本発明の部品内蔵回路板の製造方法について詳細に説明する前に、本発明の製造方法において使用する「キャビティが形成された回路基板」及び「接着フィルム」について説明する。
<キャビティが形成された回路基板>
本発明の製造方法においては、第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通するキャビティが形成された回路基板を使用する。斯かる回路基板を「キャビティが形成された回路基板」と略称する。
キャビティが形成された回路基板は、部品内蔵回路板の製造に際し従来公知の任意の手順に従って用意してよい。以下、図1A及び図1Bを参照して、キャビティが形成された回路基板を用意する手順の一例を説明する。
はじめに、回路基板を用意する(図1A)。本発明において、「回路基板」とは、対向する第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面の片方又は両方にパターン加工された回路配線を有する板状の基板をいう。図1Aには、回路基板1の端面を模式的に示しており、回路基板1は、基板2と、ビア配線、表面配線等の回路配線3とを含む。以下の説明においては、便宜的に、回路基板の第1の主面とは、図示する回路基板の下側主面を表し、回路基板の第2の主面とは、図示する回路基板の上側主面を表すこととする。
回路基板1に用いられる基板2としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられ、ガラスエポキシ基板が好ましい。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「回路基板」に含まれる。
回路基板1の基板2の厚さは、部品内蔵回路基板の薄型化の観点から、薄い方が好適であり、好ましくは350μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下、さらにより好ましくは200μm以下、特に好ましくは180μm以下、170μm以下、160μm以下、又は150μm以下である。本発明の方法によれば、斯かる薄い基板を備えた回路基板を使用する場合であっても、基板反りの発生を抑制することができる。基板2の厚さの下限は特に制限されないが、搬送時の取り扱い性向上の観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上である。
基板2の熱膨張係数は、回路歪みやクラックの発生を抑制する観点から、好ましくは15ppm以下、より好ましくは13ppm以下、さらに好ましくは11ppm以下である。基板2の熱膨張係数の下限は、絶縁層の形成に使用する樹脂組成物の組成にもよるが、好ましくは−2ppm以上、より好ましくは0ppm以上、さらに好ましくは4ppm以上である。本発明において、基板2の熱膨張係数は、引張加重法で熱機械分析(TMA)することにより得られた、平面方向の25〜150℃の線熱膨張係数である。基板2の線熱膨張係数の測定に使用し得る熱機械分析装置としては、例えば、(株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」、セイコーインスツルメンツ(株)製「TMA-SS6100」が挙げられる。
基板2のガラス転移温度(Tg)は、部品内蔵回路基板の機械強度の観点から、好ましくは170℃以上、より好ましくは180℃以上である。基板2のTgの上限は特に限定されないが、通常300℃以下である。基板2のTgは、引張加重法で熱機械分析することにより測定することができる。熱機械分析装置としては、上記と同じものを使用し得る。
回路基板1の備える回路配線3の寸法は、所望の特性に応じて決定してよい。例えば、表面配線の厚さは、部品内蔵回路基板の薄型化の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下、19μm以下、又は18μm以下である。表面配線の厚さの下限は特に制限されないが、通常、1μm以上、3μm以上、5μm以上などである。
次に、部品を収容するためのキャビティを回路基板に設ける(図1B)。図1Bに模式的に示すように、基板2の所定の位置に、回路基板の第1及び第2の主面間を貫通するキャビティ2aを設けることができる。これによって、キャビティ2aが形成された回路基板1’が得られる。キャビティ2aは、基板2の特性を考慮して、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ、エッチング媒体等を用いる公知の方法により形成することができる。
図1Bには、1つのキャビティ2aのみを示しているが、キャビティ2aは、互いに所定の間隔をあけて複数設けることができる。キャビティ2a間のピッチは、部品内蔵回路基板の小型化の観点から、短いことが好適である。キャビティ2a間のピッチは、キャビティ2a自体の開口寸法にもよるが、好ましくは10mm以下、より好ましくは9mm以下、さらに好ましくは8mm以下、さらにより好ましくは7mm以下、特に好ましくは6mm以下である。本発明の方法によれば、キャビティを斯かる短いピッチにて設ける場合であっても、基板反りの発生を抑制することができる。キャビティ2a間のピッチの下限は、キャビティ2a自体の開口寸法にもよるが、通常、1mm以上、2mm以上などである。キャビティ2a間の各ピッチは、回路基板にわたって同じである必要はなく、異なっていてもよい。
キャビティ2aの開口形状は特に制限されず、矩形、円形、略矩形、略円形等の任意の形状としてよい。また、キャビティ2aの開口寸法は、回路配線の設計にもよるが、例えば、キャビティ2aの開口形状が矩形の場合、5mm×5mm以下が好ましく、3mm×3mm以下がより好ましい。当該開口寸法の下限は、収容する部品の寸法にもよるが、通常、0.5mm×0.5mm以上である。キャビティ2aの開口形状及び開口寸法は、回路基板にわたって同じである必要はなく、異なっていてもよい。
以上、図1A及び図1Bを参照して、キャビティが形成された回路基板を用意する手順の一例を説明したが、キャビティが形成された回路基板が得られる限り、上記の手順に限定されるものではない。例えば、基板にキャビティを形成した後に、回路配線を設けてもよい。このような変形例によって用意したキャビティが形成された回路基板を使用して部品内蔵回路板を製造する態様も本発明の範囲内である。
<接着フィルム>
本発明の製造方法では、第1の接着フィルムと第2の接着フィルムを使用する。
(第1の接着フィルム)
図2に、第1の接着フィルムの端面を模式的に示す。第1の接着フィルム10は、第1の支持体11と、該第1の支持体と接合する第1の熱硬化性樹脂組成物層12とを含む。
第1の支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
第1の支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
第1の支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
第1の支持体は、後述する第1の熱硬化性樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
また、第1の支持体としては、後述する第1の熱硬化性樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」などが挙げられる。
第1の支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、得られる絶縁層の熱膨張率を低下させて絶縁層と導体層との熱膨張の差によるクラックや回路歪みの発生を防止する観点、並びに溶融粘度の過度の低下を防止して部品の位置ズレを抑制する観点から、無機充填材を含むことが好ましい。
樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、得られる絶縁層の熱膨張率を低下させる観点及び溶融粘度の過度の低下を防止し部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上、特に好ましくは62質量%以上、64質量%以上、又は66質量%以上である。特に部品の位置ズレを抑制する観点からは、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、得られる絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたときの値である。
