JP6810107B2 - 椅子 - Google Patents

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Description

本願発明は椅子に関し、特に、オフィスで使用される椅子を好適な対象にしている。
椅子が保持すべき要素の第1に使用者の快適さが挙げられる。特に、オフィスで使用される椅子は人が長時間座り続けるため、快適性は重要な要素になる。快適性を阻害する要因は幾つかあるが、代表的には、身体に当たる部分が硬いことによる圧迫感と、身体を動かし難い窮屈感とが挙げられる。そこで、圧迫感や窮屈感を低減するための対策が講じられている。
圧迫感の問題に対しては、座や背もたれにクッションを配置したり、座や背もたれをメッシュで構成したりして対応している。座板や背もたれ板に変形可能な構造を採用することも、柔らかさを向上させるのに有効である。
他方、窮屈感を防止又は低減するには、着座した状態での身体の動きを許容させたらよい。椅子にロッキング機能を持たせることは、窮屈感を和らげるための有効な手段である。しかし、単なるロッキング機能のみでは快適性の向上に限度がある。何故ならば、人は着座した状態で様々な姿勢を取るが、単なるロッキング機能では人の姿勢の変化に追従できないからである。
例えば、着座者が身体を捩じって横を向くことは普通に行われているが、背もたれが剛性構造であると、人が身体を捩じることで背もたれとの接触面積は少なくなるため、使用者は圧迫感を受けて快適性は低下する。
そこで、身体の動きへの背もたれの追従性を高めるための工夫が行われている。その例として特許文献1〜4には、背もたれを着座者の体圧で変形し得る構造として、背もたれを、上端部の左右2カ所の下端部の左右中間部との3カ所においてバックフレームで支持することが記載されている。
背もたれが着座者の体圧によって自由自在に変形すると、身体の安定性が損なわれるため却って快適性が劣る。すなわち、背もたれには、身体をしっかりと支える機能が求められる。特に、人が椅子に腰掛けて各種のデスクワークを行う場合、前屈みになっていると内蔵を圧迫して身体への負担が高くなるため、ロッキングしていない状態でも、人の身体(特に腰部)を支えて背筋を伸ばした状態に保持する必要性が高いと云える。
このような身体の安定的支持機能という点から各特許文献を見ると、各特許文献の背もたれは上端の左右2カ所と下端部の左右中間部との三点支持になっているため、過度に変形することはないと云える。しかし、背もたれの下部は変形しやすいため、非ロッキング状態に身体をしっかりとサポートして背筋を伸ばした状態に保持する機能は高いと云えない。すなわち、各特許文献は、非ロッキング状態での身体の安定的支持機能が十分でない可能性がある。
また、椅子の使用態様としてロッキングした状態で身体を右や左に捩じったり肩を左右にずらしたりすることはよくあり、この場合、背もたれの上部の左側又は右側に荷重が集中するが、各特許文献では背もたれの上部は追従性が高いとは云えず、この面でも快適性に改善の余地がみられる。
また椅子の背もたれは樹脂製の背板を備えていることが多いが、圧迫感を和らげてクッション性・フィット性を高める手段として、背板を柔軟な構造にすることが行われている。例えば本願の出願人は、特許文献5において、背板に左右横長の長溝を多段に設けることで身体支持部を多段の帯板群で構成することを開示した。この特許文献5において、各帯板は、変形を容易化するため、左右端部に細いトリミング溝が設けられている。
他方、特許文献6には、ハニカム構造に類似した形態の背板が開示されており、特許文献7には、十字形状の穴と一直線状の穴とを規則正しく配置することで網のような構造と成した背もたれが開示されている。
特許文献6と特許文献7は背もたれの身体支持部を網目構造と成したものであり、身体支持部を構成する細い条線の群はそれぞれ曲がっているため、条線の群は体圧によって伸び変形することが許容されており、このため、身体支持部全体としては後ろ側に凹むように変形し得る。
さて、背もたれによる身体の支持機能を考察すると、柔軟性が高ければ足りるというわけではなく、身体を安定的に支持する機能も重要である。例えば、ロッキング状態で身体が揺れる傾向を呈すると、却って快適さが損なわれる場合がある。
