JP7444164B2 - 細菌を用いたl-メチオニンの製造方法 - Google Patents

細菌を用いたl-メチオニンの製造方法 Download PDF

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Description

IPOD FERM BP-11091 VKPM B-9246
本発明は、広くは微生物工業に関し、特に、本明細書に記載の第1遺伝子および第2遺伝子(例えば、配列番号1および3に示す塩基配列を有する遺伝子)を過剰発現し、L-メチオニンの生産が非改変細菌と比較して増強されるように改変された細菌の発酵によりL-メチオニンを製造する方法に関する。
従来、L-アミノ酸は自然源から得られた微生物株あるいはそれらの変異体を利用した発酵法によって工業的に製造されてきた。典型的には、そのような微生物はL-アミノ酸の生産収率が高まるように改変されている。
L-アミノ酸の生産収率を高めるための多くの技術が報告されており、組み換えDNAに
よる微生物の形質転換(例えば、U.S. Patent No. 4,278,765 Aを参照のこと)、プロモ
ーター、リーダー配列及び/又はアテニュエーター、あるいはその他の当業者に知られた発現制御領域の改変(例えば、US20060216796 A1やWO9615246 A1を参照のこと)等がある。生産収率を高めるその他の技術としては、アミノ酸生合成に関与する酵素の活性を増加させること、及び/又は生成したL-アミノ酸による目的とする酵素のフィードバック阻害を解除すること(例えば、WO9516042 A1, EP0685555 A1, またはU.S. Patent Nos. 4,346,170 A, 5,661,012 A, および6,040,160 Aを参照のこと)が挙げられる。
L-アミノ酸の生産収率を高める別の方法としては、1種または数種の、目的とするL-アミノ酸の分解に関与する遺伝子、目的とするL-アミノ酸の生合成経路から該L-アミノ酸の前駆体を別の経路に逸らせる遺伝子、炭素、窒素、硫黄、及びリン酸の流れの再分配に関与する遺伝子、および毒素をコードする遺伝子等の発現を減少させることが挙げられる。
L-メチオニン((2S)-2-アミノ-4-(メチルスルファニル)ブタン酸((2S)-2-amino-4-(methylsulfanyl) butanoic acid)としても知られている)については、少なく
ともmetJ遺伝子によってコードされるL-メチオニン生合成系のリプレッサーが欠損している組み換えEscherichia属細菌を培地で培養してL-メチオニンを製造する方法が知ら
れている(US7611873 B1)。この方法で使用される細菌は、細胞内のホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)(MetA)の活性が増大するようにさらに
改変されている。さらに、このL-メチオニンの製造法で使用される細菌のホモセリントランスクシニラーゼは、L-メチオニンによるフィードバック阻害に対して非感受性となるように改変されている。具体的には、Escherichia属細菌のMetAのアミノ酸配列は、少
なくとも、27位のアルギニン(Arg)残基をシステイン(Cys)残基に置き換えること(R27C変異)、296位のイソロイシン(Ile)残基をセリン(Ser)残基に置き換えること(I296S変異)、および298位のプロリン(Pro)残基をロイシン(Leu)残基に置き換えること
(P298L変異)から選択される置換を含むように改変されている。
別の例では、L-メチオニンの発酵生産を向上させるために、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)またはコリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)に属する細菌であってもよい組み換え微生物を、コバラミン非依存性メチオニン合成酵素(cobalamin-independent methionine synthase)(MetE)の活性が抑制され、かつMetH遺伝子が微生物中で
過剰に発現するように改変した(EP2861726 B1;増強された5-メチルテトラヒドロ葉酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(5-methyltetrahydrofolate homocysteine methyltransferase)(MetH)の利用については、例えば、WO0210209 A1も参照されたい)。
細菌の発酵によるL-メチオニンの製造法は他にも知られており、例えば、L-スレオニン生産能を有し、且つスレオニンデヒドラターゼ(threonine dehydratase)(tdcB、ilvA)と少なくともO-スクシニルホモセリンリアーゼ(O-succinylhomoserine lyase)(metB)、シスタチオニンβリアーゼ(cystathionine beta-lyase)(metC)、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(5,10-methylenetetrahydrofolate reductase)(metF)、およびセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(serine hydroxymethyltransferase)(glyA)を発現するベクターで形質転換された細菌株を用いた方法(US7790424 B2
);PntABのトランスヒドロゲナーゼ(transhydrogenase)活性が増強されるように改変
された腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の微生物を用いた方法(EP2633037 B1);等が挙げられる。
また、Escherichia coli (E. coli)種固有のRarDタンパク質またはそれと80%以上相同なバリアントの活性が増強された微生物を用いたL-アミノ酸の製造法であって、前記微生物がEscherichia、Corynebacterium、Bacillus、Serratia、Pseudomonas、またはStreptomyces属に属し、前記L-アミノ酸が特にL-セリン、L-グルタミン、L-システ
イン、L-フェニルアラニン、およびL-スレオニンである方法も開示されている(US2012015409 A1)。E. coli固有のRarDタンパク質(同義語:YigH)は、薬物/代謝物トランスポータースーパーファミリー(drug/metabolite transporter superfamily)(EcoCyc database, https://ecocyc.org/, accession ID: EG11466)の推定メンバーとして同定されている。トランスポーター分類データベースにおいて、RarDは、薬物/代謝物トランスポーター(DMT)スーパーファミリーのクロラムフェニコール感受性タンパク質(RarD)
スーパーファミリー(Chloramphenicol-Sensitivity Protein (RarD) Family)して分類
されている(Saier M.H. Jr. et al., The Transporter Classification Database (TCDB): recent advances, Nucleic Acids Res., 2016, 44(D1):D372-9; doi: 10.1093/nar/gkv1103)。
配列番号1に示す塩基配列を有するP. ananatis固有の遺伝子は、BioCycデータベース(https://biocyc.org/)においてaccession No. PAJ_RS05335を有する。この遺伝子は、未知の活性または機能を有する仮想タンパク質をコードする。
配列番号3に示す塩基配列を有するP. ananatis固有の遺伝子は、BioCycデータベースにおいてaccession No. PAJ_RS05340を有する。この遺伝子は、予測上の5-メチルテトラ
ヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステイン-メチルトランスフェラーゼ(5-methyltetrahydropteroyltriglutamate-homocysteine methyltransferase;Enzyme Commission (EC) No.: 2.1.1.14)をコードする。
しかしながら、本明細書に記載の第1遺伝子および第2遺伝子(例えば、配列番号1お
よび3に示す塩基配列を有する遺伝子)を過剰発現するように改変されたL-メチオニン
生産菌の発酵によりL-メチオニンを製造する方法はこれまで報告されていない。
本明細書は、細菌の発酵によってL-メチオニンを製造する、改良された方法を記載するものである。本発明によれば、細菌の発酵によるL-メチオニンの製造を増加させることができる。具体的には、細菌において本明細書に記載の第1遺伝子および第2遺伝子(例えば、配列番号1および3に示す塩基配列を有する遺伝子)を過剰発現させることにより該細菌の発酵によるL-メチオニンの生産を改善し、改変された該細菌によるL-メチオニンの製造を非改変細菌と比較して増強することができる。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
本発明のひとつの態様は、L-メチオニンを製造する方法であって、
(i)L-メチオニンを生産する能力を有する細菌を培地で培養して培地もしくは該細菌
の菌体、またはその両者中にL-メチオニンを生産および蓄積させること、および
(ii)培地もしくは菌体、またはその両者からL-メチオニンを回収すること
を含み、
前記細菌が、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変されており、
前記第1遺伝子が、下記からなる群より選択され:
(1A)配列番号1に示す塩基配列を含むDNA;
(1B)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(1C)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1~30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって
、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(1D)配列番号2に示すアミノ酸配列全体に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌に
より生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(1E)配列番号1に示す配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハ
イブリダイズ可能な塩基配列を含むDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細
菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(1F)配列番号1に示す塩基配列全体に対して85%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの
量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(1G)遺伝暗号の縮重による配列番号1の変異体塩基配列を含むDNA;
前記第2遺伝子が、下記からなる群より選択される、方法を提供することである:
(2A)配列番号3に示す塩基配列を含むDNA;
(2B)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(2C)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1~30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって
、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(2D)配列番号4に示すアミノ酸配列全体に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌に
より生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(2E)配列番号3に示す配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハ
イブリダイズ可能な塩基配列を含むDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細
菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(2F)配列番号3に示す塩基配列全体に対して85%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの
量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
(2G)遺伝暗号の縮重による配列番号3の変異体塩基配列を含むDNA。
本発明の別の態様は、前記第1遺伝子および第2遺伝子のそれぞれが、該遺伝子のコピー数を増加させること、該遺伝子の発現制御領域を改変すること、またはそれらの組み合わせにより過剰発現し、以て前記第1遺伝子および第2遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌である、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、エシェリヒア(Escherichia)属またはパントエア
(Pantoea)属に属する細菌である、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)またはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、さらに、rarD遺伝子を過剰発現するように改変されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記rarD遺伝子が、該遺伝子のコピー数を増加させること、該遺伝子の発現制御領域を改変すること、またはそれらの組み合わせにより過剰発現し、以て前記rarD遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、さらに、システインシンターゼをコードする遺伝子を過剰発現するように改変されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記システインシンターゼをコードする遺伝子が、該遺伝子のコピー数を増加させること、該遺伝子の発現制御領域を改変すること、またはそれらの組み合わせにより過剰発現し、以て前記システインシンターゼをコードする遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記システインシンターゼをコードする遺伝子が、cysM遺伝子である、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、さらに、MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を含むように改変されており、該MetAタンパク質のアミノ酸配列が、アミノ酸置換R34Cを有する、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、さらに、metJ遺伝子の発現が弱化するように改変されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記metJ遺伝子が、欠失している、前記方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的、特徴、および付随する利点は、それに従って構築された実施形態の以下の詳細な説明を読めば当業者に明らかになるであろう。
1.細菌
本明細書に記載の細菌は、本明細書に記載の第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変されたL-メチオニン生産菌である。本明細書に記載の細菌は、本明細書に記載の方法で使用できる。よって、同細菌に関する以下の説明は、本明細書に記載の方法で代替可能または等価に使用されるいずれの細菌にも準用できる。
