JP6187779B2 - γ−グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法 - Google Patents

γ−グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、γ−グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法に関する。具体的には、本発明は、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体との酵素反応で得られたγ-グルタミルバリルグリシンとの混合溶液中に存在する残存バリルグリシン又はその塩の量を調節することにより、γ-グルタミルバリルグリシン結晶を効率的に製造する方法に関する。
γ-グルタミルバリルグリシン(γ−Glu−Val−Gly)は、食品にコク味を与えるペプチドとして知られている(特許文献1)。γ-グルタミルバリルグリシンは、例えば、化学合成法または酵素法により製造される。中でも、酵素法によりγ-グルタミルバリルグリシンを製造する場合、例えば、バリルグリシン又はその塩をγ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、以下、「GGT」とも言う)の存在下にグルタミンのようなグルタミル基供与体を作用させ、γ-グルタミルバリルグリシンを含む溶液を得た後、当該溶液からγ-グルタミルバリルグリシンを得ることが行われる(非特許文献1)。
WO2007/055393号公報
Suzuki, H. et al. (2008) Improvement of the flavor of amino acids and peptides using bacterial γ-glutamyltranspeptidase. In Recent High lights in Flavor Chemistry & Biology. Ed. by Hofmann, T. et al. p.227-232, Deutsche Forschungsanstalt fur Lebensmittelchemie
本発明者がバリルグリシンを含有するγ−グルタミルバリルグリシン溶液からのγ−グルタミルバリルグリシン晶析を試みた結果、γ-グルタミルバリルグリシン溶液にバリルグリシン又はその塩が多く残存する場合、溶液がゲル化し、晶析できない事例が多く存在する課題を見出した。
したがって、本発明は、γ-グルタミルバリルグリシン結晶を効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、また、より大きな結晶サイズを有するγ-グルタミルバリルグリシン結晶を製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、γ-グルタミルバリルグリシン結晶を効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、バリルグリシンを含有するγ−グルタミルバリルグリシン溶液からのγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る方法、例えば、バリルグリシンを出発物質として酵素法によりγ-グルタミルバリルグリシンを得る方法に際し、バリルグリシンの残存量を調節してからγ-グルタミルバリルグリシン結晶を晶析することによって、ゲル化の問題もなく、効率的にγ-グルタミルバリルグリシン結晶を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、当該方法で晶析したγ-グルタミルバリルグリシン結晶は、従来の方法で得られるものと比べて、大きな結晶サイズを有するものであることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものであり得る。
[1] γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物の存在下、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体とを反応させ、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る工程、ここで前記混合溶液中に存在するγ−グルタミルバリルグリシンに対するバリルグリシンの質量比は20質量%以上である;
得られた混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を、当該溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンの質量に対して0.1質量%以上20質量%未満に調節してγ−グルタミルバリルグリシン溶液を得る工程;及び
前記γ−グルタミルバリルグリシン溶液を晶析してγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る工程、
を含む、γ−グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法。
[2] 前記混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量の調節が、当該溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンの質量に対して1質量%〜18質量%の範囲内で行われる、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量の調節が、前記混合溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンは吸着樹脂に吸着させるが、前記混合溶液中のバリルグリシン又はその塩は前記吸着樹脂を貫流させた後、γ−グルタミルバリルグリシンを吸着樹脂から溶離することによって行われる、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] γ−グルタミル基供与体がグルタミンである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物が、腸内細菌科に属する細菌である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記細菌が、エシェリヒア・コリである、上記[5]に記載の方法。
[7] バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体との反応が、水又は緩衝液から選択される溶媒中で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[8] γ−グルタミルバリルグリシンの結晶であって、結晶中、バリルバリン、バリルバリン塩、バリルバリルグリシン及びバリルバリルグリシン塩から選ばれる1種以上を2.0質量%以下で含み、かつ長軸方向長さ35μm以上の結晶の短軸方向直径の平均値が2.1μm以上である、γ−グルタミルバリルグリシン結晶。
[9] γ−グルタミルバリルグリシンの結晶を光学顕微鏡で撮影した画像の415μm×332μmの領域に結晶全体の像が全て含まれる結晶において、長軸方向長さ35μm以上の結晶の短軸方向直径の平均値が2.1μm以上である、上記[8]記載のγ−グルタミルバリルグリシン結晶。
[10] γ−グルタミルバリルグリシン結晶中のバリルグリシンの濃度が3質量%以下である、上記[8]又は[9]記載のγ−グルタミルバリルグリシン結晶。
本発明により、γ-グルタミルバリルグリシン結晶を効率的に製造することができる。
また、本発明により、より大きな結晶サイズを有するγ-グルタミルバリルグリシン結晶を製造することができる。
また、本発明によって、より大きな結晶が得られるため、工業的な処理により適した優れた処理プロセスが実現される。
バリルグリシン濃度を10質量%とした場合(実施例6)に得られた、本発明のγ-グルタミルバリルグリシン結晶の光学顕微鏡写真を示す。 バリルグリシン濃度を15質量%とした場合(実施例7)に得られた、本発明のγ-グルタミルバリルグリシン結晶の光学顕微鏡写真を示す。 バリルグリシン濃度を20質量%とした場合(比較例2)に得られた、γ-グルタミルバリルグリシン結晶の光学顕微鏡写真を示す。 バリルグリシン濃度を25質量%とした場合(比較例3)に得られた、γ-グルタミルバリルグリシン結晶の光学顕微鏡写真を示す。 比較例5で得られた、γ-グルタミルバリルグリシン結晶の光学顕微鏡写真を示す。
[1]γ-グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法
本発明は、(1)γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物の存在下、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体とを反応させ、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る工程;(2)得られた混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量をγ−グルタミルバリルグリシンの質量に対して0.1質量%以上20質量%未満に調節してγ−グルタミルバリルグリシン溶液を得る工程;及び(3)前記γ−グルタミルバリルグリシン溶液を晶析してγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る工程、を含む、γ−グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法に関するものであり得る。
(1)γ−グルタミルバリルグリシン混合溶液を得る工程