また、着座者が非ロッキング状態でパソコン操作のようなデスクワークを行う場合、腰部がしっかりと支持されていると、背筋を伸ばした適切な姿勢に保持されるため好ましいが、背もたれの柔軟性が高すぎると身体を安定的に支持することができない。
そして、特許文献6,7は一種の網目構造であって全体的に変形し易い構造になっているため、クッション性は高いものの身体の安定的な支持という面では改善の余地があると云える。他方、特許文献5の帯板は過度に伸び変形することはないため身体の支持安定性に優れているが、各帯板の伸びには限度があるため柔軟性の点では改善の余地があると云える。
日本国特許公開2002−119366号公報 日本国特許公開2004−129966号公報 日本国特許公開2010−063831号公報 米国特許明細書第7249802号 日本国特許公開2011−041615号公報 日本国特許第4015673号公報 米国特許明細書第5934758号
本願発明はこのような現状を背景に成されたもので、使用価値が高められて改善された椅子を提供せんとするものである。また、本願は改良された多くの構成を含んでおり、これらを提供することも目的たり得る。
本願発明は階層的・面的な広がりを持っており、その典型を請求項1〜5として特定している。
このうち請求項1の発明では、
「前記背もたれは、着座者の体圧で変形する身体支持部と、この身体支持部が取り付いた合成樹脂製の背枠体とを有しており、前記背枠体のうち上端部は第1支持装置を介して前記バックフレームの上端に取り付けられて、前記背枠体のうち前記第1支持装置よりも低い部分は、左右の第2支持装置を介して前記バックフレームに取付けられている」
という構成において、
「前記第1支持装置は、着座した人の体圧によってしなり変形可能であると共に、正面視V形になっており、着座者の体圧によって前記第1支持装置が変形することによって前記背枠体の平面視姿勢が変化し得る」
という構成が付加されている。
本願発明では、背もたれは、いわば上端部の左右2か所とそれより下の左右2カ所との四点支持になっている。そして、パソコン操作のようなデスクワークを行うために使用者が背もたれに凭れ掛からずに着座している状態では、背もたれのうち左右の二点で支持された部分で腰部等を安定的に支えることができる。従って、背筋を伸ばした状態を的確に保持できて、使用者に適切な執務姿勢を採らしめることができる。
他方、背もたれに凭れ掛かった状態での身体のねじりに背もたれを追従して変形させることが可能であり、これにより、凭れ掛かり状態での快適性の向上に貢献できる。
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記バックフレームは、上に行くに従って互いの間隔が狭まるように傾斜している左右一対の縦長メンバーを有しており、前記左右の縦長メンバーの連結部に前記第1支持装置を介して前記背枠体の上端部が取り付けられている」
という構成になっている。請求項2ではバックフレームは逆V形になっているが、このような形態を採用すると、シンプルでありながら高い強度を確保できる利点がある。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記第2支持装置は、着座者の体圧が掛かっても本質的には曲がり変形しない剛性を有しているか、又は、着座者の体圧で弾性変形するものの前記第1支持装置よりも変形しにくい弾性強度である」
という構成になっている。
本願発明では、第1支持装置はばね性を有するため、人が背もたれに凭れ掛かった状態で、背もたれの上部はバックフレームに対して近づくように移動することが許容されている。つまり、第1支持装置の反力が背もたれの上部に後ろから作用しているのであり、この反力がクッション作用として使用者に快適さを提供している。また、第1支持装置の変形によって背もたれのねじり変形も許容されるため、人が背もたれに凭れ掛かった状態で身体を右や左に捩じったときの追従変形性も向上する。
