以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は液封入式防振装置1の平面図であり、図2は液封入式防振装置の正面図である。図1及び図2に示すように液封入式防振装置1は、円筒状に形成された内側部材10と、内側部材10を同心状に取り囲む円筒状の外側部材20と、外側部材20と内側部材10との間に介設される防振基体30とを備えている。
図3は図1のIII−III線における液封入式防振装置1の断面図であり、図4は図1のIV−IV線における液封入式防振装置1の断面図であり、図5は図2のV−V線における液封入式防振装置1の断面図である。図3に示すように内側部材10は、円筒状に形成された筒部11と、筒部11の軸方向中央から径方向外側の相反する方向(図3左右方向)に向かってそれぞれ半球状に膨出する膨出部12とを備えている。
外側部材20は、内側部材10を同心状に取り囲む円筒状の部材であり、円筒状に形成された筒部21と、筒部21の内周面に加硫接着されると共にゴム状弾性体から構成されるゴム膜22と、筒部21が外嵌される中間筒40とを備えている。
図3に示すように防振基体30は、内側部材10と外側部材20とを連結すると共にゴム状弾性体から構成される部材である。防振基体30は、内側部材10及び外側部材20の軸方向両側に円環状に形成される一対の径方向隔壁31と、径方向隔壁31間に形成されるゴム膜部32とを備えている。径方向隔壁31及びゴム膜部32は一体に加硫成形され、径方向隔壁31の内周は筒部11の外周に、ゴム膜部32の内周は膨出部12の外周に加硫接着される。径方向隔壁31の外周は、内側部材10を同心状に取り囲む中間筒40の嵌合周壁41の内周に加硫接着される。一対の径方向隔壁31によって外側部材20の軸方向両端が閉鎖されることにより、液室61,62が形成される。液室61,62にはエチレングリコール等の不凍液(液体)が封入される。
図4に示すように中間筒40は、筒部21が外嵌される一対のリング状の嵌合周壁41と、嵌合周壁41同士を連結すると共に嵌合周壁41よりも径方向内側に位置し軸直角方向断面が円弧状の連結壁42とを備えている。連結壁42は、径方向隔壁31と一体に加硫成形される一対の軸方向隔壁33が加硫接着される。液室61,62は、径方向隔壁31の間を軸方向に連結する軸方向隔壁33により周方向に区画される。これにより、内側部材10を挟んで相対する略対称な2つの液室61,62が形成される。
図3に示すように、内側部材10と外側部材20(筒部21)との間に一対のオリフィス形成部材50が配置される。オリフィス形成部材50は、外周に形成された溝部53によりオリフィス54を形成するための部材である。図5に示すように、オリフィス形成部材50は、断面円弧状に形成される本体部51と、本体部51の径方向内側に形成されると共にゴム膜部32(内側部材10)の軸直角方向(図5左右方向)に位置する断面円弧状の第1ストッパ52と、本体部51の周方向両側に突設される第1突部55及び第2突部56とを備えている。第1突部55及び第2突部56と第1ストッパ52との間に、軸方向隔壁33と対面する一対の第2ストッパ57が設けられる。第2ストッパ57は、円弧状の第1ストッパ52の周方向両側に滑らかに連成されている。
一対のオリフィス形成部材50は、第1突部55同士および第1突部56同士が突き合わされ、連結壁42と筒部21との間に第1突部55及び第1突部56が嵌挿される。第1突部55及び第1突部56がそれぞれ突き合わされることにより、溝部53(図3及び図4参照)により筒部21(ゴム膜22)の内側にオリフィス54(図3及び図4参照)が形成される。液室61,62は周方向に延びるオリフィス54により互いに連通される。
軸方向隔壁33及び径方向隔壁31(図3参照)は、軸方向(軸心O方向)と交差する方向に荷重(荷重入力方向は図5左右方向)が入力されて内側部材10及び外側部材20が相対変位することにより弾性変形し、液室61,62間の液圧変動を生じさせる。これにより、オリフィス54を介して液室61,62に充填された液体を流通させる。具体的には、一方の液室61から出た液体は、オリフィス54により外側部材20の内周側を略1周半して他方の液室62に至る。
図4及び図5に示すように、内側部材10は、筒部11の軸方向中央から径方向外側に向けて突設される一対の剛体部13を備えている。剛体部13は、筒部11と一体に形成され、筒部11を挟んで相反する方向(図4左右方向、図5上下方向)に突設される。剛体部13は、防振基体30(軸方向隔壁33)より剛性が高く設定されると共に、軸方向隔壁33の径方向長さの略半分に径方向長さが設定され、軸方向隔壁33に埋設されている。