γ−グルタミルバリルグリシン混合溶液を得る工程としては、例えば、(a)γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物の存在下、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体とを反応させることにより、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る方法、(b)特開2012−85637号公報(当該文献はここに参考として組み込まれる)記載のように、グルタチオン合成酵素又は同酵素を含有する微生物の存在下、γ−グルタミルバリンとグリシンとを反応させることによりγ−グルタミルバリルグリシンを生成し、さらに、該酵素又は該酵素を含有する微生物が保有するγグルタミルトランスフェラーゼによりγ−グルタミルバリルグリシンが分解されてバリルグリシンが反応液中に生成することにより、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る方法、さらに、(c)γ−グルタミルバリルグリシンを合成して製造した溶液を工業的処理工程において、酸性下で熱処理する際にバリルグリシンが生じる場合、がある。これらのいずれであっても、本発明の結晶の製造方法を適用することができるが、中でも(a)γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物の存在下、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体とを反応させることにより、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る方法が好ましい。以下、(a)について更に詳細に説明する。
通常、γ−グルタミルトランスフェラーゼによるバリルグリシンとγ−グルタミル基供与体との反応により、効率良く転移反応が進行したバリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を取得することが理想である。一般的にγ−グルタミルトランスフェラーゼによる転移反応は、受容体、あるいは受容体とγ−グルタミル基供与体の比率によって反応効率が変化し、未反応の受容体が残存することが知られている[Amino acids 2007 32: 333-340.γ-Glutamyl compounds and their enzymatic production using bacterialγ-glutamyltranspeptidase. Suzuki H.ら(当該文献はここに参考として組み込まれる)]。受容体としてバリルグリシンを用いる場合にも、反応液中内に未反応のバリルグリシンが残存する。残存する未反応のバリルグリシンの量は、収率に依存する。およその反応収率と残存するバリルグリシンの量との関係は、収率30%程度でγ−グルタミルバリルグリシンに対するバリルグリシンの質量比が134質量%程度となり、収率70%程度で該質量比が25質量%程度となる。
具体的に、前記混合溶液中に存在する、γ−グルタミルバリルグリシンに対するバリルグリシンの質量比は、例えば、20質量%以上、好ましくは25〜850質量%、好ましくは、30〜134質量%、より好ましくは、40〜86質量%である。ここで、質量%は、フリー体換算で表現した数値である。「フリー体換算」とは、混合液中バリルグリシン、及びγ−グルタミルバリルグリシンは塩となる場合、バリルグリシン、γ−グルタミルバリルグリシンのそれぞれフリー体(塩ではない形)での質量に換算することを意味する。
ここで、前記混合溶液中に存在する、γ−グルタミルバリルグリシンまたはその塩の量は、フリー体換算で表現すると、例えば、0.05〜50質量%、好ましくは、0.1〜50質量%、より好ましくは、0.5〜50質量%である。
γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)は、大サブユニット及び小サブユニットからなる。GGTは野生型であっても、変異型であってもよい。ここで、アミノ酸は、特記しない限りL-体である。
野生型GGTとしては、エシェリヒア・コリのggt遺伝子によりコードされるGGT、及び、そのホモログ、例えばエシェリヒア・コリのGGT、特に小サブユニットと構造が類似する他の微生物のGGTが挙げられる。
エシェリヒア・コリK-12株のggt遺伝子の塩基配列は、特開平02-231085号(当該文献はここに参考として組み込まれる)に記載されている。また、エシェリヒア・コリK-12 W3110株のggt遺伝子の塩基配列は、GenBank accession AP009048の4053592..4055334としてデータベースに登録されている。このggt遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。また、同塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号2に示す。配列番号2中、1〜25位はリーダーペプチド、26〜390位は大サブユニット、391〜580位は小サブユニットである。
エシェリヒア・コリのGGTに類似するGGTホモログとしては、配列番号2に示すアミノ酸配列中の小サブユニットに相当する部位(391-580)と、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する小サブユニットを含むものが好ましい。また、GGTホモログは、配列番号2中の大サブユニットに相当する部位(26-390位)と、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する大サブユニットを含むものが好ましい。
γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)又は同酵素を含有する微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、エンテロバクター属細菌、パントエア属細菌等のグラム陰性細菌、バチルス属細菌等のグラム陽性細菌、コリネバクテリウム属細菌等を用いることができる。
さらに、GGT又は同酵素を含有する微生物としては、GGT又は同酵素を含有する微生物の処理物、即ち、例えば、菌体破砕物、菌体抽出物、それらの部分精製物、又は精製酵素等、及び、それらをアクリルアミド、カラギーナン等で固定化した菌体、又はGGTを樹脂等の固相に固定化した固定化酵素なども用いることができる。
GGT又は同酵素を含有する微生物としては、特に、腸内細菌科に属する細菌のGGTを挙げることができる。腸内細菌科に属する細菌としては、特に限定されないが、エシェリヒア、エンテロバクター、エルビニア、クレブシエラ、パントエア、フォトルハブドゥス、プロビデンシア、サルモネラ、セラチア、シゲラ、モルガネラ、イェルシニア等の属に属する細菌を含む。特に、NCBI (National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌が好ましい。腸内細菌科に属する細菌としては、具体的には、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ダイセンテリア(Shigella dysenteriae)、シゲラ・ボイディイ(Shigella boydii)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、及び、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)等が挙げられる。
GGT又は同酵素を含有する微生物は、ggt遺伝子が発現可能な形態で導入された微生物を、同遺伝子が発現可能な条件で培養し、菌体を増殖させることにより製造することができる。培養に用いる培地としては、目的の微生物が増殖し得るものであれば特に制限されず、炭素源、窒素源、イオウ源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地を用いることができる。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュクロース、グリセロール、エタノール、糖蜜やでんぷんの加水分解物などの糖類、フマル酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。イオウ源としては、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の無機硫黄化合物が挙げられる。有機微量栄養源としては、ビタミンB1などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じてリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
培養条件は、用いる微生物によって適宜設定すればよく、例えば、培養温度は20℃〜45℃、好ましくは24℃〜45℃で培養することが好ましい。培養は通気培養が好ましく、酸素濃度は、飽和濃度に対して5〜50vol%に、望ましくは10vol%程度に調節して行うことが好ましい。また、培養中のpHは5.0〜9.0が好ましい。尚、pH調整には、無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば、炭酸カルシウム、アンモニアガス、アンモニア水等を使用することができる。培養時間は、好ましくは10時間〜120時間程度である。
GGTは、菌体に含まれたまま使用することもできるが、菌体から抽出した粗酵素画分又は精製酵素として使用してもよい。GGTは、通常のペリプラズム酵素の抽出と同様の方法、例えば浸透圧ショック法、凍結融解法等により、抽出することができる。
(GGTの精製は、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点沈殿等、酵素の精製に通常用いられる手法を適宜組み合わせて行うことができる。菌体外にGGTが分泌生産される場合は、培地から採取したGGTを使用することができる。
本発明におけるγ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)又は同酵素を含有する微生物としては、菌体破砕物、菌体抽出物、それらの部分精製物、又は精製酵素等、及び、それらをアクリルアミド、カラギーナン等で固定化した菌体、又は変異型GGTを樹脂等に固定化した固定化酵素などの、GGT又は微生物の処理物を使用してもよい。
