JP2023023454A - 多電極片面サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

多電極片面サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】厚板においても、スラグ巻込み及び高温割れが発生し難く、裏ビード高さの安定性も良好な多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供する。【解決手段】複数の電極15を用いて、突き合わされた2枚の鋼板20の片面を接合する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、電極15は、第1電極15a、第2電極15b及び第3電極15cの少なくとも3つの電極15を含み、第1電極15aを溶接進行方向Xの先頭とし、次いで第2電極15b、第3電極15cの順に電極15を配置し、第1電極15aの極性:交流、第2電極15bの極性:交流、第1電極15aと第2電極15bの交流の位相差:0°~90°又は275°~360°、及び第2電極15bと第3電極15cとの電極間距離L2:210mm~320mm、の条件で溶接を行う、多電極片面サブマージアーク溶接方法。【選択図】図5

Description

本発明は、多電極片面サブマージアーク溶接方法に関する。
多電極片面サブマージアーク溶接は、板継溶接として造船を中心に、広い分野に適用されている高能率の溶接施工方法である。このような高能率化を図った多電極片面サブマージアーク溶接として、種々の溶接方法が開示されている。
一般的に、鋼板が厚板になるにつれて、裏ビード高さを安定させにくく、梨型の形状となりやすい。そのため、スラグ巻込みや高温割れが発生しやすい。
これに対し、例えば、特許文献1には、第1電極の極性:直流で電極側マイナス、第1電極と第2電極との電極間距離:80mm以上160mm以下、第2電極と第3電極との電極間距離:80mm以上160mm以下、第1電極のアーク電圧:25~40V、第2電極の溶接電流:800~1400Aの条件で溶接を行うことを特徴とする多電極片面1層サブマージアーク溶接方法が開示されている。これにより、厚板においても高温割れを抑制することができる。
また、特許文献2には、先行極の速度制御方式、すなわちワイヤ送給速度が一定速度制御に設定され、後行極では、例えば、給電方式を交流かつ外部特性が定電圧特性に設定されることを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法が開示されている。これにより、裏波ビードの外観不良を低減することができる。
特開2016-193444号公報 特開2015-150571号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている溶接方法は、第1電極の溶接電流に直流を用いていることから、磁気吹きの影響を受けやすい。この磁気吹きの影響により、裏ビード高さに影響が出るおそれがあり、改善の余地がある。また、特許文献2に記載されている溶接方法は、厚板を溶接する場合のスラグ巻込みや高温割れの発生抑制の観点から改善の余地がある。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、厚板においても、スラグ巻込み及び高温割れが発生し難く、裏ビード高さの安定性も良好な多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することを課題とする。
上記課題に対し、本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法は、複数の電極を用いて、突き合わされた2枚の鋼板の片面を接合するが、前記電極は、第1電極、第2電極及び第3電極の少なくとも3つの電極を含み、前記第1電極を溶接進行方向の先頭とし、次いで前記第2電極、前記第3電極の順に前記電極を配置し、前記第1電極の極性:交流、前記第2電極の極性:交流、前記第1電極と前記第2電極の交流の位相差:0°~90°又は275°~360°、及び前記第2電極と前記第3電極との電極間距離:210mm~320mm、の条件で溶接を行うことを特徴とする。
このように、第1電極と第2電極の極性を交流とし、それらの位相差を特定の範囲内とすることで、溶込み形状が安定する。さらに、第2電極と第3電極との電極間距離を特定の範囲内とすることで、裏ビード高さに対する、第3電極以降の電極の影響を小さくできる。その結果、スラグ巻込み及び高温割れがより発生し難く、裏ビード高さも安定させることができる。
上記方法において、前記第1電極のワイヤ径が直径3.2mm~6.4mmであることが好ましい。
これにより、より安定した溶込みが実現され、裏ビード高さがより安定する。また、このような溶接方法とすると、ルート部の溶込み幅を十分に確保することができるので、厚板、すなわち厚みのある鋼板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
また、上記方法において、前記第2電極のワイヤ径が直径4.0mm~6.4mmであり、かつ前記第3電極のワイヤ径が直径4.0mm~6.4mmであることも好ましい。
これにより、より安定した溶込みが実現され、裏ビード高さがより安定する。また、このような溶接方法とすると、ルート部の溶込み幅を十分に確保することができるので、厚板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
また、上記方法において、前記第1電極と前記第2電極との電極間距離が25mm以上80mm未満であることも好ましい。
これにより、より安定した溶込みが実現され、裏ビード高さがより安定する。また、このような溶接方法とすると、ルート部の溶込み幅を十分に確保することができるので、厚板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
