JP6165366B1 - 平行光発生装置 - Google Patents

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Abstract

レンズ(10)は、シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面(11)と光軸(10a)に対して凸面形状をなす出射面(12)とを有する。光源(20)は、垂直方向に大きな広がり角、水平方向に垂直方向の広がり角より小さな広がり角を有する。光源(20)は、レンズ(10)の垂直方向の入射面側焦点距離の位置に配置する。光源(20)の水平方向をレンズ(10)のシリンドリカル形状の曲率方向となるよう配置する。

Description

この発明は、光軸に対して垂直な面内に含まれる2軸方向に非対称な広がり角を有する光を出射する光源と、光源からの出力光の広がり角を小さくする変換光学系を備えた平行光発生装置に関するものである。
近年、高効率な照明のための光源に注目が集まっており、LED(Light Emitting Diode)やレーザを用いた固体照明の製品が実現されている。
光源から出射した光は、伝播に伴い広がっていくため、所望の光学系や照射面へ伝送するにあたり、広がり角を小さくし、平行光に近い光線とすることが求められている。光線を平行光とするためには、レンズを用いてレンズの入射面側焦点位置に光源を配置することでコリメートする技術が広く使われている。
従来、例えば、特許文献1に示された構成は、非球面単レンズを使用し、レンズの焦点位置に光源を配置することで、広がり角の大きな光を略平行光とするものである。実際の光源は、点光源ではなく、有限の発光点の大きさを有している。このとき、水平方向及び垂直方向のコリメート後の広がり半角θho、θvoは、コリメートに用いたレンズの焦点距離fと光源の各方向の発光半幅wh及びwvを用いて、下式(1)のように、
θho=Tan−1(wh/f)
θvo=Tan−1(wv/f) (1)
となる。これより、焦点距離fのレンズでコリメートした場合、光源の発光半幅wh及びwvが大きくなるほど、コリメート後の広がり半角θho及びθvoが大きくなる。光源の発光幅は一般的に使用者が自由に変更できないため、広がり角を小さくするためには、レンズの焦点距離fを大きくする必要がある。このとき光源はレンズの入射面側焦点位置に配置するため、焦点距離fを大きくするにつれて、光源とレンズの距離が大きくなる。
ところで、光の出射方向と垂直な面において、広がり角が異なる光源を用いる場合、レンズの有効径Φは、広がり角の大きな方向の光線に対して損失が発生しないように決めると、光の利用効率の観点から好ましい。大きな方向の広がり半角をθviとした時、レンズ位置での光線の発光半幅wv1は、下式(2)に示すように、
wv1=wv+f×Tan(θvi) (2)
となる。これより、焦点距離fのレンズを用いる場合、広がり半角θvi内のエネルギーを効率よく利用するためには、レンズの有効径Φは、2×wv1以上とすることが好ましい。その結果、焦点距離fを大きくすると、fに比例して大きな有効径Φを有するレンズが必要となる。レンズの有効径が式(2)の値より小さい場合、広がり半角θvi内のエネルギーの一部はケラレにより失われる。
特開平2−235010号公報
式(1)と式(2)の関係から、発光半幅wh及びwvを有する光源に対して、焦点距離fとレンズの有効径Φとコリメート後の広がり半角θho及びθvoは独立に決定することはできず、トレードオフの関係にある。つまり、広がり角を小さくするためには焦点距離fを大きくする必要があり、大きなレンズを離れた位置におく必要がある。焦点距離fの短いレンズを用いると、広がり角を小さくすることができない。このため、小型化と小さな広がり角及び高い光利用効率の条件を共に満足させることは困難であるという課題があった。
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、小型化、小さな広がり角及び高い光利用効率の条件を共に満足させることのできる平行光発生装置を得ることを目的とする。