バリルグリシン(Val-Gly)又はその塩は、種々の公知の手法によって製造することができる。例えば、ホルミル‐L‐バリンとグリシンエチルエステルを原料として、化学合成法によっても製造することができる(Journal of the American Chemical Society (1958), 80, pp.1154-1158(当該文献はここに参考として組み込まれる))。当該製造には、バリンのN−カルボキシ無水物(バリン-NCA)とグリシンを原料とした化学合成法を利用することもできる(Canadian Journal of Chemistry (1973), 51(8), pp.1284-87(当該文献はここに参考として組み込まれる))。また、その他のペプチド合成法として通常公知の方法(「ペプチド合成の基礎と実験」丸善株式会社(1985)(当該文献はここに参考として組み込まれる))や、酵素的なペプチド合成方法(WO2004/011653等(当該文献はここに参考として組み込まれる))も利用することもできる。本発明に使用するバリルグリシンとしては、次工程の反応に支障がなければ、上記各種方法によって得られたバリルグリシンを含む反応溶液をそのまま用いてもよい。また精製したバリルグリシンを含む溶液、または単離した結晶を用いてもよい。
バリルグリシンの塩としては、化学的に許容される塩であればいかなる塩であってもよい。「化学的に許容される塩」としては、具体的に例えば、カルボキシル基等の酸性基に対しては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミン酸との塩を挙げることができる。また、塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩を挙げることができる。
γ-グルタミル基供与体としては、γ-グルタミル化合物の中から選択することができる。γ-グルタミル基供与体としては、例えば、グルタミン、グルタミン酸-γ-メチルエステル等のグルタミン酸-γ-アルキルエステル等、またはこれらの塩が挙げられる。これらの中ではグルタミン又はその塩が好ましい。ここでいう塩としては、上記定義した「化学的に許容される塩」を使用することができる。
バリルグリシン又はその塩とγ-グルタミル基供与体との反応は、バッチ式でもよく、カラム式でもよい。バッチ式の場合は、反応容器内の溶媒中で、バリルグリシン又はその塩、γ-グルタミル基供与体、及びγ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物を混合すればよい。反応は、静置下でも撹拌下でもよい。バッチ式の場合、例えば、固定化菌体又は固定化酵素を充填したカラムに、バリルグリシン又はその塩とγ-グルタミル基供与体とを含む溶液を通液することによって行われる。
γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物の存在下での、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体との反応に用いる溶媒は、酵素反応が可能な溶媒であれば特に限定されないが、水又は緩衝液が適当である。緩衝液としては、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、トリス塩酸緩衝液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン−塩酸緩衝溶液)、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等が使用できる。塩としては、上記定義した「化学的に許容される塩」を使用することができる。使用する溶媒のpHは緩衝液するか、酸・アルカリのpH調整剤を適宜使用しながら調節しても良く、その範囲は、例えば、6.0〜10.0、好ましくは、6.5〜9.0である。
反応時間又は溶液の通液速度は、基質の濃度、基質に対するγ−グルタミルトランスフェラーゼの量等により適宜設定することができる。具体的には例えば、酵素量は一定条件下での酵素活性を測定し、その活性値に基づいて添加量を決定することができる。例えば、溶液組成を0.1Mグルタミン、0.1Mバリルグリシン、0.1Mリン酸カリウム(pH7.6)、反応温度37℃、反応時間1〜10分として、適切な酵素量を使用すれば酵素活性を測定することができる。例えば、本条件で1分間に1μmolのγ−グルタミルバリルグリシンを生成せしめる酵素量を1Uとした場合、基質濃度としてγ-グルタミル基供与体であるグルタミンは1〜2000mM、バリルグリシンは1〜2000mM、酵素濃度は0.1U/ml〜100U/mlで反応することが可能である。反応温度は、通常15〜50℃、好ましくは15〜45℃、より好ましくは20〜40℃である。
反応前の溶液中のバリルグリシン又はその塩及びγ-グルタミル基供与体のモル比は、反応に使用するγ-グルタミル基供与体の種類にもよるが、通常、バリルグリシン:γ-グルタミル基供与体=1:0.1〜1:10が好ましい。溶液中のVal-Gly及びγ-グルタミル基供与体の濃度は、それぞれ、通常、1〜2000mM、好ましくは100〜2000mM、より好ましくは100〜1000mMである。
基質として利用するバリルグリシン又はその塩に対するγ−グルタミルトランスフェラーゼの量は、基質1mmolに対して、通常、0.01〜1000U、好ましくは0.1〜500U、より好ましくは0.1〜100Uである。
γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物を用いる場合、ペプチダーゼ、特にPepDが含まれていると、基質のバリルグリシン又はその塩、及び/又は産物のγ-グルタミルバリルグリシンが分解される。したがって、微生物としてPepD遺伝子破壊株を用いることが好ましい。あるいは、ペプチダーゼの酵素活性に必要な金属イオン、例えばCo2+ 、Mn2+ 、Fe2+ 等のイオンをキレートする金属キレート剤を反応系中に含ませることによっても、ペプチダーゼ活性を抑制することができる。
上記のようにして、反応開始後、反応液中にγ-グルタミルバリルグリシンが生成し、バリルグリシン又はその塩とγ-グルタミルバリルグリシンとを含む混合溶液を得ることができる。
また、バリルグリシン又はその塩とγ-グルタミルバリルグリシンとを含む混合溶液が、γ−グルタミルトランスフェラーゼを含有する微生物の菌体を用いて得られた酵素反応液である場合は、次工程に先立ち、適宜、オートクレーブによる加熱や酸・アルカリ処理、ろ過等による除菌処理を施し、除菌液を得ることや、適当なpH調整を行うことも処理プロセスの設計上、好ましい。
(2)得られた混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を0.1質量%以上20質量%未満に調節する工程
バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量は、フリー体換算して、当該混合溶液中に含まれるγ−グルタミルバリルグリシンの質量に対し、例えば、0.1質量%以上20質量%未満、好ましくは、0.1質量%〜18質量%、より好ましくは、0.1質量%〜15質量%、更に好ましくは、1質量%〜10質量%に調節される。このように調節することにより、γ-グルタミルバリルグリシン溶液のゲル化を抑制でき、かつ、続くγ-グルタミルバリルグリシン結晶の晶析工程において、γ-グルタミルバリルグリシン結晶の収率を高めることができる。また、このような範囲にバリルグリシン又はその塩の量を調節して晶析したγ-グルタミルバリルグリシン結晶は、所望の結晶サイズを有するので好ましい。
バリルグリシン又はその塩の量の調節は、例えば、混合溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンは吸着樹脂に吸着させるが、混合溶液中のバリルグリシン又はその塩は前記吸着樹脂を貫流させることによって行う方法や、γ−グルタミルバリルグリシンは透過するがγ-グルタミルバリルグリシンは透過しない膜を利用する方法などが挙げられる。具体的には、以下に示すいずれかの方法によりバリルグリシン又はその塩とγ-グルタミルバリルグリシンとを分別することによって行われる。
1.疎水性・親水性相互作用の差に着目する方法
2.等電点の差に着目する方法
3.分子量の差に着目する方法
1の疎水性・親水性相互作用の差に着目する方法は、γ-グルタミルバリルグリシンの疎水性が、バリルグリシンの疎水性よりも高いことを利用する。具体的には、例えば、バリルグリシン又はその塩とγ-グルタミルバリルグリシンとを含む混合溶液に、酸(塩酸又は硫酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウムなど)を加え、pH=3.0に調整する。その後、室温(25℃)にて、γ-グルタミルバリルグリシンが破過しない程度の流量で該混合溶液を合成吸着樹脂に通液し、γ-グルタミルバリルグリシンを樹脂に吸着すると共にバリルグリシン又はその塩を貫流する。通液後、カラム容量の1〜2倍の量の水を通液して樹脂に残留している非吸着のバリルグリシン又はその塩を洗い流し、次いで吸着しているγ-グルタミルバリルグリシンを、例えば10〜30vol%のメタノール溶液で溶離する。
ここで、合成吸着樹脂としては、SP-207(三菱化学製)等が利用できる。
2の等電点の差に着目する方法は、強陽イオン交換樹脂などの吸着樹脂にγ-グルタミルバリルグリシン及びバリルグリシンを吸着させ、アルカリ溶離剤を用いて徐々に溶離することにより、γ-グルタミルバリルグリシンとバリルグリシンとを分離する方法である。具体的には、例えば、バリルグリシン又はその塩とγ-グルタミルバリルグリシンとを含む混合溶液に、酸(塩酸又は硫酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウムなど)を加え、pH=2.0に調整する。その後、室温(25℃)にて、γ-グルタミルバリルグリシンが破過しない程度の流量で該混合溶液をイオン交換樹脂に通液し、γ-グルタミルバリルグリシンを樹脂に吸着すると共にバリルグリシン又はその塩を貫流する。通液後、カラム容量の約1倍の量の水を通液してイオン交換樹脂に残留している非吸着成分を洗い流す。その後、吸着しているバリルグリシン又はその塩とγ-グルタミルバリルグリシンとを、0.1〜0.25Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて溶離する。これにより、はじめにγ-グルタミルバリルグリシンが溶離し、次いでバリルグリシン又はその塩が溶離する。なお、溶離時の温度を50〜60℃程度に上昇させることにより、両者の分離能が向上するので好ましい。
