次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図8では椅子(事務用回転椅子)の背もたれ板に適用した第1実施形態を示している。
(1).椅子の概要
図1は椅子の概略斜視図、図2のうち(A)は椅子の概略右側面図、(B)は(A)のB−B視断面図、図3は椅子の概略背面図である。まず、これらの図に基づいて椅子の概要を説明する。
椅子は、脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は、水平状に延びる枝足4の群と脚支柱(ガスシリンダ)5とを備えており、脚支柱5の上端に上向き開口のベース6を取り付けている。座2は、座受け枠7とその上面に取り付けた座板(明瞭には図示せず)とを備えており、座板にクッションを張っている。
ベース6の左右両側には、後部を背支柱8aと成した揺動フレーム8が配置されており、揺動フレーム8は、その前端部を中心にして後傾動するようにベース6に左右長手の第1支軸9で取り付けられている。そして、座受け枠7の前部とベース6とは左右2本の前部支持リンク10で連結され、座受け枠7の後部と左右の揺動フレーム8とは2本の後部支持リンク11によって連結されている。図3に示すように、左右の背支柱8aはその上部において補強材8cで連結されている。
前部支持リンク10は左右長手の第2支軸10′によってベース6に連結されていると共に、第3支軸12によって座受け枠7に回動可能に連結されており、また、後部支持リンク11は第4支軸13によって揺動フレーム8に回動可能に連結されていると共に、第5支軸14によって座受け枠7に回動可能に連結されている。前後支持リンク10,11は人が着座していない状態で側面視後傾しており、このため、人が着座すると前後支持リンク10,11は後傾動する。ベース6において第2支軸10′が嵌まるように形成した穴は側面視で略前後に延びる長穴になっている。
図2(A)に簡単に示すように、ベース6の内部には、第2支軸15の後退動を弾性的に支持する圧縮コイルばね15が配置されている。圧縮コイルばね15は背もたれ3の後傾動を弾性的に支持するばね手段の一例であり、人が着座しただけでは全く又は殆ど縮み変形せず、人が背もたれ3にもたれ掛かると縮み変形するように強さを設定している。図2から容易に理解できるように、本実施形態の椅子は、第2支軸10′が長穴に沿ってスライドすることで座2が背もたれ3の後傾動に連動して後退動及び後傾動するシンクロタイプになっているが、背もたれ3のみが後傾するタイプであっても良いことはいうまでもない。
背もたれ3は、本願発明を適用した背もたれ板16を主要要素としている。図面では背もたれ板16はその前を露出させているが、クッション材等の緩衝材又は表皮材を配置すことも可能である。背もたれ板16は、人がもたれ掛かっていない状態で全体として後傾しつつ、平面視では全体として前向き凹状に湾曲している。また、下部は、着座した人の腰に当たる部分を中心にして上下適宜範囲は、側面視で前向き凸状に湾曲している(この部分を腰当て部と称して符号16aで示す)。更に、上部は前向き凸状に湾曲した肩当て部16bになっている。勿論、肩当て部16bを設けずに、上部を単純な後傾姿勢と成すことも可能であり、また、肩当て部16bを設けることに代えて又はこれに加えてヘッドレストを一体に設けることも可能である。
背もたれ板16のうち肩当て部16bの背面部は左右長手のアッパーフレーム17を介して背支柱8aに取り付けられている。また、背もたれ板16のうち腰当て部16aの頂点部はその左右端部がロアーフレーム18及び第6軸19を介して前進用傾動フレーム20に取り付けられており、更に、背もたれ板16の左右中間部の下端(従って腰当て部16aの左右中間部の下端)は、第7支軸21を介して前進用傾動フレーム20のブラケット22に連結されている(前進用傾動フレーム20については後述する)。
(2).背もたれの自動前進機構
ところで、人が椅子に腰掛ける場合、つねに深く腰掛けるとは限らず、浅く腰掛ける場合も多い。その場合、背もたれが人の腰に当たっていないと人の姿勢が不安定になる虞がある。そこで本実施形態では、人が着座したら背もたれ板16の下部(換言すると背もたれ3の下部)を前進動させることにより、人が浅く腰掛けても人の腰を背もたれ板16の腰当て部16aで支持し、かつ、人が深く腰掛けた場合はばね手段に抗して背もたれ板16の腰当て部16aを後退させることにより、人が深く腰掛けることを阻害しないようにしている。この点を図4に基づいて説明する。
前記した前後支持リンク10,11は、人の着座で背もたれ3の下部を前進させる連動手段(自動前進機構)の要素となるものであり、前後支持リンク10,11が側面視で後傾していることにより、人の着座によって座2は後傾しつつ下降動し、座2の後傾動及び下降動が図4の骨組み図に示す連動手段によって背もたれ板16の腰当て部16aの前進動に変換される。以下、説明する。
連動手段の一環として、左右の揺動フレーム8の後部には左右長手の第8支軸24によって前進用傾動フレーム20が連結されている。前進用傾動フレーム20の後部は側面視で上向きに延びる起立部20aになっており、この起立部20aに、前記ロアーフレーム18が第8支軸24によって回動可能に連結されていると共に、起立部20aに形成したブラケット22に、背もたれ板16の下端が第6支軸19で連結されている。
従って、前進用傾動フレーム20が前進動すると背もたれ板16の腰当て部16aは前進動するが、この場合、背もたれ板16の上部が取り付くアッパーフレーム17を背支柱8aに対して上下動可能に取り付けることにより、背もたれ板16の腰当て部16aが大
