JP6119949B1 - 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

初層溶接条件、特に溶接トーチ角度や溶接入熱量、ウイービング条件を適正に制御して、初層溶接における接合深さを20mm以上65mm以下とするとともに、最終層溶接時に、厚鋼材に溶接トーチ側から厚鋼材の開先の表当て材として上進方向に摺動移動が可能な冷却板を押し当て、溶接トーチの上進移動に合わせて冷却板を上進移動させつつ溶接を行う。

Description

本発明は、狭開先ガスシールドアーク溶接方法に関するものであって、特には2枚の厚鋼材の突き合わせ溶接に適用することができる、立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法に関するものである。
本発明において、「狭開先」とは、開先角度が25°以下でかつ被溶接材となる鋼材間の最小開先幅が、当該鋼材の板厚の50%以下であることを意味する。
鋼の溶接施工に用いられるガスシールドアーク溶接は、CO2単独のガス、またはArとCO2との混合ガスを溶融部のシールドに用いる消耗電極式が一般的である。このようなガスシールドアーク溶接は、自動車、建築、橋梁、造船および電気機器等の製造分野において幅広く用いられている。
ところで近年、鋼構造物の大型化・厚肉化に伴い、製作過程での溶接、特に鋼材の突き合わせ溶接における溶着量が増大し、さらには溶接施工に多くの時間が必要となり、施工コストの増大を招いている。
これを改善する方法として、板厚に対して小さい間隙の開先をアーク溶接法により溶接する、狭開先ガスシールドアーク溶接の適用が考えられる。この狭開先ガスシールドアーク溶接は、通常のガスシールドアーク溶接と比べ溶着量が少なくなるので、溶接の高能率化・省エネルギー化が達成でき、ひいては施工コストの低減をもたらすものと期待される。
一方、立向きの高能率溶接には、通常、エレクトロスラグ溶接が適用されているが、1パス大入熱溶接が基本であり、板厚が60mmを超える溶接では入熱過多となり靭性低下が懸念されている。また、1パス溶接には板厚の限界があり、特に板厚が65mmを超える溶接は、未だ技術確立できていないのが現状である。
このため、狭開先ガスシールドアーク溶接を立向き溶接に適用した、高品質でかつ高能率な溶接方法を開発することが望まれている。
このような狭開先ガスシールドアーク溶接を立向き溶接に適用した溶接方法として、例えば、特許文献1には、両面U型開先継手を対象とする両側多層溶接方法が開示されている。この溶接方法では、イナートガスを用いたTIG溶接による積層溶接を行っており、イナートガスを用いることでスラグやスパッタの発生を抑制し、積層欠陥を防ぐこととしている。
しかしながら、非消耗電極式であるTIG溶接は、消耗電極である鋼ワイヤを用いるMAG溶接やCO2溶接と比較して、溶接法そのものの能率が大きく劣る。
また、特許文献2には、スパッタや融合不良を抑制するために溶接トーチのウイービングを行う、狭開先の立向き溶接方法が開示されている。
しかし、この溶接方法では、溶接トーチのウイービング方向が、開先深さ方向ではなく、鋼板表面方向であるため、溶融金属が垂れる前に溶接トーチをウイービングさせる必要があり、結果的に、溶接電流を150A程度の低電流とし、1パス当たりの溶着量(≒入熱量)を抑える必要が生じる。
そのため、この溶接方法を板厚の大きい厚鋼材の溶接に適用する場合には、少量多パスの積層溶接となって、溶け込み不良等の積層欠陥が多くなる他、溶接能率が大きく低下する。
さらに、特許文献3には、特許文献2と同様、融合不良を抑制するために溶接トーチのウイービングを行う、立向き溶接方法が開示されている。
ここで開示される面角度(開先角度)は26.3〜52°と広めではあるが、ここでの溶接トーチのウイービングは開先深さ方向に対しても行われる。そのため、特許文献3の立向き溶接方法では、1パス当たりの溶着量を比較的多くとることが可能である。
しかし、開先深さ方向のウイービング量が小さく、また溶接金属および溶接ワイヤ組成が考慮されていないため、1パス当たりの溶着量(≒入熱量)を抑える必要が生じ、1パス当たりの溶接深さは10mm程度と浅くなる。
そのため、この溶接方法を板厚の大きい厚鋼材の溶接に適用する場合には、やはり少量多パスの積層溶接となって、溶け込み不良等の積層欠陥が多くなる他、溶接能率が低下する。
また、特許文献4には、極厚材の1パス溶接を可能にした2電極のエレクトロガスアーク溶接装置が開示されている。
この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置の使用により、板厚:70mm程度までの厚鋼材の接合が可能になる。しかし、2電極化により入熱量が360kJ/cm程度と大幅に増加する。このため、鋼板への熱影響が大きく、継手に高い特性(強度、靭性)が要求される場合、このような特性を満足させることが非常に困難となる。
また、この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置では、裏面側電極のアークが見えにくくなるため、溶接欠陥の防止が難しくなる問題がある。さらに、この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置では、開先寸法精度などの問題から開先内に銅当金を設置することは難しく、このため、多パスの積層溶接として低入熱化を図ることは困難である。