ここで、吸着樹脂としては、イオン交換樹脂が好ましく、より好ましくは、強陽イオン交換樹脂、UBK-550(三菱化学製)、UBK-555(三菱化学製)等が利用できる。
3の分子量の差に着目する方法は、バリルグリシンは透過するがγ-グルタミルバリルグリシンは透過しない(又はしづらい)NF(nano-filtration)膜を使用して、バリルグリシンとγ-グルタミルバリルグリシンとを分離する方法である。
(3)γ−グルタミルバリルグリシン溶液を晶析してγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る工程
バリルグリシン又はその塩の量を調節したγ−グルタミルバリルグリシン溶液から、γ-グルタミルバリルグリシン結晶を晶析する方法としては、通常の結晶化操作、再結晶法を使用することができる。結晶化操作としては、例えば、冷却法による晶析、貧溶媒法による晶析、懸濁法による晶析、中和法による晶析、濃縮法による晶析が挙げられるが、晶析溶媒に目的のγ−グルタミルバリルグリシンが溶解または懸濁して結晶化する工程であれば実施可能である。また、冷却晶析と貧溶媒晶析を組み合わせてもよい。
晶析溶媒としては、通常、使用可能な晶析溶媒として知られているものであればよく、1種でも複数の混合溶媒でもよい。
複数の混合溶媒としては、目的化合物(γ-グルタミルバリルグリシン)を良く溶解する溶媒(良溶媒)及びこの良溶媒に可溶であるが、目的化合物を溶解し難い溶媒(貧溶媒)とを適当量混合した混合溶媒を使用することができる。また、良溶媒として、複数の溶媒、または貧溶媒として複数の溶媒を使用することができる。この場合、相互に均一に混ざりあう方が好ましい。
また、前段階のγ−グルタミルバリルグリシン溶液を得る工程から得られる溶液(水溶液)に、貧溶媒を添加することによって、晶析液を得ることも好ましい。
ここに、貧溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、オクタノール等)、エーテル類(ジエチルエーテル等)、酢酸エステル類(酢酸エチルなど)、炭化水素類(トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等)もしくはこれらと水の混合液が挙げられる。中でもアルコール類が好ましい。
具体的には、例えば、以下のような晶析方法が挙げられる。
即ち、まず、バリルグリシン又はその塩の量を調節したγ−グルタミルバリルグリシン溶液に、任意にメタノール又はエタノール等を加え、例えば、0〜15℃好ましくは5〜10℃に冷却して結晶を析出させる。析出した結晶を溶液から分離し、メタノール又はエタノール等で洗浄し、湿結晶を得る。該湿結晶を、例えば30〜100℃、好ましくは、40〜50℃で、常圧又は減圧下で乾燥し、乾燥結晶を得る。
[2]γ-グルタミルバリルグリシン結晶
本発明は、上述のような方法により製造されるγ-グルタミルバリルグリシン結晶にも関するものであり得る。
本発明の方法により製造されるγ-グルタミルバリルグリシン結晶は、原料としてバリルグリシンを使用した酵素反応を経ており、不純物として該酵素反応に特徴的なバリルバリン、バリルバリルグリシン等の副生物を不純物として含み得るが、その濃度は比較的晶析収率を上げて得た結晶においても、著しく低下している。本発明において、結晶中に含まれるバリルバリン、バリルバリン塩、バリルバリルグリシン及びバリルバリルグリシン塩から選ばれる1種以上の不純物の総濃度は、通常2.0質量%以下、好ましくは1.2質量%以下の範囲となる。該不純物の総濃度の下限は特に限定されないが、一般に0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり得る。好ましい不純物の層濃度は、0.02〜2.0質量%、より好ましくは、0.02〜1.2質量%の範囲となる。
また本発明の方法により製造されるγ-グルタミルバリルグリシン結晶は、原料であるバリルグリシンを不純物として含み得るが、その濃度は比較的晶析収率を上げた得た結晶においても、著しく低下している。本発明において、結晶中に含まれるバリルグリシンの濃度は、例えば、3.0質量%以下、好ましくは2.2質量%以下であり、該濃度の下限値は特に限定されず、バリルグリシン濃度が0%であるのが好ましいが、一般に0.01質量%以上、より典型的には0.1%質量以上であることが適当である(検出限界〜2.2質量%の範囲、すなわち0〜2.2質量%の範囲が適当)。
また本発明の方法により製造されるγ-グルタミルバリルグリシン結晶は、バリルグリシン又はその塩の量を低減化して晶析したことにより、通常酵素反応により得られるγ-グルタミルバリルグリシン結晶と比較して大きく、特に該結晶の短軸方向の直径(つまり、太さ)が大きいという特徴を有する。
すなわち、本発明によって、結晶中に含まれるバリルバリン、バリルバリン塩、バリルバリルグリシン及びバリルバリルグリシン塩から選ばれる1種以上の総含有量が0.02〜1.2質量%であり、該結晶を光学顕微鏡で撮影した画像の415μm×332μmの領域に結晶全体の像が全て含まれる結晶で、かつ長軸方向長さ35μm以上の結晶の短軸方向直径の平均値が通常2.1μm以上、より典型的には2.3μm以上であり、上限値は特に限定されないが、通常4.0μm以下、より典型的には3.5μm以下であり、好ましくは2.1〜4.0μm、より好ましくは2.3〜3.5μmであるγ−グルタミルバリルグリシンの新規結晶が提供される。更に、上記結晶において、結晶中のバリルグリシンの濃度が2.2質量%以下であるγ−グルタミルバリルグリシンの新規結晶が提供される。
本発明における結晶の短軸方向直径の平均値は以下のようにして決定することができる。すなわち、結晶分離前のスラリーを少量引き抜き、スラリー中に含まれる結晶を、例えば以下に示す光学顕微鏡装置等を用いて結晶サイズを計測する。
オリンパス株式会社製 光学顕微鏡 BX61
対物レンズ UPlan-FI 20×/0.5
接眼レンズ WH10×/22
解析ソフト cellSens Standard1.6
上記光学顕微鏡とレンズを用いて、上記解析ソフトで結晶を撮影した画像を画像ファイル(例えば、TIFファイル)として保存する。画像の415μm×332μmの領域に結晶全体の像が全て含まれる結晶でかつフォーカスの合っている結晶について、解析ソフトの『計測』機能を使用し、『回転した四角形』モードで結晶1つずつを囲み長軸方向長さ(最大直径)と短軸方向直径(最小直径)を計測する。得られたデータにおいて、長軸方向長さ35μm以上となる結晶の短軸方向直径データを抽出し、短軸方向直径の平均値を求める。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
[1]γ-グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法
以下に示すとおり、γ-グルタミルバリルグリシン結晶の製造を、上述の通り、(1)バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る工程;(2)得られた混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を0.1質量%以上20質量%未満に調節する工程;及び(3)γ−グルタミルバリルグリシン溶液を晶析してγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る工程に分けて行った。
(1)バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る工程
本発明のγ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物として、以下のようにして入手した、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)及びGGT発現プラスミドで形質転換した大腸菌(エシェリヒア・コリ)を利用した。
〔試験例1〕γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)発現プラスミドの構築
GGT発現プラスミドは、下記に示すrpoHプロモーターを含む発現プラスミドpSF12_Sm_Aetにエシェリヒア・コリのggt遺伝子を挿入することで構築した。
初めに、スフィンゴバクテリウム エスピー.FERM BP-8124由来ペプチド生成酵素とphoCプロモーターを含むpUC18由来プラスミドpSF_Sm_Aet(WO2006/075486 A1)に含まれるNdeI認識サイト(pUC18由来の制限酵素サイト)を欠失させるため、ストラタジーン社の「Quik Change Site-Directed Mutagenesis Kit」を使用し、pSF_Sm_Aetを鋳型として製造元のプロトコールに従い、配列番号5、6の配列で表されるプライマーを用いてPCRを実施した。得られたPCR産物をDpnIで消化した後、該反応液でエシェリヒア・コリJM109株を形質転換し、100mg/Lのアンピシリンナトリウム(Amp)を含むLB寒天培地に塗布後、25℃で36時間培養した。生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、3100ジェネティックアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列の確認を行い、目的の構造を持つプラスミドをpSF1_Sm_Aetと名付けた。FERM BP-8124株は、AJ110003と名付けられ、2002年7月22日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM BP-8124の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。