第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変された任意のL-メチオニン生
産菌を本明細書に記載の方法で使用することができる。例えば、L-メチオニン生産菌は、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変され、L-メチオニンの生産が非改変細菌と比較して増強されている限り、本明細書に記載の方法で使用することができる。そのように改変された細菌は、例えば、非改変細菌と比較して、より多い量でL-メチオニンを培地及び/又は該細菌の菌体中に蓄積することができてよい。
「L-メチオニン生産菌」の用語は、「L-メチオニンを生産できる細菌」の用語または「L-メチオニンを生産する能力を有する細菌」の用語と代替可能または等価に使用されてよい。
「L-メチオニン生産菌」の用語は、当該細菌を培地で培養したときに、培地及び/又は該細菌の菌体中にL-メチオニンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する細菌を意味し得る。
また、「L-メチオニン生産菌」の用語は、例えば、非改変細菌と比較して、より多い量でL-メチオニンを培地中に生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する細菌も意味し得る。「非改変細菌」の用語は、「非改変株」の用語と代替可能または等価に使用されてよい。「非改変細菌」の用語は、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変されていない対照株を意味し得、特に、第1遺伝子および第2遺伝子のいずれも過剰発現するように改変されていない対照株を意味し得る。非改変細菌としては、例えばPantoea ananatis (P. ananatis) AJ13355株等の、野生株または親株が挙げられる。また、「L-メチオニン生産菌」の用語は、例えば、0.1 g/L以上、0.5 g/L以上、あるいは1.0 g/L以上の量でL-メチオニンを培地中に蓄積することができる細菌も意味
し得る。また、「L-メチオニン生産菌」の用語は、例えば、非改変細菌と比較して、より多い量でL-メチオニンを培地中に生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有し、且つ0.1 g/L以上、0.5 g/L以上、あるいは1.0 g/L以上の量でL-メチオニ
ンを培地中に蓄積することができる細菌も意味し得る。
細菌は、本来的にL-メチオニン生産能を有していてもよく、L-メチオニン生産能を有するように改変されてもよい。そのような改変は、例えば、突然変異法またはDNA組み
換え技術により達成できる。前記細菌は、本来的にL-メチオニン生産能を有する細菌において、またはL-メチオニン生産能を既に付与された細菌において、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現させることにより取得できる。あるいは、前記細菌は、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように既に改変された細菌にL-メチオニン生産能を付与することにより取得できる。あるいは、前記細菌は、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変されたことによりL-メチオニン生産能を獲得したものであってもよい。本明細書に記載の細菌は、具体的には、例えば、後述する細菌株を改変することにより取得できる。
「L-メチオニン生産能」の用語は、細菌を培地で培養したときに、培地及び/又は該細菌の菌体中にL-メチオニンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、細菌の能力を意味し得る。「L-メチオニン生産能」の用語は、具体的には、細菌を培地で培養したときに、培地及び/又は菌体から回収できる程度に、培地及び/又は該細菌の菌体中にL-メチオニンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、細菌の能力を意味し得る。
本明細書に記載の方法で使用され得る細菌について言及される「培養される(cultured)」という用語は、当業者に周知である「培養される(cultivated)」等の用語と代替可能または等価に使用されてよい。
細菌は、L-メチオニンを単独で、あるいはL-メチオニンとL-メチオニン以外の1
種またはそれ以上のアミノ酸、例えばL体のアミノ酸(L-アミノ酸ともいう)等、の混
合物として、生産し得る。さらに、細菌はL-メチオニンを単独で、あるいはL-メチオニンと他の1種またはそれ以上の有機酸、例えばカルボン酸等、との混合物として、生産
し得る。L-アミノ酸としては、特に制限されないが、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-シトルリン、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-オルニチン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリンが挙げられる。カルボン酸としては、特に制限されないが、ギ酸、酢酸、クエン酸、酪酸、乳酸、プロピオン酸、およびそれらの誘導体が挙げられる。
「L-メチオニン」、「L-アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、遊離形態のL-メチオニン、L-アミノ酸、およびカルボン酸に限られず、それらの派生形態(塩、水和物、付加物、またはそれらの組み合わせ、等)も包含してよい。付加物は、L-メチオニン、L-アミノ酸、またはカルボン酸と別の有機もしくは無機の化合物との組み合わせで形成された化合物であり得る。すなわち、「L-メチオニン」、「L-アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、例えば、遊離形態、派生形態、またはそれらの混合物であるL-メチオニン、L-アミノ酸、およびカルボン酸を意味し得る。「L-メチオニン」、「L-アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、例えば、特に、遊離形態のL-メチオニン、L-アミノ酸、およびカルボン酸、それらの塩、またはそれらの混合物を意味し得る。「L-メチオニン」、「L-アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語は、例えば、L-メチオニン、アミノ酸、およびカルボン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、一水和物、二水和物、三水和物、一塩酸塩、二塩酸塩等の塩を包含し得る。L-メチオニンは、特に、遊離形態、もしくはその塩、またはそれらの混合物として製造され得る。特記しない限り、水和について言及しない「L-メチオニン」、「L-アミノ酸」、および「カルボン酸」の用語(例えば、「遊離形態のL-メチオニン、L-アミノ酸、またはカルボン酸」の用語や「L-メチオニン、L-アミノ酸、またはカルボン酸の塩」の用語)は、いずれも、無水物および水和物の両方を包含し得る。
本明細書に記載の方法で使用される細菌または本明細書に記載の細菌を取得するために使用される細菌は、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌であり得る。腸内細菌科に属する細菌としては、エンテロバクター(Enterobacter)、エルビニア(Erwinia)、エシェリヒア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、モルガネラ(Morganella)、パントエア(Pantoea)、フォトルハブドゥス(Photorhabdus)、プロビ
デンシア(Providencia)、サルモネラ(Salmonella)、イェルシニア(Yersinia)等の
属に属する細菌が挙げられる。そのような細菌は、L-メチオニンを生産する能力を有し得る。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータ
ベース(ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=543)で用いられている分
類法により腸内細菌科に分類されている細菌を使用することができる。腸内細菌科に属する細菌としては、特に、Escherichia、Enterobacter、およびPantoea属に属する細菌が挙げられる。
Escherichia属細菌は特に限定されず、具体的には、Neidhardtらの著書(Bachmann, B.J., Derivations and genotypes of some mutant derivatives of E. coli K-12, p. 2460-2488. In F.C. Neidhardt et al. (ed.), E. coli and Salmonella: cellular and molecular biology, 2nded. ASM Press, Washington, D.C., 1996)に記載のものが挙げられる。Escherichia属細菌としては、特に、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli (E. coli))が挙げられる。E. coliとして、具体的には、プロトタイプ野生株であるE. coli K-12株(E. coli W3110(ATCC 27325)やE. coli MG1655(ATCC 47076)等)が挙げられる
Enterobacter属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。Pantoea属細菌としては、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?mode=Tree&id=53335&lvl=3&keep=1&srchmode=1&unlock)で用いられている分類法によりPantoea属に分類され
ている任意の細菌を使用することができる。Pantoea属細菌としてはパントエア・アナナ
ティス(Pantoea ananatis(P. ananatis))等が挙げられる。エンテロバクター・アグ
ロメランス(Enterobacter agglomerans)のいくつかの株は、近年、16S rRNAの塩基配列解析等によりパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・アナ
ナティス(Pantoea ananatis)、またはパントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)に再分類されている。腸内細菌科に分類された細菌であれば、Enterobacter属また
はPantoea属のいずれに属するものであっても使用することができる。P. ananatisとして、具体的には、Pantoea ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、及びそれらの派生株が挙げられる。これらの株は、分離された当時はEnterobacter agglomeransと同定され、Enterobacter agglomeransとして寄託されたが、上記のとおり最近16S rRNAの塩基配列解析等によりPantoea ananatisに再分類されている。
これらの株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC; Address: 10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110, United States of America)
から入手することができる。すなわち各菌株には対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して発注することができる(www.atcc.orgを参照)。各菌株の登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。これらの株は、例えば、各株が寄託された寄託機関から入手することもできる。
L-メチオニン生産菌
L-メチオニン生産菌およびそれを誘導するために利用できる親株としては、L-スレオニン要求性株やノルロイシン耐性変異株(特開2000-139471)が挙げられる。L-メチ
オニン生産菌およびそれを誘導するために利用できる親株としては、L-メチオニンによるフィードバック阻害に耐性の変異型ホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)を有する株(特開2000-139471およびUS2009-0029424A)も挙げられる。
L-メチオニンはL-システインを中間体として生合成されるため、L-メチオニン生産能は、L-システイン生産能を改善することによっても改善され得る(特開2000-139471
およびUS2008-0311632A)。
Pantoea属のL-メチオニン生産菌およびL-メチオニン生産菌を誘導するために利用
できる親株としては、特に制限されないが、P. ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)、P. ananatis SC17株(FERM BP-11091)、P. ananatis SC17(0)株(VKPM B-9246)が挙げられる。AJ13355株は、酸性pHで増殖する、高濃度のグルタミン酸に対する耐性を示す菌と
して磐田市(静岡県)の土壌から単離された株である(US7319025 B2; Katashkina J.I. et al., Use of the λ Red-recombineering method for genetic engineering of Pantoea ananatis, BMC Mol. Biol., 2009, 10:34)。SC17株は、AJ13355株から、粘液質低生
産変異株として選択された株である(米国特許第6,596,517号)。SC17(0)株は、P. ananatisにおいて遺伝子破壊を実施するためのλRed遺伝子に耐性の株として構築された(WO2008075483)。SC17株は、2009年2月4日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託され、受託
番号FERM BP-11091が付与されている。SC17(0)株は、2005年9月21日にRussian National
Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; FGUP GosNII Genetika, Russian Federation, 117545 Moscow, 1st Dorozhny proezd, 1)に受託番号VKPM B-9246のもとに寄
託されている。
Escherichia属のL-メチオニン生産菌およびL-メチオニン生産菌を誘導するために
利用できる親株としては、特に制限されないが、L-メチオニン生合成系のリプレッサー(MetJ)を欠損し、細胞内のホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)(MetA)活性が増大したE. coli株(US7611873 B1)、コバラミン非依存性メチオニン合成酵素(cobalamin-independent methionine synthase)(MetE)活性が抑制され
、コバラミン依存性メチオニン合成酵素(cobalamin-dependent methionine synthase)
(MetH)活性が増大したE. coli株(EP2861726 B1)、L-スレオニンを生産する能力を
有し、スレオニンデヒドラターゼ(threonine dehydratase)(tdcB, ilvA)と、少なく
とも、O-スクシニルホモセリンリアーゼ(O-succinylhomoserine lyase)(metB)、シスタチオニンβ-リアーゼ(cystathionine beta-lyase)(metC)、5,10-メチレンテトラヒドロフォレートレダクターゼ(5,10-methylenetetrahydrofolate reductase)(metF)、およびセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(serine hydroxymethyltransferase)(glyA)を発現するベクターで形質転換されたE. coli株(US7790424 B2)、トランスヒドロゲナーゼ(transhydrogenase)(pntAB)の活性が増強されたE. coli株(EP2633037 B1)等が挙げられる。Escherichia属のL-メチオニン生産菌およびL-メチオ