この発明に係る平行光発生装置は、シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面と光軸に対して対称な凸面形状をなす出射面とを有するレンズと、光軸に対して垂直な面内における一方の方向と、一方の方向とは90度異なる他方の方向との広がり角が異なる光源とを備え、光源はレンズの他方の方向の入射面側焦点距離の位置に配置され、かつ、光源の一方の方向がレンズのシリンドリカル形状の曲率方向に配置されたものである。
この発明に係る平行光発生装置は、シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面と光軸に対して回転対称な凸面形状をなす出射面とを有するレンズを有し、一方の方向と他方の方向で異なる広がり角を有する光源をレンズの他方の方向の入射面側焦点距離の位置に配置し、かつ、一方の方向がレンズのシリンドリカル形状の曲率方向となるように配置するようにしたものである。これにより、平行光発生装置として、小型化、小さな広がり角及び高い光利用効率の条件を満足させることができる。
図1Aはこの発明の実施の形態1の平行光発生装置の平面図、図1Bは側面図である。 図2Aはこの発明の実施の形態1の平行光発生装置における光源の平面図、図2Bは側面図である。 図3Aはこの発明の実施の形態1の平行光発生装置の光路を説明するための平面図、図3Bは側面図である。 水平方向及び垂直方向のコリメート後の広がり半角θho及びθvoと焦点距離fとの関係を示す説明図である。 光源の各方向の発光半幅wh及びwvと焦点距離fとの関係を示す説明図である。 図6Aはこの発明の実施の形態2の平行光発生装置の平面図、図6Bは側面図である。 図7Aはこの発明の実施の形態3の平行光発生装置における光源の平面図、図7Bは側面図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における平行光発生装置の説明図であり、図1Aは平面図、図1Bは側面図である。
実施の形態1の平行光発生装置では、光軸に対して垂直な面内における一方の方向である水平方向と、一方の方向とは90度異なる他方の方向である垂直方向とで異なる広がり角を有する光源20として半導体レーザを用いる。水平方向の光線20aが最小の広がり半角であり、典型的には、2〜15°(半角1/e2)である。なお、内部位置21aは水平方向の光線20aの仮想的な出射点である。垂直方向の光線20bが最大の広がり半角であり、典型的には、15〜45°(半角1/e2)である。垂直方向の光線20bの出射点は光源20の端面21bである。また、光源20は、水平、垂直方向に有限の発光幅20cと20dを有する。水平方向の発光幅20cは、通常数μmから数100μmの範囲である。垂直方向の発光幅20dは、通常1μmから数μmの範囲である。
図2A及び図2Bに示すように、一般的に光源20である半導体レーザは、数μmから20μm程度の非点隔差を有しており、水平方向と垂直方向で仮想的な出射点が異なり、水平方向は半導体レーザの端面より内部から出射しているように振舞う。すなわち、内部位置21aが仮想的な出射点である。レンズ10は、入射面11と出射面12を備えた中心厚さdの光学素子であり、屈折率nのガラスで作製する。レンズ10は研磨やモールド成形など、通常レンズを作製する方法で作製する。入射面11及び出射面12には図示しないが光源波長に対する反射防止膜を表面に形成する。入射面11は光源20の水平方向の光線20aに対してシリンドリカルな凹面形状として構成し、出射面12はレンズ10の光軸10aに対して対称な凸面形状を有する。入射面11は水平方向に曲率半径Rh1、垂直方向を曲率半径Rv1(平面)とした曲率を備えており、出射面12は水平方向、垂直方向に共に曲率半径Rv2の曲率を備えている。入射面11の水平方向の曲率半径Rh1及び出射面12の水平方向の曲率半径Rh2及び、レンズの厚さd、及びガラスの屈折率nは、次式(3)の関係を満たすものとする。
Figure 0006165366
なお、曲率半径Rh1とRh2の符号は、入射面11及び出射面12と光軸10aの交点を基準に、曲率中心の位置が光源側にある場合を正、対向する側にある場合を負として定義する。