また、上記方法において、前記第1電極の電源特性が定電圧であることも好ましい。
これにより、アークの発生位置が安定するため、裏ビード高さがより安定する。
また、上記方法において、フラックスバッキング法を用いることも好ましい。
フラックスバッキング法は、フラックスカッパーバッキング法に比べて裏ビード高さを安定させにくい傾向にある。しかしながら、本実施形態に係る溶接方法は裏ビード高さの安定性に優れることから、フラックスバッキング法を用いた場合でも、裏ビード高さを安定させることができる。
本発明に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法により溶接することで、厚板においても裏ビード高さを安定させやすく、かつスラグ巻込み及び高温割れをより発生し難くすることができる。
図1は、本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法に用いる溶接装置を説明するための概略図である。 図2は、本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法で溶接する鋼板を情報から見た概略図である。 図3は、フラックスカッパーバッキング法により多電極片面サブマージアーク溶接を行う際の様子を示す鋼板周辺の概略断面図である。 図4は、フラックスバッキング法により多電極片面サブマージアーク溶接を行う際の様子を示す鋼板周辺の概略断面図である。 図5は、本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法における電極間距離等を説明するための概略図である。 図6は、耐高温割れ性について説明するための鋼板周辺の概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
<溶接装置>
本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法(以下、単に「溶接方法」と称することがある。)では、例えば図1に示すような溶接装置を用いるが、かかる溶接装置に限定されるものではない。
フラックスカッパーバッキング法を用いる場合には、図3に示すような裏当て装置50aが架台フレーム11の上に配置されている。裏当装置50aの裏当銅板55の上には裏当フラックス52が散布されている。なお、裏当フラックス52は図示しない架台の上に載置された鋼板20の底面に接している。
また、フラックスバッキング法を用いる場合には、図4に示すような裏当装置50bが架台フレーム11の上に配置されている。裏当装置50bの耐火性キャンバス56内には、耐熱カバー57上に下敷フラックス58が充填され、その上に裏当フラックス52が散布されている。なお、裏当フラックス52は図示しない架台の上に載置された鋼板20の底面に接している。
溶接機ビーム13は、溶接機12を鋼板20の長手方向に沿って移動させるものである。
溶接機12は、架台フレーム11の上方、すなわち鋼板20の上方に配置される。そして、図2に示すように、鋼板20の溶接開先部Mの表側から鋼板20を溶接するものである。溶接機12は、複数の電極15を含む複数の溶接トーチを備えている。
溶接機12は、溶接機ビーム13に沿って所定速度で図1の矢印の方向に移動しながら、図2における溶接開先部Mの表側から電極15によって片面サブマージアーク溶接により鋼板20を溶接する。
本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法では、図3や図4に示すように、鋼板20の表側から表フラックス51を用いてサブマージアーク溶接を行い、鋼板20の表面と裏面に同時にビードを形成する。なお、図3及び図4において、符号53はスラグ、符号54は溶接金属、符号57は耐熱カバー、符号58は下敷フラックスを示している。
ここで、溶接方法の一つとしてフラックスカッパーバッキング法が挙げられる。フラックスカッパーバッキング法は、図3に示すように、裏当銅板55上に裏当フラックス52を散布し、裏当銅板55の裏面から押上機構によって裏当銅板55を押圧し、突き合わされた鋼板20の裏面に裏当フラックス52を密着させる溶接方法である。裏当フラックス52の散布は層状になるように散布することが好ましい。また、押上機構としてはエアホース59を用いたエアー圧力等が挙げられる。上記方法により、1パスで溶接することができる。
また、他の溶接方法の一つとして、フラックスバッキング法も挙げられる。フラックスバッキング法は、図4に示すように、耐火性キャンバス56内に収容された裏当フラックス52を押上機構によって押圧し、突き合わされた鋼板20の裏面に裏当フラックス52を密着させる溶接方法である。耐火性キャンバス56内には、耐熱カバー57上に下敷フラックス58が充填され、その上に裏当フラックス52が散布されていることが好ましい。上記方法によっても、1パスで溶接することができる。
フラックスバッキング法は、鋼板20の板厚差がある場合や目違いがある場合でも溶接ができるなどの利点がある。一方で、フラックスカッパーバッキング法と比較して、裏ビード高さを安定させにくい傾向にあった。
これに対し、本実施形態に係る溶接方法を用いることで、フラックスバッキング法であっても裏ビード高さを安定させることができる。このように、本発明は、フラックスバッキング法とともに用いることで、フラックスバッキング法の利点を生かしつつ、従来課題となっていた裏ビード高さを安定させることもできる。そのため、本実施形態に係る溶接方法は、フラックスバッキング法を用いることが好ましい。
<溶接条件>
本実施形態に係る溶接方法は、例えば上記<溶接装置>に記載した装置であって、図5に示すように、溶接進行方向Xの先頭から第1電極15a、第2電極15b及び第3電極15cの順に配置された少なくとも3つの電極15を含む溶接機を用いる。