ニン生産菌を誘導するために利用できる親株として、具体的には、例えば、E. coli AJ11539(NRRL B-12399)、E. coli AJ11540(NRRL B-12400)、E. coli AJ11541(NRRL B-12401)、E. coli AJ11542(NRRL B-12402, British Patent No. 2075055)、L-メチオニンアナログであるノルロイシンに耐性のE. coli 218株(VKPM B-8125, Russian Patent No. 2209248)および73株(VKPM B-8126, Russian Patent No. 2215782)、E. coli AJ13425(FERM P-16808, 特開2000-139471)が挙げられる。AJ13425株は、E. coli W3110から
誘導されたL-スレオニン要求性株で、メチオニンリプレッサーを欠損し、細胞内のS-アデノシルメチオニン合成酵素(S-adenosylmethionine synthetase)の活性が弱化し、
細胞内のホモセリントランスシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)活性、シスタ
チオニンγ-シンターゼ(cystathionine γ-synthase)活性、およびアスパルトキナー
ゼ-ホモセリンデヒドロゲナーゼII(aspartokinase-homoserine dehydrogenase II)
活性が増強されている。
本明細書に記載の細菌は、例えば、上記例示したL-メチオニン生産菌が有する性質(例えば改変)から選択される1つまたはそれ以上の性質(例えば改変)を有し得る。
L-メチオニン生産菌の育種に用いられる遺伝子およびタンパク質は、例えば、上記例示した遺伝子およびタンパク質の公知の塩基配列およびアミノ酸配列をそれぞれ有していてよい。また、L-メチオニン生産菌の育種に用いられる遺伝子およびタンパク質は、元の機能(例えば、タンパク質の場合はそれぞれの酵素活性)が維持されている限り、上記例示した遺伝子およびタンパク質(例えば、そのような公知の塩基配列およびアミノ酸配列を有する遺伝子およびタンパク質)のバリアントであってもよい。遺伝子およびタンパク質のバリアントについては、本明細書に記載の第1遺伝子および第1タンパク質のバリアントについての記載を準用できる。
本明細書に記載の細菌は、本明細書に記載の第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変されている。
「第1遺伝子」の用語は、配列番号1に示す塩基配列またはその変異体配列を有する遺
伝子(例えばDNA)を意味し得る。第1遺伝子にコードされるタンパク質を、「第1タン
パク質」ともいう。すなわち、「第1遺伝子」の用語は、第1タンパク質をコードする遺
伝子も意味し得る。
「第2遺伝子」の用語は、配列番号3に示す塩基配列またはその変異体配列を有する遺
伝子(例えばDNA)を意味し得る。第2遺伝子にコードされるタンパク質を、「第2タン
パク質」ともいう。すなわち、「第2遺伝子」の用語は、第2タンパク質をコードする遺伝子も意味し得る。
配列番号1に示す塩基配列を有するP. ananatis固有の遺伝子は、BioCycデータベース(https://biocyc.org/)においてaccession No. PAJ_RS05335を有する。この遺伝子は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードし、同タンパク質は、活性また
は機能が未知の仮想タンパク質であり得る。すなわち、第1タンパク質としては、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
配列番号3に示す塩基配列を有するP. ananatis固有の遺伝子は、BioCycデータベースにおいてaccession No. PAJ_RS05340を有する。この遺伝子は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードし、同タンパク質は、予測上の5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステイン-メチルトランスフェラーゼ(5-methyltetrahydropteroyltriglutamate-homocysteine methyltransferase)(これは、以下の反応を触媒する:L-homocysteine + 5-methyltetrahydropteroyltri-L-glutamate ⇔tetrahydropteroyl-L-glutamate + L-methionine(Enzyme Commission (EC) No.: 2.1.1.14))であり得る。すなわち、第2タンパク質としては、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタ
ンパク質が挙げられる。
「遺伝子またはタンパク質が塩基配列またはアミノ酸配列を有する」という表現は、遺伝子またはタンパク質が当該塩基配列または当該アミノ酸配列を含むことを意味し得、遺伝子またはタンパク質が当該塩基配列または当該アミノ酸配列からなる場合も包含し得る。
以下、第1遺伝子のバリアントおよび第1タンパク質のバリアント(具体的には、配列番号1に示す塩基配列を有する遺伝子および配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質のバリアント)について主に記載する。そのような遺伝子およびタンパク質のバリアントについての以下の記載は、いずれの遺伝子およびタンパク質(第2遺伝子および第2タンパク質ならびに他の任意の遺伝子およびタンパク質を含む)にも準用できる。
細菌の属、種、または株間でDNA配列に相違があり得る。従って、第1遺伝子は、配列
番号1に示す塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号1の変異体塩基配列を有し、且つ第1遺伝子の機能を有する遺伝子(例えばDNA)を包含してもよい。同様に、第1タ
ンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に限定されず、配列番号2の変異体アミノ酸配列を有し、且つ第1タンパク質の機能を有するタンパク質を包含してもよい。そのような変異体塩基配列または変異体アミノ酸配列としては、上記例示した第1遺伝子および第1タンパク質のホモログや人為的改変体が挙げられる。
「遺伝子が第1遺伝子の機能を有する」の用語は、遺伝子が、同遺伝子を細菌において過剰発現させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することを意味し得る。細菌により生産されるL-メチオニンの量は、第1遺伝子を適切な第2遺伝子との組み合わせで過剰発現させた場合に増大すれば十分であり得る。よって、「遺伝子が第1遺伝子の機能を有する」の用語は、具体的には、遺伝子が、同遺伝子を第2遺伝子との組み合わせで細菌において過剰発現させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することを意味し得る。「遺伝子が第1遺伝子の機能を有する」
の用語は、遺伝子が、第1タンパク質の機能を有するタンパク質をコードすることも意味し得る。「タンパク質が第1タンパク質の機能を有する」の用語は、タンパク質が、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を有することを意味し得る。タンパ
ク質の機能としては、タンパク質の活性が挙げられる。「タンパク質が第1タンパク質の機能を有する」の用語は、タンパク質が、同タンパク質の量を細菌において増大させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することも意味し得る。細菌により生産されるL-メチオニンの量は、第1タンパク質の量を適切な第2タンパク質との組み合わせで増大させた場合に増大すれば十分であり得る。よって、「タンパク質が第1タンパク質の機能を有する」の用語は、具体的には、タンパク質が、同タンパク質の量を第2タンパク質との組み合わせで細菌において増大させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することも意味し得る。
第2遺伝子は、配列番号3に示す塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号3の変異体塩基配列を有し、且つ第2遺伝子の機能を有する遺伝子(例えばDNA)を包含しても
よい。同様に、第2タンパク質は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に
限定されず、配列番号4の変異体アミノ酸配列を有し、且つ第2タンパク質の機能を有す
るタンパク質を包含してもよい。そのような変異体塩基配列または変異体アミノ酸配列としては、上記例示した第2遺伝子および第2タンパク質のホモログや人為的改変体が挙げられる。
「遺伝子が第2遺伝子の機能を有する」の用語は、遺伝子が、同遺伝子を細菌において過剰発現させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することを意味し得る。細菌により生産されるL-メチオニンの量は、第2遺伝子を適切な第1遺伝子との組み合わせで過剰発現させた場合に増大すれば十分であり得る。よって、「遺伝子が第2遺伝子の機能を有する」の用語は、具体的には、遺伝子が、同遺伝子を第1遺伝子との組み合わせで細菌において過剰発現させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することを意味し得る。「遺伝子が第2遺伝子の機能を有する」の用語は、遺伝子が、第2タンパク質の機能を有するタンパク質をコードすることも意味し得る。「タンパク質が第2タンパク質の機能を有する」の用語は、タンパク質が、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を有することを意味し得る。タンパ
ク質の機能としては、タンパク質の活性が挙げられる。「タンパク質が第2タンパク質の機能を有する」の用語は、タンパク質が、同タンパク質の量を細菌において増大させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することも意味し得る。細菌により生産されるL-メチオニンの量は、第2タンパク質の量を適切な第1タンパク質との組み合わせで増大させた場合に増大すれば十分であり得る。よって、「タンパク質が第2タンパク質の機能を有する」の用語は、具体的には、タンパク質が、同タンパク質の量を第1タンパク質との組み合わせで細菌において増大させた場合に、同細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増大する性質を有することも意味し得る。
第1遺伝子について言及される「変異体塩基配列」の用語は、標準遺伝子暗号表(例えば、Lewin B., “Genes VIII”, 2004, Pearson Education, Inc., Upper Saddle River,
NJ 07458を参照)による任意の同義のアミノ酸コドンを使用して第1タンパク質(例え
ば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質)をコードする塩基配列を意味し
得る。従って、第1遺伝子は、遺伝暗号の縮重による配列番号1の変異体塩基配列を有す
る遺伝子であり得る。
第1遺伝子について言及される「変異体塩基配列」の用語は、配列番号1に示す配列に
相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列も意味し得る。「ストリンジェントな条件」の用語は、特異的なハイブリッド、例えばコンピュータプログラムblastnを使用する場合のパラメーター「同一性」として定義される相同性が85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上
、98%以上、または99%以上のハイブリッド、が形成され、非特異的なハイブリッド、例えば上記より相同性が低いハイブリッド、が形成されない条件を包含し得る。ストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC(標準クエン酸ナトリウムまたは標準塩化ナトリウム)、0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の塩濃度で60℃において、0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で60℃において、または0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で65℃において1回以上、別の例では2または3回洗浄する条件が挙げられる。洗浄時間は、ブロッティングに使用されたメンブレンの種類に依存し得るが、一般的には製造者により推奨されるものとすべきである。例えば、Amersham HybondTM-N+正荷電ナイロンメンブレン(GE Healthcare
)のストリンジェントな条件下での推奨洗浄時間は15分である。洗浄工程は2または3回行うことができる。プローブとしては、配列番号1に示す配列に相補的な配列の一部を使
用してもよい。そのようなプローブは、配列番号1に示す配列に基づいて調製されたオリ
ゴヌクレオチドをプライマーとして使用し、塩基配列を含むDNA断片を鋳型として使用す
るPCR(polymerase chain reaction;White T.J. et al., The polymerase chain reaction, Trends Genet., 1989, 5:185-189を参照のこと)によって調製することができる。プローブの長さは、50 bpを超えることが推奨されるが、ハイブリゼーション条件により適
切に選択することができ、通常100 bp ~1 kbpである。例えば、約300 bpの長さを有するDNA断片をプローブとして使用する場合、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件は、例え
ば、50℃、60℃、または65℃における2×SSC、0.1%SDSの条件であり得る。
第1遺伝子について言及される「変異体塩基配列」の用語は、第1タンパク質の変異体タンパク質をコードする塩基配列も意味し得る。
第1タンパク質について言及される「変異体タンパク質」の用語は、配列番号2の変異
体アミノ酸配列を有するタンパク質を意味し得る。
第1タンパク質について言及される「変異体タンパク質」の用語は、具体的には、配列番号2に示すアミノ酸配列と比較して、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加のいずれであるにせよ、1つまたはそれ以上の変異を配列中に有するタン
パク質であって、第1タンパク質の機能(例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有す
るタンパク質の機能)が維持されているか、その三次元構造が非改変型タンパク質(例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質)に対して有意には変更されてい
ないタンパク質を意味し得る。変異体タンパク質中の変異の数は、タンパク質の三次元構造中のアミノ酸残基の位置またはアミノ酸残基の種類による。変異体タンパク質中の変更の数は、厳密に限定されるものではないが、配列番号2において1~50、別の例では1~40
、別の例では1~30、別の例では1~20、別の例では1~20、別の例では1~15、別の例では1~10、あるいは別の例では1~5であってよい。これは、アミノ酸は互いに高い相同性を
有し得るものであり、それらアミノ酸間の変異によっては、タンパク質の機能が影響を受けないか、タンパク質の三次元構造が非改変型タンパク質に対して有意には変化しないから可能である。従って、変異体タンパク質は、タンパク質の機能が維持されているか、タンパク質の三次元構造が非改変型タンパク質(例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を