また、請求項3では、第2支持装置は着座者の体圧で殆ど変形しないか変形してもその程度は第1支持装置より小さいため、非凭れ掛かり状態での身体の支持機能を的確に発揮する。また、ロッキング状態のような凭れ掛かり状態で背もたれの下部が過度に変形すると身体の安定性が損なわれて却って快適さが損なわれることがあるが、請求項3では凭れ掛かり状態においても背もたれの下部で身体は安定的に支持されるため、身体が過度に動くことを防止して快適性を向上できる。
実施形態のように、第1支持装置を側面視において上下に長い姿勢にすると、バックフレームと背もたれとの間に延びる部分は単純な板状の形態でよいため、構造を簡単化できる利点がある。また、第1支持装置が上下に長いと、着座者の体圧で後ろ側に曲がるように変形させることも容易であり、このため、身体の変化に対する追従性やクッション性を向上できる。
請求項4の発明は、請求項1において、
「前記バックフレームは、前記背もたれの左右中間部に位置した1本の部材で構成されており、前記バックフレームの上端に、前記第1支持装置を介して前記背枠体の上端部が取り付けられている」
という構成になっている。これとは異なって、バックフレームは、左右の鉛直部を有する逆U形の形態を採用したりすることも可能である。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、
前記背もたれの身体支持部は、前記背枠体と別体のメッシュ材になっている
という構成になっている。いずれにしても、背枠体は着座者の体圧でしなり変形するのが好ましい。
本願発明は、背もたれが、着座者の体圧が掛かると後傾するロッキング椅子に適用できる。背もたれの撓み変形はロッキング状態において顕著に現れるため、特にロッキング椅子において本願発明の真価が発揮される。
本発明により、椅子への凭れ掛かり状態での快適性が向上する。さらに、椅子の強度を確保し、製造の手間を省くことができると共に、品質のバラツキを防止できる。
図1は実施形態に係る椅子の全体的な外観を示す図で、(A)は前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図である。 図2は椅子の全体構成を示す図で、(A)は一部分離斜視図、(B)は側面図である。 図3は要部の分離図で、(A)は背もたれを通常の姿勢のままずらした状態の図、(B)は背もたれを水平旋回させて分離した図である。 図4は支持装置とバックフレームとの関係を示す図で、(A)は第1支持装置とバックフレームとの分離斜視図、(B)は第1支持装置及び第2支持装置と背もたれとの分離斜視図、(C)は第1支持装置と背もたれとの分離斜視図である。 図5は、第1支持装置と背もたれとの関係を示す分離図である。 図6は、第2支持装置と背もたれとの関係を示す分離図である。 図7はランバーサポート部材の説明図であり、(A)(B)は分離斜視図、(C)は背もたれの平面図である。 図8は、背もたれの正面図である。 図9は、背もたれを前から見た斜視図である。 図10は、背もたれを後ろから見た斜視図である。 図11は、機能を説明するための分離図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、オフィス等で多用されている回転椅子に適用している。なお、以下の実施形態及び特許請求の範囲で方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用しているが、これらの方向は、椅子に普通に腰掛けた人を基準にしている。
(1).椅子の概要
図1,2のとおり、椅子は、主要要素として脚装置1と座2と背もたれ3とを備えており、背もたれ3はその後ろに配置されたバックフレーム4に取り付けられている。脚装置1は、鉛直姿勢の脚支柱5とこれを支持する中心筒6とを備えており、中心筒6から5本の枝アームが放射方向に延びている。そして、各枝アームの先端にはキャスタが取り付けられている。
脚支柱5は、内筒と外筒とを有する伸縮式のガスシリンダで構成されており、図2(B)のとおり、脚支柱5の上端にベース7を取り付けて、ベース7にバックフレーム4がジョイント部材8を介して後傾動可能に連結されている。なお、バックフレーム4とジョイント部材8とを一体化することも可能である。脚支柱5を構成する内筒と外筒とは相対回転自在であり、このため、ベース7(及び座2と背もたれ3)は水平回転自在である。
