本発明の画像表示装置に係る実施形態は、複数の部分画像情報に夫々対応する複数の部分画像情報光を含む画像情報光を出射する出射手段と、前記出射された画像情報光が入射され、前記複数の部分画像情報光を利用者の眼球の向きに対応付けられた複数の位置に夫々集光する光学素子とを備え、前記集光された複数の部分画像情報光のうち、前記利用者の瞳孔を通過する部分画像情報光を前記利用者の網膜に照射することにより、該照射された部分画像情報光に対応する前記部分画像情報を利用者に視認させる画像表示装置であって、基準方向に対する前記利用者の頭部の回転量を検出する回転量検出手段と、前記検出された回転量に応じて前記複数の部分画像情報光の各々の照射領域を制御する制御手段とを具備する。
画像表示装置は、出射手段及び光学素子(例えば、ホログラム素子)を備え、光学素子を介した画像情報光を利用者の網膜に投影させることで利用者に画像情報を視認させる。尚、「画像情報」とは、文字、画像及び映像等、利用者に視覚的に訴求し得る各種の実践的態様を伴う情報として定義される。
この画像表示装置において、画像情報光は、複数の部分画像情報光を含んで構成される。複数の部分画像情報光の各々は、光学素子の機能によって、利用者の眼球の向きに対応付けられた、相互に異なる複数の位置に集光される。このため、利用者の眼球の向きに応じて利用者の瞳孔を通過する部分画像情報光が切り替わることとなり、理想的には複数の部分画像情報光のうち利用者の眼球の向きに応じた一の部分画像情報光が網膜に照射され、視認される。
例えば、部分画像情報が、利用者の視野領域において、ある方向に配列している場合、利用者が視線のみを当該配列方向に動かせば、利用者はこの部分画像情報を順次視認することができる。
尚、この視認される画像情報は、利用者の網膜に画像情報光が直接照射されることによって視認されるため、余人に視認されることはないが、これ以降、適宜「表示」或いは「表示される」等の表現も用いることとする。
ところで、この画像表示装置では、複数の部分画像情報の各々について、光学素子の物理的特性に起因する表示領域の最大値、即ち最大表示領域がある。最大表示領域とは、即ち、部分画像情報光の各々の最大照射領域と等価である。これ以降、この最大表示領域を規定する一表示単位を適宜「表示スポット」と呼称する。
この画像表示装置では、表示スポットの外に画像情報を表示することはできないが、表示スポットの個数や形状は自由に設計することができる。画像表示装置を効率的且つ効果的に機能せしめる観点から言えば、表示スポット同士は可能な限り近接配置されているのが望ましい。端的には、表示スポット同士が隙間無く隣接しているのが望ましい。
ところが、このように表示スポット同士が近接配置されている場合、利用者が相互いに隣り合う複数の表示スポットの境界付近に視線を向けると、利用者が本来視認している表示スポットの部分画像情報に加えて、隣の表示スポットの部分画像情報が断続的に或いは連続的に視認される可能性が高くなる。このような部分画像情報同士の相互干渉は、上述したように、利用者の疲労や集中力の低下を促す等、画像表示装置における画像情報の表示品質を低下させる要因となる。
ここで、利用者の視線の向きを簡易に検出することは一般的に容易ではないが、頭部の向きと視線の向きとの間には相関がある。具体的には、例えば、利用者の頭部が左方向(又は右方向)にある程度(例えば、30°以上)回転している場合、利用者の視線は、頭部正面に対し、先ず右(又は左)には向かない。また、利用者の頭部が左方向(又は右方向)に大きく(例えば、60°以上)回転している場合、利用者の視線は、頭部正面に対し、左(又は右)を向くことが多い。左右を上下に置き換えてもまた同様である。
この画像表示装置は、係る相関を利用しており、回転量検出手段により検出される利用者の頭部の回転量を、利用者の視線の向きを推定するための指標として部分画像情報の表示制御に利用する構成となっている。
回転量検出手段は、基準方向に対する利用者の頭部の回転量を検出する。回転量とは、好適には回転角であるが、頭部の回転の度合いと一対一、一対多、多対一又は多対多に対応し得る他の物理量や制御量であってもよい。また、回転の方向は、左右方向、上下方向或いはそれらが組み合わさった方向等、特に限定されない趣旨である。回転量検出手段としては、ジャイロセンサ等を利用することができる。
この画像表示装置では、複数の部分画像情報光の各々の照射領域が、上記の如く検出される利用者の頭部の回転量に応じて制御される。部分画像情報光の照射領域とは、一義的に一の表示スポット内における部分画像情報の表示領域を意味する。また、「領域」と表現すると、面積概念と捉えられ得るが、少なくともここで述べられる「領域」とは、表示スポットの面積に対する部分画像情報の占める割合等の他に、部分画像情報の大きさ、データサイズ又は情報量或いは表示される部分画像情報の外郭を繋いだ包絡線の内側の面積等、多様な基準で定義され得る包括概念である。
このように、利用者の頭部の回転量を利用者の意思としての視線の向きを推定する指標として利用することにより、この画像表示装置では、利用者の意思に沿った表示スポットを他の表示スポットとの干渉を排除しつつ利用者に提示することや、利用者の意思に沿わない表示スポットを一時的に表示から除外すること等が可能となる。即ち、効率的且つ効果的な画像表示を、利用者が視認している部分画像情報の表示品質を維持しつつ実現することができる。
補足すると、頭部の回転量や視線の動きに応じて表示画像を制御する技術思想は、上記先行技術文献にも例示される通り従来周知である。しかしながら、この画像表示装置は、複数の部分画像情報のうち利用者に視認される画像が、利用者の視線の向きに応じて装置側の制御を受けることなく自発的に切り替わる構成を有する。即ち、その時点で利用者が視認している画像は、光源から網膜へ至る画像表示の過程において、画像表示装置側では一切認識されない。
このため、画像の表示効率と表示品質とが背反の関係にならざるを得ない。この画像表示装置では、利用者の頭部の回転量を利用者の意思として利用し、表示スポットの配置態様を最適化(例えば、隣接配置)して表示効率を確保しつつ、表示スポット間の表示画像の相対関係をフレキシブルに変化させることにより表示品質を担保しているのである。
実施形態の一態様では、前記利用者の頭部の回転量に基づいて、前記複数の部分画像情報のうち前記利用者の意思に沿った一の部分画像情報を決定する決定手段を具備し、前記制御手段は、前記決定された一の部分画像情報に係る前記部分画像情報光の照射領域と干渉しないように、他の前記部分画像情報に係る前記部分画像情報光の照射領域を減少させる。
この態様によれば、他の部分画像情報光の照射領域を減少させることにより、利用者の意思に沿った(即ち、利用者に優先的に視認させるべき)一の部分画像情報と、当該他の部分画像情報光との相互干渉を防ぎつつ、当該一の部分画像情報の表示効果を確保することができる。
