JP6185713B2 - 高乳化性卵白加水分解物 - Google Patents

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本発明は、高い乳化性、乳化安定性及び加熱凝固性を有する卵白加水分解物及びその製造方法に関する。また当該卵白加水分解物を含有する乳化剤および乳化安定剤、ならびに各種加工食品に関する。
鶏卵は古くから食品および食品素材(加工卵)として利用されている。人類は数多くの卵料理や卵利用食品を開発し、豊かな食生活に役立ててきた。これは、卵が優れた栄養性を有することと、卵が調理や食品加工に適する種々の機能特性を有するためである。
食品分野で利用される加工卵の主要な機能特性としては、卵白の加熱凝固性と起泡性、および卵黄の乳化性があげられる。卵に加熱、起泡、乳化などの物理操作を加えると、その卵白蛋白質あるいは卵黄リポ蛋白に構造変化が起こり、それぞれの機能特性が発現する。
これらの機能特性は加工卵の水を保持する特性、空気を保持する特性、および油を保持する特性として現される。現在、食品分野においては、卵白の加熱凝固性が主に水産練り製品、畜産練り製品、麺などに、卵白の起泡性がケーキやメレンゲなどに、卵黄の乳化性はマヨネーズやドレッシングなどに利用されている。
卵白は水分90%、蛋白質10%と微量のビタミンやミネラルからなり、脂質は含まない。卵白は約40種類の蛋白質からなり、その中でもオボアルブミンが54%と主要な蛋白質で、次いでオボトランスフェリンが12%、オボムコイドが11%、G2グロブリンとG3グロブリンがそれぞれ4%。オボムチンが3.5%、リゾチームが3.4%、オボインヒビターが1.5%、オボグリコプロテインが1.0%含まれている。それら卵白蛋白質の栄養価は高く、そのアミノ酸スコアーは100で、蛋白質利用効率(PER)や生物価(BV)%は母乳のそれら値に匹敵する。
また卵白の加工卵としての機能は、優れた加熱凝固性と起泡性があるが、乳化性はほとんどない。
従来、分子内に親水基と疎水基を有する両親媒性物質が優れた乳化性を有することが知られている。食品の蛋白質では、ミルクカゼインや小麦グルテンが両親媒性物質として知られ、強い乳化性を示す。これら蛋白質は分子表面の親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸のバランスがよく、優れた乳化性を示す。一方、卵白蛋白質も親水性や疎水性アミノ酸を含む両親媒性物質である。しかし、通常は分子内部に疎水性アミノ酸が、分子表面に親水性アミノ酸が局在し、安定な水溶性蛋白質としてコロイド状態を形成している。そのため乳化性はほとんどない。しかし、卵白蛋白質が変性し分子内の親水性と疎水性アミノ酸の局在性がくずれた場合、乳化性が生じる可能性がある。
例えば卵白蛋白質のオボアルブミンを0.5%以下の希薄な濃度やその等電点から離れたアルカリpH、あるいは低イオン強度で加熱ゲル化しない条件で変性させ、その内部の疎水性を表面に露出させ、オボアルブミンの表面疎水性を高めると、起泡性や乳化性が格段に高まることが報告されている(非特許文献1)。
以上の知見から、卵白蛋白質も加熱変性させれば、蛋白質分子表面の疎水性が高まり、優れた乳化性が得られる可能性がある。しかし、通常の卵白を加熱すると60℃から白濁し始め、柔らかく凝固が始まり、80℃以上で固くゲル化する。卵白蛋白質の加熱変性はゲル化を伴うので、卵白ゲルをすりつぶしたとしても、蛋白質は不溶化しているので、乳化力の向上は期待できない。
近年、卵白蛋白質をプロテアーゼで加水分解して、消化吸収性のよいペプチドや生理活性を有するペプチドの調製が注目されている(特許文献1〜3)。この場合、卵白蛋白質は加水分解されて加熱しても凝固性がなく、そこから得られる水溶性ペプチドは両親媒性構造による乳化性が生じる。しかし、その乳化性は強いものではなく、せいぜい加水分解前の卵白液の2倍程度で、しかも乳化安定性が悪い。
このような卵白の特徴に加え、加工卵としては卵黄の需要が多く、マヨネーズや洋菓子に使用され、その消費量は増加傾向にある一方、水産練り製品の需要低迷に伴い、卵白の消費量は低下し、現在多量の余剰卵白が冷凍保存されている。その冷凍保存コストは鶏卵加工業者の大きな負担であり、卵白の新しい利用開発が望まれている。
特開2005−117915号公報 特開2007−167041号公報 特許第4138889号公報
Kato, A et al.: J. Agric. Food Chem., 33, 931, 1985
卵白の機能性を改変して新たに乳化性や乳化安定性を付与した卵白加工品及びその製造方法、卵白加工品を含有する乳化剤や乳化安定剤、またそれら使用した加工食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討し、卵白液をプロテアーゼで加水分解する際に、加熱凝固性を完全に消失させるほどに分解すると、乳化性はそれほど強くなく、加熱凝固性を弱いながらも若干残す程度に分解すると、意外にも驚くべき乳化性と乳化安定性が得られる事を見出し、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