きく前進動することを容易ならしめている。アッパーフレーム17を背支柱8aに対して上下動させる構造は図2(B)に表示している。
すなわち、図2(B)に表示されているように、アッパーフレーム17に上下2本の左右横長ピン25で中空状体26を連結し、中空状体26を、背支柱8aの上端に設けたガイド筒27に上下スライド自在に嵌め入れている。そして、ガイド筒27に内蔵したばね28により、アッパーフレーム17を上向きに付勢している。ばね28の上端は下部の横長ピン25で支持しているが、他の支持構造を採用してもよい。いうまでもないが、背もたれ板16の上部を上下動可能に支持する機構は様々の構造を採用できる。
図4に戻って連動手段の説明を続ける。前進用傾動フレーム20を揺動フレーム8に連結している第8支軸24は、前進用傾動フレーム20の左右外側に配置された左右の第1連動リンク29に挿通しており、第1連動リンク29の後端と前進用傾動フレーム20とは第9支軸30で連結されている。従って、前進用傾動フレーム20と第1連動リンク29とは第8支軸24を中心にして一緒に回動する。第1連動リンク29は第8支軸24よりも前方に延びる前向き突出部29aを有している。
第1連動リンク29の左右外側には、第8支軸24から手前に延びる第2連動リンク31が配置されており、第2連動リンク31の後端に第8支軸24が貫通している。従って、前進用傾動フレーム20の前端部と第1連動リンク29と第2連動リンク31の後端とが第8支軸24によって連結されている。第2連動リンク31は第8支軸24を中心にして回動可能であり、かつ、その前端部には両部材31,11の相対回動を許容するための長穴31aが形成されており、この長穴31aに、後部支持リンク11と座受け枠7とを連結した第5支軸14が貫通している。
左右の第2連動リンク31は左右長手の後部補助バー32で連結されており、後部補助バー32に第1連動リンク29の前向き突出部29aが上方から当たっている。更に、第8支軸24には背もたれ前進用ばね手段の一例として後部ねじりばね33が被嵌しており、この後部ねじりばね33の後ろ向き端部33aを第9支軸30(又は第1連動リンク29)に下方から当てて前向き端部33bを後部補助バー32(第2連動リンク31に当ててもよい)に下方から当てている。従って、第1連動リンク29及び前進用傾動フレーム20は後部ねじりばね33によって第8支軸24を中心に前傾する方向に付勢されている。換言すると、背もたれ板16の腰当て部16aは後部ねじりばね33によって前進する方向に付勢されている。
他方、左右の後部支持リンク11は前部バー34によって一体に連結されており、第4支軸13にばね手段の一例として前部ねじりばね35を被嵌し、その一端部35aを前部補助バー34(又は後部支持リンク11)に下方から当て、前部ねじりばね35の他端部35bは例えばベース6の背面(或いは揺動フレーム8の下面)に当てている。従って、後部支持リンク11は前部ねじりばね35によって前傾方向に付勢されている。前後の支持リンク10,11はストッパー手段で前向き回動姿勢が保持されている。ストッパー手段としては、例えば、後部支持リンク11を座受け枠7の下面に当てるとよい。また、前後支持リンク10,11の後傾姿勢を規制するストッパー手段としては、第5支軸14を揺動フレーム8に上方から当てたらよい。
人が着座すると、座2は前部ねじりばね35に抗して下降動及び後傾動し、これに伴って第2連動リンク31が前傾することにより、前部補助バー34が下降する。すると、第1連動リンク29に対する前部補助バー34による規制がなくなるため、後部ねじりばね33により、前進用傾動フレーム20は前傾する。これにより、背もたれ板16の腰当て部16aが前進する。その結果、人が浅く腰掛けても、人の腰部が腰当て部16aで支持
される。また、第2連動リンク31が前傾しても第1連動リンク29の前向き突出部29aは後部ねじりばね33に抗して後傾することが許容されているため、人が深く腰掛けた場合は、背もたれ板16の腰当て部16aは前進動しない。なお、後部ねじりばね33のばね力よりも前部ねじりばね35のばね力を大きく設定している。
人が着座することで背もたれ板16の腰当て部16aを前進させる手段としては他の機構も採用できる。また、人の着座によって背もたれ板(或いは背もたれ)16の全体を前進させることも可能である。更に、本願発明を椅子に適用する場合は、人の着座で背もたれ板の一部又は全部が前進しなくても良いことはいうまでもない。
(3).背もたれ板の形態・構造
次に、背もたれ板16の形態の詳細を主として図5以下の図面に基づいて説明する。図5のうち(A)は概略背面図、(B)は背もたれの側面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)は(A)のD−D視断面図、図6は図3のVI−VI視断面図、図7は図3の VII-VII視断面図、図8は図3の VIII-VIII視断面図である。
背もたれ板16は、例えばエラストマーを含む樹脂ように、見掛けにおいてゴム状性質を有する樹脂素材からなっており、背もたれ板16は椅子に組み込んでいない状態では、一般の成人が手で持って簡単に曲げ変形させることができる。一般的には、ウレタンゴムのように艶のない外観を呈している場合が多いと言える。樹脂に限らず、いかなる素材も厳密に計測すると曲げ・引っ張り・圧縮に対して弾性変形はするが、ゴム状素材はその程度が顕著であることであり、本実施形態の背もたれ板16は、圧縮によって弾性変形することを視認できる程に、ゴム状性質を有することが見掛け上においても表れている。
背もたれ板16には、その表裏両面(前後両面)に縦長の多数の凸条群37,38を形成しており、このため、背もたれ板16の表裏両面とも平断面は凹凸状になっている。なお、凸条と溝条とは相対的な概念であり、どこを基準にするかで表現が異なるが、本実施形態では凸条として表示している。
