JP2021521897A - パントエア属細菌を用いたl−メチオニンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、rarD遺伝子またはその変異型遺伝子を過剰発現するように改変したPantoea
(パントエア)属細菌の発酵によりL−メチオニンを製造する方法を提供する。

Description

本発明は、広くは微生物工業に関し、特に、rarD遺伝子を過剰発現し、L−メチオニンの生産が増強されるように改変されたPantoea(パントエア)属細菌の発酵によりL−メ
チオニンを製造する方法に関する。
従来、L−アミノ酸は自然源から得られた微生物株あるいはそれらの変異体を利用した発酵法によって工業的に製造されてきた。典型的には、そのような微生物はL−アミノ酸の生産収率が高まるように改変されている。
L−アミノ酸の生産収率を高めるための多くの技術が報告されており、組み換えDNAに
よる微生物の形質転換(例えば、U.S. Patent No. 4,278,765 Aを参照のこと)、プロモ
ーター、リーダー配列及び/又はアテニュエーター、あるいはその他の当業者に知られた発現制御領域の改変(例えば、US20060216796 A1やWO9615246 A1を参照のこと)等がある。生産収率を高めるその他の技術としては、アミノ酸生合成に関与する酵素の活性を増加させること、及び/又は生成したL−アミノ酸による目的とする酵素のフィードバック阻害を解除すること(例えば、WO9516042 A1, EP0685555 A1, またはU.S. Patent Nos. 4,346,170 A, 5,661,012 A, および6,040,160 Aを参照のこと)が挙げられる。
L−アミノ酸の生産収率を高める別の方法としては、1種または数種の、目的とするL−アミノ酸の分解に関与する遺伝子、目的とするL−アミノ酸の生合成経路から該L−アミノ酸の前駆体を別の経路に逸らせる遺伝子、炭素、窒素、硫黄、及びリン酸の流れの再分配に関与する遺伝子、および毒素をコードする遺伝子等の発現を減少させることが挙げられる。
L−メチオニン((2S)-2-アミノ-4-(メチルスルファニル)ブタン酸((2S)-2-amino-4-(methylsulfanyl) butanoic acid)としても知られている)については、少なく
ともmetJ遺伝子によってコードされるL−メチオニン生合成系のリプレッサーが欠損している組み換えEscherichia属細菌を培地で培養してL−メチオニンを製造する方法が知ら
れている(US7611873 B1)。この方法で使用される細菌は、細胞内のホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)(MetA)の活性が増大するようにさらに
改変されている。さらに、このL−メチオニンの製造法で使用される細菌のホモセリントランスクシニラーゼは、L−メチオニンによるフィードバック阻害に対して非感受性となるように改変されている。具体的には、Escherichia属細菌のMetAのアミノ酸配列は、少
なくとも、27位のアルギニン(Arg)残基をシステイン(Cys)残基に置き換えること(R27C変異)、296位のイソロイシン(Ile)残基をセリン(Ser)残基に置き換えること(I296S変異)、および298位のプロリン(Pro)残基をロイシン(Leu)残基に置き換えること
(P298L変異)のうち1つの置換を含むように改変されている。
別の例では、L−メチオニンの発酵生産を向上させるために、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)またはコリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)に属する細菌であってもよい組み換え微生物を、コバラミン非依存性メチオニン合成酵素(cobalamin-independent methionine synthase)(MetE)の活性が抑制され、かつMetH遺伝子が微生物中で
過剰に発現するように改変した(EP2861726 B1;増強された5-メチルテトラヒドロ葉酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(5-methyltetrahydrofolate homocysteine methyltransferase)(MetH)の利用については、例えば、WO0210209 A1も参照されたい)。
細菌の発酵によるL−メチオニンの製造法は他にも知られており、例えば、L-スレオ
ニン生産能を有し、且つスレオニンデヒドラターゼ(threonine dehydratase)(tdcB、ilvA)と少なくともO-スクシニルホモセリンリアーゼ(O-succinylhomoserine lyase)(metB)、シスタチオニンβリアーゼ(cystathionine beta-lyase)(metc)、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(5,10-methylenetetrahydrofolate reductase)(metF)、およびセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(serine hydroxymethyltransferase)(glyA)を発現するベクターで形質転換された細菌株を用いた方法(US7790424 B2
);PntABのトランスヒドロゲナーゼ(transhydrogenase)活性が増強されるように改変
された腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の微生物を用いた方法(EP2633037 B1);等が挙げられる。
また、Escherichia coli (E. coli)種固有のRarDタンパク質またはそれと80%以上相同なバリアントの活性が増強された微生物を用いたL−アミノ酸の製造法であって、前記微生物がEscherichia、Corynebacterium、Bacillus、Serratia、Pseudomonas、またはStreptomyces属に属し、前記L−アミノ酸が特にL-セリン、L-グルタミン、L-システイン、L-フェニルアラニン、およびL-スレオニンである方法も開示されている(US2012015409 A1)。E. coli固有のRarDタンパク質(同義語:YigH)は、薬物/代謝物トランスポータースーパーファミリー(drug/metabolite transporter superfamily)(EcoCyc database, https://ecocyc.org/, accession ID: EG11466)の推定メンバーとして同定されている。トランスポーター分類データベースにおいて、RarDは、薬物/代謝物トランスポーター(DMT)スーパーファミリーのクロラムフェニコール感受性タンパク質(RarD)スーパ
ーファミリー(Chloramphenicol-Sensitivity Protein (RarD) Family)して分類されて
いる(Saier M.H. Jr. et al., The Transporter Classification Database (TCDB): recent advances, Nucleic Acids Res., 2016, 44(D1):D372-9; doi: 10.1093/nar/gkv1103
)。
しかしながら、Pantoea属のL−メチオニン生産菌の発酵によるL−メチオニン生産に
対するPantoeaの種に固有のrarD遺伝子またはそのバリアントの過剰発現の効果を示すデ
ータはこれまで報告されていない。
本明細書は、パントエア(Pantoea)属細菌の発酵によってL−メチオニンを製造する
、改良された方法を記載するものである。本発明によれば、Pantoea属細菌の発酵による
L−メチオニンの製造を増加させることができる。具体的には、Pantoea属細菌においてrarD遺伝子を過剰に発現させることにより該細菌の発酵によるL−メチオニンの生産を改
善し、改変された該細菌によるL−メチオニンの製造を増強することができる。Pantoea
属細菌の発酵によるL−メチオニンの生産は、RarDのアミノ酸配列において、86位のアスパラギン(Asn)残基がアスパラギン酸(Asp)残基(N86D変異)やグルタミン酸(Glu)
残基(N86E変異)等の酸性アミノ酸残基で置換されている変異型RarDタンパク質をコードする変異型rarD遺伝子を該細菌において過剰発現することにより、さらに増強することができる。また、Pantoea属細菌の発酵によるL−メチオニンの生産は、該細菌のホモセリ
ントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)(MetA)のアミノ酸配列を該
ホモセリントランスクシニラーゼがL−メチオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変することにより、さらに増強することができる。具体的には、該細菌固有のMetAタンパク質を、そのアミノ酸配列において、34位のアルギニン(Arg)残基をシステイ
ン(Cys)残基に置換すること(R34C変異)を含むように改変した。
本発明のひとつの態様は、L−メチオニンまたはその塩を製造する方法であって、
(i)L−メチオニンを生産する能力を有するパントエア(Pantoea)属細菌を培養培地で
培養して培養培地もしくは菌体、またはその両者中にL−メチオニンまたはその塩を生産および蓄積させること、および
(ii)培養培地もしくは菌体、またはその両者からL−メチオニンまたはその塩を回収すること
を含み、
前記細菌が、rarD遺伝子を過剰発現するように改変されている、方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記rarD遺伝子が、下記からなる群より選択される、前記方法を提供することである:
(A)配列番号1に示す塩基配列を含むDNA;
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(C)配列番号2に示すアミノ酸配列において、約1〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、
挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであっ
て、該タンパク質が配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有するも
のであるDNA;
(D)配列番号2に示すアミノ酸配列全体に対して90%以上の同一性を有するタンパク質を
コードするDNAであって、該タンパク質が配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有するものであるDNA;および
(E)配列番号1に示す塩基配列において、遺伝暗号の縮重による差異を含むDNA。
