JP3706892B2 - 4電極片面サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

4電極片面サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、裏当てにフラックス又は固形物を使用して、4電極により溶接する片面サブマージアーク溶接方法に関し、特に、溶接の終端部における割れの発生を防止することができる4電極片面サブマージアーク溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
片面サブマージアーク溶接は、板継ぎ溶接として造船を中心として、広い分野に適用されている高能率の溶接施工方法である。図3は従来の片面サブマージアーク溶接により形成された溶接金属を示す断面図である。対向して配置された一対の鋼板11間を溶接すると、鋼板11の表面側から裏面側に到達する溶接金属12が形成される。しかし、片面サブマージアーク溶接は溶接入熱が大きい条件で実施されるので、鋼板の熱変形が大きくなり、溶接の終端部における溶接金属12の中央部に割れ(終端割れ)12aが発生することがある。
【0003】
そこで、溶接の終端部の割れの発生を抑制することができる方法が提案されている(特公昭51−18234号公報)。これを第1の従来例という。図4は第1の従来例に係る溶接方法を示す平面図である。図4に示すように、一対の鋼板13をその端面同士を当接させて配置すると共に、鋼板13の溶接終端部側の端面にタブ板14を当接させて、タブ板14又は鋼板13の溶接終端部となる両側を油圧ジャッキ15等により拘束した後、鋼板13間に形成された開先13aに沿って溶接する。この方法によると、油圧ジャッキ15等の外圧によってタブ板14又は鋼板13が拘束されて、その変形を抑制することができるので、割れの発生を低減することができる。
【0004】
他に、タブ板の形状を適切なものとすることにより、終端割れの防止を図った終端割れ防止方法が開示されている(特公昭52−30375号公報)。これを第2の従来例という。図5は第2の従来例に係る終端割れ防止方法を示す平面図である。図5に示すように、一対の鋼板16をその端面同士を当接させて配置すると共に、鋼板16の溶接終端部側の端面にエンドタブ板17を拘束溶接した後、鋼板16間に形成された開先16aに沿って溶接する。なお、エンドタブ板17には、鋼板16に当接している側の端面に至る2本の平行なスリット17aが設けられている。
【0005】
このようなエンドタブ板17を使用して溶接すると、エンドタブ板17におけるスリット17aの両側方の領域で、鋼板16に生じる横方向(開先16aが延びる方向に直交する方向)への変形を拘束する。また、エンドタブ板17における2本のスリット17aの間の領域で、鋼板16に生じる縦方向(開先16aが延びる方向)への変形を拘束する。従って、鋼板16の溶接終端部における割れの発生を抑制することができる。
【0006】
また、3以上の電極を使用する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、高速で溶接しても良好な形状の表ビード及び裏ビードを得ることができ、これにより、溶接能率の向上を図った溶接方法も提案されている(特開平3−238174号公報)。
【0007】
更に、2枚の板材間に形成された開先上にシーリングビードを配置し、このシーリングビード上で溶接を終了するサブマージアーク溶接の終端処理方法が開示されている(特開平5−285662号公報)。これは、4電極を使用する多電極溶接であり、第2電極と第3電極との間の距離、第1乃至第4電極のアークの停止位置、溶接速度条件及び溶接電流条件を適切に規定することにより、終端割れの防止を図ったものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、第1の従来例においては、タブ板14又は鋼板13を外圧によって拘束するので、極めて大きい設備が必要となる。また、外圧が厳密に調整されていない場合には、この外圧によって鋼板13の板厚方向に角変形が発生し、終端割れが発生する原因となる。
【0009】
また、第2の従来例を使用して厚板を溶接すると、溶接入熱が大きくなり、それに伴って、発生する熱変形が大きくなるので、板材に対する拘束力が不足して変形を十分に抑制することができずに、割れが発生してしまう。このように、第2の従来例は、適用される板材の板厚の範囲が限定されるという問題点がある。
【0010】
更に、特開平3−238174号公報に記載された高速多電極片面サブマージアーク溶接方法では、従来の100(cm/分)未満の溶接速度で溶接した場合と同様に、終端割れを防止することはできない。更にまた、特開平5−285662号公報に記載された方法を使用しても、終端割れを十分に防止することができないと共に、溶接終端部にスラグ巻き込みが発生して、健全な溶接ビードを得ることができないという問題点がある。