背もたれ板16の表面に形成している前凸条37は、腰当て部16aにおいては、その左右中間部を除いて、左右両端部に行くに従って高さが高くなるように設定している。これは、背もたれ板16の曲率をあまり大きくすることなく、人の腰部に倣わせるためである。また、前凸条37はその高さが高いほど倒れ変形しやすくなって人の身体に対する当たりが柔らかくなるが、本実施形態では、人の腰の左右背面部への当たりを柔らかくする効果も発揮されているといえる。
腰当て部16aの左右両側部を除いた箇所では、前凸条37の高さはほぼ一定になっている。また、裏凸条38の高さも全体にわたってほぼ一定になっている。背もたれ板16の板厚に対する前凸条37及び裏凸条38の高さは必要に応じて設定できる。また、隣り合った凸条37,38のピッチも、人の身体やの当たり具合やデザイン等の種々の要素を勘案して設定できる。前面又は裏面若しくは前後両面において、凸条37,38の密度(換言するとピッチ)を場所によって異ならせることも可能である。
本実施形態では、前凸条37と裏凸条38とを前後に重なるように配置しているが、前後の凸条37,38を左右にずらしたり、前後の凸条37,38の左右ピッチを変えたりすることも可能である。背もたれ板16を薄い透明又は半透明若しくは透光性と成すことも可能であり、このような場合、前後の凸条37,38を同じ位置に形成していると、凸条37,38の位置が揃うため体裁が良い利点がある。また、背もたれ板16は平面視での形状が変わるように弾性変形するが、前後凸条37,38の位置が一致しているとこのような変形がしやすくなる利点がある。
図5(C)及び図6に示すように、背もたれ板16における腰当て部16aの左右端部の裏面には、ロアフレーム18に取り付けるための軸受け部39を突設しており、こる軸受け部39を例えばボルト(ピンでも良い)40でロアフレーム18に相対回動可能な状態で連結している。ロアフレーム18は平面視で前向き凹状に反っており、その左右中間部を挟んだ両側に設けたブラケット部18aを第6支軸19で前進用傾動フレーム20の起立部20aに連結している。
ロアフレーム18と背もたれ板16の腰当て部との間には、背もたれ板16の腰当て部16aが人の体圧によって後方に沈むように変形する(前向き凹の曲率が大きくなるように変形する)ことを許容するに十分な空間が空いている。
背もたれ板16における左右中間部の下端には後ろ向きボス部41が形成されており、このボス部41が第7支軸21で前進用傾動フレーム20のブラケット22に相対回動可能に連結されている。
図8に示すように、背もたれ板16の上端は後ろ向きに突出した水平片42になっており、この水平片42の下方に、水平状に延びる上横長リブ43を形成し、水平片42と上横長リブ43との間にアッパーフレーム17の前向き部17aを挟み込んでいる。また、アッパーフレーム17は側断面で前向き凹状に湾曲しており、背もたれ板16における肩当て部16bの下部裏面には、アッパーフレーム17の下部が重なる厚肉状の下横長リブ44を形成している。アッパーフレーム17と背もたれ板16との取り付けは、強制嵌合やねじ止め、或いは接着等の適宜の手段を採用できる。
アッパーフレーム17との間には空間が空いているため、肩当て部16bは後ろ向きに沈むような状態に多少は弾性変形し得る。但し、背もたれ板16の肩当て部16bには上下の横長リブ42,43が存在するため剛性が高くなっており、このため、大きくは変形しない。これは、背もたれ板16が過度に変形しすぎると却ってもたれ心地が悪くなるためである。
本実施形態では、背支柱8aとアッパーフレーム17とロアフレーム18と前進用傾動フレーム20とが請求項4に記載したバックフレームを構成している。いうまでもないが、バックフレームの形態は自由に設定できる。背支柱は揺動フレームとは別体の構成とすることも可能であり、または、揺動フレーム等の部材は板金加工品でなくても良いことはいうまでもない。
(4).まとめ
すでに説明したように、人が着座すると座2が下降して背もたれ板16の腰当て部が前進する。また、着座した人が背もたれ板16にもたれ掛かると、背もたれ板16は後傾動する。そして、背もたれ板16が側面視及び平面視で大きく弾性変形することにより、高いフィット性とクッション性とを確保できる。また、背もたれ板16で人の身体を直接に受ける場合であっても、前凸条37によって突き上げを受けることはない。
ゴム状の性質を有する素材の場合、身体への当たりの柔らかさや柔軟性(弾性)に優れているが、例えばスリットの群を形成すると過度に広がり変形して、身体に対する支持機能が却って低下する虞がある。これに対して本実施形態では、ゴム状の性質を有しつつ凸条37,38を形成したものであるため、背もたれ板16が過度に広がり変形することはなく、使用者は快適なもたれ心地を体感することができる。
ところで、ロッキング椅子では、背もたれにもたれ掛かったとき、人の臀部と座との相
対位置は一定であるのに対して座と背もたれとが離反する傾向を呈することに起因したいわゆるシャツ捲れの現象が生じることが多いが、本実施形態では、ロアーフレーム18が平面視で前向き凹部状でその後部が前進用傾動フレーム20に連結されているため、着座した人が背もたれ板16にもたれ掛かる、ロアーフレーム18は側面視で前傾する傾向を呈して、背もたれ板16も下降する傾向を呈しており、このため、座2と背もたれ板16との相対距離が大きくなることを防止または抑制してシャツ捲れの現象を防止または著しく抑制できる利点がある。
