JP2001078684A - 食品の物性改良剤及びその製造法 - Google Patents

食品の物性改良剤及びその製造法

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JP2001078684A
JP2001078684A JP26383699A JP26383699A JP2001078684A JP 2001078684 A JP2001078684 A JP 2001078684A JP 26383699 A JP26383699 A JP 26383699A JP 26383699 A JP26383699 A JP 26383699A JP 2001078684 A JP2001078684 A JP 2001078684A
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casein
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Hiroki Hayasawa
宏紀 早澤
Hiroshi Miyagawa
博 宮川
Hitoshi Saito
仁志 齋藤
Hiroshi Ochi
浩 越智
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 ハム、ソーセージ等の畜肉製品、水産練製
品、麺、パン、ポーションクリーム等の食品の物性改良
剤及びその製造法を提供する。 【解決手段】 それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳
糖を含有し、かつ純度80%(重量)以上のカゼインの
エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵
素との併用による加水分解物であって、a)蛋白質含量
が85%(重量)以上であること、b)製品100g当
たりカルシウム50mg以下、マグネシウム10mg以
下、ナトリウム及びカリウムの合計1400±300m
g、リン700±200mg並びに塩素300mg以下
の無機質を含有すること、c)10%(重量)濃度溶液
の25℃における粘度が15mPa・s以上であるこ
と、d)蛋白質中の全アミノ酸に占める遊離アミノ酸が
1%未満であること、e)10000ダルトン超の画分
が75%以上、の食品の物性改良剤及びその製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハム、ソーセージ
等の畜肉製品、水産練製品、麺、パン、クリーム、ドレ
ッシング等の食品に増粘、結着、乳化、保水、増量、及
び起泡性の保持等の目的で添加される風味良好な食品の
物性改良剤、及びその製造方法に関する。
【0002】本明細書において、百分率の表示は特に断
りの無いかぎり重量による値であり、蛋白質はケルダー
ル法により測定した全窒素量に6.38を乗じて得た値
である。
【0003】本明細書において、プロテアーゼの単位は
PUN単位であり、ミルクカゼイン[例えば、メルク社
製のハマーシュタイン(Hemmersten)等]に酵素を作用
させ、30℃で1分間に1μgのチロシンに相当するア
リルアミノ酸のフォリン試薬での呈色反応を示す酵素活
性度が1単位である。
【0004】
【従来の技術】カゼイン及びカゼインナトリウム、カゼ
インカリウム等のカゼイン化合物(以下、これらをまと
めてカゼイン類と記載することがあり、カゼイン化合物
をカゼイネイトと記載する)は、生体利用性を示すアミ
ノ酸スコアが高く、栄養学的に優れた蛋白質であること
は広く知られている。更に、カゼイン類は、ゲル化性、
乳化性、起泡性、結着性等の様々な機能を有することも
公知であり、これらの機能を利用して、麺、パンの品質
改良剤、ハム、ソーセージ等の畜肉製品及び水産練製品
等の結着剤及び増量剤、ポーションクリーム、ドレッシ
ング、シチュー、カレールウ等の乳化剤、菓子及びケー
キ等の起泡剤等として利用されている。
【0005】しかしながら、これらのカゼイン類の機能
は、食品のテクスチュアーを変化させるためには必ずし
も十分でない場合があり、更に、特有の風味が官能上の
障害となって、機能を発揮させるために十分な量を添加
できない場合もある。また、水に不溶であるカゼインに
対してカゼイネイトは可溶性であり、添加が容易である
ので、広範な用途を有するが、カゼイネイトは食品添加
物であるために、製品によっては添加が制限される場合
がある。
【0006】従って、カゼイン類の優れた栄養価及び物
性改良機能を生かし、食品への応用を拡大した物性改良
剤を調製するためには、これらカゼイン類の複数の物性
改良特性を可能な限り低下させることなく、一部の特性
を増強し、風味を改良するとともに、物性改良剤として
カゼイネイトとは明確に区別できる理化学的性状を付与
することが必要である。
【0007】カゼイン及び乳清蛋白質を分解することに
より得られる食品の物性改良剤及び物性改良方法につい
ては、従来より種々の方法が開示されている。例えば、
全カゼインに蛋白質分解酵素を作用させて得られる反応
生成物から、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ
ー、高速液体クロマトグラフィー、又は電気泳動の一種
以上を用いて分離して得られる5乃至50個のアミノ酸
から構成されるポリペプチドから成る乳化剤(特公平2
−968号公報)、乳蛋白質に蛋白分解酵素を作用さ
せ、その分解度を5〜20%の範囲に部分的に加水分解
してなることを特徴とする乳蛋白性界面活性剤(特開平
1−160458号公報)、酵素により加水分解された
乳清蛋白質を主成分として含む加水分解物を含有するこ
とを特徴とする水中油型乳化脂組成物(特開平2−25
7838号公報)、蛋白質に特定のプロテアーゼを、前
記特定のプロテアーゼの至適pH以外であって、苦味又
はえぐ味の成分である低分子量画分の生成が少なくなる
ような選択的加水分解が起こる特定のpHで作用させて
蛋白質を選択的に加水分解することを特徴とする蛋白分
解物の製造方法(特開平6−197788号公報)、油
相原料と水相原料とを水中油型に乳化して水中油型乳化
液を製造するに際して、乳化剤として蛋白分解酵素処理
したカゼインを用いることを特徴とする水中油型乳化液
の製造方法(特開昭57−125643号公報)等が開
示されている。
【0008】しかしながら、これらの従来技術において
は、カゼイン及び乳清蛋白質の乳化性、起泡性等、単一
の機能を改良した乳蛋白質の酵素分解物を提供すること
を目的としており、乳化性、増粘性、保水性等の複数の
物性改良効果を併有する物性改良剤には言及しておら