図5に示すように防振基体30は、軸方向隔壁33の径方向内側に、第2ストッパ57と所定の間隔をあけて対面する挟圧部34が設けられる。挟圧部34は、軸方向隔壁33が弾性変形して第2ストッパ57が押圧されると、第2ストッパ57及び剛体部13に挟圧される部位である。第2ストッパ57は、液封入式防振装置1に荷重が入力されていないフリー状態では、軸方向隔壁33及び挟圧部34にかけて対向している。従って軸方向隔壁33が弾性変形すると、第2ストッパ57は、剛体部13と共に挟圧部34を挟圧しつつ軸方向隔壁33を押圧する。なお、荷重の入力前は、荷重入力方向(図5左右方向)において、ゴム膜部32(内側部材10)と第1ストッパ52との間隔が、挟圧部34と第2ストッパ57との間隔より大きい値に設定される。
液封入式防振装置1の製造方法は、まず、内側部材10と中間筒40との間に防振基体30を加硫成形し、得られたゴム成形体に対して中間筒40を縮径加工することにより防振基体30に予圧縮を与える。次いで、中間筒40の外周にオリフィス形成部材50を装着し、液中で筒部21を被せた後に筒部21を縮径し、その両端部を内側に折曲することにより外側部材20を形成する。これにより液封入式防振装置1が得られる。
液封入式防振装置1は、軸方向隔壁33の延設方向(図5上下方向)と交差する方向に軸直角方向荷重が入力されると、軸方向隔壁33が弾性変形して内側部材10と外側部材20とが相対変位する。液室61,62を区画する軸方向隔壁33が変形するので、液室61,62の液圧変動が生じ、液室61,62内の液体がオリフィス54を通って流れる。オリフィス54によって液共振が生じ、振動が減衰される。
さらに大きい軸直角方向荷重が入力されると、軸方向隔壁33の変形量が大きくなるので、軸方向隔壁33及び挟圧部34と第2ストッパ57とが突き当たる。そうすると、第2ストッパ57が突き当たる前と比べて、第2ストッパ57及び剛体部13に挟圧された挟圧部34の静ばね定数が高くなる。軸方向隔壁33及び挟圧部34は、荷重入力方向に対して並列に繋がれた並列ばねの関係にあるので、挟圧部34の静ばね定数が高くなることで、軸方向隔壁33及び挟圧部34の合成ばね定数が高くなる。
そのため、第2ストッパ57が挟圧部34と干渉しない従来の液封入式防振装置であれば、第1ストッパ52と内側部材10(ゴム膜部32)とが干渉してしまうような大きさの軸直角方向荷重が入力された場合でも、挟圧部34の静ばね定数を高くできる分、第1ストッパ52と内側部材10(ゴム膜部32)とが干渉しないようにできる。より大きな軸直角方向荷重が入力されて第1ストッパ52とゴム膜部32とが干渉するまでの間、軸方向隔壁33の変形を確保し、液室61,62の液圧変動を生じさせることができる。
さらに大きな軸直角方向荷重が入力されて、挟圧部34が第2ストッパ57に押圧されつつゴム膜部32が第1ストッパ52に突き当たると、ゴム膜部32は径方向厚さが小さいので直ちに径方向に圧縮される。その結果、軸方向隔壁33のそれ以上の過大変形が規制される。よって、液封入式防振装置1の耐久性を確保できる。
次に図6を参照して、液封入式防振装置1を装着した車両70について説明する。図6は液封入式防振装置1を車両70へ装着した状態を示す模式図である。本実施の形態では、車両70の右前輪のサスペンションのロアアームリンク71と車体フレーム(図示せず)との間に液封入式防振装置1が結合されるアームリンク構造について説明する。
図6に示すように車両70は、フロントサスペンションのロアアームリンク71において、車輪73側のボールジョイント72が車体側のクロスメンバー(車体フレーム)に防振的に連結される。ロアアームリンク71は、前側にブッシュ型の防振装置74が配置され、後側に液封入式防振装置1が配置される。液封入式防振装置1は、内側部材10の軸方向を車両上下方向(図6紙面垂直方向)に向けた状態で、ロアアームリンク71に形成された圧入孔に外側部材20が圧入され、車体フレーム(図示せず)に内側部材10が連結される。
車輪73の前後方向(矢印F−B方向)の変位時には、液封入式防振装置1に対し車両左右方向(矢印L−R方向)における軸直角方向荷重が入力され、これが主荷重入力方向となる。そのため液封入式防振装置1は、この軸直角方向(矢印L−R方向)に液室61,62が相対向するように、ロアアームリンク71に取り付けられる。
