JP2015139426A - 新規β−アミノ酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】工業的な規模においてS体のβ−アミノ酸を高収率で製造することができる新規な製造方法を提供する
【解決手段】特定の範囲の塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質または特定の範囲のアミノ酸配列からなるタンパク質を用いてN−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する工程を含む、S体のβ−アミノ酸の製造方法
【選択図】なし

Description

本発明は、S体のβ−アミノ酸を選択的に製造する方法に関する。
光学活性アミノ酸は、医薬品、農薬及び食品などの分野で多くの需要があるが、β−アミノ酸は、光学的に純粋なアミノ酸、特に発酵法などの産物(天然のアミノ酸)として得ることが難しい。従って、β−アミノ酸の光学活性体を、いかにして効率的に製造するかは、産業上重要な課題となっている。
この課題に対して、ペニシリンGアシラーゼを用いる方法、ブタ腎臓由来アシラーゼを用いる方法、グルタリル7−アミノセファロスポラン酸アシラーゼを用いる方法、アミノアシラーゼを用いる方法等、酵素法によるβ−アミノ酸の光学活性体の製造方法が開発されているが、産業利用において、より優れた製造方法が望まれている。(特許文献1、2、3)。
特表2005−520552 特許4222939 特許5119783 WO2012/002450
Sakai A.et al.,Biochemistry,2006,45(14),4452−62
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、工業的な規模においてS体のβ−アミノ酸を高収率で製造することができる新規な製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために、N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸加水分解能力を指標として様々な微生物及び酵素をスクリーニングした結果、我々がD−アミノ酸製造に用いることができる酵素として発見していたクプリアビダス属由来の酵素(特許文献4)が、N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸の加水分解活性も有することを見出した。本発明者はさらに検討を進め、前記酵素がD−アミノ酸の製造において有用なα位の立体認識だけでなく、β−アミノ酸の製造において有用なβ位の立体認識も有しており、前記酵素をN−サクシニル−β−アミノ酸のラセミ体に作用させてN−サクシニル−β−アミノ酸のS体を不斉加水分解することでS体のβ−アミノ酸を選択的に製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
項1.
下記(a)〜(f)のいずれか1つで表されるタンパク質を用いてN−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する工程を含む、S体のβ−アミノ酸の製造方法
(a)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(b)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(c)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質;
(d)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠如、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質。
(e)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を示すDNAによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質;
(f)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質であり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質。
項2.
N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸がN−サクシニル−(R、S)−β−フェニルアラニンである、項1に記載の方法。
本発明のS体のβ−アミノ酸の製造方法で使用するタンパク質は、N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸のサクシニル基を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性(本明細書では、前記活性をN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性とも記載する。)が格段に高い酵素であって、熱安定性も非常に高い。従って、本発明によれば、医薬品原料などとして有用なS体のβ−アミノ酸を、工業的な規模において高収率で得ることが可能となる。
本発明の実施形態の一つは、
下記(a)〜(f)のいずれか1つで表されるタンパク質を用いてN−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する工程を含む、S体のβ−アミノ酸の製造方法である。
(a)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質;
(b)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(c)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質;
(d)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠如、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質;
(e)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を示すDNAによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質;
(f)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質であり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質。
本発明で使用するタンパク質は、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を選択的に加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する能力を有するものであれば特に限定されない。このようなものとして、例えば特許文献4に記載の酵素が挙げられる。具体的には、(a)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質、または(b)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が例示される。配列番号2は、クプリアビダス・エスピー.P4−10−C株の塩基配列であり、配列番号1は、配列番号2の塩基配列に対応するアミノ酸配列である。配列番号4は、クプリアビダス・メタリデュランス(Cupriavidus metallidurans)の塩基配列、配列番号6は、クプリアビダス・ネケター(Cupriavidus necator)の塩基配列、配列番号8は、ラルストニア・ピケッティ(Ralstonia pickettii)の塩基配列であり、配列番号3,5,7はそれぞれ、配列番号4,6,8の塩基配列に対応するアミノ酸配列である。