本発明の別の態様は、rarD遺伝子のコピー数を増加させることにより、および/またはrarD遺伝子の発現制御領域を改変することにより、rarD遺伝子が過剰発現され、以て該遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記rarD遺伝子が、86位のアスパラギン残基が酸性アミノ酸残基に置換されるアミノ酸置換を有するRarDタンパク質をコードする、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記酸性アミノ酸残基が、アスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基である、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、さらに、MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を含むように改変されており、該MetAタンパク質のアミノ酸配列が、アミノ酸置換R34Cを有する、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、前記方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的、特徴、および付随する利点は、それに従って構築された実施形態の以下の詳細な説明を読めば当業者に明らかになるであろう。
1.細菌
rarD遺伝子を過剰発現するように改変できる限り、パントエア(Pantoea)属に属する
任意のL−メチオニン生産菌を使用することができる。また、rarD遺伝子を過剰発現するように改変され、L−メチオニンの生産が非改変株と比較して増強されている限り、Pantoea属に属する任意のL−メチオニン生産菌を使用することができる。「L−メチオニン
生産菌」の用語は、当該細菌を培養培地で培養したときに、培地及び/又は菌体中にL−メチオニンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有するPantoea属
細菌を意味し得る。
また、「L−メチオニン生産菌」の用語は、たとえばPantoea ananatis (P. ananatis)
AJ13355株等の野生株または親株と比較して、より多い量でL−メチオニンを培地中に生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する細菌も意味し得る。また、「L−メチオニン生産菌」の用語は、例えば、0.1 g/l以上、0.5 g/l以上、あるいは1.0 g/l以上の量でL−メチオニンを培地中に蓄積することができる細菌も意味し得る。
さらに、Pantoea属に属し、且つrarD遺伝子を過剰発現するように改変された、L−メ
チオニン生産能を有する細菌を使用することもできる。細菌は、本来的にL−メチオニン生産能を有していてもよく、突然変異法またはDNA組み換え技術を使用してL−メチオニ
ン生産能を有するように改変されてもよい。前記細菌は、本来的にL−メチオニン生産能を有する細菌において、またはL−メチオニン生産能を付与された細菌において、rarD遺伝子を過剰発現させることにより得ることができる。あるいは、前記細菌は、rarD遺伝子を過剰発現するように改変された細菌にL−メチオニン生産能を付与することにより得ることができる。あるいは、前記細菌は、rarD遺伝子を過剰発現するように改変されたことによりL−メチオニン生産能を獲得したものであってもよい。
「L−メチオニン生産能」の用語は、当該細菌を培養培地で培養したときに、培地及び/又は菌体から回収できる程度に、培地及び/又は菌体中にL−メチオニンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、Pantoea属細菌の能力を意味し得る。培地で生
育し本明細書に記載の方法に従って使用される細菌について言及される「培養される(cultured)」という用語は、当業者に周知である「培養される(cultivated)」等の用語と代替可能または等価に使用されてよい。
細菌は、L−メチオニンを単独で、あるいはL−メチオニンとL−メチオニン以外の1
種またはそれ以上のアミノ酸、例えばL体のアミノ酸(L−アミノ酸ともいう)等、の混
合物として、生産し得る。さらに、細菌はL−メチオニンを単独で、あるいはL−メチオニンと1種またはそれ以上の有機酸、例えばカルボン酸等、との混合物として、生産し得
る。L−アミノ酸としては、特に制限されないが、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−オルニチン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、及びL−バリンが挙げられる。カルボン酸としては、特に制限されないが、ギ酸、酢酸、クエン酸、酪酸、乳酸、プロピオン酸、およびそれらの誘導体が挙げられる。
「L−メチオニン」、「L−アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、遊離形態のL−メチオニン、アミノ酸、およびカルボン酸に限られず、それらの塩もしくは水和物、またはL−メチオニン、アミノ酸、またはカルボン酸と別の有機もしくは無機の化合物とによって形成された付加物も包含してよい。すなわち、「L−メチオニン」、「L−アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、例えば、遊離形態のL−メチオニン、アミノ酸、およびカルボン酸、それらの水和物、それらの付加物、またはそれらの混合物を意味し得る。「L−メチオニン」、「L−アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、例えば、L−メチオニン、アミノ酸、およびカルボン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、一水和物、二水和物、三水和物、一塩酸塩、二塩酸塩等の塩や両性イオン等の分子内塩を包含し得る。L−メチオニンは、特に、遊離形態、もしくはその塩、またはそれらの混合物として製造され得る。すなわち、「L−メチオニン」という用語は、特に、例えば、遊離形態のL−メチオニン、その塩、またはそれらの混合物を意味し得る。
Pantoea属細菌としては、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?mode=Tree&id=53335&lvl=3&keep=1&srchmode=1&unlock)で用いられている分類法によりPantoea属に分類されて
いる任意の細菌を使用することができる。Pantoea属細菌としてはパントエア・アナナテ
ィス(Pantoea ananatis)等が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)のいくつかの株は、近年、16S rRNAの塩基配列解析等によりパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、またはパントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)に再分類されている。Pantoea属に分類された細菌であれば、Enterobacter属またはPantoea属のいずれに属するものであっても使用することができる。Pantoea ananatis株を遺伝子工学的手法により育種する場合には、Pantoea ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、及びそれらの派生株を用いることができる。これらの株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランスと同定され、エンテロバクター・アグロメランスとして寄託されたが、上記のとおり最近16S rRNAの塩基配列解析等によりPantoea ananatisに再分類されている。細菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC; Address: P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)から入手することができる。すなわち各菌株には対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して発注することができる(www.atcc.orgを参照)。各菌株の登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
L−メチオニン産生菌
Pantoea属のL−メチオニン生産菌およびL−メチオニン生産菌を誘導するために利用
できる親株としては、特に制限されないが、P. ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)が
挙げられる。この株は、P. ananatis SC17株(FERM BP-11091)としても知られており、
酸性pHで増殖する、高濃度のグルタミン酸に対する耐性を示す菌として磐田市(静岡県)の土壌から単離された(US7319025 B2; Katashkina J.I. et al., Use of the λ Red-recombineering method for genetic engineering of Pantoea ananatis, BMC Mol. Biol.,
2009, 10:34)。また、P. ananatis SC17(0)株(VKPM B-9246)を用いてもよい。SC17(0)株は、P. ananatisで遺伝子破壊を実施するためのλ Red遺伝子産物に対する耐性株として構築された(WO2008/075483)。
P. ananatisのrarD遺伝子は、クロラムフェニコール耐性パーミアーゼ(chloramphenicol resistance permease)RarDをコードする(BioCyc database, biocyc.org/, accession ID: G1H69-3687; UniProtKB/Swiss-Prot database, accession No. A0A0H3L1X8; KEGG,
Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes, entry No. PAJ_3332)。P. ananatis固有
のrarD遺伝子は配列番号1に示す塩基配列を有し、同遺伝子にコードされるRarDタンパク
質のアミノ酸配列は配列番号2に示される。
すなわち、rarD遺伝子は配列番号1に示す塩基配列を有していてもよく、RarDタンパク
質は配列番号2に示すアミノ酸配列を有していてもよい。「遺伝子またはタンパク質が塩
基配列またはアミノ酸配列を有する」という表現は、遺伝子またはタンパク質が当該塩基配列または当該アミノ酸配列を含むことを意味し、遺伝子またはタンパク質が当該塩基配列または当該アミノ酸配列からなる場合も包含する。