第1電極15aと第2電極15bの極性を交流とし、それらの位相差を0°~90°又は275°~360°とし、第2電極15bと第3電極15cとの電極間距離L2を210mm~320mmとする。
(第1電極15a)
本実施形態において、第1電極15aの極性は交流とする。これにより、磁気吹きの発生を抑制することができるため、裏ビード高さが安定する。一方、第1電極15aの極性を直流とすると磁気吹きが発生しやすく、アークが偏向するために、裏ビード高さが不安定となる。
第1電極15aの電源特性を定電圧とすると、アーク発生位置が安定するため、裏ビード高さが安定することから好ましい。
第1電極15aのアーク電圧は、例えば、30~45Vとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、第1電極のアーク電圧が高電圧となり過ぎず、電圧値が適切な範囲にあるので、裏ビード高さがより安定する。また、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができるので、厚板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
裏ビード高さのさらなる安定化と高温割れの発生防止を図る観点から、第1電極15aのアーク電圧は32V以上がより好ましく、34V以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、第1電極15aのアーク電圧は、42V以下がより好ましく、40V以下がさらに好ましい。
なお、上記は好ましい数値範囲を例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、第1電極15aのアーク電圧を、例えば、28Vとしたり、48Vとしたりすることを何ら排除するものではない。上記数値範囲外のアーク電圧であっても、裏ビード高さを十分に安定させることができ、また、高温割れも十分に発生し難いものとすることができる。
第1電極15aの溶接電流は、例えば、800~1600Aとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、第1電極15aの溶接電流が高電流となり過ぎず、電流値が適切な範囲にあるので、裏ビード高さがより安定する。また、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができるので、厚板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
裏ビード高さのさらなる安定化と高温割れの発生防止を図る観点から、第1電極15aの溶接電流は900A以上がより好ましく、1000A以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、第1電極15aの溶接電流は1550A以下がより好ましく、1400A以下がさらに好ましい。
なお、上記は好ましい数値範囲を例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、第1電極15aの溶接電流は、例えば、850Aとしたり、1650Aとしたりすることを何ら排除するものではない。上記数値範囲外の溶接電流であっても、裏ビード高さを十分に安定させることができ、また、高温割れも十分に発生し難いものとすることができる。
第1電極15aの後退角θは、図5に示すように、第1電極15aの中心線と、溶接進行方向Xを法線とする面がなす角度で表される。なお、溶接進行方向Xと垂直である場合を0°とし、溶接進行方向X側をプラスとする。
第1電極15aの後退角θは、溶け込みが得られやすく、裏ビード高さを安定して得る観点から、1°以上が好ましく、また、15°以下が好ましい。
第1電極15aのワイヤ径は、直径3.2mm~6.4mmとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、裏ビード幅を十分に確保することができるので、裏ビード高さが安定する。また、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することもできるので、スラグ巻込み及び高温割れをより発生し難くすることもできる。
裏ビード高さのさらなる安定化とスラグ巻込み発生防止を図る観点から、第1電極15aのワイヤ径は直径4.0mm以上がより好ましく、また、直径4.8mm以下がより好ましい。
また、第1電極15aのワイヤ16aは、溶け込みが深く、耐吸湿性も良好であることから、ソリッドワイヤが好ましい。
サブマージアーク溶接では主にソリッドワイヤが使われており、そのワイヤ径は特定の公称径に限定される。そして、実径については、誤差範囲を含むものとして広く解釈されるのが一般的である。
ここで、JIS Z 3200:2005におけるサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤの公称径とは、直径3.2mm、直径4.0mm、直径4.8mm、直径6.4mmであり、それらの許容差は±0.06mmである。
そのため、本実施形態で規定するワイヤ径も、実径として、±0.06mmの誤差を含むものとする。すなわち、例えば、ワイヤ径が直径3.2mmとは、実径として「直径3.2mm±0.06mm」、ワイヤ径が直径4.0mmとは、実径として「直径4.0mm±0.06mm」、ワイヤ径が直径4.8mmとは、実径として「直径4.8mm±0.06mm」、ワイヤ径が直径6.4mmとは、実径として「直径6.4mm±0.06mm」を意味するものとする。
(第2電極15b)
本実施形態において、第2電極15bの極性は交流とする。これにより、磁気吹きの発生を抑制することができるため、裏ビード高さが安定する。一方、第2電極15bの極性を直流とすると磁気吹きが発生しやすく、アークが偏向するために、裏ビード高さが不安定となる。