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等のシリカが特に好適である。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
無機充填材の平均粒径は、樹脂組成物の流動性を高めて十分な回路埋め込み性を実現する観点から、0.01μm〜4μmの範囲が好ましく、0.05μm〜2μmの範囲がより好ましく、0.1μm〜1μmの範囲がさらに好ましく、0.3μm〜0.8μmがさらにより好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製LA−500等を使用することができる。
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
表面処理剤で表面処理された無機充填材は、溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる熱硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。一実施形態において、第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、無機充填材及びエポキシ樹脂を含む。樹脂組成物はまた、必要に応じて、硬化剤を含んでいてもよい。一実施形態において、第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含む。第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、更に熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及びゴム粒子等の添加剤を含んでいてもよい。
以下、樹脂組成物の材料として使用し得るエポキシ樹脂、硬化剤、及び添加剤について説明する。
−エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びトリメチロール型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下、「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物を硬化して形成される絶縁層の破断強度も向上する。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「EXA4032SS」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラックエポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ESN475」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:4の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)接着フィルムの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)接着フィルムの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する絶縁層を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:3.5の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:3の範囲がさらに好ましく、1:0.8〜1:2.5の範囲が特に好ましい。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、3質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜45質量%がより好ましく、5質量%〜40質量%が更に好ましく、7質量%〜35質量%が特に好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜3000、より好ましくは80〜2000、さらに好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗度の低い絶縁層をもたらす。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
−硬化剤−
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層(回路配線)との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性(剥離強度)を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることが好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、東都化成(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「LA7052」、「LA7054」、「LA3018」等が挙げられる。
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.5がより好ましく、1:0.4〜1:1がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
一実施形態において、第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、上述の無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含む。樹脂組成物は、無機充填材としてシリカを、エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は1:0.1〜1:4の範囲が好ましく、1:0.3〜1:3.5の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:3の範囲がさらに好ましく、1:0.8〜1:2.5の範囲が特に好ましい)を、硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上(好ましくはフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤からなる群から選択される1種以上、より好ましくはトリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ナフトール系硬化剤からなる群から選択される1種以上、さらに好ましくはトリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂を含む硬化剤)を、それぞれ含むことが好ましい。斯かる特定の成分を組み合わせて含む樹脂組成物に関しても、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤の好適な含有量は上述のとおりであるが、中でも、無機充填材の含有量が30質量%〜90質量%、エポキシ樹脂の含有量が3質量%〜50質量%であることが好ましく、無機充填材の含有量が50質量%〜90質量%、エポキシ樹脂の含有量が5質量%〜45質量%であることがより好ましい。硬化剤の含有量に関しては、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、硬化剤の反応基の合計数との比が、好ましくは1:0.2〜1:2の範囲、より好ましくは1:0.3〜1:1.5の範囲、さらに好ましくは1:0.4〜1:1の範囲となるように含有させる。
樹脂組成物は、必要に応じて、さらに熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及びゴム粒子等の添加剤を含んでいてもよい。
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、東都化成(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の粘度が適度となり、厚みやバルク性状の均一な樹脂組成物を形成することができる。樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましい。
−硬化促進剤−
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分合計量を100質量%としたとき、0.05質量%〜3質量%の範囲で使用することが好ましい。