尚、「干渉しないように」とは、具体的には、当該一の部分画像情報の周縁部へ視線を向けた場合に、隣り合う表示スポットの部分画像情報が視認され難い(即ち、部分画像情報光が瞳孔を通過し難い)ことを意味し、実践的には、隣り合う表示スポットの部分画像情報が、ある程度の間隔を隔てて表示されることを意味する。
決定手段を備えた実施形態の他の態様では、前記決定手段は、前記検出された回転量の絶対値が第1基準値未満である場合に、前記基準方向に対応する前記部分画像情報を前記利用者の意思に沿った一の部分画像情報と決定する。
この態様によれば、頭部の回転量が相対的にみて大きくない場合には、利用者が概ね基準方向を注視しているとの判断から、基準方向に対応する部分画像情報が、利用者の意思に沿った部分画像情報として決定される。
従って、例えば、利用者が無意識に頭部を揺らしているに過ぎない場合等において、個々の部分画像情報光の照射領域の頻繁な変化が抑制された安定した表示を実現することができる。
決定手段を備えた実施形態の他の態様では、前記決定手段は、前記検出された回転量の絶対値が第2基準値以上である場合に、前記基準方向に対応する前記部分画像情報に対して順回転方向に隣り合う前記部分画像情報を、前記利用者の意思に沿った一の部分画像情報と決定する。
この態様によれば、頭部の回転量が第2基準値(上記第1基準値と併用される場合には、第1基準値よりも大きい値である)以上である場合には、利用者が基準方向に対応する部分画像情報以外の部分画像情報に視線を向けていると判断される。
即ち、基準方向に対応する部分画像情報と順回転方向に隣り合う(即ち、左に回頭した場合には左隣を意味する)他の部分画像情報が、利用者の意思に沿った部分画像情報として決定される。従って、利用者が基準方向に対応する部分画像情報以外の他の部分画像情報を視認している場合にも、利用者の意思に沿った画像表示を実現することができる。
例えば車載装置としてこの画像表示装置を利用する場合、利用者は着座し且つシートベルトを装着しており、利用者の身体は正面を向いている。このような、利用者の身体の向きが必然的に正面方向に定まり得る状況においては、基準方向を利用者の身体正面方向とすることによって、基準方向に対する頭部の回転量を単純に頭部の回転量に帰結させることができる。即ち、回転量検出手段の構成を簡素化することが可能となる。
本発明の画像表示方法に係る実施形態は、複数の部分画像情報に夫々対応する複数の部分画像情報光を含む画像情報光が出射される出射工程と、前記出射された画像情報光が光学素子に入射される入射工程と、前記光学素子を介して前記複数の部分画像情報光が利用者の眼球の向きに対応付けられた複数の位置に夫々集光される集光工程と、前記集光された複数の部分画像情報光のうち、前記利用者の瞳孔を通過する部分画像情報光が前記利用者の網膜に照射される照射工程と、基準方向に対する前記利用者の頭部の回転量が検出される回転量検出工程と、前記検出された回転量に応じて前記複数の部分画像情報光の各々の照射領域が制御される制御工程とを具備する。
本発明の画像表示制御装置に係る実施形態は、複数の部分画像情報に夫々対応する複数の部分画像情報光を含む画像情報光を出射する出射手段と、前記出射された画像情報光が入射され、前記複数の部分画像情報光を利用者の眼球の向きに対応付けられた複数の位置に夫々集光する光学素子と、基準方向に対する前記利用者の頭部の回転量を検出する回転量検出手段とを備え、前記集光された複数の部分画像情報光のうち、前記利用者の瞳孔を通過する部分画像情報光を前記利用者の網膜に照射することにより、該照射された部分画像情報光に対応する前記部分画像情報を利用者に視認させる画像表示装置における、画像表示制御装置であって、前記検出された回転量に応じて前記複数の部分画像情報光の各々の照射領域を制御する制御手段を具備する。
画像表示制御装置の実施形態では、制御手段の作用により、出射手段、光学素子及び回転量検出手段を備えた画像表示装置において効率的且つ効果的な画像表示が実現される。尚、この画像表示制御装置は、出射手段、光学素子及び回転量検出手段を含む画像表示装置と組み合わせることにより、上記画像表示装置の実施形態と同等の構成となり得る。
当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体或いはUSB(Universal Serial Bus)メモリ等コンピュータシステムに着脱可能な固体型記憶装置から、当該コンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、例えば、通信手段等を介してコンピュータシステムにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の画像表示装置に係る実施形態を比較的簡単に実現できる。
本発明の記録媒体に係る実施形態によれば、コンピュータシステムに装着又は接続することによって、或いはコンピュータシステムに備わる又は接続された然るべき読取装置に挿入することによって、記録している本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態を、コンピュータシステムに読み込ませて実行させることができ、上述した本発明の画像表示装置における制御手段を比較的簡単に実現できる。
以下、適宜図面を参照して、本発明の好適な各種実施例について説明する。
<第1実施例>
まず、第1実施例について説明する。
<実施例の構成>
始めに、図1を参照し、画像表示装置10の構成について説明する。ここに、図1は、画像表示装置10の概念図である。
図1において、画像表示装置10は、制御装置100、表示ユニット200及び回転角センサ300を備え、利用者1に対し表示ユニット200を介して画像情報INFOを表示する装置であり、本発明に係る「画像表示装置」の一例である。尚、画像情報INFOは、後述するように複数の部分画像情報INFO_i(iは識別子であり、本実施例では1、2、3のいずれかの値を採る)の総体概念であり、文字、画像、映像のいずれであってもよいし、それらが混在したものであってもよい。画像表示装置10の用途は様々であるが、本実施例では、利用者1が図示せぬ車両の運転者であり、画像表示装置10が当該車両の運転を支援するための情報を表示するための画像表示装置であるとする。
制御装置100は、ビデオASIC(Application Specific Integrated Circuit)やレーザドライバASIC等の制御回路を有するコンピュータ装置である。制御装置100は、本発明に係る「制御手段」及び「決定手段」の一例として機能する。制御装置100の詳細な構成については後述する。