次に、pSF1_Sm_Aetのスフィンゴバクテリウム エスピー.FERM BP-8124由来ペプチド生成酵素遺伝子の開始メチオニン部分にNdeI認識配列を導入するため、上記の「Quik change Site-Directed Mutagenesis Kit」を使用し、pSF1_Sm_Aetを鋳型として、配列番号7、8の配列で表されるプライマーを用いてPCRを実施した。得られたPCR産物をDpnIで消化した後、該反応液でエシェリヒア・コリJM109株を形質転換し、100mg/LのAmpを含むLB寒天培地に塗布後、25℃で24時間培養した。生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、3100ジェネティックアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列の確認を行い、目的の構造を持つプラスミドをpSF2_Sm_Aetと名付けた。
続いて、pSF2_Sm_AetのphoCプロモーターを、下記の方法に従ってrpoHプロモーターに置換した。rpoHプロモーター領域は、エシェリヒア・コリW3110株の染色体DNAからPCRにより取得した。PCRは、W3110株の染色体DNAを鋳型とし、センスプライマーとして配列番号9の配列で表されるプライマー(rpoHプロモーター領域の5'末端にXbaI認識配列を含む塩基配列を付加したもの)、およびアンチセンスプライマーとして配列番号10の配列で表されるプライマー(rpoHプロモーター領域と相補的な塩基配列の5'末端にNdeI認識配列を含む塩基配列を付加したもの)を用いて、ポリメラーゼとしてKOD-plus-(東洋紡社)を使用して、製造元のプロトコールに従って94℃で30秒、52℃で1分、68℃で30秒の条件で30サイクル行った。
次に、得られたPCR産物をXbaI/NdeIで消化した後に、アガロースゲル電気泳動にて目的の約0.4kbのDNAを切り出し、XbaI/NdeIで消化したpSF2_Sm_Aet断片(約4.7kb)に、DNAライゲーションキットVer.2.1(タカラバイオ社製)を用いて連結した。該反応液でエシェリヒア・コリJM109株を形質転換し、100mg/LのAmpを含むLB寒天培地に塗布後、25℃で36時間培養した。生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、3100ジェネティックアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列の確認を行い、目的の構造を持つプラスミドをpSF12_Sm_Aetと名付けた。
エシェリヒア・コリのggt遺伝子は、エシェリヒア・コリW3110株の染色体DNAからPCRにより取得した。PCRは、W3110株の染色体DNAを鋳型とし、センスプライマーとして配列番号11の配列で表されるプライマー(ggt遺伝子の開始コドンを含む領域の5'末端にNdeI認識配列を含む塩基配列を付加したもの)およびアンチセンスプライマーとして配列番号12の配列で表されるプライマー(ggt遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な塩基配列の5'末端にPstI配列を含む塩基配列を付加したもの)を用いて、KOD-plus-を使用して製造元のプロトコールに従って94℃で30秒、52℃で1分、68℃で120秒の条件で30サイクル行った。次に、得られたPCR産物をNdeI/PstIで消化した後に、アガロースゲル電気泳動にて目的の約1.8kbのDNAを切り出し、NdeI/PstIで消化したpSF12_Sm_Aet断片(約3.0kb)にDNAライゲーションキットVer.2.1(タカラバイオ社製)を用いて連結した。該反応液をエシェリヒア・コリJM109株で形質転換し、100mg/LのAmpを含むLB寒天培地に塗布後、25℃で36時間培養した。生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、3100ジェネティックアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列の確認を行った。得られたプラスミドは、目的の構造を持つGGT発現プラスミドであり、pSF12_ggtと名付けた。
〔試験例2〕エシェリヒア・コリJM109株由来pepD遺伝子破壊株(宿主株)の作製
エシェリヒア・コリJM109株を親株として、PepD非産生株の構築を行った。PepDはpepD遺伝子(GenBank Accession;7438954、配列番号3)によってコードされている。
遺伝子の破壊は、DatsenkoとWannerによって最初に開発された「Red-driven integration」と呼ばれる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol.97, No.12, p6640-6645)とλファージ由来の切り出しシステム(J. Bacteriol. 2002 Sep; 184(18): 5200-3.Interactions between integrase and excisionase in the phage lambda excisive nucleoprotein complex. Cho EH, Gumport RI,Gardner JF.(当該文献はここに参考として組み込まれる))を組合わせた方法(WO2005/010175号参照、当該文献はここに参考として組み込まれる)によって行った。「Red-driven integration」方法によれば、目的とする遺伝子の一部を合成オリゴヌクレオチドの5'側に、抗生物質耐性遺伝子の一部を3'側にデザインした合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて得られたPCR産物を用いて、一段階で遺伝子破壊株を構築することができる。さらにλファージ由来の切り出しシステムを組み合わせることにより、遺伝子破壊株に組み込んだ抗生物質耐性遺伝子を除去することができる。
PCRの鋳型として、プラスミドpMW118-attL-Cm-attRを使用した。pMW118-attL-Cm-attR(WO2006/078039)は、pMW118(ニッポンジーン社製)にλファージのアタッチメントサイトであるattL及びattR遺伝子と抗生物質耐性遺伝子であるcat遺伝子を挿入したプラスミドであり、attL-cat-attRの順で挿入されている。このattLとattRの両端に対応する配列をプライマーの3'末端に、目的遺伝子であるpepD遺伝子の一部に対応する配列をプライマーの5'末端に有する合成オリゴヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行った。
pepD遺伝子破壊用DNA断片は、配列番号13および配列番号14の配列で表されるプライマーを用いて、KOD-plus-にて製造元のプロトコールに従って94℃で30秒、52℃で1分、68℃で120秒の条件で30サイクルのPCRを行うことで調製した。
上記のようにして得られたそれぞれの遺伝子破壊用DNA断片をアガロースゲル電気泳動で精製し、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリJM109株にエレクトロポレーションにより導入した。プラスミドpKD46(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRed相同組換えシステムのRedレコンビナーゼをコードする遺伝子(γ、β、exo遺伝子)を含むλファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL Accession;JO2459、第31088〜33241位)を含む。プラスミドpKD46は遺伝子破壊用DNA断片をJM109株の染色体に組み込むために必要である。エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製した。すなわち、100mg/LのAmpを含んだLB培地中で30℃、20時間培養したプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリJM109株を、Amp(100mg/L)を含んだ2mlのSOB培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら,Cold SpringHarbor Laboratory Press(1989年)(当該文献はここに参考として組み込まれる))で50倍希釈した。得られた希釈物を30℃でOD600が約0.3になるまで生育させた後、10%(v/v)のL−アラビノースを70μl添加し、37℃で1時間培養した。得られた培養液を65倍に濃縮し、10%(v/v)グリセロールで3回洗浄することによってエレクトロポレーションに使用できるようにした。エレクトロポレーションは30μLのコンピテントセルと約100ngのPCR産物を用いて行った。
エレクトロポレーション後、細胞懸濁液に、0.27mLのSOC培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら,Cold SpringHarbor Laboratory Press(1989年)(当該文献はここに参考として組み込まれる))を加えて37℃で3時間培養した後、37℃でクロラムフェニコール(Cm)(50mg/L)を含むLB-寒天培地上で培養し、Cm耐性組換え体を選択した。次に、pKD46プラスミドを除去するために、Cm(50mg/L)を含むLB-寒天培地上で42℃にて培養し、得られたコロニーのAmp耐性を試験し、pKD46が脱落しているAmp感受性株を取得した。Cm耐性遺伝子によって識別できた変異体のpepD遺伝子の破壊を、PCRによって確認した。得られたpepD遺伝子破壊株をJM109ΔpepD:att-cat株と名づけた。
次にpepD遺伝子内に導入されたatt-cat遺伝子を除去するために、ヘルパープラスミドとしてpMW-intxis-tsを使用した。pMW-intxis-tsは、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする遺伝子、及び、エクシジョナーゼ(Xis)をコードする遺伝子を搭載し、温度感受性の複製能を有するプラスミドである。pMW-intxis-ts導入により、染色体上のattLあるいはattRを認識して組換えを起こし、attLとattRの間の遺伝子を切り出し、染色体上にはattB配列のみ残る。上記で得られたJM109ΔpepD:att-cat株のコンピテントセルを常法に従って作製し、pMW-intxis-tsにて形質転換し、30℃で100 mg/LのAmpを含むLB-寒天培地上にて培養し、Amp耐性株を選択した。次に、pMW-intxis-tsプラスミドを除去するために、LB寒天培地にて42℃で培養し、得られたコロニーのAmp耐性、及びCm耐性を試験して、att-cat及びpMW-intxis-tsが脱落し、かつpepD遺伝子が破壊された株である、Cm、Amp感受性株を取得した。この株は、この後GGT発現プラスミドで形質転換する際に使用される大腸菌(エシェリヒア・コリ)の宿主株であり、JM109ΔpepD株と名づけた。