有するタンパク質)に対して有意には変更されていない限り、配列番号2のアミノ酸配列
全体に対して85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、あるいは99%以上の、コンピュータプログラムblastpを使用する
際のパラメーター「同一性」として定義される相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。本明細書において、「相同性」の用語は、「同一性」(これは、アミノ酸残基間の同一性である)を意味してよい。2つの配列間の配列同一性は、2つの配
列を最大一致となるように整列した際の2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、保存的変異が挙げられる。保存的変異の代表的なものは保存的置換であり得る。保存的置換は、限定するものではないが、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Ala、Leu、Ile、Val間で、置換部位
が親水性アミノ酸である場合にはGlu、Asp、Gln、Asn、Ser、His、Thr間で、置換部位が
極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、置換部位が塩基性アミノ酸である場合にはLys、Arg、His間で、置換部位が酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、置換部位
がヒドロキシル基を有するアミノ酸である場合には、Ser、Thr間で、互いに置換する置換である。保存的置換の例としては、AlaからSerまたはThrへの置換、ArgからGln、HisまたはLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、HisまたはAspへの置換、AspからAsn、GluまたはGlnへの置換、CysからSerまたはAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、AspまたはArgへの置換、GluからAsn、Gln、LysまたはAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、ArgまたはTyrへの置換、IleからLeu、Met、ValまたはPheへの置換、LeuからIle、Met、ValまたはPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、HisまたはArgへの置換、Met
からIle、Leu、ValまたはPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、IleまたはLeuへの置換、SerからThrまたはAlaへの置換、ThrからSerまたはAlaへの置換、TrpからPheまたはTyrへ
の置換、TyrからHis、PheまたはTrpへの置換、及びValからMet、IleまたはLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、又は付加等は、アミノ酸配列が由来する生物の個体差によって天然に生じる変異を包含する。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、非保存的変異も挙げられるが、ただし、その変異は、アミノ酸配列の異なる位置の1つまた
はそれ以上の第2の変異により、変異体タンパク質の活性または機能が維持されるか、あ
るいは非改変型タンパク質(例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質
)に対してタンパク質の三次元構造が有意には変更されないように、補償されるものである。
P. ananatis固有の第1遺伝子の塩基配列(配列番号1)および同遺伝子にコードされる第1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)は既に解明されている(上記参照)ので、P. ananatis固有の第1遺伝子またはその変異体塩基配列は、P. ananatisのDNAと、配列番号1に示す塩基配列に基づいて調製したプライマーを用いたPCR(polymerase chain reaction; White T.J. et al., The polymerase chain reaction, Trends Genet., 1989, 5:185-189を参照のこと)によるP. ananatisからのクローニングにより、またはP. ananatis
固有の第1遺伝子を含むDNAを例えばヒドロキシルアミンでin vitro処理する突然変異法
または第1遺伝子を有するP. ananatisを紫外線(UV)照射もしくはそのような処理に通
常用いられるN-メチル-N'-ニトロ-ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の変異剤で処理する突然変異法により、または全長遺伝子構造物として化学合成することにより、取得できる。他の任意の生物に固有の第1遺伝子およびその変異体塩基配列も同様に取得できる。
ポリペプチドの同一性のパーセンテージは、blastpアルゴリズムにより算出できる。より具体的には、ポリペプチドの同一性のパーセンテージは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)より提供されるblastpアルゴリズムによりデフォルト設定
のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11, Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて算出できる。ポリヌクレオチドの同一性のパーセンテージは、blastnアルゴリズムにより算出できる。より具体的には、ポリヌクレオチドの同一性のパーセンテージは、NC
BIより提供されるblastnアルゴリズムによりデフォルト設定のScoring Parameters(Match/Mismatch Scores=1,-2;Gap Costs=Linear)を用いて算出できる。
「細菌が第1遺伝子を過剰発現するように改変された」の用語は、改変された細菌において、非改変株と比較して、第1遺伝子の対応する遺伝子産物の総量および/または総活性(具体的には、第1タンパク質の総量および/または総活性)が増加するように、あるいは第1遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が増加する(すなわち、より高くなる)ように、細菌が改変されていることを意味し得る。「非改変株」の用語は、上記比較のための対照となり得る細菌株を意味し得る。「非改変株」の用語は、「非改変細菌」または「非改変細菌株」の用語と代替可能または等価に使用され得る。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。非改変株として、具体的には、腸内細菌科の細菌の野生株(例えば、P. ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)、E. coli W3110株(ATCC 27325)、E. coli MG1655株(ATCC 47076)、等)が挙げられる。
第1遺伝子の対応する遺伝子産物の総量および/または総酵素活性(具体的には、第1タンパク質の総量および/または総活性)は、例えば、第1遺伝子の発現レベルを非改変細菌株と比較して増加させる(すなわち増強する)ことにより、または第1遺伝子にコードされる第1タンパク質の分子あたりの活性(比活性ともいう)を非改変株(例えば、野生株または親株)と比較して増加させることにより、増加し得る。タンパク質の総量または総活性の増加は、例えば、細胞当たりのタンパク質の量または活性(これは細胞当たりのタンパク質の平均量または平均活性であってよい)の増加として測定され得る。細菌は、細胞あたりの対応するタンパク質の量および/または活性が、非改変株における量および/または活性の150%以上、200%以上、または300%以上に増加するように改変され得る。
「細菌が第1遺伝子を過剰発現するように改変された」の用語は、改変された細菌において、第1遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が非改変株(例えば、野生株または親株)と比較して増加するまたは増強されるように、細菌が改変されていることも意味し得る。従って、「遺伝子が過剰発現する」の用語は、「遺伝子の発現が増強される、または増加する」の用語または「遺伝子の発現レベルが増強される、または増加する」の用語と代替可能または同等に用いられ得る。また、「細菌が第1遺伝子を過剰発現するように改変された」の用語は、改変された細菌において、第1遺伝子の発現レベルが非改変株で観察される発現レベルよりも高くなるように、細菌が改変されていることも意味し得る。遺伝子の発現レベルの増加は、例えば、細胞当たりの遺伝子の発現レベル(これは細胞当たりの遺伝子の平均発現レベルであってよい)の増加として測定され得る。「遺伝子の発現レベル」または「遺伝子の発現量」の用語は、例えば、遺伝子の発現産物の量(例えば、同遺伝子のmRNAの量または同遺伝子にコードされるタンパク質の量)を意味し得る。細菌は、例えば、細胞あたりの第1遺伝子の発現レベルが、非改変株における第1遺伝子の発現レベルの150%以上、200%以上、または300%以上に増加するように改変されてよい。
タンパク質濃度は、Bradfordタンパク質アッセイ、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準
としてクマシー色素を用いたLowry法、またはWestern blot解析により決定することがで
きる(Bradford M.M., Anal. Biochem., 1976, 72:248-254; Lowry O.H. et al., J. Biol. Chem., 1951, 193:265-275; Belogurov G.A. et al., 2002)。
第1遺伝子の過剰発現についての上記記載は、いずれの遺伝子(第2遺伝子および他の任意の遺伝子を含む)の過剰発現にも準用できる。
第1遺伝子や第2遺伝子等の遺伝子を過剰発現させるために使用できる方法としては、限定するものではないが、遺伝子のコピー数、例えば、細菌の染色体における遺伝子のコピー数および/または細菌に保持された自律複製するベクター(例えばプラスミド)にお
ける遺伝子のコピー数、を増加させる方法が挙げられる。遺伝子のコピー数は、例えば、遺伝子を細菌の染色体に導入すること、および/または、遺伝子を含む自律複製するプラスミドを細菌に導入することにより、増加させることができる。そのような遺伝子のコピー数の増加は、当業者に周知の遺伝子工学的手法により実施できる。
腸内細菌科の細菌で使用できるベクターとしては、限定するものではないが、pMW118/119、pBR322、pUC19、pAH162、RSF1010、RP4等の広宿主域プラスミドが挙げられる。遺伝
子は、例えば、相同組み換えまたはMuドリブンインテグレーション等によって細菌の染色体DNAに導入することもできる。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーま
たはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体DNA中に複数のコピーが存在する塩基配
列をターゲットとして相同組み換えを実施することにより、染色体DNAに複数コピーの遺
伝子を導入することができる。染色体DNA中に複数のコピーが存在する塩基配列としては
、限定するものではないが、レペティティブDNAや転移因子の末端に存在するインバーテ
ッドリピートが挙げられる。さらに、遺伝子をトランスポゾンに組み込んで転移させることにより、染色体DNAに複数コピーの遺伝子を導入することができる。染色体DNAに複数コピーの遺伝子を導入するためには、染色体間増幅法を使用できる。Mu-driven転移により
、3コピーより多い遺伝子を受容株の染色体DNAに1ステップで導入できる(Akhverdyan V.Z. et al., Biotechnol. (Russian), 2007, 3:3-20)。
本明細書に記載の細菌に導入される遺伝子は、プロモーターの下流に接続できる。プロモーターは、宿主細菌において機能するものが選択される限り特に制限されず、宿主細菌由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。「宿主細菌において機能するプロモーター」の用語は、宿主細菌においてプロモーター活性を有するプロモーターを意味し得る。腸内細菌科の細菌において機能するプロモーターとして、具体的には、限定するものではないが、下記例示する強力なプロモーターが挙げられる。
第1遺伝子や第2遺伝子等の遺伝子を過剰発現させるために使用できる方法としては、遺伝子の発現制御領域を改変することにより、遺伝子の発現レベルを増加させる方法が挙げられる。遺伝子の発現制御領域の改変は、遺伝子のコピー数の増加と組み合わせて採用できる。遺伝子の発現制御領域は、例えば、遺伝子の生来の発現制御領域を生来(native)の及び/又は改変された外来の発現制御領域で置換することにより、改変することができる。「発現制御領域」の用語は、「発現制御配列」の用語と代替可能または同等に用いられ得る。
発現制御領域としては、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、アテニュエーターと終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、及びその他の発現制
御エレメント(例えば、リプレッサーまたはアクチベーターが結合する領域、及び/又は、例えば転写されたmRNA中の転写及び翻訳の制御タンパク質の結合部位)が挙げられる。このような制御領域は、例えば、公知の文献(Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis
T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); Pfleger B.F. et al., Combinatorial engineering of intergenic regions in operons tunes expression of multiple genes, Nat. Biotechnol., 2006, 24:1027-1032; Mutalik V.K. et al., Precise and reliable gene expression via standard transcription and translation initiation elements, Nat. Methods, 2013, 10:354-360)に記載されている。遺伝子の発現制御領域の改変は、遺伝子のコピー数の増加と組み合わせることができる(例えば、Akhverdyan V.Z. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871; Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009, 27:760-765を参照)。
遺伝子の発現を増強するのに適したプロモーターとしては、強力なプロモーターが挙げ
られる。「強力なプロモーター」の用語は、遺伝子の生来のプロモーターより強いプロモーターを意味し得る。腸内細菌科の細菌において機能する強力なプロモーターとしては、限定するものではないが、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、msrAプロモー
ター、Pm1プロモーター(Bifidobacterium属由来)、およびラムダファージのPRまたはPLプロモーターが挙げられる。強力なプロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得してもよい。例えば、プロモーター領域内の-35および-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの強度を高めることができる(WO0018935 A1)。プロモーターの強度は、RNA合成の開