表示ユニット200は、利用者1に対し画像情報INFOを表示する(言い換えれば、利用者1に画像情報INFOを視認させる)装置である。ここで、図2を参照し、画像表示装置10における表示ユニット200の構成について説明する。ここに、図2は、表示ユニット200の構成を概略的に示した図である。
図2に示すように、表示ユニット200は、主として、光源ユニットLDU、スキャン機構OSC、ホログラム素子HOE及びビームスプリッタBSを備える。表示ユニット200は、画像情報INFOに対応する画像情報光を、利用者1の眼球2における網膜4に投影することで画像を視認させる、所謂網膜直接投影装置である。例えば、表示ユニット200は、車両搭載用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)として利用される。
光源ユニットLDUは、赤色LD(レーザダイオード)、緑色LD及び青色LD等を有し、赤色、緑色及び青色のレーザ光(以下では、単に「光」とも表記する。)を出射する。この光源ユニットLDUは、制御装置100により画像情報INFOに応じた各レーザ光の強度変調処理が行われると、係る強度変調後のレーザ光を出射する構成となっている。光源ユニットLDUは、本発明における「出射手段」の一例に相当する。
光源ユニットLDUから出射されたレーザ光は、スキャン機構OSCに入射する。スキャン機構OSCは、ミラーやアクチュエータなどを具備して構成され、光源ユニットLDUから出射されたレーザ光をホログラム素子HOEに向けて偏向する。スキャン機構OSCは、利用者1に対して表示すべき画像情報INFOを利用者1の網膜4上に描画するべく、レーザ光を照射する網膜上の位置(照射位置)を変更するためのスキャン動作を行う。
ホログラム素子HOEは、透過型の光学素子であり、スキャン機構OSCからのレーザ光を集光して、ビームスプリッタBSに向けて出射する。ホログラム素子HOEは、本発明における「光学素子」の一例に相当する。
ビームスプリッタBSは、一例としてはハーフミラーであり、ホログラム素子HOEからのレーザ光を、利用者1の眼球2に向けて反射する。これにより、レーザ光が利用者1における瞳孔3の近傍(瞳孔上も含むものとする。以下同様とする)に集光され、レーザ光が利用者1の網膜4に照射されることとなる。その結果、表示ユニット200によって形成された画像情報INFOが、利用者1に視認されることとなる。
尚、表示ユニット200は、レーザ光を瞳孔近傍に一旦集光させるといった点に関し、マックスウェル視の原理を利用している。マックスウェル視は、画像に対応する光を一旦瞳孔の中心で収束させてから網膜上に投影する方法であり、この方法によれば、水晶体の調節機能に影響されずに画像を観察することができる。
ここで、図3を参照し、ホログラム素子HOEの作用について補足する。ここに、図3は、ホログラム素子HOEを介した画像情報光の集光状態の模式図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。或いは、図2と重複する箇所には符号を表示することなく、その説明を適宜省略することとする。
図3において、本実施例に係るホログラム素子HOEには、3つのホログラム領域が形成されている。各ホログラム領域は、概ね同一の形状及びサイズを有しており、互いに重ならない位置に形成されている。これら複数のホログラム領域は、夫々、入射光を集光する機能及び入射光を偏向する機能を有している。具体的には、各ホログラム領域は、夫々異なる方向に光を偏向させ、夫々異なる位置に焦点を形成させる。
これにより、図3に示すように、ホログラム素子HOEの第1のホログラム領域は点F1に焦点(以下、「焦点F1」とする)を生成し、第2のホログラム領域は点F2に焦点(以下、「焦点F2」とする)を生成し、第3のホログラム領域は点F3に焦点(以下、「焦点F3」とする)を生成する。尚、焦点F1及びF2については、図2にも例示されている。
光源ユニットLDU及びスキャン機構OSCを介してホログラム素子HOEに入射する画像情報光のうち、この第1のホログラム領域を通過する画像情報光は、画像情報INFOの一部をなす第1部分画像情報INFO_1に対応する第1部分画像情報光であり、同様に、第2及び第3のホログラム領域を通過する画像情報光は、夫々第2部分画像情報INFO_2及び第3部分画像情報INFO_3に対応する第2部分画像情報光及び第3部分画像情報光である。第1乃至第3部分画像情報光は、夫々本発明に係る「部分画像情報光」の一例に相当する。
ホログラム素子HOEに形成された各ホログラム領域は、各ホログラム領域を通過した各部分画像情報光が、同時に瞳孔3を通過することのないように、ある程度離れた位置に焦点F1〜F3を生成する。そのため、理想的には、異なるホログラム領域を通過した画像情報光に対応する画像情報が同時に視認されることはない。
より具体的には、第1のホログラム領域による焦点F1は、利用者1の眼球2が利用者1の頭部正面を向いている場合の瞳孔位置に対応する位置に生成される。同様に、第2及び第3のホログラム領域による焦点F2及びF3は、眼球2が頭部正面に対し夫々左及び右を向いている場合の瞳孔位置に対応する位置に生成される。
従って、利用者1の眼球2が頭部正面を向いている場合には、理想的には、第1のホログラム領域を介した第1部分画像情報光のみが瞳孔3の近傍に集光され、網膜4に照射される。即ち、他のホログラム領域を介した部分画像情報光は網膜上に照射されない。この場合、利用者1は、第1のホログラム領域を介した第1部分画像情報光に対応する第1部分画像情報INFO_1のみを視認することができる。
一方、利用者1の眼球2が頭部正面に対して左又は右を向いている場合には、第2のホログラム領域を介した第2部分画像情報光又は第3のホログラム領域を介した第3部分画像情報光のみが瞳孔3の近傍に集光され、網膜4に照射される。即ち、他のホログラム領域を介した部分画像情報光は網膜上に照射されない。この場合、利用者1は、第2のホログラム領域を介した第2部分画像情報光に対応する第2部分画像情報INFO_2又は第3のホログラム領域を介した第3部分画像情報光に対応する第3部分画像情報INFO_3のみを視認することができる。