図示は省略するが、ベース7には、バックフレーム4の後傾動を弾性的に支持するロッキングばねが内蔵されている。座2は、ベース7に設けた中間部材(図示せず)に、その前部を中心にして後傾動しつつ後退動し得るように取付けられている。中間部材とジョイント部材8とは、左右横長の軸で相対動可能に連結されている。このため、座2は、背もたれ3の後傾動に連動して後退しつつ後傾動する。
背もたれ3は、ポリプロピレン等の樹脂を素材にした射出成型法で製造されたメインメンバーを有している。背もたれ3がクッション及び表皮材を有する場合は、背もたれ3とメインメンバーとを区別しなければならないが、本実施形態ではメインメンバーによって背もたれ3の全体を構成しているため、両者を区別する実益は薄い。そこで、説明を単純化するため、メインメンバーの文言は使用せずに背もたれ3の文言を使用している。
背もたれ3は、その外周を構成する背枠体9とその内部に位置した身体支持部10とから成っている。背枠体9は、図8のとおり、左右両側を構成する一対のサイドメンバー9aと、上端部を構成する左右横長のアッパーメンバー9bと、下端を構成する左右横長のロアメンバー9cとで概ね四角形に近い形態に形成されている。
背もたれ3の下端は、座面の近傍に位置している。背もたれ3のうち着座者の腰部に相当する高さ位置の前面には、着座者の腰部を支えるランバーサポート部材11が配置されている。着座者の身長や好みはまちまちであるため、ランバーサポート部材11は高さ調節可能である。
本実施形態の背もたれ3は、ランバーサポート部材11の取り付け部が最も幅狭となるように、正面視で括れた形状になっている。ただし、これに限定される必要はなく、背もたれ3の形態として、左右横幅が略一定である形態や、上端広幅で下端が幅狭逆台形状や、上端が幅狭で下端が幅広の台形状など、任意の形態を採用できる。
例えば図3のとおり、バックフレーム4は、互いの間隔が上に行くに従って近づくように傾斜した左右の縦長メンバー4aを有している。左右の縦長メンバー4aの上端は、連結部4bを介して一体に繋がっている。
従って、バックフレーム4は、左右の縦長メンバー4aによって背面視(正面視)逆V形の形態が構成されている。左右縦長メンバー4aの下端はロアステー部4cを介して一体に繋がっている。また、左右縦長メンバー4aの下端には前向きアーム部4dを一体に設けている。前向きアーム部4dとロアステー部4cとは、図2に示したジョイント部材8に接続されている。例えば図4(B)から明らかなように、バックフレーム4の縦長メンバー4aは背面板と側面板とを有する断面L形に形成されている。このため、軽量ながら前後方向及び左右方向並びに捩じりに強い構造になっている。
本願発明のバックフレーム4には、樹脂の成型品又はアルミダイキャスト品を採用しているが、金属板や金属パイプを材料にして製造することも可能である。異種材料の複合品とすることも可能である。また、一体構造である必然性はないのであり、例えば左右の縦長メンバー4aを別々に製造して上端において連結するなど、複数の部品で構成することも可能である。バックフレーム4にシェル構造品を採用することも可能である。
そして、例えば図3のとおり、背もたれ3のうちその上端を構成するアッパーメンバー9bの左右中間部は、第1支持装置12を介してバックフレーム4の上端の連結部4bに取り付けられる。また、左右サイドメンバー9aは、ランバーサポート部材11の取付部の上の部位において、それぞれ第2支持装置13を介してバックフレーム4の縦長メンバー4aに取付けられている。この点を以下に詳述する。
(2).背もたれの取付構造
図4(A)(B)に示すように、第1支持装置12は、正面視V形に配置された左右2本のばね板部12aを有している。ばね板部12aの上端には、左右横長の上取付部12bが一体に繋がっている。そして、左右のばね板部12aの下端には、後ろ向きに突出した下取付部12cが一体に繋がっている。第1支持装置12は、ポリプロピレン等の樹脂を素材にして射出成型によって製造されており、ばね板部体12aは上下長手の姿勢であるが、正面視では幅広で側面視では幅狭の板状の形態を成している。このため、前からの力で容易に曲がり変形させることができる。