ず、また、ミネラル組成の相違による物性改良効果の相
違、噴霧乾燥条件、得られた粉末の冷却条件が風味に及
ぼす影響、及び吸着処理による風味改良効果等について
は一切言及されていない。
【0009】尚、本発明者らはこれらの先行技術に鑑
み、先に食品の物性改良剤及びその製造方法(特開平7
―303455号公報)を発明して特許出願している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術におい
て、乳蛋白質を酵素処理することにより得られる物性改
良剤は、単一の機能を増強することを目的としており、
例えばカゼイン類を原料とした場合には、カゼイン類の
乳化性を向上させることは可能であっても、カゼイン類
に特徴的な増粘、結着、保水性等の物性改良効果は逆に
低下する傾向にあった。
【0011】通常の食品にカゼイン類を使用する場合に
は、複数の物性改良効果を期待して配合、添加すること
が多いため、単一の機能を増強させた従来のカゼイン類
を原料とした物性改良剤は、単純にカゼイン類の代替品
として置換することが難しいという問題点があった。ま
た前記のとおり、水に不溶であるカゼインに対して、カ
ゼイネイトは可溶性であり、食品に添加する際の応用範
囲が広いが、カゼイネイトは食品添加物扱いであるため
に、製品によっては添加が制限される場合もあり、ま
た、特有の臭いを有するために十分な量を添加できない
場合もあった。
【0012】従って、カゼイン及びカゼイネイトが有す
る複数の物性改善機能を有し、理化学的性質によりカゼ
イネイトとは明確に区別可能であり、広範囲の食品に応
用可能であり、風味の良好な可溶性物性改良剤が待望さ
れていた。
【0013】本発明者らは、前記の特許出願後、更にカ
ゼイン類が有する複数の物性改良機能を有し、かつ特に
乳化性に優れた食品の物性改良剤について鋭意検討を行
なった結果、それぞれ2%以下の脂肪及び乳糖を含有
し、かつ純度が80%以上のカゼインを、カゼイン1g
当たり20〜200単位のエンド型プロテアーゼ活性を
有する植物由来、動物由来、及び微生物由来のプロテア
ーゼからなる群より選択される一種又は二種以上のプロ
テアーゼ又は該プロテアーゼと他の酵素との混合物によ
り処理することにより、カゼインを水酸化ナトリウム等
のpH調整塩で可溶化したカゼイン溶液、又はカゼイネ
イト溶液と比較して、粘度は同等であるが乳化性が増強
された物性改良剤が得られること、該物性改良剤の風味
が良好であり、かつ高速液体クロマトグラフィーによる
分析結果から理化学的性質をカゼイネイトとは明確に区
別できること、並びに該物性改良剤を安定的に製造する
方法を見出し、本発明を完成した。
【0014】本発明は、本発明者らが既に特許権出願し
た前記発明に比べて、乳化性の面で更に高い物性改良機
能を有していること、高速液体クロマトグラフィーによ
る分析結果からカゼインナトリウムとの理化学的相異を
より明確にできること、ミネラル組成が物性改良効果に
及ぼす影響を明確にしたこと、使用する酵素が乳酸菌由
来の特殊なものではないために該物性改良剤の産業上の
利用範囲が広いこと、により進歩性及び新規性を有して
いる。
【0015】本発明の目的は、ハム、ソーセージ等の畜
肉製品、水産練製品、麺、パン、ポーションクリーム等
の種々の食品に、増粘、結着、乳化、保水、増量、及び
起泡性の保持等の目的で添加され、風味良好な食品の物
性改良剤を提供することである。
【0016】本発明の他の目的は、前記特性を有する物
性改良剤の製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明の第一の発明は、それぞれ2%(重量)以下の脂肪及
び乳糖を含有し、かつ純度80%(重量)以上のカゼイ
ンのエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他
の酵素との併用による加水分解物であって、次のa)〜
e)の理化学的性質、 a)蛋白質含量が85%(重量)以上であること b)製品100g当たりカルシウム50mg以下、マグ
ネシウム10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計
1400±300mg、リン700±200mg並びに
塩素300mg以下の無機質を含有すること c)10%(重量)濃度溶液の25℃における粘度が1
5mPa・s以上であること d)蛋白質100g当たりに含まれる全アミノ酸の質量
合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重
量)未満であること e)10000ダルトン超の画分が75%以上であり、
1000ダルトン以下の画分が10%以下であること を有することを特徴とする食品の物性改良剤である。
【0018】また、エンド型プロテアーゼ活性を有する
酵素が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテア
ーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選
択される一種又は二種以上の混合物であること、エンド
型プロテアーゼ活性を有する酵素が、パパイン、ブロメ
ライン、パンクレアチン、トリプシン、及びズブチリシ
ンからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物
であること、他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌破
砕物であること、並びに乳酸菌が、ラクトコッカス属に
属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、スト
レプトコッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテ
リウム属に属する微生物からなる群より選択される一種
又は二種以上の混合物であることを望ましい態様として
もいる。
【0019】前記課題を解決する本発明の第二の発明
は、それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳糖を含有
し、かつ純度が80%(重量)以上のカゼインを溶解
し、カゼイン溶液にカゼイン1g当たり20〜200単
位のエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他
の酵素と併用して添加し、40〜60℃で2〜10時間
処理し、処理液を80℃以上140℃以下の温度で殺菌
し、減圧濃縮機により濃縮し、チャンバー温度を80℃
以上95℃以下に調整した噴霧乾燥機により乾燥し、得
られた粉を40℃以下に冷却することを特徴とする食品