特開2009−61483号公報 特開2010−115700号公報 特開2001−205436号公報 特開平10−118771号公報
上記したように、厚鋼材の溶接に適用することができる、高品質でかつ高能率な立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法は、未だ開発されていないのが現状である。
一方、溶接自動化技術(溶接ロボット)の軽量・高機能・高精度化が進み、これまで困難であった開先形状と溶接姿勢に適した溶接トーチのウイービングが可能となり、これを活用することにより、鋼材、開先形状、溶接姿勢および溶接材料(ワイヤ)に適した溶接施工(条件設定)が可能となってきている。
本発明は、高機能でかつ高精度の溶接自動化技術を活用することにより、厚鋼材、特には板厚が40mm以上の厚鋼材の溶接に適用することが可能な、高品質でかつ高能率な立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく、厚鋼材に立向き狭開先ガスシールドアーク溶接を適用する場合の溶接条件について、鋭意研究を重ねた。
その結果、厚鋼材の立向きの狭開先ガスシールドアーク溶接を行うにあたり、溶接金属および熱影響部において所望の機械的特性を得るとともに、溶接の高能率化を実現するには、狭開先として溶着量を低減しつつ、1パスあたりの溶接入熱量を抑制し、初層溶接における接合深さ(溶接深さ)を所定の範囲に制御することが重要であることを知見した。
そこで、発明者らは、上記した溶接を行うための溶接条件について、さらに研究を進めた。その結果、開先条件を所定の条件とした上で、初層の溶接条件、特に溶接トーチ角度およびウイービング条件を適正に制御することで、立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れの抑制を含むビード形状の安定化と溶接欠陥の発生防止とを図りつつ、上記した初層溶接における接合深さが達成できた。そして、これにより、板厚が40mm以上の厚鋼材であっても、所望の機械的特性が得られる、高品質でかつ高能率な立向き狭開先ガスシールドアーク溶接を行うことが可能になるとの知見を得た。
また、上記のような立向きガスシールドアーク溶接を行う場合、最終層溶接の溶接条件によっては、最終的に得られる溶接継手のビード外観が劣化し易くなるという問題も見られたため、発明者らは、この点を解決すべくさらに検討を進めた。
その結果、最終層溶接時に、厚鋼材に溶接トーチ側から厚鋼材の開先の表当て材として上進方向に摺動移動が可能な冷却板を押し当て、溶接トーチの上進移動に合わせて冷却板を上進移動させつつ溶接を行うことにより、簡便に美麗なビード外観を得ることができるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.開先角度を25°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚が40mm以上である2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
初層溶接時には、溶接トーチの角度を水平方向に対して25°以上75°以下、溶接入熱を30kJ/cm以上300kJ/cm以下にするとともに、板厚方向へのウイービング深さを15mm以上63mm以下、かつ初層溶接における溶接ビード幅をWとした場合に、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅を(W−6)mm以上Wmm以下として、溶接トーチのウイービングを行い、前記初層溶接における接合深さを20mm以上65mm以下とし、
最終層溶接時には、前記厚鋼材に溶接トーチ側から前記厚鋼材の開先の表当て材として上進方向に摺動移動が可能な冷却板を押し当て、前記溶接トーチの上進移動に合わせて前記冷却板を上進移動させつつ溶接を行う、
立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
2.前記初層溶接のウイービングにおいて、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンがコの字形である、前記1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
3.前記初層溶接における溶接金属のS量およびO量の合計が450質量ppm以下でかつ、N量が120質量ppm以下である、前記1または2に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
4.前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が1.5質量%以上3.5質量%以下である、前記1〜3のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
5.前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.08質量%以上0.50質量%以下である、前記1〜4のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
6.前記初層溶接のシールドガスとして、20体積%以上のCO2ガスを含有するガスを用いる、前記1〜5のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