下取付部12cは、左右横長のブロック状(ボス状)に形成されている。バックフレーム4の連結部4bには、下取付部12cが嵌まる前向き開口の後ろ側第1凹部15が形成されている。下取付部12cは、後ろ側第1凹所15に下方から挿通した第1ボルト16によって固定されている。図4(A)のとおり、第1支持装置12の下取付部12cには、第1ボルト16をねじ込むナットがセットされるナット挿入穴17後ろ向きに開口している。
図5に示すように、背もたれ3のアッパーメンバー9bは、外壁と内壁18と中間壁19とを有する内外3重構造を有しており、このため後ろ向きに開口した2条の長溝20が形成されている。そして、内壁19の左右中間部を例えば切欠くことにより、第1支持装置12の上取付部12bが嵌まる前側第1凹部21がを成している。第1支持装置12の上取付部12bは、下方から挿通した第2ボルト22によってアッパーメンバー9bに固定されている。
背もたれ3のアッパーメンバー9bには、後ろ向きに開口したナット抱持部23が形成されている。他方、第1支持装置12の上取付部12bには、アッパーメンバー9bのナット抱持部23に後ろから当たるストッパー片24が上向き突設されている。
第2支持装置13は、例えばナイロン樹脂のように剛性が高い樹脂を素材にして製造されている。そして、図5(B)(C)に示すように、第2支持装置13は、平面視で波形に緩く曲がった帯板状のアーム部13aを備えている。アーム部13aの後端には、後ろボス部13bが一体に設けられ、アーム部13aの前端には、前ボス部13cが一体に設けられている。アーム部13aは、着座者の体圧で簡単には変形しない剛性を有している(ただし、少しは変形してもよい。)。
後ろボス部13bは、バックフレーム4の縦長メンバー4aに設けた後ろ側第2凹部25に嵌め込まれている。後ろ側第2凹部25には、第3ボルト26が下方から挿通されている。第2支持装置13の後ろボス部13bには、第3ボルト26がねじ込まれるナット(図示せず)が組み込まれている。後ろボス部13bには、後ろ側第2凹部25の開口縁に重なるフランジ13dを設けている。
図6に明示するように、背もたれ3のサイドメンバー9aには、第2支持装置13の前ボス13cが嵌まる前側第2凹部27が形成されている。前側第2凹部27は、概ね箱状の外観を呈しており、その内壁27aには、ボルト(図示せず)が通るボルト穴28が空いている。他方、第2支持装置13の前ボス部13cには、ナット取付溝29が設けられており、ナット取付溝29に配置したナットにボルトがねじ込まれる。
この場合、前側第2凹部27の内壁27aには、ボルト穴28の部分を厚肉化して強度を高めるための段部30が形成されている。他方、第2支持装置13の前ボス部13cには、前側第2凹部27の段部30に重なる切欠き部31が形成されている。また、第2支持装置13の前ボス部13cには、前側第2凹部27の開口縁に重なるフランジ13eが設けられている。
(3).ランバーサポート部材
次に、主に図7を参照して、ランバーサポート部材11を説明する。ランバーサポート部材11は、樹脂を素材にした成型品であり、例えばポリプロピレンのようにある程度の弾性を有する素材から成っている。そして、ランバーサポート部材11は、背もたれ3を横切る左右横長の形態であり、平面視では、前向き凹状に緩く湾曲している。また、ランバーサポート部材11は、縦断側面視では、前向き突状に僅かに湾曲している。
ランバーサポート部材11の左右両端には、角柱状で後ろ向きに突出したスライドボス体34が一体に形成されている。スライドボス体34は、背もたれ3のサイドメンバー9aに設けた上下長手のガイド枠部35にスライド自在に嵌まっている。図6に示されているように、ガイド枠部35の内周は板部で構成されており、ガイド枠部35の上端に既述の前側第2凹部27が一体に繋がっている。