〔試験例3〕エシェリヒア・コリのggt遺伝子増強株の培養菌体(B101株)の調製
試験例2で得られたJJM109ΔpepD株を、試験例1で得られたGGT発現プラスミドであるpSF12_ggtにより形質転換し、B101株と名づけた。B101株を100mg/LのAmpを含むLB培地[1.0%(w/v)ペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、1.0%(w/v)NaCl]を用いて25℃、16時間培養した。得られた培養液を接種量が1.0%(v/v)となるように、 50mlの100mg/LのAmpを含むTB培地[Terrific Broth(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第3版、Sambrook, J.ら,Cold SpringHarbor Laboratory Press(2001年)](当該文献はここに参考として組み込まれる)に植えつぎ、500ml容の坂口フラスコを使用して、25℃、24時間培養した。
得られた培養液を遠心分離(8,000 x g、10分、4℃)によって、湿菌体を沈殿として回収した。100mlの培養液あたり3.5gの湿菌体が得られた。湿菌体を0.85%(w/v) NaCl水溶液によって洗浄し、35mg/mlとなるように懸濁液を調製した(懸濁液I)。得られた懸濁液Iを、GGT発現プラスミドで形質転換した大腸菌(エシェリヒア・コリ)の菌体(B101株)として利用した。
〔試験例4〕菌体(B101株)のGGT酵素活性の評価
懸濁液Iを酵素源として、GGT酵素活性を測定した。酵素活性測定方法はγ-glutamyl-p-nitroanilideを基質とした加水分解活性測定法[J. Bacteriol. 1986 Dec; 168(3): 1325-1331.γ-Glutamyltranspeptidase from Escherichia coli K-12: Purification and Properties. Suzuki H.ら](当該文献はここに参考として組み込まれる)を用いた。反応液組成は2.5mM γ-glutamyl-p-nitroanilide、50mM トリス塩酸緩衝液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン−塩酸緩衝溶液)(pH8.73)、及び懸濁液Iの希釈液を添加した。反応容量は0.5mlとして、37℃、10分間の反応後、1mlの3.5N 酢酸水溶液を添加することによって反応を停止した。遠心分離(10,000 x g、5分、4℃)によって、不溶物を除去した。懸濁液Iの希釈液及びブランク(懸濁液Iの希釈液の代わりに0.85%(w/v) NaCl水溶液を使用)の上清の405nmにおける吸光度の差異を測定することによって、生成したp-nitroanilineを定量した(ε405nm=9920 M-1cm-1)。本条件において1分間に1μmolのp-nitroanilineを生成せしめる酵素量を1Uと定義した場合、懸濁液Iの酵素活性は2.6U/mlであった。
〔試験例5〕GGTを含むGGT粗酵素溶液の調製
試験例3で得られた菌体(B101株)から、GGTが局在するペリプラズム画分を調製し、GGTを含むGGT粗酵素溶液を調製した。調製方法は文献[J. Bacteriol. 1986 Dec; 168(3): 1332-1335.γ-Glutamyltranspeptidase from Escherichia coli K-12: Formation and Localization. Suzuki H.ら](当該文献はここに参考として組み込まれる)記載の方法を参考に改変した。
具体的には、まず、1.2gの湿菌体を15mlの0.2M トリス塩酸緩衝液(pH7.5)、20%(w/v)シュクロース、1mM EDTA、30U/ml リゾチームの溶液に均一に分散させ、10分間、25℃で緩やかに振とうさせた。予め氷冷した純水を15ml加えて、転倒混和した後、氷水中で10分間冷却した。遠心分離(8,000 x g、15分、4℃)によって得られた上清を0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に対して透析し、ペリプラズム画分とした。当該ペリプラズム画分には、GGTを含むタンパク質14mgが含まれており、このペリプラズム画分をGGTを含むGGT粗酵素溶液とした。この酵素溶液のGGT酵素活性を、試験例4と同じ方法により測定したところ、GGT酵素活性は0.45U/mgであった。
〔実施例1〕試験例5のGGT粗酵素溶液を利用したγ-グルタミルバリルグリシンの合成
試験例5で得られたGGT粗酵素溶液を利用して、L-グルタミンとVal-Glyを基質として酵素反応を行い、γ-グルタミルバリルグリシンを得た。
具体的には、0.2MのL-グルタミン、0.2Mのバリルグリシン、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、試験例5で得られたタンパク質濃度が1.2mg/mlのペリプラズム画分(GGT粗酵素溶液)を添加した溶液を調製した。なお、溶液のpHは必要に応じてKOH水溶液を添加することで反応開始時に調整した。反応温度は37℃、反応時間は1時間として反応した。バリルグリシン及びγ-グルタミルバリルグリシンの定量は、反応終了後にHPLCを用いて行った。当該HPLC用のカラムには、Phenomenex社製Synergi 4μ Hydro-RP 80A(粒子径4μm、内径4.6mm、長さ250mm)を用いた。当該HPLC用の溶離液には、A液(50mMリン酸二水素ナトリウム(pH2.5、リン酸によってpH調整)、及び、B液(A液とアセトニトリルの1:1の混合液)を用いた。カラム温度は40℃、UV検出波長は210nmとし、溶離液のグラジエントは、0〜5分はB液0〜5%、5〜15分はB液5%、15〜30分はB液5〜80%、30〜30.1分はB液80〜0%、30.1〜50分はB液0%とした。HPLCによる測定の結果、反応で得られた混合溶液には、γ-グルタミルバリルグリシンが25.8mM、バリルグリシンが171.0mM含まれていた(混合溶液中のγ-グルタミルバリルグリシンに対するバリルグリシン 381質量%)。
〔実施例2〕菌体(B101株)を用いたγ-グルタミルバリルグリシン合成
試験例3で得られた菌体(B101株)を利用して、バリルグリシンと、γ−グルタミル基供与体としてのL-グルタミンとを基質として酵素反応を行い、γ-グルタミルバリルグリシンを得た。
具体的には、0.2MのL-グルタミン、0.2Mのバリルグリシン、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、及び以下の表1に示す量の菌体(B101株)を含む懸濁液Iを添加した溶液を得た。
溶液のpH調整には、リン酸カリウム緩衝液及び必要に応じてKOH水溶液を用いた。反応開始時のpHは、7.0又は8.0に調整した。反応温度は37℃、反応時間は1時間として、攪拌混合しながら反応した。反応終了後に実施例1に示したHPLCにて、バリルグリシン及びγ-グルタミルバリルグリシンを定量した。結果を表1に示す。なお、以下の表中において、バリルグリシン(VG)、γ−グルタミルバリルグリシン(EVG)と記載した。
表1
〔実施例3〕菌体(B101株)を用いたγ-グルタミルバリルグリシン合成
試験例3で得られた菌体(B101株)を利用して、バリルグリシンと、γ−グルタミル基供与体としてのL-グルタミンとを基質として酵素反応を行い、γ-グルタミルバリルグリシンを得た。
具体的には、0.2Mのバリルグリシン、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、及び17.6mg/mlの湿菌体(B101株)を含む懸濁液Iを添加した溶液を得た。L-グルタミンの量は、バリルグリシンに対して1.0から3.0当量とした。溶液のpH調整には、pH8.0のリン酸カリウム緩衝液及び必要に応じてKOH水溶液を用いた。反応開始時のpHは8.0に調製した。反応温度は37℃、反応時間は1時間として、攪拌混合しながら反応した。反応終了後に実施例1に示したHPLCにて、バリルグリシン及びγ-グルタミルバリルグリシンを定量した。結果を表2に示す。
表2
実施例1〜3の結果に示されるように、GGTあるいはGGTを産生する菌体を用いることで、バリルグリシンをγ-グルタミル化し、γ-グルタミルバリルグリシンを得ることができた。
(2)得られた混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を0.1質量%以上20質量%未満に調節する工程
上記実施例1〜3記載のGGT酵素反応で得られるようなγ-グルタミルバリルグリシン溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を、以下のようにして調節した。
〔実施例4〕バリルグリシン量の調節