[1]卵白をプロテアーゼを用いて加水分解することにより得られる卵白加水分解物であって、当該卵白加水分解物に対して9倍量の0.4Mトリクロロ酢酸(TCA)を加えて沈殿させたときの沈殿物の乾燥重量が卵白を同様に処理した時の乾燥重量の60%以上であることを特徴とする卵白加水分解物。
[2]プロテアーゼがBacillus属の菌体より抽出されるプロテアーゼである[1]の卵白加水分解物。
[3]当該卵白加水分解物を等量の油で乳化させ、乳化直後及び1時間経過後の乳化液を0.1%SDS液で200倍希釈した時の吸光度(500nm)が0.1以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の卵白加水分解物。
[4]有効成分として[1]〜[3]のいずれか1項に記載の卵白加水分解物を含有することを特徴とする乳化剤。
[5]有効成分として[1]〜[3]のいずれか1項に記載の卵白加水分解物を含有することを特徴とする乳化安定剤。
[6][1]〜[3]のいずれか1項に記載の卵白加水分解物を配合することを特徴とする加工食品。
[7]卵白をプロテアーゼを用いて45〜70℃で0.5〜1時間、pH6〜9で加水分解する工程を含む卵白加水分解物の製造方法。
[8]さらに加水分解された卵白を85〜95℃で10〜30分間加熱する工程を含む[7]に記載の製造方法。
本発明の卵白分解物は、苦味が少なく風味が良いだけでなく、乳化性、乳化安定性および熱凝固性を併せ持ち、安全性の高い天然物由来の素材として飲食品、飼料、化粧品、医薬品等に有利に利用できる。
また、卵白ベースのマヨネーズやドレッシング、卵白アイスクリームや卵白ムースなどの調製が可能となり、無脂肪又は低脂肪、低コレステロールで高蛋白質の乳化食品を製造することができる。
本発明における乳化剤は、乳化性にすぐれているだけでなく、安全性がきわめて高いので、食品、飲料、飼料、魚介用や観賞魚用餌料、化粧品、医薬品その他、乳化性を必要とする各種対象物の乳化剤として単独であるいは他の乳化剤とともに安心して使用することができる。
卵白の破断変形曲線を示す。 試料1の破断変形曲線を示す。 試料2の破断変形曲線を示す。 試料3の破断変形曲線を示す。 試料4の破断変形曲線を示す。 ポリアクリルゲル電気泳動における調製例1で調製した卵白加水分解物の蛋白質の分子量分布を示す。 ポリアクリルゲル電気泳動における調製例2及び4で調製した卵白加水分解物の蛋白質の分子量分布を示す。
本発明は、卵白をプロテアーゼで加水分解することにより得られ、得られた卵白加水分解物に対して9倍量の0.4Mトリクロロ酢酸(TCA)を加えて沈殿させたときの沈殿物の乾燥重量が卵白を同様に処理した時の乾燥重量の60%以上であることを特徴とする卵白加水分解物に関する(以下本発明の卵白加水分解物と省略することもあります)。
本発明において、卵白は、通常は、鶏卵から分離された生卵白液、加熱殺菌卵白液、冷凍卵白液、殺菌冷凍卵白液、粉末卵白等が挙げられる。好ましくは、加工性の点から生卵白液、加熱殺菌卵白液の利用が好ましい。また、高圧ホモジナイザー処理などで、卵白液を均質液化し、加熱凝固温度を高めた卵白液の利用は、酵素加水分解温度の観点からも好ましい。
本発明において、プロテアーゼは、ペプシン、(キモ)トリプシン、カテプシン等の動物起源の酵素、パパイン、ブロメリン、フィシン等の植物起源の酵素、各種微生物由来のプロテアーゼ等の既知の酵素が1種又は2種以上組み合わせて使用される。なお、卵白中にはオボムコイド、オボインヒビター、オボスタチン等のプロテアーゼインヒビターが存在するため、これら卵白蛋白質のプロテアーゼ阻害活性が働きにくい温度、すなわち55〜75℃で働く耐熱性プロテアーゼの利用が好ましい。
なかでも微生物由来のプロテアーゼが好ましく、苦みアミノ酸やペプチドの生成が少ないことから、Bacillus属の菌体より抽出された耐熱性プロテアーゼがより好ましい。
本発明で用いる菌体からのプロテアーゼの抽出方法については特に限定されるものでなく、一般的な酵素抽出法が適用でき、市販の各種プロテアーゼ製剤を用いても良い。
プロテアーゼの添加量は、酵素の種類と酵素活性によって適宜決められるが、例えば市販のプロテアーゼ製剤で、通常のミルクカゼインを基質として測定される酵素活性が50,000〜100,000単位/gの酵素剤の場合、所望の分解の程度を得る観点から、全卵白重量に対して、通常0.1〜0.8重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%、より好ましくは0.1〜0.2重量%を添加する。