ここで、利用者1における各部分画像情報の見え方について、図4を参照して視覚的に説明する。ここに、図4は、利用者1の視野における各部分画像情報の表示態様を説明する図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、表示ユニット200のホログラム素子HOEにおける第1のホログラム領域、第2のホログラム領域及び第3のホログラム領域は、利用者1の視野領域において、夫々表示スポットspt_1、表示スポットspt_2及び表示スポットspt_3の各表示スポットを形成する。表示スポットは、各部分画像情報光の網膜上の最大照射領域に相当し、各部分画像情報の最大表示領域に相当する。即ち、第1部分画像情報INFO_1、第2部分画像情報INFO_2及び第3部分画像情報INFO_3は、夫々第1表示スポットspt_1、第2表示スポットspt_2及び第3表示スポットspt_3の内部に表示される(厳密には、表示されているように利用者に視認される)。
尚、ホログラム領域により形成される表示スポットは、ホログラム素子HOEにおけるホログラム領域の構成の仕方により、様々な態様を採り得る。図5は、表示スポットの他の例を概念的に表す図である。
図5において、表示スポットspt_1’、表示スポットspt_2’、表示スポットspt_3’は、図4における表示スポットspt_1、表示スポットspt_2及び表示スポットspt_3に夫々対応する。ここで、この例では、ホログラム素子HOEに、これら表示スポットspt_1’、表示スポットspt_2’及び表示スポットspt_3’に対応するホログラム領域以外にもホログラム領域が形成される。それらのホログラム領域を使用した場合には、図中破線枠として示される位置に表示スポットを形成することができる。即ち、利用者1への画像情報INFOの表示に利用される表示スポットは、ホログラム素子HOEに形成されるホログラム領域の一部に対応するものであってもよい。また、表示スポットの形状はどのようなものであってもよく、例えば、図示する円形でなく四角形又は矩形であってもよい。
図1に戻り、回転角センサ300は、利用者1の頭部回転角θhを検出するセンサである。頭部回転角θhは、利用者1の身体正面方向に対する頭部の相対回転角である。身体正面方向は、本発明に係る「基準方向」の一例であり、頭部回転角θhは、本発明に係る「回転量」の一例である。回転角センサ300としては、例えばジャイロセンサ等を利用することができる。制御装置100及び回転角センサ300により、本発明に係る「画像表示制御装置」の一例が実現される。
ここで、図6を参照し、頭部回転角θhについて視覚的に説明する。ここに、図6は、利用者1を上から見た図である。
図6において、図6(a)は、利用者1が基準方向としての身体正面方向(図示破線L_bd参照)を向いている場合を示している。これに対して、図6(b)は、利用者1が頭部を左に角度θだけ回頭した場合が示される。この場合、頭部正面方向は、図示破線L_hdとなる。頭部回転角θhとは、この破線L_bdと破線L_hdとがなす角度であり、図ではθh=θである。尚、利用者1の瞳孔3との関係で言えば、利用者1が眼球2を動かさなければ、頭部正面方向が正面視の方向となる。即ち、図6(b)を例に採れば、図示破線L_hdの方向に、先述した表示スポットspt_1があり、その左右に夫々表示スポットspt_2及びspt_3がある。
尚、頭部回転角θhは、必ずしも水平方向の回転角でなくともよい。このことを、図7を参照して説明する。ここに、図7は、利用者1を側方から見た図である。
図7において、図7(a)は、利用者1が基準方向としての身体正面方向(図示破線L_bd参照)を向いている場合を示している。これに対して、図7(b)は、利用者1が頭部を上に角度θだけ回頭した場合が示される。この場合、頭部正面方向は、図示破線L_hdとなる。この場合、頭部回転角θhとは、この破線L_bdと破線L_hdとがなす角度であり、図ではθh=θである。このように、頭部回転角は、利用者1の頭部の上下方向の回転角であってもよい。また、左右方向と上下方向とが組み合わさった方向への回転角であってもよい。
尚、頭部回転角θhは、身体正面方向に対する頭部の相対回転角であるから、厳密には、利用者1の身体の回転角を検出する手段(回転角センサ300と同様にジャイロセンサを利用可能である)が必要となる。具体的には、回転角センサ300と身体の回転角検出手段との間で原点を同期させておくことにより、頭部の相対回転角が両者の検出角の差分として検出される。しかしながら、本実施例は車両搭載時の情報表示を想定しており、利用者1はシートに着座しシートベルトを装着している。従って、身体正面方向は、別途検出手段を有さずとも固定されているとみなし得る。即ち、身体正面方向に対する利用者1の頭部の相対回転角たる頭部回転角θhとして、回転角センサ300の検出値をそのまま利用することができる。無論、身体の回転角を検出する手段(例えば、ジャイロセンサ等の回転角センサ)を別途備える構成としてもよく、その場合、より精度良く頭部回転角θhを検出し得ることは言うまでもない。
次に、図8を参照し、制御装置100の詳細な構成について説明する。ここに、図8は、制御装置100のブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、制御装置100は、状況判断部110、表示内容決定部120、実対象検出部130、表示スポット決定部140、相対回転角検出部150、表示サイズ決定部160、表示データ生成部170及び表示データ合成部180の各処理ユニットを有する。
状況判断部110は、例えば各種センサ、カーナビゲーション装置、車載カメラ及び入力デバイス等から情報を取得し、車両の走行状況を判断する。
例えば、状況判断部110は、車速センサから車速を、外気温センサから外気温を、燃料残量センサから燃料残量を、車載レーダから自車両と前方車両又は後続車両との距離に関する情報を、また集音マイクから自車両周辺の音声に関する情報を、夫々取得してもよい。また、状況判断部110は、例えば、カーナビゲーション装置から車両の現在位置、目的地までの経路、周辺施設の情報等を夫々取得してもよい。また、状況判断部110は、例えば、車載カメラから車両前方、側方又は後方の画像データを取得してもよい。或いは、状況判断部110は、各種入力デバイスの操作情報を取得してもよい。各種入力デバイスの操作情報とは、分かり易く言えば、利用者1が欲している情報の種類を特定するための情報等を意味する。例えば、予めプリセット情報として、複数の情報の組み合わせが定義されている場合等には、利用者1がどのプリセット情報を選択したかを入力デバイスの操作情報として取得してもよい。状況判断部110は、これら各種の経路で取得された各種情報やデータに基づいて、車両の現在の総合的な走行状況や利用者1の要求事項等を判断する。
表示内容決定部120は、状況判断部110により判断された車両の走行状況や利用者1の要求事項等に基づいて、表示ユニット200により形成される表示スポットspt_i(iは識別子であり、本実施例では1、2、3のいずれかの値を採る)に表示させるべき各部分画像情報INFO_iの内容を決定する。