なお、本実施形態の背もたれ板16はその前面を露出した状態にしているが、図5(C)に示すように、背もたれ板16の前面に薄い可撓性の表面板45を重ねることや、図5(C)に二点鎖線で示すように、背もたれ板16の前面にクッション層46をインサート成形等の適宜手段で設けることも可能である。もちろん、表面板45とクッション層46とを併用することも可能である。背面は露出したままでも良いし、カバーを設けても良い。
本実施形態のように背もたれ板に適用する場合、背もたれ板の上部は、その左右中間部のみをアッパーフレーム17に取り付けても良い。また、背もたれ板をその上端よりもある程度下方の部位においてアッパーフレーム17に取り付けることにより、アッパーフレーム17よりも上方の部分を自由端となし、人がもたれ掛かるとこの自由端の部位がその付け根を中心にして後方に倒れ変形するように構成することも可能である。
背もたれ板16の腰当て部16aを強制的に押すランバーサポートを設けることも可能であり、本実施形態の背もたれ板16は容易に変形するため、ランバーサポートを有する椅子に適用するとその価値がより一層発揮される。
(5).他の実施形態
図9及び図10では他の実施形態を示している。この実施形態では、椅子の背もたれ板に限定せずに、身体用支持板48の例として表示している。図9のうち(A)に示す例では、表裏に凸条49を形成した場合において、前凸条49よりも裏凸条49の高さを高くしており、(B)に示す例では前面のみに凸条49を形成している。
(C)に示す例では、支持板48の前面には溝条50を形成して裏面には凸条49を形成している。(D)に示す例では、支持板48の表面には縦凸条49を形成して裏面には縦凸条49と横凸条50との群を形成している。この場合、裏面の横凸条51を平面視凹状に形成することにより、支持板48の撓み易さが縦方向と横方向とで変わるように設定している。一点鎖線で示すように、前面にも横長の横凸条51を形成することは可能である。(E)に示す例では、支持板48の表面には細幅で高さの高い凸条49を形成し、裏面には高さが低くて幅広の凸条49を形成している。
(F)(G)に示す例では、支持板の表裏に円形等の突起の群を形成している((G)は(F)のG−G視断面図であ。)。突起52の形状は角形等の手段の形態を採用できる。
図10のうち(A)(B)に示す例では、支持板48の前面に縦横の格子状凸条49を形成しており((B)は(A)のB−B視断面図である)、(C)に示す例では、支持板48の前面に斜め格子状の凸条49を形成している。(D)に示す例では支持板の前面に縦凸条49を形成して裏面には横長凸条49を形成している((E)は(D)のE−E視断面図である。)。(F)(G)に示す例では、凸条49は支持板48の周縁よりも内側に形成されており、かつ、(G)に示す例では、凸条49は断続的に形成されている。
以上の各例は背もたれ板を一体構造とした場合であったが、図10(H)(I)ではインサート成形法や二色成形法、ある対は接着等によって複合構造とした例を示している。このうち(H)に示す例では、平板状の基層48aと凸条49を有する凹凸層48bとが一体化されている。凹凸層48bはゴム状素材又はエラストマー等の純然たるゴム素材と成すのが好ましい。(I)に示す例では、凸条49のみをゴム状素材で形成している。
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象としては、椅子の座板に使用することも可能である。また、支持板の外径や厚さなどは対象品に応じて種々に設定できる。
(7).第1本実施形態の利点
本実施形態は背もたれ付き椅子に関する独自の改良を含んでいる。この点を次に述べる。
さて、椅子には様々の種類があり、それぞれの種類に応じて様々の改良がなされている。その例として例えば特許文献1(特公昭44−20784号公報)には、着座した人が背もたれにもたれ掛かると座が前傾する椅子が開示されており、他方、特許文献2(特公昭46−27517号公報)には、人が着座すると座がその前後略中間部を中心にして側面視で傾動し、この座の後傾動に連動して背もたれが傾動するようになっている椅子が記載されている。両特許文献とも、背もたれを座に連動させる手段としては一種のリンク機構を採用している。
特許文献1のものは、人が着座しただけでは座及び背もたれとも姿勢に変化はなく、着座者が背もたれに凭れ掛かって背もたれに大きなモーメントが掛かると、テコの原理で座の後部が上向きに突き上げられて座を前傾させるものであり、その目的は、ロッキング状態で人の身体を伸ばしやすくすることによって安楽状態を確保せんとするものである。
他方、特許文献2では、例えば人が座の前部に腰掛けると背もたれは大きく前傾して人を前傾姿勢に押し勝手となり、すると、使用者は不快感を感じて座り位置を後ろにずらすことになる。すなわち、特許文献2は、使用者が座の前部に腰掛けるいわゆるチョン掛け(或いはチョイ掛け)を行うと不快感を与えることにより、正しい着座姿勢を取らせるようにしたものである。(以上、背景技術)。
人が椅子を使用する場合、必ずしも深く腰掛けるとは限らず、浅く腰掛けることはよくある。椅子の使い方は人によって様々であるから、椅子の設計思想としては、腰掛け位置が違っていても使用者にできるだけ負担をかけないようにするというユーザーフレンドリーな発想も必要である(オフィス等での業務では浅く腰掛けることは良くあるから、このような使用状態に配慮する必要性は高い)。
しかし、特許文献1のものはロッキング状態のことしか想定されておらず、いわゆる浅く腰掛けた場合への配慮はなんら成されてない。他方、特許文献2のものは、いわば使用者に深く腰掛ける癖をつけさせようとするもので、これも使用者に対する配慮が十分とは言い難い。