の物性改良剤の製造法である。
【0020】また、本発明の第二の発明は、エンド型プ
ロテアーゼ活性を有する酵素が、植物由来のプロテアー
ゼ、動物由来のプロテアーゼ、及び微生物由来のプロテ
アーゼからなる群より選択される一種又は二種以上の混
合物であること、エンド型プロテアーゼ活性を有する酵
素が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリ
プシン、及びズブチリシンからなる群より選択される一
種又は二種以上の混合物であること、他の酵素が、乳酸
菌そのもの又は乳酸菌破砕物であること、乳酸菌が、ラ
クトコッカス属に属する微生物、ラクトバシラス属に属
する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、及
びビフィドバクテリウム属に属する微生物からなる群よ
り選択される一種又は二種以上の混合物であること、カ
ゼイン溶液又は処理液が、強酸性陽イオン交換樹脂に通
液され、製品100g当りのカルシウム含量を50mg
以下、マグネシウム含量を10mg以下に低減されるこ
と、並びにカゼイン溶液又は処理液が、風味及び臭気の
低減のために吸着樹脂に通液されることを望ましい態様
としてもいる。
【0021】
【発明の実施の形態】次に本発明について詳細に説明す
るが、本発明の理解を容易にするために、最初に本発明
の第二の発明について説明する。
【0022】本発明の原料として使用するカゼインは、
脂肪及び乳糖をそれぞれ2%以下の濃度で含有し、純度
が80%以上であるものであれば、市販品、常法により
牛乳から分離された乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等の酸
カゼイン、又はこれらの任意の混合物を使用することが
できる。また、添加物表示が問題とならない場合には、
カゼインナトリウム、カゼインカリウム等のカゼイネイ
トを使用することもできるが、カゼインカルシウム、カ
ゼインマグネシウムは、含有されているカルシウム及び
マグネシウムを低減するために余分な工程が必要となる
ので望ましくない。また、カゼイン類の純度が低く、夾
雑物を多く含有している原料は、望まれる物性改良効果
が得られない場合、殺菌工程及び乾燥工程等において風
味の劣化が認められる場合等があるため、脂肪及び乳糖
をそれぞれ2%以下の濃度で含有し、純度が80%以上
の原料が望ましい。
【0023】原料カゼインとして酸カゼインを使用する
場合には、酸カゼインを5%以上15%以下、望ましく
は10%以上13%以下、の濃度で水又は温湯に分散
し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウ
ム、リン酸カリウム等の溶解塩を単独又は混合して添加
し、溶液のpHを7.0±1.0、望ましくは7.0±
0.5、に調整し、70℃から90℃に加温して溶解す
る。溶解時の濃度が5%未満の場合には製造の効率が悪
く、また、15%を超える場合には粘度が上昇するため
に製造が困難となるので、それぞれ望ましくない。
【0024】また、溶液のpHが6.0未満では酸カゼ
インを完全に溶解することが困難であり、pHが8.0
を超える場合には処理後の加熱時に風味が劣化すること
があるので、それぞれ望ましくない。
【0025】原料としてカゼイネイトを用いる場合に
は、そのまま5%以上15%以下、望ましくは10%以
上13%以下、の濃度で水又は温湯に溶解し、溶液のp
Hが7.0±1.0、望ましくは7.0±0.5、とな
っているのを確認し、殺菌を兼ねて70℃から90℃に
加温する。pHが所定の範囲外の場合は、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム
等の溶解塩を単独又は混合して添加し、pHを所定範囲
に調整する。
【0026】使用するエンド型プロテアーゼ活性を有す
る酵素としては、植物由来のプロテアーゼ、動物由来の
プロテアーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる
群より選択される一種又は二種以上の混合物である。具
体的にはエンド型プロテアーゼ活性と比較してエキソ型
プロテアーゼ活性が低いか、又は殆ど有していないプロ
テアーゼが望ましく、植物由来のプロテアーゼとしては
パパイン、ブロメライン等、動物由来のプロテアーゼと
してはパンクレアチン、トリプシン等、微生物由来のプ
ロテアーゼとしてはバシラス属に属する微生物より抽出
されるズブチリシン等が望ましく、特にパパインが望ま
しい。
【0027】また、風味の更なる改良を目的として、こ
れらのプロテアーゼと他の酵素を併用することもでき
る。他の酵素としては、乳酸菌そのもの、乳酸菌破砕物
又は乳酸菌由来の酵素を例示することができる。乳酸菌
としては、ラクトコッカス属に属する微生物、ラクトバ
シラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属す
る微生物、又はビフィドバクテリウム属に属する微生物
を例示することができる。簡便には市販されている製品
を使用することも可能であり、具体的にはSF−10
(商標。森永乳業社製。ストレプトコッカス・フェカリ
スの乾燥菌体)、Bifilon―10(商標。森永乳
業社製。ビフィドバクテリウム・ロンガムの乾燥菌
体)、FC−H(商標。森永乳業製。ラクトバシラス・
ヘルベチカスの菌体破砕物の濃縮凍結液)等を例示する
ことができる。
【0028】カゼイン1g当たりのエンド型プロテアー
ゼ活性を有する酵素の添加量は、20〜200単位が望
ましく、乳酸菌又は乳酸菌破砕物を併用する場合の固形
分としての添加量は1%以下が望ましい。乳酸菌又は乳
酸菌破砕物の添加量が1%を超える場合、菌体培養液の
特有の風味が逆に強調されること、乳酸菌に由来する酵
素により物性改良剤の特性、特に粘度が低減されるこ
と、熱安定性が低下することが認められるので、望まし
くない。これらのエンド型プロテアーゼ活性を有する酵
素及び他の酵素の添加量については、処理時間及び処理
温度を考慮して、所定の範囲内で適宜調整することがで
きる。
【0029】前記カゼイン溶液に、所定量のエンド型プ
ロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵素と併用し
て添加し、40〜60℃で2〜10時間、望ましくは4
時間から8時間保持し、カゼインを加水分解する。加水
分解後に、80℃以上140℃以下の温度で殺菌処理
し、減圧濃縮機で濃縮し、チャンバー温度を80℃以上
95℃以下に調整した噴霧乾燥機で乾燥し、得られた粉
末を40℃以下に冷却して粉末状の物性改良剤を製造す
る。