【0011】
このように、いずれの従来の技術を利用しても、溶接終端部における終端割れ及びスラグ巻き込みの発生を完全に防止することはできない。従って、割れ及びスラグ巻き込み等の欠陥を発生させることなく、健全な溶接ビードを得ることができる4電極片面サブマージアーク溶接方法を確立することが要求されている。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、溶接される板材の板厚に拘わらず、スラグ巻き込み等の欠陥及び終端割れの発生を防止することができる4電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る4電極片面サブマージアーク溶接方法は、板厚tが12mm未満である2枚の板材間に開先を形成し、この開先にシーリングカスケードビードを配置して、第1電極乃至第4電極を80(cm/分)以上の速度vで前記開先に沿って溶接方向に進行させつつ前記2枚の板材を溶接接合する片面サブマージアーク溶接方法において、前記シーリングカスケードビードの溶接方向に平行な方向の長さをL1(mm)、前記第1電極により溶融されるシーリングカスケードビードの長さをL2(mm)としたとき、(L1−L2)を200乃至1000mm、前記板材の表面から前記シーリングカスケードビードの上面までの距離dを1mm以下、第2電極と第3電極との間の距離を150乃至250mmとし、第1電極のア−クをシーリングカスケードビードの溶接方向後端部から溶接方向に向かって10乃至50mm前方の位置で停止させると共に、第2電極のアークを第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって30乃至120mm前方の位置で停止させ、第2電極のアーク停止前の第4電極の溶接電流をI(A)としたとき、第2電極のアークを停止した後に第4電極の溶接電流を1.1I乃至1.25I(A)とし、第3及び第4電極の進行速度を0.6v乃至0.85v(cm/分)として、第3及び第4電極のアークを第2電極のアーク停止位置よりも溶接方向前方の位置で停止させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の4電極片面サブマージアーク溶接方法は、前記板厚tが12mm以上である場合に、前記距離dを(t/4−2)mm以下とすることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例に係る4電極片面サブマージアーク溶接方法について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例に係る4電極片面サブマージアーク溶接方法を示す断面図である。図1に示すように、一対の鋼板5には、その表面から端面に至る切欠きにより開先面5aとルート面5bとが設けられており、これらの鋼板5は、そのルート面5b同士が当接した状態で配置されている。
【0016】
このように配置された鋼板5を片面サブマージアーク溶接する場合には、先ず、溶接終端部となる開先にシーリングカスケードビード6を配置すると共に、矢印8で示す溶接方向の前方における鋼板5の端面にエンドタブ板7を当接させる。次に、第1電極1、第2電極2、第3電極3及び第4電極4の先端からアークを発生させつつ、これらの電極を矢印8で示す溶接方向に進行させることにより、鋼板5同士を溶接接合する。本発明においては、第2電極2と第3電極3との間の距離、溶接速度、シーリングカスケードビード6の長さから第1電極により溶融される長さを差し引いた長さ及び鋼板5とのその板厚方向の相対距離、各電極のアーク停止位置並びにシーリングカスケードビード6上での溶接条件の変更を規定している。以下、これらの条件について、具体的に説明する。
【0017】
第2電極と第3電極との間の距離:150乃至250mm
第2電極と第3電極との間の距離は、溶接金属の縦割れを防止して、表ビード及び裏ビードの安定性を確保すると共に、スラグ巻き込み及び融合不良が発生しない健全な溶接部を得るための重要な因子である。溶接速度が80(cm/分)以上になると、第1電極と第2電極との間で形成される溶融プールの長さが約100乃至150mmとなる。そのため、第2電極と第3電極との間の距離が150mm未満である場合には、第1電極、第2電極及び第3電極により形成されるプールが1プールになってしまい、溶け込み形状が縦長になって、溶接金属に縦割れが発生する虞がある。また、裏ビードの形状が不安定にもなる。
【0018】
