JP2010022215A - L−システインの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】L−システインを効率よく生産する。
【解決手段】L−システイン生産能を有する細菌を培地中で培養し、該培地からL−システインを採取するL−システインの製造法において、培養途中に、培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作を行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、L−システインの製造方法に関する。L−システインは、医薬品、化粧品及び食品分野で利用されている。
L−アミノ酸は、L−アミノ酸生産能を有するコリネ型細菌又は腸内細菌科に属するアミノ酸生産菌を用いて発酵法により工業生産されている。これらのアミノ酸生産菌としては、生産性を向上させるために、自然界から分離した菌株または該菌株の人工変異株、あるいは遺伝子組換えによりL−アミノ酸生合成酵素が増強された組換え体等が用いられている(特許文献1〜3)。
上述のような微生物の育種や製造法の改良により、L−アミノ酸の生産能はかなり高まっているが、今後の需要の一層の増大に応えるためには、さらに安価かつ効率的なL−アミノ酸の製造法の開発が求められている。
培養液中に蓄積するL−アミノ酸を晶析させながら発酵を行う方法が知られている(特許文献4,5)。これらの方法は、培養液中に蓄積するL−アミノ酸を析出させることにより、培養液中のL−アミノ酸の濃度を一定に維持することを目的にしている。
微生物を用いたL−システインの製造方法としては、細胞内のセリンアセチルトランスフェラーゼ活性が上昇したコリネ型細菌を用いる方法(特許文献6)、L−システインによるフィードバック阻害が低減された変異型セリンアセチルトランスフェラーゼを保持させることによりL−システイン生産能が高められた微生物を用いる方法が知られている(特許文献7〜9)。
また、L−システイン分解系を抑制することによってL−システイン生産能が高められた微生物を用いる方法として、シスタチオニン−β−リアーゼ(特許文献7)、トリプトファナーゼ(特許文献10)、O−アセチルセリン スルフヒドリラーゼB(特許文献11)の活性を低下又は欠失させた細菌を用いる方法が知られている。
L−システインは酸化反応によってシスチンへと変換される(非特許文献1)。L−システイン生産菌の培養中に生成したL−システインの一部は、培地中でシスチンに変換される。シスチンは水に対する溶解度が著しく低いため、培地中で析出する。L−システインは銅イオンにより酸化反応が促進されることは知られているが(非特許文献2)、これまで、銅イオンによるL−システインの酸化反応がL−システインの発酵培養法に応用されたことは無かった。
また、銅イオン以外にも過酸化水素等によりL−システインの酸化反応が促進されることが知られているが、この知見がL−システインの発酵培養法に応用されたことも無かった。
一方、過酸化水素による酸化反応を発酵法で用いる場合、微生物への悪影響が懸念されるため、培養を継続している状態で、直接培養液へ過酸化水素を添加することは難しい。そこで、培養中に培養液を取り出し、菌体と培養上清に分離し、培養上清に過酸化水素を添加し、再度菌体と混合して培養を継続するという手法が採用されている。そして、菌体分離の手法として、沈降法、遠心分離法、膜ろ過法が知られている(非特許文献5)。実際に乳酸製法やキシリトール製法においては、菌体分離法を用いての培養法が検討されている(非特許文献3、4)。
特開昭57−71397号公報 特開昭62−244382号公報 米国特許第4371614号明細書 特開昭62−288号公報 欧州特許公報第1078989号明細書 特開2002−233384号公報 特開平11−155571号号公報 米国特許出願公開第20050112731号明細書 米国特許第6218168号明細書 特開2003−169668号公報 特開2005−245311号公報 Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,2065(1983) Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,2065(1983) FEMS Micro.Rev.,14,29-38(1994) J.Bios.Bioeng.,101,13-18(2006) Bioprocess Engineering(second edition), Michael L.shuler/Fikret Kargi
本発明は、L−システインの生産効率を向上させる新規な技術を開発することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、L−システイン生産菌を用いたL−システインの製造において、生成したL−システインをL−シスチンに変換し、析出させることにより、培地中のL−システインの濃度を一定に維持することでL−システインが効率よく生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)L−システイン生産能を有する細菌を培地中で培養し、該培地からL−システインを採取するL−システインの製造法において、培養途中に、培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作を行うことを特徴とする方法。
(2)培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作が、培地を過酸化水素で処理することである、前記方法。
(3)培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作が、培地に銅イオンを添加する操作である、前記方法。
本発明によれば、L−システインを効率よく生産することができる。
本発明の方法は、L−システイン生産能を有する細菌を培地中で培養し、該培地からL−システインを採取するL−システインの製造法において、培養途中に、培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作を行うことを特徴とする方法である。
まずは、L−システイン生産菌について説明する。