更に述べると、着座した人の身体への負担を軽減するためには、人の腰部を支持して背筋を伸ばした状態を採りやすくすることが重要であり、そこで、近年、人の腰椎部分を集中的に支持するランバーサポート付きの椅子が普及しているのであるが、特許文献2のものは背もたれ全体を前傾させるものであるため、椅子の使用者は背もたれの上部を背もたれで押されて猫背状態になってしまい、このため背筋を伸ばすことはできず、従って、特許文献2ではランバーサポート機能は確保することはできない。
更に、特許文献2の構成では、人が浅く腰掛けると座は前傾姿勢になるため、人は上半身を伸ばした直立させた姿勢を採り難いという問題もある。
本実施形態に記載れている背もたれ支持機構は、このような現状の改善も意図しており、よりユーザーフレンドリーな椅子を提供することを課題とするものである。(以上、発明の開示のうち「発明が解決しようとする課題」)。
そして、本実施形態では、上記の課題を解決するための手段として、座と、着座した人の背中と腰とが当たり得る背もたれと、人が着座すると背もたれの少なくとも下部を前向きに突出させる連動手段とを備えているものであるが、この連動手段は、人の着座によって背もたれの少なくとも下部を前進させるばね手段を備えており、背もたれは、ばね手段に抗して後退動させることができる。
更に本実施形態の発明は、好適な態様として、a.椅子は背支柱を有する揺動フレームを備えており(背支柱は揺動フレームと一体構造でもよいし別体構造でもよい)、背もたれの上部は背支柱に下降動可能な状態で取り付けられている構造、b.連動手段はリンク機構を備えており、背もたれの少なくとも下部を着座によって前進させるばね手段がリンクを連結する軸に被嵌したねじりばねであること、c.連動手段は起立部を有する背もたれ前進用フレームを備えており、この前進用フレームの起立部に背もたれの少なくとも腰当て部を相対回動可能に連結している、という構成を含んでいる。
本実施形態によると、人が着座すると背もたれの少なくとも下部が前向きに突出するため、人が座に浅く腰掛けても着座者の腰部を背もたれで後ろから支えることができる。すなわち背もたれはランバーサポート機能を発揮できるのであり、このため、いわゆるチョン掛けのように浅い腰掛け状態であっても、使用者の身体への負担を著しく軽減できる。
そして、ばね手段によって背もたれを前進させるものであるため、例えば深く腰掛けた場合には背もたれが前進することを阻止でき、従って、深く腰掛けた場合の不具合が生じることはない。この場合、ばね手段としてねじりコイルばねを使用すると、ばねはリンクを連結するための軸に巻くだけでよいため、ばねの設置スペースは実質的に必要はなく、従って、連動手段を著しくコンパクト化できる利点がある。
また、起立部を有する背もたれ前進用フレームを採用すると、背もたれ前進用フレームは座の下方や背支柱の内側に隠れるように配置できるため、連動手段が椅子の後方向や座の左右外側にはみ出すことを防止して、より一層コンパクト化することができる。また、実施形態のように座の後部の下方において左右に配置されたリンクの群やフレームによって連動手段を構成することによっても、コンパクト化が達成できる。なお、各リンクやフレーム類は板状やパイプ状、中実棒材状など様々の断面形状に設定できる。また、平面視で前向き凹状のロアフレーム18を使用すると、リンク類を左右背支柱で挟まれた内側の部分にまとめることができるため、よりコンパクト化できる。(以上、発明の効果)。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図8では第1実施形態を示している。
(1).椅子の概要
まず、図1〜3に基づいて椅子の概要を説明する。
椅子は、脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は、水平状に延びる枝足4の群と脚支柱(ガスシリンダ)5とを備えており、脚支柱5の上端に上向き開口のベース6を取り付けている。座2は、座受け枠7とその上面に取り付けた座板(明瞭には図示せず)とを備えており、座板にクッションを張っている。
ベース6の左右両側には、後部を背支柱8aと成した揺動フレーム8が配置されており、揺動フレーム8は、その前端部を中心にして後傾動するようにベース6に左右長手の第1支軸9で取り付けられている。そして、座受け枠7の前部とベース6とは左右2本の前部支持リンク10で連結され、座受け枠7の後部と左右の揺動フレーム8とは2本の後部支持リンク11によって連結されている。図3に示すように、左右の背支柱8aはその上部において補強材8cで連結されている。
前部支持リンク10は左右長手の第2支軸10′によってベース6に連結されていると共に、第3支軸12によって座受け枠7に回動可能に連結されており、また、後部支持リンク11は第4支軸13によって揺動フレーム8に回動可能に連結されていると共に、第5支軸14によって座受け枠7に回動可能に連結されている。前後支持リンク10,11は人が着座していない状態で側面視後傾しており、このため、人が着座すると前後支持リンク10,11は後傾動する。ベース6において第2支軸10′が嵌まるように形成した穴は側面視で略前後に延びる長穴になっている。
図2(A)に簡単に示すように、ベース6の内部には、第2支軸15の後退動を弾性的に支持する圧縮コイルばね15が配置されている。圧縮コイルばね15は背もたれ3の後傾動を弾性的に支持するばね手段の一例であり、人が着座しただけでは全く又は殆ど縮み変形せず、人が背もたれ3にもたれ掛かると縮み変形するように強さを設定している。図2から容易に理解できるように、本実施形態の椅子は、第2支軸10′が長穴に沿ってスライドすることで座2が背もたれ3の後傾動に連動して後退動及び後傾動するシンクロタイプになっているが、背もたれ3のみが後傾するタイプであっても良いことはいうまでもない。