【0030】殺菌温度が低い場合には酵素の失活が不十
分となり、製品に本発明の物性改良剤を添加した時に未
失活の酵素が製品の風味及び物性を変化させる場合があ
る。また、殺菌温度を140℃を超える温度とすること
に工程上のメリットは無く、加熱臭が生じる原因にもな
るために望ましくない。
【0031】噴霧乾燥機のチャンバー温度についても、
乾燥効率と加熱臭の着臭防止の両面から80℃以上95
℃以下が望ましい。吹上粉が高温で保持された場合、風
味の劣化を招くため、直ちに40℃以下に冷却すること
が望ましい。
【0032】また、原料カゼインのカルシウム含量が高
い場合、又は溶解水に含有されるカルシウム濃度が高い
場合には、得られる物性改良剤のカルシウム含量が高く
なるために熱安定性の低下、クリームに使用した時のフ
ェザリングの原因となるため、これを防止する目的で、
カゼイン溶液又は処理液をナトリウム型又はカリウム型
の強酸性陽イオン交換樹脂に通液し、カルシウム含量を
低減することが必要となる場合もある。
【0033】ただし、カルシウム含量の低いカゼインを
原料として使用し、カルシウム濃度の低い水、即ち硬度
の低い水、又は樹脂処理、膜処理等により硬度を低減し
た水を使用することにより、物性改良剤100g当たり
のカルシウム含量を50mg以下に調整し得る場合に
は、カゼイン溶液又は処理液を強酸性陽イオン交換樹脂
に通液する必要はない。
【0034】以上のとおり処理された物性改良剤の10
0g当たりのミネラル組成は、カルシウム含量50mg
以下、マグネシウム含量10mg以下、ナトリウム及び
カリウムの合計1400±300mg、リン700±2
00mg、塩素300mg以下である。また、風味と臭
気を低減するために、カゼイン溶液又は処理液を吸着樹
脂に通液することもできる。
【0035】次に本発明の第一の発明について説明す
る。前記の方法により製造された本発明の第一の発明で
ある食品の物性改良剤は、次のa)〜e)の理化学的性
質、 a)蛋白質含量が85%(重量)以上であること b)製品100g当たりカルシウム50mg以下、マグ
ネシウム10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計
1400±300mg、リン700±200mg並びに
塩素300mg以下の無機質を含有すること c)10%(重量)濃度溶液の25℃における粘度が1
5mPa・s以上であること d)蛋白質100g当たりに含まれる全アミノ酸の質量
合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重
量)未満であること e)10000ダルトン超の画分が75%以上であり、
1000ダルトン以下の画分が10%以下であること を有している。
【0036】本発明の食品の物性改良剤は、後記試験例
及び実施例から明らかなとおり、高速液体クロマトグラ
フィーによる分析結果から理化学的性状をカゼイン類と
は明確に区別が可能であり、粘度がカゼイン類と同等で
あるにもかかわらず、優れた乳化性を有し、風味も良好
である。
【0037】本発明の食品の物性改良剤は、ハム、ソー
セージ等の畜肉製品、蒲鉾、魚肉ソーセージ、はんぺ
ん、すり身、竹輪等の水産練製品、うどん、そば、ラー
メン、マカロニ、スパゲッティ等の麺製品、パン、ケー
キ、マシュマロ等の製パン製菓製品、ポーションクリー
ム、アイスクリーム、スプレッド、スープ等の油脂含有
製品等に使用することが可能であり、常法により加工す
ることができる。
【0038】本発明の食品の物性改良剤を使用すること
により、前記の製品に、増粘、結着、乳化、保水、増
量、及び起泡性の保持等優れた効果を付与することが可
能である。
【0039】次に試験例及び参考例を示して本発明を詳
細に説明する。
【0040】試験例1 この試験は、カゼインに添加するエンド型プロテアーゼ
活性を有するプロテアーゼの添加量と、加熱失活後の熱
安定性、粘度、分子量分布、アミノ酸遊離率、乳化性と
の関係を調べるために行われた。
【0041】(1)試料の調製 市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード
製。純度85%)を13%の濃度で精製水に分散させ、
水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整
し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解
し、のち50℃に冷却し、パパインW―40(天野製薬
製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当たり
0.005〜0.5%の範囲で添加し、50℃で5時間
保持し、次いで酵素の失活と溶液の殺菌を兼ねて85℃
で10分間加熱し、25℃に冷却し、試料液を調製し
た。また、分子量分布とアミノ酸組成の測定に供するた
めに、試料液の一部を凍結乾燥した。
【0042】(2)試験方法 1)粘度の測定方法 試料100mlを100ml容量のビーカーに分注し、
振動式粘度形(VibroViscometer。エー・アンド・ディ
ー社製)により25℃における粘度を測定した。
【0043】2)分子量分布 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた常法
により、分子量分布を測定した(宇井信生ら編、「タン
パク質・ペプチドの高速液体クロマトグラフィー」、化
学増刊第102号、第241頁、株式会社化学同人、1
984年)。ポリハイドロキシエチル・アスパルタミド
・カラム[Poly Hydroxyethyl Aspartamide Column、ポ
リ・エル・シー(Poly LC )社製。直径4.6mm、長
さ200mm]を用いて、20mM塩化ナトリウム含有
50mMギ酸溶液により、溶出速度0.5ml/分で溶
出し、UV検出器(島津製作所製)により検出し、GP
C分析システム(島津製作所製)でデータの解析を行っ
た。
【0044】3)アミノ酸遊離率 常法により試料を酸又はアルカリ分解した後、アミノ酸
自動分析機(日立製作所社製。835型)を用いて、試
料中の全アミノ酸組成を測定し、これを合計して全アミ
ノ酸の質量を算出した。また、遊離アミノ酸について
は、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、同様にアミノ
酸自動分析機を用いて組成を測定し、同様に合計して遊
離アミノ酸の質量を算出した。全アミノ酸の質量合計及
び遊離アミノ酸の質量合計から、全アミノ酸に対する遊
離のアミノ酸の質量比を算出し、アミノ酸遊離率とし
た。
【0045】4)乳化性 精製コーン油10部、精製水90部に対して、試料濃度