L−システイン生産菌は、腸内細菌科に属する細菌やコリネ型細菌であって、L−システイン生産能を有する細菌が例示される。ここで、L−システイン生産能とは、細菌を培地中で培養したときに、培地中または菌体内にL−システインを生成し、L−システイン又はL−システインから生じるL−シスチンを、培地中または菌体から回収できる程度に蓄積する能力をいう。以下、L−システイン生産菌に関する記載において、「L−システ
イン」は、L−システイン及びL−システインから生じたL−シスチンの両方を含む場合がある。
また、L−システイン生産能を有する細菌とは、野生株または親株よりも多い量のL−システインを生産し培地に蓄積することができる細菌を意味し、好ましくは、0.05g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上、特に好ましくは0.2g/L以上の量のL−システインを生産し培地に蓄積することができる細菌を意味する。
L−システイン生産能を有する細菌としては、本来的にL−システイン生産能を有するものであってもよいが、下記のような細菌を、変異法や組換えDNA技術を利用して、L−システイン生産能を有するように改変したものであってもよい。
本発明に用いる細菌としては、エシェリヒア属、エンテロバクター属、パントエア属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、サルモネラ属、モルガネラ属などの腸内細菌科に属する細菌やコリネ型細菌であって、L−システインを生産する能力を有するものが挙げられる。
腸内細菌科に属する細菌として具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに記載されている分類により腸内細菌科に属するものが利用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)。
エシェリヒア属細菌としては、特に限定されないが、具体的にはNeidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia
coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に挙げられるものが利用できる。その中では、例えばエシェリヒア・コリが挙げられる。エシェリヒア・コリとしては具体的には、プロトタイプの野生株K12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
これらを入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所
12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス、エンテロバクター・アエロゲネス等が挙げられる。
パントエア属細菌としてはパントエア・アナナティス、パントエア・スチューアルティ、パントエア・アグロメランス、パントエア・シトレアが挙げられる。
また、エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ、エルビニア・カロトボーラが挙げられ、クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラが挙げられる。
特に、パントエア属細菌、エルビニア属細菌、エンテロバクター属細菌は、γ−プロテオバクテリアに分類される細菌であり、分類学的に非常に近縁である(J Gen Appl Microbiol 1997 Dec;43(6) 355-361, International Journal of Systematic Bacteriology, Oct. 1997,p1061-1067)。近年、DNA-DNAハイブリダイゼーション実験等により、エンテロバクター属に属する細菌には、パントエア・アグロメランス又はパントエア・ディスパーサ等に再分類されているものがある(International Journal of Systematic Bacteriology, July 1989;39(3).p.337-345)。また、エルビニア属に属する細菌にはパントエア・アナナス、パントエア・スチューアルティに再分類されているものがある(Internationa
l Journal of Systematic Bacteriology, Jan 1993;43(1), p.162-173 参照)。
また、コリネ型細菌を使用することもできる。
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類された細菌も含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1981))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
以下、上記のような細菌にL−システイン生産能を付与する方法、又はこれらの細菌のL−システイン生産能を増強する方法について述べる。
細菌にL−システイン生産能を付与するには、栄養要求性変異株、アナログ耐性株又は代謝制御変異株の取得や、L−アミノ酸の生合成系酵素の発現が増強された組換え株の創製等、従来、コリネ型細菌やエシェリヒア属細菌等の育種に採用されてきた方法を適用することができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77-100頁参照)。ここで、L−システイン生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独でもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、発現が増強されるL−システイン生合成系酵素も、単独であっても、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の増強が組み合わされてもよい。
L−システイン生産能を有する栄養要求性変異株、L−システインのアナログ耐性株、又は代謝制御変異株を取得するには、親株又は野生株を通常の変異処理、すなわちX線や紫外線の照射、またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)もしくはエチルメタンスルフォネート(EMS)等の変異剤処理などによって処理し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、かつL−システイン生産能を有するものを選択することによって得ることができる。