一方、第2電極と第3電極との間の距離が250mmを超えると、第3電極により健全な溶け込み深さを確保することができなくなると共に、第1及び第2電極により生成されたスラグが完全に凝固して、スラグ巻き込み等の欠陥が発生しやすくなる。更に、第3電極のアークが不安定となって表ビード形状が不安定となる。従って、第2電極と第3電極との間の距離は150乃至250mmとする。
【0019】
溶接速度v:80(cm/分)以上
溶接終端部のアーク熱による変形を抑制するためには、溶接入熱を低減すると共に、溶接速度vを上昇させる方法が効果的である。溶接速度vが80(cm/分)未満であると、溶接終端部の変形を抑制する効果を得ることができない。従って、溶接速度vを80(cm/分)以上にすることにより、アーク熱による変形を抑制する効果が発揮される。
【0020】
1 −L 2 :200乃至1000mm
シーリングカスケードビードは、溶接終端部における鋼板(板材)の変形を防止する目的で溶接終端部となる位置に配置されるものであり、溶接の前後において鋼板の拘束力を十分に確保することが必要である。シーリングカスケードビードの溶接方向に平行な方向の長さをL1、第1電極により溶融されるシーリングカスケードビードの長さをL2としたとき、(L1−L2)が200mm未満であると、鋼板の変形力に対して、シーリングカスケードビードが十分に耐えることができないので、溶接終端部において鋼板の回転変形によって割れが発生する。一方、(L1−L2)が1000mm以上であるか、又は溶接線の全てを覆うシーリングカスケードビードを配置すると、鋼板の回転変形による割れの発生を確実に防止することができるが、このように、(L1−L2)の長さが1000mm以上となる範囲で、又は全溶接線上にシーリングカスケードビードを配置するためには、極めて長い時間が必要になるので、作業能率が著しく低下する。従って、溶接終端部における割れの発生を防止すると共に、作業能率を高めるために、(L1−L2)は250乃至1000mmとする。
【0021】
シーリングカスケードビードの上面と鋼板表面との間の距離d:鋼板の板厚tが12mm未満の範囲では1mm以下、鋼板の板厚tが12mm以上の範囲では (t/4−2)以下
上述の如く、シーリングカスケードビードは溶接終端部における鋼板の回転変形を抑制する目的を有している。従って、シーリングカスケードビードの鋼板に対する拘束力が得られなくなる程度に、第1電極以降の電極によってビードが溶融されると、割れが発生する。第1電極以降の電極がシーリングカスケードビードを通過する際に、シーリングカスケードビードにより鋼板を拘束して、鋼板の回転変形を防止するためには、シーリングカスケードビードの高さが重要な因子となる。また、シーリングカスケードビードの高さは、各板厚に適用される溶接入熱と関連している。
【0022】
図2は縦軸にシーリングカスケードビードの上面と鋼板表面との距離dをとり、横軸に鋼板の板厚tをとって、種々の距離d及び板厚tの場合の割れの発生状況を示すグラフ図である。但し、図2においては、各板厚tに適用される溶接入熱で溶接した結果であり、●は溶接終端部に割れが発生したことを示し、○は割れが発生していないことを示す。図2に示すように、板厚tが12mm未満の範囲では、距離dが1mmを超えると、シーリングカスケードビードの高さが不足して、第1電極が通過した後、拘束力を確保することができずに割れが発生する。また、板厚tが12mm以上の範囲では、距離dが(t/4−2)を超えると、同様に、シーリングカスケードビードによる拘束力を確保することができずに、割れが発生する。従って、鋼板の板厚tが12mm未満の範囲では、シーリングカスケードビードの上面と鋼板表面との距離dは1mm以下、鋼板の板厚tが12mm以上の範囲では、距離dは(t/4−2)以下とする。
【0023】
第1電極のアーク停止位置:シーリングカスケードビードの溶接方向後端部から溶接方向に向かって10乃至50mm前方の位置
図1に示すように、第1電極を溶接方向に向かって進行させ、シーリングカスケードビード6の溶接方向後端部6aから10mm未満の位置でアークを停止させると、アーク停止箇所の近傍で表ビード幅及び余盛り高さが著しく不足して、健全な溶接ビードを得ることができない。一方、第1電極を溶接方向に向かって進行させ、シーリングカスケードビードの溶接方向後端部から50mmを超えた位置でアークを停止させると、表ビードの余盛り高さが過大となる。従って、シーリングカスケードビードの溶接方向後端部から溶接方向に向かって10乃至50mm前方の位置で、第1電極のアークを停止させることが必要である。
【0024】
第2電極のアーク停止位置:第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって30乃至120mm前方の位置