−難燃剤−
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。樹脂組成物層中の難燃剤の含有量は特に限定はされないが、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜9質量%がより好ましく、1.5質量%〜8質量%がさらに好ましい。
−ゴム粒子−
ゴム粒子としては、例えば、後述する有機溶剤に溶解せず、上述のエポキシ樹脂、硬化剤、及び熱可塑性樹脂などとも相溶しないものが使用される。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。
ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メチルメタクリレート重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。ゴム粒子は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ゴム粒子の平均粒径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。ゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。樹脂組成物中のゴム粒子の含有量は、好ましくは1質量%〜10質量%であり、より好ましくは2質量%〜5質量%である。
第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
第1の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは、部品内蔵回路板の薄型化の観点から、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらにより好ましくは30μm以下である。第1の熱硬化性樹脂組成物層の厚さの下限は、特に制限されないが、通常、10μm以上である。
第1の熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度は、部品内蔵回路板の製造に際して層保形性(染み出し防止)の観点から、好ましくは100ポイズ以上、より好ましくは300ポイズ以上、さらに好ましくは500ポイズ以上である。第1の熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度の上限は、特に制限されないが、好ましくは10000ポイズ以下、より好ましくは8000ポイズ以下、さらに好ましくは6000ポイズ以下、さらにより好ましくは4000ポイズ以下、特に好ましくは3000ポイズ以下である。
ここで、熱硬化性樹脂組成物層の「最低溶融粘度」とは、熱硬化性樹脂組成物層の樹脂が溶融した際に熱硬化性樹脂組成物層が呈する最低の粘度をいう。詳細には、一定の昇温速度で熱硬化性樹脂組成物層を加熱して樹脂を溶融させると、初期の段階は溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある温度を超えると温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。「最低溶融粘度」とは、斯かる極小点の溶融粘度をいう。熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度は、動的粘弾性法により測定することができる。具体的には、熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度は、測定開始温度60℃、昇温速度5℃/分、振動数1Hz、ひずみ1degの条件で動的粘弾性測定を行うことにより得ることができる。動的粘弾性測定装置としては、例えば、(株)ユー・ビー・エム社製の「Rheosol−G3000」が挙げられる。
(第2の接着フィルム)
第2の接着フィルムは、第2の支持体と、該第2の支持体と接合する第2の熱硬化性樹脂組成物層を含む。
第2の支持体の材料及び厚さは、上記第1の支持体について説明したものと同じであってよい。
第2の熱硬化性樹脂組成物層の材料は、上記第1の熱硬化性樹脂組成物層について説明したものと同じであってよい。
得られる絶縁層の熱膨張率を低下させる観点及び熱硬化中の溶融粘度の過度の低下を防止して部品の位置ズレを抑制する観点から、第2の熱硬化性樹脂組成物層を構成する樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上、特に好ましくは62質量%以上、64質量%以上、又は66質量%以上である。特に部品の位置ズレを抑制する観点からは、50質量%以上であることが好ましい。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、得られる絶縁層の機械強度の観点及び埋め込み性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
第2の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは、部品内蔵回路板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下である。第2の熱硬化性樹脂組成物層の厚さの下限は、回路基板の厚さなどにもよるが、部品の埋め込み性及びキャビティ充填性の観点から、通常、15μm以上である。
好適な実施形態において、第2の熱硬化性樹脂組成物層は、第1の熱硬化性樹脂組成物層よりも厚い。
部品内蔵回路板の製造に際して十分な部品の埋め込み性及びキャビティ充填性を実現する観点から、第2の熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度は、好ましくは10000ポイズ以下、より好ましくは8000ポイズ以下、さらに好ましくは6000ポイズ以下、さらにより好ましくは4000ポイズ以下、特に好ましくは3000ポイズ以下である。第2の熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度の下限は、部品内蔵回路板の製造に際して層保形性(染み出し防止)の観点から、好ましくは100ポイズ以上、より好ましくは300ポイズ以上、さらに好ましくは500ポイズ以上である。
以下、第1及び第2の接着フィルムを作製する手順の一例を示す。
接着フィルムは、第1及び第2の接着フィルムの別を問わず、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させることによって作製することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、支持体上に熱硬化性樹脂組成物層を形成することができる。
接着フィルムは、第1及び第2の接着フィルムの別を問わず、熱硬化性樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に、保護フィルムをさらに含んでもよい。保護フィルムは、熱硬化性樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズの防止に寄与する。保護フィルムの材料としては、支持体について説明した材料と同じものを用いてよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。接着フィルムは、部品内蔵回路板を製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
以上、第1及び第2の接着フィルムを作製する手順の一例を示したが、第1及び第2の接着フィルムが得られる限り、上記の手順に限定されるものではない。例えば、保護フィルム上に熱硬化性樹脂組成物層を形成した後に、該熱硬化性樹脂組成物層上に支持体を積層して接着フィルムを作製してもよい。本発明において「支持体」とは、部品内蔵回路板の製造に際し、熱硬化性樹脂組成物層と共に回路基板の主面に積層される部材をいうのであって、接着フィルム製造時における樹脂ワニスの支持部材を限定的に表すものではない。
以下、本発明の部品内蔵回路板の製造方法を、その好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[部品内蔵回路板の製造方法]
本発明の部品内蔵回路板の製造方法は、下記工程(A)、(B)、(C)及び(D)をこの順序で含む。