本発明で用いるタンパク質は、特許文献4に記載されている(c)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質、または(d)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質であっても良い。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当するに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件とする。
また、「1または数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造やN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個である。ただし、配列表の配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位を含むアミノ酸配列の場合には、30℃、pH7〜8の条件下で配列表の配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を保持していることが望ましい。
本発明において使用するタンパク質のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性は、後述の方法で測定することによって定義される。
本発明で用いるタンパク質は、(e)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と90%以上の配列同一性を示すDNAによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質、または、(f)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質であり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質であってもよい。
アミノ酸配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、算出する。
次に、本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質の製造方法について説明する。本発明の前記タンパク質は、例えば特許文献4の実施例に記載されている方法により製造することができる。具体例としては、配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列からなる遺伝子、または、配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ、N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を適当なベクターに挿入して組換えベクターを調製し、この組換えベクターで適当な宿主細胞を形質転換して形質転換体を調製し、この形質転換体を培養することによって容易に行うことができる。
ベクターとしては、原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で複製保持または自律増殖できるものであれば特に限定されず、プラスミドベクターおよびファージベクター、ウィルスベクター等が包含される。組換えベクターの調製は、常法に従って行えばよく、例えば、これらのベクターに、本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質の遺伝子を適当な制限酵素およびリガーゼ、あるいは必要に応じてさらにリンカーもしくはアダプターDNAを用いて連結することにより容易に行うことができる。また、Taqポリメラーゼのように増幅末端に一塩基を付加するようなDNAポリメラーゼを用いて増幅作製した遺伝子断片であれば、TAクローニングによるベクターへの接続も可能である。
また、宿主細胞としては、従来公知のものが使用可能であり、組換え発現系が確立しているものであれば特に制限されないが、好ましくは大腸菌、枯草菌、放線菌、麹菌、酵母といった微生物ならびに昆虫細胞、動物細胞、高等植物などが挙げられ、より好ましくは微生物が挙げられ、特に好ましくは大腸菌(例えば、K12株、B株など)が挙げられる。形質転換体の調製は、常法に従って行えばよい。
得られた形質転換体を、その宿主細胞に応じた適当な培養条件で一定期間培養すれば、組込まれた遺伝子から本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質が発現されて、形質転換体中に蓄積する。
形質転換体中に蓄積した本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質は、未精製のまま用いることができるが、精製したものを使用しても良い。この精製方法としては、従来公知のものが使用可能であり、例えば、培養後の形質転換体あるいはその培養物を適当な緩衝液中でホモジナイズし、超音波処理や界面活性剤処理等により細胞抽出液を得、そこからタンパク質の分離精製に常套的に利用される分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。このような分離技術としては、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
次に、β−アミノ酸を製造する方法について説明する。本発明によれば、β−アミノ酸は、N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質を用いて、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を効率的に加水分解する工程によって製造される。
この工程は、具体的には、適当な溶液中に、本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質と原料のN−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸を溶解させて反応液を調製し、この反応液を適当な条件で反応させることによって行うことができる。これにより、前記酵素はN−サクシニル−β−アミノ酸のラセミ体のうちS体を選択的に不斉加水分解することでS体のβ−アミノ酸を選択的に製造することができる。
ここで、「S体に対して選択的に反応」とは、R体に対して全く反応しないことを必ずしも意味しない。S体の光学純度が鏡像体過剰率(enantiomeric excess、以下eeとも略称)として1%eeを越えていれば良い。好ましくはS体の光学純度が10%ee、さらに好ましくは30%ee、さらに好ましくは50%ee、さらに好ましくは60%ee、さらに好ましくは70%ee、さらに好ましくは80%ee、さらに好ましくは90%ee、さらに好ましくは97%ee、さらに好ましくは99%ee、さらに好ましくは100%eeである。R体が検出されないことがもっとも好ましい。
なお、本明細書において、変換率及び光学純度は、下記、計算式にて、算出することができる。