0.5%の割合で添加し、ホモジナイザー[エー・ピー
・ブイ社製。ゴーリン(GAULIN)]を用いて20MPa
(200kgf/cm2)の条件で5分間循環して乳化
し、得られた乳化液を100ml容量のビーカーに分注
して常温で1日保持し、液上層部に分離した脂肪層を目
視により観察し、次の基準により乳化性を試験した。
【0046】 △:脂肪分離あり ○:わずかに脂肪分離あり ◎:脂肪分離なし
【0047】5)沈澱 加熱失活後の試料を目視により観察し、次の基準により
評価して試験した。
【0048】 −:沈澱なし ±:わずかに沈澱あり +:沈澱あり
【0049】(3)試験結果 この試験結果は表1に示すとおりである。表1から明ら
かなとおり、加熱しても沈殿を生じない程度に熱安定性
が良好であり、カゼインに特有の粘度特性を有してお
り、乳化性を向上させ得るパパインの添加量は、カゼイ
ン当たり0.005〜0.05%であり、この添加量は
力価に基づいて換算すると、カゼイン1g当たり20〜
200単位であることが判明した。
【0050】また、この方法により調製された物性改良
剤は、10000ダルトン超の分子量画分が75%以
上、1000ダルトン以下の分子量画分が10%以下の
分子量分布を有しており、アミノ酸遊離率は1%以下で
あることも判明した。
【0051】尚、カゼインの代わりにカゼイネイト[ニ
ュージーランドデイリーボード製。アラネート(ALANAY
E) 。純度90%]、パパインの代わりにブロメライ
ン、パンクレアチン、トリプシン、ズブチリシンを用い
た場合にも、力価に換算するとほぼ同様の結果が得られ
た。
【0052】
【表1】
【0053】試験例2 この試験は、物性改良剤中のミネラル含量が、熱安定性
と物性改良効果に及ぼす影響を調べるために行われた。
【0054】(1)試料の調製 試験例1と同一の方法によりカゼインを溶解し、溶液の
温度を50℃に冷却し、パパインW―40(天野製薬
製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン1g当
たり80単位添加し、50℃で5時間保持し、のち酵素
の失活と溶液の殺菌を兼ねて85℃で10分間加熱し、
25℃に冷却した。次いで冷却液を分注し、各々の冷却
液にカゼイン処理物の固形分100g当たり、塩化カル
シウム(CaCl2)を0〜500mgの範囲で添加
し、凍結乾燥して試料とした。
【0055】(2)試験方法 1)熱安定性 試料を10%の濃度で溶解し、121℃で15分の条件
でオートクレーブで加圧加熱し、生成した沈澱を目視に
より観察し、次の基準により評価して試験した。
【0056】 −:沈澱なし ±:わずかに沈澱あり
【0057】2)フェザリング試験 脱脂粉乳50g、砂糖30g、リン酸塩10g、ショ糖
脂肪酸エステル5g及び安定剤5gを精製水700gに
混合溶解して80℃に加温した水相部溶液と、予め植物
脂肪250g、レシチン1g、グリセリン脂肪酸エステ
ル2gを混合して80℃に加温した油相部溶液とを混合
した後、試料50gを添加し、ホモジナイザーを用いて
均質圧力10MPa(100kgf/cm2)の条件で
乳化した後に冷却してコーヒーホワイトナーを調製し
た。
【0058】得られたコーヒーホワイトナーをコーヒー
に一定割合で添加し、フェザリングの有無を目視により
観察し、次の基準により評価して試験した。
【0059】 △:フェザリングあり ○:わずかにフェザリングあり ◎:フェザリングなし
【0060】3)カルシウム含量 常法のICP(inductively coupled plasma)発光分光分
析法により定量した。
【0061】(3)試験結果 この試験結果は表2に示すとおりである。表2から明ら
かなとおり、熱安定性が良好であり、フェザリングをほ
とんど生じないカルシウム含量は、物性改良剤100g
当たり50mg以下であることが判明した。
【0062】尚、カゼインの代わりにカゼイネイト[ニ
ュージーランドデイリーボード製。アラネート(ALANAT
E) 。純度90%]、パパインの代わりにブロメライ
ン、パンクレアチン、トリプシン、ズブチリシンを用い
た場合にも、ほぼ同様の結果が得られた。
【0063】
【表2】
【0064】試験例3 この試験は、吸着処理工程、殺菌濃縮工程、乾燥工程の
相異が風味に及ぼす影響を調べるために行われた。
【0065】(1)試料の調製 試験例2と同一の方法によりカゼインのパパイン処理物
を調製し、この溶液を分割し、そのまま凍結乾燥した群
(第1群)、プレート式殺菌機(日阪製作所製)により
120℃で15秒の殺菌処理をし、減圧濃縮機(みずほ
工業製)で濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン
社製)で噴霧乾燥した群(第2群)、殺菌前に吸着樹脂
(北越炭素工業製。KS樹脂)により、SV(空間速
度)=2h -1、樹脂量の10倍容量通液の条件で処理
し、第2群と同様に濃縮、乾燥した群(第3群)、の3
種の試料を調製した。
【0066】(2)試験方法 得られた3種類の試料を10%の濃度で水に溶解し、男
女各5人の熟練したパネラーによるパネルテストを実施
し、評点法による官能検査を行なった。官能検査は次の
5段階の評価基準により数値化し、評点は10人のパネ
ラーの平均値を算出して試験した。
【0067】 2:素材臭が気にならない 1:素材臭が殆ど気にならない 0:素材臭が少し気になる −1:素材臭が気になる −2:素材臭が非常に気になる
【0068】(3)試験結果 試験結果は表3に示すとおりである。表3から明らかな
とおり、物性改良剤の風味を向上させるためには、加熱
殺菌、減圧濃縮及び噴霧乾燥工程が必要であること、及
び吸着処理により風味を更に向上させ得ることが判明し
た。この理由は、原料カゼインに由来するか、酵素処理
により産生されるわずかな揮発性成分が、加熱殺菌、減
圧濃縮及び噴霧乾燥工程により低減すること、又はこの
揮発性成分と微量の低分子量画分(例えば脂肪酸、アミ
ン類等)が吸着処理により更に低減されること、に起因
するものと推定される。
【0069】
【表3】
【0070】試験例4 この試験は、乳化液の脂肪球の大きさを調べるために行
われた。
【0071】(1)試料の調製 後記参考例1と同一の方法により調製した試料(試料
1)、及びカゼインナトリウム(ニュージーランドデイ
リーボード製)を使用したことを除き参考例1と同一の
方法により調製した試料(試料2)の2種の試料を調製
した。
【0072】(2)試験方法 得られた各試料の脂肪球の平均直径をレーザー回折式粒
度分布測定装置(堀場製作所製。LA−500)により
測定した。
【0073】(3)試験結果 この試験の結果、脂肪球の平均直径は、試料1では0.