図7のとおり、スライドボス体34の後端には、摘み36に設けたブロック状の前向き突出部36aが嵌まっている。摘み36の前向き突出部36aは、図示しないボルトによってスライドボス体34に固定されている。スライドボス体34には、ナット挿入溝37を設けている。ランバーサポート部材11は、高さを段階的に保持可能であり、高さ調節手段として、図6(A)のように、ガイド枠部35の内側板には多数のストッパー用穴38を上下多段に設けている。
さて、背もたれにランバーサポート部材を設けることは広く行われているが、一般に、クッションの裏側やメッシュ材の裏側に配置していることが多い。しかし、ランバーサポート部材と身体との間にクッションやメッシュ材が介在していると、強い「当たり感」を求める人にとっては物足りないと感じる場合がある。また、背もたれがクッションやメッシュを備えていない場合など、背板の手前にランバーサポート部材を配置せねばならない場合がある。
その例として特開2008−237333号公報には、背もたれを枠部とその内側の背板とで構成して、背板に多数のスリットを設けた構成において、ランバーサポート部材を背板の手前に配置することが開示されている。そしてこの文献では、ランバーサポート部材の左右両端部に、枠部に外側から嵌まるクリップ方式の把手を一体に設けて、把手で枠部を弾性的に抱持している。
しかし、この公報のように把手を枠部に外から嵌め込む構成では、把手が枠部の左右外側にはみ出るため、人の衣服が把手に引っ掛かったり、物が把手に当たって把手が破損したりする不具合が懸念される。また、把手は摩擦によって高さを保持しているに過ぎないため、着座者の体圧によってランバーサポート部材がずり下がったりずり上がったりする可能性もある。
これに対して本実施形態では、ランバーサポート部材11の左右両端部に設けたスライドボス34が背枠体9のガイド枠部35に貫通しているため、摘み36は背枠体9の左右外側からはみ出ないように配置することができる。これにより、摘み36に衣服が引っ掛かったり物が当ったりすることを防止又は著しく抑制できる。また、ガイド枠部35に高さ調節用のストッパー穴38のような高さ保持手段を設けることも簡単であるため、ランバーサポート部材11を所望の高さにずれ移動不能に保持できる。
なお、高さ調節手段は様々の構成を採用できる。実施形態のようにガイド枠部35にストッパー穴38を設けた場合は、摘み36のブロック状前向き突出部に、ガイド枠部35に嵌脱する弾性部材を設けたら良い。ガイド枠部35はある程度の前後幅を有するため、スライドボス体34を貫通させたことによる強度低下は生じない。摘み36は、単なる板状としてこれをスライドボス体34にねじ止めすることも可能である。
(4).背もたれの構造
次に、背もたれ3のうち身体支持部10の構造の詳細を主として図8〜10に基づいて説明する。図8のとおり、本実施形態では、身体支持部10は、左右のサイドメンバー9aに繋がった横長のサイドステー40の群と、サイドステー40の群の間に位置した横長のセンターステー41の群とを有しており、両ステー40,41の群は上下にずれた状態に配置されている。センターステー41の群でセンターエリアが構成されており、サイドステー40の群でサイドエリアが構成されている。
そして、左右に隣り合ったセンターステー41の左右両端とサイドステー40の先端とは、連結片(ジョイントステー)42で一体に繋がっている。この場合、サイドステー40の先端とセンターステー41の端との間に左右間隔が少し空いており、このため、連結片(ジョイントステー)42は正面視において傾斜姿勢になっている。更に、センターステー41とサイドステー40とは上下にずれて配置されているため、上下に隣り合った連結片(ジョイントステー)42は姿勢が逆向きになっている。かつ、上下に隣り合った連結片(ジョイントステー)42の付け根とステー40,41とが一体に繋がっている。従って、連結片(ジョイントステー)42の群は正面視でジグザグに曲がった形態を成している。
背もたれ3は、下寄りの部分が幅狭となるように正面視で括れており、このため、背もたれ3のサイドメンバー9a外向き凹状に湾曲した形態になっているが、連結片(ジョイントステー)42もサイドメンバー9aの形状に倣うように正面視で外向き凹状に湾曲している。また、サイドメンバー9aとセンターステー41とは概ね同じ程度の左右長さになっている。