第1電極のアークを停止させた位置においては、非連続的な溶接金属及びスラグが存在するので、第2電極は第1電極のアーク停止位置よりも溶接方向前方でアークを停止させる必要がある。第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって30mm未満の位置で第2電極のアークを停止させると、非連続的な溶接金属及びスラグを第2電極によって除去することができない。一方、第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって120mmを超えた位置で第2電極のアークを停止させると、表ビードの余盛り高さが過大となる。従って、第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって30乃至120mm前方の位置で第2電極のアークを停止させることが必要である。
【0025】
第3電極及び第4電極のアーク停止位置:第2電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって前方の位置
第1電極及び第2電極により形成されたスラグ及び非連続的な溶接金属を取り除くためには、第3電極及び第4電極は、第2電極のアーク停止位置よりも溶接方向前方でアークを停止させる必要がある。なお、第3電極及び第4電極のアーク停止位置は、クレータ処理として配置したタブ板上とすることがより一層好ましい。
【0026】
第2電極のアーク停止後の第4電極の電流値:1.1I乃至1.25I(A)(I;第2電極のアーク停止前の第4電極の電流値)
第1及び第2電極で生成されたスラグを除去すると共に、シーリングカスケードビードによる鋼板に対する拘束力を保持して熱変形を防止するためには、第2電極以降の電極によってシーリングカスケードビードを溶融させすぎず、溶融プールの撹拌力を上昇させることが必要である。第3電極及び第4電極の特徴から、第4電極のアーク直下には先行する第3電極の溶融プールが存在するので、適切な範囲で電流値を増加させても溶け込み深さが大きく変化することはない。一方、第3電極の電流値を増加させると、溶け込み深さが必要以上に深くなってしまう。そこで、第4電極の電流値を増加させることにより、スラグ巻き込み等の欠陥の発生を防止することができる。なお、第1電極及び第2電極のアーク停止位置の近傍においては、溶着量が少なくなっており、これを補うためには、第2電極のアーク停止後に第4電極の電流値を増加させることが必要である。
【0027】
第2電極のアーク停止前の第4電極の電流値をI(A)としたとき、第2電極のアーク停止後の第4電極の電流値を1.1I(A)未満とすると、第1電極及び第2電極により生成されたスラグを十分に除去することができず、スラグ巻き込みが発生する。一方、第2電極のアーク停止後の第4電極の電流値を1.25I(A)を超える値とすると、シーリングカスケードビードの鋼板に対する拘束力が低下して、終端割れが発生する。従って、第2電極のアーク停止後に第4電極の電流値を1.1I乃至1.25I(A)とする。
【0028】
第2電極のアーク停止後の溶接速度:0.60v乃至0.85v(cm/分)(v;第2電極のアーク停止前の溶接速度)
第1電極及び第2電極のアーク停止位置の近傍においては、溶着量が少なくなっているので、前述の如く、本発明においては第4電極の電流値を増加させるものとする。しかし、この方法のみでは不足した溶着量を確保することは困難であり、表ビード幅及び余盛り量が不十分になる。従って、第2電極のアークを停止した後に、溶接速度を低下させる必要がある。
【0029】
第2電極のアーク停止前の溶接速度をv(cm/分)としたとき、第2電極のアーク停止後の溶接速度を0.60v(cm/分)未満とすると、表ビード幅が第2電極のアーク停止前のビード幅よりも広くなると共に、表ビードの余盛りが必要以上に多くなる。また、第3及び第4電極によってシーリングカスケードビードを溶融する量が増加するので、シーリングカスケードビードによる鋼板に対する拘束力が低下して、終端割れが発生する。一方、第2電極のアーク停止後の溶接速度を0.85v(cm/分)を超える値とすると、表ビード幅が第2電極のアーク停止前のビード幅よりも狭くなると共に、表ビードの余盛り不足となるので、健全な溶接ビードを得ることができない。従って、第2電極のアーク停止後に溶接速度を0.60v乃至0.85v(cm/分)とする。
【0030】