7.前記初層溶接の平均溶接電流が270A以上360A以下である、前記1〜6のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
本発明によれば、板厚が40mm以上の厚鋼材を溶接する場合であっても、立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れ抑制を含むビード形状の安定化と溶接欠陥を防止しつつ、高品質でかつ高能率な狭開先ガスシールドアーク溶接を実施することができる。
そして、本発明の溶接方法は、通常のガスシールドアーク溶接と比べ溶着量が少なく、溶接の高能率化による省エネルギー化も達成できるので、溶接施工コストの大幅な低減が可能となり、さらには簡便に美麗なビード外観を得ることが可能となる。
各種開先形状の例を示すものである。 V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施工する際の施工要領の一例を示すものである。 V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施した後の開先断面の一例を示すものである。 初層溶接のウイービングにおける、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンの例を示すものであり、(a)がコ字形、(b)が台形、(c)がV字形、(d)が三角形のものである。 本発明の一実施形態に係る溶接方法により、最終層溶接を施工する際の施工要領の一例を示すものである。 発明例(No.7)において、初層溶接を施した後の写真であり、(a)は全体の外観を、(b)は開先断面を示すものである。
以下、本発明を具体的に説明する。
図1(a)〜(c)は、各種開先形状の例を示すものである。図中、符号1が厚鋼材、2が厚鋼材の開先面、3が(Y形開先における)鋼材下段部の開先であり、記号θで開先角度を、Gで開先ギャップを、tで板厚を、hで(Y形開先における)鋼材下段部の開先高さを示す。
同図で示したように、ここで対象とする開先形状はV形開先(I形開先およびレ形開先を含む)およびY形開先のいずれとすることも可能であり、また図1(c)に示すように多数段のY形開先とすることも可能である。
なお、図1(b)および(c)に示すように、Y形開先の場合の開先角度および開先ギャップは、鋼材下段部の開先における開先角度および開先ギャップとする。ここで、鋼材下段部の開先とは、溶接時に裏面(溶接装置(溶接トーチ)側の面を表面、その反対側の面を裏面とする)となる鋼材面から板厚の20〜40%程度までの領域を意味する。
また、図2は、V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施工する際の施工要領を示すものである。図中、符号4が溶接トーチ、5が溶接ワイヤ、6が裏当て材であり、φが水平方向に対する溶接トーチの角度である。なお、溶接線、溶融池および溶接ビードについては、図示を省略している。
ここで、本溶接方法は、図2に示すように、所定の板厚となる2枚の厚鋼材を突き合わせ、これらの厚鋼材同士を、ウイービングを用いる立向き溶接により接合するガスシールドアーク溶接であり、進行方向を上向きとする上進溶接を基本とする。
なお、ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でも同様である。
さらに、図3は、V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施した後の開先断面を示すものである。図中、符号7が溶接ビード(初層溶接における溶接ビード)であり、記号Dで初層溶接における接合深さを、Wで初層溶接における溶接ビード幅(初層溶接後の開先間のギャップ)を示す。
なお、初層溶接における接合深さDは、溶接時に裏面となる鋼材面を起点とした場合の初層溶接における溶接ビード高さの最小値(起点の鋼材面から最も近い(低い)初層溶接における溶接ビード高さ)である。
ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でもDおよびWは同様である。
次に、本発明の溶接方法において、底部開先角度、底部開先ギャップおよび鋼材の板厚を前記の範囲に限定した理由について説明する。
開先角度θ:25°以下
鋼材の開先部は小さいほどより早く高能率な溶接を可能とする反面、融合不良等の欠陥が生じやすい。また、開先角度が25°を超える場合の溶接は、従来の施工方法でも実施可能である。このため、本発明では、従来の施工方法では施工が困難であり、かつ一層の高能率化が見込まれる開先角度:25°以下の場合を対象とする。
なお、V形開先において、開先角度が0°の場合はいわゆるI形開先と呼ばれ、溶着量の面からはこの0°の場合が最も効率的であり、開先角度が0°(I形開先)であってもよいが、溶接熱ひずみにより溶接中に開先が閉じてくるため、これを見込んで、板厚t(ただし、Y形開先の場合には鋼材下段部の開先高さh)に応じた開先角度を設定することが好ましい。
具体的には、開先角度は(0.5×t/20)°以上、(2.0×t/20)°以下とすることが好ましく、さらに好ましくは(0.8×t/20)°以上、(1.2×t/20)°以下である。例えば、板厚tが100mの場合、開先角度は2.5°以上、10°以下が好ましく、さらに好ましくは4°以上、6°以下である。