GGT酵素反応により得たバリルグリシンを含むγ−グルタミルバリルグリシン溶液を、オートクレーブにて、121℃で20分間加熱処理を施した後、当該溶液に含まれる菌体を0.45μmの精密濾過膜(アドバンテック社製)でろ過し、15.89g(52.39mmol)のγ−グルタミルバリルグリシンと6.09g(34.99mmol)のバリルグリシンを含む除菌液209.08gを得た。さらに、当該除菌液を35%HClを用いてpH3.0に調整した(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=38.4質量%)。当該pH調整液を合成吸着樹脂(三菱化学(株)製SP207)650mLを充填した内径5cmのカラムにSV1(650mL/時)の流速で通液し、続いて脱イオン水1300mLを同流速で通液した。その後、1950mLの10%MeOH、1950mLの20%MeOHをSV2(1300mL/時)の流速で通液した。流出液のうち、1.8〜5.8RV(1170mL〜3770mL)の画分を回収したところ、15.07g(49.69mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと、0.06g(0.33mmol)のバリルグリシンを含む回収液2513.63gを得た。回収液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率は、0.4質量%であった。従って、本実施例4により、γ−グルタミルバリルグリシン溶液中に存在するγ−グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの量を、38.4質量%から0.4質量%に調節することができた。
(3)γ−グルタミルバリルグリシン溶液を晶析してγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る工程
〔実施例5〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
実施例4で得られた、バリルグリシンの量を調整した回収液2513.63gを、99.03gまで減圧濃縮した後、50℃にて保持し、237mLのMeOHを1時間かけて添加した。当該添加の途中、MeOHを50mL添加した時点で144mgの種晶(γ−グルタミルバリルグリシン結晶、特許文献1の実施例記載の方法で調整、以下同様)を添加した。その後、溶液全体を10℃まで5℃/時間で冷却し、結晶を析出させた。結晶を析出させた溶液をさらに10℃で76.5時間保持し、析出した結晶を分離し、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を40mLのMeOHで洗浄し、湿結晶29.67gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶11.05gを得た。得られた結晶は10.77g(35.52mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶を含んでいた(晶析収率71.5質量%)。
バリルグリシンの量の調整工程を実施しない下記比較例1と比べて、収率が向上していることが確認された。
〔比較例1〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
GGT酵素反応により得たバリルグリシンを含むγ−グルタミルバリルグリシン溶液を、オートクレーブにて、121℃で20分間加熱処理を施した後、当該溶液に含有される菌体を0.45μmの精密濾過膜(アドバンテック社製)でろ過し、1.26g(4.14mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと0.26g(1.48mmol)のバリルグリシンを含む除菌液100.11gを得た。さらに、当該除菌液を35%HClを用いてpH3.0に調整した(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=21質量%)。当該pH調整液を8.24gまで減圧濃縮した後、50℃にて保持し、16.4mLのMeOHを1時間かけて添加した。当該添加の途中、17.7mgの種晶を添加した。その後、溶液全体を10℃まで5℃/時で冷却し、結晶を析出させた。結晶を析出させた溶液をさらに10℃で48時間保持後、析出した結晶を分離し、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を1.7mLのMeOHで洗浄し、湿結晶1.44gを得た。得られた結晶は0.54g(1.77mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.001g(0.003mmol)のバリルグリシンを含んでいた(晶析収率42.8質量%)。
〔実施例6〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
9.98g(32.89mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと1.14g(6.57mmol)のバリルグリシンに純水28.9mLを添加し、75℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=11質量%)。得られた溶液を50℃まで10℃/時で冷却し、当該添加の途中60℃で約50mgの種晶を添加した。50℃達温後1時間保持し、44mLのMeOHを1時間かけて添加した。その後、10℃まで5℃/時で冷却し結晶を析出させた。結晶を析出させた溶液をさらに10℃30時間以上保持後、析出した結晶を分離し、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を26mLの90%MeOHで洗浄し、湿結晶11.41gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶8.07gを得た。得られた結晶は8.04g(26.51mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.03g(0.19mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔実施例7〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
9.80g(32.32mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと1.68g(9.63mmol)のバリルグリシンに純水28.7mLを添加し、75℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=17質量%)。得られた溶液を、実施例6と同様にして結晶を析出させ、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を25mLの90%MeOHで洗浄し、湿結晶11.37gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶7.65gを得た。得られた結晶は7.61g(25.08mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.04g(0.24mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔実施例8〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
10.00g(32.97mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと1.30g(7.46mmol)のバリルグリシンに純水28.7mLを添加し、75 ℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=13質量%)。得られた溶液を50℃まで10℃/Hrで冷却し、当該添加の途中60℃で約50mgの種晶を添加した。50℃達温後1Hr保持し、114.8mLのMeOHを1時間かけて添加した。その後、10℃まで5℃/時で冷却し結晶を析出させた。結晶を析出させた溶液をさらに10℃10時間以上保持後、析出した結晶を分離し、未洗浄湿結晶14.58gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶8.07gを得た。得られた結晶は7.89g(26.00mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.17g(0.96mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔実施例9〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
9.95g(32.80mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと1.57g(8.99mmol)のバリルグリシンに純水28.5mLを添加し、75 ℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=16質量%)。得られた溶液を、実施例8と同様にして結晶を析出させ、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を10mLの90%MeOHで洗浄し、湿結晶15.2gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶7.82gを得た。得られた結晶は7.71g(25.43mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.11g(0.63mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔比較例2〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
9.52g(31.39mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと1.97g(11.28mmol)のバリルグリシンに純水28.5mLを添加し、75℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=21質量%)。得られた溶液を、実施例6と同様にして結晶を析出させ、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を37mLの90%MeOHで洗浄し、湿結晶15.95gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶8.16gを得た。得られた結晶は7.23g(23.84mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.93g(5.35mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔比較例3〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