なお、本発明に係る4電極片面サブマージアーク溶接方法により鋼板(板材)を溶接する際には、溶接材料として、表側フラックス、裏当て材(フラックス又は固形物)及び電極ワイヤ等を使用することができる。しかし、これらの溶接材料については特に限定されるものではなく、目的に応じた適切な溶接作業性及び溶接金属を得ることができるものを選択することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例に係る4電極片面サブマージアーク溶接方法により鋼板を溶接した試験結果について、その比較例による試験結果と比較して具体的に説明する。下記表1に示す組成を有する鋼板を溶接母材とし、下記表2に示す組成を有するワイヤにより、下記表3に示す粒度及び組成を有する表フラックスを使用して、下記表4に示す溶接条件で片面サブマージアーク溶接を実施し、溶接性について評価した。下記表4に示す溶接条件以外の条件を下記表5乃至8に示し、評価結果を下記表9に示す。なお、下記表3に示す表フラックスは、原料を水ガラスで造粒した後に焼成したボンドフラックスであり、表中のその他の成分としては、CO2、B23、Fe−Si及びFe−Mn等がある。
【0032】
【表1】
Figure 0003706892
【0033】
【表2】
Figure 0003706892
【0034】
【表3】
Figure 0003706892
【0035】
【表4】
Figure 0003706892
【0036】
【表5】
Figure 0003706892
【0037】
【表6】
Figure 0003706892
【0038】
【表7】
Figure 0003706892
【0039】
【表8】
Figure 0003706892
【0040】
【表9】
Figure 0003706892
【0041】
上記表4乃至9に示すように、実施例No.1乃至7は溶接速度、第2電極−第3電極間の距離、第1乃至第4電極のアーク停止位置、第2電極のアーク停止後の溶接速度及び第4電極電流値、並びにL1−L2及びシーリングカスケードビードの上面と鋼板表面との距離dが適切に調整されているので、いずれも良好な表ビード、裏ビード及び溶け込み形状を得ることができ、溶接終端部においても欠陥が発生することなく健全な溶接ビードを得ることができた。
【0042】
一方、比較例No.8は、割れ及びスラグ巻き込みは発生しなかったが、第2電極と第3電極との間の距離が本発明範囲の下限未満であるので、定常部における裏ビードに再溶融が認められた。比較例No.9は第2電極と第3電極との間の距離、及び第2電極のアーク停止後の溶接速度が本発明範囲の下限未満であるので、裏ビード形状が不安定になると共に、シーリングカスケードビードの溶融量が大きくなって、割れが発生した。比較例No.10はL1−L2の値が本発明範囲の下限未満であると共に、第2電極のアーク停止後の第4電極の電流値が本発明範囲の上限を超えているので、シーリングカスケードビードによって鋼板の回転変形を抑制することができず、割れが発生した。また、第2電極と第3電極との間の距離が本発明範囲の下限未満であるので、裏ビードの再溶融が認められた。
【0043】
比較例No.11は溶接速度が本発明範囲の下限未満であるので、第2電極と第3電極との間の距離が本発明範囲の下限未満であることによる裏ビード形状の劣化は発生しなかったが、鋼板の回転変形が大きくなって、割れが発生した。また、第2電極のアーク停止位置が第1電極のアーク停止位置と同じ位置であり、本発明範囲の下限未満であるので、第1電極により生成されたスラグを除去することができず、スラグ巻き込みが発生した。比較例No.12は第3電極及び第4電極のアーク停止位置が第2電極のアーク停止位置と同じ位置であるので、第2電極により生成されたスラグを除去することができず、スラグ巻き込みが発生した。また、開先が溶接されない部分(開先残し)が生じた。
【0044】
比較例No.13は第1電極のアーク停止位置が本発明範囲の上限を超えているので、シーリングカスケードビードによる鋼板に対する拘束力を十分に得ることができず、割れが発生した。また、比較例No.13は第2電極のアーク停止位置が本発明範囲の下限未満であるので、第1電極で形成されたスラグが除去できずに、スラグ巻き込みが発生した。比較例No.14は第2電極のアーク停止後においても、第3電極及び第4電極の溶接速度を変更することなく溶接を続行したので、表ビードの幅が狭くなった。また、比較例No.14は第2電極のアーク停止後の第4電極の電流値が本発明範囲の下限未満であるので、スラグ巻き込みが発生した。
【0045】
比較例No.15は第2電極のアーク停止位置が本発明範囲の上限を超えているので、シーリングカスケードビードの溶融量が増加して、割れが発生すると共に、表ビードの余盛りが過大となった。比較例No.16はシーリングカスケードビードの後端部上で第1電極のアークを停止しているので、この停止位置近傍における表ビードの余盛りが不足した。また、第2電極のアークを停止した後の溶接速度が本発明範囲の下限未満であるので、表ビード幅が狭くなった。更に、L1−L2の値が本発明範囲の下限未満であると共に、シーリングカスケードビードの上面と鋼板表面との間の距離dが本発明範囲の上限を超えているので、鋼板の変位量を低減することができず、割れが発生した。
【0046】