例えば、Bacillus stearothermophilusの菌体より抽出された耐熱性プロテアーゼ製剤(サモアーゼPC10天野エンザイム製、90,000単位/g)の場合は、全卵白重量に対して、通常0.1〜0.8重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%、より好ましくは0.1〜0.2重量%を添加する。
本発明において、卵白のプロテアーゼによる加水分解処理は以下のように行われる。
卵白にプロテアーゼを添加する温度は、雑菌の増殖温度をさけて、卵白プロテアーゼインヒビターが働きにくい温度でかつ卵白の加熱凝固が始まらない温度、通常は45〜60℃、好ましくは50〜60℃、より好ましくは52〜57℃でプロテアーゼを添加し、10〜30分間の予備加水分解を行い、卵白蛋白質の加熱凝固耐性を高めた後、卵白液温を60〜80℃、好ましくは60〜70℃、より好ましくは63〜67℃まで加温し、使用する耐熱性プロテアーゼの至適温度で加水分解を行うことが好ましい。
加熱の手段としては、公知の方法を適用できるが、ジャケット付きタンク、プレートヒーター、シェルアンドチューブ式熱交換器などを用いた間接加熱方式、およびジュール加熱式装置を用いた直接加熱方式などを使用することができるが、卵白液温の緻密な制御の観点からシェルアンドチューブ式熱交換器やジュール加熱装置を用いるのが好ましい。
加水分解のpHは、用いる酵素の至適pHで行えばよいが、卵白蛋白質の溶解性を高めるためにも等電点付近(pH5前後)のpHをさけ、かつ卵白蛋白質のアルカリ変性を抑制する観点から、通常pH6〜9、好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは7〜8で行う。
pHの調節は、通常、塩酸、炭酸、リン酸、酢酸、クエン酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが使用され、好ましくはクエン酸やリン酸およびそれらのナトリウム塩の利用が挙げられる。
加水分解の処理時間としては、乳化性、乳化安定性および加熱凝固性の観点から、用いる酵素の至適温度で、通常0.5〜4.0時間、0.5〜2時間が好ましく、0.5〜1時間がより好ましい。
具体的には、予め温めた卵白を52〜57℃で加温しプロテアーゼを添加し、10〜30分加水分解し、さらに63〜67℃に温度を上げて、0.5〜1時間加水分解する。その後、約90℃まで加温し酵素を失活させて本発明の卵白加水分解物を得る方法が挙げられる。
このようにして得られた本発明の卵白加水分解物は、白色のクリーム状又はスラリー状の形態を有する。本発明の卵白加水分解物は、さらに高圧化で均質化処理を施してもよく、またはフリーズドライ、スプレードライ等の乾燥処理を施して粉末状または顆粒状にした乾燥卵白加水分解物も本発明に包含される。
本発明の卵白加水分解物は、当該卵白加水分解物に対して9倍量の0.4Mトリクロロ酢酸(TCA)を加えて沈殿させたときの沈殿物の乾燥重量が卵白を同様に操作した沈殿物の乾燥重量の60%以上であることを特徴とする。
具体的には、本発明の卵白加水分解物1重量部に0.4M TCA9重量部を加えて沈殿させた場合には、その沈殿物の乾燥重量は、卵白の全沈殿物の乾燥重量に対して、60重量%以上、好ましくは、65〜85重量%、より好ましくは70〜80重量%である。ここで指標となる卵白は卵白液が挙げられる。
このような条件で沈殿するのは、分子量約5,000以上の卵白蛋白質の加水分解物である。この沈殿物の量が少ないほど低分子化されていることを意味し、本発明の卵白加水分解物は、卵白蛋白質の60重量%以上、好ましくは、65〜85重量%、より好ましくは70〜80重量%の卵白蛋白質を含有し、90℃での加熱ゲル化性が残存し自立するゲルが得られ、ゲル圧縮試験機でゲルの破断強度の測定が可能である。
当該沈殿量が前記特定範囲に調整されていることにより、優れた乳化性、乳化安定性および加熱凝固性が得られる。
また本発明の卵白加水分解物が乾燥品の場合には、該乾燥品1重量部に水9重量部を加えたものを上記測定に使用する。または比較の卵白を粉末卵白などの乾燥品を使用して、卵白加水分解物及び粉末卵白を9倍量の水などの溶媒に溶解して試料として測定することができる。
さらに水分量が90%未満の卵白加水分解物においては、その水分量に応じて0.4MのTCAの量を適宜変更して測定する。または水分を除去して得られた乾燥品1重量部に水9重量部を加えたものを上記測定に使用する。
沈殿物量は、以下の方法で測定することができる。
本発明の卵白加水分解物1gに0.4M濃度のトリクロロ酢酸(TCA)溶液9gを加えてよく撹拌した後、10,000 x gの遠心力で20分間遠心分離する。その上清は廃棄し、沈殿物を回収し、乾燥して、得られた乾燥物重量を測定する。対照として用いた卵白液1g中の0.4MTCA沈殿物乾燥重量を100%として、卵白加水分解物の0.4モル TCA沈殿物乾燥重量の割合を計算する。
