本発明の一実施形態を、図1〜9を参照して説明する。なお、図4、及び、図5では、説明の便宜上、インナーシェル62、ランバーサポータ63、及び、背クッション64を省略したものを示している。図9では、背クッション64を省略したものを示している。
この実施形態は、本発明を、オフィス等において好適に使用される事務用回転椅子である椅子Aに適用したものである。
椅子Aは、脚1と、脚1の上端に水平旋回可能に取り付けられた支持基部2と、前部を支持基部2に支持させた座受3と、座受3に下部を取り付けた座4と、下端部を支持基部2に回転可能に支持させるとともに座受3の後部を回転可能に支持する背支桿5と、背支桿5に取り付けた背凭れ6とを具備してなる。座4及び背凭れ6は、シンクロロッキング可能に支持基部2及び背支桿5に支持されている。以下、詳述する。
脚1は、下端にキャスタを備えた複数本の脚羽根11と、脚羽根11の上端部が集合する部位から起立する脚支柱12とを備えている。
支持基部2は、脚支柱12に支持された金属製の支持基部本体(図示せず)を主体に構成されている。支持基部2は、支持基部本体を覆う支持基部カバー21を備えており、支持基部カバー21が装着された状態では、支持基部本体が外部から視認できないようになっている。
座受3は、支持基部2の上方に配されたものである。座受3は、前部が支持基部2に枢着されており、座受3の後部が背支桿5の基端部近傍に枢着されている。
座4は、着座者Pの荷重を均等に支持する構造部材としての役割を担う座シェル41と、座シェル41の上に配された座クッション42とを備えてなるものである。座シェル41は、座受3の上側に配され、座受3に対して前後方向に一定範囲でスライド移動できるように構成されている。座シェル41と座クッション42は図示しない表皮材で覆われている。
背支桿5は、背凭れ6を支持するものであり、背凭れ6の左右方向中間部における上部及び下部に接続している。背支桿5における背凭れ6の後側に位置する部位は、背面視において背凭れ6の左右方向中間部に位置している。背支桿5における背凭れ6の上側との接続部分と背支桿5における背凭れ6の下側との接続部分との間の部位は、側面視において背凭れ6と離間している。
背支桿5は、支持基部2と接続する下部背フレーム51と、下部背フレーム51に対して回動可能に支持された上部背フレーム52とを備えている。下部背フレーム51は、下端部を支持基部2に回転可能に支持させている。下部背フレーム51は、下端部の近傍において座受3の後端部を支持している。下部背フレーム51は、上端部において上部背フレーム52を前後方向に回転可能に支持するとともに背凭れ6の下端部と接続している。上部背フレーム52は、上端部を背凭れ6の上部に接続している。
次いで、本実施形態における背凭れ6について説明する。
背凭れ6は、着座者Pの腰部を押し出して支持し得る押出位置(p)とこの押出位置(p)から退避した退避位置(e)との間で左右方向にスライド移動可能な左右一対の押出部材L、R、すなわち、左の押出部材L及び右の押出部材Rを備えている。左右の押出部材L、Rは、これら左右の押出部材L、Rを支持する支持体であるアウターシェル61に対して左右方向にスライド移動可能に支持されている。左右の押出部材L、Rは、これら左右の押出部材L、Rの前側に配されたランバーサポータ63を後方から直接的に押圧するようにしている。しかして、左右の押出部材L、Rとランバーサポータ63を主体にして、着座者Pの腰部を押し出して支持し得るランバーサポート部が構成されている。この椅子Aにおけるランバーサポート度合い、すなわち、着座者Pの腰部に対する押し出し度合いは、左右の押出部材L、Rの左右方向の位置を変更することによって任意に調整することができるようになっている。以下、詳述する。
背凭れ6は、樹脂により形成された支持体であるアウターシェル61と、アウターシェル61の前側に配された樹脂により形成されたランバーサポータ保持体であるインナーシェル62と、アウターシェル61に対して相対移動可能に取り付けられた左右の押出部材L、Rと、左右の押出部材L、Rの前側に配された着座者Pの腰部を支持するランバーサポータ63と、ランバーサポータ63を支持するべくインナーシェル62とランバーサポータ63との間に介設された連結部材65と、インナーシェル62、ランバーサポータ63、及び連結部材65の前側に配された背クッション64とを備えたものである。本実施形態では、ランバーサポータ63、連結部材65、及び、インナーシェル62は、合成樹脂により一体に形成されている。ランバーサポータ63は、アウターシェル61に係わり合う支持体係合部たる被取付部622が形成されたインナーシェル62に、連結部材65を介して保持されている。インナーシェル62と背クッション64は図示しない表皮材で覆われている。
アウターシェル61は、着座者Pの背を支持するためのものである。また、アウターシェル61は、左右の押出部材L、Rを移動可能に支持する支持体を構成するものである。アウターシェル61は、着座者Pの背を支持し得る大きさを有した樹脂製のもので、側面視において前方に向けて凸となる形状、すなわち、くの字状に形成されている。アウターシェル61は、平面視において後方に向けて凸となるように湾曲した形状をなしている。アウターシェル61は、側面視くの字状に前方に屈曲している部位に、背面視において左右方向に延びる2本のスリット611が上下に平行に形成されている。すなわち、側面視くの字状に屈曲している部位における最も前方に突出する頂部を挟むようにして上下にスリット611が略平行に設けられている。なお、くの字状に屈曲している部位は、左右方向に連続して設けられている。この椅子Aでは、スリット611に案内されて左右の押出部材L、Rが、相互に独立して左右方向に移動し得るように構成されている。左右の押出部材L、Rは、上下2本のスリット611と係わり合い、スリット611間の帯状の部位に跨るように取り付けられている。