(A)第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通するキャビティが形成された回路基板に、第1の支持体及び該第1の支持体と接合する第1の熱硬化性樹脂組成物層を含む第1の接着フィルムを、該第1の熱硬化性樹脂組成物層が回路基板の第1の主面と接合するように、真空積層する工程
(B)キャビティ内の第1の熱硬化性樹脂組成物層に部品を仮付けする工程
(C)回路基板の第2の主面に、第2の支持体及び該第2の支持体と接合する第2の熱硬化性樹脂組成物層を含む第2の接着フィルムを、該第2の熱硬化性樹脂組成物層が回路基板の第2の主面と接合するように、真空積層する工程であって、第1の接着フィルム表面の加熱温度が第2の接着フィルム表面の加熱温度よりも低い条件にて真空積層する工程
(D)第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化する工程
なお本発明において、工程(A)乃至(D)についていう「この順序で含む」とは、工程(A)乃至(D)の各工程を含み且つ工程(A)乃至(D)の各工程がこの順序で実施される限り、他の工程を含むことを妨げるものではない。
以下、工程又は処理についていう「この順序で含む」に関しても、同様とする。
以下、図3A乃至図3Gを参照しつつ、各工程について説明する。
<工程(A)>
工程(A)において、キャビティ2aが形成された回路基板1’に、第1の接着フィルム10を、第1の熱硬化性樹脂組成物層12が回路基板の第1の主面と接合するように真空積層する(図3A)。
キャビティ2aが形成された回路基板1’および第1の接着フィルム10の構成は先述のとおりである。
キャビティ2aが形成された回路基板1’への第1の接着フィルム10の真空積層は、例えば、減圧条件下、第1の支持体11側から、第1の接着フィルム10をキャビティ2aが形成された回路基板1’に加熱圧着することにより行うことができる。第1の接着フィルム10をキャビティ2aが形成された回路基板1’に加熱圧着する部材(図示せず;以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を第1の接着フィルム10に直接プレスするのではなく、キャビティ2aが形成された回路基板1’の回路配線3やキャビティ2aに起因する凹凸に第1の接着フィルム10が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜140℃、さらに好ましくは80℃〜130℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPa、さらに好ましくは0.40MPa〜1.10MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは10秒間〜400秒間、より好ましくは20秒間〜300秒間、さらに好ましくは20秒間〜200秒間の範囲である。真空積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。なお、加熱圧着温度とは、加熱圧着部材の表面温度をいい、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスする場合は、第1の接着フィルムと接合する該弾性材の表面の温度をいう。
真空積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
斯かる工程(A)において、第1の熱硬化性樹脂組成物層12は、キャビティ2aが形成された回路基板1’の第1の主面に接合される(図3B)。その際、第1の熱硬化性樹脂組成物層12は、回路基板の第1の主面に形成された表面配線等の回路3を埋め込むと共に、キャビティ2a内の一部の領域にも充填される(図3B)。以下、第1の熱硬化性樹脂組成物層12によって充填されたキャビティ2a内の領域を「樹脂充填領域」といい、該樹脂充填領域以外のキャビティ2a内の領域(すなわち、第1の熱硬化性樹脂組成物層12によって充填されなかったキャビティ2a内の領域)を「非樹脂充填領域」という。
工程(A)において、第1の接着フィルムを真空積層する前の回路基板のキャビティの高さhA(図3A)と、第1の接着フィルムを真空積層した後の回路基板のキャビティの非樹脂充填領域の高さhB(図3B)とは、0.8hA≦hB≦hAの関係を満たすことが好ましく、0.85hA≦hB≦hAの関係を満たすことがより好ましく、0.90hA≦hB≦hAの関係を満たすことがさらに好ましく、0.95hA≦hB≦hAの関係を満たすことが特に好ましい。hB<0.8hAの場合には、後述する工程(B)において部品を設置する際に樹脂充填領域の樹脂が動き易く部品を所望の位置に仮付けすることが困難となる傾向にある。さらには部品がキャビティ外に突出した状態となり、後述する工程(C)において部品に圧力が集中し部品の位置ズレが発生し易くなる。hAとhBとが上記関係を満たすことにより、薄い回路基板を使用する際にも、部品を内蔵するための十分な空間を確保し得ると共に、部品の位置ズレを効果的に抑制することができる。
工程(A)において第1の接着フィルムとキャビティが形成された回路基板とを真空積層するにあたって、キャビティが形成された回路基板の第2の主面には、保護フィルムを設けていてもよい。保護フィルムとしては、従来技術において部品の仮付けに使用されていたフィルム状の仮付け材料を使用してよく、例えば、古河電気工業株式会社製のUCシリーズ(ウエハダイシング用UVテープ)が挙げられる。キャビティが形成された回路基板の第2の主面に保護フィルムを設けた場合、該基板は、工程(A)の後、保護フィルムを剥離することによって工程(B)に使用すればよい。
なお、第1の支持体は、第1の熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて得られる絶縁層に導体層(回路配線)を設ける工程の前に剥離すればよく、例えば、後述する工程(C)と工程(D)との間に剥離してもよく、後述する工程(D)の後に剥離してもよい。好適な実施形態において、第1の支持体は、後述する工程(D)の後に剥離する。なお、第1の支持体として銅箔等の金属箔を用いた場合は、後述するとおり、斯かる金属箔を使用して導体層(回路配線)を設けることが可能であるため、第1の支持体は剥離しなくてもよい。
<工程(B)>
工程(B)において、キャビティ2a内の第1の熱硬化性樹脂組成物層12に部品5を仮付けする(図3C)。すなわち、キャビティ2a内において露出した第1の熱硬化性樹脂組成物層12に部品5を仮付けする。
部品5としては、所望の特性に応じて適切な電気部品を選択してよく、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の受動部品、半導体ベアチップ等の能動部品を挙げることができる。全てのキャビティに同じ部品5を用いてもよく、キャビティごとに異なる部品5を用いてもよい。
先述のとおり、従来技術においては、後の工程で剥離除去されることとなる仮付け材料を使用して部品の仮付けを行っていた。斯かる技術においては、仮付け材料を剥離除去する際の部品の脱落やキャビティ内における部品の位置ズレを防止するために、仮付け材料が設けられた主面とは反対側の主面に熱硬化性樹脂組成物層を設け、キャビティ内を熱硬化性樹脂組成物で充填した後に該熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて硬化体(絶縁層)を形成していた。しかしながら、斯かる技術においては、部品内蔵回路板の小型化、薄型化を達成すべくキャビティ密度の高い回路基板や厚さの薄い回路基板を使用する場合などにおいて、回路基板の片方の主面に絶縁層を形成した段階で、基板反りが生じる場合があった。これに対し、本発明においては、後に絶縁層となる熱硬化性樹脂組成物層に部品を仮付けする。したがって本発明においては、仮付け材料を剥離除去する必要はなく、従来技術に伴う基板反りの問題を有利に解決することができる。
工程(B)において、部品は、キャビティ内の第1の熱硬化性樹脂組成物層の表面粘着性に起因して、該第1の熱硬化性樹脂組成物層によって保持されることとなる。第1の熱硬化性樹脂組成物層の表面の粘着性の観点から、工程(B)は、加熱条件下に実施することが好ましい。加熱の方法としては、例えば、加熱部材を第1の支持体に接合させて加熱する方法が挙げられる。加熱部材は、第1の支持体に直接接合させてもよく、先述の耐熱ゴム等の弾性材を介して第1の支持体に接合させてもよい。