実対象検出部130は、部分画像情報INFO_iを重ね合わせる実対象の方向を検出する。具体的な事例としては、画像情報として車両の走行路に位置する周辺施設の情報を表示する場合、車両が走行中であれば、利用者1の視野領域における周辺施設の位置は時々刻々と変化する。従って、部分画像情報として当該施設の施設名を表示する場合、表示スポットが複数あれば、その部分画像情報を表示すべき表示スポットもまた、車両の走行状況に応じて時々刻々と変化する。実対象検出部130は、そのような、部分画像情報を重ね合わせる実対象の方向を状況判断部110からの情報を基に検出する。
尚、このような実対象検出部130の効果は、画像表示装置10を、利用者1の視野領域に画像情報INFOを重ね合わせることによって一種のAR(拡張現実)を実現する場合に顕著に発揮される。一方、車速や外気温や目的地までの距離等、予め表示スポットを決定しておくことができる部分画像情報(言い換えれば、部分画像情報を表示すべき表示スポットが車両の走行条件に影響されない部分画像情報)のみを表示する場合、実対象検出部130は必ずしも必要ない。
表示スポット決定部140は、実対象検出部130により検出される実対象の方向と、相対回転角検出部150により検出される頭部回転角θhとに基づいて、複数の表示スポットの中から利用者1の意思に沿った一の表示スポット(以下、適宜「メイン表示スポット」とする)及び実際に部分画像情報の表示に利用する表示スポットを決定する。
相対回転角検出部150は、回転角センサ300から利用者1の頭部回転角θhを取得する。
表示サイズ決定部160は、利用者1の頭部の回転角θhに基づいて、表示スポット決定部140にて表示に利用される旨が決定された表示スポットに表示する部分画像情報INFO_iの表示サイズを決定する。尚、この部分画像情報の表示サイズとは、本発明に係る「部分画像情報光の照射領域」の一例である。
表示データ生成部170は、表示内容決定部120で決定された表示内容、表示スポット決定部140で決定された表示スポット及び表示サイズ決定部160で決定された表示サイズに基づいて、表示スポット毎に部分画像情報INFO_iの表示データを生成する。
表示データ合成部180は、表示データ生成部170により生成された表示スポット毎の表示データを合成し、制御用表示データとして表示ユニット200に送信する。表示ユニット200では、この制御用表示データに従って光源ユニットLDU及びスキャン機構OSCが駆動され、表示スポット毎に部分画像情報光の照射領域が制御される。
<実施例の動作>
次に、実施例の動作について説明する。
<運転席から見た表示スポットの様子>
始めに、図9を参照し、車両の運転席から見た表示スポットの様子について説明する。ここに、図9は、実際の表示スポットの配置を示す図である。
図9において、運転席に着座する利用者1の前方に広がる視野領域が示される。
ここで、利用者1の頭部回転角θhが0°、即ち、頭部が身体正面を向いている場合、第1表示スポットspt_1は、利用者1の身体正面に形成され、第2表示スポットspt_2は、第1表示スポットspt_1の左側(左コンソール付近)において第1表示スポットspt_1に隣接し、第3表示スポットspt_3は、第1表示スポットspt_1の右側(右Aピラー付近)において第1表示スポットspt_1に隣接して形成される。第2表示スポットspt_2及び第3表示スポットspt_3は、夫々利用者1が頭部を動かさずに眼球2のみを左及び右に動かすことによって物体を視認できるエリアに形成される。既に述べたように、このような表示スポットの配置態様は、ホログラム素子HOEにおけるホログラム領域の構成によって実現される。この際、例えば、車種や利用者1のシートポジション等を考慮に入れて、ホログラム素子3におけるホログラム領域の配置位置や偏向方向や集光位置などの設計が行われてもよい。尚、これ以降、この表示スポットの形成位置を適宜「基準形成位置」と表現することとする。
この状態で利用者1の視線方向が頭部正面を向いていれば、即ち視線が身体正面を向いていれば、利用者1の眼球2の瞳孔3には、第1表示スポットspt_1内の第1部分画像情報光のみが通過するため、図示するように、利用者1には当該第1部分画像情報光に対応する第1部分画像情報INFO_1(図示ハッチング部分)が視認される。この際、隣接する第2表示スポットspt_2及び第3表示スポットspt_3の部分画像情報光は利用者1の瞳孔3を通過しないため、第2表示スポットspt_2に形成される第2部分画像情報INFO_2及び第3表示スポットspt_3に形成される第3部分画像情報INFO_3は、利用者1には視認されない。また、利用者1が視線を頭部正面から左側に移せば、第2表示スポットspt_2に形成される第2部分画像情報INFO_2のみが、同じく頭部正面から右側に移せば、第3表示スポットspt_3に形成される第3部分画像情報INFO_3のみが、夫々利用者1に視認される。このような選択的画像表示は、網膜直接投影装置たる画像表示装置10の特徴である。
尚、図9では、第1表示スポットspt_1の全域に第1部分画像情報INFO_1が形成されているが、第1表示スポットspt_1は、第1のホログラム領域を最大限に使用して部分画像情報を表示する場合の部分画像情報光の照射領域に対応しており、表示スポット内の部分画像情報のサイズ(即ち、一義的に部分画像情報光の照射領域)は、表示サイズ決定部160や表示データ生成部170の作用により自由に決定され得る。
画像表示装置10では、このように複数の表示スポットが隣接して形成される。このため、各表示スポットを的確に利用して一種のAR(拡張現実)が好適に実現され得る。例えば、隣り合う表示スポット間に間隙がある場合、この間隙部分には部分画像情報を表示することができないため、画像情報の表示効率が低下する。画像表示装置10では、そのような表示効率の低下が極力抑制されているのである。
一方、このように複数の表示スポットが間隙無く隣接している場合には特に、別の問題が生じ得る。この問題について、図10を参照して説明する。ここに、図10は、網膜直接投影装置における画像情報表示上の問題点を例示する図である。尚、同図において、図9と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図10において、利用者1が、頭部を動かすことなく視線のみを、図示破線矢線にて示される、第1表示スポットspt_1と第2表示スポットspt_2との境界付近に移した場合を考える。この場合、利用者1の瞳孔3の微妙な動きによっては、第1部分画像情報INFO_1に加えて第2部分画像情報INFO_2の右端部分が視認され得る(図10ではこの様子が示される)。或いは、第1部分画像情報INFO_1と第2部分画像情報INFO_2とが相互にハンチング表示される可能性がある。このような表示画像(視認画像)の相互干渉は、利用者1の注意力の低下を招き易く、折角表示した部分画像情報の訴求効果が低下して表示品質の低下に繋がる。