アウターシェル61の中間部、すなわち、アウターシェル61における上下のスリット611によって形成された帯状部分の中央部には、左右の押出部材L、Rの内方へのスライド位置を規制するための内ストッパ612が設けられている。内ストッパ612は、アウターシェル61に突設されたもので、この実施形態では樹脂製の起立片により構成されている。内ストッパ612はアウターシェル61に一体に形成されている。内ストッパ612は、押出部材L、Rにおける押出部7の内方端に当接し得るようになっている。内ストッパ612の存在によって、左右の押出部材L、Rは、それぞれが押出位置(p)に位置する状態でも、一定間隔離れて位置するように設定されている。
アウターシェル61は、上部に樹脂の弾性変形を惹起し易くするための複数の貫通孔を備えている。アウターシェル61は、上端部及び下端部のそれぞれにインナーシェル62を取り付けるための取付部613を複数備えている。取付部613は、インナーシェル62の支持体係合部である被取付部622と係わり合い、インナーシェル62がアウターシェル61に対して取り付けられるようになっている。アウターシェル61の左右側縁部には、左右の押出部材L、Rの外方へのスライド位置を規制するための外ストッパ614が設けられている。外ストッパ614は、アウターシェル61に突設されたもので、この実施形態では、樹脂製の起立片により構成されている。外ストッパ614は、アウターシェル61に一体に形成されている。外ストッパ614は、押出部材L、Rに形成された外方端である当接部73に当接し得るようになっている。
アウターシェル61の中間部、すなわちアウターシェル61における上下のスリット611によって形成された帯状部分には、左右方向に延びるガイドレール615が正面視における左側部分と右側部分にそれぞれ上下に2本平行に形成されている。ガイドレール615は、押出部材L、Rに形成された係合凹部74と係わり合い、ガイドレール615と係合凹部74とが協働して左右方向にスライド移動する押出部材L、Rの姿勢を所期の姿勢に保持する機能を奏するものである。換言すれば、背凭れ6は、アウターシェル61と押出部材L、Rとの間に、アウターシェル61に対する押出部材L、Rの姿勢を保持するための姿勢保持手段が設けられている。この実施形態では、姿勢保持手段が、ガイドレール615と係合凹部74を主体に構成されている。
内ストッパ612及び外ストッパ614により規制された左右の押出部材L、Rの可動範囲は、アウターシェル61の左右方向の中央を仮想中心線として略対称に設定されている。
インナーシェル62は、ランバーサポータ63を保持するランバーサポータ保持体を構成するものであり、アウターシェル61と近似した外縁形状をなす樹脂製のものである。インナーシェル62は、着座者Pの腰部に対応する位置に略矩形状に開口する開口部623を有している。インナーシェル62に形成された開口部623は、正面視において、退避位置(e)にある左右の押出部材L、Rが当該開口部623内部に位置し得る左右開口幅を備えている。開口部623は、正面視において、左右の押出部材L、Rが当該開口部623内部に位置し得る上下開口幅を備えている。この実施形態では、開口部623内にランバーサポータ63が連結部材65を介して配されている。換言すれば、ランバーサポータ63は、インナーシェル62の中間部における左右の押出部材L、Rによって前後方向に押し出され得る部分に配されている。インナーシェル62は、上端部及び下端部にアウターシェル61の取付部613と係わり合う支持体係合部である被取付部622を備えている。すなわち、被取付部622は、ランバーサポータ63よりも上側及び下側の位置に配されている。
左右の押出部材L、Rは、樹脂製のものであり、ランバーサポータ63を後方から押圧するものである。押出部材L、Rは、押出位置(p)と退避位置(e)との間で漸次位置変更し得るように構成されている。左右の押出部材L、Rは、アウターシェル61の前側に位置する押出部7と、アウターシェル61の後側に位置する操作部8と、これら押出部7と操作部8とを連結するための連結部9とを備えている。
押出部7は、平面視において内方端側から外方端側に向かって漸次肉厚になる形状部分を有している。換言すれば、押出部7は、くさび状に形成された部分を有しており、平面視において外側から内側に向かって薄肉になるように形成されている。詳述すれば、押出部7は、平面視において内方端縁から外側方に向かって漸次肉厚になる形状部分を主体に構成された内側部分7uと、内側部分7uの外側に位置し平面視において内側部分7uよりも肉厚の部位を有する外側部分7sとを備えている。内側部分7uは、前側にアウターシェル61の前面よりも内側に向かって傾斜した傾斜面kを備えている。傾斜面kは、アウターシェル61の前面に対して10°〜30°の範囲で傾斜しており、この実施形態では内側から外側に向かって次第にアウターシェル61の前面に対して大きく傾斜するように設定されている。内側部分7uは、内方端部の前面側を断面視略四分の一円弧状に形成し、傾斜面kに連続させている。外側部分7sは、前側に内側部分7uの傾斜面kと連続した曲面qを備えている。すなわち、押出部7は内側の前面を傾斜面kとするとともに外側の前面を曲面qとした平面視山型に隆起した形状をなしている。