L−システイン生産菌として具体的には、フィードバック阻害耐性のセリンアセチルト
ランスフェラーゼ(SAT)をコードするcysEアレルで形質転換されたE. coli JM15(米国特許第6,218,168号)、細胞に毒性の物質を排出するのに適したタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現するE. coli W3110 (米国特許第5,972,663号)、システインデスルフヒドラーゼ活性が低下したE. coli株 (特開平11-155571号公報)、cysB遺伝子によりコードされるシステインレギュロンの正の転写制御因子の活性が上昇したE. coli W3110 (WO01/27307号国際公開パンフレット)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられる。
また、細胞内のセリンアセチルトランスフェラーゼ活性が上昇したコリネ型細菌が特開2002-233384号公報に開示されている。
E. coliでは、システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質として、シスタチオニン−β−リアーゼ(metC産物、特開平11-155571号公報、Chandra et. al., Biochemistry, 21 (1982) 3064-3069))、トリプトファナーゼ(tnaA産物、特開2003-169668号公報、(Austin Newton et. al., J. Biol. Chem. 240 (1965) 1211-1218))、O-アセチルセリン スルフヒドリラーゼB(cysM遺伝子産物、特開2005-245311号公報)、及び、malY遺伝子産物(特開2005-245311号公報)が知られている。したがって、これらのタンパク質の活性を低下させることにより、L−システイン生産能を向上させることができる。
本発明において、「タンパク質の活性が低下する」とは、同タンパク質の活性が野生株又は親株等の非改変株に対して低下していることを意味し、活性が完全に消失していることを含む。
システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質の活性を低下させるような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることによって達成される。具体的には例えば、染色体上の標的遺伝子のコード領域の一部又は全部を欠損させることによって、前記タンパク質の細胞内の活性を低下させることができる。標的遺伝子のプロモーターやシャインダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変したりすることなどによっても、発現を低下させることができる。また、発現調節配列以外の非翻訳領域の改変によっても、遺伝子の発現量を低下させることができる。さらには、染色体上の遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。また、染色体上の標的遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、また終始コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは一〜二塩基付加・欠失するフレームシフト変異を導入することによっても達成出来る(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997) Proceedings of the National Academy of Sciences,USA 95 5511-5515(1998),
Journal of Biological Chemistry 266, 20833-20839(1991))。
本発明においては、L−システイン生産菌は、フィードバック阻害耐性の変異型SATを保持していることが好ましい。エシェリヒア・コリに由来する、フィードバック阻害耐性の変異型SATとして具体的には、256位のメチオニン残基がグルタミン酸残基に置換された変異型SAT(特開平11-155571号公報)、256位のメチオニン残基がイソロイシン残基に置換された変異型SAT(Denk, D. and Boeck, A., J. General Microbiol., 133, 515-525 (1987))、97位のアミノ酸残基から273位のアミノ酸残基までの領域における変異、又は227位のアミノ酸残基からC末端領域の欠失を有する変異型SAT(WO97/15673号国際公開パンフレット、米国特許第6218168号)、野生型SATの89〜96位に相当するアミノ酸配列が1又は複数の変異を含み、かつ、L−システインによるフィードバック阻害が脱感作されている、変異型SAT(米国特許公開第20050112731(A1))等が知られている。例えば、野生型SATの95位及び96位のVal残基及びAsp残基が、各々Arg残基及びPro残基に置換された変異型SATが知られている。
SAT遺伝子は、エシェリヒア・コリの遺伝子に限られず、SAT活性を有するタンパク質をコードするものであればよい。また、L−システインによるフィードバック阻害を受けな
いシロイヌナズナ由来のSATアイソザイムが知られており、これをコードする遺伝子を用いることもできる(FEMS Microbiol. Lett., 179 (1999) 453-459)。
細菌にSAT遺伝子を導入すれば、L−システイン生産能が付与される。細菌へのSAT遺伝子の導入は、通常のタンパク質発現に用いられる種々のベクターを用いることができる。このようなベクターとしては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, RSF1010, pBR322, pACYC184, pMW219等が挙げられる。
また、硫酸塩/チオ硫酸塩輸送系タンパク質群をコードするcysPTWAMクラスター遺伝子の発現が増強されるように改変されたエシェリヒア属に属するL−システイン生産菌(特開2005-137369号公報、EP1528108号明細書)を使用することもできる。
