JP2009280870A - アクスルハウジング用厚鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス成形などの熱間加工後でも高い降伏点を維持することができるアスクルハウジング用厚鋼板の提供
【課題手段】 質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.70〜1.60%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.060%、N:0.006%以下、Nb:0.050%以下、V:0.020〜0.080%およびTi:0.003〜0.030%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の式(1)から求められるCeqが0.35%以上0.55%以下であることを特徴とするアクスルハウジング用厚鋼板。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
但し、上記式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、600℃〜1000℃に加熱し、その後塑性加工を行う熱間加工を受けても、高い降伏点を維持することのできるアクスルハウジング用厚鋼板に関する。なお、厚鋼板とは6mm以上の板厚を有する鋼板を意味する。
近年、トラックの軽量化および疲労強度の改善への要求が益々強くなっており、トラックのアクスルハウジングに用いられる厚鋼板には、更に高い降伏点が求められている。このため、アクスルハウジング用厚鋼板は、TMCP(Thermo−mechanical control process:熱加工制御)技術を用いて製造される。TMCPとは、鋼片の加熱温度、圧延温度および圧下量を適性に制御することにより鋼の結晶組織を微細化し、機械的性質を改善する制御圧延と、その後の制御冷却を行う製造方法である。しかしながら、アクスルハウジングの成形時には、熱間加工が施される場合があり、この場合には、成型後の強度が変化するという問題がある。
引用文献1には、熱間加工後にも高い降伏点を維持できる鋼材を得る方法として、所定の化学組成を有し、かつ、Mn+Cr/3.1+(Cu+Ni)/1.4≧2.5%を満たす鋼板を750〜1300℃に昇温させて10〜6000秒間維持した後、300℃以上の温度にて2回以上のプレス成形を行う方法が開示されている。この方法によれば、面積率で60%以上のマルテンサイト組織を得て、鋼材の高強度化を図ることができるとしている。
特開2006−212663公報
特許文献1に開示された方法は、加工時に高強度組織が生成するような合金設計を行う方法であるが、この方法は、冷却速度の遅い厚鋼板を考慮したものではない。例えば、合金元素を多量に添加することにより、厚鋼板への適用可能であると考えられるが、合金コストの上昇および溶接性の低下を招くため、採用できない。
本発明は、このような現状の問題を解決するべくなされたものであり、熱間加工を伴う成形を受けた後であっても、高強度を維持でき、アクスルハウジングの疲労強度の上昇および軽量化ができるアクスルハウジング用厚鋼板を提供することを目的とする。
鋼材が熱間加工を受けると、焼戻し処理と同様の効果によって、転位が回復し、強度が低下する。従って、鋼材の結晶組織をマルテンサイトなどの高強度組織とするべきではない。また、熱間加工時にAc3点以上に加熱される場合には、被圧延材の結晶粒径は、加熱温度に依存しやすく、結晶粒の細粒化による強度上昇にも期待できない。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋼材の結晶組織をフェライト・パーライト組織とすることを前提とし、更に、Mnに代表される固溶強化元素と、Vに代表される析出硬化元素の適正量添加することにより、析出硬化および固溶強化の両方の機能を作用させ、鋼材の強度を上昇させる方法を検討した。
しかし、多量の固溶強化元素が添加されていると、ベイナイト組織の生成を促し、応力―ひずみ曲線の形状がラウンド型となることがある。このような場合、明確な上降伏点が見られなくなり、引張強さが上昇する一方で降伏点は低下するため、固溶強化元素の添加量については注意する必要がある。本発明者らは、このような観点から、さらに鋭意研究を行い、Ceqを抑えることにより、熱間加工後でも高い降伏点を維持でき、アクスルハウジング用厚鋼板として最適な厚鋼板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の(1)および(2)に示すアクスルハウジング用厚鋼板を要旨とする。
(1)質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.70〜1.60%、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.005〜0.060%、
N:0.006%以下、
Nb:0.050%以下、
V:0.020〜0.080%および
Ti:0.003〜0.030%
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の式(1)から求められるCeqが0.35%以上0.55%以下であるアクスルハウジング用厚鋼板。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
但し、上記式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
