JP4652915B2 - ノルボルナン誘導体の加水分解に関与するdna - Google Patents
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Description
式(II)、
(a)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAであって、配列番号1の塩基200から塩基1321までの連続した塩基配列からなるDNA。
(b)前記(a)で表わされるDNAの改変体であって、
(i)前記(a)で表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、
(ii)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)遺伝子コドンの縮重のため、前記(a)に表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、前記(a)または(b)で表わされるDNAによりコードされるタンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
[3]:[1]記載のDNAを担持する自律複製性または組み込み複製性の組み換えベクター。
[4]:[3]記載の組み換えベクターで形質転換した形質転換体。
[5]:[1]に記載されたDNAまたはその一部からなるDNAをプローブまたはプライマーとして用いることを特徴とする、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAの単離方法。
(A)式(I)
(B)インキュベーション処理液から式(II)で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
[8]:形質転換体が、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物である[6]記載の方法。
(C)式(I)
(D)インキュベーション処理液から未変換の式(III)で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
本発明においては、前記式(I)で表わされる(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基を加水分解し、前記式(II)で表わされる(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンへ変換する活性(以下、単に「アセトアミド加水分解活性」ともいう)を有する微生物を培養した培養液から集めた菌体から、アセトアミド加水分解活性を有するタンパク質(以下、単に「アセトアミド加水分解酵素」ともいう)を一部にまたは全体としてコードするDNAを単離し、塩基配列を決定することができる。そして、このDNAを担持する自立複製性または組み込み複製性の組み換えベクターを構築し、そのベクターを用いて形質転換体を調製する。
本発明者らは、前記微生物の1つであるコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)NBRC12612からアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAを単離し、その塩基配列を決定した。
(b)前記(a)で表わされるDNAの改変体であって、
(i)前記(a)で表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であり、かつ、
(ii)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンにおけるアセトアミド基の加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)遺伝子コドンの縮重のため、前記(a)に表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、前記(a)または前記(b)で表わされるDNAによりコードされるタンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
本発明のタンパク質の取得方法は特に制限されず、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質でもよい。組み換えタンパク質を作製する場合には、先ず、前記した方法によりアセトアミド加水分解酵素をコードするDNAを取得する。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明のタンパク質を産生することができる。発現系でのタンパク質の発現については本明細書中後記する。
本発明のDNAは適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよいが、発現ベクターが好ましい。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
本発明のDNAまたは組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。本発明のDNAまたは組み換えベクターが導入される宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。細菌細胞の例としては、コリネバクテリウムまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。例えば、エレクトロポレーション法は以下のように行うことができる。外来遺伝子が挿入されたベクターをコンピテント細胞の懸濁液に加え、この懸濁液をエレクトロポレーション法専用のキュベットに入れ、そのキュベットに高電圧の電気パルスをかける。その後選択培地で培養し、平板寒天培地上で形質転換体を単離する。