工程(B)における加熱条件は、キャビティ内の第1の熱硬化性樹脂組成物層の表面が十分な粘着性を発現し得る限り、特に制限されない。好適な一実施形態において、工程(B)における加熱温度は、第1の熱硬化性樹脂組成物層の粘着性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらにより好ましくは90℃以上である。加熱温度の上限は、第1の熱硬化性樹脂組成物層の硬化に起因した基板反りを防止、抑制する観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。工程(B)における加熱温度とは、第1の支持体側から加熱部材を使用して加熱する場合、該加熱部材の表面温度をいう。
工程(B)における加熱時間は、部品を仮付けするのに十分な時間であればよく、好ましくは2秒間以上、より好ましくは3秒間以上、さらに好ましくは4秒間以上である。加熱時間の上限は、通常、60秒間以下とし得る。
工程(B)における加熱処理は、大気圧下(常圧下)にて行うことが好ましい。
好適な実施形態において、工程(B)で得られる基板の反りは、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下、さらにより好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下である。なお、基板の反りとは、工程(B)で得られる基板の一辺を固定具で固定し地面(水平面)に対して垂直に吊した際の、仮想垂直面からの、基板の対辺の両端部の垂直高さの算術平均値を意味する。基板の反りは、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定することができる。
工程(B)の後、第1の熱硬化性樹脂組成物層をさらに加熱してもよい。これによって、後述する工程(C)における部品の位置ズレを一層抑制することができる。したがって好適な実施形態において、本発明の部品内蔵回路板の製造方法は、工程(B)と工程(C)との間に、(B’)第1の熱硬化性樹脂組成物層を加熱する工程を含む。
工程(B’)における加熱温度は、工程(C)における部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。加熱温度の上限は、第1の熱硬化性樹脂組成物層の硬化に起因した基板反りを防止、抑制する観点から、好ましくは150℃未満、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、さらにより好ましくは120℃以下である。
工程(B’)における加熱時間は、工程(C)における部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、さらに好ましくは3分間以上、さらにより好ましくは5分間以上、10分間以上又は20分間以上である。加熱時間の上限は、第1の熱硬化性樹脂組成物層の硬化に起因した基板反りを防止、抑制する観点から、通常、60分間以下とし得る。
工程(B’)における加熱処理は、大気圧下(常圧下)にて行うことが好ましい。
工程(B)を加熱条件下にて実施する場合、工程(B)の後、そのまま工程(B’)に移行してもよいし、回路基板を常温(室温)に冷ましてから工程(B’)に移行してもよい。
<工程(C)>
工程(C)において、回路基板の第2の主面に、第2の接着フィルム20を、第2の熱硬化性樹脂組成物層22が回路基板の第2の主面と接合するように、真空積層する(図3D)。
斯かる工程(C)において、第2の熱硬化性樹脂組成物層22は、キャビティ2a内に充填され、キャビティ2a内に仮付けされていた部品5は第2の熱硬化性樹脂組成物層22に埋め込まれることとなる(図3E)。
部品の位置ズレを抑制する観点から、工程(C)は、第1の接着フィルム表面の加熱温度が第2の接着フィルム表面の加熱温度よりも低い条件にて実施することが重要である。
第1の接着フィルム表面の加熱温度をT1(℃)、第2の接着フィルム表面の加熱温度をT2(℃)としたとき、T1とT2は、部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくはT2−40≦T1≦T2−10の関係、より好ましくはT2−40≦T1≦T2−15の関係、さらに好ましくはT2−35≦T1≦T2−15の関係、さらにより好ましくはT2−35≦T1≦T2−20の関係を満たすことが好適である。
第2の接着フィルム表面の加熱温度T2は、十分な部品の埋め込み性及びキャビティ充填性を実現する観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、135℃以上、140℃以上又は145℃以上である。T2の上限は、部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
第1の接着フィルム表面の加熱温度T1は、T1とT2とが上記関係を満たす限り特に限定されないが、部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくは140℃未満、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは125℃以下、120℃以下又は115℃以下である。T1の下限は、T1とT2とが上記関係を満たす限り特に限定されないが、通常、60℃以上とし得る。
本発明において、第1の接着フィルム表面の加熱温度T1(℃)とは、第1の接着フィルム表面に接合する加熱圧着部材の表面温度をいい、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスする場合は、第1の接着フィルムと接合する該弾性材の表面の温度をいう。また、第2の接着フィルム表面の加熱温度T2(℃)とは、第2の接着フィルム表面に接合する加熱圧着部材の表面温度をいい、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスする場合は、第2の接着フィルムと接合する該弾性材の表面の温度をいう。
工程(C)における第2の接着フィルム20の真空積層は、上記の温度条件を除いて、工程(A)における第1の接着フィルムの真空積層と同様の方法、条件を採用してよい。なお、ボイドの発生を抑制する観点から、工程(C)における真空引き時間は、好ましくは20秒間以上、より好ましくは30秒間以上、40秒間以上、50秒間以上又は60秒間以上である。特に工程(A)を実施した後に工程(C)を実施するまでの間の経過時間が長い場合には、工程(C)における真空引き時間を長く(例えば、30秒間以上、40秒間以上、50秒間以上又は60秒間以上)設定することで、絶縁層中にボイドが発生することを効果的に抑制することができる。
工程(C)において、第1の熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度は、部品の位置ズレを抑制する観点から、好ましくは2000ポイズ以上、より好ましくは3000ポイズ以上、さらに好ましくは4000ポイズ以上、さらにより好ましくは5000ポイズ以上、特に好ましくは6000ポイズ以上、7000ポイズ以上、8000ポイズ以上、9000ポイズ以上又は10000ポイズ以上に維持することが好ましい。上記の温度条件を採用することにより、第2の熱硬化性樹脂組成物層による十分な部品の埋め込み性及びキャビティ充填性を実現しつつ、第1の熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度を斯かる範囲に維持することができる。工程(C)における第1の熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度の上限は特に限定されないが、通常、1000000ポイズ以下である。
工程(C)における第1の熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度は、温度T1(℃)にて動的粘弾性測定を行うことにより得ることができる。測定に使用し得る測定装置は上記のとおりである。
第2の接着フィルム20の構成は先述のとおりである。なお、工程(C)で用いる第2の接着フィルム20の第2の支持体21は、工程(A)で用いる第1の接着フィルム10の第1の支持体11と同じでもよく、異なっていてもよい。
また、第2の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、第1の熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物と同じでもよく、異なっていてもよい。