第2電極15bの電源特性は、例えば、定電流又は垂下とすることが好ましい。これにより溶接電流が安定することで溶け込みもより安定し、高温割れをより発生し難くすることができる。
なお、上記は好ましい一例を示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
第2電極15bのアーク電圧は、例えば、28~43Vとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、第2電極が高電圧となり過ぎず、アーク電圧の電圧値が適切な範囲にあるので、裏ビード高さがより安定する。また、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができるので、厚板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
裏ビード高さのさらなる安定化と高温割れの発生防止を図る観点から、第2電極15bのアーク電圧は30V以上がより好ましく、32V以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、第2電極のアーク電圧は、40V以下がより好ましく、38V以下がさらに好ましい。
なお、上記は好ましい数値範囲を例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、第2電極15bのアーク電圧を、例えば、26Vとしたり、45Vとしたりすることを何ら排除するものではない。上記数値範囲外のアーク電圧であっても、裏ビード高さを十分に安定させることができ、また、高温割れも十分に発生し難いものとすることができる。
第2電極15bの溶接電流は、例えば、600~1300Aとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、第2電極15bが高電流となり過ぎず、溶接電流の電流値が適切な範囲にあるので、裏ビード高さがより安定する。また、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができるので、厚板を溶接する場合であっても高温割れをより発生し難くすることができる。
裏ビード高さのさらなる安定化と高温割れの発生防止を図る観点から、第2電極15bの溶接電流は700A以上がより好ましい。また、同様の観点から、第2電極15bの溶接電流は1200A以下がより好ましく、1100A以下がさらに好ましい。
なお、上記は好ましい数値範囲を例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、第2電極15bの溶接電流は、例えば、550Aとしたり、1400Aとしたりすることを何ら排除するものではない。上記数値範囲外の溶接電流であっても、裏ビード高さを十分に安定させることができ、また、高温割れも十分に発生し難いものとすることができる。
第2電極15bの後退角θは、図5に示すように、第2電極15bの中心線と、溶接進行方向Xを法線とする面がなす角度で表される。
第2電極15bの後退角θは1°以上が好ましく、また、15°以下が好ましい。かかる範囲内とすることで、第2電極15bで形成される溶融池が溶接進行方向Xに押し流されにくくなる。その結果、第1電極15aで形成される溶融池の状態を阻害せず、裏ビード高さを安定させることができる。
第2電極15bのワイヤ径は、直径4.0mm~6.4mmとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができ、スラグ巻込み及び高温割れを発生し難くすることができる。
裏ビード高さのさらなる安定化とスラグ巻込み発生防止を図る観点から、第2電極15bのワイヤ径は直径4.8mm以上がより好ましい。
(第3電極15c)
本実施形態において、第3電極15cの極性は、直流、交流のいずれも使用でき、直流の場合には、直流棒プラスであるDCEPと直流棒マイナスであるDCENのいずれも使用できる。中でも、溶接金属中にワイヤの化学成分が多く歩留まるようにし、溶接金属の化学成分の歩留まりがより安定し、機械的性質を良好なものとする観点から、交流が好ましい。
第3電極15cの電源特性は、例えば、定電流又は垂下特性を選択することが好ましい。これにより溶接電流が安定することで溶け込みもより安定し、高温割れをより発生し難くすることができる。
なお、上記は好ましい一例を示したに過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、第3電極15cの電源特性を定電圧とすることを何ら排除するものではなく、定電圧であっても溶け込みは十分に安定し、高温割れを十分に発生し難いものとすることができる。
第3電極15cのアーク電圧の範囲は特に限定されず、従来公知の一般的な条件に適宜設定して溶接できる。一般的な条件としては、例えば、第3電極15cのアーク電圧は40V~48Vが挙げられる。ただし、これは好ましい数値範囲の例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
第3電極15cの溶接電流の範囲も特に限定されず、従来公知の一般的な条件に適宜設定して溶接できる。一般的な条件としては、例えば、第3電極15cの溶接電流は700A~1500Aが挙げられる。ただし、これは好ましい数値範囲の例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
また、第2電極15bと第3電極15cとの距離を210mm以上とすることに合わせて第3電極15cの溶接電流を高くすることで、スラグ巻込みを防ぐことができる。このようなスラグ巻込みを防止する観点からは、第3電極15cの溶接電流は800A以上が好ましく、900A以上がより好ましい。