ただし、板厚tが100mmを超えると、好適範囲の上限は10°を超えるようになるが、この場合の好適範囲の上限は10°とする。
開先ギャップG:20mm以下
鋼材の開先部は小さいほど、より早く高能率な溶接を可能とする。また、開先ギャップが20mmを超える場合の溶接は、溶融金属が垂れ易く施工が困難である。その対策には、溶接電流を低く抑えることが必要となるが、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生し易くなる。そのため、開先ギャップは20mm以下の場合を対象とする。好ましくは4mm以上、12mm以下である。
板厚t:40mm以上
鋼材の板厚は40mm以上とする。というのは、鋼材の板厚が40mm未満であれば、従来の溶接方法、例えば、特許文献4のエレクトロガスアーク溶接を用いても、継手の強度や靭性などの性能に大きな問題は生じないためである。
なお、一般の圧延鋼材を対象とする場合、板厚は一般に100mmが上限である。よって、鋼材の板厚は100mm以下とすることが好ましい。なお、一層溶接の場合には65mm以下とすることが好ましい。
なお、被溶接材とする鋼種としては、高張力鋼(例えば、造船用極厚YP460MPa級鋼(引張強さ570MPa級鋼)や建築用TMCP鋼SA440(引張強さ590MPa級鋼))が特に好適である。というのは、高張力鋼は、溶接入熱制限が厳しく、溶接金属に割れが生じ易い他、溶接熱影響により要求される継手強度や靭性が得られない。これに対し本発明の溶接方法では、入熱量:300kJ/cm以下で効率良く溶接が可能であり、590MPa級高張力鋼板、高合金系となる590MPa級耐食鋼の溶接も可能である。当然、軟鋼にも問題なく対応できる。
以上、本発明の溶接方法において、開先角度、開先ギャップおよび鋼材の板厚を限定した理由について説明したが、本発明の溶接方法では、上記した厚鋼材の開先形状および板厚に適した入熱量で効率良く溶接するため、初層溶接条件を適正に制御しつつ初層溶接における接合深さを所定の範囲とすることが重要である。
以下、これら初層溶接における接合深さの限定理由および初層溶接条件について、説明する。
初層溶接における接合深さD:20mm以上65mm以下
板厚:40mm以上の厚鋼材を、特に2パス以上の多層溶接で溶接するには、初層溶接における接合深さを20mm以上とする必要がある。初層溶接における接合深さが20mm未満では、溶接熱が集中するため、溶融金属の垂れが発生する。一方、初層溶接における接合深さが65mmを超えると、溶接入熱が過多となりやすい他、高温割れや、溶接中の熱が分散することによる開先面の融合不良、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が発生する。従って、初層溶接における接合深さは20mm以上65mm以下とする。好ましくは、25mm以上、60mm以下である。なお、一層溶接の場合、初層溶接における接合深さDは板厚と同程度(40mm以上)となる。
溶接トーチ(給電チップ先端)の角度φ:水平方向に対して25°以上75°以下
溶接トーチの角度は垂直より水平に近づけることで、アークが溶接ビード表面より裏面向きとなり、溶融金属の垂れを抑制することができる。ここで、溶接トーチの角度が水平方向に対して25°未満では、溶接ビードの形成が困難である。一方、溶接トーチの角度が水平方向に対して75°超では、溶融金属の垂れを抑制することが困難となる。従って、溶接トーチの角度は水平方向に対して25°以上75°以下とする必要がある。好ましくは30°以上、45°以下である。
溶接入熱量:30kJ/cm以上300kJ/cm以下
多層溶接では、1パス当たりの入熱量(=溶着量)を大きくすることでパス数を減らし、溶接積層欠陥を低減することができる。しかし、溶接入熱量が大きくなり過ぎると、溶接金属の強度、靭性の確保が難しくなる他、鋼材熱影響部の軟化抑制、結晶粒粗大化による靭性の確保が難しくなる。特に、溶接入熱量が300kJ/cmを超えると、溶接金属の特性確保のため、鋼材希釈を考慮した専用ワイヤが不可欠となり、さらに、鋼材でも、溶接入熱に耐えられる設計の鋼材が必要となる。一方、溶融金属を確保し、溶接欠陥のない溶接部を得るためには、溶接入熱量は高い方が有利であり、狭開先において溶接入熱量が30kJ/cm未満では開先面の溶融が不足し、積層欠陥の発生が避けられない。
従って、溶接入熱量は、30kJ/cm以上300kJ/cm以下とする。好ましくは、90kJ/cm以上、280kJ/cm以下である。
溶接トーチのウイービングにおける板厚方向へのウイービング深さL:15mm以上63mm以下
本溶接方法は溶接トーチのウイービングを行うものであるが、この溶接トーチのウイービングにおける板厚方向へのウイービング深さLならびに後述する板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mを適正に制御することが重要である。
なお、各種ウイービングパターンにおける板厚方向へのウイービング深さLならびに板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mは、図4(a)〜(d)に示すとおりになる。