背もたれ3は、本願発明を適用した背もたれ板16を主要要素としている。図面では背もたれ板16はその前を露出させているが、クッション材等の緩衝材又は表皮材を配置すことも可能である。背もたれ板16は、人がもたれ掛かっていない状態で全体として後傾しつつ、平面視では全体として前向き凹状に湾曲している。また、下部は、着座した人の腰に当たる部分を中心にして上下適宜範囲は、側面視で前向き凸状に湾曲している(この部分を腰当て部と称して符号16aで示す。)。更に、上部は前向き凸状に湾曲した肩当て部16bになっている。勿論、肩当て部16bを設けずに、上部を単純な後傾姿勢と成すことも可能であり、また、肩当て部16bを設けることに代えて又はこれに加えて、ヘッドレストを一体に設けることも可能である。
背もたれ板16のうち肩当て部16bの背面部は左右長手のアッパーフレーム17を介して背支柱8aに取り付けられている。また、背もたれ板16のうち腰当て部16aの頂点部はその左右端部がロアーフレーム18及び第6軸19を介して前進用傾動フレーム20に取り付けられており、更に、背もたれ板16の左右中間部の下端(従って腰当て部16aの左右中間部の下端)は、第7支軸21を介して前進用傾動フレーム20のブラケット22に連結されている(前進用傾動フレーム20については後述する。)。
(2).背もたれの自動前進機構
ところで、人が椅子に腰掛ける場合、常に深く腰掛けるとは限らず、浅く腰掛ける場合も多い。その場合、背もたれが人の腰に当たっていないと人の姿勢が不安定になる虞がある。そこで本実施形態では、人が着座したら背もたれ板16の下部(換言すると背もたれ3の下部)を前進動させることにより、人が浅く腰掛けても人の腰を背もたれ板16の腰当て部16aで支持し、かつ、人が深く腰掛けた場合はばね手段に抗して背もたれ板16の腰当て部16aを後退させることにより、人が深く腰掛けることを阻害しないようにしている。この点を図4に基づいて説明する。
前記した前後支持リンク10,11は、人の着座で背もたれ3の下部を前進させる連動手段(自動前進機構)の要素となるものであり、前後支持リンク10,11が側面視で後傾していることにより、人の着座によって座2は後傾しつつ下降動し、座2の後傾動及び下降動が、図4の骨組み図に示す連動手段によって、背もたれ板16の腰当て部16aの前進動に変換される。以下、説明する。
連動手段の一環として、左右の揺動フレーム8の後部には、左右長手の第8支軸24によって前進用傾動フレーム20が連結されている。前進用傾動フレーム20の後部は側面視で上向きに延びる起立部20aになっており、この起立部20aに、前記ロアーフレーム18が第8支軸24によって回動可能に連結されていると共に、起立部20aに形成したブラケット22に、背もたれ板16の下端が第6支軸19で連結されている。
従って、前進用傾動フレーム20が前進動すると背もたれ板16の腰当て部16aは前進動するが、この場合、背もたれ板16の上部が取り付くアッパーフレーム17を背支柱8aに対して上下動可能に取り付けることにより、背もたれ板16の腰当て部16aが大きく前進動することを容易ならしめている。アッパーフレーム17を背支柱8aに対して上下動させる構造は図2(B)に表示している。
すなわち、図2(B)に表示されているように、アッパーフレーム17に上下2本の左右横長ピン25で中空状体26を連結し、中空状体26を、背支柱8aの上端に設けたガイド筒27に上下スライド自在に嵌め入れている。そして、ガイド筒27に内蔵したばね28により、アッパーフレーム17を上向きに付勢している。ばね28の上端は下部の横長ピン25で支持しているが、他の支持構造を採用してもよい。いうまでもないが、背もたれ板16の上部を上下動可能に支持する機構は様々の構造を採用できる。
図4に戻って連動手段の説明を続ける。前進用傾動フレーム20を揺動フレーム8に連結している第8支軸24は、前進用傾動フレーム20の左右外側に配置された左右の第1連動リンク29に挿通しており、第1連動リンク29の後端と前進用傾動フレーム20とは第9支軸30で連結されている。従って、前進用傾動フレーム20と第1連動リンク29とは第8支軸24を中心にして一緒に回動する。第1連動リンク29は第8支軸24よりも前方に延びる前向き突出部29aを有している。
第1連動リンク29の左右外側には、第8支軸24から手前に延びる第2連動リンク31が配置されており、第2連動リンク31の後端に第8支軸24が貫通している。従って、前進用傾動フレーム20の前端部と第1連動リンク29と第2連動リンク31の後端とが第8支軸24によって連結されている。第2連動リンク31は第8支軸24を中心にして回動可能であり、かつ、その前端部には、当該第2連動リンク31と後部支持リンク11との相対回動を許容するための長穴31aが形成されており、この長穴31aに、後部支持リンク11と座受け枠7とを連結した第5支軸14が貫通している。
左右の第2連動リンク31は左右長手の後部補助バー32で連結されており、後部補助バー32に第1連動リンク29の前向き突出部29aが上方から当たっている。更に、第8支軸24には背もたれ前進用ばね手段の一例として後部ねじりばね33が被嵌しており、この後部ねじりばね33の後ろ向き端部33aを第9支軸30(又は第1連動リンク29)に下方から当てて、前向き端部33bを後部補助バー32(第2連動リンク31でもよい)に下方から当てている。従って、第1連動リンク29及び前進用傾動フレーム20は、後部ねじりばね33によって第8支軸24を中心に前傾する方向に付勢されている。換言すると、背もたれ板16の腰当て部16aは、後部ねじりばね33によって前進する方向に付勢されている。