Pantoea属に属する細菌の種または株間でDNA配列にいくらかの相違があり得る。従って、rarD遺伝子は、RarDタンパク質をコードする限り、配列番号1に示す塩基配列を有する
遺伝子に限定されず、配列番号1の変異体塩基配列を有する遺伝子を包含してもよい。同
様に、RarDタンパク質は、RarDタンパク質の機能を有する限り、配列番号2に示すアミノ
酸配列を有するタンパク質に限定されず、配列番号2の変異体アミノ酸配列を有するタン
パク質を包含してもよい。そのような変異体塩基配列または変異体タンパク質としては、上記例示したrarD遺伝子またはRarDタンパク質のホモログや人為的改変体が挙げられる。そのようなホモログとしては、Pantoea属の他の種に固有のrarD遺伝子またはRarDタンパ
ク質が挙げられる。
「変異体塩基配列」の用語は、標準遺伝子暗号表(例えば、Lewin B., “Genes VIII”, 2004, Pearson Education, Inc., Upper Saddle River, NJ 07458を参照)による任意
の同義のアミノ酸コドンを使用してRarDタンパク質をコードする塩基配列を意味し得る。従って、rarD遺伝子は、遺伝暗号の縮重による配列番号1の変異体塩基配列を有する遺伝
子であり得る。
また、「変異体塩基配列」の用語は、非改変型RarDタンパク質(例えば、配列番号2に
示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってよいP. ananatis固有のRarDタンパク質、
等)の活性または機能が維持されたタンパク質をコードする限り、あるいはタンパク質の三次元構造が非改変型RarDタンパク質(例えば、P. ananatis固有のRarDタンパク質、等
)に対して有意には変更されていない限り、配列番号1に示す配列に相補的な塩基配列と
、または該塩基配列から調製し得るプローブと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列も意味し得る。「ストリンジェントな条件」の用語は、特異的なハイブリッド、例えばコンピュータプログラムBLASTを使用する場合のパラメーター「同一性
」として定義される相同性が85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上のハイブリッド、が形成され、非
特異的なハイブリッド、例えば上記より相同性が低いハイブリッド、が形成されない条件を包含し得る。ストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC(標準クエン酸ナトリウムまたは標準塩化ナトリウム)、0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の塩濃度で60℃において、0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で60℃において、または0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で65℃において1回以上、別の例では2または3回洗浄する条件が挙げられる。洗浄時間は、ブロッティングに使用されたメンブレンの種類に依存し得るが、一般的には製造者により推奨されるものとすべきである。例えば、Amersham HybondTM-N+正荷電ナイロンメンブレン(GE Healthcare)のストリンジェントな条件下での推奨洗浄時間は15分であ
る。洗浄工程は2または3回行うことができる。プローブとしては、配列番号1に示す配
列に相補的な配列の一部を使用してもよい。そのようなプローブは、配列番号1に示す配
列に基づいて調製されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用し、プローブとして使用され得る塩基配列を含むDNA断片を鋳型として使用するPCR(polymerase chain reaction;White T.J. et al., The polymerase chain reaction, Trends Genet., 1989, 5:185-189を参照のこと)によって調製することができる。プローブの長さは、50 bpを超えることが推奨されるが、ハイブリゼーション条件により適切に選択することができ、通常100 bp 〜1 kbpである。例えば、約300 bpの長さを有するDNA断片をプローブとして使用す
る場合、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件は、例えば、50℃、60℃、または65℃における2×SSC、0.1%SDSの条件であり得る。
「変異体塩基配列」の用語は、RarDタンパク質の変異体タンパク質をコードする塩基配列も意味し得る。
「変異体タンパク質」の用語は、配列番号2に示すアミノ酸配列と比較して、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加のいずれであるにせよ、1つまた
はそれ以上の変異を配列中に有するタンパク質であって、非改変型RarDタンパク質(例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってよいP. ananatis固有のRarDタンパク質、等)の活性または機能が維持されているか、その三次元構造が非改変型RarDタンパク質(例えば、P. ananatis固有のRarDタンパク質、等)に対して有意には変更
されていないタンパク質を意味し得る。変異体タンパク質中の変異の数は、タンパク質の
三次元構造中のアミノ酸残基の位置またはアミノ酸残基の種類による。変異体タンパク質中の変更の数は、厳密に限定されるものではないが、配列番号2において1〜30、別の例では1〜20、別の例では1〜15、別の例では1〜10、あるいは別の例では1〜5であってよい。
これは、アミノ酸は互いに高い相同性を有し得るものであり、それらアミノ酸間の変異によっては、タンパク質の活性あるいは機能が影響されない場合があるか、タンパク質の三次元構造が非改変型タンパク質に対して有意には変化しない場合があるから可能である。従って、変異体タンパク質は、RarDタンパク質の活性あるいは機能が維持されているか、タンパク質の三次元構造が非改変型RarDタンパク質(例えば、P. ananatis固有のRarDタ
ンパク質、等)に対して有意には変更されていない限り、配列番号2のアミノ酸配列全体
に対して85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、あるいは99%以上の、コンピュータプログラムBLASTを使用する際のパラメーター「同一性」として定義される相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、保存的変異が挙げられる。保存的変異の代表的なものは保存的置換であり得る。保存的置換は、限定するものではないが、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Ala、Leu、Ile、Val間で、置換部位
が親水性アミノ酸である場合にはGlu、Asp、Gln、Asn、Ser、His、Thr間で、置換部位が
極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、置換部位が塩基性アミノ酸である場合にはLys、Arg、His間で、置換部位が酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、置換部位
がヒドロキシル基を有するアミノ酸である場合には、Ser、Thr間で、互いに置換する置換である。保存的置換の例としては、AlaからSerまたはThrへの置換、ArgからGln、HisまたはLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、HisまたはAspへの置換、AspからAsn、GluまたはGlnへの置換、CysからSerまたはAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、AspまたはArgへの置換、GluからAsn、Gln、LysまたはAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、ArgまたはTyrへの置換、IleからLeu、Met、ValまたはPheへの置換、LeuからIle、Met、ValまたはPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、HisまたはArgへの置換、Met
からIle、Leu、ValまたはPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、IleまたはLeuへの置換、SerからThrまたはAlaへの置換、ThrからSerまたはAlaへの置換、TrpからPheまたはTyrへ
の置換、TyrからHis、PheまたはTrpへの置換、及びValからMet、IleまたはLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、又は付加等は、アミノ酸配列が由来する生物の個体差によって天然に生じ変異を包含する。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、非保存的変異も挙げられるが、ただし、その変異は、アミノ酸配列の異なる位置の1つまた
はそれ以上の第2の変異により、変異体タンパク質の活性または機能が維持されるか、あ
るいは非改変型タンパク質(例えば、P. ananatis固有のRarDタンパク質、等)に対して
タンパク質の三次元構造が有意には変更されないように、補償されるものである。
「配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性」の用語は、クロラムフェ
ニコールに対する耐性を細菌に付与することができるパーミアーゼ(permease)タンパク質RarDの活性を意味し得る。標的化合物(例えば、アミノ酸のアナログ、等)に対する耐性を細菌に付与することができる膜タンパク質が知られている(Doroshenko V. et al., YddG from Escherichia coli promotes export of aromatic amino acids, FEMS Microbiol. Lett., 2007, 275(2):312-318)。標的化合物に対する耐性を細菌に付与することが
できるトランスポータータンパク質の活性を決定する方法が知られており、それらの方法は配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を決定するために同様に使用
することができ、それらの方法においては、例えば、標的化合物に対するタンパク質の最小阻害濃度(MIC)が決定される(例えば、Doroshenko V. et al., 2007; Livshits V.A.