(2)さらに、質量%で、Cr:0.60%以下、Mo:0.20%以下、Cu:0.20%およびNi:0.20%以下の中から選択される1種以上を含有する上記(1)に記載のアクスルハウジング用厚鋼板。
本発明によれば、熱間加工後でも高い降伏点を維持できるため、アクスルハウジングの疲労強度を上昇できると共に、軽量化に寄与する。ひいては、アクスルハウジングの長寿命化および軽量化によるトラックの燃費向上にも寄与する。また、熱間加工方法に対する強度依存が小さいため、アクスルハウジングの加工時に特段の注意を要しないという利点もある。
本発明の特徴は、析出硬化元素を適正量添加しながら、固溶強化元素の添加量を適正に抑えることにある。本発明に係るアクスルハウジング用厚鋼板における各元素の含有量の適正な範囲とその根拠について以下に説明する。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.25%
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。その含有量が0.10%未満では、鋼の強度を確保することが難しい。一方、その含有量が0.25%を超えると、ベイナイトの生成を促進させるとともに、靭性を低下させる。従って、C含有量は、0.10〜0.25%とした。より高い降伏点を得るためには、Cの含有量を0.13〜0.20%とするのが好ましい。
Si:0.05〜0.50%
Siは、比較的安価に強度を上げることができる効果を有し、一方で、ベイナイトの生成を促進させる効果も小さい。但し、その含有量が0.05%未満では、強度上昇効果を得にくい。一方、その含有量が0.50%を超えると、スケール疵が発生し易くなり、鋼板の外観を損ねる。従って、Si含有量は、0.05%〜0.50%とした。
Mn:0.70〜1.60%
Mnは、安価に強度を向上させる元素である。その効果は、Mn含有量が0.70%以上で発揮されるが、1.60%を超えると、ベイナイトの生成を促進させ、かえって降伏点を低下させる。従って、Mn含有量は、0.70〜1.60%とした。
P:0.025%以下
Pは、通常、鋼中に不純物として存在する元素であり、鋼の靱性を害するので、その含有量は極力低い方がよい。通常の工業的な精錬方法でPを低減できる範囲として、P含有量を0.025%以下に制限することとした。
S:0.010%以下
Sも鋼中に不純物として存在する元素であり、鋼の靱性を害する元素である。また、Sは、連続鋳造材においては中心偏析を助長し2枚割れを起こしやすくさせる元素でもある。従って、S含有量は、極力低いのがよく、0.010%以下に制限することとした。
Al:0.005〜0.060%
Alは、脱酸材として用いられると共に、AlNを生成してNの悪影響を抑えるのに有効な元素である。これらの効果は、0.005%以上で発揮される。一方、AlNの生成は、Al含有量を0.060%以上としても飽和し、コスト上昇を招く。従って、Al含有量は、0.005%〜0.060%とした。
N:0.006%以下
Nは、主に大気中から不可避的に侵入する不純物元素である。Nには、靭性を低下させる効果があるため、その含有量は、0.006%以下に制限することとした。
Nb:0.050%以下
Nbは、炭窒化物を形成して、熱間加工の際の加熱時にピンニング効果によって結晶粒を微細化させることができ、強度の上昇に寄与する元素である。しかし、0.050%を超えて含有させると、溶接性および靭性を低下させる。従って、Nbの含有量は、0.050%以下とした。上記の強度上昇効果は、Nbが微量でも含まれていれば発揮されるが、0.015%以上含まれる場合に顕著となる。Nbの好ましい上限は、0.035%である。
V:0.020〜0.080%
Vは、析出物を生成して鋼の強度を上昇させることができる元素であり、ベイナイトの生成を促進する効果も小さい。また、熱間加工時の加熱温度でも、固溶して析出される元素であるため、本発明において非常に重要な元素である。これらの効果は、その含有量が0.020%以上の場合に発揮される。一方、その含有量が0.080%を超えると、上記の効果は飽和し、コストの上昇を招く。従って、Vの含有量は、0.020%〜0.080%とした。
Ti:0.003〜0.030%
TiもNbと同様、オーステナイト粒の粗大化を抑制させ、細粒化を促す効果を有し、強度上昇に寄与する元素である。その効果は、0.003%未満の含有量では得られない。一方、その含有量が0.030%を超えると、靭性の低下を招く。従って、Tiの含有量は、0.003%〜0.030%とした。Tiの好ましい下限は0.005%である。また、Tiの好ましい上限は0.020%である。
本発明に係るアクスルハウジング用厚鋼板は、例えば、上記の各元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなるものであってもよいし、強度をさらに向上させるために、Cr:0.60%以下、Mo:0.20%以下、Cu:0.20%およびNi:0.20%以下の中から選択される1種以上を含有させてもよい。
これらの元素は、フェライトに固溶して、強度の上昇に寄与する元素である。この効果は、それぞれ、Crは0.05%以上、Moは0.05%以上、Cuは0.10%以上、Niは0.05%以上含有させた場合に顕著となる。しかし、いずれの元素も焼入れ性を上昇させる効果があり、過度に添加すると、熱間加工後の空冷時にベイナイトの生成を招く。ベイナイトの生成は、降伏点の低下を招く恐れがあるため、添加に際しては注意が必要である。従って、Cr、Mo、CuおよびNiの中から選択される1種以上を含有させる場合には、それぞれの含有量を0.60%以下、0.20%以下、0.20%および0.20%以下とするのが望ましい。