本発明の卵白加水分解物は、公知の方法に従い還元剤(2−メルカプトエタノール)存在下、ポリアクリルアミドゲル濃度5〜20%のグラジエントゲルでSDS−PAGEを行い測定した分子量、5,000〜45,000ダルトンを示す多種の蛋白質加水分解物の混合物であり、卵白蛋白質のオボトランスフェリンが完全に消失し、オボアルブミンは40%以上消失して低分子化された蛋白質分解物を含有する。好ましくは、分子量37,000〜20,000ダルトンと15,000〜5,000ダルトンの範囲に蛋白質分解物が多い方がよい。
分子量がこの範囲の蛋白質を含む卵白加水分解物であれば、加熱凝固性を有し、優れた乳化性、乳化安定性が得られる。
本発明の卵白加水分解物の製造方法は、卵白をプロテアーゼを用いて55〜65℃で0.5〜4.0時間、pH6〜9で加水分解する工程を含む。
さらに加水分解された卵白を85〜95℃で加熱する工程を含む。
このような工程を得て得られた卵白加水分解物は、加熱凝固性を有し、優れた乳化性、乳化安定性を有する。
上記加水分解の条件の定義は上述と同じものが適用される。
具体的には、本発明の製造方法は、加水分解反応中の雑菌の増殖をさけて、卵白プロテアーゼインヒビターが働きにくくし、かつ卵白の加熱凝固が始まらない温度するために、プロテアーゼを添加する前に卵白を45〜60℃に加温する工程、上記卵白の加水分解を行う工程、さらに殺菌と酵素を失活させるために、85〜95℃で10〜30分間の加熱処理をする工程等を含む。
本発明の卵白加水分解物は自立性の加熱ゲルを形成する。通常の卵白液加熱ゲルの破断強度は、70〜100g/cmであるが、本発明の卵白加水分解物は、5〜30g/cmであり、好ましくは5〜20g/cmであり、5〜10g/cmがより好ましい。
加熱ゲルの破断強度は、耐熱性ケーシングチューブを用いてソーセージ状に調製した自立性のあるゲルを一定の厚さに切り、食品ゲル圧縮試験機で円筒形プランジャーを用いて、一定速度でゲルを圧縮するとき、ゲル組織を破壊するに必要な力(g/cm)と定義され、ゲルの固さの指標となる。この値が大きいほど固いゲルである。
加熱ゲルの破断強度は、通常の食品ゲル圧縮試験機を用いて、ゲルの圧縮変形率を横軸に、プランジャーにかかる応力(荷重)を縦軸にプロットしたゲル破断曲線から求めることができる。
例えば、卵白加水分解物を塩化ビニリデン製ケーシングチューブ(折幅30mm)に充填し、90℃で10分〜30分程度加熱後に冷却した試料を食品ゲル圧縮試験機で円筒形プランジャーを用いて破断曲線を測定し、ゲル組織を破壊するに必要な力(g/cm)を破断強度として測定する。
本発明の卵白加水分解物は、Pearce(Pearce KN and Kinsella JE: J. Agric. Food Chem., 26, 716−723, 1978)の方法に従い、卵白加水分解物と等量のサラダ油を激しく上下に震盪して乳化させ、乳化直後及び1時間経過後に乳化液の底部から試料を採取し、0.1%SDS溶液で200倍希釈した乳化液の吸光度(500nm)が0.1以上であることを特徴とする。
乳化活性は、本発明の卵白加水分解物とサラダ油等の油を等量加え乳化させ、乳化液の調製直後のサンプルを0.1%SDS溶液で200倍希釈し(0.5%乳化液)、蛋白加水分解物を溶解させ、サラダ油をミセル化させた時の濁度(波長500nmにおける吸光度)で示される。この吸光度が高いほど乳化活性が高いことを意味する。
上記卵白加水分解物が乾燥品の場合には、該乾燥品1重量部に水9重量部を加えたものを等量のサラダ油の油で乳化させて同様に測定することができる。また水分量が90%未満の卵白加水分解物は上記で述べたようにして測定することができる。
乳化安定性は、乳化液を一定温度で一定時間静置し、その乳化液の最底部からサンプルを採取し、同様に調製した0.5%乳化液の濁度で評価する。この濁度が高いほど、または乳化直後の濁度に対する比率が大きいほど、あるいは調製後、長時間に渡り高い濁度を維持するほど乳化安定性が高いことを意味する。
また油は特に限定されないが、サラダ油、コーン油、綿実油等の植物油が好ましい。
吸光度500nmは公知の方法によって測定することができる。
本発明の卵白加水分解物は、乳化液の調製直後及び室温で1時間後に乳化液の底部から試料を採取し、0.1%SDS溶液で200倍希釈した吸光度が通常は0.1以上であり、好ましくは0.15以上であり、0.2以上がより好ましい。
本発明において乳化剤は、本発明の卵白加水分解物そのものであってもよく、有効成分として含有すれば他の添加剤を含有してもよい。また他の乳化剤を含有してもよい。
上記他の添加剤としては、卵白、大豆蛋白質、カゼイン、乳蛋白質、血漿蛋白質、コラーゲン、ゼラチン等の蛋白質素材、カラギーナン、デキストリン等の増粘多糖類、亜硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の塩類、砂糖、デンプン等の糖類、調味料、リン酸塩等が挙げられる。