ここで、本溶接方法で基本とする立向き上進溶接においては、接合深さと板厚方向のウイービング幅は同程度になる。このため、板厚方向へのウイービング深さが15mm未満では、初層溶接における接合深さを20mm以上とすることが困難である。一方、板厚方向へのウイービング深さが63mmを超えると、初層溶接における接合深さを65mm以下とすることが困難となる。さらには、溶接入熱量が過多となって、溶接金属や鋼材の熱影響部において所望の機械的特性を得ることが困難となる他、高温割れや、溶接中の熱が分散することによる開先面の融合不良、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が発生し易くなる。
従って、板厚方向へのウイービング深さは、15mm以上63mm以下とする。好ましくは、25mm以上、60mm以下である。
溶接トーチのウイービングにおける板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅M:(W−6)mm以上Wmm以下(W:初層溶接における溶接ビード幅)
開先面の未溶融を防ぐためには、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅を(W−6)mm以上とする必要がある。一方、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅がWmmを超えると、溶融金属が垂れてしまい溶接が成り立たない。
従って、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅は、(W−6)mm以上Wmm以下の範囲とする。好ましくは、(W−4)mm以上、(W−1)mm以下である。
なお、一層溶接の場合、Wは溶接時に表面(溶接装置(溶接トーチ)側の面)となる鋼材面での開先幅となる。
また、溶接トーチのウイービングパターンについては特に限定されず、図4(a)〜(d)に示すように、溶接線方向(溶接進行方向と一致し、通常は鉛直方向)から見てコの字形、V字形、台形および三角形等とすることができる。なお、図4(a)〜(d)中、溶接トーチの向きが変わる各点(図4(a)でいうとB点およびC点)での溶接トーチの軌跡は、角張るようにしても、丸みを帯びるようにしてもよい。
ただし、立向き上進溶接においては、溶接表面側に近い箇所でのウイービングは溶融金属の垂れ落ちを生じさせ易い。また、溶接トーチ動作が開先面とずれると、開先面の均一な溶融が得られず、融合不良等の溶接欠陥が生じ易い。特に、反転動作を必要としない一般的な台形および三角形のウイービングパターンは、装置負荷が小さい反面、溶接表面側に近い箇所での溶接トーチ動作(図4(b)における台形ウイービングパターンのD点→A点、図4(d)における三角形ウイービングパターンのC点→A点)により、溶融金属の垂れ落ちが生じ易い。このため、溶融金属の垂れ落ちを抑制するという観点からは、溶接表面側でのトーチ動作のないコの字形またはV字形のウイービングパターンとすることが好ましい。
さらに、V字形や三角形のウイービングパターンでは、開先ギャップが大きい(例えば、6mm以上)場合、溶接トーチ動作が開先面とずれてしまい(例えば、図4(c)におけるA点→B点の動作において、溶接トーチ先端の軌跡が開先面(溶接トーチに近い側)と平行でなくなるなど)、開先面の均一な溶融が得られず、融合不良等の溶接欠陥が生じ易くなる。従って、このような場合には、開先面と平行に溶接トーチを動作させることが可能なコの字形のウイービングパターンとすることが最適である。
なお、板厚方向における、ウイービング時の溶接トーチ先端の最深点(例えば、図4(a)、(b)におけるB点およびC点、図4(c)、(d)におけるB点)の鋼材裏面からの距離aは、通常2〜5mm程度である。
また、上記した開先形状に対し、コ字形ウイービングや台形ウイービングを適用する場合、図4(a)、(b)中のM1、M2、M3は、それぞれ2〜18mm、0〜10mm、0〜10mm程度となる。
さらに、ウイービング時の周波数や停止時間(図4に示すA点などの各点における停止時間)は特に限定されるものではなく、例えば周波数は0.25〜0.5Hz(好ましくは0.4Hz以上、0.5Hz以下)、停止時間は0〜0.5秒(好ましくは0.2秒以上、0.3秒以下)程度とすればよい。
以上、基本条件について説明したが、本発明の溶接方法では、以下の条件をさらに満足させることにより、特に立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れを抑制し、ビード形状の一層の安定化を図ることができる。
初層溶接における溶接金属のS量およびO量の合計量:450質量ppm以下
安定した立向き上進溶接を実現するには、溶融金属の垂れを防ぎ、かつ安定した溶接ビード形状(凹凸のない平滑なビード)を得る必要があり、特に、溶融金属の垂れを防ぐには、溶融金属の表面張力と粘性の低下させるS量およびO量を低く管理することが重要である。
ここに、溶接金属のS量およびO量の合計量が450質量ppm(以下、単にppmともいう)を超えると、表面張力と粘性の低下に加えて溶接金属の対流が表面で外向きとなり、高温の溶接金属が中央から周辺に向かって対流して、溶融金属が広がりを持ち、溶融金属の垂れが生じ易くなる。このため、溶融金属の表面張力と粘性、湯流れを支配する、溶接金属のS量およびO量は、これらの合計量で450ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは400ppm以下である。なお、下限については特に限定されるものではないが、15ppmとすることが好ましい。