et al., Identification and characterization of the new gene rhtA involved in threonine and homoserine efflux in Escherichia coli, Res. Microbiol., 2003, 154(2):123-135を参照のこと)。タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準として用いたブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定することができる(Bradford M.M., Anal.
Biochem., 1976, 72:248-254)。
P. ananatis種固有のRarDタンパク質をコードするrarD遺伝子の塩基配列は既に解明さ
れている(上記参照)ので、P. ananatis固有のrarD遺伝子またはその変異体塩基配列は
、P. ananatis固有のrarD遺伝子の塩基配列に基づいて調製したプライマーを用いたPCR(polymerase chain reaction; White T.J. et al., The polymerase chain reaction, Trends Genet., 1989, 5:185-189を参照のこと)によるP. ananatisからのクローニングにより、P. ananatis固有のrarD遺伝子を含むDNAを例えばヒドロキシルアミンでin vitro処理する突然変異法またはrarD遺伝子を有するP. ananatisを紫外線(UV)照射もしくはその
ような処理に通常用いられるN-メチル-N'-ニトロ-ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の変異剤で処理する突然変異法により、または全長遺伝子構造物として化学合成することにより、取得できる。Pantoea属の他の種に固有のRarDタンパク質をコードする遺伝子お
よびその変異体塩基配列も同様に取得できる。
さらに、rarD遺伝子は、本明細書に記載の細菌を用いたL−メチオニンの生産がさらに増強されるように、野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における86位のアスパラギン(Asn)残基がアスパラギン酸(Asp,D)残基(N86D変異)またはグルタミン酸(Glu,E)
残基(N86E変異)であってもよい酸性アミノ酸残基で置換されたRarDタンパク質をコードしていてもよい。86位の変異は、特に、N86D変異であってよい。86位の変異を有するRarDタンパク質を、「変異型RarDタンパク質」ともいう。変異型RarDタンパク質をコードするrarD遺伝子を、「変異型rarD遺伝子」ともいう。「野生型RarDタンパク質」との用語は、86位の変異を有しないRarDタンパク質を意味し得る。野生型RarDタンパク質をコードするrarD遺伝子を、「野生型rarD遺伝子」ともいう。野生型rarD遺伝子としては、P. ananatis固有のrarD遺伝子や、その変異体であってコードされるタンパク質の86位の変異をもた
らす変異を有しないものが挙げられる。野生型RarDタンパク質としては、P. ananatis固
有のRarDタンパク質や、その変異体であって86位の変異を有しないものが挙げられる。言い換えると、変異型rarD遺伝子は、コードされるタンパク質の86位の変異をもたらす変異を有すること以外は、任意の野生型rarD遺伝子と同一であってもよい。また、変異型RarDタンパク質は、86位の変異を有すること以外は、任意の野生型RarDタンパク質と同一であってもよい。具体的には、変異型RarDタンパク質のアミノ酸配列は配列番号4に示す通り
であり得、それは配列番号3に示す塩基配列を有する変異型rarD遺伝子にコードされる。
すなわち、rarD遺伝子(具体的には変異型rarD遺伝子)は配列番号3に示す塩基配列を有
していてもよく、RarDタンパク質(具体的には変異型RarDタンパク質)は配列番号4に示
すアミノ酸配列を有していてもよい。rarD遺伝子(具体的には変異型rarD遺伝子)は、配列番号3の変異体塩基配列であってコードされるタンパク質の86位の変異をもたらす変異
を有する塩基配列を有していてもよい。RarDタンパク質(具体的には変異型RarDタンパク質)は、配列番号4の変異体アミノ酸配列であってコードされるタンパク質の86位の変異
を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
任意の野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列において「野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における86位のアスパラギン(Asn)残基」との用語は、当該任意の野生型RarDタ
ンパク質のアミノ酸配列と配列番号2のアミノ酸配列のアラインメントにおいて配列番号2に示すアミノ酸配列における86位のAsn残基に相当するアミノ酸残基を意味し得る。すな
わち、「86位」との用語は、必ずしも野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における絶対的な位置を示すものはなく、配列番号2に示すアミノ酸配列に基づく相対的な位置を示す
ものである。例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列において、86位のAsn残基のN末端側
の位置で1アミノ酸残基が欠失した場合、もともと86位であったAsn残基は改変後のアミ
ノ酸配列における85位のAsn残基になるが、引き続き「野生型RarDタンパク質のアミノ酸
配列における86位のAsn残基」とみなされる。そのようなアライメントは、例えば、公知
の遺伝子解析ソフトウェアを利用して行うことができる。具体的なソフトウェアとしては、日立ソリューションズ製のDNASIS、ゼネティックス製のGENETYX、DDBJにより公開され
ているClustalW等が挙げられる(Elizabeth C. Tyler et al., Computers and Biomedical Research, 24(1), 72-96, 1991; Barton G.J. et al., Journal of Molecular Biology, 198 (2), 327-37, 1987; Thompson JD et al., Nucleic Acid Research, 22 (22), 4673-80, 1994)。
変異型rarD遺伝子は、例えば、コードされるタンパク質が86位の変異を有するように野生型rarD遺伝子を改変することにより、取得できる。改変される野生型rarD遺伝子は、上述したように、例えば、野生型rarD遺伝子を有するPantoea細菌からのクローニングによ
り、または化学合成により、取得できる。遺伝子の改変は、公知の方法で行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの標的部位に目的とする変異を導入すること
ができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR Technology, Erlich, H.A. Eds., Stockton Press, 1989; Carter P., Meth., in Enzymol.,
154, 382, 1987)や、ファージを用いる方法(Kramer, W. and Frits, H.J., Meth. in Enzymol., 154, 350, 1987; Kunkel, T.A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367, 1987)が挙げられる。さらに、変異型rarD遺伝子は、野生型rarD遺伝子遺伝子を用いずに取得することもできる。例えば、変異型rarD遺伝子は、化学合成により直接取得してもよい。
タンパク質またはDNAの相同性の程度を評価するためには、いくつかの計算方法、例え
ばBLAST検索、FASTA検索、及びClustalW法を使用することができる。BLAST(Basic Local
Alignment Search Tool, ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)検索は、プログラムblastp、blastn、blastx、megablast、tblastn、及びtblastxにより使用される発見的探索アルゴリズムであり、これらのプログラムは、Karlin S.及びAltschul S.F.の統計学的方法 (“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoring schemes” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1990, 87:2264-2268; “Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90:5873-5877)を使用して、有意性を
発見物に帰着させるものである。コンピュータプログラムBLASTは3つのパラメーター、すなわち、スコア、同一性、及び類似性、を計算する。FASTA検索法は、Pearson W.R.によ
り記載されている(“Rapid and sensitive sequence comparison with FASTP and FASTA”, Methods Enzymol., 1990, 183:63-98)。ClustalW法は、Thompson J.D. et al.によ