53μm、試料2では0.79μmであり、本発明の物
性改良剤を使用した試料の脂肪球の平均直径が小さく、
乳化性が良好であることが判明した。
【0074】次に実施例を記載して本発明を更に詳細に
説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるも
のではない。
【0075】
【実施例】実施例1 市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード
製。純度85%)2kgを18kgの精製水に分散し、
水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整
し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解し
た。のち溶液を50℃に冷却し、パパインW―40(天
野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン
当たり0.01%(カゼイン1gに対して40単位)添
加し、50℃で5時間保持し、のち酵素の失活と溶液の
殺菌を兼ねて85℃で6分間、120℃で15秒間加熱
し、減圧乾燥機を用いて濃度15%に濃縮し、噴霧乾燥
機(パウダリングジャパン社製)により噴霧乾燥し、物
性改良剤約1.5kgを得た。
【0076】得られた物性改良剤は、蛋白質含量91
%、製品100g当たりカルシウム40mg、マグネシ
ウム5mg、ナトリウム及びカリウムの合計1400m
g、リン750mg、塩素150mgを含有しており、
試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の
粘度は30mPa・s、遊離アミノ酸率0.2%、10
000ダルトン超の分子量画分83.6%、1000ダ
ルトン以下の分子量画分4.1%であった。
【0077】参考例1 精製コーン油100g、精製水900gを計量した後、
予め水相部に溶解した実施例1と同一の方法によりで調
製した物性改良剤を固形量として2g添加し(最終濃度
0.2%)、実験用ホモジナイザー[エー・ピー・ブイ
社製。ゴーリン(GAULIN)]を用いて20MPa(200
kgf/cm2)の条件で5分間循環して乳化し、乳化
液を得た。
【0078】実施例2 市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード
製。純度85%)1kgを6.7kgの水道水に分散
し、炭酸カリウムを添加して溶液のpHを6.8に調整
し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解
し、溶液を55℃に冷却し、ブロメラインF(天野製薬
製。力価800U/mg)を固形分量でカゼイン当たり
0.01%(カゼイン1gに対して80単位)、パパイ
ンW―40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形
分量でカゼイン当たり0.02%(カゼイン1gに対し
て80単位)添加し、55℃で4時間保持し、のち酵素
の失活と溶液の殺菌を兼ねて120℃で10秒間加熱
し、減圧乾燥機を用いて濃度20%に濃縮し、噴霧乾燥
機(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改
良剤約0.8kgを得た。
【0079】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90
%、製品100g当たりカルシウム45mg、マグネシ
ウム8mg、ナトリウム及びカリウムの合計1600m
g、リン770mg、塩素120mgを含有しており、
試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の
粘度は19mPa・s、遊離アミノ酸率0.6%、10
000ダルトン超の分子量画分81.2%、1000ダ
ルトン以下の分子量画分6.3%であった。
【0080】参考例2 得られた物性改良剤の乳化性を試験するために、参考例
1と同様の方法により実施例2で調製した物性改良剤を
添加した乳化液(乳化液1)及びカゼインナトリウムを
添加した乳化液(乳化液2)を調製し、試験例4と同一
の方法により乳化液中の脂肪球の平均直径を測定した。
その結果、脂肪球の平均直径は、乳化液1では0.48
μm、乳化液2では0.79μmであり、本発明の物性
改良剤を使用した乳化液1の乳化性が良好であった。
【0081】実施例3 市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード
製。純度85%)1kgを7kgの井戸水に分散し、水
酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.5に調整
し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解
し、溶液を25℃に冷却し、ナトリウム型の強酸性イオ
ン交換樹脂(三菱化学製。SK−1B)を用いて、SV
=4h-1で樹脂量の20倍容量を通液し、次いで60℃
に加温してパパインW−40(天野製薬製。力価400
U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.02%(カ
ゼイン1gに対して80単位)添加し、60℃で8時間
保持し、のち85℃で10分間加熱して酵素の失活と殺
菌を行い、20℃に冷却して吸着樹脂(北越炭素工業
製。HS)を用いてSV=2h-1で樹脂量の10倍容量
を通液し、次いで120℃で10秒間加熱し、減圧乾燥
機を用いて濃度15%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリ
ングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改良剤約0.7
5kgを得た。
【0082】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90
%、製品100g当たりカルシウム3mg、マグネシウ
ム1mg、ナトリウム及びカリウムの合計1410m
g、リン770mg、塩素200mgを含有しており、
試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の
粘度は25mPa・s、遊離アミノ酸率0.5%、10
000ダルトン超の分子量画分82.4%、1000ダ
ルトン以下の分子量画分4.8%であった。
【0083】参考例3 実施例3で得られた物性改良剤50g、脱脂粉乳50
g、砂糖30g、リン酸塩10g、ショ糖脂肪酸エステ