部品の仮付け材料として、後に絶縁層となる熱硬化性樹脂組成物層(すなわち、第1の熱硬化性樹脂組成物層)を使用する本発明の製造方法によれば、部品内蔵回路板の小型化、薄型化を達成すべくキャビティ密度の高い回路基板や厚さの薄い回路基板を使用する場合などにおいても、基板反りの発生を抑制することができる。そのため、工程(B)から工程(C)までの基板搬送に支障をきたさず、円滑に工程(C)を実施することができる。さらには、上記特定の温度条件にて工程(C)を実施する本発明においては、工程(C)の真空積層に伴う、部品の位置ズレも抑えることができ、部品の配置精度に優れる部品内蔵回路板を歩留まりよく実現することができる。
工程(C)の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を第2の支持体22側から又は第1の支持体12側及び第2の支持体22側の両側からプレスすることにより、積層された第1の接着フィルム側及び第2の接着フィルム側の両面を平滑化する工程(以下、「工程(C’)」ともいう。)を行うことが好ましい。したがって好適な実施形態において、本発明の部品内蔵回路板の製造方法は、工程(C)と工程(D)の間に、加熱プレスにより第1の接着フィルム側及び第2の接着フィルム側の両面を平滑化する工程を含む。工程(C’)のプレス条件は、上記工程(C)における加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。
工程(C’)は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、工程(C)と工程(C’)は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
好適な一実施形態において、工程(C)(および工程(C’))において部品の位置ズレは40μm未満である。ここで、部品の位置ズレとは、工程(B)において第1の熱硬化性樹脂組成物層に仮付けした時点の部品の中心と、工程(C)において第2の熱硬化性樹脂組成物層を真空積層した後(工程(C’)を実施する場合は、平滑化処理の後)の部品の中心との位置変化のことをいう。部品の位置ズレは、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定することができる。
なお、第2の支持体21は、第2の熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて得られる絶縁層に導体層(回路配線)を設ける工程の前に剥離すればよく、例えば、工程(C)と後述する工程(D)との間に剥離してもよく、後述する工程(D)の後に剥離してもよい。好適な一実施形態において、第2の支持体は、後述する工程(D)の後に剥離する。なお、第2の支持体として銅箔等の金属箔を用いた場合は、後述するとおり、斯かる金属箔を使用して導体層(回路配線)を設けることが可能であるため、第2の支持体は剥離しなくてもよい。
<工程(D)>
工程(D)において、第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化する。これにより、第1の熱硬化性樹脂組成物層12が絶縁層12’を、第2の熱硬化性樹脂組成物層22が絶縁層22’をそれぞれ形成する(図3F)。
熱硬化の条件は特に限定されず、部品内蔵回路板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層の熱硬化条件は、各熱硬化性樹脂組成物層に用いる樹脂組成物の組成等によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜210℃の範囲、より好ましくは170℃〜190℃の範囲)、硬化時間は5分間〜90分間の範囲(好ましくは10分間〜75分間、より好ましくは15分間〜60分間)とすることができる。
熱硬化させる前に、第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、熱硬化に先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。予備加熱を行う場合、斯かる予備加熱も工程(D)に含まれることとする。
工程(D)における第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層の熱硬化は、大気圧下(常圧下)にて行うことが好ましい。
工程(D)は、基板をほぼ水平に維持した状態にて実施することが好ましい。例えば、基板の厚さ方向における軸が水平面に対して80°〜100°の範囲となるような状態にて工程(D)を実施することが好ましい。
先述のとおり、第1及び第2の支持体は、工程(D)の後に剥離することが好ましい。したがって、工程(D)においては、第1及び第2の支持体が付いた状態で第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化することが好ましい。これにより、低粗度の表面を有する絶縁層を得ることができる。
好適な一実施形態において、工程(C)と工程(D)との間に、回路基板を常温(室温)に冷ます処理を実施してよい。
なお、以下の説明において、第1の熱硬化性樹脂組成物層12を熱硬化させて得られた絶縁層12’を「第1の絶縁層」と称する場合がある。また、第2の熱硬化性樹脂組成物層22を熱硬化させて得られた絶縁層22’を「第2の絶縁層」と称する場合がある。
<その他の工程>
本発明の部品内蔵回路板の製造方法は、さらに、(E)第1及び第2の絶縁層に穴あけ加工する工程、(F)第1及び第2の絶縁層を粗化処理する工程、(G)粗化された絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに含んでもよい。これらの工程(E)乃至(G)は、部品内蔵回路板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、第1及び第2の支持体を工程(D)の後に剥離する場合、該第1及び第2の支持体の剥離は、工程(D)と工程(E)との間、工程(E)と工程(F)の間、又は工程(F)と工程(G)の間に実施してよい。
工程(E)は、第1及び第2の絶縁層に穴あけ加工する工程であり、これにより第1及び第2の絶縁層にビアホール等のホールを形成することができる。例えば、ドリル、レーザー(炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等)、プラズマ等を使用して第1及び第2の絶縁層にホールを形成することができる。部品内蔵回路板において、絶縁層は、一般に、ビアホールにより導通が行われる。
工程(F)は、第1及び第2の絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、部品内蔵回路板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、第1及び第2の絶縁層の粗化処理は、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して第1及び第2の絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30〜90℃の膨潤液に第1及び第2の絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。第1及び第2の絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40〜80℃の膨潤液に第1及び第2の絶縁層を5秒間〜15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に第1及び第2の絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクトP、ドージングソリューション・セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントPが挙げられる。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面を30〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた対象物を、40〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(G)は、粗化された絶縁層表面に導体層(回路配線)を形成する工程である。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望の部品内蔵回路板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
