JP6184362B2 - 多電極片面サブマージアーク溶接方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、4電極を用いる高速片面サブマージアーク溶接法において、溶接終了時に健全なビードを形成する終端処理方法に関して記載されている。
また、特許文献2には、特に3電極以上の片面サブマージアーク溶接の継手終端部に発生する割れを防止することができる多電極サブマージアーク溶接法における終端処理方法に関して記載されている。
また、特許文献3には、溶接される板材の板厚に拘わらず、スラグ巻き込み等の欠陥及び終端割れの発生を防止することができる4電極片面サブマージアーク溶接方法に関して記載されている。
特許文献4には、エンドタブの小型化及び軽量化が可能であり、作業性を改善することができる片面サブマージアーク溶接の終端割れ防止方法に関して記載されている。
特許文献5には、高速片面サブマージアーク溶接により、継手終端部まで健全な溶接部を得ることができる片面サブマージアーク溶接方法に関して記載されている。
シーリングカスケードビードを用いた技術では、シーリングカスケードビードで継手終端部の回転変形を抑制するため割れ防止率は高い。しかし、継手終端部には裏ビードを形成させないため、溶接後に手直しをする必要が生ずる。また、予めシーリングカスケードビードを形成させる必要があるため、手間を要する。
また、本発明の課題は、溶接作業性および溶接品質に優れるとともに、継手始端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、溶接作業性および溶接品質に優れるとともに、継手始端部および継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することにある。
多電極片面サブマージアーク溶接(以下、適宜、サブマージアーク溶接という)において、従来の溶接速度の速い溶接条件では、鋼板の内側から外側に向けて回転変形が生じる開口変形となる。これに対し、溶接速度を所定以下の遅い条件とすると、鋼板の外側から内側に向けて回転変形が生じる収縮変形となる。したがって、回転変形により割れが生じやすい継手終端部または継手始端部、あるいはその両方において、溶接速度を所定以下の遅い条件とすることで、終端割れまたは始端割れ、あるいはその両方の割れを防止できることを見出した。さらには、溶接速度を所定以下の遅い条件とすることで、溶接後の角変形を抑制できることを見出した。
本溶接速度をこのように規定すれば、板厚8〜40mmの範囲でより安定して溶接品質を確保することができる。
前記70%以下の溶接速度をこのように規定すれば、溶接能率を著しく阻害することがなく、また、ビード外観がより良好となる。さらには、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。
また、本発明の溶接方法は、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、作動させる電極数を減らして調整することができる。
かかる溶接方法によれば、厚板鋼板の溶接に適用でき、また、高能率化と溶接品質とをより両立しやすくなる。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、継手始端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる。また、継手始端部において、表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができ、溶接品質にも優れたものとなる。さらには、溶接作業性を向上させることができる。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、継手始端部および継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる。また、継手始端部および継手終端部において、表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができ、溶接品質にも優れたものとなる。さらには、溶接作業性を向上させることができる。
[第1の溶接方法]
本発明の第1の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法である。そして、この溶接方法は、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うものである。さらには、この溶接方法は、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように溶接するものである。
(溶接装置)
図1に示すように、溶接装置100は、架台フレーム11と、溶接機12と、溶接機ビーム13と、を主に備える。
溶接機ビーム13は、溶接機12を鋼板20の長手方向に沿って移動させるものである。
溶接機12は、架台フレーム11の上方(鋼板20の上方)に配置され、鋼板20の溶接開先部M(図2参照)の表側から鋼板20を溶接するものである。溶接機12は、ここでは4本の電極(溶接トーチ)15を備える。溶接機12は、溶接機ビーム13に沿って所定速度で移動しながら、溶接開先部Mの表側から電極15によって片面サブマージアーク溶接により鋼板20を溶接する。電極15はここでは4本としているが、2本以上であればよい。厚板鋼板の溶接に適用でき、また、高能率化と溶接品質とをより両立しやすくする観点から、電極は2〜4本であることが好ましい。
鋼板20としては、例えば造船用鋼板が挙げられ、その長さは、例えば10〜30mである。図2に示すように、この鋼板20には、鋼板20同士を突き合わせ、溶接開先部Mの位置で、断続あるいは連続した面内仮付がなされている。面内仮付が断続してなされているとは、鋼板20同士の接合箇所(溶接箇所)の全てで面内仮付がなされているのではなく、接合箇所(溶接箇所)の数箇所で面内仮付がなされていることを意味する。そして、その箇所数は溶接において特に問題が生じない範囲で設定すればよい。また、面内仮付が連続してなされているとは、鋼板20同士の接合箇所(溶接箇所)の全てで面内仮付がなされていることを意味する。なお、連続した面内仮付がなされているものは、1層のみからなるシーリングビードと同等のものであり、2層以上からなるシーリングカスケードビードとは異なるものである。ここで、シーリングカスケードビードとは、2層以上(多層)で、かつ段状になっているものをいう。面内仮付は、従来公知の仮付溶接の方法により行えばよい。