押出部7は、背面側に向かって開放され上下方向中間部に後述するラック部c1を配し得るための空間を形成した溝71と、溝71内において後方に向けて突出して設けられラック部c1の歯に係わり合う係合部72と、アウターシェル61のガイドレール615と係わり合う係合凹部74を備えている。溝71は左右方向に延びるように形成されている。換言すれば、押出部7は、中間部分に正面視略矩形状をなす貫通孔を有し、この貫通孔を形成している対向する左右の内側部間に係合部72を有した帯状部材を架設している。係合部72は、押出部7の上下方向の略中央部に位置し、帯状部材を主体に構成され、弾性変形により前後方向に突没変位し得るようになっている。係合部72は、後述する節度機構Cを構成するものであり、ラック部c1に対して節度係合できるようになっている。係合凹部74は、押出部7における溝71の上下に形成されたもので、左右方向に延びるように形成されている。係合凹部74は、アウターシェル61の前面にレール状に突設されたガイドレール615と係わり合うようになっている。
操作部8は、アウターシェル61の後側に位置するもので、上下方向に延びる棒状部分81と、棒状部分81の基端から外方に向かって延出した外延部分82とを備えている。棒状部分81と外延部分82とは樹脂により一体に形成されている。外延部分82はアウターシェル61の後面に沿うように配され背面視において略半円形状をなしている。操作部8は、使用者が把持する把持部としての機能を奏し得るように構成されている。使用者は、操作部8を把持してスライド操作することにより押出部7の左右方向の位置を任意に変更することができるようになっている。
連結部9は、柱状の外観をなすのもので、押出部7と操作部8とを連結するものである。この実施形態では、連結部9は、略四角柱状をなしており操作部8と一体に形成されている。連結部9は、操作部8の前側に前方に突出して形成されており、アウターシェル61のスリット611を通過する位置に配されている。連結部9の先端は、押出部7に接続し、連結部9と押出部7とは、ビスvにより螺着される。
この椅子Aは、押出部材L、Rを所望の位置に節度停止、すなわち、クリックストップさせるための節度機構Cを設けている。より具体的に言えば、椅子Aは、左右の押出部材L、Rを、アウターシェル61の所定位置に節度停止するための節度機構Cを設けている。節度機構Cは、アウターシェル61の前面に形成された複数の歯によって構成されたラック部c1と、押出部材L、Rに設けられた係合部72とを主体に構成されている。ラック部c1を構成する複数の歯は、アウターシェル61に一体に設けられている。
ランバーサポータ63は、樹脂により形成された略板状のものである。ランバーサポータ63は、左右方向にスライド移動し得る押出部材L、Rによって後方から押し出されることにより、略全体すなわち、直接的に押し出される部位及びその周囲の部位が前後方向に移動され得るように構成されている。本実施形態におけるランバーサポータ63は、連結部材65を介してインナーシェル62と一体に形成されている。すなわち、ランバーサポータ63と連結部材65とインナーシェル62は、合成樹脂により一体に形成されている。
ランバーサポータ63とインナーシェル62との間には、接続部材65が存在する部分以外の略全体に亘ってスリット621が形成されており、当該スリット621によってインナーシェル62とランバーサポータ63とを離れさせている。しかして、ランバーサポータ63のインナーシェル62に対する相対位置が、ランバーサポータ63を押出する押出部材L、Rの左右スライド移動に伴って漸次変更され得るように構成されている。具体的には、スリット612によってインナーシェル62と離反したランバーサポータ63は、押出部材L、Rに押されることにより、インナーシェル62に対して前後方向に突没進退し得るように構成されている。ランバーサポータ63のインナーシェル62に対する相対位置の変化、すなわち、ランバーサポータ63における突没方向の変位は、主として直接的に押出部材L、Rによって押し出されるランバーサポータ63が前後動するとともにランバーサポータ63に連結された連結部材65が主体的に弾性変形することによって惹起されるようになっている。換言すれば、押出部材L、Rによって押し出されるランバーサポータ63は、弾性変形をし易く構成された連結部材65の弾性変形により、全体的に前方に押し出され易く構成されている。
ランバーサポータ63は、左右方向中央部の厚み寸法W1が左右側部の厚み寸法W2よりも長く設定されている。換言すればランバーサポータ63は、左右方向中央部の厚みW1が左右両側部の厚みW2よりも厚く形成されている。ランバーサポータ63の左右側部には、それぞれ上下二箇所に外方に向かって開放された切欠部631が形成されている。