導体層の形成方法は、所望のパターンを有する導体層(回路配線)を形成し得る限り特に限定されない。好適な一実施形態において、導体層は、メッキにより形成することができる。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により第1及び第2の絶縁層の表面にメッキして、所望のパターンを有する導体層(回路配線)を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、第1及び第2の絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチングなどにより除去して、所望のパターンを有する導体層を形成することができる。
これらの工程によりビアホール内にも導体(ビア配線)が形成され、第1及び第2の絶縁層12’及び22’の表面に設けられた回路配線3と回路基板の回路配線とが電気的に接続され、部品内蔵回路板100が得られる(図3G)。
第1及び第2の支持体として、銅箔等の金属箔を用いた場合には、この金属箔を利用するサブトラクティブ法などによって、導体層を形成してもよい。また、金属箔をメッキシード層として、電解メッキにより導体層を形成してもよい。
本発明の部品内蔵回路板の製造方法はまた、(H)部品内蔵回路板を個片化する工程を含んでもよい。
工程(H)は、例えば、回転刃を備える従来公知のダイシング装置により研削して、得られた構造体を個々の部品内蔵回路板ユニットへと個片化することができる。
以上、本発明の部品内蔵回路板の製造方法を好適な実施形態に即して説明したが、上記工程(A)乃至(D)の各工程を含み且つ工程(A)乃至(D)の各工程がこの順序で実施される限り、本発明は上記で具体的に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、工程(H)は、工程(C)と工程(D)の間、工程(D)と工程(E)の間、工程(E)と工程(F)の間、又は工程(F)と工程(G)の間に行ってもよい。また、工程(A)乃至(G)を繰り返して、多層化を図ってもよい。本発明の部品内蔵回路板の製造方法には多数の変形例が考えられる。
[半導体装置]
本発明の方法で製造された部品内蔵回路板を用いて、半導体装置を製造することができる。
かかる半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
まず各種測定方法・評価方法について説明する。
〔測定・評価用サンプルの調製〕
(1)キャビティが形成された回路基板の準備
340mm×510mmサイズの内層回路基板(残銅率70%)に、該内層回路基板の第1及び第2の主面間を貫通する0.8mm×1.2mmサイズのキャビティを5mmピッチで作製した。内層回路基板としては、内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(片面の銅箔の厚さ12μm、基板の厚さ(=キャビティの高さhA)100μm、全体厚さ124μm、基板の熱膨張係数7ppm、基板のガラス転移温度230℃、三菱ガス化学(株)製「832NSR−LC」)を使用した。次いで、キャビティの形成された内層回路基板の両面をメック(株)製「CZ8100」にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理をおこなった。得られた基板を「基板a」とする。
(2)第1の接着フィルムの真空積層
下記作製例において作製した第1の接着フィルムから保護フィルムを剥離した。その後、第1の接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP−500」)を用いて、第1の熱硬化性樹脂組成物層が回路基板の第1の主面と接するように、基板aに真空積層した。第1の接着フィルムの真空積層は、30秒間減圧(すなわち、真空引き時間30秒間)して気圧を13hPa以下とした後、下記表2に示す温度(「工程(A)」)、圧力0.5MPaにて30秒間、第1の支持体上から耐熱ゴムを介して加熱圧着することによりラミネート処理した。得られた基板を「基板b」とする。
(3)部品の仮付け
その後、表2に示す条件(「工程(B)」)において、キャビティ内の第1の熱硬化性樹脂組成物層上に部品((株)村田製作所製積層薄膜コンデンサ1005、1.0mm×0.5mmサイズ、厚さ180μm)を仮付けした。
なお、実施例3、4及び比較例2に関しては、部品を仮付けした後、表2に示す条件(「工程(B’)」)において、さらに第1の熱硬化性樹脂組成物層を加熱処理した。
得られた基板を「基板c」とする。
(4)第2の接着フィルムの真空積層
下記作製例で作製した第2の接着フィルムから保護フィルムを剥離した。その後、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP−500」)を用いて、第2の接着フィルムを、第2の熱硬化性樹脂組成物層が回路基板の第2の主面と接するように、基板cに真空積層した。第2の接着フィルムの真空積層は、30秒間減圧(すなわち、真空引き時間30秒間)して気圧を13hPa以下とした後、第1の接着フィルム表面の加熱温度(T1)及び第2の接着フィルム表面の加熱温度(T2)を下記表2に示す値(「工程(C)」)に設定し、圧力0.74MPaにて30秒間、耐熱ゴムを介して加熱圧着することによりラミネート処理した。
さらに、常圧下、圧力0.5MPaにて60秒間、SUS鏡板により加熱プレスすることにより基板の両面の平滑化処理を行った。平滑化処理の温度条件はラミネート処理条件と同じであった。得られた基板を「基板d」と称する。
(5)第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層の熱硬化
基板cから第1及び第2の接着フィルム由来の支持体を剥離した。その後、基板dを、常圧下、100℃にて30分間、次いで180℃にて30分間加熱して、第1及び第2の熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させた。熱硬化は、基板を水平状態にして実施した。これにより、内層回路基板の両面に絶縁層を形成した。
<キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)の測定>
キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は、基板bについて、マイクロスコープ(キーエンス製「VH−5500」)を使用して測定した。
<第2の接着フィルムの真空積層工程における第1の熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度の測定>
下記作製例で作製した第1の接着フィルムにおける第1の熱硬化性樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置((株)ユー・ビー・エム社製「Rheosol−G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、表2に示すT1(℃)にて1分間保持した後、振動1Hz、歪み1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、溶融粘度(poise)を算出した。
<基板反りの評価>
基板反りの評価は、基板cを用いて、図4に示すように実施した。詳細には、室温(23℃)下、基板b(図4中の50)の一辺(CD辺)を固定具31で固定し、地面(水平面)に対して垂直方向に吊した。ここで、基板bのCD辺を含む地面に垂直な面を仮定し、これを垂直面(図4中の30)とする。そして、垂直面30からの、対辺(AB辺)の両端部、すなわちA端及びB端の垂直高さ(HA及びHB)を測定し、その平均値((HA+HB)/2)を求めた。そして、下記基準に基づき、基板反りを評価した。なお、本評価における平均値が25mmより大きいと、第2の接着フィルムの真空積層の工程で基板搬送に不具合が生じやすい。
評価基準:
○:平均値が25mm以下である
×:平均値が25mmより大きい
<部品の位置ズレの評価>
第2の接着フィルムの積層前後における部品位置の変化を光学顕微鏡(キーエンス製「VH−5500」)で測定した。測定は、基板cと基板dとの間における該対象部品の位置の変化を測定した。なお、本評価においては、部品の中心を基準点とし、該基準点の位置変化(μm)を測定した。そして、下記評価基準に基づき、部品の位置ズレを評価した。