この鋼板20の始端31および終端32には、クレータを処理するためのタブ21,22が取り付けられている。なお、本発明に用いるタブ21,22には、スリットなどは特に設けない。
ここで、通常、本溶接での溶接速度は一定となるが、溶接処理の都合上、溶接箇所によっては、速度がやや低下する場合がある。したがって、溶接速度の減速後の速度率は、例えば、本溶接の最高速度を基準に規定することができる。なお、通常は、本溶接速度の最高速度は、本溶接条件の最適速度、すなわち予め設定した本溶接速度となる。
また、継手始端部とは、サブマージアーク溶接において一般的に認識されている部位であり、始端31およびその周辺を意味する。継手始端部は、例えば鋼板20の長さが10〜30mのとき、例えば鋼板20の始端31から500mmまでの範囲の部位とすることができる。
また、継手終端部とは、サブマージアーク溶接において一般的に認識されている部位であり、終端32およびその周辺を意味する。継手終端部は、例えば鋼板20の長さが10〜30mのとき、例えば鋼板20の終端手前1000mmの位置から終端32までの範囲の部位とすることができる。
図5に示すように、本溶接速度で一定のまま始端31から終端32まで溶接した場合は、終端32側には開口変形αが認められる。そして、終端32側の変形量測定位置F2で変形量を測定すると、図6に示すように、終端32から約2000mmの位置から変形が始まっている。なお、変形量測定位置F2および変形量測定位置F1はおよその位置として図示している。そして、この約2000mmの位置から終端32に向かうにつれて変形量Tが大きくなる。本発明では、溶接条件(溶接速度)の変更は、変形量Tが十分に小さい位置である、終端32から1000mmの位置までに行う必要がある。溶接条件の変更が、鋼板20の終端手前1000mm未満の位置では、継手終端部の変形量Tが大きいため終端割れが発生する。また、継手終端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接条件の変更範囲は、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置とする。変形量がより小さい位置から溶接条件を変更させる観点から、溶接条件の変更位置は、好ましくは鋼板20の終端手前1200mm以上の位置、より好ましくは1500mm以上の位置、さらに好ましくは2000mm以上の位置とする。なお、上限については特に規定されるものではないが、溶接の効率をより向上させる観点から、溶接条件の変更位置は、鋼板20の終端手前2500mm以下の位置が好ましく、2000mmの位置がより好ましい。
終端32側の所定領域において、溶接速度の減速後の速度率を本溶接速度に対して70%以下とすることで、終端32側の所定領域は収縮変形βとなる。減速後の速度率が本溶接速度に対して70%を超えると、終端32側の所定領域は開口変形αのままであり、終端割れが生じる。また、継手終端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は、本溶接速度に対して70%以下とする。終端32側の所定領域をより収縮変形βにしやすくする観点から、減速後の速度率は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%である。なお、減速後の速度率が40%以上であれば、溶接能率を著しく阻害することがない。また、減速後の速度率が40%以上であれば、健全な溶接金属を確保するための電流値が高くなり、アークを持続するのが困難とならずビード外観がより良好となる。さらに、減速後の速度率が40%以上であれば、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は40%以上とすることが好ましい。
次に、溶接条件の移行範囲について図2を参照して説明する。
図2に示す符号aは本溶接条件(本溶接速度)の範囲、符号b1、b2は低速条件(減速溶接速度)の範囲、符号c1、c2は溶接条件移行範囲である。図2に示すように、本発明の溶接方法では、本溶接条件から、減速後の速度率が70%以下である低速条件に移行するための移行範囲(溶接条件移行範囲)c2が存在してもよい。この移行範囲c2は、本溶接条件よりも低速であり、かつ減速後の速度率が70%を超えるものである。
すなわち、鋼板20の溶接において、予め設定した鋼板20の終端手前1000mm以上の位置よりもやや始端31側である移行範囲c2に電極15がきたときに、徐々に減速をはじめ、予め設定した鋼板20の終端手前1000mm以上の位置に電極15がきたときに、減速後の速度率を70%以下とするものである。この移行範囲c2の長さは特に規定されるものではないが、例えば、50〜500mmである。ただし、溶接装置100の設定等によっては、予め設定した鋼板20の終端手前1000mm以上の位置に電極15がきたときに、本溶接条件から、急速に減速後の速度率を70%以下とするものであってもよい。
なお、この移行範囲c2については、始端31側、すなわち、減速後の速度率が70%以下である低速条件から、本溶接条件に移行する範囲(移行範囲c1)についても同様である。始端31側の移行範囲c1の長さは特に規定されるものではないが、例えば、50〜500mmである。
鋼板20の溶接において、溶接速度のみを変化させた場合、過剰な入熱となり低速による収縮変形βの効果と溶接品質の確保は困難となる。つまり減速溶接速度での溶接の総入熱が本溶接の総入熱に対して1.30倍を超えると、収縮変形βは認められず、終端割れが生じ、また、継手終端部の角変形が大きくなる。さらには、溶接品質についても裏ビードの余盛が過剰となり、健全な溶接金属にはならない。一方、減速溶接速度での溶接の総入熱が本溶接の総入熱に対して0.60倍未満では、収縮変形βは認められるものの、アークを持続することが困難となり表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができない。したがって、本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、減速溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」とする。