また他の乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の合成乳化剤、また、ダイズレシチンや卵黄レシチン、キラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの天然物乳化剤が挙げられる。
本発明における乳化剤は、乳化性にすぐれているだけでなく、安全性がきわめて高いので、食品、飲料、飼料、魚介用餌料、化粧品、医薬品その他乳化性を必要とする各種対象物の乳化剤として単独であるいは他の乳化剤とともに安心して使用することができる。
本発明における乳化剤の各種対象物への添加量は特に限定されるものではない。
例えば、本発明の卵白加水分解物(乾燥重量)として、食品100重量部に対して1〜20重量部添加するのが好ましく、1〜10重量部添加するのがより好ましい。
また本発明において乳化安定剤は、本発明の卵白加水分解物そのものであってもよく、有効成分として含有すればデンプンやデキストリン、ゼラチンやコラーゲン、脱脂粉乳や乳清蛋白質など他の食品素材を含有してもよい。また、アラビアガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、ローカストビーンガムなど他の増粘安定剤を含有してもよい。
本発明における乳化安定剤の各種対象物への添加量は、上記乳化剤と同じ量が挙げられる。
本発明の卵白加水分解物を配合した加工食品も本発明に包含される。
本発明における加工食品としては、卵白加水分解物の有する乳化性、乳化安定性および加熱凝固性を利用した加工食品が挙げられる。
例えば、マヨネーズ、ドレッシング、アイオリソース、オランデールソースなどの調味料、アイスクリーム、ムース、ヨーグルト、ゼリーなどのデザート類、ケーキ、パン、シュークリーム、クッキーなどの焼成製品、スープやドリンクなどの飲料、カレーやシチュー、ハムやソーセージ、蒲鉾やちくわなどの食品が挙げられる。
特に、本発明の卵白加水分解物は、通常卵白にはなく卵黄にはある乳化作用を有することから、全卵の代替物として各種加工食品に広く応用することができる。
また、本発明の卵白分解物にDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸を有する機能性脂質やステロイドホルモンやエイコサノイド、脂溶性ビタミンやカロテノイドやレシチンやコエンザイムQ10などの脂溶性生理活性物質などを任意に配合できる。また、本発明の卵白分解物は母乳の蛋白質に匹敵する良質な栄養性を有し、かつ乳化安定化作用を有することから、マルチビタミンやミネラル、食物繊維や機能性脂質を混合乳化し、長期に保存にも安定な完全栄養サプリメント食品にも適用できる。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
調製例1 卵白加水分解物の調製(加水分解程度の検討)
卵白液(pH9.0)3Lに対して10%クエン酸溶液(24ml)を添加しpH7.5に調整したもの各500gを55℃に加温し、耐熱性の蛋白分解酵素(サモアーゼPC10F:90,000単位/g天野エンザイム(株))をそれぞれ0.1%、0.2%、0.4%、0.8%添加し、55℃で10分間撹拌しながら酵素分解を行った。次いで、卵白液の温度を65℃に上げて、さらに30分間撹拌しながら酵素分解を行った後、直ちに卵白液温を90℃まで上げて10分間保持し酵素失活を行った。酵素失活後の卵白加水分解物をそれぞれ撹拌均質化して、卵白加水分解物試料1〜4とした。なお、卵白液に対して酵素を添加しないで、同様の操作を行い、加熱卵白試料とした。また、さらに加水分解の程度を上げるため、上記のサモアーゼ添加量0.8%で別に調製した卵白加水分解試料4に対して、液温を40℃に下げ、天野プロテアーゼP(300,000単位/g)を0.5%添加し、pH7でさらに1時間加水分解を進めた。その反応液を90℃で10分加熱して酵素失活したものを卵白加水分解物試料5とした。
試験例1 乳化性の測定
調製例1で調製した卵白加水分解物1〜5の試料と加熱卵白試料、および生卵白液のそれぞれ10gとサラダオイル10gを50ml容量のプラスチック製キャップ付き遠心チューブに入れて、激しく上下に100回振ることにより乳化させた。乳化直後および静置60分後、120分後、および240分後に各遠心チューブの底から乳化液を0.5ml採取し、0.1%SDS溶液で200倍希釈したのち、吸光度500nmで濁度を測定した(Pearce KN and Kinsella JE: J. Agric. Food Chem., 26, 716−723, 1978)。なお、水10gとサラダオイル10gを乳化させたものを対照として用いた。結果を表1に示す。