一方、車輪73の上下方向(図6紙面垂直方向)の変位時には、ロアアームリンク71の前後の防振装置74及び液封入式防振装置1を通る軸線Lを中心に回転しようとする力がロアアームリンク71に作用する。従って液封入式防振装置1には、内側部材10の軸心O(図5参照)に対して外側部材20の軸心が傾くようなこじり方向の荷重が入力される。
次に図7を参照して、走行する車両70にブレーキをかけた場合の液封入式防振装置1の変位について説明する。図7は液封入式防振装置1に入力される荷重と変位との関係を示す図であり、内側部材10と外側部材20との相対変位を横軸に、荷重(軸直角方向荷重)を縦軸に示す。なお、図7に示す荷重−変位曲線は、本実施の形態における液封入式防振装置1(実施例)を実線で、比較例における液封入式防振装置(比較例)を破線で示す。
比較例における液封入式防振装置は、剛体部13及びオリフィス形成部材50の第2ストッパ57が省略されている以外、実施例における液封入式防振装置1(実施例)と同一に構成されている。よって、比較例は、剛体部13及び第2ストッパ57以外、液封入式防振装置1(実施例)と同一の符号を用いて説明する。
比較例(破線)によれば、走行中の車両70にブレーキをかけた場合、荷重(慣性力)が増加するにつれて変位が増加する。荷重が荷重Cに達すると、第1ストッパ52とゴム膜部32とが突き当たる(点D)。このときの変位を変位Bとする。ゴム膜部32は径方向厚さが小さいので、軸方向隔壁33の変形が制限されて荷重−変位曲線が急激に立ちあがる。従って、荷重Cが入力された状態で振動(軸直角方向荷重)が入力された場合には、軸方向隔壁33の変形が制限されているので、減衰性能は乏しい。よって、ブレーキ時に車体が振動するブレーキジャダーとよばれる現象やステアリングが振動するブレーキシミーとよばれる現象が生じる。
一方、実施例(実線)によれば、剛体部13及び第2ストッパ57(図5)を有しているので、荷重が増加して変位A(変位A<変位B)に達すると、第2ストッパ57と挟圧部34とが突き当たる。挟圧部34は第2ストッパ57及び剛体部13に挟圧されて静ばね定数が高くなるので、比較例に対して荷重−変位曲線が立ち上がる。そのため、荷重が荷重Cに達しても(点E)、軸方向隔壁33は、第1ストッパ52とゴム膜部32とが突き当たるまで(点D)、変形できる余裕(点Dと点Eとの間隔)ができる。従って、荷重Cが入力された状態で振動(軸直角方向荷重)が入力された場合も軸方向隔壁33が変形できるので、液室61,62間の液圧変動を生じさせることができる。よって、減衰性能を確保できる。
さらに、荷重Cより大きな荷重が入力された場合には、第1ストッパ52とゴム膜部32とが突き当たることで(点D)、軸方向隔壁33の過大変形を規制できる。よって、液封入式防振装置1の耐久性を確保できる。
次に図8を参照して、液封入式防振装置1の加振周波数とロスファクタ(減衰性能)との関係について説明する。図8は液封入式防振装置1の加振周波数とロスファクタとの関係を示す図であり、加振周波数を横軸に、ロスファクタを縦軸に示す。なお、図8に示す曲線は、本実施の形態における液封入式防振装置1(実施例)を実線で、比較例における液封入式防振装置(図7で説明したものと同じ)を破線で示す。
図8に示すように実施例によれば、液室61,62(図5参照)を連通するオリフィス54によって液共振が生じるので、特定の加振周波数においてロスファクタを大きくできる。また、実施例は、荷重入力時(荷重C(図7参照)の入力時)においても軸方向隔壁33の変形を確保できる。よって、液室61,62間の液圧変動を確保でき、ロスファクタを確保できる。これに対し比較例では、荷重入力時(荷重C(図7参照)の入力時)に軸方向隔壁33の変形が規制されるので、ロスファクタが著しく小さくなる。
なお、実施例のロスファクタが荷重入力時(荷重C(図7参照)の入力時)に少し小さくなるのは、挟圧部34に第2ストッパ57が押し付けられることによる軸方向隔壁33のピストン面積の低下、軸方向隔壁33及び挟圧部34の合成ばね定数が高くなることによる弾性変形能の低下等の要因が考えられる。
以上説明したように液封入式防振装置1(実施例)によれば、比較例であれば軸方向隔壁33の変形が制限されてしまう大きさの軸直角方向荷重(荷重C)が入力された場合も、第2ストッパ57によって軸方向隔壁33の変形を確保できる。よって、液室61,62間の液圧変動を生じさせることができ、振動の減衰性能(ロスファクタ)を確保できる。さらに、第1ストッパ52によって軸方向隔壁33の過大変形を規制できるので、耐久性を確保できると共に、内側部材10と外側部材20とが相対変位可能な軸直角方向荷重の範囲を広げつつ減衰性能を確保できる。