垂直方向の光線20bに対して、垂直方向の焦点距離f及び前側(光源側)焦点距離FFLvは、入射面11の垂直方向の曲率半径Rv1、出射面12の垂直方向の曲率半径Rv2、レンズの厚さd及びガラスの屈折率nを用いて、次式(4)となる。
Figure 0006165366
ここで、h1はレンズ10の垂直方向の前側(光源側)主点位置であり、符号は、入射面11と光軸10aの交点からレンズ内部の方向に向かって正と定義する。曲率半径Rv1が無限大(平面)の場合、式(4)は簡略化され、次式(5)となる。
Figure 0006165366
出射面12を対称とした場合、曲率半径Rh2=Rv2であり、式(3)と式(5)を関係付ける。光源20は、レンズ10の垂直方向に対する焦点距離FFLvにその端面21bが位置するように設置する。
次に実施の形態1の動作を図3を用いて説明する。図3Aは平面図、図3Bは側面図である。
光源20から出射した光線は、広がりながらレンズ10の入射面11に入射し、入射面11から出射面12までレンズ内部を伝播し、出射面12から出射する。入射面11は、シリンドリカル形状としているので、水平方向の光線20aと垂直方向の光線20bは、入射面11の形状により異なる作用を受ける。説明を簡略化するため、光源20からの光線として水平方向は水平方向の光線20a、垂直方向は垂直方向の光線20bのみを考える。
水平方向の光線20aは、半導体レーザの内部位置21aから出射するように振る舞い、曲率半径Rh1の凹面及び、曲率半径Rh2の凸面により、ビーム径が拡大される。以上の光線の動作を光線行列(これについては、例えば文献:Lasers,A.E.Siegman,University Science Books,Mill Valley California,1986.を参照)で説明する。光源20からの水平方向の光線20aは、光源20からレンズ10の入射面11までの距離(焦点距離FFLv)を伝播し、レンズ10に入射する。レンズ10の動作は、曲率半径Rh1、屈折率nの誘電体境界面(入射面11)と、厚さd、屈折率nの誘電体中の伝播と、曲率半径Rh2、屈折率nの誘電体境界面(出射面12)の各光学要素により水平方向の光線20aが受ける作用として説明できる。列ベクトルで記述される水平方向の光線20aに対して各光学要素が与える作用は、2行2列の行列で記述でき、それぞれ式(6)、式(7)、式(8)、式(9)となる。
Figure 0006165366

Figure 0006165366

Figure 0006165366

Figure 0006165366
ここで、rは各光学要素に入射する光線の光軸高さ、θは光軸を基準として各光学要素に入射する光線の角度、r’は各光学要素から出射する光線の光軸高さ、θ’は各光学要素から出射する光線の角度である。なお、本明細書の以降の記述において、光学要素の作用を表す2行2列の行列の(1,1)成分をA、(1,2)成分をB、(2,1)成分をC、(2,2)成分をDとして定義することとする。例えば、式(7)のCとは、(n−1)/(nRh1)を表す。
これより、入射面11から出射面12までに水平方向の光線20aが受ける作用は、各光学要素を表す行列の積として、次式(10)となる。
Figure 0006165366
式(10)を式(3)の関係から整理すると、次式(11)のようになる。
Figure 0006165366
式(3)を満たす理想的な拡大系の場合、入射面11での水平方向ビーム半径wh1は出射面12でおおむねRh2/Rh1倍になり、入射面11に入射した水平方向の光線20aの広がり半角θh1は出射面でRh1/Rh2倍になる。
これより、曲率半径Rh1とRh2の比率により、水平方向の広がり角を小さくすることが可能となる。これは、水平方向をコリメートではなく拡大系としたことで、水平方向の広がり角が、式(1)に示した光源の発光半幅wh及びwvと焦点距離fの関係とは独立して決定できることを示している。
また、式(6)と式(11)の行列の積から、光源20から出射面12までに水平方向の光線20aが受ける作用を求めることができ、式(12)となる。
Figure 0006165366