変換率(%)=生成物量/(残存基質量+生成物量)×100
光学純度(%ee)=(A−B)/(A+B)×100(Aは対象とする鏡像異性体量でBは対応する鏡像異性体量)
使用する溶液は、蒸留水でもよいが、必要により、リン酸塩やトリスなどの緩衝剤を使用してもよい。緩衝剤を使用する場合、その濃度は20〜200mMであることが好ましく、pHは6〜8であることが好ましい。
本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質は、反応液中10〜3000mg/L(100〜30000U/L)の濃度で使用されることが好ましい。
本発明において、原料となるN−サクシニル−β−アミノ酸は、種々の公知の方法によって合成することができ、例えば非特許文献1に記載の方法によって合成することができる。原料となるサクシニルアミノ酸の種類は、製造したいβ−アミノ酸の種類に応じて適宜選択すればよく、天然に存在する20種のアミノ酸および非天然アミノ酸およびその誘導体であることができる。そのような原料として、例えば、N−サクシニル−β−フェニルアラニンが挙げられる。反応液中のN−サクシニル−β−アミノ酸の濃度は、特に限定されないが、一般的に1重量%〜30重量%である。
本発明のβ−アミノ酸の製造方法では、反応液を反応させる温度は、本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質が十分作用する温度であれば特に限定されないが、一般的には5〜60℃が好ましく、10〜55℃がより好ましく、20〜50℃がさらに好ましい。また、反応時のpHは、本発明のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質が十分作用するpHであれば特に限定されないが、一般的にはpH4〜10が好ましく、pH6〜8がより好ましい。基質濃度は、0.01重量%〜30重量%で行うことが好ましい。反応時間は、特に限定されないが、一般的に1〜7日程度である。反応時間は、製造したいβ−アミノ酸の種類と所望の収量、収率、使用する酵素や基質の量、量比、反応温度や反応pHなどを考慮し、実験的に適宜選択することができる。
なお、本発明のβ−アミノ酸の製造方法で使用するN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性を有するタンパク質は、精製されたものや未精製のもの(粗酵素液など)に限定されず、形質転換体中に含まれた状態のものであってもよい。この場合は、形質転換体を反応系に添加して、形質転換体を培養させながら同時に反応を進行させるか、又は予め培養された形質転換体を反応系に添加すればよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[N−サクシニル−β−フェニルアラニン及びβ−フェニルアラニンの分析]
本実施例において、N−サクシニル−β−フェニルアラニンの定量は、特に記載がない場合は、以下の分析条件で定量した。
サクシニル体を定量する場合は、ジ一エルサイエンス社製「Inertsil ODS−3」(5μm、4.6×100mm)を利用した高速液体クロマ卜グラフィ一により行った。
N−サクシニル−β−フェニルアラニンの分析
移動相:pH2.3リン酸水溶液/アセトニトリル=75/25
流速:0.7ml/min
カラム温度:40℃
検出:UV210nm
N−サクシニル−β−フェニルアラニンが加水分解(脱サクシニル化)されて生成する遊離体のβ−フェニルアラニンの光学純度を分析する際は、ダイセル化学工業株式会社光学分割カラムDAICEL CHIRAL PAK WH(10μm、4.6×250mm)により行った。
(S、R)−β−フェニルアラニンの分析
移動相:2mM硫酸銅水溶液
流速:1.0ml/min
カラム温度:50℃
検出:UV254nm
[N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性]
本発明において使用するタンパク質のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性は、得られた遺伝子を大腸菌に導入して形質転換体を作成し、この形質転換体を培養して酵素タンパク質を生成させ、この形質転換体、この形質転換体の菌体破砕液もしくは精製した酵素タンパク質を以下に記載の方法で測定することによって求めることができる。
10mM N−サクシニル−(S)−β−フェニルアラニン、50mM Tris−HCl(pH7.5)及び酵素溶液を含む反応液を30℃にて15minから3hr、適当な時間反応させ、HPLCの移動相にて反応を停止させる。生成した(S)−β−フェニルアラニンをHPLCにより定量し、酵素活性を算出する。酵素活性はN−サクシニル−(S)−β−フェニルアラニンから(S)−β−フェニルアラニンが1分間に1μmol生成された場合を1Unit(U)と定義した。
N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸アシラーゼ活性があることは、0%eeの(R,S)ラセミ体を加水分解したときの光学純度が鏡像体過剰率として1%eeを越えていることでも確認することができる。
[本実施例において使用するタンパク質の活性測定]
本実施例において使用するタンパク質の活性は、便宜上、特許文献4に記載の「D−サクシニルアシラーゼのアシラーゼ活性」として測定する。D−サクシニルアシラーゼのアシラーゼ活性は以下のD−アミノ酸オキシダーゼ法により測定することができる。
1.D−アミノ酸オキシダーゼ法
<試薬>
14mM N−サクシニル−D−バリン
2.5(U/mL) ペルオキシダーゼ(東洋紡製PEO−302)
1.5 mM 4−アミノアンチピリン(第一化学薬品製)
2.4 mM TOOS(同人化学研究所製)
6.0(U/mL) D−アミノ酸オキシダーゼ(バイオザイム製DOX2)
を含む25mMリン酸緩衝溶液を反応試薬とする。
なお、N−サクシニルーバリンの合成は以下のようにして行った。D−バリン(ナカライテスク製、4.7g)と無水コハク酸(ナカライテスク製、4.0g)を40mLの酢酸(ナカライテスク製)に溶解した。溶液を50〜60℃に加熱し、溶媒を揮発させて結晶化した。次に、結晶化した白い沈殿を集めて、酢酸エチル20mLとメタノール20mLの混合液中で再結晶化した。沈殿を乳鉢で破砕し、乾燥させ、N−サクシニル−D−バリンを得た。詳細は非特許文献1に記載されている。
<測定条件>
反応試薬3.0mLを37℃で5分間予備加温する。酵素溶液0.1mLを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、555nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに酵素を溶解する溶液を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってD−サクシニルアシラーゼ活性を求める。ここでD−サクシニルアシラーゼ活性における1単位(U)とは、上記条件下で1分間に1マイクロモルのD−アミノ酸を生成する酵素量として定義する。