本発明は、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物またはアセトアミド基の加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNAを導入した形質転換体を用い、これらの微生物または形質転換体あるいはそれらの調製物の存在下で前記式(I)で表される(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解させることを含む、前記式(II)で表される(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法を包含する。なお「(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する」とは、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基をある条件下で加水分解するが、その光学異性体である(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基は、その条件下では実質的に加水分解しないことを意味する。また、形質転換体等の「調製物」とは、これら形質転換体等の培養物それ自体、培養物を濾過もしくは遠心にかけて分離した菌体、培養物を凍結乾燥または噴霧乾燥し、必要により粉砕して得られるもの、さらにはこれらをもとに精製した酵素を意味する。
本発明は、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を選択的に加水分解する能力を有する形質転換体等を用い、これらの存在下で、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの混合物をインキュベーション処理し、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解させ、反応溶液中に蓄積された未反応の(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを採取する、(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの製造方法を包含する。この発明で用いることのできる基質は高純度の(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンだけでなく、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンとの等量混合物であるラセミ体を用いることもでき、(R)体を実質的に含んでいれば(R)体と(S)体の比率は特に限定されない。変換反応の条件、目的物の単離、精製方法は、前記「(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法」の項で述べたものと同様である。
本発明は前記の方法で製造された(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解し反応溶液から(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンを採取する、(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンの製造方法をも包含する。(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する方法は、2位の立体配置を保持する反応であれば、化学反応でも生物学的変換反応でも特に制限はない。生物学的変換反応であれば、例えば、非立体選択的に2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解するスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)ATCC14990由来の酵素を用いる反応を挙げることができる。
なお、アセトアミド加水分解酵素の酵素活性および2-エキソ-アミノノルボルナンの定量は以下の方法で行い、変換率、光学純度の定義は以下のとおりである。
2-エキソ-アセトアミドノルボルナン(化合物I:式(I)で表わされる化合物と式(III)で表わされる化合物の当量混合物)を10mM濃度で溶かした50mMリン酸緩衝液(pH6.8)180μLに酵素液20μLを加えて37℃で1時間反応させた後、2-エキソ-アセトアミドノルボルナンをHPLCで定量した。2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの減少速度(mM/分)を酵素活性とした。HPLCの分析条件は、カラムはJ’sphere ODS-H80(内径4.6mm×75mm、YMC社製)を用い、カラム温度は40℃、移動相は水/メタノール(50:50)、検出はUV210nm、流速は1.5mL/分で行った。
Nα-(5-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル)-L-ロイシンアミド(以下、「L-FDLA」ともいう、東京化成工業社製)でジアステレオマーに誘導体化してからHPLC分析により行った。試料50μLに1M炭酸水素ナトリウム水溶液20μLおよびL-FDLAの1%アセトン溶液100μLを加え、40℃で一時間加温する。室温まで冷却後、反応液に1N塩酸20μL、アセトニトリル800μLを加えてHPLC試料とした。HPLC分析条件は、カラムはZORBAX SB-aq(内径4.6mm×150mm、Agilent社製)を用い、カラム温度は40℃、移動相は0.85%リン酸/アセトニトリル(50:50)、検出はUV340nm、流速は1mL/分で行った。この分析条件で、(S)-2-エキソ-アミノノルボルナン誘導体(化合物IIa:式(II)で表わされる化合物のL-FDLA誘導体)および(R)-2-エキソ-アミノノルボルナン誘導体(化合物IIb:式(IV)で表わされる化合物のL-FDLA誘導体)の保持時間はそれぞれ13.3分と12.5分であった。濃度既知の標品の面積値に基づいて各ピークの面積値から両鏡像体の定量を行った。こうして求めた定量値から以下に示す式により変換率(%)および光学純度(鏡像体過剰率、%ee)を求めた。