始作用の頻度により定義され得る。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldstein M.A. et al.の論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。細菌(例えば、腸内細菌科の細菌等)において高いレベルの遺伝子発現を与える強力なプロモーターを使用できる。あるいは、プロモーターの効果は、例えば、遺伝子のプロモーター領域に変異を導入してより強いプロモーター機能を得ることにより増強することができ、以て、該プロモーターの下流に位置する遺伝子の転写レベルを増加させることができる。さらに、シャイン・ダルガルノ(SD)配列、及び/又はSD配列と開始コドンの間のスペーサー、及び/又はリボソーム結合部位中の開始コドンの直ぐ上流または下流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。よって、これらの領域は、遺伝子の発現制御領域の一例であり得る。例えば、開始コドンに先行する3つの
ヌクレオチドの性質に依存して、20倍の範囲の発現レベルが見出されている(Gold L. et
al., Annu. Rev. Microbiol., 1981, 35:365-403; Hui A. et al., EMBO J., 1984, 3:623-629)。
第1および第2遺伝子の過剰発現が可能な方法であれば、事実上、いずれの遺伝子過剰発現方法を使用してもよい。したがって、単一の遺伝子過剰発現方法で第1および第2遺伝子を過剰発現させることもでき、それぞれ異なる遺伝子過剰発現方法で第1および第2遺伝子を過剰発現させることもできる。例えば、第1および第2遺伝子は、それら遺伝子がそれぞれ異なる核酸分子上に存在するようにして、細菌において過剰発現させる(すなわち細菌に導入する)ことができる。あるいは、第1および第2遺伝子は、それら遺伝子が単一の核酸分子上に存在するようにして、細菌において過剰発現させる(すなわち細菌に導入する)ことができる。例えば、第1および第2遺伝子は、単一の発現ベクターまたは染色体上に存在してよい。あるいは、第1および第2遺伝子は、2つの異なる発現ベクター上にそれぞれ存在してよい。あるいは、第1および第2遺伝子の一方が発現ベクター上に存在し、他方が染色体上に存在してもよい。いずれの遺伝子の組み合わせについても同様である。
細菌において遺伝子を過剰発現させる方法は、同遺伝子を有する核酸(DNA)を細菌に
導入する方法であり得る。核酸(例えば、遺伝子やベクター等)を細菌に導入する方法としては、限定するものではないが、当業者に公知の遺伝子工学的手法が挙げられる。例えば、腸内細菌科の細菌に核酸を導入する公知の方法を使用できる。
本明細書に記載の細菌において、第1および第2遺伝子は、いずれも、プラスミド等の染色体外で自律複製するベクター上に存在していてもよく、染色体に組み込まれていてもよく、これらの組み合わせであってもよい。また、上述したように、本明細書に記載の細菌を構築するためには、第1および第2遺伝子の導入とL-メチオニンを生産する能力の付与または増強を任意の順序で実施できる。
2つまたはそれ以上の遺伝子(例えば、第1および第2遺伝子ならびに他の遺伝子)を過剰発現させる場合、単一の遺伝子過剰発現方法でそれら2つまたはそれ以上の遺伝子を
過剰発現させることもでき、それぞれ異なる遺伝子過剰発現方法でそれら遺伝子を過剰発現させることもできる。さらに、それら2つまたはそれ以上の遺伝子は、例えば、1つず
つまたは同時に過剰発現させることができる。
2つまたはそれ以上の遺伝子(例えば、第1および第2遺伝子ならびに他の遺伝子)は、オペロン構造に編成されていてよい。したがって、遺伝子の発現を増強するために使用できる方法は、2つまたはそれ以上の遺伝子を有するオペロンの発現レベルの増加にも適用できる。例えば、オペロン中の2つまたはそれ以上の遺伝子の発現を増強するために、オペロンの発現調節領域の改変、または生来(native)の及び/又は改変された外来の発現制御領域のオペロンへの導入を使用してよい。オペロンは、例えば、第1および第2遺伝子を含んでいてよく、さらに他の1つまたはそれ以上の遺伝子を含んでいてもよい。この方法では、2つまたはそれ以上の遺伝子の発現を同時に増強することができる。
第1および第2遺伝子等の遺伝子を過剰発現させるための本明細書に記載の方法は、いずれの遺伝子の過剰発現にも準用できる。
遺伝子のコピー数または遺伝子の存在あるいは不在は、例えば、染色体DNAを制限処理
した後、遺伝子配列に基づいたプローブを使用するサザンブロッテイング、または蛍光in
situハイブリダイゼーション(FISH)等を行うことにより、測定することができる。遺
伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティングや定量的RT-PCR等の様々な周知の方法を使用して遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することにより決定することができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEと、その後の免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)やタンパク質試料の質量分析等の公知の方法により測定することができる。
プラスミドDNAの調製、DNAの切断、DNAの結合、DNAの形質転換、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの選択、変異の導入等の、DNAの組み換え分子の操作及び分子クローニ
ングのための方法は、当業者に周知の通常の方法であってよい。そのような方法は、例えば、Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory
Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)またはGreen M.R. and Sambrook J.R., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012); Bernard R. Glick, Jack J. Pasternak and Cheryl L. Patten, “Molecular Biotechnology: principles and applications of recombinant DNA”, 4th ed., Washington, DC, ASM Press (2009)に記載されている。
組み換えDNAを用いた操作法としては、例えば、形質転換、トランスフェクション、感染、接合、可動等の従来の方法を含め、任意の方法を用いることができる。タンパク質をコードするDNAを用いた細菌の形質転換、トランスフェクション、感染、接合、または可動により、当該細菌に当該DNAによりコードされるタンパク質を合成する能力を付与することができる。形質転換、トランスフェクション、感染、接合、および可動の方法としては、任意の方法が挙げられる。例えば、効率的なDNAの形質転換およびトランスフェクションのために、E. coliK-12の細胞のDNAに対する透過性が高まるように受容
細胞を塩化カルシウムで処理する方法が報告されている(Mandel M. and Higa A., Calcium-dependent bacteriophage DNA infection, J. Mol. Biol., 1970, 53:159-162)。特
殊化および/または一般化された形質転換の方法が記載されている(Morse M.L. et al.,
Transduction in Escherichia coli K-12, Genetics, 1956, 41(1):142-156; Miller J.H., Experiments in Molecular Genetics. Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor La. Press, 1972)。宿主微生物へのDNAのランダムおよび/または標的化された
組み込みのための他の方法、例えば、「λRed-recombineering」(Katashkina J.I. et al., Use of the λ Red-recombineering method for genetic engineering of Pantoea a
nanatis, BMC Mol. Biol., 2009, 10:34)、「Mu-driven integration/amplification」
(Akhverdyan et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871)、「Red/ET-driven integration」または「λRed/ET-mediated integration」(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000, 97(12):6640-45; Zhang Y., et al., Nature Genet., 1998, 20:123-128)、を適用できる。さらに、所望の遺伝子の多重挿入のためには、Mu駆動の複製的転移(Akhverdyan et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871)や所望の遺伝子の増幅をもたらすrecA依存性相同組み換えに基づく化
学的に誘導可能な染色体進化(Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009, 27:760-765)に加えて、転移、部位特異的および/または相同的なRed/ETを介した組み換え、お
よび/またはP1を介した一般化形質導入の種々の組み合わせを利用する他の方法(例えば、Minaeva N.I. et al., BMC Biotechnology, 2008, 8:63; Koma D. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2012, 93(2):815-829を参照のこと)を利用できる。
タンパク質または核酸に言及する際の「固有の(native to)」の用語は、タンパク質
または核酸が特定の生物(例えば、哺乳類、植物、昆虫、細菌、またはウイルス等)に固有であることを意味し得る。すなわち、特定の生物に固有のタンパク質または核酸は、それぞれ、当該生物に天然に存在するタンパク質または核酸を意味し得る。特定の生物に固有のタンパク質または核酸は、当該生物から単離でき、当業者に知られた方法により配列解析できる。さらに、タンパク質または核酸が存在する生物からそれぞれ単離されたタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列は容易に決定することができるので、タンパク質または核酸に言及する際の「固有の」の用語は、得られるタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列が当該生物に天然に存在する、天然に発現する、且つ/又は天然に製造されるタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列と同一である限り、任意の手段、例えば、組み換えDNA技術を含む遺伝子工学的手法または化学合成法等、により得られるタンパク質または核酸も意味し得る。「タンパク質」の用語は、限定されるものではないが、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素等を包含し得る。「核酸」の用語は、デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)を包含し得、限定されるものではないが、特に、プロモーター、アテニュエーター、ターミネーター等を含む発現調節配列、遺伝子、遺伝子間配列、シグナルペプチド、タンパク質のプロ部位、人工アミノ酸配列等をコードする塩基配列を包含し得る。例えば、遺伝子は、特に、DNAであり得る。
遺伝子(例えば、「非改変遺伝子」)およびタンパク質(例えば、「非改変タンパク質」)について言及する際の「非改変(non-modified)」の用語(これは、「生来(native)」、「天然(natural)」、および「野生型(wild-type)」の用語と代替可能または同等に用いられ得る)は、それぞれ、生物に、具体的には、細菌の非改変株に、天然に存在する、天然に発現する、且つ/又は天然に製造される生来の遺伝子およびタンパク質を意味し得る。そのような生物としては、対応する遺伝子またはタンパク質を有する任意の生物が挙げられ、具体的には、腸内細菌科の細菌(例えば、E. coli MG1655株(ATCC 47076)やP. ananatis 13355株(FERM BP-6614)等)が挙げられる。非改変遺伝子は、非改変
タンパク質をコードし得る。
本明細書に記載の細菌は、さらに、例えば、下記例示する1つまたはそれ以上の改変を有していてよい。そのような改変は、例えば、L-メチオニンを生産する能力の付与または増強するための改変であり得る。本明細書に記載の細菌を構築するための改変は、任意の順序で実施できる。
例えば、本明細書に記載の細菌は、さらに、rarD遺伝子を過剰発現するように改変されていてよい。
P. ananatisのrarD遺伝子は、クロラムフェニコール耐性パーミアーゼ(chloramphenicol resistance permease)RarDをコードする(BioCyc database, biocyc.org/, accession ID: G1H69-3687; UniProtKB/Swiss-Prot database, accession No. A0A0H3L1X8; KEGG,
Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes, entry No. PAJ_3332)。P. ananatis固有
のrarD遺伝子の塩基配列を配列番号44に示し、同遺伝子にコードされるRarDタンパク質のアミノ酸配列を配列番号45に示す。
すなわち、rarD遺伝子は配列番号44に示す塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であ
ってもよく、RarDタンパク質は配列番号45に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
rarD遺伝子は、RarDタンパク質をコードする限り、配列番号44に示す塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号44の変異体塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)を包含
してもよい。同様に、RarDタンパク質は、RarDタンパク質の機能を有する限り、配列番号45に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に限定されず、配列番号45の変異体アミノ酸配列を有するタンパク質を包含してもよい。「タンパク質がRarDタンパク質の機能を有する」の用語は、タンパク質が、配列番号45または47に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を有することを意味し得る。タンパク質の機能としては、タンパク質の活性が挙げられる。「タンパク質がRarDタンパク質の機能を有する」の用語は、タンパク質が、クロラムフェニコール耐性パーミアーゼ(chloramphenicol resistance permease)としての
機能を有することも意味し得る。
さらに、rarD遺伝子は、本明細書に記載の細菌を用いたL-メチオニンの生産がさらに増強されるように、野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における86位のアスパラギン(Asn)残基が酸性アミノ酸残基(これは、アスパラギン酸(Asp,D)残基(N86D変異)ま
たはグルタミン酸(Glu,E)残基(N86E変異)であってもよい)で置換されたRarDタンパク質をコードしていてもよい。86位の変異は、特に、N86D変異であってよい。86位の変異を有するRarDタンパク質を、「変異型RarDタンパク質」ともいう。変異型RarDタンパク質をコードするrarD遺伝子を、「変異型rarD遺伝子」ともいう。「野生型RarDタンパク質」との用語は、86位の変異を有しないRarDタンパク質を意味し得る。野生型RarDタンパク質をコードするrarD遺伝子を、「野生型rarD遺伝子」ともいう。野生型rarD遺伝子としては、P. ananatis固有のrarD遺伝子や、その変異体であってコードされるタンパク質の86位
の変異をもたらす変異を有しないものが挙げられる。野生型RarDタンパク質としては、P.