って記載されている(“CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice”, Nucleic Acids Res., 1994, 22:4673-4680)。本明細書において、「相同性(homology)」の用語は、アミノ酸配列または塩基配列間の同一性である「同一性(identity)」を意味してよい。2つの配列間の配列同一性は、2つの配列を最大のアラインメントが得られるように整列したときに2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。なお、アミノ酸配列間の「同一性」とは、具体的には、特記しない限り、blastpによりデフォルト設定のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11, Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて算出される同一性を意味してよい。また、塩基配列間の「同一性」とは、具体的には、特記しない限り、blastnによりデフォルト設定のScoring Parameters(Match/Mismatch Scores=1,-2;Gap Costs=Linear)を用いて算出される同一性を意味してよい。
「細菌がrarD遺伝子を過剰発現するように改変された」の用語は、改変された細菌にお
いて、非改変細菌と比較して、対応する遺伝子産物(それはRarDタンパク質である)の総量および/または総活性が増加するように、あるいはrarD遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)がより高くなるように、細菌が改変されていることを意味し得る。「非改変細菌」の用語は、上記比較のための対照となり得る細菌株を意味し得る。「非改変細菌」を、「非改変株」または「非改変細菌株」ともいう。非改変細菌株としては、Pantoea属に属
する細菌(例えばPantoea ananatis)の野生株や親株が挙げられる。非改変細菌株として、具体的には、P. ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)が挙げられる。
「rarD遺伝子が過剰発現される」との表現は、対応する遺伝子産物(それはRarDタンパク質である)の総量および/または総活性が、非改変細菌株と比較して増加することを意味し得る。対応する遺伝子産物(それはRarDタンパク質である)の総量および/または総活性は、例えば、rarD遺伝子の発現レベルを非改変細菌株と比較して増加させる(すなわち増強する)ことにより、またはrarD遺伝子にコードされるタンパク質の分子あたりの活性(比活性ともいう)を非改変細菌株と比較して増加させることにより、増加し得る。RarDタンパク質の総量または総活性の増加は、例えば、細胞当たりのRarDタンパク質の量および/または活性(それは細胞当たりのRarDタンパク質の平均量および/または平均活性であってよい)の増加として測定され得る。細菌は、細胞あたりのRarDタンパク質の量および/または活性が、非改変細菌株における量および/または活性の150%以上、200%以上、または300%以上に増加するように改変され得る。
また、「rarD遺伝子が過剰発現される」との表現は、rarD遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が非改変細菌株におけるそのレベルより高いことを意味し得る。従って、「rarD遺伝子が過剰発現される」の用語は、「rarD遺伝子の発現が増強されるまたは増加する」の用語と代替可能または同等に用いられ得る。rarD遺伝子の発現レベルの増加は、例えば、細胞当たりのrarD遺伝子の発現レベル(それは細胞当たりのrarD遺伝子の平均発現レベルであってよい)の増加として測定され得る。細菌は、細胞あたりのrarD遺伝子の発現レベルが、非改変細菌株における発現レベルの150%以上、200%以上、または300%以上に増加するように改変され得る。
rarD遺伝子の発現を増強するために使用することができる方法としては、限定するものではないが、rarD遺伝子のコピー数、例えば、細菌の染色体におけるrarD遺伝子のコピー数および/または細菌に保持された自律複製するプラスミドにおけるrarD遺伝子のコピー数、を増加させることが挙げられる。rarD遺伝子のコピー数は、例えば、遺伝子を細菌の染色体に導入すること、および/または、rarD遺伝子を含む自律複製するプラスミドを細菌に導入することにより、増加させることができる。Pantoea属細菌のそのような改変は
、当業者に周知の遺伝子工学的手法により実施できる。
ベクターとしては、限定するものではないが、pMW118/119、pBR322、pUC19等の広宿主
域プラスミドが挙げられる。rarD遺伝子は、例えば、相同組み換えまたはMuドリブンインテグレーション等によって細菌の染色体DNAに導入することもできる。rarD遺伝子は、1
コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、相同組み換えを染色体DNA中に複数のコピーを有する配列を使用して行うことにより、染色体DNAに多コピーのrarD遺伝子を導入することができる。染色体DNA中に複数のコピーを有す
る配列としては、限定するものではないが、レペティティブDNAや転移因子の末端に存在
するインバーテッドリピートが挙げられる。さらに、rarD遺伝子をトランスポゾンに組み込んで転移させることにより、染色体DNAに多コピーのrarD遺伝子を導入することができ
る。
rarD遺伝子の発現を増強するために使用することができる別の方法としては、rarD遺伝子の発現制御領域を改変することにより、rarD遺伝子の発現レベルを増加させることが挙
げられる。rarD遺伝子の発現制御領域は、例えば、rarD遺伝子の本来の発現制御領域を野生型の及び/又は改変された外来の発現制御領域を導入することにより、改変することができる。「発現制御領域」を、「発現制御配列」ともいう。発現制御領域としては、プロモーター、エンハンサー、アテニュエーターと終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、及びその他の発現制御エレメント(例えば、リプレッサーまたはイ
ンデューサーが結合する領域、及び/又は、例えば転写されたmRNA中の転写及び翻訳の制御タンパク質の結合部位)が挙げられる。このような制御領域は、例えばSambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。rarD遺伝子の発現制御領域の改変は、rarD遺伝子のコピー数の増加と組み合わせてもよい(例えば、Akhverdyan V.Z. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871; Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009, 27:760-765を参照)。
rarD遺伝子の発現を増強するのに適したプロモーターの例としては、本来のrarDプロモーターより強い強力なプロモーターが挙げられる。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、msrAプロモーター、Pm1プロモーター(Bifidobacterium属由来)、な
らびにラムダファージのPRおよびPLプロモーターはいずれも強力なプロモーターとして知られている。Pantoea属に属する細菌中で高いレベルの遺伝子発現を与える強力なプロモ
ーターを使用することができる。あるいは、プロモーターの効果は、例えば、rarD遺伝子のプロモーター領域に変異を導入してより強いプロモーター機能を得ることにより増強することができ、以て、該プロモーターの下流に位置するrarD遺伝子の転写レベルを増加させることができる。さらに、シャイン・ダルガルノ(SD)配列、及び/又はSD配列と開始コドンの間のスペーサー、及び/又はリボソーム結合部位中の開始コドンの直ぐ上流または下流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。例えば、開始コドンに先行する3つのヌクレオチドの性質に依存して、20倍の範囲の発現レベルが見出されている(Gold L. et al., Annu. Rev. Microbiol., 1981, 35:365-403; Hui A. et al., EMBO J., 1984, 3:623-629)。
rarD遺伝子のコピー数、遺伝子の存在あるいは不在は、例えば、染色体DNAを制限処理
した後、遺伝子配列に基づいたプローブを使用するサザンブロッテイング、または蛍光in
situハイブリダイゼーション(FISH)等を行うことにより、測定することができる。遺
伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティングや定量的RT-PCR等の様々な周知の方法を使用して遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することにより決定することができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEと、その後の免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)やタンパク質試料の質量分析等の公知の方法により測定することができる。
プラスミドDNAの調製、DNAの切断、DNAの結合、DNAの形質転換、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの選択、変異の導入等の、DNAの組み換え分子の操作及び分子クローニ