ル5g及び安定剤5gを混合倍散し、精製水700gと
混合加温(80℃)して溶解した水相部と、予め植物性
油脂250g、レシチン1g、グリセリン脂肪酸エステ
ル2g、香料0.2gを混合加温(80℃)した油相部
とを混合し、ホモジナイザーを用いて均質圧力10MP
a(100kgf/cm2)の条件で乳化し、85℃で
15秒間殺菌し、冷却し、コーヒーホワイトナー約1k
gを調製した。
【0084】得られたコーヒーホワイトナーを試験例2
と同一の方法によりコーヒーに添加し、フェザリング試
験を行った結果、脂肪分離及びフェザリングは無く、風
味も良好であった。
【0085】実施例4 市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード
製。純度85%)0.4kgを7kgの精製水に分散
し、リン酸カリウムを添加して溶液のpHを6.5に調
整し、70℃で30分間加熱してカゼインを完全に溶解
した。のち溶液の温度を50℃に冷却した後、PTN
6.0S(ノボノルディスク社製。トリプシン製剤。力
価1250U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.
01%(カゼイン1gに対して125単位)、FC−H
(森永乳業製。ラクトバシラス・ヘルベチカスの菌体破
砕物の濃縮凍結液)を0.3%添加し、50℃で5時間
保持し、85℃で10分間、120℃で2秒間加熱し、
減圧乾燥機を用いて濃度15%に濃縮し、噴霧乾燥機
(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改良
剤約0.3kgを得た。
【0086】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90
%、製品100g当たりカルシウム45mg、マグネシ
ウム10mg、ナトリウム及びカリウムの合計1450
mg、リン1200mg、塩素100mgを含有してお
り、試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶
液の粘度は22mPa・s、遊離アミノ酸率0.8%、
10000ダルトン超の分子量画分80.5%、100
0ダルトン以下の分子量画分6.2%であった。
【0087】参考例4 実施例4で得られた物性改良剤10gと準強力小麦粉
(日清製粉社製)1000gとを均一に混合し、食塩4
g及び粉末かん水15gを溶解した水469gを添加
し、10分間攪拌混合し、得られた生地を圧延ロールに
より圧延して麺帯を調製し、18番切刃で切り出して生
麺線となし、室温で12時間熟成し、生中華麺約100
0gを得た。
【0088】この生中華麺を沸騰水中で3分20秒間茹
で、茹で麺試料とした(試料A)、何も添加せずに製造
した茹で麺試料(試料B)、及び実施例4で得られた物
性改良剤の代わりにカゼインナトリウム(ニュージーラ
ンドデイリーボード製)を添加して同様に得た茹で麺試
料(試料C)をそれぞれ製造した。
【0089】これら3種の茹で麺試料について、試験例
3と同一のパネルにより外観(色調、光沢、及び肌荒
れ)、風味、食感(こしの強さ、滑らかさ、及び湯伸び
し難さ)の各項目について、次の基準により評価し、そ
の平均値を算出(少数第2位を四捨五入)し、外観、風
味、及び食感の項目ごとに集計し、かつ外観、風味、及
び食感の合計を総合点として集計して試験した。
【0090】 2:良好 1:やや良好 0:普通 −1:やや不良 −2:不良
【0091】その結果は、表4に示すとおりであり、総
合点は試料Aが3.6、試料Bが1.6、試料Cが2.
9、であり、外観、風味、及び食感の各項目も試料Aが
最も高い値を示し、本発明の物性改良剤を使用すること
により、麺の風味を損なわずに食感を向上させ得ること
が認められた。
【0092】
【表4】
【0093】実施例5 市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード
製。純度85%)0.5kgを4kgの水道水に分散
し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に
調整し、90℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶
解し、溶液を50℃に冷却し、パパインW―40(天野
製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当
たり0.02%(カゼイン1gに対して80単位)、プ
ロテアーゼNアマノ(天野製薬社製。バシラス・ズブチ
ルス由来のズブチリシン。力価150U/mg)を固形
分量でカゼイン当たり0.02%(カゼイン1gに対し
て30単位)添加し、50℃で5時間保持し、のち85
℃で10分間加熱して酵素の失活と殺菌を行い、25℃
に冷却し、吸着樹脂(北越炭素工業製。KS)を用いて
SV=2h-1で樹脂量の10倍容量を通液し、次いで1
20℃で15秒間加熱し、減圧乾燥機を用いて濃度18
%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)
で噴霧乾燥し、物性改良剤約0.35kgを得た。
【0094】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90
%、製品100g当たりカルシウム15mg、マグネシ
ウム3mg、ナトリウム及びカリウムの合計1650m
g、リン780mg、塩素150mgを含有しており、
試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の
粘度は28mPa・s、遊離アミノ酸率0.6%、10
000ダルトン超の分子量画分83.2%、1000ダ
ルトン以下の分子量画分4.8%であった。
【0095】参考例5 特級すり身(日本水産社製)1kgをサイレントカッタ
ーで5分間粉砕し、食塩30gを添加して5分間攪拌
し、これに実施例5で得られた物性改良剤20gを70
0gの水に溶解した溶液と、澱粉50g、冷凍卵白20
g、調味料80gを添加して6分間攪拌して混合した。
得られた混合物をケーシング詰めとして10℃で一晩静
置し、90℃で30分間加熱後放冷し、かまぼこを得た
(試料A)。
【0096】一方、物性改良剤を添加せずに同様に調製
した試料(試料B)、及び物性改良剤の代わりにカゼイ
ンナトリウム20gを使用して同様に調製した試料(試
料C)をそれぞれ製造した。
【0097】これらの3種のかまぼこについて参考例4
と同一の方法により試験を行った結果は、表5に示すと
おりであり、総合評点は試料Aが4.6、試料Bが4.