実施例に係る画像表示装置10では、制御装置100により実行される表示制御処理によって、係る問題が好適に解決される。
<表示制御処理の流れ>
始めに、図11を参照し、表示制御処理の流れについて説明する。ここに、図11は表示制御処理のフローチャートである。尚、図8に例示される各処理ユニットは、コンピュータ装置としての制御装置100が、各種記録媒体(例えば、ROM、USBメモリ、HD、光ディスク等)に記録される制御プログラムを実行することにより機能する構成となっている。この制御プログラムは、本発明に係る「コンピュータプログラム」の一例であり、制御プログラムが記録された記録媒体は、本発明に係る「記録媒体」の一例である。
図11において、表示制御処理が開始されると、相対回転角検出部150により頭部回転角θhが取得される(ステップS101)。
頭部回転角θhが取得されると、表示スポット決定部140により、部分画像情報の表示対象となる表示スポットが決定され、決定された表示スポットの中から一の表示スポットspt_iが選択される(ステップS102)。
表示スポットspt_iが選択されると、表示サイズ決定部160により表示スポットspt_iの表示変化量y_i(iは識別子であり、本実施例では1、2、3のいずれかの値を採る)が算出される(ステップS103)。表示変化量y_iとは、表示スポットspt_iにおける、部分画像情報INFO_iのスポット配列方向の減少幅を意味する。表示変化量y_iが算出されると、更に表示サイズ決定部160により表示スポットspt_iの表示可能領域A_i(iは識別子であり、本実施例では1、2、3のいずれかの値を採る)が算出される(ステップS104)。表示可能領域A_iは、予め表示変化量y_iに対応付けられた値としてROMに格納されている。但し、表示可能領域A_iは、表示スポットspt_iの表示サイズと、表示変化量y_iとに基づいた幾何学計算により算出されてもよい。
表示可能領域A_iが算出されると、現時点で表示スポットspt_iに表示されている部分画像情報INFO_iが、ステップS104で算出された表示可能領域A_iに収まるか否かが判定される。現在表示されている部分画像情報INFO_iが表示可能領域A_iに収まらない場合(ステップS105:NO)、表示内容決定部120により当該表示スポットの現在の表示内容から、優先順位の低い、表示可能領域A_iに収まらない分の情報が削除される(ステップS108)。尚、優先順位は、予め設定された優先基準に従って判断される。
一方、現在表示されている部分画像情報INFO_iが表示可能領域A_iに収まる場合(ステップS105:YES)、表示サイズ決定部160は、更に情報を追加しても部分画像情報が表示可能領域A_iに収まるか否かを判定する(ステップS106)。更に情報を追加し得る場合(ステップS106:YES)、表示内容決定部120により現時点で表示されていない情報の中から、優先順位の高い、表示可能領域A_iに収まる限りの情報が追加される(ステップS107)。
優先順位の低い情報が削除されるか(ステップS108)、優先順位の高い情報が追加された場合(ステップS107)、表示データ生成部170により、表示スポットspt_iが再構築される(ステップS109)。表示スポットの再構築とは、表示スポット内の表示可能領域A_iにおける、部分画像情報INFO_iの内容及び配列態様等を設定し直すことを意味する。
表示スポットspt_iが再構築されるか、或いは現在表示されている部分画像情報INFO_iが表示可能領域A_iに収まるものの情報を追加すると表示可能領域A_iに収まらない場合(ステップS106:NO)、表示スポットspt_iの処理が終了し、未処理の表示スポットが存在するか否かが判定される(ステップS110)。具体的には、識別子iに相当するカウンタが「1」インクリメントされ、カウンタが最大値(即ち、ここでは「3」である)以下であるか否かが判定される。尚、表示スポット決定部140により表示に供されない旨が決定された表示スポットについては、表示データ生成部170により、部分画像情報が無いものとして処理される。その結果、光源ユニットLDUからは、この表示スポットの部分画像情報に対応する部分画像情報光は出射されない。
未処理の表示スポットが有る場合(ステップS110:YES)、処理はステップS102に戻り、表示スポットspt_iの選択から上述した処理が繰り返される。全ての表示スポットについて処理が終了すると(ステップS110:NO)、表示制御処理が終了する。尚、表示制御処理は、制御装置100が所定周期で繰り返し実行する処理であり、所定周期に対応する時間経過の後に、処理は再びステップS101から実行される。
<表示制御処理の具体的作用>
以下、適宜図面を参照して、図11に例示された表示制御処理の具体的な作用について説明する。
<利用者1が頭部を殆ど回転させない場合>
始めに、図12を参照し、利用者1が頭部を身体正面方向から殆ど回転させない場合について説明する。尚、本実施例では、頭部回転角θhの絶対値|θh|が30°未満である場合を、「利用者1が頭部を殆ど回転させない場合」として定義している。図12は、θh=0°の場合の各表示スポットの表示画像を示す図である。尚、同図において、図9と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図12には、頭部回転角θhの絶対値|θh|が0°である場合の各表示スポットの様子が示される。頭部回転角θhの絶対値|θh|が0°である場合、各表示スポットの形成位置は、図9と同様の基準形成位置のままである。
ここで、利用者1が頭部を殆ど回転させない場合(即ち、本実施例では、頭部回転角θhの絶対値|θh|が30°未満である場合)、利用者1の視線の向きを正確に推定することは容易ではない。先に述べたように、各表示スポットは、元々利用者1が視線の向きを変えるのみで視認可能な位置に形成されているからである。このような場合において表示スポット同士(即ち、部分画像情報同士)の相互干渉を抑制するため、本実施例では、第1表示スポットspt_1を利用者1の意思に沿った表示スポット(即ち、メイン表示スポット)として、第1部分画像情報INFO_1を第1表示スポットspt_1の全域を使用して表示する。即ち、「30°」という値は、本発明に係る第1基準値の一例である。