変換率(%)=(〔化合物IIa〕+〔化合物IIb〕)/〔化合物I〕×100
光学純度(%ee)=(〔化合物IIa〕-〔化合物IIb〕)/(〔化合物IIa〕+〔化合物IIb〕)×100
(式中、〔化合物I〕は化合物Iの添加量(モル)を、〔化合物IIa〕および〔化合物IIb〕はそれぞれ化合物IIaおよび化合物IIbの生成量(モル)を示す。)
2-エキソ-アセトアミドノルボルナン0.1g/Lを添加した2mLのL培地(バクトトリプトン1%、酵母エキス0.1%、NaCl 0.1%、グルコース0.1%、pH7.0)に寒天平板よりコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612およびコリネバクテリウム・ビタルーメンNBRC12143をそれぞれ一白金耳接種し、30℃で18時間振盪培養(220rpm)した。得られた培養液を3500rpm、10分の遠心分離により上清を除いて菌体を得、菌体に10g/L濃度で2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを含む100mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.4)を1mL加え、30℃で振盪下(220rpm)に4時間変換反応を行った。この反応液に等量のメタノールを加えて遠心分離した上清をL-FDLAで誘導体化してHPLCで分析して(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンおよび(R)-2-エキソ-アミノノルボルナンを定量した。求めた定量値から先に示した計算式により変換率(%)および主な生成物である(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの光学純度(%ee)を求めた。その結果、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612およびコリネバクテリウム・ビタルーメンNBRC12143を用いて得た光学純度と変換率はそれぞれ、94.4%eeと5.5%、94.5%eeと5.0%であった。
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を寒天平板からL培地25mLを含む250mL容のエーレンマイヤーフラスコに植菌して30℃で18時間振盪培養した。この培養液1mLをL培地100mLを含む500mL容のエーレンマイヤーフラスコ8本にそれぞれ植菌して30℃で18時間振盪培養した。この培養液200mL(フラスコ2本分)ずつを最終濃度で2-エキソ-アセトアミドノルボルナン0.1g/Lと消泡剤KM75(信越化学工業社製)0.3g/Lを添加したL培地15Lを含む30Lジャー4基に植菌して30℃、240rpm、1vvmの通気量で培養を行った。4基の30Lジャーに、培養17時間後と24時間後の2回、各210gの2-エキソ-アセトアミドノルボルナン(合計1680g)を添加して先と同じ培養条件で計113時間変換培養を行った。培養終了後、3000rpmの連続遠心分離により菌体を除いて培養上清を得た。先に述べたHPLCで分析した結果、光学純度86%eeの(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンが463g生成していた(変換率、38%)。
培養上清60Lを等量の酢酸エチルで抽出することにより未反応の2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを酢酸エチル層側に除いた。酢酸エチル層を取り除いた水層に攪拌しながら無水酢酸1020mlと9M水酸化ナトリウム水溶液3Lを1時間かけて同時に滴下することにより、生成した2-エキソ-アミノノルボルナンのアセチル化を行った。生成した2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを等量の酢酸エチルで抽出することにより酢酸エチル層に抽出して、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にエバポレーターで酢酸エチルを留去して光学純度86%eeの(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを521g得た(全モル収率、31%)。
1H NMR (500MHz, D2O)δ:3.21(1H, dd, J = 8.0, 3.5 Hz, H-2), 2.37(2H, overlapped, H-1 and H-4), 1.80(1H, ddd, J = 13.5, 8.1, 2.5 Hz), 1.61(1H, m), 1.54-1.47(2H, overlapped), 1.42 (1H, m), 1.32(1H, dq, J = 10.7, 1.3 Hz), 1.24-1.11(2H, overlapped)。なお、水のシグナルを4.79ppmとして測定した。
(1)微生物の培養
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612をL培地(バクトトリプトン1%、酵母エキス0.1%、NaCl 0.1%、グルコース0.1%、pH7.0)25mLに同じ組成の寒天平板培地から一白金耳植菌し、30℃で一晩振盪培養した。この培養液1mLずつを0.1g/Lの濃度で2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加したL培地100mLを含む500mL容のエーレンマイヤーフラスコ8本に植菌し、30℃で18時間振盪培養した。この培養液から菌体を5000rpm、10分間の遠心分離で集菌し、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で一回洗浄して先と同様に菌体を回収して、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)100mLに懸濁した。この菌体懸濁液をコンスタント細胞破砕システム(コンスタント社製)にて40kPaの圧力をかけて細胞を破砕した。この破砕液から10000rpm、30分の遠心分離により細胞残渣を除いて上清を得た。