サイドステー40とセンターステー41とは、前後面を広幅面と成した板状の構造であるが、図10のとおり、サイドステー40及びセンターステー41の後面には、リブ43を一体に設けている。従って、サイドステー40及びセンターステー41の断面形状は横向きT形になっている。リブ43の後面は、連結片(ジョイントステー)42の後面と同一面を成している。連結片(ジョイントステー)42は、細い帯板の外観を呈しており、従って、横向きVの角度が広がったり狭まったりするように容易に変形し得る。すなわち、ランバーサポート部材では、ステー40,41密度が高くなっている。このため、ランバーサポート部では、他の部位に比べて剛性が高くなっている。
サイドステー40及びセンターステー41の群は上下多段に配置されているので、上下に隣り合ったサイドステー40の間とセンターステー41との間とには、それぞれ左右横長の空間44が空いている。そして、本実施形態では、ランバーサポート部を除いて空間44の上下幅寸法はステー40,41の上下幅の2倍程度になっている。ランバーサポート部では、空間44の上下幅寸法はステー40,41の上下幅と同じ程度に設定している。このため、ランバーサポート部では剛性が高くなっている。
もとより、サイドステー40やセンターステー41の上下幅やピッチ(密度)は任意に設定できるのであり、例えば、ステー40,41の上下幅寸法と空間45とを上下全体にわたって同じ程度に設定することや、全体にわたってステー40,41の上下幅寸法を空間45の上下幅寸法より小さくすることも可能である。
また、本実施形態では、身体支持部10を2列のサイドステー40と1列のセンターステー41とで構成したが、これに限定される必要はなく、センターステー41を設けずに左右のサイドステー40とこれを繋ぐ1本の連結片(ジョイントステー)42で構成することや、2列のサイドステー40とその間に位置した2列の中間ステーとで構成することも可能である。2列の中間ステーを設ける場合は、3本の連結片(ジョイントステー)42が必要である。更に、身体支持部10は、2列のサイドステー40と1列のセンターステー41と2列の中間ステーとの5列のステー群で構成することも可能である。更に、背もたれ3は他の形態も採用できる。
(5).まとめ
次に、図11を参照して作用を説明する(この説明は、一般的な体重・体格の人が使用している状態を想定している。)。まず、ロッキング状態について説明する。
例えばロッキング状態における着座者の体圧は、背もたれ3に対して矢印Fのように前から作用し、背もたれ3に作用した荷重は第1支持装置12と第2支持装置13とで支えられる。そして、第1支持装置12は、矢印Yのとおり、前からの荷重で上端が後ろに移動するように側面視で曲がり変形可能である一方、第2支持装置13は、矢印Xのとおり、先端が後ろに移動するように平面視で曲がり変形可能であるが、第2支持装置13は剛性が高いため、背もたれ3のバックフレーム4は第2支持装置13でしっかりと保持されていて、着座者の腰部は安定良く保持されている。
他方、ロッキングによるモーメントは、背もたれ3の上端部に大きく作用するものであるが、第1支持装置12は第2支持装置13に比べて剛性が低くて体圧で撓み変形しやすいため、ロッキングに際して、背もたれ3は、その上端部がバックフレーム4の上端部に近づくようにしなり変形し得る。この背もたれ3のしなり変形により、ロッキング時のクッション性を向上させることができる。
また、ロッキング状態で人が上半身を右又は左に捩じったり、肩を右又は左にずらしたりすると、第1支持装置12を構成する左右2本のばね板部12aが不均一に曲がり変形することで、身体のねじりやずらしに追従して背もたれ3が捩じられるように変形し得る(すなわち、平面視姿勢が変化し得る。)。従って、背もたれ3の形態を身体の姿勢の変化に追従して変化させることができ、その結果、快適性を向上できる。
