JP6189248B2 - プラスチック成形用金型鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
C:0.01〜0.15%
Cは焼入れ性を向上させる元素であり、また目的の硬さに調整するためにも0.01%以上の含有が必要である。一方、多量に含有した場合にはCrと結合して過剰の炭化物を形成し、素地のCr濃度低下に伴って耐食性が低下するとともに、溶接性も劣化することから、その上限を0.15%とする。なお、同様の理由で下限を0.03%、上限を0.1%とするのが望ましい。
Siは溶製時に脱酸剤として作用するとともに、被削性を向上させる効果も有する。そのためには、0.5%以上の含有を要する。一方、含有量が多い場合は、成分偏析が生じて鏡面性を劣化させるとともに、過度の靱性低下を招くので、その含有量の上限を2.0%とする。なお、同様の理由で下限を0.5%、上限を1.5%とするのが望ましい。
Mnは焼入れ性向上に効果的な元素であり、添加により良好な機械的特性を得ることができる。その効果を得るためには、0.3%以上の含有が必要である。ただし、過度の含有は靱性の低下を招くので、上限を2.0%とした。なお、同様の理由で下限を0.3%、上限を1.5%とするのが望ましい。
Crは耐食性の向上及び焼入れ性の向上に有効な元素であり、加えて本発明ではCと結合して微細なM23C6型炭化物を形成し、硬さを向上させる作用ももたらす。含有量を増加させるほどこれらの効果は顕著となるが、一方で過度の含有は熱伝導率、耐食性及び溶接性の低下につながることから、含有量を2.0〜6.0%に調整する必要がある。なお、同様の理由で下限を3.0%、上限を5.0%とするのが望ましい。
NiはAlと結合してNiAlを形成するが、本発明ではNiAlの析出を必要とせず、希少金属であるNiを低減した組織設計とすることから、含有量上限を2.0%未満としている。
なお、極端な焼入れ性の低下を防ぎ、加えて母相の強度と靱性を確保する目的から、下限を0.5%とするのが望ましい。
これまでプリハードンタイプの金型材ではNiAlの析出強化を利用しているため、Alを添加しなければならなかったが、本発明はNiAlを析出させない設計であるため、NiAlを析出させるためのAlは不要である。ただし、製鋼時の脱酸効果を得るためにAlを添加してもよいが、その場合の含有量の上限は0.5%とする。なお、NiAlの析出を抑制するため、上限を0.05%未満とするのが望ましく、さらに0.03%以下とするのが一層望ましい。
Bは焼入れ性の向上効果を有するに加えて、被削性を付与させる作用もあるため、0.001%以上の含有が必要である。一方で過度に含有した場合は、熱間加工性を阻害することに加えて溶接時の割れ感受性を高めるために、その上限を0.01%とする。なお、上記と同様の理由で上限を0.005%とするのが望ましい。
Cuは時効処理によって析出し、素材を硬化させる作用を有するものの、靱性を著しく劣化させる。また、Cu添加鋼を製造した場合、鋼塊製造用の設備がCuで汚染されて、同一設備を使って製造するその後の製品にCuが混入する可能性がある。Cuは熱間加工性の著しい低下をもたらすので、Cu添加鋼を製造した後に、比較的Cu感受性が低い鋼を釜洗いの目的で製造するなどの制約が生じる。したがって、Cu含有量は、不可避不純物として極力低減させる必要があり、上限を0.25%に規制する。
SはMn、OはSiやAlなど、NはAlなどと結合して非金属介在物を形成する。これらは、鏡面研磨時に脱落してピンホール欠陥の原因になりうるため、鏡面性を高める上での障害となる。また、腐食環境下での錆の起点ともなりうる。これらの理由から、上記した非金属介在物はできるだけ少なくするのが望ましく、そのためには、S、O、Nの含有量を極力低減させることが必要である。このため、S、O、Nの上限は、それぞれ0.002%、0.0015%、0.01%とする。
MoとWは、溶体化処理後の冷却時あるいは時効処理時に微細な炭化物を形成し、硬さ向上の役割を果たすが、過剰に添加すると靱性の低下をもたらすことから、上限及び下限を定めることが必要である。ここでWは、Moに対して質量%でほぼ倍の量で同様の効果が認められることから、Mo+1/2Wの計算式で、下限を0.4%、上限を1.5%に規制する。なお、上記と同様の理由で下限を0.5%、上限を1.0%とするのが望ましい。