式(11)と式(12)とを比較すると、光源20から入射面11までの伝播により、入射面11でのビーム径がrからr+FFLv×θに増大しただけであり、入射面11と出射面12間のビーム径及び広がり角の変化率は変わらないことがわかる。これは、伝播距離がFFLvである場合に限ったものでないことは式(12)から明らかである。以上のことから、本発明の平行光発生装置においては、水平方向の広がり角が、光源20とレンズ10の光軸方向の距離に依存しないという点が明らかである。さらに、光軸方向だけでなく水平方向の位置ずれに対する光線の傾きの影響が小さいという利点について、位置ずれを考慮した光線行列により説明する。位置ずれを考慮すると、レンズ10の入射面11から出射面12の間に水平方向の光線20aが受ける作用は式(11)から式(13)となる。ここで、Δはレンズの位置ずれ量、Δ’はレンズの傾きである。
Figure 0006165366
これを整理すると、次式(14)となり、水平方向の位置ずれΔは、光線の角度には影響を与えないという特徴を有することがわかる。
Figure 0006165366
一方で、垂直方向の光線20bは、焦点距離FFLvの位置に半導体レーザの端面21bを配置しているので、入射面11の平面及び、曲率半径Rv2の凸面により、コリメートされる。
以上の光線の動作を水平方向と同様に光線行列で説明する。光源から出射した光線20bは、光源からレンズ10の入射面11までの距離(焦点距離FFLv)を伝播し、レンズ10に入射する。レンズ10の動作は、曲率半径Rv1、屈折率nの誘電体境界面(入射面11)と、厚さd、屈折率nの誘電体中の伝播と、曲率半径Rv2、屈折率nの誘電体境界面(出射面12)の各光学要素により垂直方向の光線20bが受ける作用として説明ができる。列ベクトルで記述される垂直方向の光線20bに対して各光学要素与える作用は、2行2列の行列で記述でき、それぞれ式(15)、式(16)、式(17)となる。
Figure 0006165366

Figure 0006165366

Figure 0006165366
これより、入射面11から出射面12までに垂直方向の光線20bが受ける作用は、これらの積として、次式(18)となる。
Figure 0006165366
曲率半径Rv1を無限大(平面)、曲率半径Rv2=Rh1とし整理すると次式(19)となる。
Figure 0006165366
前側(光源側)主点位置h1及び光源側(前側)焦点距離FFLvは、式(19)の(D−1)/C、及び(D−2)/Cであり、代入すると式(5)と同様となる。
また、式(6)と式(19)の行列の積から、光源20から出射面12までに垂直方向の光線20bが受ける作用を求めることができ、次式(20)となる。
Figure 0006165366
式(20)より、光源20のある一点からの垂直方向の光線20bは、出射面12から出射後、平行光になることがわかる。また、有限の発光幅を有する場合、式(20)の入射光線の光軸高さrを発光半幅wv1と読み替えることで、式(1)に示した関係が得られる。
このように水平方向と垂直方向の光線の関係が得られるので、垂直方向の広がり角の要求値に合わせて垂直方向の焦点距離f、すなわち、曲率半径Rv2とレンズの屈折率nを決定し、水平方向の広がり角の要求値に合わせて曲率半径Rh1と厚さdを選ぶことが可能となる。
本発明の有意性を示すために、例えば、波長808nmのEAGLEYARD社製の半導体レーザ(型番:EYP−BAL−0808−08000−4020−CMT−0000)を対称な平凸レンズを用いてコリメートすることを考える。上記半導体レーザは、水平方向の広がり半角が8.5°、垂直方向の広がり半角が25.5°、水平方向の発光幅は200μmであり、垂直方向の発光幅は1μmとする。コリメート後の広がり角を水平、垂直方向ともに半角1°にすることとする。