また、溶接ワイヤには、表面張力を下げ、溶接ビードを平坦化する目的で、通常、Sが0.010〜0.025質量%含まれている。溶接金属のS量の低減には、このような溶接ワイヤ自体のS量の低減に加えて、鋼材中のS量を下げることが有効である。
さらに、溶接金属のO量は、シールドガス中のCO2の酸化により増加する。例えば、シールドガスとして100体積%CO2ガスを用いる場合、溶接金属中のO量は、0.040〜0.050質量%程度増加する。このような溶接金属のO量の低減には、溶接ワイヤ自体に通常0.003〜0.006質量%程度含まれるOの低減に加えて、溶接ワイヤへのSiおよびAl添加が有効である。また、溶接電流およびアーク電圧を高くし、溶融金属中のスラグメタル反応(脱酸反応)とスラグの凝集、溶接ビード表面への浮上を十分に行わせることも有効である。
初層溶接における溶接金属のN量:120ppm以下
溶接金属中の窒素(N)は、凝固の際に溶接金属より排出され気泡となる。この気泡の発生が湯面の振動を招き、溶融金属の垂れの原因となる。特に、溶接金属中のN量が120ppmを超えると、溶融金属の垂れが生じ易くなることから、初層溶接における溶接金属のN量は120ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは60ppm以下である。なお、下限については特に限定されるものではないが、15ppmとすることが好ましい。
また、通常、溶接ワイヤには不純物として窒素(N)が50〜80ppm含まれており、ここから、シールドガスの不純物と大気の混入により、溶接金属中のN量が20〜120ppm程度増加する。一方、通常、アーク溶接のノズル内径は16〜20mm程度であるため、このようなノズルを用いて、このノズル内径を超える接合深さとなる溶接金属部分を完全にシールドすることは困難であり、結果的に、溶接金属中のN量が200ppmを超えてしまう場合もある。
このようなN量の増加を防ぎ、初層溶接における溶接金属のN量を120ppm以下、さらには60ppm以下とするには、通常のアーク溶接のノズルとは別のガスシールド系統を設け、これにより、溶接金属への大気の混入を抑制することが有効である。
なお、溶接時の鋼材希釈により、鋼材から溶接金属にS、OおよびNが溶出するため、S:0.005質量%以下、O:0.003質量%以下およびN:0.004質量%以下の鋼材を用いることが、上記した初層溶接における溶接金属のS量、O量およびN量を抑制する上では好適である。
初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計:1.5質量%以上3.5質量%以下
上記した溶融金属の垂れを防ぎかつ安定した溶接ビード形状の外観を得るには、適正量のスラグを形成することが重要である。スラグは主にSiO2とMnOで構成されており、このスラグ量は、溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計に大きく左右される。
ここに、溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が1.5質量%未満では、溶融金属の垂れを防ぐのに十分なスラグ量が得られない場合がある。一方、溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が3.5質量%を超えると、スラグが塊となり次層以降の溶接に支障を与える場合がある。従って、初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計は、1.5質量%以上3.5質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.8質量%以上、2.8質量%以下である。
初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計:0.08質量%以上0.50質量%以下
上記した溶融金属の垂れを防ぎかつ安定した溶接ビード形状の外観を得るのに重要な役割を果たすスラグの物性(粘性)に大きく影響するのが、TiO2、Al2O3およびZr2O3である。
ここに、溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.08質量%未満では、溶融金属の垂れを防ぐのに有効なスラグの粘性が得られない。一方、溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.50質量%超えると、スラグの除去、再溶融ともに困難となり、次層以降の溶接に支障をきたすおそれがある。
従って、初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計は、0.08質量%以上0.50質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.15質量%以上、0.25質量%以下である。
なお、上記した以外の溶接ワイヤの成分については、溶接する厚鋼材の成分に応じ適宜選択すればよいが、上記した溶接金属中のS量、O量およびN量を抑制する観点からは、S:0.03質量%以下、O:0.01質量%以下、N:0.01質量%以下とし、さらにSi:0.05〜0.80質量%、Al:0.005〜0.050質量%とした溶接ワイヤ(例えば、JIS Z 3312 YGW18やJIS Z 3319 YFEG-22C等)を用いることが、好適である。
シールドガス組成:CO2ガスを20体積%以上