活性(U/mL)=
{(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1×希釈倍率}/
{31.0×0.1×1/2×1.0}

なお、式中の3.1は反応試薬+酵素溶液の液量(mL)、31.0は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)、1/2は酵素反応で生成したHの1分子から形成するQuinoneimine色素が1/2分子であることによる係数、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
[実施例1]N−サクシニル−(R、S)−β−フェニルアラニンからの(S)−β−フェニルアラニンの調製
5%N−サクシニル−(R、S)−β−フェニルアラニン(pH7.5)5mlを基質として用い、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質1.0U(「D−サクシニルアシラーゼのアシラーゼ活性」としての活性)を添加し、37℃で24時間反応させ、変換率及びβ−フェニルアラニンの光学純度を算出した。
変換率は、上記記載のジ一エルサイエンス社製「Inertsil ODS−3」を利用した高速液体クロマ卜グラフィ一で酵素反応前と反応後の基質のピーク面積値を測定することによって算出した。光学純度(鏡像体過剰率)は、上記記載のダイセル化学工業株式会社製「DAICEL CHIRAL PAK WH」で生成した遊離体のアミノ酸の光学純度を測定することによって算出した。結果、変換率45%、光学純度90%eeで、(S)−β−フェニルアラニンが生産された。
従来D−アミノ酸合成用の酵素として知られていたD−サクシニラーゼが、N−サクシニル−(S)−β−アミノ酸にも作用し、S体のβ−アミノ酸の合成に活用できる点を見出した。本発明は、医薬品原料などとして有用なβ−アミノ酸を、工業的な規模、時間において高収率で得るために有用である。

Claims (2)

  1. 下記(a)〜(f)のいずれか1つで表されるタンパク質を用いてN−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する工程を含む、S体のβ−アミノ酸の製造方法
    (a)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質;
    (b)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (c)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質;
    (d)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠如、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質。
    (e)配列番号2、4、6または8に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を示すDNAによってコードされ、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質。
    (f)配列番号1、3、5または7に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質であり、かつ、N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸中のN−サクシニル−(S)−β−アミノ酸を加水分解して、(S)−β−アミノ酸を生成する活性を有するタンパク質。
  2. N−サクシニル−(R,S)−β−アミノ酸がN−サクシニル−(R、S)−β−フェニルアラニンである、請求項1に記載の方法。
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