この上清を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAE-Toyopal650カラム(100mL、東ソー社製)に通塔し、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)100mLでカラムを洗浄後、同緩衝液中での0Mから1Mへの塩化ナトリウムの濃度勾配溶出(1.4L)により目的の酵素の溶出を行った。溶出液は15mLずつ分画した後、各フラクションの酵素活性を先に示した方法で測定して酵素溶出画分を集めた。この画分をAKTAタンパク精製装置(ファルマシア社製)に付けたHiPrep 26/10脱塩カラム(ファルマシア社製)で脱塩した後、酵素溶液をAKTAタンパク精製装置に付けた0.1Mビス-トリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化させたMono Q HR 5/5カラム(ファルマシア社製)に通塔した後、同緩衝液中での0Mから1Mへの塩化ナトリウムの濃度勾配溶出により目的酵素を溶出させた。溶出液は0.5mLずつ分取して酵素活性を測定した。酵素溶出画分を集めて硫酸アンモニウム濃度が1Mになるように硫酸アンモニウムを溶かしてからAKTAタンパク精製装置に付けた1M硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したRESOURCE PHE(6mL)(ファルマシア社製)に通塔した後、同緩衝液中での硫酸アンモニウムの1Mから0Mへの濃度勾配溶出により酵素の溶出を行った。溶出液は0.5mLずつ分取した。この操作を6回繰り返して酵素溶出画分を集めた。
20mLのL培地にコリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を接種して、30℃で24時間振とう培養して得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を回収した。この菌体からBlood & Cell Culture kit(QIAGEN社製)を用いて染色体DNAを調製した。(2)で得られた部分アミノ酸配列に基づいて以下のようなプライマー(Nter-1FおよびNO1mix-2R)を作成した。
Nter-1F:5’-AACGTCGGATATCTTTGGGA-3’(配列番号4参照)
NO1mix-2R:5’-TTICCRTGRTGIACRTCCCARTC-3’(配列番号5参照)
なお、コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基I(=Inosine)、R(=A+G)を使用した。
MR1-3F:5’-ATCCCCCGGGACATCATGCAGAAC-3’(配列番号6参照)
MR1-3R:5’-GGAACGAACCCACCACTGCCAGTGTCCATC-3’(配列番号7参照)
(1)アセトアミド加水分解酵素遺伝子aaaHを含有するDNA断片の調製
先に解析した配列番号1の塩基配列を参考にして、5’末端にNdeIサイトを付加したプライマー
AaaH-NdeF(5’-CCCCATATGTCACGCAACGTCGGTTATCTC-3’:配列番号8参照)
および5’末端にXhoIサイトを付加したプライマー
AaaH-XhoR(5’-GGGCTCGAGTTATTTGGCGGGAATGTTTGC-3’:配列番号9参照)
を作成した。
DNA断片-D1を制限酵素NdeIとXhoIで消化して、同様に制限酵素NdeIとXhoIで消化したプラスミドpET15b(Novagen社)とDNA Ligation Kit ver.2(宝酒造)を用いて連結した。これによって、aaaHが挿入されたプラスミドpET15b(プラスミドpETaaaHと名づける)が構築された。
前項で調製したプラスミドpETaaaHを用いて、大腸菌BL21(DE3)コンピテントセル(Novagen社製)を形質転換した。こうして、プラスミドpETaaaHで形質転換された大腸菌BL21(DE3)/pETaaaH株を得た。
本発明のアセチル加水分解酵素をコードする遺伝子で形質転換した大腸菌BL21(DE3)/pETaaaH株および対照として遺伝子を導入していないBL21(DE3)/pET15b株の各コロニーをカルベニシリン50μg/mLおよびOvernight Express Autoinduction System(Novagen社製)を含むLB培地(バクトトリプトン1.0%、酵母エキス0.5%、NaCl 1.0%)を2mL入れた15mL容の試験管に植菌して25℃で24時間振盪培養した。この培養液1.5mLに10%2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのDMSO溶液を30μL添加して、30℃で1時間反応させた。反応液を15000rpmで5分遠心分離して得られた上清50μLをL-FDLAで誘導体化してHPLCで分析し、2-エキソ-アミノノルボルナンを定量して変換率およびS体の光学純度を求めた。その結果、大腸菌BL21(DE3)/pETaaaH株による変換で生成した(S)-2-エキソ-アミノノルボルナンの光学純度(変換率)は、89.2%ee(変換率、19.8%)であった。なお、大腸菌BL21(DE3)/pET15b株では2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの加水分解は起きなかった。