また、挟圧部34は、液室61,62を周方向に区画すると共に内側部材10を挟んで位置する一対の軸方向隔壁33の径方向内側に形成されている。荷重入力方向に対して軸方向隔壁33及び挟圧部34を並列ばねの関係にできるので、防振基体30が弾性変形して挟圧部34が第2ストッパ57及び剛体部13に挟圧されたときに、軸方向隔壁33の変形能を確保しつつ軸方向隔壁33及び挟圧部34の合成ばね定数を高めることができる。よって、第2ストッパ57に押圧された後の軸方向隔壁33の変形能を確保して、減衰性能を確保することができる。
また、軸方向隔壁33は荷重入力方向におけるゴム状弾性体の厚さを大きくできるので、その軸方向隔壁33に剛体部13を埋設することで、剛体部13の形状や大きさの自由度を向上できる。よって、液封入式防振装置1の設計の自由度を向上できる。
次に図9を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態ではオリフィス形成部材50に設けられた一対の第2ストッパ57が、第1ストッパ52の周方向両側に滑らかに連成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第2ストッパ157が、第1ストッパ52の周方向両側に突設される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9は第2実施の形態における液封入式防振装置のオリフィス形成部材150の斜視図である。
図9に示すようにオリフィス形成部材150は、第1ストッパ52の周方向両側に位置する本体部51に第2ストッパ157が突設されている。第2ストッパ157は略半球状に形成されることで、先端が球面状に形成されている。オリフィス形成部材150は、第1実施の形態で説明したオリフィス形成部材50に代えて外側部材20の内周に配置され、第2ストッパ157は挟圧部34に向かって突出するように設けられる。第2ストッパ157と挟圧部34との間隔は、軸直角方向荷重が入力されていない状態で、第1ストッパ52とゴム膜部32との間隔より小さい値に設定される。
これにより第2実施の形態における液封入式防振装置も、第1実施における液封入式防振装置1と同様の作用効果を実現できる。さらに、第2ストッパ157は挟圧部34に向かって突出する突出状に形成されているので、第2ストッパ157の突出長を設定することによって、第2ストッパ157と挟圧部34との間隔を適宜設定できる。その結果、第2実施の形態によれば、液封入式防振装置の設計の自由度を向上できる。
また、ロアアームリンク71(図6参照)に配置された液封入式防振装置1のように、走行する車両70にブレーキがかけられた状態で車輪73が上下方向(図6紙面垂直方向)に変位する場合には、軸直角方向荷重の入力に加え、液封入式防振装置に軸方向荷重が入力される。その場合、第2ストッパ157によって挟圧部34はこじり方向の入力を受けることになる。第2ストッパ157は先端が球面状に形成されているので、挟圧部34にこじり方向の荷重が入力された場合も挟圧部34の応力を緩和できる。その結果、防振基体30の耐久性を確保できる。
次に図10を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、本体部51に突設された第2ストッパ157の先端が球面状に形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、本体部51に突設された第2ストッパ257が角柱状に形成され、先端が平坦面状に形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図10は第3実施の形態における液封入式防振装置のオリフィス形成部材250の斜視図である。
図10に示すようにオリフィス形成部材250は、第1ストッパ52の周方向両側に位置する本体部51に角柱状の第2ストッパ257が突設されている。オリフィス形成部材250は、第1実施の形態で説明したオリフィス形成部材50に代えて外側部材20の内周に配置され、第2ストッパ257は挟圧部34に向かって突出するように設けられる。第2ストッパ257と挟圧部34との間隔は、軸直角方向荷重が入力されていない状態で、第1ストッパ52とゴム膜部32との間隔より小さい値に設定される。