第3電極15cの前進角θは、図5に示すように、第3電極15cの中心線と、溶接進行方向Xを法線とする面がなす角度で表される。前進角の場合は、溶接進行方向Xに対して反対側をプラスとする。
第3電極15cの前進角θは1°以上が好ましく、また、15°以下が好ましい。かかる範囲内とすることで、第3電極15cのアークは溶接進行方向Xに傾くので、第1電極15a及び第2電極15bで形成されたスラグが、第3電極15cのアーク熱で溶かされるので、ワイヤがスラグに衝突せずに済むために、アークが安定する。
第3電極15cのワイヤ径は、直径4.0mm~6.4mmとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができ、スラグ巻込み及び高温割れを発生し難くすることができる。
裏ビード高さのさらなる安定化とスラグ巻込み発生防止を図る観点から、第3電極15cのワイヤ径は直径4.8mm以上がより好ましい。
(第4電極15d以降)
本実施形態に係る溶接方法における電極15は、溶接進行方向Xの先頭から順に、第1電極15a~第3電極15cとなる少なくとも3つの電極を含めばよく、それ以上は任意である。
例えば図5に示すように、溶接機12の電極15は、図中矢印で示す溶接進行方向Xの先頭から順に、第1電極15a、第2電極15b、第3電極15cの3つの電極を備える。各電極15は溶接線方向に沿って配置されている。この電極15は、必要に応じてさらに図5中の破線で示す第4電極15dを含めた4つの電極を備えてもよい。
第4電極15dを備えることで、プール(溶融池)をさらに盛ることできるようになる。一方、本発明の効果は、第1電極15a、第2電極15b及び第3電極15cが上述した条件を満たせば奏されるため、電極15を3本とするか4本とするかは任意に設定できる。また、電極15の数は4つを上限とするものではなく、所望により5つ以上としてもよい。
第4電極15d又はそれ以降の電極の電源特性は、例えば、定電流又は垂下特性を選択することが好ましい。これにより溶接電流が安定することで溶け込みもより安定し、高温割れをより発生し難くすることができる。
なお、上記は好ましい一例を示したに過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、第4電極15dやそれ以降の電極の電源特性を定電圧とすることを何ら排除するものではなく、定電圧であっても溶け込みは十分に安定し、高温割れを十分に発生し難いものとすることができる。
第4電極15dやそれ以降の電極のアーク電圧や溶接電流の範囲は特に限定されず、従来公知の一般的な条件に適宜設定して溶接できる。一般的な条件としては、例えば、第4電極については、アーク電圧は40V~50Vが挙げられ、溶接電流は700A~1500Aが挙げられる。ただし、これらは好ましい数値範囲の例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
第4電極15dのワイヤ径は、直径4.0mm~6.8mmとすることが好ましい。かかる範囲とすることで、ルート部の溶け込み幅を十分に確保することができ、スラグ巻込み及び高温割れを発生し難くすることができる。
このように、第4電極15dやそれ以降の電極については、ワイヤ径、アーク電圧、溶接電流、極性などに関して特に限定や好ましい範囲はなく、一般的な条件で行うことができる。この一般的な条件としては、例えば、ワイヤ径:直径4.0mm~6.8mm、アーク電圧:40V~50V、溶接電流:700A~1500Aと設定することができる。また、別の条件としては、ワイヤ径:直径6.4mm、アーク電圧:46V、溶接電流:1300A、極性:交流又は直流等と設定することができる。
(第1電極15aと第2電極15b)
第1電極15aと第2電極15bの交流の位相差は、0°~90°又は275°~360°とする。なお、360°と0°とは同じである。
第1電極15aと第2電極15bの位相差を上記範囲とすることで、第3電極15c以降の電極で発生する溶接金属が、第1電極15aと第2電極15bを用いた溶接で形成する溶接金属に対し深く溶け込み、スラグ巻込み及び高温割れを発生し難くすることができる。この溶け込みの深さは、第1電極15aと第2電極15bを用いた溶接で形成する溶接金属及びスラグの表面が平滑となる影響と考えられる。
なお、第1電極15aと第2電極15bの位相差が90°超275°未満の場合には、耐スラグ巻込み性及び耐高温割れ性が劣化する。
第1電極15aと第2電極15bの交流の位相差が0°~90°の範囲内である場合、かかる位相差は80°以下が好ましく、70°以下がより好ましく、60°以下がさらに好ましい。また、第1電極15aと第2電極15bの交流の位相差が275°~360°の範囲内である場合、かかる位相差は280°以上が好ましく、290°以上がより好ましく、300°以上がさらに好ましい。
第1電極15aと第2電極15bとの電極間距離は、図5のL1で表される距離である。電極間距離L1とは、溶接を行う際の電極15の配置において、第1電極15aから突出しているワイヤ16aの先端を、図5中で破線で示すようにそのまま延長させて鋼板20と接する箇所と、第2電極15bから突出しているワイヤ16bの先端を、図5中で破線で示すようにそのまま延長させて鋼板20と接する箇所との距離である。
なお、第2電極15bと第3電極15cとの電極間距離L2についても同様に、第2電極15b、第3電極15cのそれぞれから突出しているワイヤ16bとワイヤ16cの先端を、それぞれ延長させて鋼板20と接する箇所の距離を意味する。
第1電極15aと第2電極15bの電極間距離L1は、例えば、25mm以上80mm未満とすることが好ましい。かかる範囲とすることで、第1電極15aと第2電極15bが形成する溶融池が1プール又はセミ1プールとなるために、ルート部のデンドライトが真横に成長することを阻害し、高温割れをより発生し難くすることができる。