ランバーサポータ63とインナーシェル62との間、具体的には、ランバーサポータ63の左右両側部とインナーシェル62の開口部623における左右の開口端縁との間には、退避位置(e)に位置する押出部材L、Rによる着座者Pの腰部に対する押し出しを抑制するための抑制空間spが形成されている。抑制空間spは、ランバーサポータ63とインナーシェル62の間に形成された上下に延びる比較的幅広のスリット621を主体に構成されている。抑制空間spには、退避位置(e)にある押出部材L、Rの外側部分7sが位置するように設定されている。
連結部材65は、インナーシェル62にランバーサポータ63を前後動可能に支持させるべくインナーシェル62とランバーサポータ63との間に介在し両者を連結するものである。連結部材65は、ランバーサポータ63とインナーシェル62との間に複数介設されている。この実施形態では、上側に2つ、下側に2つ、合わせて4つの連結部材65が、ランバーサポータ63とインナーシェル62との間に介在している。連結部材65は、一端側である外側端部65aを開口部623の側縁部623aに接続するとともに他端側である内側端部65bをランバーサポータ63の上縁部63a又は下縁部63bに接続している。ランバーサポータ63の上側の左右にそれぞれ配された連結部材65は、外側端部65aを開口部623の側縁部623aにおける上部位置に接続するとともに内側端部65bをランバーサポータ63の左右方向中央部における上縁部63aに接続している。ランバーサポータ63の下側の左右にそれぞれ配された連結部材65は、外側端部65aを開口部623の側縁部623aにおける下部位置に接続するとともに内側端部65bをランバーサポータ63の左右方向中央部における下縁部63bに接続している。
連結部材65は、帯状に形成された部位を主体に構成されている。この実施形態では、連結部材65が、帯状をなし左右方向に直線状に延びる第一の連結部材構成要素651と、第一の連結部材構成要素651の内側端から連続し当該第一の連結部材構成要素651の延びる方向と異なる方向、すなわち、第一の連結部材構成要素651の延びる左右方向と略直角の方向である上下方向に延びた帯状の第二の連結部材構成要素652とを備えている。第一の連結部材構成要素651の長手方向の寸法は、第二の連結部材構成要素652の寸法よりも長く設定されている。第一の連結部材構成要素651の長手方向の寸法は、弾性変形を惹起させ易くするべく比較的長尺に設定され、具体的には、短手方向の寸法(幅寸法)や厚み寸法を勘案した上で約3cm〜20cmの寸法に設定される。この実施形態では、連結部材65の厚み寸法は、ランバーサポータ63の左右方向中央部の厚み寸法W1よりも薄く設定されており、前後面側におけるランバーサポータ63と連結部材65との境界部分には厚み寸法差に伴う段差が形成されている。
背クッション64は、スポンジ状の背クッション本体の外面に張地を張り設けた通常のものである。背クッション64はインナーシェル62の前面に止着されている。なお、この実施形態では、ランバーサポータ63を一体に設けたインナーシェル62と背クッション64とが接着剤により相互に接着されておりこれらを主体にしてユニット体を構成しており、当該ユニット体をアウターシェル61に対して着脱できるようになっている。
次いで、押出部材L、Rの作動について説明する。
左右の押出部材L、Rは、支持体、すなわち、アウターシェル61に支持されており、アウターシェル61に対して左右方向に移動可能に構成されている。使用者は、着座状態及び着座状態から離れた状態の何れの状態でも、操作部8に腕を伸ばし、操作部8を把持して、アウターシェル61の所望の位置に押出部材L、Rを移動させることができるようになっている。
左右の押出部材L、Rは、通常の着座位置に着座した着座者Pの腰部の中央部分を押し出して支持し得る押出位置(p)と、押出位置(p)から外側に退避して着座者Pの腰部の側部或いは側部近傍に位置する退避位置(s)との間で左右方向にスライド移動可能に構成されている。
押出部材L、Rの押出位置(p)は、アウターシェル61の左右方向中間部側の位置であり、押出部7の内方端縁が内ストッパ612に当接し、押出部材L、Rの内方への移動が阻止された位置に設定されている。図7に示すように、押出部材L、Rが、押出位置(p)にある場合は、主として押出部7における外側部分7sの曲面qがランバーサポータ63の左右方向中間部に接し、インナーシェル62に連結部材65を介して支持されたランバーサポータ63を全体的に前方に押圧する。
この際、ランバーサポータ63は、押出位置(p)にある左右の押出部材L、Rの外側部分7sによって前方に押圧され、中央部分全体が前方に移動することになる。つまり、ランバーサポータ63が左右の押出部材L、Rによって直接的に押されていない中間部分、すなわち、ランバーサポータ63における左右の押出部材L、Rと接する部分間の部位は大きく伸長することなく、前方に押し出されることになる。ランバーサポータ63は、比較的長尺な帯状をなす連結部材65を介してインナーシェル62に支持されているため、インナーシェル62に対して前後方向に突没変位し易く構成されている。すなわち、連結部材65がランバーサポータ63の前後動に対応して弾性変形し易く構成されているため、押出部材L、Rと係わり合うランバーサポータ63は、それ自体がインナーシェル62に引っ張られて過大に変形してしまうことが抑制され、インナーシェル62に対して相対変位し易くなっている。