本試験法で乳化力は、乳化直後すなわち静置0分の濁度(吸光度500nm)で評価する。すなわち、チューブの底から採取した乳化液に油が多いほど、0.1%SDS存在下では多くのミセルを形成し濁度が高くなる。蒸留水には乳化力は無く、それ以外の試料は、程度は若干異なるが油を保持する力すなわち乳化力を有した。また、乳化安定性は乳化液を静置し、その底部から経時的に採取した乳化液中の油量を濁度の値として評価できる。生卵白や加熱卵白および試料5では60分の静置後以降、濁度はほとんど消失し、乳化安定性がないことが示された。一方、試料1〜4は4時間の静置でも濁度はほとんど変化なく、優れた乳化安定性を有する事が示された。
また、乳化物の目視観察の結果では、生卵白や加熱卵白および試料5では乳化2時間後から乳化物表面に油の分離が見られたが、試料1〜4の乳化物は1日後でもそれら乳化物の表面に油の分離が見られなかった。
試験例2 加熱ゲル化性の評価
調製例1の工程中、65℃で20分間酵素分解した各卵白液から約30g採取し、直ちにそれぞれを折幅30mmのポリ塩化ビニリデン製ケーシングチューブ(クレハプラスチック株式会社 DB577R)に詰め、90℃に設定した温水中に浸けて、液温が90℃になったのを確認し10分間保持した。その後、流水中で冷却し、加熱ゲル化性測定用の試料1〜4とした。なお、対照試料としては卵白液を同様の加熱条件で凝固させたものを用いた。なお、調製例1で調製した試料5の天野プロテアーゼP処理後の加水分解液約30gも同様にケーシングチューブに詰め、90℃まで加熱し10分間保持した後、同様に冷却し、加熱ゲル化性測定用の試料5とした。
調製した加熱ゲル化性測定用試料1〜4および対照試料のケーシングチューブ両端をカッターナイフで切り落とし、さらにチューブに切れ目を入れてソーセージ状の加熱ゲルを取り出した。この卵白ゲルを厚さ10mmに切り、その円筒ゲルが自立するか調べた。自立するゲルについては、食品ゲル圧縮試験機(テキソグラフ)で断面積1.0cmの円筒形プランジャーを用い、プランジャー降下速度0.8mm/秒の条件で破断変形曲線を調べ、それぞれのゲルの破断強度を求めた。対照の卵白ゲル、調製した酵素添加量0.1%、0.2%、0.4%、および0.8%(試料1〜4)のゲルの破断変形曲線を図1〜図5に示す。また、それぞれの加熱ゲルの破断強度を表2に示す。なお、調製例1で調製した卵白加水分解物試料5は、同様に90℃で10分間加熱してもゲル化せず自立するゲルが得られなかったため測定できなかった。
試験例3 SDS−PAGEによる分子量測定
調製例1で調製した卵白加水分解物試料1〜5並びに加熱卵白試料および対照試料(生卵白液)を用い、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下でのポリアクリルゲル電気泳動(PAGE)で、それぞれの蛋白質の分子量分布を調べた。電気泳動装置はATTO株式会社のAE7350で、ゲルは同社の既製ゲルであるc−PAGEL(5〜20%)グラジエンドゲルを用い、Laemnliらの方法(Nature, 227,680−685 (1970))に準じて行った。なお、試料は蛋白質濃度0.33%にそろえて調製し、ゲルの各レーンに2μLづつアプライし、21mAで30分間泳動後、クマシーブリリアントブルー色素で染色した。
結果を図6に示す。卵白液の蛋白質は高分子側から分子量7.7万のオボトランスフェリン、分子量4.5万のオボアルブミン、および分子量1.43万のリゾチームに由来する明確な染色バンドが観察された。一方、加熱卵白試料は同様の蛋白質に由来する染色バンドが見られるが、染色像が薄くぼやけた。卵白加水分解物試料1〜4は卵白蛋白質のオボトランスフェリンが完全に消失し、オボアルブミンも50%以上消失し、代わりに分子量3.7万から2万の間と1.0〜1.5万に特徴的な数本の加水分解物由来の染色バンドが現れた。加水分解程度がもっとも高い試料5は染色バンドが見られなかった。
調製例2 卵白加水分解物の大量調製1
温水循環ジャケットタンク(200L容量)で卵白液(pH7.8)100Kgを加温し、55℃でサモアーゼPC10を200g添加溶解して10分間撹拌した。次いで液温を65±2℃に上げて、30分間撹拌した。その後、液温を95±2℃に5分間保持して加熱殺菌を兼ねて酵素の失活を行った。そして、プロテーゼ処理加水分解卵白をホモミキサーで撹拌して均質化し、卵白加水分解物97.2Kgを調製した(試料6)。
調製例3 卵白加水分解物の大量調製2
温水循環ジャケットタンク(200L容量)をバランスタンクとして、シェル&チューブ式熱交換器STD型(岩井機械)に対して卵白液(pH8.5)200Kgを時間150Kgの流量で循環させ、バランスタンク内の液温が55℃になった時にサモアーゼPC10を200g添加溶解して、55±2℃を保持し10分間循環させた。その後、速やかに液温を65℃に上昇させ、65±2℃を保持して、30分間循環させた。最後に、液温を95±2℃に5分間保持して加熱殺菌を兼ねて酵素の失活を行った。そして、直ちに冷却して卵白加水分解物193Kgを調製した(試料7)。
調製例4 卵白加水分解物の大量調製3