Ceq:0.35%以上0.55%以下
上記化学組成を満足しつつ、下記式(1)から求められるCeqを0.55%以下に抑えることで、ベイナイト生成量を抑えることができ、安定して高い降伏点を得ることができる。一方、Ceqが0.35%未満となると、固溶強化による強度上昇が得られず、降伏点、引張強さともに低下する。従って、Ceqは、0.35%以上0.55%以下の範囲内とする必要がある。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
本発明のアクスルハウジング用厚鋼板の製造方法については、特に制約はなく、上記化学組成を有する鋼を通常の方法により鋳込んだ後、熱間圧延して鋼板とすればよい。鋼材の鋳込み方法についても、特に制限はなく、鋼塊法、連続鋳造法のいずれでもよい。また、熱間圧延方法についても特に制約はないが、例えば、加熱温度を1050℃〜1200℃、圧延終了温度を700℃〜850℃とすることが望ましい。
これは、加熱温度が低過ぎると、炭窒物が固溶せず、粗大な介在物となって結晶粒の微細化が望めないことがあるからである。また、熱間加工時の再加熱温度によっては、鋼板製造時の結晶粒径が加工終了後にも引継がれる場合があり、このような場合に備えて鋼板製造時の結晶粒を微細化するためには、圧延終了温度を700℃〜850℃とする制御圧延を行うことが有効である。
表1に示す種々の化学組成を有する鋼を真空溶解炉にて50kgの鋼塊に溶製し、1140℃加熱後750℃の仕上げ温度で圧延を行い、厚さ14mm、幅220mmの鋼板に圧延した。その後、850℃に加熱後、プレス成形によってアクスルハウジングの形状に加工した。JIS Z 2201に記載のJIS 5号試験片を用い、プレス成形による熱間加工の前後で引張試験を行い、降伏応力(降伏点)および引張強さを求めた。その結果を表2に示す。
なお、アクスルハウジング向けの鋼材として十分な強度を有することの指標として、プレス成形による熱間加工後における降伏点が420MPaであることを良好な範囲であるとして判断した。
Figure 2009280870
Figure 2009280870
表1および表2に示すように、本発明で規定される化学組成を満足する本発明例No.1〜18では、プレス成形による熱間加工後でも420MPa以上の降伏応力を確保することができた。これらの例では、いずれも、降伏点の低下量が30MPa以下であり、熱間加工を実施しても降伏点は大きく低下しなかった。
一方、それぞれC、SiおよびMnの含有量が本発明で規定される範囲を上回る比較例No.19、20および21では、ベイナイトの生成が過剰となり、降伏点低下量が大きくなった。特に、比較例No.20および21については、熱間加工前の降伏点はそれぞれ459MPa、486MPaと大きいにもかかわらず、降伏点の低下量が大きく、基準とする熱間加工後のYPが420MPaを下回った。
それぞれV、Nbの含有量が本発明で規定される範囲を上回る比較例No.22および23では、降伏点の低下量は小さいものの、熱間加工前の降伏点がそもそも低く、熱間加工後の降伏点も低い値となった。これは、析出硬化の作用が飽和しており、またCeqが低く固溶強化による強度上昇がなされていないためであると考えられる。
Tiの含有量が本発明で規定される範囲を上回り、かつVを含有しない比較例No.24については、Tiの効果により、熱間加工前の強度は大きくなったが、Vが添加されていないため析出硬化が十分でなく、熱間加工による降伏点の低下が著しくなった。その結果、熱間加工後の降伏点は低い値となった。
Al含有量が本発明で規定される範囲を上回り、Ceqも低い比較例No.25については、熱間加工前の降伏点が低く、熱間加工後の降伏点も低い値となった。
本発明に係るアクスルハウジング用厚鋼板は、熱間加工を行っても十分な降伏点を確保することができるため、加工条件に大きく依存せず安定した品質のアクスルハウジングの製造を可能にする。こうした高強度のアクスルハウジング用厚鋼板を用いることで、トラック用部材の薄肉、軽量化が図ることが可能となる。更に強度上昇は疲労限の上昇にも繋がるため、耐久性の向上も期待できる。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.25%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.70〜1.60%、
    P:0.025%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.005〜0.060%、
    N:0.006%以下、
    Nb:0.050%以下、
    V:0.020〜0.080%および
    Ti:0.003〜0.030%
    を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の式(1)から求められるCeqが0.35%以上0.55%以下であることを特徴とするアクスルハウジング用厚鋼板。
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
    但し、上記式(1)中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. さらに、質量%で、Cr:0.60%以下、Mo:0.20%以下、Cu:0.20%およびNi:0.20%以下の中から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアクスルハウジング用厚鋼板。
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