尚、図中では部分画像情報が一貫してハッチング表示されるが、厳密に言えば、各表示スポットの部分画像情報は、図示ハッチング表示のように表示スポットにおいて表示面積を明確に定義できる表示態様で表示される訳ではない。例えば、シンボルマーク、文字情報及び数字等が混在した情報を想定する場合、表示スポットを覆い尽くすようにこれらを表示することは現実的でない。即ち、表示サイズ決定部160により決定される表示サイズの実践的態様は様々であってよい。例えば、表示スポットの全域を利用して部分画像情報を表示する図示第1表示スポットspt_1の場合、第1部分画像情報を構成する各種情報の外郭を結ぶ包絡線の内側の面積を一種の表示サイズとして扱ってもよい。また、表示サイズとは、表示される情報の数や情報量であってもよい。
一方、第2表示スポットspt_2の第2部分画像情報INFO_2及び第3表示スポットspt_3における第3部分画像情報INFO_3は、第1表示スポットspt_1がメイン表示スポットとして扱われることから、その表示サイズが表示スポットの面積に相当する最大値から減じられる。この際特に、利用者1が第1表示スポットspt_1と隣接する第2及び第3表示スポットとの境界付近に視線を移しても第2及び第3表示スポットの部分画像情報が第1部分画像情報INFO_1と相互干渉しないように、第2及び第3部分画像情報と第1部分画像情報INFO_1との間に間隙が形成されるように、第2及び第3部分画像情報の表示サイズが減少させられる。尚、この間隙が、表示変化量yである。即ち、この場合、表示変化量y_2及びy_3が適切な値に設定される。
<利用者1が頭部を小さく回転させた場合>
次に、図13を参照し、利用者1が頭部を身体正面方向から小さく回転させた場合について説明する。尚、本実施例では、頭部回転角θhの絶対値|θh|が30°以上60°未満である場合を、「利用者1が頭部を小さく回転させた場合」として定義している。図13は、|θh|=30°の場合の各表示スポットの表示画像を示す図である。尚、同図において、図12と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図13には、頭部回転角θhの絶対値|θh|が30°である場合の各表示スポットの様子が示される。頭部回転角θhの絶対値|θh|が30°である場合、各表示スポットの形成位置は、図12に示される基準形成位置に対し、順回転方向に全体的に30°シフトする。図13では頭部が左に回転した場合を示しており、各表示スポットは、夫々の位置関係を保持したまま順回転方向(左方向)に30°シフトしている。
ここで、利用者1が頭部を少し回転させた場合(即ち、本実施例では、頭部回転角θhの絶対値|θh|が30°以上60°未満である場合)、利用者1は正面又は左を視認する可能性があり、視線の向きを正確に推定することは依然として容易ではないが、利用者1が逆回転方向(即ち、この場合、右方向)へ視線を向ける可能性は著しく低いと考えることができる。即ち、視線の向きを絞り込むことは可能である。
そこで、制御装置100(表示スポット決定部140及び表示サイズ決定部160)は、基準方向に対して右側に位置する第3表示スポットspt_3を部分画像情報の表示対象から外し、一時的に不使用状態とする。第1表示スポットspt_1の最大表示、第2表示スポットspt_2の減少表示については、図12の場合と同様である。
<利用者1が頭部を大きく回転させた場合>
次に、図14を参照し、利用者1が頭部を身体正面方向から大きく回転させた場合について説明する。尚、本実施例では、頭部回転角θhの絶対値|θh|が60°以上である場合を、「利用者1が頭部を大きく回転させた場合」として定義している。図14は、|θh|=60°の場合の各表示スポットの表示画像を示す図である。尚、同図において、図13と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図14には、頭部回転角θhの絶対値|θh|が60°である場合の各表示スポットの様子が示される。頭部回転角θhの絶対値|θh|が60°である場合、各表示スポットの形成位置は、図12に示される基準形成位置に対し、順回転方向に全体的に60°シフトする。図14では頭部が左に回転した場合を示しており、各表示スポットは、夫々の位置関係を保持したまま順回転方向(左方向)に60°シフトしている。
ここで、利用者1が頭部を大きく回転させた場合(即ち、本実施例では、頭部回転角θhの絶対値|θh|が60°以上である場合)、利用者1は明確な意思を持って左に視線を向けていると考えることができる。即ち、視線の向きを更に絞り込むことができる。
そこで、制御装置100(表示スポット決定部140及び表示サイズ決定部160)は、基準方向に対して右側に位置する第3表示スポットspt_3を部分画像情報の表示対象から外し、一時的に不使用状態とすると共に、利用者1の意思に沿った表示スポット、即ちメイン表示スポットを、第1表示スポットspt_1から第2表示スポットspt_2に切り替える。即ち、第2表示スポットspt_2の第2部分画像情報INFO_2を第2表示スポットspt_2の表示領域全域を使用して表示し、1表示スポットspt_1の第1部分画像情報INFO_1の表示サイズを、第2部分画像情報INFO_2と干渉しないように減少させる。即ち、「60°」という値は、本発明に係る第2基準値の一例である。
ここで特に、第1部分画像情報INFO_1の右端部分については、非表示の第3表示スポットspt_3と干渉する可能性はないものの、利用者1が視線を向ける可能性が低いことから、左端部分と同様に減少させる。図14では、第1表示スポットspt_1の表示変化量y_1は、左右均等である。
以上説明したように、本実施例に係る表示制御処理によれば、利用者1の頭部回転角θhを利用者1の視線の向きを推定するための判断要素として利用し、利用者1の視線の向きを絞り込むことによって、複数の表示スポットに対応する複数の部分画像情報相互間の表示サイズの相対関係をフレキシブルに且つ的確に変更することができる。このため、表示スポットそのものは、利用者1の視野領域に効率的に形成しつつ、利用者1が実際に視認している表示スポットの部分画像情報を、他の部分画像情報との相互干渉を防止しつつ視認させることができる。即ち、効率的且つ効果的な画像情報の表示を、画像情報の表示品質を低下させることなく実現することができるのである。
<第2実施例>
第1実施例では、利用者1の頭部回転角θhに対して各表示スポットの部分画像情報の表示サイズを段階的に変化させる例を示したが、頭部回転角θhに対する表示サイズの変化態様は多様である。第2実施例では、表示サイズを変化させる他の方法について説明する。
始めに、図15を参照して、本実施例の説明に使用する用語を説明する。ここに、図15は、第1及び第2表示スポットの模式図である。尚、同図において、既出の各図と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図15において、第1表示スポットspt_1に第1部分画像情報INFO_1が表示されており(ハッチング部分)、第2表示スポットspt_2に第2部分画像情報INFO_2が表示されている(ハッチング部分)とする。