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスNBRC12612を寒天平板からL培地25mLを含む250mL容のエーレンマイヤーフラスコに植菌して30℃で18時間振盪培養を行った。この培養液1mLを0.1g/Lの2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加したL培地100mLを含む500mL容のエーレンマイヤーフラスコに植菌して30℃で18時間振盪培養を行った。1.5gの2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを添加してさらに72時間変換培養を行った。培養液から6000rpm、10分の遠心分離により菌体を除き、100mLの酢酸エチルで抽出して未反応の2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを0.5g回収した。
組換え大腸菌BL21(DE3)/pETaaaHによる、2-エキソ-アセトアミドノルボルナンの加水分解で生成した2-エキソ-アミノノルボルナンの絶対立体配置の決定をNMR測定によるMosher法で行った。2-エキソ-アミノノルボルナン(10.5mg,0.0944mmol)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、4,4-ジメチルアミノピリジン(23mg,0.189mmol)および(R)-α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロライド((R)-MTPA-Cl)(17.6μL,0.113mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。反応液をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開液:クロロホルム:メタノール=10/1)で展開後目的のスポットをかきとりにより精製し、(R)-MTPA エステル(25.2mg,収率77%)を得た。同様に2-エキソ-アミノルボルナン(9.3mg)と(S)-α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロライド((S)-MTPA-Cl)から(S)-MTPA エステル(7.6mg)を得た。それぞれの1H-NMRスペクトルを測定して比較した。(S)-MTPAエステルのδ値(ppm)から(R)-MTPAエステルのδ値(ppm)を引いた差分(△δ)は、1-Hが+0.08、3-CH2が-0.05と-0.07であった。定法によりMTPAを上側で手前、α水素を下側で手前とし、△δがプラスのプロトングループ(1-H)を右側、△δがマイナスのプロトングループ(3-CH2)を右側に置くと2位の周りの立体配置はS配置であると決定した。
1H NMR (500MHz, CDCl3)δ:7.55-7.50 (2H, m, Ph), 7.42-7.37 (3H, m, Ph), 6.56 (1H, br, NH), 3.79 (1H, dt, J = 8.0, 4.0 Hz, H-2), 3.41 (3H, s, MeO-), 2.28-2.30 (3H, overlapped, H-1 and H-4), 1.80 (1H, ddd, J = 13.5, 8.0, 2.0 Hz, H-3a), 1.58-1.11 (7H, m)
1H NMR (500MHz, CDCl3)δ:7.55-7.51 (2H, m, Ph), 7.42-7.38 (3H, m, Ph), 6.58 (1H, br, NH), 3.79 (1H, J = 8.0, 4.0 Hz, H-2), 3.40 (3H, s, MeO-), 2.30 (1H, br, H-4), 2.20 (1H, d, J = 4.0 Hz), 1.85 (1H, ddd, J = 13.0, 8.0, 2.0 Hz, H-3a), 1.58-1.13 (7H, m)
Claims (10)
- 式(I)
式(II)、
下記の(a)、(b)または(c)で表わされるDNA。
(a)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAであって、配列番号1の塩基200から塩基1321までの連続した塩基配列からなるDNA。
(b)前記(a)で表わされるDNAの改変体であって、
(i)前記(a)で表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、
(ii)(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)遺伝子コドンの縮重のため、前記(a)に表わされるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、前記(a)または(b)で表わされるDNAによりコードされるタンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。 - 請求項1記載のDNAによりコードされるタンパク質。
- 請求項1記載のDNAを担持する自律複製性または組み込み複製性の組み換えベクター。
- 請求項3記載の組み換えベクターで形質転換した形質転換体。
- 請求項1に記載されたDNAまたはその一部からなるDNAをプローブまたはプライマーとして用いることを特徴とする、(S)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンのアセトアミド基を加水分解する能力を有するタンパク質をコードするDNAの単離方法。
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物が、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)またはコリネバクテリウム・ビタルーメン(Corynebacterium vitarumen)に属する微生物である請求項6記載の方法。
- 形質転換体が、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物である請求項6記載の方法。
- 式(III)
(C)式(I)
(D)インキュベーション処理液から未変換の式(III)で表わされる(R)-2-エキソ-アセトアミドノルボルナンを採取する工程、
を含んでなる方法。
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