また、L−システイン生産能を有し、かつ、emrAB、emrKY、yojIH、acrEF、bcr又はcusA遺伝子の発現が上昇するように改変されたエシェリヒア属細菌を使用することもできる(特開2005-287333号公報)。
また、セリンによるフィードバック阻害を受けないホスホグリセレートデヒドロゲナーゼをコードする変異型serA5遺伝子(米国特許第6,180,373号に記載)が導入された細菌や、トランスメンブレンタンパク質をコードするydeD遺伝子の発現が高められた細菌(米国特許第5、972、663号)でもよい。
また、スクロースPTS遺伝子群を保持し、かつ、スレオニン以外のアミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌や、スクロース非PTS遺伝子群を保持し、かつ、アミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌を使用することもできる(特開2001−346578号公報)。
SAT遺伝子やcysPTWAMクラスター遺伝子などの目的遺伝子を含む組換えベクターを細菌に導入するには、D.A.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))、エレクトロポーレーションによる方法等、細菌の形質転換に通常用いられている方法を用いることができる。
また、SAT遺伝子のコピー数を高めることによっても、SAT活性を上昇させるこができる。SAT遺伝子のコピー数を高めることは、上記のようなベクターを用いてSAT遺伝子を細菌に導入することによって、又は、SAT遺伝子を細菌の染色体DNA上に多コピー存在させることによって達成できる。細菌の染色体DNA上にSAT遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行うことができる。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、SAT遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。
また、SAT遺伝子のプロモーターを強力なものに置換することによってもSAT活性を上昇させるこができる。
同様にして、cysPTWAMクラスター遺伝子やemrAB、emrKY、yojIH、acrEF、bcr又はcusA遺伝子の発現を高めることができる。
なお、上記のL−システイン生産能を高めるための改変は複数組み合わせることもできる。
上記のようにして得られるL−システイン生産能を有する細菌を培地中で培養し、該培地からL−システインを採取することにより、L−システインを製造することができる。
使用する培地としては、炭素源、窒素源、イオウ源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地が挙げられる。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュクロース、糖蜜やでんぷんの加水分解物などの糖類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
イオウ源としては、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の無機硫黄化合物が挙げられる、
有機微量栄養源としては、ビタミンB1などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じてリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
培養は好気的条件下で30〜90時間実施するのがよく、培養温度は25℃〜37℃に、培養中pHは5〜8に制御することが好ましい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。
本発明の方法では、培養途中に、培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作を行う。ここで、「培養途中」とは、培養開始後、L−システインが一定量以上、培地中に蓄積した時点をいい、この時点は用いるL−システイン生産菌の種類にもよるが、例えば、好ましくは、培地中のL−システイン濃度が1〜20g/Lの時点、より好ましくは、培地中のL−システイン濃度が1〜15g/Lの時点が挙げられる。
L−システインをL−シスチンに変換する操作としては、L−システインにジスルフィド結合を形成させてL−シスチンを生成させる操作であれば特に制限されないが、培地を過酸化水素で処理する操作や培地に銅イオンを添加する操作が挙げられる。
培地を過酸化水素で処理する操作としては、L−システイン生産菌に実質的に影響を及さず、かつ、培地中のL−システインをL−シスチンに変換することが可能であれば特に制限されない。具体的には、例えば、沈降法、遠心分離、膜分離などにより培地からL−システイン生産菌の菌体を一旦分離し、菌体を除いた培地に過酸化水素を加える方法(Bioprocess Engineering(second edition), Michael L.shuler/Fikret Kargi)が挙げられる。過酸化水素は、培地中に蓄積したL−システインと当量またはそれ以下の量加えることが好ましい。過酸化水素処理の時間は、L−システインがL−シスチンに変換されてL−シスチンが析出するのに十分な時間であれば特に制限されないが、具体的には、5〜30分が好ましい。
培地を過酸化水素で処理する操作を行った後、処理後の培地に、分離したL−システイン生産菌を再度加えて、培養をさらに行う。また、分離したL−システイン生産菌に加えて、又は分離したL−システイン生産菌に替えて、別途培養したL−システイン生産菌を加えてもよい。このように、培地中のL−システイン濃度が上昇した時点で培地の過酸化水素処理を行い、処理後の培地を用いてさらに培養を継続することにより、生成したL−システインをL−シスチンとして析出させて培地中のL−システイン濃度の上昇を抑え、さらに培地中にL−システインを蓄積させることができる。
なお、培地を過酸化水素で処理する操作は、培地中のL−システインの蓄積状況に応じて複数回行ってもよい。