ここで、利用者1の頭部回転角θに対する表示スポットの表示変化量yとし、利用者1の頭部が身体正面方向を向いている場合、即ち、第1表示スポットspt_1の表示サイズが最大である場合の表示スポットの表示変化量をP(固定値)とする。また、一方の表示スポットの表示サイズ(左右方向の表示サイズ)がxだけ増加すると、他方の表示スポットの当該表示サイズがxだけ減少するとする。また、頭部回転角θhの変化範囲を0°〜Θ°と仮定する。
この場合、表示変化量yを定義する関数は様々なものが想定されるが、例えば、下記(1)式のように定義することができる。
y=P・(cosθ−cosΘ)…(1)
ここで、図16に、上記(1)式に従った表示変化量yの変化特性を示す。
図16に示されるように、上記(1)式のように表示変化量yを定義すると、利用者1が頭部を大きく回転させていない状態では表示変化量yは大きく変化せず、利用者1が頭部を大きく回転させた場合に表示変化量yが大きくなる。そのため、利用者1が身体正面方向を向いた状態で無意識に(自然に)頭部が揺れる影響を緩和することができる。尚、上記(1)の関数は、一例に過ぎず、例えば、頭部回転角θhの増加に対して第2表示スポットspt_2の表示変化量yを減少させてもよい。
尚、上記第1及び第2実施例では、一貫して表示スポットが円形であるとしたが、図17に示されるように、表示スポットは矩形であってもよい。表示スポットが矩形に形成される場合、図示のように、部分画像情報(INFO_1及びINFO_2)もまた矩形であってよい。
<第3実施例>
第1及び第2実施例では、画像表示装置10を車両に搭載する場合について説明したが、画像表示装置10の用途は、車載用HMD等に限定されない。そのような趣旨に基づいた第3実施例について説明する。第3実施例では、画像表示装置10をゴルフに利用する場合について説明する。尚、ここでは、ゴルフへの利用を説明するが、その他にも弓道やアーチェリー等、主として利用者が主体的に動作リズムを決定し、且つ頭部の回転動作を伴い得る特定のスポーツ等においては、本発明に係る画像表示装置は顕著に効果的である。
先ず、図18を参照して、第3実施例に係る表示スポットの形成例について説明する。ここに、図18は、利用者1の視野における各部分画像情報の表示態様を説明する図である。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、第3実施例において、第1実施例及び第2実施例と同様な部分については、過去の説明部分を踏襲することとする。
図18において、図18(a)は、利用者1(ここでは、プレーヤーである)がピンフラッグに対して正対している場合の表示スポットの様子である。この場合、利用者1の頭部は身体正面方向を向いており、各表示スポットの状態は、第1実施例の図12と同様となる。即ち、第1表示スポットspt_1の部分画像情報INFO_1が最大の表示サイズとなり、第2表示スポットspt_2及び第3表示スポットspt_3については、夫々第2部分画像情報INFO_2及び第3部分画像情報INFO_3の表示サイズが減少する。尚、図中のピンフラッグは、画像表示装置10により与えられる画像情報ではなく、利用者1の視野領域に実際に存在する風景である。
一方、図18(b)には、利用者1の状態がピンフラッグに正対している状態からアドレス状態(ボールを打つ準備状態)に切り替わった場合の表示スポットの様子が示される。アドレス状態では、ピンフラッグやコース状態を再度確認するために利用者1が頭部を左に回転させる場合がある(尚、右打ちを想定している)。この場合、第1実施例で説明したように、利用者1は左に視線を向けていると判断することができる。尚、頭部回転角θhとの比較に供される基準値は、第1実施例と異なっていてよい。従って、視線を左に向けた場合に限って画像情報が表示されるように、第2表示スポットspt_2のみが画像表示に利用される。
また、第1表示スポットspt_1及び第3表示スポットspt_3は、一時的にその使用が停止される。これは、アドレス状態においてはボールに集中する必要があり、第1表示スポットspt_1への部分画像情報の表示は、利用者1の利益にならないためである。また、アドレス状態において利用者1が右に視線を向けることは殆どなく、第3表示スポットspt_3への部分画像情報の表示は非効率となるからである。
尚、この実施例では、利用者1がコース状態の確認のためにピンフラッグに正対している場合と、プレーのためにアドレス状態にいった場合とを装置側で検出する必要が生じる。このような利用者1の状態の検出は、例えば、利用者1が適宜入力手段を介していずれの状態であるかを装置側に伝達することによって実現されてもよいし、GPS等の機能を利用して、利用者1のコース上の位置や向きから、装置側が独自に行ってもよい。
ここで、図19を参照し、実際の部分画像情報の例について説明する。ここに、図19は、図18の表示スポットにおける画像情報の表示例を説明する図である。尚、同図において、図18と重複する箇所には、同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図19において、図19(a)は、利用者1がピンフラッグに正対している場合の表示スポットの様子である。
この状態では、利用者1が視線をピンフラッグに向けていれば、第1表示スポットspt_1にピンフラッグまでの距離が情報として表示される。また、利用者1が視線をピンフラッグに対して左に向けると、第2表示スポットspt_2に利用者1の心拍数が情報として表示される。更に、利用者1が視線をピンフラッグに対して右に向けると、第3表示スポットspt_3に風速が情報として表示される。従って、利用者1は、自身が所望する情報を、視線を切り替えるだけで入手することができる。
図19(b)には、利用者1がアドレス状態に入った場合の表示スポットの様子が示される。この場合、アドレス状態において利用者1が再度確認のためにピンフラッグの方向(即ち、左方向)に頭部を回転させた場合に、第2表示スポットspt_2にピンフラッグまでの距離、心拍数及び風速の情報(即ち、正対時に各表示スポットに分散して表示されていた情報)がまとめて表示される。従って、利用者1は、ボールに集中しつつ、必要な情報を簡便に得ることができる。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う画像表示装置、画像表示方法、画像表示制御装置、コンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。