比較例No.17は第2電極のアーク停止後においても、第4電極の溶接電流値を変更することなく溶接を続行したので、スラグ巻き込みが発生した。比較例No.18は第2電極と第3電極との間の距離が本発明範囲の上限を超えているので、第1電極及び第2電極により形成したスラグを除去することができず、スラグ巻き込みが発生した。比較例No.19は、溶接速度が本発明範囲の下限未満であるので、鋼板の回転変形が大きくなり、割れが発生した。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、4電極片面サブマージアーク溶接において、第2電極と第3電極との間の距離、溶接速度、シーリングカスケードビードの長さから第1電極により溶融される長さを差し引いた長さ(L1−L2)及びシーリングカスケードビードの上面と板材表面との間の距離d、第1乃至第4電極のアーク停止位置、並びに第2電極のアーク停止後の溶接速度及び溶接電流条件を適切に規定しているので、板材の板厚に拘わらず、スラグ巻き込み等の欠陥及び終端割れの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る4電極片面サブマージアーク溶接方法を示す断面図である。
【図2】縦軸にシーリングカスケードビードの上面と鋼板表面との距離dをとり、横軸に鋼板の板厚tをとって、種々の距離d及び板厚tの場合の割れの発生状況を示すグラフ図である。
【図3】従来の片面サブマージアーク溶接により形成された溶接金属を示す断面図である。
【図4】第1の従来例に係る溶接方法を示す平面図である。
【図5】第2の従来例に係る終端割れ防止方法を示す平面図である。
【符号の説明】
1,2,3,4;電極
5,11,13,16;鋼板
6;ビード
7,14,17;タブ板
12;溶接金属
12a;割れ
13a,16a;開先
15;油圧ジャッキ
17a;スリット

Claims (2)

  1. 板厚tが12mm未満である2枚の板材間に開先を形成し、この開先にシーリングカスケードビードを配置して、第1電極乃至第4電極を80(cm/分)以上の速度vで前記開先に沿って溶接方向に進行させつつ前記2枚の板材を溶接接合する片面サブマージアーク溶接方法において、前記シーリングカスケードビードの溶接方向に平行な方向の長さをL1(mm)、前記第1電極により溶融されるシーリングカスケードビードの長さをL2(mm)としたとき、(L1−L2)を200乃至1000mm、前記板材の表面から前記シーリングカスケードビードの上面までの距離dを1mm以下、第2電極と第3電極との間の距離を150乃至250mmとし、第1電極のア−クをシーリングカスケードビードの溶接方向後端部から溶接方向に向かって10乃至50mm前方の位置で停止させると共に、第2電極のアークを第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって30乃至120mm前方の位置で停止させ、第2電極のアーク停止前の第4電極の溶接電流をI(A)としたとき、第2電極のアークを停止した後に第4電極の溶接電流を1.1I乃至1.25I(A)とし、第3及び第4電極の進行速度を0.6v乃至0.85v(cm/分)として、第3及び第4電極のアークを第2電極のアーク停止位置よりも溶接方向前方の位置で停止させることを特徴とする4電極片面サブマージアーク溶接方法。
  2. 板厚tが12mm以上である2枚の板材間に開先を形成し、この開先にシーリングカスケードビードを配置して、第1電極乃至第4電極を80(cm/分)以上の速度vで前記開先に沿って溶接方向に進行させつつ前記2枚の板材を溶接接合する片面サブマージアーク溶接方法において、前記シーリングカスケードビードの溶接方向に平行な方向の長さをL1(mm)、前記第1電極により溶融されるシーリングカスケードビードの長さをL2(mm)としたとき、(L1−L2)を200乃至1000mm、前記板材の表面から前記シーリングカスケードビードの上面までの距離dを(t/4−2)mm以下、第2電極と第3電極との間の距離を150乃至250mmとし、第1電極のア−クをシーリングカスケードビードの溶接方向後端部から溶接方向に向かって10乃至50mm前方の位置で停止させると共に、第2電極のアークを第1電極のアーク停止位置から溶接方向に向かって30乃至120mm前方の位置で停止させ、第2電極のアーク停止前の第4電極の溶接電流をI(A)としたとき、第2電極のアークを停止した後に第4電極の溶接電流を1.1I乃至1.25I(A)とし、第3及び第4電極の進行速度を0.6v乃至0.85v(cm/分)として、第3及び第4電極のアークを第2電極のアーク停止位置よりも溶接方向前方の位置で停止させることを特徴とする4電極片面サブマージアーク溶接方法。
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