温水循環ジャケットタンク(200L容量)をバランスタンクとして、ジュール加熱式殺菌装置(岩井機械)に対して卵白液(pH8.5)200Kgを時間150Kgの流量で循環させ、バランスタンク内の液温が55℃になった時にサモアーゼPC10を200g添加溶解して、55±2℃を保持し10分間循環させた。その後、速やかに液温を65℃に上昇させ、65±2℃を保持して、30分間循環させた。最後に、液温を95±2℃に5分間保持して加熱殺菌を兼ねて酵素の失活を行った。そして、直ちに冷却して卵白加水分解物198Kgを調製した(試料8)。
試験例4 大量調製試料の乳化性の測定
卵白加水分解物の大量調製として行った調製例2〜4で得た試料6〜8を用いて、試験例1と同様に乳化性の測定を行った。その結果を表3に示す。
試験例5 加熱ゲル化性の評価
調製例2〜4で得られた卵白加水分解物試料6〜8を、更に65±2℃、30分間の酵素処理終了時に一部試料採取し、試験例2と同様の方法で加熱ゲル化性の評価を行った結果を、表4に示す。
試験例6 SDS−PAGEによる分子量測定
調製例2および調製例4で調製した卵白加水分解物(試料6、試料8)、それぞれの各工程で採取した試料および対照試料(生卵白液)を用い、試験例3と同様の方法で、それぞれの蛋白質の分子量分布を調べた。その結果を図7に示す。試料6と試料8では65℃の酵素反応終了時で卵白蛋白質のオボトランスフェリンとオボアルブンが完全に消失し、代わりに分子量3.7万から2万の間と5000から1.5万に特徴的な数本の加水分解物由来の染色バンドが現れた。そして、90℃で5分間加熱し酵素を失活させた卵白加水分解物では、試料6の方が、加水分解が進み、卵白蛋白質の低分子化がみられた。これは、大量調製時における熱履歴の違いであると言える。すなわち、バッチ式では昇温に時間を要し、その分耐熱性プロテアーゼがより作用するのではないかと考えられる。
試験例7 トリクロロ酢酸沈殿物量の測定
調製例1で調製した卵白加水分解物1〜5の試料と加熱卵白試料、および調製例2〜4で得られた卵白加水分解物試料6〜8、ならびに対照として生卵白液のそれぞれ1gを15mL容量のプラスチック遠心管に精密に計り、0.4モル濃度のトリクロロ酢酸(TCA)溶液9gを加えてよく撹拌した後、10,000 x gの遠心力で20分間遠心分離した。その上清は廃棄し、沈殿物を回収し、105℃、3時間乾燥して、得られた乾燥物重量を測定した。そして対照として用いた卵白液1g中の0.4モルTCA沈殿物乾燥重量を100%として、各試料の0.4モルTCA沈殿物乾燥重量の割合を計算した。
その結果を表5に示す。
調製例5 卵白加水分解物の調製(加水分解時間の検討)
卵白液1000mlに10%クエン酸溶液を8ml加えpH7.5に調整し、55℃に加温し、耐熱性の蛋白分解酵素(サモアーゼPC10F:90,000単位/g天野エンザイム(株))を0.4%添加し、55℃で10分間撹拌しながら酵素分解を行った。次いで、卵白液の温度を65℃に上げて、加水分解時間を0分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間と変えて、撹拌しながら酵素分解を行った後、各酵素反応時間毎に卵白加水分解液30gを、それぞれ折幅30mmのポリ塩化ビニリデン製ケーシングチューブ(クレハプラスチック株式会社 DB577R)に詰め、90℃に設定した温水中に浸けて、液温が90℃になったのを確認し10分間保持した。その後、流水中で冷却し、卵白加水分解物の試料9〜14とした。
試料9〜14と対照として生卵白液を用い、試験例2と同様の方法で、各試料の破断強度を測定した。次いで、試験例1と同じ方法で乳化性および乳化安定性を評価した。また、試験例7と同じ方法で各試料の0.4モルTCA沈殿物乾燥重量の割合を計算した。表6に結果をまとめた。
蛋白分解酵素(サモアーゼPC10F:90,000単位/g天野エンザイム(株))を0.4%添加し、65℃での加水分解時間を検討した結果、加水分解時間が4時間までは、90℃での加熱ゲル化性があるが、その破断ゲル強度は加水分解時間とともに弱くなった。8時間加水分解したものは、90℃での加熱ゲル化性が消失し、なお、また、加水分解時間が長くなると、TCA沈殿物も85.7%から61.3%まで低下した。卵白蛋白質の加水分解が進み、0.4%TCAで沈殿しない低分子のペプチドやアミノ酸が多くなった結果である。なお、乳化安定性は、加水分解時間4時間までは少しずつ低下したが、8時間加水分解した試料は乳化安定性が激減した。
食品例1 卵白マヨネーズ
調製例2で調製した卵白加水分解物250gに対してお酢50gを加えて混合し、そこへ食塩10gとマスタード5gとコショウ2.5gを混合し、さらにサラダ油550gを少しずつ加えながら撹拌乳化し、卵白加水分解物を乳化剤として用いた卵白マヨネーズを作成した。
食品例2 卵アイスクリーム