これにより第3実施の形態における液封入式防振装置も、第1及び第2実施の形態における液封入式防振装置と同様の作用効果を実現できる。さらに、第2ストッパ257の平坦面状の先端面と側面とが曲率のある曲面によって連なっているので、挟圧部34にこじり方向の荷重が入力された場合も挟圧部34の応力を緩和できる。その結果、防振基体30の耐久性を確保できる。
次に図11を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、筒部11から径方向外側に向かって剛体部13が突設され、軸方向隔壁33の径方向内側に挟圧部34が形成される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、筒部11から径方向外側に膨出する膨出部312の一部に剛体部313が形成され、膨出部312を覆うゴム膜部332と軸方向隔壁333との間に挟圧部334が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図11は第4実施の形態における液封入式防振装置301の軸直角方向断面図である。
図11に示すように液封入式防振装置301は、膨出部312が、筒部11の軸方向中央から周方向に亘って略球状に膨出される。膨出部312は、荷重入力方向(図11左右方向)がゴム膜部332で覆われる。ゴム膜部332は、大荷重が入力されたときに、オリフィス形成部材350の第1ストッパ52と膨出部312との間に介在することにより異音の発生を抑制する。筒部11及び膨出部312は、荷重入力方向と直交する方向(図11上下方向)に延びる一対の軸方向隔壁333が加硫接着され、軸方向隔壁333によって液室61,62が周方向に区画される。
膨出部312の一部の表面を平坦面状にすることにより剛体部313が形成される。剛体部313は、膨出部312の周方向の4箇所(荷重入力方向に対して略45°の位置にあたる箇所)に形成される。剛体部313は、ゴム状弾性体から構成される挟圧部334によって覆われる。
挟圧部334は、ゴム膜部332及び軸方向隔壁333と一体にゴム状弾性体から形成され、軸方向隔壁333に対して荷重入力方向における相対移動方向前側に位置し、相対移動方向後側が軸方向隔壁333と連成される。挟圧部334の径方向厚さは、ゴム膜部332の径方向厚さより大きく設定されている。
オリフィス形成部材350は、剛体部313及び挟圧部334と対向して設けられる第2ストッパ357が、荷重入力方向(図11左右方向)に対して斜交(本実施の形態では約45°)するように配置される。第2ストッパ357は、荷重が入力されたときに、剛体部313との間で挟圧部334を挟圧するための部位であり、第1ストッパ52の周方向両側に設けられている。第2ストッパ357と挟圧部334との間隔は、軸直角方向荷重が入力されていない状態で、第1ストッパ52とゴム膜部332との間隔より小さい値に設定される。
これにより第4実施の形態における液封入式防振装置301も、荷重入力方向に対して挟圧部334及び軸方向隔壁333を並列ばねの関係にできる。よって、挟圧部334に第2ストッパ357が突き当てられたときに挟圧部334及び軸方向隔壁333の合成ばね定数を高くできるので、第1実施の形態から第3実施の形態における液封入式防振装置と同様の作用効果を実現できる。
さらに、剛体部313及び第2ストッパ357は荷重入力方向に対して斜交するように配置されるので、剛体部313及び第2ストッパ357を荷重入力方向に対して直交するように配置する場合と比較して、剛体部313及び第2ストッパ357の径方向寸法を小さくできる。その結果、相対的に軸方向隔壁333の径方向寸法を大きくできるので、第2ストッパ357及び剛体部313に挟圧部334が挟圧されたときに軸方向隔壁333が変形し難くなることを抑制できる。その結果、第2ストッパ357及び剛体部313に挟圧部334が挟圧されたときの液封入式防振装置301の減衰性能を確保できる。