Vは焼戻し軟化抵抗性を高めるとともに、硬質の炭化物を微細に形成して耐磨耗性を向上させる効果があるので所望により含有させることができる。ただし、多すぎると金型加工時の工具の摩耗を増加させるとともに、多量の炭化物の析出による靱性低下を招くので、0.3%以下とする。
本発明では、析出強化を目的としてM23C6型のCr系炭化物を析出させているが、析出粒子が微細なほど硬化作用が得られることから、等価円直径は70nm以下が望ましく、より望ましくは50nm以下とする。ただし、炭化物粒子の過度の微細化には体積分率の減少が伴い、これによる硬さの低下が避けられないことから、粒子径の下限値を2nmとするのが望ましい。
好適には、エレクトロスラグ再溶解法により溶製された鋳塊は必要に応じて鍛造などの加工を施し、さらに熱処理を行う。
固溶化処理は、850〜1300℃に加熱して行うことができる。時効処理温度はM23C6型Cr系炭化物による析出強化を図るため、400℃〜550℃とするのが望ましい。時効処理の時間は特に限定されるものではないが、5〜15時間を例示することができ、冷却は、10℃/時間以上の冷却速度で行うのが望ましい。
上記した熱処理によりプリハードンされた金型鋼は、良好な鏡面研磨性や耐食性、靱性を示し、かつNi量の低減及び熱処理工程の効率化を可能とする。
表1に、供試材として用意した本発明の成分範囲になる発明鋼と、本発明の成分範囲を外れた比較鋼の化学成分(残部Feおよびその他の不可避不純物)を示す。
極低S化を実現するため、鋳塊製造過程においてエレクトロスラグ再溶解法を用いた。鋳塊溶製後、鍛造により所定寸法への加工を行い、焼ならし、溶体化、時効処理を行い、硬さを約40HRCに調整した。
その際の溶体化処理条件は950℃×4時間とした。また、上述の熱処理を行った試料の硬さ及びシャルピー衝撃試験の結果も表1に示した。シャルピー衝撃試験の際は、JIS Z 2242で規定されているノッチ深さ2mmのUノッチ試験片を用い、室温にて試験を実施した。
得られた供試材のうち、発明鋼1と比較鋼1について、Ms点とMf点とを測定し、その結果を図1に示した。その結果から分かるように、オーステナイト安定化元素であるNiの低減によって発明鋼のMs点およびMf点はともに比較鋼1のそれより30℃向上した。
図3から明らかなように、等価円直径20〜30nm程度のM23C6型Cr炭化物が母相中に析出していることが確認された。
図4から分かるように、M23C6型のCr系炭化物の平均粒子径を70nm以下にすることで、目標硬さ37〜42HRCが得られた。また、50nm以下にすることで40HRC程度に調整可能であることが確認された。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.3〜2.0%、Cr:2.0〜6.0%、Ni:2.0%未満、Al:0.5%以下、B:0.001〜0.01%、MoとWを単独もしくは複合でMo+1/2W:0.4〜1.5%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ不可避不純物中でCu:0.25%以下、S:0.002%以下、O:0.0015%以下、N:0.01%以下に規制した組成を有し、鋼中に存在するM 23 C 6 型のCr系炭化物粒子の平均粒径が等価円直径で70nm以下であることを特徴とするプラスチック成形用金型鋼。
- 前記組成として、さらにV:0.3%以下を含有することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形用金型鋼。
- Ms点が420℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形用金型鋼。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック成形用金型鋼を製造する方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック成形用金型鋼の組成を有する材料に、固溶化処理を行った後、400℃〜550℃で時効処理を行うことを特徴とするプラスチック成形用金型鋼の製造方法。
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