また、培地を過酸化水素で処理した際に、L−シスチンを培地から分離、回収してもよいが、そのままでもよい。過酸化水素処理後、又はその他の適当なときに、培地に、新鮮な培地又は炭素源等の培地成分を加えてもよい。
このように、培地中のL−システイン濃度が上昇した時点で培地を過酸化水素で処理し、培地中のL−システインをL−シスチンとして析出させて培地中のL−システイン濃度を低下させ、さらに培養を継続することによって、L−システインの生産量を高めることができる。
培養途中に培地に銅イオンを添加する場合、菌体と培地を分離し、菌体が除かれた培地に銅イオンを添加してもよいし、菌体を含んだ培地に直接銅イオンを添加してもよい。尚、培地に銅イオンを添加するとは、培地中に銅イオンが存在するように銅イオン源を添加することをいい、具体的には銅の塩又はその溶液を添加することが含まれる。ここで、「銅イオン」とは、L−システインをL−シスチンに酸化する能力を有する銅イオンであり、2価の銅イオンが好ましい。2価の銅イオンは、硫酸銅、塩化銅などの金属塩またはその溶液として培地に添加することが好ましい。銅イオンは、培地中に蓄積したL−システインと当量またはそれ以下の量加えることが好ましい。具体的には、5〜20mg/Lの濃度で加えることが好ましい。
このように、培地中のL−システイン濃度が上昇した時点で培地の銅イオンを添加し、さらに培養を継続することにより、生成したL−システインをL−シスチンとして析出させて培地中のL−システイン濃度の上昇を抑え、さらに培地中にL−システインを蓄積させることができる。
培地に銅イオンを添加する態様においても、適当なときに、培地に、新鮮な培地又は炭素源等の培地成分を加えてもよい。
なお、銅イオンを添加する操作は、培地中のL−システインの蓄積状況に応じて複数回行ってもよい。
析出したL−シスチンについては、還元剤による還元、電気分解などの公知の方法によってL−システインに変換することができる。L−シスチンをL−システインに変換する操作は、L−シスチンを一旦培地から分離してから行ってもよいが、L−シスチンとL−システインを含有する培地中で行うことが好ましい。すなわち、L−シスチンおよびL−システインを含む培地中で、L−シスチンをL−システインに変換し、目的物質の全てをL−システインとして回収することが操作の簡便性の観点から好ましい。
ただし、析出したL−シスチンを回収する操作を、培養途中、例えば、菌体と分離した培地に過酸化水素処理を行ってL−シスチンを析出させた際に行ってもよい。
培地からのL−システインの採取は通常のイオン交換樹脂法、沈澱法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明は実施例には限定されず、他のL−システイン生産菌を用いることによっても本発明の方法を行うことができる。
L−システイン生産菌株の構築
野性株エシェリヒア・コリのMG1655株を用いてL−システイン生産菌株の構築を実施した。
1)metC遺伝子(シスタチオニン−β−リアーゼをコードする遺伝子)の欠損;
(i)pMIV-5JSの構築
プラスミドpMIV-5JSは、プラスミドpM12-ter(thr)(後述)のBamHIとHindIIIサイトに、intJSカセット(後述)の両端にあらかじめデザインされていたBglIIとHindIIIを繋ぐことによって構築した(図1)。
プラスミドpM12-ter(thr)は、合成オリゴヌクレオチド(5'-aagcttaaca cagaaaaaag cccgcacctg acagtgcggg cttttttttt cgaccactgc ag-3':配列番号1)とその相補鎖である合成オリゴヌクレオチド(5'-ttcgaattgt gtcttttttc gggcgtggac tgtcacgccc gaaaaaaaaa gctggtgacg tc-3':配列番号2)のアニーリングにより作製された2本鎖DNAフラグメント(thrLターミネーター;両端にHindIIIとPstIサイトがデザインされている)を、Muファージ由来のインテグレーションカセットを持つプラスミドpM12(EP1486570(A1))(図
2)のHindIIIとMph1103Iサイトに挿入することで構築した(図3)。IntJSカセットは次の手順(a)〜(g)によって構築した(図4)。
(a)上流プライマー(5'-ccagatcttg aagcctgctt ttttatacta agttggc:配列番号3) (BglIIサイトがデザインされている)と下流プライマー(5'-gaaatcaaat aatgatttta ttttg:配列番号4)(リン酸化されている)、及び、鋳型としてプラスミドpMW118-attL-tet-attR-ter_rrnB(WO2005/010175)を用いたPCRにより、0.12 kbpのLattLフラグメントを取得した。
(b)上流プライマー(5'-ttacgccccg ccctgccact catcgc-3':配列番号5) (リン酸化されている)と下流プライマー(5'-gtcactgcag ctgatgtccg gcggtgcttt tgcc-3':配列番号6)(PstIサイトがデザインされている)に鋳型としてプラスミドpACYC184(New England Biolabs)を用いたPCRにより1.03 kbpのCmRフラグメントを取得した。
(c)上流プライマー(5'-cagctgcagt ctgttacagg tcactaatac c-3':配列番号7) (PstIサイトがデザインされている)と下流プライマー(5'-ccgagctccg ctcaagttag tataaaaaag ctgaacg-3':配列番号8)(SacIサイトがデザインされている)、及び、鋳型としてプラスミドpMW118-attL-tet-attR-ter_rrnB(WO2005/010175)を用いたPCRにより、0.16 kbpのLattRフラグメントを取得した。
(d)LattLフラグメントとCmRフラグメントのライゲーションにより1.15 kbpのLattL-CmRフラグメントを取得した。
(e)LattL-CmRフラグメントとLattRフラグメントをPstIで切断後、両断片のライゲーションにより1.31 kbpのLattL-CmR-LattRフラグメントを取得した。
(f)合成オリゴヌクレオチド(5'-cccgagctcg gtacctcgcg aatgcatcta gatgggcccg tcgactgcag aggcctgcat gcaagcttcc-3':配列番号9)とその相補鎖である合成オリゴヌクレオチドのアニーリングにより、70bpのマルチクローニングサイト(MCS)を構成する2本鎖DNAフラグメントを取得した。