なお、総入熱Qは、下記計算式で算出することができる。
電極数を減らす場合は、例えば、本溶接で2〜4本の電極15を用いる場合に、作動させる電極数を1〜3本に減らすことで減速溶接速度での溶接の総入熱を調整することができる。すなわち、本溶接で作動させる電極数よりも、減速溶接速度での溶接で作動させる電極数を減らして調整する。なお、作動させる電極とは、電流を供給してアークを発生させる電極を意味する。このように調整することによって、電極15に供給する電流の制御がより容易となり、溶接能率がより向上する。
本発明の第2の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法である。そして、この溶接方法は、前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うものである。さらには、この溶接方法は、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように溶接するものである。
図5に示すように、本溶接速度で一定のまま始端31から終端32まで溶接した場合は、始端31側には開口変形αが認められる。そして、始端31側の変形量測定位置F1で変形量Tを測定すると、図7に示すように、変形量Tは、溶接開始位置Gから、始端31から約1000mmの位置まで増大し、それ以降は急激に増大したのちに小さくなる。すなわち、溶接開始位置Gから、始端31から約1000mmの位置まで所定の変形量Tの開口変形が認められ、それ以降は変形量Tの急激な増大を伴う開口変形を示したのちに収縮変形となる。このため、低速条件(減速溶接速度)から本溶接条件(本溶接速度)への変更は、開口変形が生じ、かつ、割れの生じやすい位置である、始端31から500mm未満の位置よりも終端32側で行う必要がある。始端31から500mm未満の位置では、本溶接条件とした場合、割れの生じやすい継手始端部で開口変形αが生じ、始端割れが発生する。また、継手始端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接条件(溶接速度)の変更範囲は、鋼板20の始端31から500mm以上の位置までとする。変形量Tがより大きくなる位置まで低速条件として始端割れの発生をより抑制する観点から、溶接条件の変更位置は、好ましくは鋼板20の始端31から700mm以上の位置まで、より好ましくは1000mm以上の位置までとする。なお、上限については特に規定されるものではないが、溶接の効率をより向上させる観点から、溶接条件の変更位置は、鋼板20の始端31から1300mm以下の位置が好ましく、1000mmの位置がより好ましい。
始端31側の所定領域において、溶接速度の減速後の速度率を本溶接速度に対して70%以下とすることで、始端31側の所定領域は収縮変形βとなる。減速後の速度率が本溶接速度に対して70%を超えると、始端31側の所定領域は開口変形αのままであり、始端割れが生じる。また、継手始端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は、本溶接速度に対して70%以下とする。始端31側の所定領域をより収縮変形βにしやすくする観点から、減速後の速度率は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%である。なお、減速後の速度率が40%以上であれば、溶接能率を著しく阻害することがない。また、減速後の速度率が40%以上であれば、健全な溶接金属を確保するための電流値が高くなり、アークを持続するのが困難とならずビード外観がより良好となる。さらに、減速後の速度率が40%以上であれば、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は40%以上とすることが好ましい。
溶接入熱に関しては、第1の溶接方法と同様であるので、説明を省略する。
本発明の第3の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法である。そして、この溶接方法は、前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接、および、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うものである。さらに、この溶接方法は、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように溶接するものである。
(準備工程)
準備工程では、まず、タブ21,22が取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板20,20を準備する。次に、裏当装置50aの裏当銅板55上面、あるいは、裏当装置50bの耐火性キャンバス56内のフラックス袋57上面に、図示しないフラックス供給手段により裏当フラックス52を供給する。そして、鋼板20,20を溶接装置100にセットし、裏当装置50aあるいは裏当装置50bの上方に鋼板20,20によって形成された溶接開先部Mを配置させる。そして、図示しない駆動装置を作動させて溶接開先部Mの直下に裏当銅板55あるいは耐火性キャンバス56が位置するように微調整を行う。次に、エアホース59に圧縮空気を導入し、エアホース59を膨張させて裏当銅板55あるいはフラックス袋57を溶接開先部Mの裏側に押圧し、溶接開先部Mの裏面に裏当フラックスを押し当てる。
溶接工程では、まず、溶接装置100の溶接機12を溶接開始の位置に移動させる。次に、電極15に電流を供給し、溶接機12を作動させる。そして、鋼板20の始端31から終端32に向かって溶接機ビーム13に沿って溶接機12を所定速度で移動させながら、表フラックス51を供給しながら鋼板20,20を溶接する。
この溶接工程での溶接は、前記説明したように、鋼板20の始端31から500mm以上の位置まで、および、鋼板20の終端32手前1000mm以上の位置から終端32まで、のいずれか一方、あるいは両方の溶接を前記した所定条件で行う。