0、試料Cが4.2であり、外観、風味、及び食感の各
項目も試料Aが最も高い値を示し、本発明の物性改良剤
を使用することにより、かまぼこの風味を損なわずに弾
力を向上させ、食感を向上させ得ることが認められた。
【0098】
【表5】
【0099】
【発明の効果】以上詳細に説明したとおり、本発明は、
食品の物性改良剤及びその製造法に係るものであり、本
発明により奏される効果は、次のとおりである。
【0100】1)合成の物性改良剤とは異なり、食品成
分を原料とした天然の物質であり、優れた栄養価を有し
ている。 2)カゼイン類の複数の物性改良特性を保有しており、
食品の増粘、結着、乳化、保水、増量、及び起泡性の保
持等の目的で広範囲に使用することができる。 3)カゼイン類に特有の素材臭が低減されている。 4)理化学的性状をカゼインナトリウムとは明確に区別
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A23L 1/30 A23L 1/30 A 4B047 1/325 101 1/325 101D (72)発明者 齋藤 仁志 神奈川県座間市東原五丁目1番83号 森永 乳業株式会社栄養科学研究所内 (72)発明者 越智 浩 神奈川県座間市東原五丁目1番83号 森永 乳業株式会社栄養科学研究所内 Fターム(参考) 4B018 LE03 MD21 MD22 ME02 MF03 MF06 MF12 4B032 DB01 DB05 DK23 DL02 DL03 4B034 LC06 LK20X LK29X LK34X LP01 4B035 LC03 LE01 LG15 LG44 LK04 LK05 LK13 4B046 LA05 LC01 LG20 LG43 4B047 LB09 LE01 LG19

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳
    糖を含有し、かつ純度80%(重量)以上のカゼインの
    エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵
    素との併用による加水分解物であって、次のa)〜e)
    の理化学的性質、 a)蛋白質含量が85%(重量)以上であること b)製品100g当たりカルシウム50mg以下、マグ
    ネシウム10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計
    1400±300mg、リン700±200mg並びに
    塩素300mg以下の無機質を含有すること c)10%(重量)濃度溶液の25℃における粘度が1
    5mPa・s以上であること d)蛋白質100g当たりに含まれる全アミノ酸の質量
    合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重
    量)未満であること e)10000ダルトン超の画分が75%以上であり、
    1000ダルトン以下の画分が10%以下であること を有することを特徴とする食品の物性改良剤。
  2. 【請求項2】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素
    が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアー
    ゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択
    される一種又は二種以上の混合物である請求項1に記載
    の食品の物性改良剤。
  3. 【請求項3】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素
    が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリプ
    シン、及びズブチリシンからなる群より選択される一種
    又は二種以上の混合物である請求項1又は請求項2のい
    ずれかに記載の食品の物性改良剤。
  4. 【請求項4】 他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌
    破砕物である請求項1に記載の食品の物性改良剤。
  5. 【請求項5】 乳酸菌が、ラクトコッカス属に属する微
    生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコ
    ッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテリウム属
    に属する微生物からなる群より選択される一種又は二種
    以上の混合物である請求項4に記載の食品の物性改良
    剤。
  6. 【請求項6】 それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳
    糖を含有し、かつ純度が80%(重量)以上のカゼイン
    を溶解し、カゼイン溶液にカゼイン1g当たり20〜2
    00単位のエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独
    又は他の酵素と併用して添加し、40〜60℃で2〜1
    0時間処理し、処理液を80℃以上140℃以下の温度
    で殺菌し、減圧濃縮機により濃縮し、チャンバー温度を
    80℃以上95℃以下に調整した噴霧乾燥機により乾燥
    し、得られた粉を40℃以下に冷却することを特徴とす
    る食品の物性改良剤の製造法。
  7. 【請求項7】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素
    が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアー
    ゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択
    される一種又は二種以上の混合物である請求項6に記載
    の食品の物性改良剤の製造法。
  8. 【請求項8】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素
    が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリプ
    シン、及びズブチリシンからなる群より選択される一種
    又は二種以上の混合物である請求項6又は請求項7のい
    ずれかに記載の食品の物性改良剤の製造法。
  9. 【請求項9】 他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌
    破砕物である請求項6に記載の食品の物性改良剤の製造
    法。
  10. 【請求項10】 乳酸菌が、ラクトコッカス属に属する
    微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプト
    コッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテリウム
    属に属する微生物からなる群より選択される一種又は二
    種以上の混合物である請求項9に記載の食品の物性改良
    剤の製造法。
  11. 【請求項11】 カゼイン溶液又は処理液が、強酸性陽
    イオン交換樹脂に通液され、製品100g当りのカルシ
    ウム含量を50mg以下、マグネシウム含量を10mg
    以下に低減された請求項6に記載の食品の物性改良剤の
    製造法。
  12. 【請求項12】 カゼイン溶液又は処理液が、風味及び
    臭気の低減のため吸着樹脂に通液される請求項6に記載
    の食品の物性改良剤の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006238811A (ja) * 2005-03-04 2006-09-14 Amimoto Giken Kk 玄米入り豆腐及びその製造方法

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