(g)LattL-CmR-LattRフラグメントと、マルチクローニングサイト(MCS)を構成する前記2本鎖DNAフラグメントをSacIで切断後、両断片のライゲーションにより1.38 kbpのIntJSフラグメントを取得した。
(ii)metC遺伝子破壊用DNA断片の増幅
metC遺伝子の破壊はDatsenkoとWannerの手法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97(12),6640-6645)を用いて実施した。metC遺伝子の部分配列を含む下記2種類のオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして使用した。
プライマーmetCinF (5'-aaaaagcttgatactcaactggtgaatgcaggacgccgctcaagttagtataaaaaagctgaac-3') 配列番号10
プライマーmetCinR (5'-gaccaatatgcaggcgaatcaaggtcccgctaaaattgaagcctgcttttttatactaagttgg-3') 配列番号11
このプライマーと上記pMIV-5JSをテンプレートとして用いPCR反応を実施(94℃-0.5分、54℃-0.5分、72℃-2分を1サイクルとし25サイクル、その後72℃で7分間保温)した。増幅したDNA断片(約1.6kb)をアガロースゲル電気泳動にて選択し、精製した。
(iii)次に、λファージの配列(λRed homologous recombination system/GenBank Accession No.J02459)を含むプラスミドpKD46(Datsenko and Wanner, Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97(12),6640-6645)を保持したMG1655(以下MG1655/pKD46と記載する)を用いてエレ
クトロポレーション用のコンピーテントセルの調製を行なった。
MG1655/pKD46を、アンピシリン(以下Ampと記載する)を含むLB培地中で30℃で一晩培養を行った後、アンピシリンとアラビノースを含む(終濃度1mM)5mlのSOB培地(Sambrook et al,"Molecular Cloning A Laboratory Manual,Second Edition Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))を用い100倍になるよう希釈した。この培養液を30℃でOD600nmが約0.6になるまで培養し、集菌後冷水で3回洗浄し、最終液量50μlになるように調製した。これに(ii)で調製したDNA断片を約2μg添加し、エレクトロポレーションを実施した。エレクトロポレーション後の溶液を1mlのSOC培地(Sambrook et al,"Molecular Cloning A Laboratory Manual,Second Edition Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に懸濁し、37℃で2.5時間培養し、クロラムフェニコール(以後Cmと記載)を含むLBアガロースプレートに塗布し、37℃で培養した。この後、生育してきたクローンを拾い、Cmを含むLBアガロースプレートに塗布し42℃で培養を行う操作を2回繰り返した。生育してきたクローンを拾い、Ampに感受性を示すかについてテストを実施し、pKD46のプラスミドが脱落していることを確認した。得られたクローンはメチオニン要求性を示し、metCが欠損していることが分かった。
このあとCmのマーカーを除去するためλ-Int-Xis system(WO2005/010175号国際公開パンフレット)を用いた。前述のmetC欠損株にpMW118-int-xis(WO2005/010175号国際公開パンフレット)を形質転換法により保持させた。この後150mg/Lの濃度のアンピシリンを含むLBプレートに塗布し、30℃で培養した。得られたクローンについてCm感受性であるか確認した。Cm感受性であるクローンをLBプレートに塗布し42℃で培養後、生育してきたクローンをmetC欠損株Cm感受性株として得た(以下MG1655ΔmetCと記載する)。
2)tnaA遺伝子(トリプトファナーゼをコードする遺伝子)の欠損;
Red-driven 組換え法(Datsenko and Wanner;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97(12),
6640-6645)を用いてtnaA遺伝子の欠損を実施した。この手法に従い、下記の2つのオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pMIV-5JSをテンプレートとしてPCR反応(94℃-0.5分、54℃-0.5分、72℃-2分を1サイクルとして25サイクル、その後72℃で7分間保温)を実施し、アガロースゲル電気泳動により目的のDNA断片(1.6kb) 選択、精製した。
プライマーtnaAinF (5'-tgaaggattatgtaatggaaaactttaaacatctcccgctcaagttagtataaaaaagctgaac-3') 配列番号12
プライマーtnaAinR (5'-ggtgaagtgacgcaatactttcggttcgtacgtaaatgaagcctgcttttttatactaagttgg-3') 配列番号13
1)で構築したMG1655ΔmetCにプラスミドpKD46を保持させ、前記と同様の方法でエレクトロポレーション用細胞を調製した。この菌株と2)で調製したDNA断片を用いてエレクトロポレーションを実施し、Cm添加のLBプレートに塗布し生育してきたクローンについてトリプトファンを単一窒素源として利用して生育の出来ない菌株を得た。この菌株をもとに前記λ-Int-Xis systemを用いてCm感受性の菌株を得た(以下MG1655ΔmetCΔtnaAと記載する)。
3)cysM遺伝子(O-アセチルセリン スルフヒドリラーゼBをコードする遺伝子)の組み込み