溶接部の溶け込みは、アークそのものによるガウジング効果と高温状態にある溶接金属の対流によって支配されている。溶接金属の対流が内向きとなる場合、高温の溶接金属が上から下方向に対流するのでアーク直下の溶け込みが増す。一方、溶接金属の対流が外向きとなる場合、高温の溶接金属が中央から左右方向に対流し、溶接ビードが広がりを持つとともに開先面の溶け込みが増す。従って、本発明の目標とする厚鋼材の立向き多層ガスシールドアーク溶接において、溶融(溶接)金属の垂れを抑制し均一な溶接ビード形状を得るには、溶接金属の対流を内向きとすることが好ましい。
ここで、溶接金属の湯流れを支配する酸素(O)を低減する観点で言えば、CO2ガスを低く抑える方が有利であるが、一方でCO2ガスには解離吸熱反応によりアークそのものを緊縮させ、溶接金属の対流をより内向きとする効果がある。
このため、シールドガス組成としては、CO2ガスを20体積%以上とすることが好ましい。より好ましくは60体積%以上である。なお、CO2ガス以外の残部は、Ar等の不活性ガスを用いればよい。また、CO2ガス:100体積%であってもよい。
また、溶接部の溶け込みは、アークの指向性およびガウジング効果にも影響される。従って、溶接の極性は、溶接材料の特性に応じて設定すればよい。
上記以外の条件については、特に規定する必要はないが、平均溶接電流270A未満では、溶融池が小さく、表面側ではトーチウイービング毎に溶融と凝固を繰り返す多層溶接のような状態となり、融合不良やスラグ巻き込みが生じ易い。一方、平均溶接電流が360Aを超えると、溶融(溶接)金属の垂れが生じ易くなる他、溶接ヒュームとスパッタによりアーク点の確認が困難となるため施工中の調整が難しくなる。このため、平均溶接電流は、270〜360Aとすることが好ましい。また、平均溶接電流を270〜360Aとすることで、溶接ヒューム、スパッタの発生を抑えつつ安定した溶込みが得られることから、本溶接方法を実施する上で一層有利となる。
これ以外の条件については定法に従えばよく、例えば、溶接電圧:32〜37V(電流とともに上昇)、溶接速度(上進):2〜15cm/分(好適には4cm/分以上、9cm/分以下)、ワイヤ突き出し長さ:20〜45mm、ワイヤ径:1.2〜1.6mm程度とすればよい。
以上、初層溶接条件について説明したが、本発明の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法では、図5に示すように、最終層溶接時に、厚鋼材1に溶接トーチ4側から厚鋼材1の開先の表当金として上進方向に摺動移動が可能な冷却板8を押し当て、溶接トーチ4の上進移動に合わせて冷却板8を上進移動させつつ溶接を行うことが重要である。これにより、簡便に美麗なビード外観を得ることが可能となる。なお、図5中、最終層溶接における溶融池および溶接ビードについては、図示を省略している。
ここで、冷却板としては、水冷式の銅製の金属板(銅当金)が好適である。また、作業性の観点から、冷却板の上進方向(溶接線方向)における長さは、厚鋼材の長さの0.4〜2.0倍とすることが好適である。
なお、上記した以外の各溶接層における溶接条件については、特に限定されるものではなく、例えば、初層溶接と同様に、接合深さに応じたウイービングを行って、溶接を行えばよい。この場合、溶接電流や溶接電圧、使用するワイヤなどの溶接条件は、初層溶接の場合と同様とすればよい。
また、溶接完了までの積層数は、積層欠陥を防止する観点から2乃至4層程度とすることが好ましい。なお、一層溶接の場合には、初層溶接が最終層溶接となる。
表1に示す開先形状とした2枚の鋼材に、表2に示す溶接条件で狭開先の立向き上進ガスシールドアーク溶接を施した。
ここで、鋼材はいずれも、S:0.005質量%以下、O:0.003質量%以下、N:0.004質量%以下のものを用いた。なお、鋼材の開先加工には、ガス切断を用い、開先面には研削等の手入れは行わなかった。
また、溶接ワイヤは、鋼材強度用またはそれより1ランク上用のグレードの1.2mmφのソリッドワイヤを用いた。なお、使用した溶接ワイヤ中の成分組成はいずれも、S:0.005質量%以下、O:0.003質量%以下、N:0.005質量%以下、Si:0.6〜0.8質量%、Al:0.005〜0.030質量%であった。
さらに、溶接電流は200〜380A、溶接電圧は28〜37V(電流とともに上昇)、平均溶接速度は2.3〜15.0cm/分(溶接中に調整)、平均のワイヤ突き出し長さは30mmとし、溶接長さは400mmとした。また、No.11を除き、通常のアーク溶接のノズルとは別のガスシールド系統を設けて、溶接を行った。
なお、No.1〜19は多層溶接とし、初層以外の各層における溶接でも、溶接電流を270〜330A、溶接電圧を28〜37Vの範囲として、ウイービングを適用したガスシールドアーク溶接を行い、溶接継手を仕上げた。また、No.20は一層溶接として溶接継手を仕上げた。さらに、No.1〜14およびNo.19〜20では、最終層溶接時に、厚鋼材に溶接トーチ側から厚鋼材の開先の表当て材として上進方向に摺動移動が可能な水冷式の銅製の金属板(銅当金)を押し当て、溶接トーチの上進移動に合わせて金属板を上進移動させつつ溶接を行った。一方、No.15〜18では、最終層溶接時に、かような水冷式の銅製の金属板を用いずに溶接を行った。
初層溶接後、任意に選んだ5点の断面マクロ組織観察により、ビード幅および接合深さを測定した。なお、ビード幅については、測定した値の最大値を初層溶接におけるビード幅Wとし、接合深さについては、測定した値の最小値を初層溶接における接合深さDとした。
