および図9を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、TCC20側の周状壁26によって形成されたリテーナ50とTCC20との間の空間101(図5参照)に吸音材301を設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第3実施形態によるエンジン300においては、図8に示すように、TCC20がエンジン本体10(シリンダヘッド1およびシリンダブロック2)に取り付けられた状態で、リテーナ50を用いてオイルシール5を保持するように構成されている。そして、第3実施形態では、TCC20側の周状壁26によって形成されたリテーナ50とTCC20との間の空間101(図5参照)に、吸音効果を有する材料からなる吸音材301がさらに配置されている。なお、図8は、図9の350−350線(一点鎖線)に沿った断面図である。また、エンジン300は、本発明の「内燃機関」の一例である。
ここで、ウレタン素材などの発泡系材料(発泡系ゴム材料)を用いて吸音材301を構成してもよいし、グラスウールなどの繊維系材料を用いて吸音材301を構成してもよい。また、気泡を含むビニル製の吸音材なども適用可能である。すなわち、空気層を含む多孔質材料を用いて吸音材301は構成されるのが好ましい。
また、吸音材301は、図9に示すように、クランクシャフト40の延びる方向から見て、クランクシャフト40およびオイルシール5を取り囲むようにして空間101内に敷き詰められている。したがって、吸音材301は、タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合部分41a(図8参照)にも重なるように配置されている。これにより、第3実施形態では、吸音材301によってエンジン本体10の騒音が、TCC20とリテーナ50との重なった空間101(図5参照)に相当する部分(領域20c)を矢印X2方向に貫通して外部に拡散するのが効果的に抑制されている。
なお、図8に示すように、吸音材301が敷き詰められた場合であってもTCC20とリテーナ50との重なった空間101(図5参照)内には若干の隙間が残されている。たとえば、周状壁26の先端26aとリテーナ50の内側表面50bの部分との間には、隙間Tが残されている。これにより、吸音材301を設けていても先端26aが内側表面50bに周状に接触せず、リテーナ50と周状壁26(TCC20)との擦れ合いが生じないように構成されている。なお、第3実施形態によるエンジン300のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、周状壁26によって取り囲まれたリテーナ50およびTCC20の間の空間101に吸音材301を設けるように構成する。これにより、エンジン本体10の振動に伴う騒音(放射音)を、周状壁26に取り囲まれたリテーナ50およびTCC20の間の空間101内の吸音材301に吸収させることができる。したがって、この場合も、エンジン300では、エンジン本体10の振動エネルギを摩擦エネルギに変換するなどして騒音低減を図る構成とは異なり、時間経過とともに機械的変質を起こさない周状壁26による騒音の継続的な拡散抑制効果に加えて、騒音を吸収する吸音材301によっても騒音低減効果を継続的に得ることができる。その結果、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)をさらに効果的に抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
次に、図5、図8、図10および図11を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、吸音材301(図8参照)を空間101(図5参照)内にほぼ敷き詰めて配置した上記第3実施形態とは異なり、空間101に部分的に吸音材401を設けた例について説明する。なお、図中において、上記第3実施形態と同様の構成には、第3実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第4実施形態によるエンジン400においては、図11に示すように、TCC20側の周状壁26によって形成されたリテーナ50とTCC20との間の空間101に、吸音効果を有する材料からなる吸音材401が配置されている。なお、エンジン400は、本発明の「内燃機関」の一例である。
ここで、第4実施形態では、図10および図11に示すように、吸音材401は、空間101に部分的に充填されている。すなわち、空間101は、吸音材401が充填(配置)された領域と、吸音材401が充填(配置)されていない空気層からなる領域とからなる。したがって、空間101内に吸音材401が部分的に配置された状態で、空間101を構成する空間構造体(周状壁26と、TCC20の領域20c(外側表面20a)と、領域20cに対向するリテーナ50の内側表面50bとからなる空間構造体)が消音効果を発揮する共鳴周波数を有するように、周状壁26の先端26aと、先端26aが対向するリテーナ50の内側表面50bとの間の隙間Tの大きさが調整されている。なお、図10は、図11の450−450線(一点鎖線)に沿った断面図である。
また、図11に示すように、吸音材401は、クランクシャフト40およびオイルシール5を取り囲むようにして空間101内に配置されている。また、吸音材401は、タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合部分41aにも重なるように配置されている。なお、第4実施形態によるエンジン400のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第4実施形態では、上記のように、吸音材401を空間101に部分的に充填することによって空間101を吸音材401が充填(配置)された領域と、吸音材401が充填(配置)されていない空気層からなる領域とによって構成する。これにより、空間101内に吸音材401が配置されている状態であっても、空間101を構成する空間構造体に特定の周波数帯域の消音効果を発揮するヘルムホルツ共鳴部として機能させることができる。したがって、エンジン400では、吸音材401による吸音効果に加えて、ヘルムホルツ共鳴部として機能し続ける空間101を構成する空間構造体によっても、エンジン本体10の振動に起因する騒音(放射音)レベル自体を低減し続けることができる。