ステンレスのボールに生卵黄80gと砂糖100gを入れて、白っぽくなるまでよく混合した。調製例2で調製した卵白加水分解物300gをホモミキサーで均質化しながら体積が1.5〜2.0倍に起泡させた。これに卵黄と砂糖の混合物を加え、弱火で卵黄の生臭みが消えるまで加熱し(約80℃になるまで)、冷却した後、バニラエッセンスを数滴添加し、−20℃の冷凍庫に入れて1時間に1回撹拌しながら冷凍させ、卵アイスクリームを作成した。
食品例3 卵かけご飯用殺菌卵液
殻付き卵を割卵装置で卵黄膜を割らずに卵白から分離し、その生卵黄1個(約20g)を殺菌済みのプラスチック容器に入れ、その上から80℃に保温した調製例4で調製した卵白加水分解物40gを加え、直ちに無菌的にプラスチック容器にプラスチックシールを熱溶着して蓋をした。この方法により、卵黄膜上の細菌を80℃の卵白加水分解物で加熱殺菌し、卵黄が丸ごと入っている卵かけご飯用殺菌液卵を作成した。
食品例4 卵白栄養食品(ドリンクベース)
調製例4で調製した卵白加水分解物600gをホモミキサーで撹拌均質化しながら90℃まで加熱し、それに砂糖20gと食物繊維(グアーガム酵素分解物)66gを混合溶解した。この混合液を室温まで冷却し、ビタミンプレミックスタイプRD−2001(マルチビタミン)1gを添加混合し、卵白栄養食品のドリンクベースを作成した。
このドリンクベースにフレーバーとして、各種飲料やスープや出汁やブイヨンなど、または機能性素材として不飽和脂肪酸を含むオリーブオイルや精製魚油などを等量から半分量添加し、撹拌均質化することにより、良質なアミノ酸を構成成分とし、加熱変性により消化吸収性の優れた卵白加水分解物をベースに調製した栄養ドリンクが得られる。
食品例5 卵白栄養食品(ゲルベース)
調製例4で調製した卵白加水分解物600gをホモミキサーで撹拌均質化しながら90℃まで加熱し、それに砂糖20gと低メトキシルペクチン6g、食物繊維(グアーガム酵素分解物)60gを混合溶解した。この混合液を室温まで冷却し、ビタミンプレミックスタイプRD−2001(マルチビタミン)1gを添加混合し、卵白栄養食品のゲルベースを作成した。
このゲルベースに牛乳300gを混合して増粘ゲル化させて、良質なアミノ酸を構成成分とし、加熱変性により消化吸収性の優れた卵白加水分解物をベースに調製した卵白栄養ゲルが得られる。なお、フレーバーとして、各種飲料やジャムやゆであずきを適時添加混合することも可能である。
食品例6 たまごホイップクリーム
調製例3で調製した卵白加水分解物2Kgに対して卵黄1Kgを添加し混合乳化した後、トレハロース150gとバニラエッセンスを数滴添加し、さらにホモミキサーで均質化しながら体積が1.5〜2.0倍になるまで起泡させ、ショートケーキやロールケーキやシュークリーム用たまごホイップクリーム3.15Kgを調製した。

Claims (7)

  1. 卵白をプロテアーゼを用いて加水分解することにより得られる卵白加水分解物であって、当該卵白加水分解物に対して9倍量の0.4Mトリクロロ酢酸(TCA)を加えて沈殿させたときの沈殿物の乾燥重量が卵白を同様に処理した時の乾燥重量の60%以上であり、分子量が37,000〜20,000ダルトンの蛋白質分解物を含み、オボアルブミンが40%以上消失しており、且つ乳化性及び乳化安定性を有することを特徴とする卵白加水分解物、を有効成分として含有することを特徴とする乳化剤
  2. プロテアーゼがBacillus属の菌体より抽出されるプロテアーゼである請求項1の乳化剤
  3. 前記卵白加水分解物を等量の油で乳化させ、乳化直後及び1時間経過後の乳化液を0.1%SDS液で200倍希釈した時の吸光度(500nm)が0.1以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乳化剤
  4. 卵白をプロテアーゼを用いて加水分解することにより得られる卵白加水分解物であって、当該卵白加水分解物に対して9倍量の0.4Mトリクロロ酢酸(TCA)を加えて沈殿させたときの沈殿物の乾燥重量が卵白を同様に処理した時の乾燥重量の60%以上であり、分子量が37,000〜20,000ダルトンの蛋白質分解物を含み、オボアルブミンが40%以上消失しており、且つ乳化性及び乳化安定性を有することを特徴とする卵白加水分解物、を有効成分として含有することを特徴とする乳化安定剤
  5. プロテアーゼがBacillus属の菌体より抽出されるプロテアーゼである請求項4の乳化安定剤
  6. 前記卵白加水分解物を等量の油で乳化させ、乳化直後及び1時間経過後の乳化液を0.1%SDS液で200倍希釈した時の吸光度(500nm)が0.1以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の乳化安定剤
  7. 卵白をプロテアーゼを用いて45〜70℃で0.5〜1時間、pH6〜9で加水分解する工程と、
    さらに加水分解された卵白を85〜95℃で10〜30分間加熱する工程を含む、乳化性及び乳化安定性を有する卵白加水分解物の製造方法。
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