図11から明らかなように、背もたれ3は平面視で前向き凹状に緩く湾曲しているが、湾曲の程度はランバーサポート部材11のあたりで最も大きくなっていて、上端部は殆どフラットな状態になっている。このため、腰部は左右にずれないように保持しつつ、肩(又は肩に近い部分)を左右にずらすことが容易ならしめられている。この点からも高い快適性を得ることができる。
図2(B)のとおり、着座者が背もたれ3に凭れていないニュートラル状態では、背もたれ3は少し後傾姿勢になっており、ランバーサポート部材11が最も前に位置している。そして、使用者がパソコン操作等のデスクワークを行う場合は、使用者は腰部を背もたれ3のランバーサポート部材11に当てた姿勢を採るが、第2支持装置13は剛性が高いためニュートラル状態で着座者の体圧で背もたれ3が撓み変形することはなく、人の腰部は背もたれ3で安定良く支持される。このため、使用者の上半身は、ふらつくようなことはなくて背筋を伸ばした好ましい姿勢に保持される。従って、ニュートラル状態(非ロッキング状態)での姿勢保持機能にも優れている。
本実施形態の背もたれ3は、サイドステー40とセンターステー41とが上下にずれていることと連結片(ジョイントステー)42がジグザグの形態であることとにより、着座者の体圧によって身体支持部10が後ろに脹れるように撓み変形し得る。このため、使用者の身体へのフィット性に優れていると共に、身体の動きへの追従性にも優れている。
また、上下に隣り合った連結片(ジョイントステー)42が互いの開き角度(Vの角度)を小さくするように変形することにより、センターステー41が後ろにずれる傾向を呈するのであり、結果として、身体支持部10は後ろ向きに脹れるように変形する。このため、クッション及び使用者の身体へのフィット性を向上できるのである。
本発明により、凭れ掛かり状態での快適性が向上した椅子を提供することができる。さらに、強度を確保し、製造の手間を省くことができると共に、品質のバラツキを防止した椅子を提供できる。
1 脚装置
2 座
3 背もたれ
4 バックフレーム
4a 縦長メンバー
9 背枠体
9a サイドメンバー
9b アッパーメンバー
9c ロアメンバー
10 身体支持部
11 ランバーサポート部材
12 第1支持装置
12a ばね板部
12b 上取付部
12c 下取付部
13 第1支持装置
13a アーム部
13b 後ろボス部
13c 前ボス部
13e フランジ

Claims (5)

  1. 座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置されたバックフレームとを備えており、
    前記背もたれは、着座者の体圧で変形する身体支持部と、この身体支持部が取り付いた合成樹脂製の背枠体とを有しており、前記背枠体のうち上端部は第1支持装置を介して前記バックフレームの上端に取り付けられて、前記背枠体のうち前記第1支持装置よりも低い部分は、左右の第2支持装置を介して前記バックフレームに取付けられている構成であって、
    前記第1支持装置は、着座した人の体圧によってしなり変形可能であると共に、正面視V形になっており、着座者の体圧によって前記第1支持装置が変形することによって前記背枠体の平面視姿勢が変化し得る、
    椅子。
  2. 前記バックフレームは、上に行くに従って互いの間隔が狭まるように傾斜している左右一対の縦長メンバーを有しており、前記左右の縦長メンバーの連結部に前記第1支持装置を介して前記背枠体の上端部が取り付けられている、
    請求項1に記載した椅子。
  3. 前記第2支持装置は、着座者の体圧が掛かっても本質的には曲がり変形しない剛性を有しているか、又は、着座者の体圧で弾性変形するものの前記第1支持装置よりも変形しにくい弾性強度である、
    請求項1又は2に記載した椅子。
  4. 前記バックフレームは、前記背もたれの左右中間部に位置した1本の部材で構成されており、前記バックフレームの上端に、前記第1支持装置を介して前記背枠体の上端部が取り付けられている、
    請求項1に記載した椅子。
  5. 前記背もたれの身体支持部は、前記背枠体と別体のメッシュ材である、
    請求項1〜4のうちのいずれかに記載した椅子。
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