この実施形態では、ランバーサポータ63の左右方向中央部の厚み寸法W1は、ランバーサポータ63の左右側部の厚み寸法W2よりも長く設定されている。このため、左右の押出部材L、Rによって直接的に押されない部分であるランバーサポータ63の中間部分は、着座者Pの荷重を受けても変形が抑制される構造となっており、当該中間部分は左右の押出部材L、Rの押し出しによって好適に前方に押し出されるように構成されている。
しかして、押出部材L、Rが押出位置(p)に位置する場合は、着座状態にある着座者Pの荷重を受けて、着座者Pの腰部の中央に一定の押圧力が付与され、いわゆる腰部を押圧して支持するランバーサポート機能を奏することになる。この実施形態では、押出位置(p)にある押出部材L、Rがランバーサポータ63の比較的厚肉である左右方向中央部を押圧することになるため、ランバーサポータ63の前面をより前側に位置させることができる。このため、着座者Pの腰部に対して好適な押圧力を付与することができるものとなる。
押出部材L、Rの退避位置(e)は、アウターシェル61の左右両側の位置であり、押出部7の外方端縁に設けられた当接部73が外ストッパ614に当接し、押出部材L、Rの外方への移動が阻止された位置に設定されている。図6に示すように、押出部材L、Rが、退避位置(e)にある場合は、押出部7における内側部分7uの傾斜面kがランバーサポータ63の左右両側部に面的に接し、ランバーサポータ63を前方に押圧する。この際、ランバーサポータ63は、退避位置(e)にある左右の押出部材L、Rの内側部分7uによって前方に押圧されるが、左右両側部分が前方に変位する一方、中央部分全体は着座者Pの荷重に伴って後方すなわちアウターシェルに近接した位置にある。
この実施形態では、ランバーサポータ63とインナーシェル62との間、より具体的には、ランバーサポータ63の左右側部とインナーシェル62の開口部623の側縁部623である開口端縁との間には、退避位置(e)に位置する押出部材L、Rによる着座者Pの腰部に対する押し出しを抑制するための抑制空間spが形成されている。抑制空間spには、退避位置(e)にある押出部材L、Rの外側部分7sが位置するようになっている。退避位置(e)にある押出部材L、Rの外側部分7sは、背クッション64に直接的に係わり合うことになり、押出部材L、Rの外側部分7sは、背クッション64を前方に殆ど押し出すことなく、背クッション64内に埋まり込んだ状態となる。
しかして、押出部材L、Rが退避位置(e)に位置する場合は、着座状態にある着座者Pの腰部の中央には、一定の押圧力が付与されにくいものとなり、いわゆる腰部を押圧して支持するランバーサポート機能を発揮し難いことになる。ここで、「退避位置(e)」とは、着座者Pの腰部に対して押圧力を付与しない位置に限定されるものではなく、一定の押圧力を付与し得る位置であってもよいのはもちろんのことである。
なお、本実施形態では、背凭れ6が、背面視における背凭れ6の中央部に配された一本の柱状体をなす背支桿5により支持されているため、背凭れ6が着座者Pに追従して回動し易く構成されている。すなわち、背凭れ6の左右両側部が、背支桿6との接続部位を支点にして前後動し易く構成されている。このため、押出部材L、Rが退避位置(e)に位置する場合には、背凭れ6に支持されている着座者Pの側部側を、背凭れ6の動きに対応して好適に支持し得るサイドサポート機能を有効に発揮し得るものとなっている。
このように、椅子Aは、押出部材L、Rを、押出位置(p)と退避位置(e)との間で、任意の位置に配置することにより、着座者Pの腰部に対する押出度合いを多様に変化させることができるようになっている。換言すれば、背凭れ6は、いわゆるランバーサポート効果を段階的に変化させることができるように構成されている。つまり、左右の押出部材L、Rがそれぞれ押出位置(p)に位置する場合は最も着座者Pに対して腰部に対するサポート力を感じさせるものとなり、左右の押出部材L、Rが中央よりに位置する押出位置(p)から外側よりに位置する退避位置(e)側に向かって移動するにつれて着座者Pに対して腰部へのサポート力を感じさせないものとなる。この実施形態では、左右の押出部材L、Rはそれぞれ独立して移動することができるため、着座者Pは、任意の位置に左右の押出部材L、Rをそれぞれ別個に位置設定し、腰部に対する所望のサポート力を得ることができることになる。
押出部材L、Rが、押出位置(p)と退避位置(e)との間で移動し得る手動による操作は、押出部7におけるランバーサポータ63との摺接を好適にする構成により、円滑に行うことができる。すなわち、押出部材L、Rを内側に向かって操作する場合には、ランバーサポータ63の背面に、押出部材L、Rの傾斜面kが摺接することになるため、操作の負荷が抑制されやすいものとなっている。つまり、押出部材L、Rの傾斜面kがランバーサポータ63を前側に向かって徐々に無理なく案内できるようになっている。他方、押出部材L、Rを外側に向かって操作する場合は、ランバーサポータ63の背面に押出部材L、Rの曲面qが摺接することになるため、ランバーサポータ63の背面に引っ掛かる等して操作の負荷が増大することが抑制されるものとなる。