また、初層溶接時における溶融金属の垂れを、目視により次のように評価した。
◎:溶接金属の垂れなし
○:溶接金属の垂れ2箇所以下
△:溶接金属の垂れ3箇所以上4箇所以下
×:溶接金属の垂れ5箇所以上、または、溶接中断
さらに、最終的に得られた溶接継手について、超音波探傷検査を実施し、次のように評価した。
◎:検出欠陥なし
○:欠陥長さが3mm以下の合格欠陥のみを検出
×:欠陥長さが3mmを超える欠陥を検出
加えて、最終的に得られた溶接継手のビード表面について、外観検査を実施し、次のように評価した。
○:ビード表面の凹凸が小さく、十分な光沢があるもの
×:ビード表面の凹凸が大きいもの
これらの結果を表2に併記する。
Figure 0006119949
Figure 0006119949
表2に示したとおり、発明例であるNo.1〜14およびNo.19〜20では、初層溶接金属の垂れはないか、あっても2箇所以下であった。また、超音波探傷検査でも、検出欠陥がないか、あっても欠陥長さが3mm以下であった。さらに、これらの発明例では、最終的に得られた溶接継手において、ビード表面の凹凸が小さく、美麗なビード外観が得られていた。
一方、比較例であるNo.15〜18は、5箇所以上の溶接金属の垂れがあるか、超音波探傷検査において欠陥長さが3mm超の欠陥が検出された。また、最終層溶接時に、水冷式の銅製の金属板を用いずに溶接を行ったNo.15〜18では、最終的に得られた溶接継手において、ビード表面の凹凸が大きく、十分な光沢が得られていなかった。
また、図6(a)に発明例であるNo.7の初層溶接後の表側(溶接施工側)の外観写真を、図6(b)に断面マクロ組織写真を示す。同図より、ウイービング条件等を適正に制御したNo.7の発明例では、初層溶接における接合深さDが28mm程度と所望の接合深さが得られていることがわかる。また、同時に安定した溶接ビード形状も得られていた。
1:厚鋼材
2:厚鋼材の開先面
3:鋼材下段部の開先
4:溶接トーチ
5:溶接ワイヤ
6:裏当て材
7:溶接ビード(初層溶接における溶接ビード)
8:冷却板
θ:開先角度
G:開先ギャップ
h:鋼材下段部の開先高さ
t:板厚
φ:水平方向に対する溶接トーチの角度
D:初層溶接における接合深さ
W:初層溶接における溶接ビード幅
L:板厚方向へのウイービング深さ
M:板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅

Claims (7)

  1. 開先角度を25°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚が40mm以上である2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
    初層溶接時には、溶接トーチの角度を水平方向に対して25°以上75°以下、溶接入熱を30kJ/cm以上300kJ/cm以下にするとともに、板厚方向へのウイービング深さを15mm以上63mm以下、かつ初層溶接における溶接ビード幅をWとした場合に、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅を(W−6)mm以上Wmm以下として、溶接トーチのウイービングを行い、前記初層溶接における接合深さを20mm以上65mm以下とし、
    最終層溶接時には、前記厚鋼材に溶接トーチ側から前記厚鋼材の開先の表当て材として上進方向に摺動移動が可能な冷却板を押し当て、前記溶接トーチの上進移動に合わせて前記冷却板を上進移動させつつ溶接を行う、
    立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  2. 前記初層溶接のウイービングにおいて、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンがコの字形である、請求項1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  3. 前記初層溶接における溶接金属のS量およびO量の合計が450質量ppm以下でかつ、N量が120質量ppm以下である、請求項1または2に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  4. 前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が1.5質量%以上3.5質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  5. 前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.08質量%以上0.50質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  6. 前記初層溶接のシールドガスとして、20体積%以上のCO2ガスを含有するガスを用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  7. 前記初層溶接の平均溶接電流が270A以上360A以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
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