Mu組換え法(EP1149911号明細書)を使用して、MG1655のゲノム上にcysM遺伝子を組み込んだ。まず、1)の項に記載した方法でエレクトロポレーション用にMG1655細胞を調製した。これにpMH10(pACYC177の誘導体でカナマイシン耐性遺伝子、Mu-transposaseをコードする遺伝子Mu-ファージAとB遺伝子、Mu-repressorをコードするcts62遺伝子およびλファージのrepressorをコードするcI857遺伝子を保持するプラスミド/EP1149911号明細書)をエレクトロポレーションで前述のMG1655に導入し、形質転換体を得た(MG1655/pMH10と以下記載する)。その後cysMを含むプラスミドpMW-PcysK-cysM(EP1528108号明細書)をエレクトロポレーションによりMG1655/pMH10に導入し、エレクトロポレーション直後に44℃で20分
培養し、20mg/LのCmを含むLBプレートに塗布し30℃で培養した。生育してきたクローンのうちCmに耐性、Ampとカナマイシンに感受性のクローンを得て、染色体上にPcysK-cysMが挿入され、前述のpMH10と、pMW-PcysK-cysM が除去されたクローンを得た(MG1655int-cysMと記載する)。
次にP1形質導入法(Miller,J.H. Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Lab.Press,1972,Plainview,NY)を用いた。まず、MG1655int-cysMをドナーとしてP1ファージを増加させた。このファージをMG1655ΔmetCΔtnaAに感染させた。感染後、20mg/LのCmを含むLBプレートに塗布し、生育してきたクローンを得た。このクローンから前記λ-Int-Xis systemを用いてCm感受性の菌株を得た(MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysMと以下記載する)。MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysMではPcysK-cysMがゲノム上の不特定の部位に挿入されている。
4)cysPTWAオペロンの組み込み
pMIV-PTWAプラスミドの構築は次の様にした。pMW-PTWAプラスミド(EP1528108号明細書)と以下に記載する2種類のオリゴヌクレオチドを使用してPCR反応でDNA断片を増幅した。
mz025 (5'-agctgagcatgctgatggcggcagcacactgc-3') 配列番号14
mz026 (5'-agctgatctagattcactcaacctatcaggcgc-3') 配列番号15
増幅されたDNA断片を制限酵素のPaeIとXbaIで切断した。また、pMIV-5JSのベクターもPaeI-XbaIで切断し、前述のDNA断片とライゲーション反応により結合させpMIV-PTWAを構築した。このプラスミドを用い、前記Mu組換え法によりcysPTWAオペロンをMG1655のゲノムへ導入した(MG1655-int-PTWAと以下記述する)。MG1655-int-PTWAにP1ファージを感染させ、P1ファージを増加させた。このP1ファージとMG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysMを使用して前記P1形質導入法を用い、Cm耐性の菌株を得た。このクローンから前記λ-Int-Xis systemを用いてCm感受性の菌株を得た(MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWAと以下記載する)。
5)pMIV-PTWAの組み込み
エレクトロポレーション法により、前記MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWAに、前記プラスミドpMIV-PTWAを導入した(MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWA/ pMIV-PTWAと以下記述する)。
6)pACYC-DES(ydeD遺伝子、変異型cysE遺伝子および変異型serA5遺伝子を保持するプラスミド)の組み込み
pACYC-DES (EP1528108号明細書)を前項のMG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWA/ pMIV-PTWAにエレクトロポレーション法で挿入した。挿入後、Amp、Cm、テトラサイクリンに耐性のクローンを得た(MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWA/ pMIV-PTWA pACYC-DESと以下記述する)。
7)前記MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWA/ pMIV-PTWA pACYC-DESに、3)で記載したP1形質導入法を用いて、sucPTS(スクロースPTS遺伝子群:特開2001−346578号公報のscr遺伝子群)を導入した。まずMG1655のゲノム中のebgA遺伝子座にsucPTSのオペロンを挿入したMG1655::sucPTSをドナーとしてP1ファージを増殖させた。このファージをMG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWA/ pMIV-PTWA pACYC-DESに感染させた。感染後Amp、Tet(テトラサイクリン)を含むM9(単一炭素源としてSucroseを添加)プレートに塗布し、生育してきたクローンを得た(MG1655ΔmetCΔtnaA-int-cysM-int-PTWA/ pMIV-PTWA pACYC-DES::sucPTS)。これをL−システイン生産エシェリヒア・コリとして用いた。
L−システインの製造
<種培養>
L−システイン生産エシェリヒア・コリを500ml容の坂口フラスコに入れた60mlのLB培地(トリプトン1%、酵母抽出物0.5%、塩化ナトリウム0.5%)に接種し、37℃で4時間、振とう下(140回転/分)で前培養した。
得られた前培養物の約50mlを下記組成を有する250mlの種培地へ接種した。1Lの小型発酵槽を用いて、30℃で12-16時間、900回転/分で培養し、種培養液を得た。
種培地組成;
Sucrose 25g/L
硫酸マグネシウム七水和物 0.3g/L