図4は、水平方向及び垂直方向のコリメート後の広がり半角θho401及びθvo402と焦点距離fとの関係を示し、図5は、光源20の各方向の発光半幅wh501及びwv502と焦点距離fとの関係を示している。式(1)及び式(2)を用いると、これら図4及び図5に示すように、焦点距離5.7mm、有効開口5.5mmのレンズが必要となる。一方で、本実施の形態によれば、例えば曲率半径Rh1:0.2mm、曲率半径Rh2=Rv2:1.7mm、厚さ3.4mm、屈折率1.8、垂直方向焦点距離:2.1mm、光源側焦点位置:0.25mm、有効径2mmのレンズを用いることが可能で、小さな広がり角と、高い光利用効率を満足しつつ、レンズの大幅な小径化も可能となる。曲率半径等の値は本構成に限るものではないことは当然であり、垂直方向の焦点距離を短くしスケーリングすることで、さらに小型化をすることも可能である。
以上のように、垂直方向に大きな広がり角を有し、水平方向に小さな広がり角を有する光源20に対して、シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面11と、光軸10aに対称形状で凸面形状をなす出射面12を有するレンズ10を、光源20の水平方向がレンズ10のシリンドリカル形状の曲率方向になるように配置し、かつ垂直方向の入射面側焦点距離FFLvの位置に光源20の端面21bを配置したことにより、光源20の水平方向の光はレンズ10の入射面11と出射面12で拡大され、光源20の垂直方向の光はレンズ10の出射面12で略平行光に変換されるので、小さな広がり角、高い光利用効率及び小型化の条件を共に満たす平行光発生装置を実現することができる。
なお、上記例では、光源20を半導体レーザとした場合について説明したが、他の種類のレーザやレーザでない光源についても同様の効果が得られる。しかし、半導体レーザを適用した場合には、より好適であることについて説明する。
一つに、非点隔差による広がり角の増大が発生しないことがある。対称なレンズを用いる場合は、レンズの焦点位置を半導体レーザの端面21bに一致させると水平方向にフォーカスずれが発生し、広がり角が増大する。また、非点隔差を補正するために、水平方向と垂直方向で異なる焦点距離を有するレンズを用い、水平方向の焦点位置を半導体レーザの内部位置21aに一致させ、垂直方向の焦点位置を半導体レーザの端面21bに一致させるレンズを用いる手法も存在する。しかし、半導体レーザの水平方向の出射点位置である内部位置21aはばらつきがあり、またレーザ出力に依存して変化するため、複数の動作条件で非点隔差による広がり角の増大を抑制することは難しい。本実施の形態によれば、水平方向の広がり角は、光源20とレンズ10間の配置距離に依存しないため、垂直方向の焦点距離FFLvの位置に光源20の端面21bを配置することで、非点隔差が存在し、さらにばらつきやレーザの出力依存性があっても水平方向の広がり角が増大しないという効果を有する。
もう一つの効果として、光源20とレンズ10の水平方向の位置決め精度を緩くすることが可能な点がある。従来のコリメート法によると、水平及び垂直方向に位置ずれが発生すると、式(20)からわかるように、光線の出射方向が理想的な出射方向に対して傾くという課題がある。光線の傾きを抑制するために、レンズ10は光源20に対して精度良く位置決めすることが求められており、典型的には数μmから数10μm程度の設置精度が要求される。
ところで、半導体レーザのチップ外形に対する発光点の位置精度は、垂直方向には高い精度を有するが、水平方向は精度が低い。これは、垂直方向は、厳密に厚さ制御がなされているのに対し、水平方向はウエハからチップに切出す際の精度に依存するからであり、水平方向は通常数μmから数10μmの切出し精度となる。このため、チップの外形に対して水平方向の発光点位置がばらついてしまい、例えば、チップとレンズを外形基準で高精度に組み立てた場合にも水平方向の発光点とレンズの相対位置はばらついてしまう。これに対して、本実施の形態においては、チップ切出し位置のばらつきによる水平方向の位置ずれが発生したとしても、光線の出射方向の傾きに与える影響が小さく、外形基準での組立てを容易にすることができるという効果を有する。