他方、左右の後部支持リンク11は前部バー34によって一体に連結されており、第4支軸13にばね手段の一例として前部ねじりばね35を被嵌し、その一端部35aを前部補助バー34(又は後部支持リンク11)に下方から当て、前部ねじりばね35の他端部35bは例えばベース6の背面(或いは揺動フレーム8の下面)に当てている。従って、後部支持リンク11は前部ねじりばね35によって前傾方向に付勢されている。前後の支持リンク10,11はストッパー手段で前向き回動姿勢が保持されている。ストッパー手段としては、例えば、後部支持リンク11を座受け枠7の下面に当てるとよい。また、前後支持リンク10,11の後傾姿勢を規制するストッパー手段としては、第5支軸14を揺動フレーム8に上方から当てたらよい。
人が着座すると、座2は前部ねじりばね35に抗して下降動及び後傾動し、これに伴って第2連動リンク31が前傾することにより、前部補助バー34が下降する。すると、第1連動リンク29に対する前部補助バー34による規制がなくなるため、後部ねじりばね33により、前進用傾動フレーム20は前傾する。これにより、背もたれ板16の腰当て部16aが前進する。その結果、人が浅く腰掛けても、人の腰部が腰当て部16aで支持される。また、第2連動リンク31が前傾しても第1連動リンク29の前向き突出部29aは後部ねじりばね33に抗して後傾することが許容されているため、人が深く腰掛けた場合は、背もたれ板16の腰当て部16aは前進動しない。なお、後部ねじりばね33のばね力よりも前部ねじりばね35のばね力を大きく設定している。
人が着座することで背もたれ板16の腰当て部16aを前進させる手段としては、他の機構も採用できる。また、人の着座によって背もたれ板(或いは背もたれ)16の全体を前進させることも可能である。更に、本願発明を椅子に適用する場合は、人の着座で背もたれ板の一部又は全部が前進しなくても良いことはいうまでもない。
(3).背もたれ板の形態・構造
次に、背もたれ板16の形態の詳細を主として図5以下の図面に基づいて説明する。
背もたれ板16は、例えばエラストマーを含む樹脂ように、見掛けにおいてゴム状性質を有する樹脂素材からなっており、背もたれ板16は椅子に組み込んでいない状態では、一般の成人が手で持って簡単に曲げ変形させることができる。一般的には、ウレタンゴムのように艶のない外観を呈している場合が多いと言える。樹脂に限らず、いかなる素材も厳密に計測すると曲げ・引っ張り・圧縮に対して弾性変形はするが、ゴム状素材はその程度が顕著であることであり、本実施形態の背もたれ板16は、圧縮によって弾性変形することを視認できる程に、ゴム状性質を有することが見掛け上においても表れている。
背もたれ板16には、その表裏両面(前後両面)に縦長の多数の凸条群37,38を形成しており、このため、背もたれ板16の表裏両面とも平断面は凹凸状になっている。なお、凸条と溝条とは相対的な概念であり、どこを基準にするかで表現が異なるが、本実施形態では凸条として表示している。
背もたれ板16の表面に形成している前凸条37は、腰当て部16aにおいては、その左右中間部を除いて、左右両端部に行くに従って高さが高くなるように設定している。これは、背もたれ板16の曲率をあまり大きくすることなく、人の腰部に倣わせるためである。また、前凸条37はその高さが高いほど倒れ変形しやすくなって人の身体に対する当たりが柔らかくなるが、本実施形態では、人の腰の左右背面部への当たりを柔らかくする効果も発揮されているといえる。
腰当て部16aの左右両側部を除いた箇所では、前凸条37の高さはほぼ一定になっている。また、裏凸条38の高さも全体にわたってほぼ一定になっている。背もたれ板16の板厚に対する前凸条37及び裏凸条38の高さは必要に応じて設定できる。また、隣り合った凸条37,38のピッチも、人の身体やの当たり具合やデザイン等の種々の要素を勘案して設定できる。前面又は裏面若しくは前後両面において、凸条37,38の密度(換言するとピッチ)を場所によって異ならせることも可能である。
本実施形態では、前凸条37と裏凸条38とを前後に重なるように配置しているが、前後の凸条37,38を左右にずらしたり、前後の凸条37,38の左右ピッチを変えたりすることも可能である。背もたれ板16を薄い透明又は半透明若しくは透光性と成すことも可能であり、このような場合、前後の凸条37,38を同じ位置に形成していると、凸条37,38の位置が揃うため体裁が良い利点がある。また、背もたれ板16は平面視での形状が変わるように弾性変形するが、前後凸条37,38の位置が一致していると、このような変形がしやすくなる利点がある。
図5(C)及び図6に示すように、背もたれ板16における腰当て部16aの左右端部の裏面には、ロアフレーム18に取り付けるための軸受け部39を突設しており、この軸受け部39を、例えばボルト(ピンでも良い)40でロアフレーム18に相対回動可能な状態で連結している。ロアフレーム18は平面視で前向き凹状に反っており、その左右中間部を挟んだ両側に設けたブラケット部18aを、第6支軸19で前進用傾動フレーム20の起立部20aに連結している。
ロアフレーム18と背もたれ板16の腰当て部との間には、背もたれ板16の腰当て部16aが人の体圧によって後方に沈むように変形する(前向き凹の曲率が大きくなるように変形する)ことを許容するように十分な空間が空いている。
背もたれ板16における左右中間部の下端には後ろ向きボス部41が形成されており、このボス部41が第7支軸21で前進用傾動フレーム20のブラケット22に相対回動可能に連結されている。