ングのための方法は、当業者に周知の通常の方法であってよい。そのような方法は、例えば、Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory
Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、あるいはGreen M.R. and Sambrook J.R., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)、Bernard R. Glick, Jack J. Pasternak and Cheryl L. Patten, “Molecular Biotechnology: principles and applications of recombinant DNA”, 4th ed., Washington, DC, ASM Press (2009)に記載されている。
組み換えDNAを用いた操作法としては、例えば、形質転換、トランスフェクション、感染、接合、可動等の従来の方法を含め、任意の方法を用いることができる。タンパク質
をコードするDNAを用いた細菌の形質転換、トランスフェクション、感染、接合、または可動により、当該細菌に当該DNAによりコードされるタンパク質を合成する能力を付与することができる。形質転換、トランスフェクション、感染、接合、および可動の方法としては、任意の方法が挙げられる。例えば、効率的なDNAの形質転換およびトランスフェクションのために、E. coliK-12の細胞のDNAに対する透過性が高まるように受容
細胞を塩化カルシウムで処理する方法が報告されている(Mandel M. and Higa A., Calcium-dependent bacteriophage DNA infection, J. Mol. Biol., 1970, 53:159-162)。特
殊化および/または一般化された形質転換の方法が記載されている(Morse M.L. et al.,
Transduction in Escherichia coli K-12, Genetics, 1956, 41(1):142-156; Miller J.H., Experiments in Molecular Genetics. Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor La. Press, 1972)。宿主微生物へのDNAのランダムおよび/または標的化された
組み込みのための他の方法、例えば、「lambda Red-recombineering」(Katashkina J.I.
et al., Use of the λ Red-recombineering method for genetic engineering of Pantoea ananatis, BMC Mol. Biol., 2009, 10:34)、「Mu-driven integration/amplification」(Akhverdyan et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871)、「Red/ET-driven integration」または「lambda Red/ET-mediated integration」(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000, 97(12):6640-45; Zhang Y., et al., Nature Genet., 1998, 20:123-128)、を適用できる。さらに、所望の遺伝子の
多重挿入のためには、Mu駆動の複製的転移(Akhverdyan et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871)や所望の遺伝子の増幅をもたらすrecA依存性相同組み換え
に基づく化学的に誘導可能な染色体進化(Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009, 27:760-765)に加えて、転移、部位特異的および/または相同的なRed/ETを介した組
み換え、および/またはP1を介した一般化形質導入の種々の組み合わせを利用する他の方法(例えば、Minaeva N.I. et al., BMC Biotechnology, 2008, 8:63; Koma D. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2012, 93(2):815-829を参照のこと)を利用できる。
特定の生物種、例えば、哺乳類、植物、昆虫、細菌、およびウイルス等、に固有のタンパク質または核酸に言及する際の「固有の(native to)」の用語は、当該種に固有のタ
ンパク質または核酸を意味し得る。すなわち、特定の種に固有のタンパク質または核酸は、それぞれ、当該種に天然に存在するタンパク質または核酸を意味し得る。特定の種に固有のタンパク質または核酸は、当該種から単離でき、当業者に知られた方法により配列解析できる。さらに、タンパク質または核酸が存在する種からそれぞれ単離されたタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列は容易に決定することができるので、タンパク質または核酸に言及する際の「固有の」の用語は、得られるタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列が当該種に天然に存在するタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列と同一である限り、任意の手段、例えば、組み換えDNA技術を含む遺伝子工学的手法または化学合成法等、により得られるタンパク質または核酸も意味し得る。「タンパク質」の用語は、限定されるものではないが、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素等を包含し得る。「核酸」の用語は、デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)を包含し得、限定されるものではないが、特に、プロモーター、アテニュエーター、ターミネーター等を含む調節配列、遺伝子、遺伝子間配列、シグナルペプチド、タンパク質のプロ部位、人工アミノ酸配列等をコードする配列を包含し得る。
遺伝子(例えば、「非改変遺伝子」)またはタンパク質(例えば、「非改変タンパク質」)を参照する際の「非改変」の用語は、生物で、具体的には、例えば、P. ananatis 13355株等のPantoea属に属する非改変細菌株で、天然に発現または生成する生来(native)の遺伝子またはタンパク質を意味し得る。非改変タンパク質は、生物、具体的にはPantoea属に属する非改変細菌株、のゲノム中に天然に出現する非改変遺伝子にコードされ得る
P. ananatisのmetA遺伝子は、ホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)MetAをコードする(EC 2.3.1.46)。P. ananatis固有のMetAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号10に示す。細菌は、野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における34位のアルギニン(Arg)残基がシステイン(Cys)残基で置換された(R34C変異)MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を含むようにさらに改変されていてもよい。R34C変異を有するMetAタンパク質を、「変異型MetAタンパク質」ともいう。変異型MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を、「変異型metA遺伝子」ともいう。「野生型MetAタンパク質」との用語は、R34C変異を有しないMetAタンパク質を意味し得る。野生型MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を、「野生型metA遺伝子」ともいう。野生型metA遺伝子としては、P. ananatis固有のmetA遺伝子や、その変異体であってコードされるタンパク質のR34C変異を
もたらす変異を有しないものが挙げられる。野生型MetAタンパク質としては、P. ananatis固有のMetAタンパク質や、その変異体であってR34C変異を有しないものが挙げられる。
言い換えると、変異型metA遺伝子は、コードされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有すること以外は、任意の野生型metA遺伝子と同一であってもよい。また、変異型MetAタンパク質は、R34C変異を有すること以外は、任意の野生型MetAタンパク質と同一であってもよい。具体的には、変異型MetAタンパク質のアミノ酸配列は配列番号12に示す通りであり得、それは配列番号11に示す塩基配列を有する変異型metA遺伝子にコードされる。すなわち、変異型metA遺伝子は配列番号11に示す塩基配列を有していてもよく、変異型MetAタンパク質は配列番号12に示すアミノ酸配列を有していてもよい。変異型metA遺伝子は、配列番号11の変異体塩基配列であってコードされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有する塩基配列を有していてもよい。変異型MetAタンパク質は、配列番号12の変異体アミノ酸配列であってコードされるタンパク質のR34C変異を有するアミノ酸配列を有していてもよい。変異型MetAタンパク質は、L−メチオニンによるフィードバック阻害に耐性のhomoserine transsuccinylaseであってもよい。言い換えると、MetAタンパク質は、homoserine transsuccinylase活性を有し、L−メチオニンによるフィードバック阻害に耐性のタンパク質であってもよい。上記のrarD遺伝子の変異体およびRarDタンパク質の変異体に関する記載は、metA遺伝子の変異体およびMetAタンパク質の変異体にも準用できる。上記の「野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における86位のアスパラギン(Asn)残基」の