また、第4実施形態では、クランクシャフト40およびオイルシール5を取り囲み、かつ、タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合部分41aにも重なるように吸音材401を空間101内に配置する。これにより、エンジン400では、吸音材401を空間101内に部分的に配置する場合であっても、噛合部分41aから放射される騒音を含むエンジン本体10の騒音が、TCC20とリテーナ50との重なった空間101に相当する部分(領域20c)を矢印X2方向に貫通して外部に拡散するのを効果的に抑制することができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第3実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態では、TCC20の外側表面20aに、リテーナ50の内側表面50bに向かって延びる周状壁26を形成して空間101を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、上記第2実施形態で示したように、リテーナ250の内側表面250bに、TCC20の外側表面20aに向かって延びる周状壁257のみを形成し周状壁26を形成することなく、本発明の「空間」を構成してもよい。
また、上記第1実施形態では、TCC20の外側表面20aにリテーナ50の平坦な内側表面50bの部分に向かって延びる周状壁26を形成して空間101を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、TCC20の外側表面20aとリテーナ50の内側表面50bとの各々から、互いの先端が所定間隔を隔ててX方向(第1方向)に対向するように突出するような周状壁を設けて本発明の「空間」を構成してもよい。この変形例のように構成しても、TCC20とリテーナ50との間に本発明の「空間」を設けることができるとともに、この空間をヘルムホルツ共鳴部として機能させることができる。
また、上記第2実施形態では、TCC20に周状壁26を形成するとともにリテーナ250に周状壁257を形成して本発明の「周状壁」を二重構造に構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、周状壁257の内側にさらに一重または二重に本発明の「周状壁」を形成してもよい。このように、本発明の「周状壁」を幾重にも形成することによって、TCC20とリテーナ250とが重なった領域Sを利用してエンジン本体10の騒音に対する継続的な遮音効果をさらに高めることができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、本発明の「周状壁」をリテーナ50(250)における本体部51の外形形状に沿わせて周状に形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明の「周状壁」の平面的な形状は、上記以外であってもよい。たとえば、クランクシャフト40およびオイルシール5を取り囲むように円形状または楕円形状(長穴形状)を有して本発明の「周状壁」を形成してもよい。ただし、周状壁により構成されるリテーナ50およびTCC20の間の空間が、タイミングチェーン4とクランクシャフトタイミングスプロケット41との噛合部分41aに重なるかそれよりも外側に位置するのが好ましい。
また、上記第1〜第4実施形態では、周状壁26(257)を継ぎ目なく周状に形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、リテーナ50(250)およびTCC20が互いに重なる領域Sを取り囲むように周状に設けられるのであれば、壁の一部が切り欠かれたような周状壁を設けてもよい。また、この場合、切り欠かれた部分の周状壁の端部およびその近傍領域が互いに第2方向(Y方向またはZ方向)に所定の間隔を隔てて対向する(重複する)ように構成してもよい。
また、上記第3実施形態では、吸音材301を空間101内にほぼ敷き詰めて配置した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数個に分割された状態の「吸音材」を、空間101内に島状に配置してもよい。
また、上記第2実施形態では、TCC20に周状壁26を形成するとともにリテーナ250に周状壁257を形成して本発明の「周状壁」を二重構造に構成した例についてのみ示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、上記第3実施形態で示した吸音材301を二重構造となった周状壁の内側の空間201に敷き詰めてもよいし、上記第4実施形態で示した形状に形成された吸音材401を二重構造となった周状壁の内側の空間201に空間201の一部を残した(存在させた)まま配置してもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、リテーナ50(250)の本体部51にX1方向に突出してTCC20のシール部材7の近傍に対応する端部23のX2側表面に当接する当接部56を設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リテーナ50に突出しないような当接部を設けてもよい。この場合、シール部材7の近傍において、リテーナ50の平坦な裏側(内側表面50b)をTCC20の平坦な端部23のX2側表面に当接させてもよいし、端部23のX2側表面にX2方向(リテーナ50側)に突出する凸部を設けてリテーナ50の平坦な裏側(内側表面50b)の部分をこの凸部に当接させてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、アルミニウム合金を用いてリテーナ50(250)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、アルミニウム合金以外の金属材料を用いて本発明の「オイルシール固定部材」を構成してもよい。あるいは、所定の剛性が確保されるような樹脂材料を用いて本発明の「オイルシール固定部材」を構成してもよい。この場合、本発明の「カバー部材」および「オイルシール固定部材」を共に樹脂製としてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、TCC20を樹脂製からなるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、樹脂材料以外の、たとえばアルミニウム合金などの金属材料を用いて本発明の「カバー部材」を構成してもよい。また、この場合、金属製の「カバー部材」に対して、所定の剛性が確保される樹脂製の「オイルシール固定部材」を取り付けて内燃機関を構成してもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、ガソリン機関からなる自動車用のエンジン100(200、300、400)に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、クランクシャフトを有する内燃機関であるならば、ガソリン機関以外のガス機関(ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどの内燃機関)の騒音対策に関するカバー部材とオイルシール固定部材との組立構造に対して本発明を適用してもよい。また、自動車用以外のたとえば設備機器の駆動源(動力源)として搭載されるような内燃機関の騒音対策に関するカバー部材とオイルシール固定部材との組立構造に対して本発明を適用してもよい。