図8に示すように、背もたれ板16の上端は後ろ向きに突出した水平片42になっており、この水平片42の下方に、水平状に延びる上横長リブ43を形成し、水平片42と上横長リブ43との間にアッパーフレーム17の前向き部17aを挟み込んでいる。また、アッパーフレーム17は側断面で前向き凹状に湾曲しており、背もたれ板16における肩当て部16bの下部裏面には、アッパーフレーム17の下部が重なる厚肉状の下横長リブ44を形成している。アッパーフレーム17と背もたれ板16との取り付けは、強制嵌合やねじ止め、或いは接着等の適宜の手段を採用できる。
アッパーフレーム17との間には空間が空いているため、肩当て部16bは後ろ向きに沈むような状態に多少は弾性変形し得る。但し、背もたれ板16の肩当て部16bには上下の横長リブ42,43が存在するため剛性が高くなっており、このため、大きくは変形しない。これは、背もたれ板16が過度に変形しすぎると却ってもたれ心地が悪くなるためである。
本実施形態では、背支柱8aとアッパーフレーム17とロアフレーム18と前進用傾動フレーム20とでバックフレームを構成している。いうまでもないが、バックフレームの形態は自由に設定できる。背支柱は揺動フレームとは別体の構成とすることも可能であり、または、揺動フレーム等の部材は板金加工品でなくても良いことはいうまでもない。
(4).まとめ
すでに説明したように、人が着座すると座2が下降して背もたれ板16の腰当て部が前進する。また、着座した人が背もたれ板16にもたれ掛かると、背もたれ板16は後傾動する。そして、背もたれ板16が側面視及び平面視で大きく弾性変形することにより、高いフィット性とクッション性とを確保できる。また、背もたれ板16で人の身体を直接に受ける場合であっても、前凸条37によって突き上げを受けることはない。
ゴム状の性質を有する素材の場合、身体への当たりの柔らかさや柔軟性(弾性)に優れているが、例えばスリットの群を形成すると過度に広がり変形して、身体に対する支持機能が却って低下する虞がある。これに対して本実施形態では、ゴム状の性質を有しつつ凸条37,38を形成したものであるため、背もたれ板16が過度に広がり変形することはなく、使用者は快適なもたれ心地を体感することができる。
ところで、ロッキング椅子では、背もたれにもたれ掛かったとき、人の臀部と座との相対位置は一定であるのに対して座と背もたれとが離反する傾向を呈することに起因したいわゆるシャツ捲れの現象が生じることが多いが、本実施形態では、ロアーフレーム18が平面視で前向き凹部状でその後部が前進用傾動フレーム20に連結されているため、着座した人が背もたれ板16にもたれ掛かると、ロアーフレーム18は側面視で前傾する傾向を呈して、背もたれ板16も下降する傾向を呈しており、このため、座2と背もたれ板16との相対距離が大きくなることを防止または抑制して、シャツ捲れの現象を防止または著しく抑制できる利点がある。
なお、本実施形態の背もたれ板16はその前面を露出した状態にしているが、図5(C)に示すように、背もたれ板16の前面に薄い可撓性の表面板45を重ねることや、図5(C)に二点鎖線で示すように、背もたれ板16の前面にクッション層46をインサート成形等の適宜手段で設けることも可能である。もちろん、表面板45とクッション層46とを併用することも可能である。背面は露出したままでも良いし、カバーを設けても良い。
本実施形態のように背もたれ板に適用する場合、背もたれ板の上部は、その左右中間部のみをアッパーフレーム17に取り付けても良い。また、背もたれ板をその上端よりもある程度下方の部位においてアッパーフレーム17に取り付けることにより、アッパーフレーム17よりも上方の部分を自由端となし、人がもたれ掛かるとこの自由端の部位がその付け根を中心にして後方に倒れ変形するように構成することも可能である。
背もたれ板16の腰当て部16aを強制的に押すランバーサポートを設けることも可能であり、本実施形態の背もたれ板16は容易に変形するため、ランバーサポートを有する椅子に適用するとその価値がより一層発揮される。
(5).他の実施形態
図9及び図10では他の実施形態を示している。この実施形態では、背もたれ板は符号48で表示している。図9のうち(A)に示す例では、背もたれ板48の表裏に凸条49を形成した場合において、前凸条49よりも裏凸条49の高さを高くしており、(B)に示す例では前面のみに凸条49を形成している。
(C)に示す例では、背もたれ板48の前面には溝条50を形成して裏面には凸条49を形成している。(D)に示す例では、背もたれ板48の表面には縦凸条49を形成して裏面には縦凸条49と横凸条50との群を形成している。この場合、裏面の横凸条51を平面視凹状に形成することにより、背もたれ板48の撓み易さが縦方向と横方向とで変わるように設定している。一点鎖線で示すように、前面にも横長の横凸条51を形成することは可能である。(E)に示す例では、背もたれ板48の表面には細幅で高さの高い凸条49を形成し、裏面には高さが低くて幅広の凸条49を形成している。
(F)(G)に示す例では、背もたれ板の表裏に円形等の突起の群を形成している((G)は(F)のG−G視断面図である。)。突起52の形状は、角形等の種々の形態を採用できる。
図10のうち(A)(B)に示す例では、背もたれ48の前面に縦横の格子状凸条49を形成しており((B)は(A)のB−B視断面図である)、(C)に示す例では、背もたれ48の前面に斜め格子状の凸条49を形成している。(D)に示す例では背もたれ48の前面に縦凸条49を形成して裏面には横長凸条49を形成している((E)は(D)のE−E視断面図である。)。(F)(G)に示す例では、凸条49は背もたれ板48の周縁よりも内側に形成されており、かつ、(G)に示す例では、凸条49は断続的に形成されている。
(6).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、椅子の座板に使用することも可能である。また、背もたれ板又は座板の外形や厚さなどは種々に設定できる。