9.80g(32.32mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと2.51g(14.44mmol)のバリルグリシンに純水27.8mLを添加し、75℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=26質量%)。得られた溶液を、実施例6と同様にして結晶を析出させ、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を40mLの90%MeOHで洗浄し、湿結晶18.72gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶8.91gを得た。得られた結晶は7.28g(23.99mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と1.63g(9.38mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔比較例4〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
9.85g(32.49mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと2.05g(11.76mmol)のバリルグリシンに純水28.1mLを添加し、75 ℃にて溶解し、溶液を得た(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=21質量%)。得られた溶液を、実施例8と同様にして結晶を析出させ、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を10mLの90%MeOHで洗浄し、湿結晶16.2gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶8.24gを得た。得られた結晶は7.57g(24.97mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.67g(3.84mmol)のバリルグリシンを含んでいた。
〔比較例5〕γ−グルタミルバリルグリシン結晶の調製
GGT酵素反応により得たバリルグリシンを含むγ−グルタミルバリルグリシン溶液を、80℃で30分間加熱処理を施した後、当該溶液に含有される菌体を除去した。8.80g(29.01mmol)のγ-グルタミルバリルグリシンと3.46g(19.87mmol)のバリルグリシンを含む当該除菌液300.6g(溶液中のγ-グルタミルバリルグリシン質量に対するバリルグリシンの質量比率=39質量%)を76.04gまで減圧濃縮した後、50℃にて保持し、56mLのMeOHを1時間かけて添加した。当該添加の途中、86.40mgの種晶を添加した。その後、溶液全体を10℃まで5℃/時で冷却し、結晶を析出させた。結晶を析出させた溶液をさらに10℃で35時間保持後、析出した結晶を分離し、未洗浄湿結晶を得た。得られた未洗浄湿結晶を20mLの90体積%のMeOHで洗浄し、湿結晶14.72gを得た。該湿結晶を40℃条件下、減圧乾燥し、乾燥結晶9.93gを得た。得られた結晶(図5の結晶写真参照)は3.09g(10.19mmol)のγ-グルタミルバリルグリシン結晶と0.004g(0.013mmol)のバリルバリルグリシン及び0.0002g(0.001mmol)のバリルバリンを含んでいた(晶析収率35.1質量%)。
上記実施例及び比較例の結果を以下の表3−1及び3−2にまとめる。
表3−1

表3−2
上記表3−1及び3−2に示すとおり、γ−グルタミルバリルグリシン溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を0.1質量%以上20質量%未満に調節した上でγ−グルタミルバリルグリシン結晶を晶析することにより(実施例5〜9)、比較例と比べてγ−グルタミルバリルグリシン結晶の収率を向上することができることがわかった。
また、乾燥減量も減少し、乾燥前の結晶に含有される水分量が減少した優れた結晶が得られることが示された。また、濾過速度が大幅に向上することから、結晶の形状が大きく、濾過性に優れた結晶が得られることも示された。ここで、乾燥減量は、下式で計算される。
乾燥減量(質量%)={(乾燥前の結晶の質量−乾燥後の結晶の質量)/乾燥前の結晶の質量}×100

また、結晶の純度も優れた結晶が得られることが示された。ここで、EVG結晶の純度は、所定量の実施例又は比較例で得られた結晶を水に溶解し作成した水溶液(X1 g/ml)中のEVGの濃度(X2 g/ml)をHPLCを用いて定量し、下式で求めた。

純度(質量%)= X1 / X2 x 100

当該HPLC用のカラムには、YMC社製Hydrosphere C18(粒子径5μm、内径4.6mm、長さ250mm)を用いた。当該HPLC用の溶離液には、A液(50mMリン酸二水素カリウム(pH3.0、リン酸によってpH調整)、及び、B液(アセトニトリル)を用いた。カラム温度は30℃、UV検出波長は210nmとし、溶離液のグラジエントは、0〜25分はB液0%、25〜50分はB液0〜40%、50〜51分はB液40〜0%、51〜70分はB液0%とした。
[2]γ−グルタミルバリルグリシン結晶の評価
実施例6及び7、比較例1及び2で得られたγ−グルタミルバリルグリシン結晶の光学顕微鏡写真を、それぞれ図1〜4に示す。これらの光学顕微鏡写真に基づき、図1〜4に示された各例のγ−グルタミルバリルグリシン結晶の短軸方向の直径の平均を測定した。
具体的には、光学顕微鏡にて写真をとり、結晶を無作為に10個選択し、平均値を求めるようにして測定した。結果を以下の表4−1にまとめる。また上述した光学顕微鏡装置、解析ソフト等を使用して算出した短軸方向直径の平均値を表4−2に示す。
表4−1

表4−2
表4−1、表4−2におよび図1〜4に示すとおり、本発明の方法により得られたγ−グルタミルバリルグリシン結晶は、比較例に比べて短軸方向の直径が大きい、即ち、大きく、太いγ−グルタミルバリルグリシン結晶が得られることがわかる。
実施例5及び比較例1で得られた結晶中に含まれる、バリルバリルグリシンとバリルバリンの含量を上記と同様のHPLC条件で測定した。結果、晶析収率71.5質量%で晶析された実施例5の結晶は乾燥結晶11.05g中、0.04g(0.16mmol)のバリルバリルグリシン及び0.08g(0.38mmol)のバリルバリンを含んでいた。また晶析収率35.1質量%で晶析された比較例5の結晶は、乾燥結晶9.93中、0.004g(0.013mmol)のバリルバリルグリシン及び0.0002g(0.001mmol)のバリルバリンを含んでいた。
〔配列表の説明〕
配列番号1:Escherichia coli ggt遺伝子の塩基配列
配列番号2:Escherichia coli GGTのアミノ酸配列
配列番号3:Escherichia coli pepD遺伝子の塩基配列
配列番号4:Escherichia coli PepDのアミノ酸配列
配列番号5〜12:pSF12_ggt作製用PCRプライマー
配列番号13〜14:pepD遺伝子破壊用PCRプライマー

Claims (7)

  1. γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物の存在下、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体とを反応させ、バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミルバリルグリシンとの混合溶液を得る工程、ここで前記混合溶液中に存在するγ−グルタミルバリルグリシンに対するバリルグリシンの質量比は20質量%以上である;
    得られた混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量を、当該溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンの質量に対して0.1質量%以上20質量%未満に調節してγ−グルタミルバリルグリシン溶液を得る工程;及び
    アルコールを含む貧溶媒を前記γ−グルタミルバリルグリシン溶液に加えて前記γ−グルタミルバリルグリシン溶液を晶析しγ−グルタミルバリルグリシン結晶を得る工程、
    を含む、γ−グルタミルバリルグリシン結晶の製造方法。
  2. 前記混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量の調節が、当該溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンの質量に対して1質量%〜18質量%の範囲内で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記混合溶液中に存在するバリルグリシン又はその塩の量の調節が、前記混合溶液中のγ−グルタミルバリルグリシンは吸着樹脂に吸着させるが、前記混合溶液中のバリルグリシン又はその塩は前記吸着樹脂を貫流させた後、γ−グルタミルバリルグリシンを吸着樹脂から溶離することによって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. γ−グルタミル基供与体がグルタミンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. γ−グルタミルトランスフェラーゼ又は同酵素を含有する微生物が、腸内細菌科に属する細菌である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記細菌が、エシェリヒア・コリである、請求項5に記載の方法。
  7. バリルグリシン又はその塩とγ−グルタミル基供与体との反応が、水又は緩衝液から選択される溶媒中で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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