ここでの溶接方法では、本溶接において3または4本の電極15を採用して溶接するものとする。鋼板20の始端31から500mm以上の位置までの範囲(低速条件範囲b1)、および、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置から終端32までの範囲(低速条件範囲b2)において、作動させる電極15として1または2本の電極15を採用するものとする。そして、低速条件範囲b1において、溶接速度が、予め設定した本溶接速度の70%以下となるように、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整する。この減速した溶接速度で、鋼板20の始端31から500mm以上の所望の位置まで溶接する。次に、溶接条件移行範囲c1で、3または4本の電極15を作動させたり、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整したりして溶接速度を徐々に上げていく。そして、本溶接条件の範囲aを本溶接速度で溶接する。次に、溶接条件移行範囲c2で、1または2本の電極15を作動させたり、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整したりして溶接速度を徐々に下げていく。そして、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置から終端32までの範囲(低速条件範囲b2)において、本溶接速度の70%以下となるように、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整する。この減速した溶接速度で、鋼板20の終端手前1000mm以上の所望の位置から終端32までの範囲を溶接する。なお、溶接速度の調整とともに、本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、減速溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように、作動させた電極15の溶接電流や電圧、溶接速度、作動させる電極数などを適宜調整する。なお、溶接速度の変更や総入熱の調整は、例えば、溶接装置の設定による自動制御や手動にて行えばよい。
始端割れ、終端割れについては、割れの有無を目視にて観察して評価した。
角変形量は、図10、11に示すように、鋼板20の継手始端部および継手終端部について、鋼板20の設置面からの角変形量tを測定することにより評価した。図11の角変形量tは、図10の符号Pで示した部位における、始端31あるいは終端32の矢印の方向から見たものである。なお、継手始端部についての試験は、始端31の角変形量tについて評価し、継手終端部についての試験は終端32の角変形量tについて評価し、両方についての試験は両方の角変形量tについて評価した。
1:7mm以上
2:4mm以上7mm未満
3:1mm以上4mm未満
4:0mm以上1mm未満
とし、4mm未満のものを合格とした。
溶接品質は、表ビードおよび裏ビードを目視にて観察して評価した。表ビードおよび裏ビードは、余盛が過少もしくは過剰、アンダーカットが多発したもの、あるいはビード外観が不良となったものを不良とした。
これらの結果を表4に示す。
一方、本発明の範囲を満足しないNo.7〜16は、以下の結果となった。
12 溶接機
13 溶接機ビーム
15 電極
20 鋼板
21,22 タブ
31 始端
32 終端
50a,50b 裏当装置
51 表フラックス
52 裏当フラックス
53 スラグ
54 溶接金属
55 裏当銅板
56 耐火性キャンバス
57 フラックス袋
58 下敷フラックス
59 エアホース
100 溶接装置
F1,F2 変形量測定位置
G 溶接開始位置
H 溶接終了位置
M 溶接開先部
P 角変形量の測定部位の概略
α 開口変形
β 収縮変形
Claims (8)
- タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、
前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、
Q’/Q=0.60〜1.30
となるように溶接することを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法。 - タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、
前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、
Q’/Q=0.60〜1.30
となるように溶接することを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法。 - タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接、および、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、
前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、
Q’/Q=0.60〜1.30
となるように溶接することを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法。 - 前記本溶接の溶接速度は、400〜1500mm/minであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
- 前記70%以下の溶接速度は、200mm/min以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
- 前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、電流、電圧、および溶接速度のうちの1つ以上で調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
- 前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、作動させる電極数を減らして調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
- 2〜4電極で行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
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