裏ビード高さをより安定化する観点から、電極間距離L1は30mm以上がより好ましく、45mm以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、電極間距離L1は70mm以下がより好ましく、60mm以下がさらに好ましい。
第2電極15bのアーク電圧(V2)に対する第1電極15aのアーク電圧(V1)の比率V1/V2は、1.01以上が好ましい。これにより、第2電極15bのアーク発生点の位置が下がるため、ルート部の溶け込み幅が得られ、スラグ巻き込み及び融合不良の発生を抑制することができる。
V1/V2で表される比率は、より好ましくは1.03以上であり、さらに好ましくは1.05以上である。V1/V2で表される比率の上限は特に限定されないが、実際的には1.5以下であり、好ましくは1.3以下である。
また、第1電極15a~第3電極15cにおけるワイヤ16a~16cの突出し長さA1~A3は、本実施形態においてはいずれも特に制限されるものではなく、一般的な範囲で設定することができる。また、電極15が第4電極15dやそれ以降の電極を備える場合において、第4電極15dのワイヤ16dの突出し長さA4やそれ以降の電極のワイヤの突出し長さについても同様である。
ただし、上記第1電極15aと第2電極15bの少なくとも一方は、ワイヤの突出し長さA1,A2を20mm以上とすることが好ましい。ワイヤの突出し長さA1,A2を20mm以上とすることにより、ワイヤがチップに融着しにくくなる。ワイヤの突出し長さA1,A2は25mm以上とすることがより好ましい。また、上記第1電極15aと第2電極15bの少なくとも一方は、ワイヤの突出し長さA1,A2を40mm以下とすることが好ましい。ワイヤの突出し長さA1,A2を40mm以下とすることにより、ワイヤ狙い位置のズレを生じにくくなり、溶込み及び裏ビード高さが安定する。
(第2電極15bと第3電極15c)
第2電極15bと第3電極15cの電極間距離L2は、210mm~320mmである。かかる範囲とすることで、第2電極15bと第3電極15cとの間隔が適切であるので第2電極による溶接後の冷却が適切となる。具体的には、第2電極15bによる溶接で形成されたプールが冷却されてから第3電極15cによる溶接を行うことができる。そのため、第1電極15aと第2電極15bの溶接のみで裏ビードを形成することができ、裏ビード高さが安定となる。
電極間距離L2が210mm未満であると、第2電極15bと第3電極15cとの間隔が小さいため第2電極15bによる溶接で形成されるプールが冷却しきらず、第3電極15cのアークが第2電極による溶接で形成されるプールに干渉する。そのため、第1電極15aと第2電極15bの溶接による裏ビード形成に、第3電極15cによる溶接が干渉し、裏ビード高さが不安定となる。
また、電極間距離L2が320mmを超えると、第2電極15bと第3電極15cとの間隔が大きすぎて、第2電極15bによる溶接で形成されるスラグが完全に凝固して、第2電極15bによる溶接で形成する溶接金属を覆う。そのため、第3電極15cを用いたアーク開始時に、第3電極15cのワイヤの先端が、第2電極15bによる溶接で形成される溶接金属に届かず、アークが発生しない。
電極間距離L2は、210mm以上であればよいが、裏ビード高さをより安定化する観点から、230mm以上が好ましく、250mm以上がより好ましい。
また、電極間距離L2は320mm以下であればよいが、アークスタートの安定性の観点から、310mm以下が好ましく、300mm以下がより好ましい。
第3電極15cの極性が交流である場合、第2電極15bと第3電極15cの位相差は90°~270°とすることが好ましい。第2電極15bと第3電極15cの位相差が第3電極15cによる溶接での溶け込みに影響し、耐高温割れ性が良好となる。上記位相差は90°以上が好ましく、110°がより好ましく、120°以上がさらに好ましい。また、同様の理由で、上記位相差は270°以下が好ましく、250°以下がより好ましく、240°以下がさらに好ましい。
電極15が第4電極15dを含む場合であって、第3電極15c及び第4電極15dの極性が交流である場合、第3電極15cと第4電極15dの位相差は90°~270°とすることが好ましい。第3電極15cと第4電極15dの位相差を90°~270°とするとことにより、アーク同士が反発し、第3電極15cのアークは前方に向くこととなる。その結果、第1電極15a及び第2電極15bで形成されたスラグが、第3電極15cのアーク熱で溶かされるため、ワイヤがスラグに衝突せずにアークが安定する。
第2電極15bと第3電極15cのワイヤ径は、上述のとおり、直径が各々4.0mm~6.4mmの範囲であることが好ましいが、裏ビードのさらなる安定化とスラグ巻込み発生防止を図る観点から、第2電極15b及び第3電極15cのワイヤ径が共に、直径4.0mm~6.4mmであることがより好ましく、共に直径4.8mm以上であることがさらに好ましい。
また、電極15が第4電極15dを含む場合には、第3電極15cと第4電極15dの少なくとも一方は、ワイヤの突出し長さA3,A4を40mm以上とすることが好ましい。ワイヤの突出し長さA3,A4を40mm以上とすることにより、電極のチップにスラグが付着しにくくなるので、良好な表ビード形状を得ることができる。ワイヤの突出し長さA3,A4は、より好ましくは45mm以上である。また、ワイヤの突出し長さA3,A4の上限は特に限定されないが、表ビードをより安定させる観点から、好ましくは80mm以下、より好ましくは75mm以下である。
上記の他、各電極15について記載していない条件は、一般的な条件にて適宜に設定して溶接すればよい。
例えば、第3電極15cと第4電極15dとの電極間距離は任意に設定できる。また、溶接速度は、例えば34cm/分~110cm/分が挙げられるが、これに限定されるものではない。
(鋼板20)
鋼板20は、特に限定されないが、例えば造船用鋼板が挙げられる。造船用鋼板の場合、長さは例えば10m~40mである。