ananatis固有のRarDタンパク質や、その変異体であって86位の変異を有しないものが挙
げられる。言い換えると、変異型rarD遺伝子は、コードされるタンパク質の86位の変異をもたらす変異を有すること以外は、任意の野生型rarD遺伝子と同一であってもよい。また、変異型RarDタンパク質は、86位の変異を有すること以外は、任意の野生型RarDタンパク質と同一であってもよい。具体的には、変異型RarDタンパク質のアミノ酸配列は配列番号47に示す通りであり得、それは配列番号46に示す塩基配列を有する変異型rarD遺伝子にコードされる。すなわち、rarD遺伝子(具体的には変異型rarD遺伝子)は配列番号46に示す塩基配列を有していてもよく、RarDタンパク質(具体的には変異型RarDタンパク質)は配列番号47に示すアミノ酸配列を有していてもよい。rarD遺伝子(具体的には変異型rarD遺伝子)は、配列番号46の変異体塩基配列であってコードされるタンパク質の86位の変異をもたらす変異を有する塩基配列を有していてもよい。RarDタンパク質(具体的には変異型RarDタンパク質)は、配列番号47の変異体アミノ酸配列であってコードされるタンパク質の86位の変異を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
任意の野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列において「野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における86位のアスパラギン(Asn)残基」との用語は、当該任意の野生型RarDタ
ンパク質のアミノ酸配列と配列番号45のアミノ酸配列のアラインメントにおいて配列番号
45に示すアミノ酸配列における86位のAsn残基に相当するアミノ酸残基を意味し得る。す
なわち、「86位」との用語は、必ずしも野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における絶対的な位置を示すものはなく、配列番号45に示すアミノ酸配列に基づく相対的な位置を示すものである。例えば、配列番号45に示すアミノ酸配列において、86位のAsn残基のN末
端側の位置で1アミノ酸残基が欠失した場合、もともと86位であったAsn残基は改変後の
アミノ酸配列における85位のAsn残基になるが、引き続き「野生型RarDタンパク質のアミ
ノ酸配列における86位のAsn残基」とみなされる。そのようなアライメントは、例えば、
公知の遺伝子解析ソフトウェアを利用して行うことができる。具体的なソフトウェアとしては、日立ソリューションズ製のDNASIS、ゼネティックス製のGENETYX、DDBJにより公開
されているClustalW等が挙げられる(Elizabeth C. Tyler et al., Computers and Biomedical Research, 1991, 24(1):72-96; Barton G.J. et al., J. Mol. Biol., 1987, 198(2):327-337; Thompson JD et al., Nucleic Acid Res., 1994, 22(22):4673-4680)。
変異型rarD遺伝子は、例えば、コードされるタンパク質が86位の変異を有するように野生型rarD遺伝子を改変することにより、取得できる。改変される野生型rarD遺伝子は、上述したように、例えば、野生型rarD遺伝子を有するPantoea細菌からのクローニングによ
り、または化学合成により、取得できる。遺伝子の改変は、公知の方法で行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの標的部位に目的とする変異を導入すること
ができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR Technology, Erlich, H.A. Eds., Stockton Press, 1989; Carter P., Methods Enzymol., 1987, 154, 382)や、ファージを用いる方法(Kramer, W. and Frits, H.J., Methods Enzymol., 1987, 154, 350; Kunkel, T.A. et al., Methods Enzymol., 1987, 154, 367)が挙げられる。さらに、変異型rarD遺伝子は、野生型rarD遺伝子遺伝子を用いずに取得することもできる。例えば、変異型rarD遺伝子は、化学合成により直接取得してもよい。
例えば、本明細書に記載の細菌は、さらに、システインシンターゼ(cysteine synthase)遺伝子を過剰発現するように改変されていてよい。
「システインシンターゼ(cysteine synthase)遺伝子」の用語は、cysteine synthaseをコードする遺伝子を意味し得る。「システインシンターゼ(cysteine synthase)」の
用語は、cysteine synthase活性(EC 2.5.1.47)を有するタンパク質を意味し得る。cysteine synthase遺伝子としては、cysM遺伝子やcysK遺伝子が挙げられる。cysM遺伝子は、
チオ硫酸を基質とするcysteine synthase Bをコードしてよい。cysK遺伝子は、硫化物を
基質とするcysteine synthase Aをコードしてよい。cysteine synthase遺伝子として、具体的には、P. ananatis固有のcysM遺伝子が挙げられる。P. ananatis固有のcysM遺伝子の塩基配列を配列番号5に示し、同遺伝子にコードされるCysMタンパク質のアミノ酸配列を
配列番号48に示す。
すなわち、cysM遺伝子等のcysteine synthase遺伝子は配列番号5に示す塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であってもよく、CysMタンパク質等のcysteine synthaseは配列番号48に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
cysM遺伝子等のcysteine synthase遺伝子は、cysteine synthaseをコードする限り、配列番号5に示す塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号5の変異体塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)を包含してもよい。同様に、CysMタンパク質等のcysteine synthaseは、cysteine synthase活性を有する限り、配列番号48に示すアミノ酸配列を有するタ
ンパク質に限定されず、配列番号48の変異体アミノ酸配列を有するタンパク質を包含してもよい。
例えば、本明細書に記載の細菌は、さらに、変異型metA遺伝子を有するように改変され
ていてよい。
metA遺伝子は、ホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)MetAをコードする(EC 2.3.1.46)。「変異型metA遺伝子」の用語は、変異型MetAタンパク質をコードする遺伝子を意味し得る。「変異型MetAタンパク質」の用語は、R34C変異(これは、野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における34位のアルギニン(Arg)残基がシス
テイン(Cys)残基で置換される変異である)を有するMetAタンパク質を意味し得る。「
野生型metA遺伝子」の用語は、野生型MetAタンパク質をコードする遺伝子を意味し得る。「野生型MetAタンパク質」の用語は、R34C変異を有しないMetAタンパク質を意味し得る。野生型metA遺伝子としては、P. ananatis固有のmetA遺伝子や、その変異体であってコー
ドされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有しないものが挙げられる。野生型MetAタンパク質としては、P. ananatis固有のMetAタンパク質や、その変異体であってR34C変
異を有しないものが挙げられる。言い換えると、変異型metA遺伝子は、コードされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有すること以外は、任意の野生型metA遺伝子と同一であってもよい。また、変異型MetAタンパク質は、R34C変異を有すること以外は、任意の野生型MetAタンパク質と同一であってもよい。P. ananatis固有のmetA遺伝子の塩基配列を
配列番号21に示し、同遺伝子にコードされるMetAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号27に示す。具体的には、変異型MetAタンパク質のアミノ酸配列の一例は配列番号29に示す通りであり得、それは配列番号28に示す塩基配列を有する変異型metA遺伝子にコードされ得る。すなわち、変異型metA遺伝子は配列番号28に示す塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であってもよく、変異型MetAタンパク質は配列番号29に示すアミノ酸配列を有するタ
ンパク質であってもよい。変異型metA遺伝子は、配列番号28の変異体塩基配列であってコードされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有する塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であってもよい。変異型MetAタンパク質は、配列番号29の変異体アミノ酸配列で
あってR34C変異を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。変異型MetAタンパク質は、L-メチオニンによるフィードバック阻害に耐性のhomoserine transsuccinylaseであってもよい。言い換えると、変異型MetAタンパク質は、homoserine transsuccinylase活性を有し、L-メチオニンによるフィードバック阻害に耐性のタンパク質であってもよい。上記の第1遺伝子の変異体および第1タンパク質の変異体に関する記載は、metA遺伝子の変異体およびMetAタンパク質の変異体にも準用できる。上記の「野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列における86位のアスパラギン(Asn)残基」の用語に関する記載
は、「野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における34位のアルギニン(Arg)残基」の
用語にも準用できる。上記の変異型rarD遺伝子を取得し導入する手段に関する記載は、変異型metA遺伝子を取得し導入する手段にも準用できる。
例えば、本明細書に記載の細菌は、さらに、metJ遺伝子の発現が弱化するように改変されていてよい。
metJ遺伝子は、Metリプレッサーをコードし、それはメチオニンレギュロンの発現とSAM合成に関与する酵素の発現を抑制し得る。metJ遺伝子としては、P. ananatis等の宿主細
菌に固有のものが挙げられる。P. ananatis固有のmetJ遺伝子の塩基配列を配列番号16に
示し、同遺伝子にコードされるMetJタンパク質のアミノ酸配列を配列番号49に示す。
すなわち、metJ遺伝子は配列番号16に示す塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であ
ってもよく、MetJタンパク質は配列番号49に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
metJ遺伝子は、Metリプレッサーをコードする限り、配列番号16に示す塩基配列を有す
る遺伝子に限定されず、配列番号16の変異体塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)を包
含してもよい。同様に、MetJタンパク質は、Metリプレッサーとしての機能を有する限り
、配列番号49に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に限定されず、配列番号49の変異体アミノ酸配列を有するタンパク質を包含してもよい。「タンパク質がMetリプレッサーと
しての機能を有する」の用語は、タンパク質が、メチオニンレギュロンの発現とSAM合成
に関与する酵素の発現を抑制する機能を有することを意味し得る。
「細菌がmetJ遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌においてmetJ遺伝子の発現が弱化するように、細菌が改変されていることを意味し得る。metJ遺伝子の発現は、例えば、同遺伝子の不活化により弱化し得る。
「metJ遺伝子が不活化される」の用語は、改変された遺伝子が、無機ピロフォスファターゼ(inorganic pyrophosphatase)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と比較
して、完全に不活性または機能しないタンパク質をコードすることを意味し得る。改変されたDNA領域は、遺伝子の一部の欠損もしくは遺伝子全体の欠損、遺伝子がコードするタ
ンパク質のアミノ酸置換をもたらす1塩基以上の置換(ミスセンス変異)、終止コドンの
導入(ナンセンス変異)、遺伝子のリーディングフレームシフトをもたらす1塩基または2塩基の欠失、薬剤耐性遺伝子および/もしくは転写終結シグナルの挿入、または発現制御領域(プロモーター、エンハンサー、オペレーター、アテニュエーターと終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、およびその他の発現制御エレメント、等
)の改変により、自然には遺伝子を発現できなくてよい。遺伝子の不活化は、例えば、紫外線照射またはニトロソグアニジン(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)を用
いた変異処理、部位特異的変異導入、相同組み換えを用いた遺伝子破壊、および/または「Red/ET-driven integration」または「λRed/ET-mediated integration」に基づく挿入-欠失変異導入(Yu D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(11):5978-5983; Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645; Zhang Y. et al., Nature Genet., 1998, 20:123-128)等の常法により実施できる
「細菌がmetJ遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌が作動可能に遺伝子に連結された領域(これは、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、アテニュエーターと終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、およびその他の発
現制御エレメント、等の遺伝子の発現を制御する配列を含む)であって、非改変株と比較してmetJ遺伝子の発現レベルが弱化するように改変されたものを有すること;およびその他の例(例えば、WO95/34672; Carrier T.A. and Keasling J.D., Biotechnol. Prog., 1999, 15:58-64を参照のこと)も意味し得る。遺伝子について言及する際の「作動可能に
連結された(operably linked)」の用語は、制御領域が、遺伝子の発現(例えば、増強
された、増加した、構成的な、基底の、抗終結された、弱化した、制御解除された、低下した、または抑制された発現)を達成できるように、および/または、遺伝子のmRNAおよび/または遺伝子にコードされるアミノ酸配列(発現産物ともいう)が遺伝子の発現の結果として生産できるように、遺伝子の塩基配列に連結されていることを意味し得る。
「細菌がmetJ遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌において、metJ遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が非改変株(例えば、野生株または親株)と比較して弱化するように、細菌が改変されていることも意味し得る。遺伝子の発現レベルの低下は、例えば、細胞当たりの遺伝子の発現レベル(これは細胞当たりの遺伝子の平均発現レベルであってよい)の低下として測定され得る。「遺伝子の発現レベル」または「遺伝子の発現量」の用語は、例えば、遺伝子の発現産物の量(例えば、同遺伝子のmRNAの量または同遺伝子にコードされるタンパク質の量)を意味し得る。細菌は、細胞あたりのmetJ遺伝子の発現レベルが、例えば、非改変株の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下するように改変されてよい。
「細菌がmetJ遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌において、非改変株と比較して、対応する遺伝子産物(すなわちMetリプレッサー)の総量
および/または総活性低下するように、細菌が改変されていることを意味し得る。タンパク質の総量または総活性の低下は、例えば、細胞当たりのタンパク質の量または活性(これは細胞当たりのタンパク質の平均量または平均活性であってよい)の低下として測定され得る。細菌は、細胞あたりのMetリプレッサーの量および/または活性が、例えば、非
改変株の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下するように改変され得る
metJ遺伝子の発現は、具体的には、例えば、染色体DNA上のプロモーター等の遺伝子の
発現制御配列をより弱いものに置換することによっても弱化させることができる。プロモーターの強度は、RNA合成の開始作用の頻度により定義され得る。プロモーターの強度の
評価法の例は、Goldstein M.A. et al.(Goldstein M.A. and Doi R.H., Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載さ
れている。また、WO0018935 A1に開示されているように、遺伝子のプロモーター領域に1つまたはそれ以上の塩基置換を導入することによりプロモーターを弱くなるように改変することもできる。さらに、シャイン・ダルガルノ(SD)配列、及び/又はSD配列と開始コドンの間のスペーサー、及び/又はリボソーム結合部位中の開始コドンの直ぐ上流または下流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。
metJ遺伝子の発現は、具体的には、例えば、遺伝子のコード領域(U.S. Patent No. 5,175,107)もしくは遺伝子発現を制御する領域にトランスポゾンまたは挿入配列(IS)を
挿入することによって、または紫外線照射またはニトロソグアニジン(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン;NTG)による変異導入等の常法によって、弱化させることもできる。さらに、部位特異的な変異の組み込みは、例えば、λRed/ETを介した組み換え(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645
)に基づく公知の染色体編集法により実施できる。
細菌は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記のような性質に加えて、様々な栄養要求性、薬物耐性、薬物感受性、薬物依存性等の特定の性質を有することができる。
2.方法
細菌を用いてL-メチオニンを製造する本明細書に記載の方法は、前記細菌を培地で培養(cultivating(culturingともいう))してL-メチオニンを培地もしくは該細菌の菌体、またはその両者中に生成させ、排出もしくは分泌させ、且つ/又は蓄積させる工程と、培地及び/又は菌体からL-メチオニンを回収する工程を含む。同方法は、さらに、任意で(optionally)、培地及び/又は菌体からL-メチオニンを精製する工程を含み得る。L-メチオニンは、上記のような形態で製造され得る。L-メチオニンは、特に、遊離形態、もしくはその塩、またはそれらの混合物として製造され得る。例えば、L-メチオニンのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、またはL-メチオニンの両性イオン等の分子内塩が、前記方法により製造され得る。これは、アミノ酸が発酵条件下で、互いに、あるいは無機または有機の酸またはアルカリ性物質等の中和剤と、典型的な酸塩基中和反応により反応して塩を生成し得ることから可能であり、これは当業者に明らかなアミノ酸の化学的特徴である。
細菌の培養、ならびに培地等からのL-メチオニンの回収および任意で精製は、微生物を使用してL-アミノ酸を製造する従来の発酵法と同様に実施することができる。すなわち、細菌の培養、ならびに培地等からのL-メチオニンの回収および精製は、当業者に周知の、細菌の培養に適した条件ならびにL-アミノ酸の回収および精製に適した条件を適