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Aは、支持体であるアウターシェル61に支持され着座者Pの腰部を押し出して支持し得る押出位置(p)と押出位置(p)から退避した退避位置(e)との間で左右方向にスライド移動可能な押出部材L、Rを有した背凭れ6を具備してなる。そして、背凭れ6が、着座者Pの腰部を支持するランバーサポータ63を備えており、ランバーサポータ63が押出部材L、Rにより後方から押圧され得るものであり、ランバーサポータ63が、アウターシェル61に係わり合う支持体係合部である被取付部622が形成されたランバーサポータ保持体であるインナーシェル62に連結部材65を介して保持されている。このため、多様な態様で着座者Pの腰部を押し出して支持することができる背凭れ6を備えた椅子Aを提供することができるものとなる。しかも、背凭れ6が、ランバーサポータ63を備えており、押出部材L、Rがランバーサポータ63を押圧するものであるため、押出部材L、Rが着座者Pの腰部を局所的に押圧することを好適に抑制し得るものとなる。すなわち、押出部材L、Rによる着座者Pの腰部に対する押圧を、ランバーサポータ63を介して間接的に行うことができるため、押出部材L、Rの具体的な形状によって直接的に押圧し得る範囲よりも広い範囲で、着座者Pの腰部を好適に押圧することができるものとなる。さらに、ランバーサポータ63が、アウターシェル61に係わり合う被取付部622が形成されたインナーシェル62に連結部材65を介して保持されている。このため、ランバーサポータ63が、アウターシェル61と係わり合ったインナーシェル62に対して好適に相対位置を変更可能に動作し得るものとなる。ランバーサポータ63は、連結部材65を介してインナーシェル62に保持されているため、インナーシェル62に対するランバーサポータ63の相対変位を連結部材65の弾性変形によって行い易くすることが可能となる。つまり、インナーシェル62とランバーサポータ63との間に連結部材65が介在しているため、ランバーサポータ63が押出部材L、Rによって好適に作動するための設計の自由度に優れたものとなる。
ランバーサポータ63のインナーシェル62に対する相対位置が、押出部材L、Rのスライド移動に伴って漸次変更されるように構成されているため、特定の押し出しパターンに限られることなく、極めて多様な態様で着座者Pの腰部を押し出して支持することができる背凭れ6を備えた椅子Aを提供するものとなる。
ランバーサポータ63と連結部材65とインナーシェル62が合成樹脂により一体に形成されたものであるため、部品点数の抑制に寄与するとともに製造の容易に寄与し得るものとなる。
連結部材65が帯状に形成された部位を主体に構成されたものであるため、弾性変形に優れたものとなり、ランバーサポータ63のインナーシェル62に対する相対移動をし易くするための設計の自由度に優れたものとなる。
連結部材65が、帯状をなす第一の連結部材構成要素651と第一の連結部材構成要素651と異なる方向に延びた部位を有した帯状をなす第二の連結部材構成要素652とを備えているものであるため、連結部材65全体を弾性変形し易くするための寸法或いは形状を有した構造を実現し易いものとなる。
インナーシェル62の支持体係合部である被取付部622が、ランバーサポータ63よりも上側及び下側の位置にそれぞれ配されているものであるため、インナーシェル62をアウターシェル61に対して好適に支持させることができるものとなり、アウターシェル61が、ランバーサポータ63に引きずられて移動してしまうことを好適に抑制し得るものとなる。
ランバーサポータ63が略板状のものであり、左右方向中央部の厚み寸法W1が左右側部の厚み寸法W2よりも長く設定されている。このため、押出位置(p)にある押出部材L、Rがランバーサポータ63の比較的厚肉である左右方向中央部を押圧することになるため、ランバーサポータ63の前面をより前側に位置させることができる。したがって、着座者Pの腰部に対して好適な押圧力を付与することができるものとなる。
しかも、このような構成のものであれば、押出部材L、Rのスライド範囲、すなわち押出部材L、Rがそれぞれアウターシェル61に対して左右方向に移動するストロークレンジを抑制しつつランバーサポータ63の前面を前後動させるための設計の自由度に優れたものとなる。特に、この実施形態では、左右の押出部材L、Rによって直接的に押されない部分となるランバーサポータ63の中間部分は、変形が抑制された構造となっているため、当該中間部分は押出位置(p)にある左右の押出部材L、Rの押し出しによって好適に前方に押し出され得るものとなる。
押出部材L、Rが、押出位置(p)と退避位置(e)との間で漸次位置変更し得るように構成されているため、極めて多様な態様で着座者Pの腰部を押し出して支持することができるものとなる。
ランバーサポータ63とインナーシェル61との間に、退避位置(e)に位置する押出部材L、Rによる着座者Pの腰部に対する押し出しを抑制するための抑制空間spが形成されているため、退避位置(e)において押出部材L、Rが着座者Pに干渉し難い構造を実現することができるものとなる。しかも、退避位置(e)における押出部材L、Rの外側部分7sが背クッション64に埋没して着座者Pに干渉し難くなる構成をなしているため、押出部材L、Rの外側部分7sの高さ寸法を可及的に高く設定することができるものとなる。このため、所定の高さに設定された外側部分7sを有した押出部材L、Rが、押出位置(p)及び押出位置(p)側に向かう道程において、ランバープレート63を好適に前側に向かって押圧し得るものとなる。