本実施形態における溶接を行う場合、図2に示すように、鋼板20同士を突き合わせ、溶接開先部Mの位置で、断続又は連続した面内仮付がなされる。この鋼板20の始端31及び終端32には、クレータを処理するためのタブ21とタブ22が取り付けられている。
なお、図2は一実施態様に過ぎず、これに限定されるものではない。
(表フラックス51)
表フラックス51の種類は特に問わないが、鉄粉入りのボンドフラックスが特に好ましい。表フラックス51中に鉄粉を含むことにより溶接金属の溶け込み深さが得られやすくなり、耐高温割れ性がより良好になる。
<溶接方法>
本実施形態に係る溶接方法を適用した多電極片面サブマージアーク溶接の概略について図1~図5を参照して説明するが、下記の方法に限定されるものではない
(準備工程)
準備工程では、まず、図1や図2に示すようなタブ21とタブ22が取り付けられ、断続又は連続した面内仮付がされた鋼板20と鋼板20を準備する。
次に、図3に示すような裏当装置50aの裏当銅板55の上面に、図示しないフラックス供給手段により裏当フラックス52を供給する。また、図4に示すように、裏当装置50bの耐火性キャンバス56内の耐熱カバー57の上面に、図示しないフラックス供給手段により下敷フラックス58を供給し、さらにその上に裏当フラックス52を供給してもよい。
そして、上記で準備した鋼板20と鋼板20を溶接装置100にセットし、裏当装置50a又は裏当装置50bの上方に、鋼板20と鋼板20とによって形成された溶接開先部Mを配置する。次いで、図示しない駆動装置を作動させて溶接開先部Mの直下に裏当銅板55又は耐火性キャンバス56が位置するように微調整を行う。
また、鋼板20の開先に開先充填材を散布して溶接することが好ましい。
開先充填材を用いて溶接することで、仮付けビードの影響を緩和することができ、裏ビード高さをより安定させることができる。特に、開先充填材をフラックスバッキング法と組合せて用いると効果的である。
開先充填材の種類は特に問わず、鉄粉や、軟鋼のカットワイヤ等が挙げられる。
次に、押上機構による押圧で裏当銅板55や耐熱カバー57を押圧し、突き合わされた鋼板20の溶接開先部Mの裏面に裏当フラックス52を押し当てて密着させる。押上機構として、図3や図4では、エアホース59に圧縮空気を導入して膨張させる方法が取られている。
(電極調整工程)
電極調整工程では、第1電極15aを交流とし、また、第1電極15a~第3電極15cの電極間距離L1、L2を上述した条件となるように調整する。なお、準備工程と電極調整工程の順序は特に規定されるものではなく、どちらの工程を先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
(溶接工程)
溶接工程では、まず、溶接装置100の溶接機12を溶接開始位置に移動させる。次に、第2電極15bを交流とし、所望する条件で溶接電流を供給して、溶接機12を作動させる。そして、鋼板20の始端31から終端32(いずれも図2参照)に向かって、図1の矢印で示すように、溶接機12を溶接機ビーム13に沿って所定速度で移動させつつ表フラックス51を供給し、鋼板20と鋼板20を溶接する。
本実施形態に係る多電極片面サブマージアーク溶接方法は、1層溶接、多層溶接のいずれにも使用できるが、作業効率の観点からは、1パスかつ1層溶接が好ましい。
以下、試験例を挙げて、本発明の内容について具体的に説明するが、本発明は下記例に何ら制限されるものではない。
(実施例1~7、比較例1~5)
端面に斜面を形成した2枚の鋼板について、端面を相互に対向させて突き合わせ、V字形開先を形成した。このV字形開先は、開先角が35°であり、ルートギャップが0mmである。また、鋼板の長さは1.2m、鋼板の厚さは40mmとした。
鋼板の組成、使用したワイヤの組成及び表フラックスの組成を表1に示す。
Figure 2023023454000002
上記鋼板に対し、第1電極~第4電極の4つの電極が配置された溶接機を用いて、表2及び表3に示す条件で、4電極の片面1層のサブマージアーク溶接を行い、溶接試験体を作製した。
具体的には、溶接装置は、図4に示すような裏当装置50bを有するものを用いた。
各試験例の第1電極と第2電極の交流の位相差、第2電極と第3電極の位相差、第3電極と第4電極の位相差、第2電極と第3電極との電極間距離は、それぞれ表2に示すとおりである。また、各電極のワイヤ径、外部特性、極性、溶接電流、アーク電圧、トーチの後退角・前進角及びワイヤの突出し長さ、並びに、溶接速度、第1電極と第2電極との電極間距離及び第3電極と第4電極との電極間距離は、すべての試験例で同一の条件とし、表3に示す条件とした。なお、表2と表3に示す条件以外の条件は、従来公知の条件であり、全て同一条件とした。
上記条件のうち、トーチの後退角・前進角は、図5に示すように、各電極の中心線と、溶接進行方向Xを法線とする面がなす角度で表される。なお、溶接進行方向Xと垂直である場合を0°とし、後退角の場合は溶接進行方向X側をプラスとする。前進角の場合は、溶接進行方向Xに対して反対側をプラスとする。
(評価:裏ビード高さ)
各溶接方法により得られた溶接試験体の裏ビードについて、高さ、標準偏差及び変動係数から裏ビード高さの安定性を評価した。
裏ビードの高さは、レーザ変位計を用い、鋼板の始端から600mm~900mmの範囲を、0.1mm間隔で計測し、その平均値を高さとした。
標準偏差は、レーザ変位計を用い、鋼板の始端から600mm~900mmの範囲を、0.1mm間隔で計測して求めた。
変動係数cvは、上記で得られた裏ビードの高さと標準偏差を用いて、(標準偏差/裏ビード高さ)として得られる値である。
裏ビード高さの安定性は、上記で得られた変動係数cvの値から下記基準で評価した。結果を表2に示す。
◎(極めて安定):cv<0.35
○(安定):0.35≦cv<0.50