用することにより実施してよい。
培地は、炭素源、窒素源、硫黄源、リン源、無機イオン、並びにその他の有機及び無機成分を必要に応じて含む典型的な培地等の、合成培地あるいは天然培地でよい。炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース、澱粉加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロール、マンニトール、ソルビトール等のアルコール、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、および脂肪酸等を使用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒素、アンモニアガス、およびアンモニア水等を使用することができる。さらに、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、およびコーンスティープリカー等も使用することができる。培地は、これらの窒素源の1種またはそれ以上を含むことができる。硫黄源としては、硫酸アンモニウム、硫酸マグ
ネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、チオ硫酸、硫化物等が挙げられる。培地は、炭素源、窒素源、及び硫黄源に加えて、リン源を含んでもよい。リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ピロ燐酸等のリン酸ポリマー等を使用することができる。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチンアミド、ビタミンB12等
のビタミンや、その他の必要物質、例えばアデニン、RNA等の核酸、アミノ酸、ペプトン
、カザミノ酸、酵母エキス等の有機栄養素等を、適当量(痕跡量であってもよい)存在させることができる。これら以外に、必要であれば、少量のリン酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等を加えてもよい。
培養は、L-メチオニンまたはその塩の製造法で使用される細菌の培養に適した条件で実施することができる。例えば、培養は、好気的条件下で16~72時間、または16~24時間実施することができる。培養中の培養温度は、30~45℃、または30~37℃の範囲内に制御することができる。pHは、5~8の間、または6~7.5の間に調節することができる。pHは、無機もしくは有機の酸性またはアルカリ性物質、例えば、尿素、炭酸カルシウム、またはアンモニアガス、を使用することにより調節することができる。
培養後、培地からL-メチオニンを回収することができる。具体的には、菌体外に存在するL-メチオニンを培地から回収することができる。また、培養後、細菌の菌体からL-メチオニンを回収することができる。具体的には、菌体を破砕し、菌体や菌体破砕懸濁物(細胞デブリともいう)等の固形分を除去して上清を取得し、上清からL-メチオニンを回収することができる。菌体の破砕は、例えば、高周波音波を用いた超音波破砕等の周知の方法により実施することができる。固形分の除去は、例えば、遠心分離または膜ろ過により実施することができる。培地や上清等からのL-メチオニンの回収は、例えば、濃縮、晶析、イオン交換クロマトグラフィー、中圧または高圧の液体クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせ等の慣用の技術により実施することができる。
以下、下記の非限定的な実施例により本発明をより正確に説明する。
実施例1:L-メチオニン生産株の構築
メチオニンレギュロンの負の転写調節因子をコードするmetJ遺伝子を欠失させ、且つメチオニンとSAM(S-アデノシルメチオニン)によるフィードバック阻害に対してhomoserine O-succinyltransferase(MetA)を脱感作することにより、L-メチオニンの生合成が正の影響を受けることが知られている(Chattopadhyay M.K. et al., Control of methionine biosynthesis in Escherichia coli K12: a closer study with analogue-resistant mutants, J. Gen. Microbiol., 1991, 137(3):685-691; Usuda Y. and Kurahashi O., Effects of deregulation of methionine biosynthesis on methionine excretion
in Escherichia coli, Appl. Environ. Microbiol., 2005, 71(6):3228-3234)。そこで、モデルL-メチオニン生産株C2691を構築するために、P. ananatis細菌において、metJ遺伝子を欠失させ、且つ変異型metA遺伝子を得た。
また、チオ硫酸からのメチオニンの生合成には、cysM遺伝子にコードされるcysteine synthase Bが必要であることが知られている(Russian Patent No. 2458981 C2; Nakamura
T. et al., Enzymatic proof for the identity of the S-sulfocysteine synthase and
cysteine synthase B of Salmonella typhimurium, J. Bacteriol., 1984, 158(3):1122-1127)。そこで、cysM遺伝子をP. ananatisで細菌で過剰発現させ、チオ硫酸を硫黄源として利用できるモデルL-メチオニン生産株C2691を構築した。
1.1. P. ananatis C2338株(SC17(0)λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)の構築
cysM遺伝子(配列番号5)のプロモーター領域がカセットλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22で置換されたP. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(略称:C2338)を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株(US8383372 B2, VKPM B-9246)をLB液体培地(Sambrook J. and Russell D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間
、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP1(配列番号6)およびP2(配列番号7)を用い、pMW118-attL-kan-attR-pnlp8sd22プラスミド(配列番号8)を鋳型としてPCRを行い、cysM遺伝子のプロモーター領域の組み換え配列を両末端に有するλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22の増幅DNA
断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega
)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地(Sambrook J. and Russell D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd
ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のcysM遺伝子のプロモーター領域がλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22カセットで置換されていることを確認するために、プライマーP3(配列番号9)およびP4(配列番号10)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)λattL-kanR-
λattR-Pnlp8sd22-cysM株(C2338)が得られた。
1.2. P. ananatis C2597株(SC17(0)ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM
)の構築
サイレント遺伝子mdeA(配列番号11)をカセットλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM
で置換したP. ananatis SC17(0)ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(略称:C2597)を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB
液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP5(配列番号12
)およびP6(配列番号13)を用い、C2338株(実施例1.1)から単離した染色体を鋳型
としてPCRを行い、mdeA遺伝子の組み換え配列を両末端に有するλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysMの増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート
上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmdeA遺伝子がλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysMカセットで置換されているこ
とを確認するために、プライマーP7(配列番号14)およびP8(配列番号15)を用いてPCR
解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(C2597)が得られた。
1.3. P. ananatis C2603株(SC17ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)の構築
C2597株(SC17(0) ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得ら
れた染色体DNAを、P. ananatis SC17株(FERM BP-11091)の形質転換に用いた。この目的のために、P. ananatis SC17株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し
、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2597株(実施例1.2)から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体
をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34
℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmdeA遺伝子の置換を確認するために、実施例1.2に記載したようにPCR解析を実施した。その
結果、P. ananatis SC17ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(略称:C2603)が得られた。
1.4. C2603株(SC17ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)からのkan
遺伝子欠失によるP. ananatis C2614株の構築
RSF(TcR)-int-xisプラスミド(US20100297716 A1)を用いてC2603株からカナマイシン
耐性遺伝子(kan)を欠失させた。RSF(TcR)-int-xisはエレクトロポレーション法によりC2603株に導入し、テトラサイクリン(15 mg/L)を含むLB培地に菌体を塗布して30℃で培
養し、C2603/RSF(TcR)-int-xis株を得た。
得られたプラスミド保有株C2603/RSF(TcR)-int-xisを、テトラサイクリン(15 mg/L)
および1 mM IPTGを含むLB培地で純化し、シングルコロニーを得た。次に、50 mg/Lのカナマイシンを含む培地上にシングルコロニーを塗布し、37℃で一晩、振盪(250 rpm)培養
した。カナマイシン感受性株を、RSF(TcR)-int-xisプラスミドを同株から除去するために、10%スクロース(重量比)と1 mM IPTGを含むLB培地上に塗布し、37℃で一晩培養した
。テトラサイクリン感受性のコロニーを選択し、対応する株をC2614とした。
1.5. P. ananatis C2607株(SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の構築
metJ遺伝子(配列番号16)を欠損したP. ananatis SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略称:C2607)を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP9(
配列番号17)およびP10(配列番号18)を用い、pMW118-attL-cat-attRプラスミド(Minaeva N.I. et al., BMC Biotechnol., 2008, 8:63)を鋳型としてPCRを行い、metJ遺伝子の組み換え配列を両末端に有するλattL-catR-λattRの増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35
mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出
現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetJ遺伝子がλattL-catR-λattRカセットで置換されていることを確認するために、プライマーP11(配列番号19)およ
びP12(配列番号20)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(C2607)が得られた。
1.6. P. ananatis C2634株(C2614ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の構築
C2607株(SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得られた染色体DNAを、C2614株(実施例1.4)の形質転換に用いた。この目的のために、C2614株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2607株(実施例1.5)から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのクロ
ラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetJ遺伝子の置換を確認するために、実施例1.5に記載したようにPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis C2614ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(C2634)が得られた。
1.7. P. ananatis C2605株(SC17(0)attL-kanR-attR-Ptac71φ10-metA)の構築
metA遺伝子(配列番号21)のプロモーター領域がカセットλattL-kanR-λattR-Ptac71
φ10で置換されたP. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA株(略称:C2605)を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP13(配列番号22)およびP14(配列番号23)を用い、pMW118-attL-kan-attR-Ptac71φ10プラスミド(配列番号24)を鋳型としてPCRを行い、metA遺伝子のプロモーター領域の組み換え配列を両末端
に有するλattL-kanR-λattR-Ptac71φ10の増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレー
ション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lの
カナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、SC17(0)株の染色体上のmetA遺伝子のプロモーター領域がλattL-kanR-λattR-Ptac71φ10カセットで置換されていることを確認するために、プライマーP15(配列番号25)およびP16(配列番号26)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R)
;92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA株(C2605)が得られた。
1.8. P. ananatis C2611株(SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA)の構築
C2605株(SC17(0)λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA)(実施例1.7)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離し
た。得られた染色体DNAを、SC17株の形質転換に用いた。この目的のために、P. ananatis
SC17株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し
、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2605株から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lの
カナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetA遺伝子のプロモーター領域の置換を確認するために、実施例1.7に記載したようにPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA株(略称:C2611)が得られた。
1.9. P. ananatis C2619株(C2611ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の構築
C2607株(SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)(実施例1.5)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得ら
れた染色体DNAを、C2611株(実施例1.8)の形質転換に用いた。この目的のために、C2
611株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、
菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2607株から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのク
ロラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetJ遺伝子の置換を確認するために、実施例1.5に記載したようにPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis C2611ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略称:C2619)が得られた。
1.10. フィードバック耐性型MetAをコードするmetA遺伝子の変異型アレルを有するP. ananatis株の選抜
C2619株(SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の菌体を、LB液体培地を入れた50 mLフラスコにOD600が0.05になるように接種し、34℃で2
時間、通気(250 rpm)培養した。OD600が0.25となった同株の対数増殖期の細胞培養物をN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)(終濃度25 mg/L)で20分間処理した
。得られた培養物を遠心分離し、新鮮なLB液体培地で2回洗浄した後、グルコース(0.2%)とノルロイシン(600 g/L)を含有するM9寒天プレートに播種した。得られた変異株に
ついて、L-メチオニンの生産能を調べた。L-メチオニン産生能の最も高い株を選択し、その株のmetA遺伝子の塩基配列を決定した。配列解析により、metA遺伝子において、野生型MetAのアミノ酸配列(配列番号27)における34位のアルギニン(Arg)残基のシステ