インナーシェル62が着座者Pの腰部に対応する位置に開口部623を有し、この開口部623内にランバーサポータ63が連結部材65を介して配されており、連結部材65が、一端側を開口部623の側縁部に接続するとともに他端側をランバーサポータ65の上縁部63a又は下縁部63bに接続している。このため、インナーシェル62に対してランバーサポータ63を相対変位させるための設計の自由度に優れたものとなる。
背凭れ6が、アウターシェル61と、アウターシェル61の前側に配されたインナーシェル62とを備えている。そして、ランバーサポータ63がインナーシェル62に一体に形成されている。このため、ランバーサポータ63を所望の位置に好適に配することができるものとなる。また、押出部材L、Rが、アウターシェル61に支持されているものであるため、ランバーサポータ63を適切に押圧し得る位置に配するための設計の自由度に優れたものとなる。
押出部材L、Rが、アウターシェル61に形成されたスリット611に案内されて左右方向に移動し得るものであるため、押出部材L、Rを左右方向にスライド移動可能に構成するための設計の自由度に優れたものとなるのみならず、押出部材L、Rを左右方向にスライド移動するべく操作者が押出部材L、Rにアクセスするための設計の自由度に優れたものとなる。
背凭れ6が、相互に独立して移動し得る左右2つの押出部材L、Rを備えたものであるため、左右の押出部材L、Rをそれぞれ別個独立して任意の位置に設定することができるものとなる。
押出部材L、Rが、アウターシェル61の前側に位置する押出部7と、アウターシェル61の後側に位置する操作部8とを備えたものであるため、アウターシェル61の前側に位置する押出部7によって着座者Pの腰部に所定の押圧力を付与し得るとともに、アウターシェル61の背面側に位置する操作部8に操作者がアクセスして、押出部材L、Rの位置を任意の位置に設定することができるものとなる。
押出部材L、Rが、内方端側から外方端側に向かって漸次肉厚になる形状部分を備えているものであるため、押出位置(p)及び退避位置(e)のそれぞれにおいて、好適な姿勢をとることができるものとなる。すなわち、押出位置(p)では、外方端側の比較的肉厚な部分によって、ランバーサポータ63を前方に効果的に押し出すことができるとともに、退避位置(e)では、内方端側の比較的薄肉の部分が着座者P側に位置することになるため押出部材L、Rが着座者Pの邪魔になることを好適に抑制するものとなる。
押出部材L、Rを所望の位置に節度停止させるための節度機構Cを設けているため、使用者にとって快適なクリック感を与えつつ押出部材L、Rを移動させることができるとともに、押出部材L、Rを所定の位置で好適に停止させることができるものとなる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限定されるものではない。
支持体61に支持される押出部材L、Rの退避位置(e)は、別の観点から言い換えれば、支持体61に支持されるサイドサポート部材L、Rのサイドサポート位置(e)と称することができるものである。すなわち、図11において模式的に示すように、インナーシェル62に一体化しているランバーサポータ63は、その左右両側部がサイドサポート位置(e)に位置するサイドサポート部材L、Rによって前方に押し出される一方、左右方向中央部が着座者Pの荷重を受けて後方に後退する。この結果、ランバーサポータ63の左右方向中央部の曲率が、図10において示すもの、すなわち、サイドサポート部材L、Rが内側位置(p)(上述した実施形態における押出位置に相応する)に位置している場合のものよりも大きなものとなる。そして、サイドサポート位置(e)にあるサイドサポート部材L、Rを内側に向かって移動するに連れて、ランバーサポータ63の左右方向中央部の曲率を小さくすることができる。つまり、サイドサポート位置(e)にあるサイドサポート部材L、Rを内側に向かって移動させて、ランバーサポータ63における左右方向中央部の曲率を小さくなる方向に変化させることができ、着座者Pが受ける腰部へのフィット感を調整することができるものとなっている。
椅子は上述した実施形態に示されるようなものに限られず、背凭れを有した椅子であればどのような椅子においても適用することができる。例えば、椅子は、脚や支持基部や座受や背支桿を具備しないものであってもよい。
支持体は、種々の形状や構造のものが考えられ、本実施形態に示されるようなシェル状のものに限定されるものではない。例えば、支持体は、フレームを主体に構成されたものであってもよい。
ランバーサポータ保持体は、支持体に係わり合う支持体係合部を有するとともにランバーサポータを連結部材を介して保持するものであればよく、本実施形態に示されるようなシェル状のものに限定されるものではない。例えば、ランバーサポータ保持体は、フレームを主体に構成されたものであってもよい。
支持体係合部は、支持体に対して直接的に係わり合うものに限られず、他の部材を介して支持体に係わり合うようにしたものであってもよい。つまり、支持体係合部は、支持体に対して間接的に係わり合うものであってもよい。