用語に関する記載は、「野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における34位のアルギニン(Arg)残基」の用語にも準用できる。上記の変異型rarD遺伝子を取得し導入する手段に
関する記載は、変異型metA遺伝子を取得し導入する手段にも準用できる。
細菌は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記のような性質に加えて、様々な栄養要求性、薬物耐性、薬物感受性、薬物依存性等の特定の性質を有することができる。
2.方法
細菌を用いてL−メチオニンを製造する本明細書に記載の方法は、前記細菌を培養培地で培養(cultivating(culturingともいう))してL−メチオニンを培養培地もしくは菌体、またはその両者中に生成させ、排出もしくは分泌させ、且つ/又は蓄積させる工程と、培養培地及び/又は菌体からL−メチオニンを回収する工程を含む。同方法は、任意で(optionally)、培養培地及び/又は菌体からL−メチオニンを精製する工程を含み得る。L−メチオニンは、上記のような形態で製造され得る。L−メチオニンは、特に、遊離形態、もしくはその塩、またはそれらの混合物として製造され得る。例えば、L−メチオニンのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、またはL−メチオニンの両性イオン等の分子内塩が、前記方法により製造され得る。これは、アミノ酸が発酵条件下で、互いに、あるいは無機または有機の酸またはアルカリ性物質等の中和剤と、典型的な酸塩基中和反応により反応して塩を生成し得ることから可能であり、これは当業者に明らかなアミノ酸の化学的特徴である。
細菌の培養、ならびに培地等からのL−メチオニンの回収および任意で精製は、微生物を使用してL−アミノ酸を製造する従来の発酵法と同様に実施することができる。培養培地は、炭素源、窒素源、硫黄源、リン源、無機イオン、並びにその他の有機及び無機成分を必要に応じて含む典型的な培地等の、合成培地あるいは天然培地でよい。炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース、澱粉加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロール、マンニトール、ソルビトール等のアルコール、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、および脂肪酸等を使用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒素、アンモニアガス、およびアンモニア水等を使用することができる。さらに、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、およびコーンスティープリカー等も使用することができる。培地は、これらの窒素源の1種
またはそれ以上を含むことができる。硫黄源としては、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン等が挙げられる。培地は、炭素源、窒素源、及び硫黄源に加えて、リン源を含んでもよい。リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ピロ燐酸等のリン酸ポリマー等を使用することができる。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチンアミド、ビタミンB12等のビタミンや、その他の
必要物質、例えばアデニン、RNA等の核酸、アミノ酸、ペプトン、カザミノ酸、酵母エキ
ス等の有機栄養素等を、適当量(痕跡量であってもよい)存在させることができる。これら以外に、必要であれば、少量のリン酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等を加えてもよい。
培養は、L−メチオニンの製造法で使用される細菌の培養に適した条件で実施することができる。例えば、培養は、好気的条件下で16〜72時間、または16〜24時間実施することができる。培養中の培養温度は、30〜45℃、または30〜37℃の範囲内に制御することができる。pHは、5〜8の間、または6〜7.5の間に調節することができる。pHは、無機もしくは有機の酸性またはアルカリ性物質、例えば、尿素、炭酸カルシウム、またはアンモニアガス、を使用することにより調節することができる。
培養後、培養培地からL−メチオニンを回収することができる。また、培養後、菌体からL−メチオニンを回収することができ、具体的には、菌体を破砕し、菌体や菌体破砕懸濁物(細胞デブリともいう)等の固形分を除去して上清を取得し、上清からL−メチオニンを回収することができる。菌体の破砕は、例えば、高周波音波を用いた超音波破砕等の周知の方法により実施することができる。固形分の除去は、例えば、遠心分離または膜ろ過により実施することができる。培養培地や上清等からのL−メチオニンの回収は、例えば、濃縮、晶析、イオン交換クロマトグラフィー、中圧または高圧の液体クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせ等の慣用の技術により実施することができる。
回収されるL−メチオニンは、L−メチオニン以外に、例えば、菌体、培地成分、水分、及び微生物の代謝副産物等を含んでいてもよい。L−アミノ酸は、所望の程度に精製されていてもよい。回収されるL−メチオニンの純度は、例えば50%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは95%以上であってよい(U.S. Patent No. 5,431,933, Japanese Patent No. 1214636, U.S. Patent Nos. 4,956,471, 4,777,051, 4,946,654, 5,840,358, 6,238,714, U.S. Patent Published Application No. 2005/0025878)。
以下、下記の非限定的な実施例により本発明をより正確に説明する。
実施例1:L−メチオニン生産株の構築
メチオニンレギュロンの負の転写調節因子をコードするmetJ遺伝子を欠失させ、且
つメチオニンとSAM(S-アデノシルメチオニン)によるフィードバック阻害に対してhomoserine O-succinyltransferase(MetA)を脱感作することにより、L−メチオニンの生合成が正の影響を受けることが知られている(Chattopadhyay M.K. et al., Control of methionine biosynthesis in Escherichia coli K12: a closer study with analogue-resistant mutants, J. Gen. Microbiol., 1991, 137(3):685-691; Usuda Y. and Kurahashi O., Effects of deregulation of methionine biosynthesis on methionine excretion
in Escherichia coli, Appl. Environ. Microbiol., 2005, 71(6):3228-3234)。そこで、P. ananatis細菌において、metJ遺伝子を欠失させ、且つ変異型metA遺伝子を得た。
1.1. P. ananatis SC17(0)ΔmetJ株の構築
metJ遺伝子を欠失させたP. ananatis SC17(0)ΔmetJ株は、プライマーP1(配列番号5)およびP2(配列番号6)を用いpMW118-attL-kan-attRプラスミドを鋳型としたPCRにより得られたDNA断片のP. ananatis SC17(0)株(US8383372 B2, VKPM B-9246)へのλRed依存的組み込み(Minaeva N.I. et al., BMC Biotechnol., 2008, 8:63)により構築した。SC17(0)株は、2005年9月21日に、Russian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; FGUP GosNII Genetika, Russian Federation, 117545 Moscow, 1st Dorozhny proezd, 1)にVKPM B-9246の寄託番号で寄託された。pMW118-attL-kan-attRプラスミド(特開2005-058227)は、λファージの付着部位、attLとattR遺伝子、および抗生物質耐性
遺伝子(kan)をattL-kan-attRの並び順でpMW118(タカラバイオ社製)に挿入することにより得た。プライマーP3(配列番号7)およびP4(配列番号8)を用いて遺伝子の欠失を確認した。こうして、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ株を構築した。
1.2. フィードバック耐性型MetAをコードするmetA遺伝子の変異型アレルを有するP.