×(不安定):0.50≦cv
(評価:耐高温割れ性)
図6に示すように、本実施形態に係る溶接方法で形成される溶接金属は、第1電極及び第2電極で形成される溶接金属60と、第3電極以降の電極で形成される溶接金属61からなる。
第1電極及び第2電極で形成される溶接金属60の組織は、デンドライトが真横に成長し高温割れが発生し易い。そのため、第3電極以降の電極で形成される溶接金属が深く溶け込み、その脆弱な組織を溶かすことで耐高温割れ性は良好となる。
そこで、断面マクロ組織から、第3電極以降の電極で形成される溶接金属61の溶け込み深さTを計測して評価した。なお、本試験例においては、第3電極以降の電極で形成される溶接金属61とは、第3電極及び第4電極で形成される溶接金属である。
耐高温割れ性は、図6に符号tとTで示した箇所に該当する、鋼板20の板厚tと、鋼板20の表面(上面)から第3電極以降の電極で形成される溶接金属61の溶け込み深さTとの関係から、下記基準で評価した。
○(良好):{12/(16×t)}≦T<{14/(16×t)}
×(不良):T<{12/(16×t)}、又は、T≧{16/(16×t)}
(評価:溶接金属の溶け込み幅)
溶接金属の溶け込み幅を用いて、スラグ巻き込みの評価を行った。溶接金属の溶け込み幅は、上記耐高温割れ性の評価と同様、断面マクロ組織より評価できる。
具体的には、図6の対向する一対の矢印で示した箇所が、鋼板の下端から10mmの高さの位置の例であるが、鋼板の下端から10mmの高さにおける溶接金属の溶け込み幅から、下記基準で評価した。溶接金属の溶け込み幅が11.0mm超であればスラグ巻き込みの発生を防止できる。また、溶接金属の溶け込み幅が11.0mm以下であると、スラグ巻き込みが発生しやすい状態となる。
○(良好):溶接金属の溶け込み幅が11.0mm超
×(不良):溶接金属の溶け込み幅が11.0mm以下
Figure 2023023454000003
Figure 2023023454000004
表2に示すように、実施例1~7で得られた溶接試験体はいずれも、裏ビード高さの安定性、溶接金属の溶け込み幅及び耐高温割れ性のすべての評価項目が良好であった。特に、実施例1~3、実施例6及び実施例7で得られた溶接試験体は、裏ビード高さの安定性が極めて良好であり、耐高温割れ性も非常に良好であった。
これに対し、表2に示すように、比較例1~5で得られた溶接試験体はいずれも、いずれかの項目の評価が不良となった。
具体的には、比較例1~3で得られた溶接試験体は、第1電極と第2電極の交流の位相差が本発明の範囲外であり、耐高温割れ性及び溶接金属の溶け込み幅が不良となった。
比較例4で得られた溶接試験体は、第2電極と第3電極との電極間距離が下限値未満であり、裏ビード高さが不良となった。また、一部では裏ビードが形成されなかった。
比較例5で得られた溶接試験体は、第2電極と第3電極との電極間距離が上限値を超えており、第3電極のアークが発生しなかった。そのため、評価対象とすることもできなかった。そのため、表2では評価結果はすべて「-」としている。
11 架台フレーム
12 溶接機
13 溶接機ビーム
15 電極
15a 第1電極
15b 第2電極
15c 第3電極
15d 第4電極
16a~16d ワイヤ
17a~17d チップ
20 鋼板
21、22 タブ
31 始端
32 終端
50a、50b 裏当装置
51 表フラックス
52 裏当フラックス
53 スラグ
54 溶接金属
55 裏当銅板
56 耐火性キャンバス
57 耐熱カバー
58 下敷フラックス
59 エアホース
60 第1電極及び第2電極で形成される溶接金属
61 第3電極以降の電極で形成される溶接金属
100 溶接装置
A1~A4 ワイヤ突出し長さ
L1、L2 電極間距離
T 第3電極以降の電極で形成される溶接金属の溶け込み深さ
t 鋼板の板厚

Claims (6)

  1. 複数の電極を用いて、突き合わされた2枚の鋼板の片面を接合する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
    前記電極は、第1電極、第2電極及び第3電極の少なくとも3つの電極を含み、
    前記第1電極を溶接進行方向の先頭とし、次いで前記第2電極、前記第3電極の順に前記電極を配置し、
    前記第1電極の極性:交流、
    前記第2電極の極性:交流、
    前記第1電極と前記第2電極の交流の位相差:0°~90°又は275°~360°、及び
    前記第2電極と前記第3電極との電極間距離:210mm~320mm、
    の条件で溶接を行う、多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  2. 前記第1電極のワイヤ径が直径3.2mm~6.4mmである、請求項1に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  3. 前記第2電極のワイヤ径が直径4.0mm~6.4mmであり、かつ前記第3電極のワイヤ径が直径4.0mm~6.4mmである、請求項1又は2に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  4. 前記第1電極と前記第2電極との電極間距離が25mm以上80mm未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  5. 前記第1電極の電源特性が定電圧である、請求項1~4のいずれか1項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  6. フラックスバッキング法を用いる、請求項1~4のいずれか1項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
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