また、剛体部313、挟圧部334及び第2ストッパ357が、荷重入力方向(図11左右方向)に対して斜交するように配置されるので、剛体部313及び第2ストッパ357に挟圧される挟圧部334は、径方向に圧縮されると同時に周方向にも変形される。その結果、剛体部313及び第2ストッパ357に挟圧されたときの挟圧部334の変形能を確保することができ、挟圧部334の静ばね定数が急激に上昇することを防止できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げたオリフィス形成部材50,150,250,350等の形状は一例であり、他の形状を採用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、内筒11の外周に膨出部12,312が一体形成され、膨出部12,312がゴム膜部32,332で覆われる内側部材10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、膨出部12,312及びゴム膜部32,332を省略することは当然可能である。この場合には、膨出部12,312及びゴム膜部32,332が省略された分だけ、オリフィス形成部材50,150,250,350の第1ストッパ52や第2ストッパ357と内側部材10の間隔が大きくなってしまう。そこで、第1ストッパ52や第2ストッパ357を内側部材10に向かって突出させることにより、荷重が入力されたときに内側部材10と第1ストッパ52や第2ストッパ357とが干渉されるようにする。
これにより防振基体30,330の変位を規制できるので、液封入式防振装置の耐久性を確保できる。この場合に、内筒11の外周や第1ストッパ52の表面に衝撃緩衝用のゴム膜を設けることは当然可能である。但し、内筒部材10に形成する剛体部には、第2ストッパ357に押圧される挟圧部(ゴム状弾性体)を設ける。
また、上記各実施の形態では、内筒11の外周に膨出部12,312が一体形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。合成樹脂製やゴム製等の別部材を内筒11の外周に巻き付けたり接着したりして、内筒11に膨出部を設けることは当然可能である。
上記各実施の形態では、内側部材10に剛体部13,313が連結される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、剛体部を外側部材20に連結することは当然可能である。この場合には、連結壁42(中間筒40)の内周面から径方向内側に向けて剛体部を突設し、その剛体部を防振基体30(軸方向隔壁33,333)に埋設する。これにより、防振基体30とオリフィス形成部材50,150,250,350とを干渉させて、軸方向隔壁33,333の径方向外側に位置する挟圧部(防振基体)の静ばね定数を、径方向内側の静ばね定数と比較して高くすることができる。その結果、上記各実施の形態と同様に、並列ばねの関係となる挟圧部および軸方向隔壁33,333の合成ばね定数を段階状に上昇させることができる。
上記実施の形態では、第2ストッパ157,257や挟圧部334が半球状や角柱状に形成される場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、防振基体とオリフィス形成部材とを干渉させることができれば、他の形状に設定することは当然可能である。他の形状としては、例えば、円柱状、円錐台状、5角形や6角形等の多角柱状等が挙げられる。
上記実施の形態では説明を省略したが、オリフィス形成部材50,150,250,350によって複数のオリフィス(主オリフィス及び副オリフィス)を形成し、副オリフィスに弁体を設ける周知の液封入式防振装置にこの技術を適用することは当然可能である。
上記実施の形態では、軸直角方向荷重が入力される液封入式防振装置1,301について説明した。そのため、オリフィス形成部材50,150,250,350の第1ストッパ52を、内側部材10の膨出部12に対して軸直角方向に配置した。即ち、膨出部12及び第1ストッパ52を、内側部材10の軸心Oを対称軸として線対称状となるように設定した。しかし、液封入式防振装置は必ずしもこれに限られるものではなく、膨出部12や第1ストッパ52の位置は、荷重入力方向に応じて適宜設定できる。
例えば、荷重入力方向が軸方向(軸心O方向)と斜交する方向であれば、膨出部12及び第1ストッパ52は、軸心Oに対して斜交する直線を対称軸として線対称状となるように設定する。この場合、オリフィス形成部材50,150,250,350の第2ストッパ57,157,257,357及び挟圧部34,334も同様に、軸心Oに対して斜交するその直線を対称軸として線対称状となるように設定する。これにより、荷重入力方向が軸心Oと斜交する場合も、オリフィス形成部材50,150,250,350が内側部材10を押圧する程の大きな荷重が入力されると、オリフィス形成部材50,150,250,350は、まず防振基体30を押圧し、次に内側部材10を押圧する。その結果、上記実施の形態と同様に、防振基体30,330の静ばね定数を段階状に上昇させることができ、減衰性能を確保できる。