トリプトン 2g/L
イーストエクストラクト 1g/L
硫酸アンモニウム 5g/L
リン酸二水素カリウム 1.5g/L
塩化ナトリウム 0.5g/L
クエン酸3ナトリウム2水和物 1g/L
L-メチオニン 0.45g/L
硫酸第一鉄七水和物 75mg/L
塩化マンガン四水和物 1.6mg/L
塩化カルシウム 15mg/L
モリブデン酸ナトリウム二水和物 0.15mg/L
塩化コバルト 0.7mg/L
硫酸亜鉛七水和物 0.3mg/L
アンピシリン 100mg/L
テトラサイクリン 25mg/L
<主培養>
上記種培養液60mlを下記組成を有する300mlの主培養培地に接種した。1Lの小型発酵槽を用いて、30℃、900回転/分の攪拌下で、滅菌フィルターにより滅菌した圧縮空気を1vvm通気しながら培養した。また培養期間中温度は30℃に保持し、pHはアンモニアガスで7.4に保持した。
主培養培地組成
Sucrose 25g/L
硫酸マグネシウム七水和物 0.3g/L
トリプトン 2g/L
イーストエクストラクト 1g/L
硫酸アンモニウム 5g/L
リン酸二水素カリウム 1.5g/L
塩化ナトリウム 0.5g/L
クエン酸3ナトリウム2水和物 1g/L
L-メチオニン 2.25g/L
硫酸第一鉄七水和物 5mg/L
塩化マンガン四水和物 1.6mg/L
塩化カルシウム 15mg/L
モリブデン酸ナトリウム二水和物 0.15mg/L
塩化コバルト 0.7mg/L
硫酸亜鉛七水和物 0.3mg/L
アンピシリン 100mg/L
テトラサイクリン 25mg/L
実施例1:過酸化水素処理
主培養において、Sucrose溶液700g/L(w/v)(オートクレーブで殺菌した)をポンプ輸送することによって、小型発酵槽内のSucrose濃度を0-20g/Lに調節した。また、チオ硫酸ナトリウム溶液280g/L(オートクレーブ殺菌)を培養10時間目から前述のSucrose溶液と等量の割合でポンプ輸送し、小型発酵槽内に添加した。培養24、42時間の時点で培養液を6000回転、7分、室温で遠心し培養上清と菌体とに分離した。このうち培養上清に17.7g/L(0.47mol/L)の過酸化水素溶液(ろ過滅菌したもの)をチオ硫酸ナトリウム溶液の添加量と等量となるように添加し、激しく混合した後10分間静置した。この後、培養上清と菌体を再度混合し、培養を継続して行なった。対照条件として、過酸化水素の代わりに滅菌水を加えて同様の処理を行い、培養を継続した。培養72時間後のL−システイン(Cys)の蓄積と生産速度及び収率を表1に示す。なお、析出したL−シスチンは還元剤であるジチオスレイトール(DTT)によりL−システインに変換し、培地中に蓄積したL−システインとL−シスチンのDTT還元により生成したL−システインとを合わせてL-システインの蓄積量とした。
Figure 2010022215
この結果、培地を過酸化水素で処理した条件では、対照条件と比較しL−システインの収率、生産速度、蓄積のいずれも向上することが判明した。上記の実験条件での培養中盤の上清L−システイン濃度は対照条件では常時12-16g/Lの濃度であったのに対し、過酸化水素添加条件では、過酸化水素反応直後の上清L−システイン濃度が6g/Lに抑えられていた。このため、上清L−システイン濃度を低濃度に制御することがL−システイン発酵培養法において、有効であると考えられた。
実施例2:銅イオン添加
主培養において、Sucrose溶液700g/L(w/v)(オートクレーブで殺菌した)をポンプ輸送することによって、小型発酵槽内のSucrose濃度を0-20g/Lに調節した。また、チオ硫酸ナトリウム溶液280g/L(オートクレーブ殺菌)を培養10時間目から前述のSucrose溶液と等量の割合でポンプ輸送し、小型発酵槽内に添加した。培養10時間目及び46.5時間目にそれぞれ、ろ過滅菌をしたCuSO4・5H2O 10mg/ml溶液を1ml添加した。培養中の銅イオン濃度は6.7mg/L-12.4mg/Lとなるよう添加した。対照条件として、銅イオンを添加せずに培養を行った。この結果を表2に示す。
なお、析出したL−シスチンは還元剤であるジチオスレイトール(DTT)によりL−システインに変換し、培地中に蓄積したL−システインとL−シスチンのDTT還元により生成したL−システインとを合わせてL-システインの蓄積量とした。
Figure 2010022215
この結果、培地に銅イオンを添加した条件では、対照条件と比較しL−システインの収率、生産速度、蓄積のいずれも向上することが判明した。上記の実験条件での培養中盤の上清L−システイン濃度は対照条件では常時15-20g/Lの濃度であったのに対し、銅イオン添加条件では、銅イオン溶液添加後の上清L−システイン濃度が7g/Lに抑えられていた。このため、上清L−システイン濃度を低濃度に制御することがL−システイン発酵培養法において、有効であると考えられた。
配列表の説明
配列番号1〜9:プラスミドpMIV-5JS構築用PCRプライマー
配列番号10 metC遺伝子破壊用5’プライマー
配列番号11 metC遺伝子破壊用3’プライマー
配列番号12 tnaA遺伝子破壊用5’プライマー
配列番号13 tnaA遺伝子破壊用3’プライマー
配列番号14 cysPTWAオペロン増幅用5’プライマー
配列番号15 cysPTWAオペロン増幅用3’プライマー
プラスミドpMIV-5JSの構築を示す図。 pM12の構築を示す図。 プラスミドpM12-ter(thr)の構築を示す図。図中の配列は、配列番号11及び配列番号12に示した。 IntJSカセットの構築を示す図。

Claims (3)

  1. L−システイン生産能を有する細菌を培地中で培養し、該培地からL−システインを採取するL−システインの製造法において、培養途中に、培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作を行うことを特徴とする方法。
  2. 培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作が、培地を過酸化水素で処理することである、請求項1に記載の方法。
  3. 培地中に蓄積したL−システインをL−シスチンに変換する操作が、培地に銅イオンを添加する操作である、請求項1に記載の方法。
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