評価基準:
○:位置変化が40μm未満である
×:位置変化が40μm以上である
〔作製例1〕
(1)樹脂ワニス1の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)28部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)28部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、固形分30%のMEK溶液)20部を、MEK15部とシクロヘキサノン15部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、固形分60%のMEK溶液、窒素含有量約12重量%)27部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」、固形分50重量%のMEK溶液)27部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)5部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)140部、及びポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」、固形分15重量%のエタノールとトルエンの1:1溶液)30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を作製した。
樹脂ワニス1中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、無機充填材(球形シリカ)の含有量は、約58質量%であった。
(2)第1の接着フィルム1の作製
支持体として、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。上記で調製した樹脂ワニス1を、該支持体の離型層側表面に、ダイコータにて均一に塗布し、80℃〜120℃(平均100℃)で5分間乾燥させて第1の熱硬化性樹脂組成物層を形成した。第1の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは25μmであった。次いで熱硬化性樹脂組成物層の表面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm)の平滑面側を貼り合わせて、第1の接着フィルム1を調製した。
(3)第2の接着フィルム1の作製
支持体として、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。上記で調製した樹脂ワニス1を、該支持体の離型層側表面に、ダイコータにて均一に塗布し、80℃〜120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて第2の熱硬化性樹脂組成物層を形成した。第2の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは30μmであった。次いで熱硬化性樹脂組成物層の表面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm)の平滑面側を貼り合わせて、第2の接着フィルム1を調製した。
〔作製例2〕
(1)樹脂ワニス2の調製
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)5部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量約288)15部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、重量平均分子量約35000、固形分30%のMEK溶液)10部を、ソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」、水酸基当量125、固形分60%のMEK溶液)10部、ナフトール系硬化剤(新日鐵化学(株)製「SN−485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)10部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理した球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m2)130部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を調製した。
樹脂ワニス2中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、無機充填材(球形シリカ)の含有量は、約73質量%であった。
(2)第1の接着フィルム2の作製
支持体として、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。上記で調製した樹脂ワニス2を、該支持体の離型層側表面に、ダイコータにて均一に塗布し、80℃〜120℃(平均100℃)で5分間乾燥させて第1の熱硬化性樹脂組成物層を形成した。第1の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは30μmであった。次いで熱硬化性樹脂組成物層の表面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm)の平滑面側を貼り合わせて、第1の接着フィルム2を調製した。
(3)第2の接着フィルム2の作製
支持体として、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。上記で調製した樹脂ワニス2を、該支持体の離型層側表面に、ダイコータにて均一に塗布し、80℃〜120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて第2の熱硬化性樹脂組成物層を形成した。第2の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは50μmであった。次いで熱硬化性樹脂組成物層の表面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm)の平滑面側を貼り合わせて、第2の接着フィルム2を調製した。
<実施例1>
第1の接着フィルム1及び第2の接着フィルム1を用いて、上記〔測定・評価用サンプルの調製〕の手順に従って、基板a乃至dを製造した。各評価結果を2に示す。なお、得られた基板bについて、キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は97μmであった。
<実施例2>
第1の接着フィルム2及び第2の接着フィルム2を用いて、上記〔測定・評価用サンプルの調製〕の手順に従って、基板a乃至dを製造した。各評価結果を2に示す。なお、得られた基板bについて、キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は95μmであった。
<実施例3>
第1の接着フィルム1及び第2の接着フィルム1を用いて、上記〔測定・評価用サンプルの調製〕の手順に従って、基板a乃至dを製造した。各評価結果を2に示す。なお、得られた基板bについて、キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は97μmであった。
<実施例4>
第1の接着フィルム1及び第2の接着フィルム1を用いて、上記〔測定・評価用サンプルの調製〕の手順に従って、基板a乃至dを製造した。各評価結果を2に示す。なお、得られた基板bについて、キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は97μmであった。
<実施例5>
第2の接着フィルムの真空積層時の真空引き時間を30秒間から60秒間に変更した以外は、実施例1と同様にして、基板a乃至dを製造した。各評価結果を2に示す。なお、得られた基板bについて、キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は97μmであった。
<比較例1>
第1の接着フィルム1及び第2の接着フィルム1を用いて、上記〔測定・評価用サンプルの調製〕の手順に従って、評価基板a乃至dを製造した。各評価結果を2に示す。なお、得られた基板bについて、キャビティの非樹脂充填領域の高さ(hB)は97μmであった。