イン残基への置換(R34C変異)をもたらす変異が見出された。R34C変異を有する変異型MetAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号29に、変異型MetAタンパク質をコードする変異型metA遺伝子の塩基配列を配列番号28に示す。このようにして、P. ananatis SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略称:C2664)を構
築した。
1.11. P. ananatis C2669株(C2634λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C))の構築
C2664株(SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色
体DNAを単離した。得られた染色体DNAを、C2634株(実施例1.6)の形質転換に用いた
。この目的のために、P. ananatis C2634株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養
液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。
菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2664株から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetA遺伝子のプロモーター領域の置換を確認するために、実施例1.7に記載したようにPCR解析を実
施した。その結果、P. ananatis C2634λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C)株(
略称:C2669)が得られた。
1.12. C2669株(C2614ΔmetJ::λattL-catR-λattR λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C))からのkanおよびcat遺伝子欠失によるP. ananatis C2691株の構築
RSF(TcR)-int-xisプラスミドを用いてC2669株(実施例1.11)からカナマイシンお
よびクロラムフェニコール耐性遺伝子(kanおよびcatに相当)を欠失させた。RSF(TcR)-int-xisはエレクトロポレーション法によりC2669株に導入し、テトラサイクリン(15 mg/L)を含むLB培地に菌体を塗布して30℃で培養し、C2669/RSF(TcR)-int-xis株を得た。
得られたプラスミド保有株C2669/RSF(TcR)-int-xisを、テトラサイクリン(15 mg/L)
および1 mM IPTGを含むLB培地で純化し、シングルコロニーを得た。次に、50 mg/Lのカナ
マイシンと35 mg/Lのクロラムフェニコールを含む培地上にシングルコロニーを塗布し、37℃で一晩、振盪(250 rpm)培養した。カナマイシンとクロラムフェニコールの両方に感受性の株を、RSF(TcR)-int-xisプラスミドを同株から除去するために、10%スクロース(重量比)と1 mM IPTGを含むLB培地上に塗布し、37℃で一晩培養した。テトラサイクリン
感受性のコロニーを選択し、対応する株をC2691とした。要するに、C2691株は、mdeAおよびmetJ遺伝子を欠損し、cysMおよびmetA(R34C)遺伝子が導入されている。
1.13. P. ananatis C3208株(SC17(0)λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-C)の構築
PAJ_RS05335遺伝子(配列番号1;略称:C遺伝子)のプロモーター領域がカセットλattL-catR-λattR-Ptac71φ10で置換されたP. ananatis SC17(0)λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-C株(略称:C3208)を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養し
た。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマ
ーP17(配列番号30)およびP18(配列番号31)を用い、pMW118-attL-cat-attR-Ptac71φ10プラスミド(配列番号32)を鋳型としてPCRを行い、C遺伝子のプロモーター領域の組み
換え配列を両末端に有するλattL-catR-λattR-Ptac71φ10の増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、
エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのクロラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養
した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、SC17(0)株の染色体上のC遺伝子のプロモーター領域がλattL-catR-λattR-Ptac71φ10カセットで置換されていることを確
認するために、プライマーP19(配列番号33)およびP20(配列番号34)を用いてPCR解析
(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-C株(C3208)が得られた
。なお、C3208株は、C遺伝子の下流にPAJ_RS05340遺伝子(配列番号 3;略称:E2遺伝子
)を有し、これらの遺伝子は共発現し得る。
1.14. C3293株(SC17(0)ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2)の構築
サイレント遺伝子ybhK(配列番号35)をカセットλattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2
(これは、Ptac71φ10プロモーターの制御下にPAJ_RS05335遺伝子(配列番号1;略称:C
遺伝子)とPAJ_RS05340遺伝子(配列番号 3;略称:E2遺伝子)を含む)で置換したP. ananatis ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2株(略称:C3293)を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一
晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3
回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP21(配列番号36)およびP22(配列番号37)を用い、C3208株(実施例1.13)から単離した染色体を鋳型としてPCRを行い、ybhK遺伝子の組み換え配列を両末端に有するλattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2の増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega
)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のybhK遺伝子
がλattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2カセットで置換されていることを確認するために
、プライマーP23(配列番号38)およびP24(配列番号39)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2株(C3293)が得られた。
1.15. C3568株(C2691ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2)の構築
C3293株(SC17(0)ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2)から、EdgeBio PurEl
ute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得られた染色体DNAを、C2691株の形質転換に用いた。この目的のために、C2691株(実施例1.
12)をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C3293株(実施例1.14)から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出
現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のybhK遺伝子の置換を確認するために、実施例1.14に記載したようにPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis C2691ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2株(略称:C3568)が得られた。
1.16. P. ananatis株における変異型rarD遺伝子の過剰発現
まず、 E. coli固有のnlpD遺伝子の構成的プロモーターを含む発現ベクターpMIV-Pnlp
を構築した。プライマーP25(配列番号40)およびP26(配列番号41)を用いE. coli MG1655株(ATCC No. 47076)の染色体DNAを鋳型とするPCRによりDNA断片を得た。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動で精製した後、単離した(Qiaquick Gel Extraction Kit,
Qiagen)。このDNA断片を制限酵素PaeIおよびSalI(Fermentas)で処理し、PaeI/SalIで切断したベクターpMIV-5JS(RU2458981 C2)にクローニングした。こうして、pMIV-Pnlp
ベクターを構築した。
次に、プライマーP27(配列番号42)およびP28(配列番号43)を用いP. ananatis SC17(0)株(FERM BP-11091)の染色体DNAを鋳型とするPCRにより野生型rarD遺伝子を得た。得られたDNA断片を上記のように精製および単離し、制限酵素SalIおよびXbaI(Fermentas)で処理し、SalI/XbaIで切断したベクターpMIV-Pnlpにクローニングした。こうして、
野生型rarD遺伝子を保有するpMIV-Pnlp-rarDプラスミドが得られた。
P. ananatis SC17株をpMIV-Pnlp-rarDプラスミドで形質転換し、1 g/Lのα-メチル-
DL-メチオニンに耐性の株を選択した。この耐性株が保有するプラスミド上のrarD遺伝子の塩基配列を解析したところ、野生型rarD遺伝子(配列番号44)の塩基配列における256~258位置のアスパラギン(Asn, N)残基をコードする「aac」コドンがアスパラギン酸
(Asp, D)残基をコードする「gac」コドンに置換されていることが判明した。野生型rarD遺伝子の塩基配列におけるこの置換により、野生型RarDタンパク質のアミノ酸配列(配
列番号45)における86位のアスパラギン残基がアスパラギン酸残基に置換された(N86D変異)。この変異型RarDタンパク質(配列番号47)をコードする変異型rarD遺伝子(配列番号46)を保有するpMIV-Pnlp-rarD(N86D)プラスミドを上記株から単離した。
pMIV-Pnlp-rarD(N86D)プラスミドを通常のエレクトロポレーション手順によりP. ananatis C2691およびC3568株(実施例1.12および1.15)に導入した。こうして、P. ananatis C2691/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)およびC3568/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)株を構築した。
実施例2:L-メチオニンの生産
P. ananatis C2691/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)およびC3568/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)株をそれぞれ32℃で18時間、LB液体培地で培養した。その後、得られた培養物0.2 mLを20×200 mm試験管中の発酵培地2 mLに接種し、250 rpmの回転式振盪機上で32℃で48時間、グルコー
スが消費されるまで培養した。発酵培地の組成を表1に示す。
Figure 0007444164000001
培養後、蓄積したL-メチオニンの量をAgilent 1260 amino-acid analyzerで決定した。4つの独立した試験管発酵の結果(平均値±標準偏差)を表2に示す。表2から分かるように、改変株P. ananatis C3568/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)は、親株P. ananatis C2691/pMIV-Pnlp-rarD(N86D)と比較して、より多い量(g/L)のL-メチオニン(Met)を蓄積することができた。
Figure 0007444164000002
また、別途、ybhK遺伝子の欠損なしでP. ananatisのL-メチオニン生産株にCE2遺伝子を搭載したプラスミドをすることによってもL-メチオニンの生産が増強されることを確認した(データ示さず)。
本発明をその好ましい態様を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更や等価物の採用が可能であることは当業者に明らかであろう。
本発明の方法は、細菌の発酵によりL-メチオニンを製造するのに有用である。

Claims (12)

  1. L-メチオニンを製造する方法であって、
    (i)L-メチオニンを生産する能力を有する細菌を培地で培養して培地もしくは該細菌
    の菌体、またはその両者中にL-メチオニンを生産および蓄積させること、および
    (ii)培地もしくは菌体、またはその両者からL-メチオニンを回収すること
    を含み、
    前記細菌が、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌であり、
    前記細菌が、第1遺伝子および第2遺伝子を過剰発現するように改変されており、
    前記第1遺伝子が、下記からなる群より選択され:
    (1A)配列番号1に示す塩基配列を含むDNA;
    (1B)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (1C)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1~30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって
    、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
    (1D)配列番号2に示すアミノ酸配列全体に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌に
    より生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
    (1F)配列番号1に示す塩基配列全体に対して90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの
    量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
    (1G)遺伝暗号の縮重による配列番号1の変異体塩基配列を含むDNA;
    前記第2遺伝子が、下記からなる群より選択される、方法:
    (2A)配列番号3に示す塩基配列を含むDNA;
    (2B)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (2C)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1~30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって
    、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
    (2D)配列番号4に示すアミノ酸配列全体に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
    を含むタンパク質をコードするDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌に
    より生産されるL-メチオニンの量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
    (2F)配列番号3に示す塩基配列全体に対して90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNAであって、細菌において過剰発現させた際に該細菌により生産されるL-メチオニンの
    量が非改変株で観察される量と比較して増加する性質を有するDNA;
    (2G)遺伝暗号の縮重による配列番号3の変異体塩基配列を含むDNA。
  2. 前記第1遺伝子および第2遺伝子のそれぞれが、該遺伝子のコピー数を増加させること、該遺伝子の発現制御領域を改変すること、またはそれらの組み合わせにより過剰発現し、以て前記第1遺伝子および第2遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細菌が、エシェリヒア(Escherichia)属またはパントエア(Pantoea)属に属する細菌である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記細菌が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)またはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記細菌が、さらに、rarD遺伝子を過剰発現するように改変されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記rarD遺伝子が、該遺伝子のコピー数を増加させること、該遺伝子の発現制御領域を改変すること、またはそれらの組み合わせにより過剰発現し、以て前記rarD遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、請求項5に記載の方法。
  7. 前記細菌が、さらに、システインシンターゼをコードする遺伝子を過剰発現するように改変されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記システインシンターゼをコードする遺伝子が、該遺伝子のコピー数を増加させること、該遺伝子の発現制御領域を改変すること、またはそれらの組み合わせにより過剰発現し、以て前記システインシンターゼをコードする遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、請求項7に記載の方法。
  9. 前記システインシンターゼをコードする遺伝子が、cysM遺伝子である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記細菌が、さらに、MetAタンパク質をコードするmetA遺伝子を含むように改変されており、
    前記MetAタンパク質が、下記(a)、(b)または(c)に記載のタンパク質:
    (a)配列番号27に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号27に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、
    挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、ホモセリントランスクシニラーゼ活性を有するタンパク質;
    (c)配列番号27に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を
    含み、且つ、ホモセリントランスクシニラーゼ活性を有するタンパク質
    であり、
    前記MetAタンパク質のアミノ酸配列が、野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における34位のアルギニン残基がシステイン残基で置換される変異を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記細菌が、さらに、metJ遺伝子の発現が弱化するように改変されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記metJ遺伝子が、欠失している、請求項11に記載の方法。
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