ananatis株の選抜
P. ananatis SC17(0)ΔmetJ株の菌体を、L-broth(Sambrook J. and Russell D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)を入れた50 mLフラスコにをOD600が0.05になるように接種し、34℃で2時間、通気(250 rpm)しながら培養した。OD600が0.25となった同株の対数増殖期の細胞培養物をNTG(終濃度25 mg/L)で20分間処理した。得られた培養物を遠心分離し、新鮮なL-brothで2回洗浄した後、グルコース(0.2%)とノルロイシン(600 mg/L)を含有するM9寒天
プレートに播種した。得られた変異株について、L−メチオニンの生産能を調べた。L−メチオニン産生能の最も高い株を選択し、その株のmetA遺伝子の塩基配列を決定した。配列解析により、metA遺伝子において、野生型MetAのアミノ酸配列(配列番号10)における34位のアルギニン(Arg)残基のシステイン残基への置換(R34C変異)をもたらす変異が
見出された。R34C変異を有する変異型MetAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号12に、変異型MetAタンパク質をコードする変異型metA遺伝子の塩基配列を配列番号11に示す。このようにして、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)株を構築した。
1.3. P. ananatis株における野生型および変異型rarD遺伝子の過剰発現
rarD遺伝子は、Escherichia coli固有のnlpD遺伝子の構成的プロモーターの制御下に置くことにより、過剰発現させた。まず、プロモーターを含むベクターを構築した。プライマーP5(配列番号13)およびP6(配列番号14)を用いE. coli MG1655(ATCC No. 47076)株の染色体DNAを鋳型とするPCRによりDNA断片を得た。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動で精製した後、単離した(Qiaquick Gel Extraction Kit, Qiagen)。このDNA断片を制限酵素PaeIおよびSalI(Fermentas)で処理し、PaeI/SalIで切断したベクターpMIV-5JS(RU2458981 C2)にクローニングした。こうして、pMIV-Pnlpベクターを構築した。
次に、プライマーP7(配列番号15)およびP8(配列番号16)を用いP. ananatis SC17(FERM BP-11091)株の染色体DNAを鋳型とするPCTによりrarD遺伝子を得た。SC17株は、2009年2月4日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政
法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託され、受託番号FERM BP-11091が付与されている。得られたDNA断片を上記のように精製および単離し、制限酵素SalIおよびXbaI(Fermentas)で処理し、SalI/XbaIで切断したベクターpMIV-Pnlpにクローニングした
。こうして、野生型rarD遺伝子を保有するpMIV-Pnlp-rarDプラスミドが得られた。我々は、このプラスミドpMIV-Pnlp-rarDがP. ananatis SC17株に0.5 g/Lのα−メチル−DL−
メチオニンに対する耐性を付与できることを見出した(Chattopadhyay M.K. et al., Control of methionine biosynthesis in Escherichia coli K12: a closer study with analogue-resistant mutants, J. Gen. Microbiol., 1991, 137(3):685-691)。
P. ananatis SC17株をプラスミドpMIV-Pnlp-rarDで形質転換し、1 g/Lのα−メチル−
DL−メチオニンと0.8 g/Lのノルロイシンに耐性の株を選択した。rarD遺伝子の塩基配
列を解析したところ、野生型rarD遺伝子(配列番号)の塩基配列における256〜258位置のアスパラギン(Asn, N)残基をコードする「aac」コドンがアスパラギン酸(Asp, D)残
基をコードする「gac」コドンに置換されていることが判明した。野生型rarD遺伝子の塩
基配列におけるこの置換により、野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)に
おける86位のアスパラギン残基がアスパラギン酸残基に置換された(N86D変異)。この変異型RarDタンパク質(配列番号4)をコードする変異型rarD遺伝子(配列番号3)を保有するpMIV-Pnlp-rarD(N86D)プラスミドを上記株から単離した。
pMIV-Pnlp-rarDおよびpMIV-Pnlp-rarD(N86D)プラスミドを通常のエレクトロポレーション手順によりSC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)株(実施例1.2)に導入した。こうして、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarDおよびSC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)株を構築した。対照として、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-5JS株を得た。
実施例2:L−メチオニンの生産
P. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-5JS株、SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarD株、およびSC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)株をそれぞれ32
℃で18時間、LB培地(Sambrook, J. and Russell, D.W. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001))に記載の通り、溶原性ブロスあるいはLuria-Bertani培地ともいう)において培養した。その後、得
られた培養物0.2 mLを20×200 mm試験管中の発酵培地2 mLに接種し、250 rpmの回転式振
盪機上で32℃で48時間、グルコースが消費されるまで培養した。
発酵培地の組成(g/l)は以下のとおりであった。
グルコース 40.0
(NH4)2SO4 15.0
KH2PO4 1.5
MgSO4・7H2O 1.0
チアミン塩酸塩 0.1
CaCO3 25.0
LB培地 4%(v/v)
発酵培地は、116℃で30分間殺菌した。ただしグルコースは110℃で30分間、CaCO3は116℃で30分間別に殺菌した。pHはKOH溶液により7.0に調整した。
培養後、蓄積したL−メチオニンの量をAgilent 1260 amino-acid analyzerで決定した。6つの独立した試験管発酵の結果(平均値±標準偏差)を表1に示す。表1から分かるように、改変株であるP. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarD株は、親
株であるP. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-5JS株と比較して、より多い量(g
/L)のL−メチオニン(Met)を蓄積することができた。また、表1は、変異型RarDタン
パク質をコードする変異型rarD遺伝子を有する改変株であるP. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)株が、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ-metA(R34C)/pMIV-Pnlp-rarDと比較して、より多い量のMetを蓄積することができることを示した。
Figure 2021521897
本発明をその好ましい態様を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更や等価物の採用が可能であることは当業者に明らかであろう。
本発明の方法は、細菌の発酵によりL−メチオニンを製造するのに有用である。

Claims (7)

  1. L−メチオニンまたはその塩を製造する方法であって、
    (i)L−メチオニンを生産する能力を有するパントエア(Pantoea)属細菌を培養培地で培養して培養培地もしくは菌体、またはその両者中にL−メチオニンまたはその塩を生産および蓄積させること、および
    (ii)培養培地もしくは菌体、またはその両者からL−メチオニンまたはその塩を回収すること
    を含み、
    前記細菌が、rarD遺伝子を過剰発現するように改変されている、方法。
  2. 前記rarD遺伝子が、下記からなる群より選択される、請求項1に記載の方法:
    (A)配列番号1に示す塩基配列を含むDNA;
    (B)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (C)配列番号2に示すアミノ酸配列において、約1〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、
    挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであっ
    て、該タンパク質が配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有するも
    のであるDNA;
    (D)配列番号2に示すアミノ酸配列全体に対して90%以上の同一性を有するタンパク質を
    コードするDNAであって、該タンパク質が配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有するものであるDNA;および
    (E)配列番号1に示す塩基配列において、遺伝暗号の縮重による差異を含むDNA。
  3. rarD遺伝子のコピー数を増加させることにより、および/またはrarD遺伝子の発現制御領域を改変することにより、rarD遺伝子が過剰発現され、以て該遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記rarD遺伝子が、86位のアスパラギン残基が酸性アミノ酸残基に置換されるアミノ酸置換を有するRarDタンパク質をコードする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記酸性アミノ酸残基が、アスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記細菌が、さらに、MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を含むように改変されており、該MetAタンパク質のアミノ酸配列が、アミノ酸置換R34Cを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記細菌が、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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