連結部材は、種々の形状や構造のものを採用することができ、上述した実施形態のものには限定されない。例えば、連結部材が、線状の部材を主体に構成されたものであってもよいし、線状の部材と帯状の部材とを適宜組み合わせて構成されたものであってもよい。
連結部材は、ランバーサポータ保持体やランバーサポータと別個に独立した構成部品であってもよい。例えば、連結部材として、コイルバネ等のスプリングやゴム製部材を採用し、一端をランバーサポータ保持体に接続させるとともに他端をランバーサポータに接続させるようにしてもよい。
連結部材は、複数備えたものには限定されない。例えば、連結部材を、インナーシェルの開口部における開口縁の一部から延出した比較的幅広の単一ものとしてもよい。このような連結部材の支持態様としては、ランバーサポータを吊り下げ支持する態様や、ランバーサポータを片持ち梁的に支持する態様や、ランバーサポータを下から支持する態様などが考えられる。換言すれば、連結部材は、ランバーサポータの上下左右何れか一つの端部と接続した態様のものであってもよい。
連結部材は、伸縮可能な網状部材を用いたものであっても良いし、伸縮可能な生地を用いたものであってもよい。例えば、ランバーサポータ保持体の開口部に網状部材を張り設けその網状部材の一部に押出部材に押し出されるランバーサポータを支持させるように構成してもよい。
背凭れは、樹脂により網目状に形成された部位に背凭れ面を有したいわゆる樹脂メッシュタイプのものであってもよい。例えば、フレーム状或いはシェル状をなす支持体に、左右方向にスライド移動可能に押出部材を支持させ、当該押出部材が背凭れ面を有した樹脂メッシュタイプの背凭れ部材に設けられたランバーサポータを後方から押圧するように構成しても良い。すなわち、樹脂メッシュタイプの背凭れ部材がランバーサポータ保持部に相当した構成を採用してもよい。より具体的には、ランバーサポータが、接続部材を介して樹脂メッシュタイプの背凭れ部材に支持されるように構成したものが考えられる。
押出部材は、支持体に支持され左右方向にスライド移動するものであればよく、シェル状の部材、すなわちアウターシェルに支持されたものには限定されない。支持体とは、押出部材をスライド移動可能に支持し得るものすべてを含んだ概念である。
背凭れは、背クッションを有したものには限定されず、例えば、ランバーサポータを有した背凭れ構成部材であって、当該背凭れ構成部材が着座者に直接的に添接し得る背凭れ面を備えたものであってもよい。
押出部材は、単数であってもよいし、3個以上の複数個であってもよい。
押出部材を左右方向にスライド移動可能に支持する態様は、種々の態様が考えられ、上述した各実施形態に示されるものには限定されない。例えば、押出部材を案内し得るスリットの本数は任意に設定することができるものである。
また、スリットは、単に左右方向に直線状に延びる態様のものには限定されない。一例としては、支持体であるアウターシェルに形成したスリットを、中央部分では左右方向に延びるように形成するとともに側縁部分では上下方向の何れかの方向に連続して延びるように形成し、アウターシェルの側縁部分において押出部材をより一層着座者の腰部から離れた位置に位置させ得るように構成してもよい。
また、押出部材はスリットを利用して支持体に支持させたものに限られるものではない。例えば、支持体に有底の溝を設け、この溝に対して押出部材の一部をスライド可能に嵌合させるようにしてもよい。或いは、押出部材を、磁石を利用して左右方向にスライド移動可能に支持させるようにしてもよい。
押出部材の形状は、種々の形状のものが考えられ、本実施形態に示されたものに限定されないのはもちろんのことである。
背凭れは、相互に独立して移動するものには限られず、相互に連動して移動し得る複数の押出部材を備えたものであってもよい。例えば、左右対をなす押出部材をギアや紐状部材を介して相互に連動させることにより左の押出部材と右の押出部材とを背凭れの左右方向中央部分を中心線として対称的に移動させるように構成してもよい。
ランバーサポータは、着座者の腰部を支持し得るものであればよい。すなわち、ランバーサポータは、板状のものに限られるものではなく、複数の孔を有した網目状のものであってもよいし、複数のスリットを有したものであってもよい。ランバーサポータは、単数のものには限られず、複数であってもよい。ランバーサポータは、軟質素材で構成されたものであってもよく、例えば、伸縮性に優れたゴム状の素材を主体に構成されたものであってもよいし、布を主体に構成されたものであってもよいし、樹脂製のシート体を主体に構成されたものであってもよい。換言すれば、ランバーサポータは、着座者の腰部を支持し得るものであり、且つ、押出部材によって前方に押し出され得るものであればどのようなものであってもよい。
ランバーサポータは、押出部材によって直接的に押し出されるものには限定されず、間接的に押し出されるものであってもよい。例えば、ランバーサポータと押出部材との間に、何らかの部材を介在させたものであってもよい。
姿勢保持手段は、支持体に対する押出部材の姿勢を保持するためのものであればよく、本実施形態に示される構成には限定されるものではない。一例としては、姿勢保持手段を、押出部材側にレール状の突部を設けたものと支持体側に前記突部と係わり合う凹溝又はスリットを設けたものとを主体に構成した態様が考えられる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。