なお、レンズ10の入射面11の形状は、水平方向は凹面上のシリンドリカル形状としたが、この凹面形状は、球面であってもよいし、非球面であってもよい。非球面とすることで、光学系で発生する収差をより良く補正することが期待できる。ところで、本発明の水平方向の動作は、入射面11の誘電体境界面の焦点位置の光源像を、出射面12の誘電体境界面でコリメートすることと等価である。これは、軸対称でないものも含めて、従来のコリメートレンズが、入射面の誘電体境界面による結像位置の光源像を、出射面の誘電体境界面でコリメートすることと異なる点である。これより、式(3)と厳密に一致しなくても本効果が得られることは明らかであり、出射面12の誘電体境界面の焦点位置が、入射面11の誘電体境界面による光源20の結像位置で無く、焦点面に近い範囲に位置する場合に有効となる。また、垂直方向の形状は、単純な平面としたが、完全な平面である必要はなく、凹面や凸面としても、本発明の効果が得られることに変わりは無い。例えば、凹面にすることで、光線の入射角度を緩くすることが可能であるので、収差をより小さくすることが期待できる。出射面12の形状は、対称な凸面としたが、厳密に対称である必要はない。水平方向と垂直方向で曲率半径の異なるトロイダル面とすることで、設計上の自由度が増加するため収差を良く補正することが期待できるが、対称な形状とすると、研磨や成形といったレンズ製作が容易になる。レンズ10の材料は、ガラスである必要はなく、プラスチックや結晶などでもよい。レンズ10の焦点距離FFLvと光源20の設置位置は厳密に一致させる必要はなく、垂直方向の広がり角の要求値の範囲内であれば、前後にずれても問題がないことは明らかである。例えば、水平方向と垂直方向の広がり角を同一とする場合、式(12)と式(20)(FFLvをFFLv+Δとして計算する)の関係から、
h1/Rh2×θh1=Δ/f×θv (21)
を満たす範囲で許容可能となる。ここでθvは光源20から垂直方向に出射した広がり角である。
以上説明したように、実施の形態1の平行光発生装置によれば、シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面と光軸に対して回転対称な凸面形状をなす出射面とを有するレンズと、光軸に対して垂直な面内における一方の方向と、一方の方向とは90度異なる他方の方向との広がり角が異なる光源とを備え、光源はレンズの他方の方向の入射面側焦点距離の位置に配置され、かつ、光源の一方の方向がレンズのシリンドリカル形状の曲率方向に配置されたので、平行光発生装置として、小型化、小さな広がり角及び高い光利用効率の条件を満足させることができる。
また、実施の形態1の平行光発生装置によれば、光源の一方の方向の発光点幅が他方の方向の発光点幅より大きいようにしたので、異なる広がり角を有する光源を実現することができる。
また、実施の形態1の平行光発生装置によれば、光源は非点隔差を有する光源であるようにしたので、異なる広がり角を有する光源の実現に寄与することができる。
また、実施の形態1の平行光発生装置によれば、光源は半導体レーザとしたので、小型化、小さな広がり角及び高い光利用効率の条件を満足させることのできる平行光発生装置を実現することができる。
実施の形態2.
図6は実施の形態2における平行光発生装置の説明図であり、図6Aはその平面図、図6Bはその側面図を示す。
実施の形態2の平行光発生装置は、光源30として、水平方向に複数の発光点を有する半導体レーザアレイを用いたことが実施の形態1の光源20とは異なる点である。その他の点については実施の形態1と同様であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
次に、実施の形態2の動作について説明する。
実施の形態1と同様に、レンズ10の垂直方向の光源側焦点距離FFLvの位置に半導体レーザアレイである光源30の端面31を設置する。光源30からの水平方向の光線30aは、曲率半径Rh1のレンズ10の凹面及び曲率半径Rh2の凸面により、各発光点から出射した光線それぞれのビーム径が拡大される。光源30からの垂直方向の光線30bは、焦点距離FFLvの位置に光源30を配置しているので、レンズ10における入射面11の平面及び曲率半径Rv2の凸面によりコリメートされる。これにより、実施の形態1と同様に、光源30の水平方向の光はレンズ10の入射面11と出射面12で拡大され、光源30の垂直方向の光はレンズ10の出射面12で略平行光に変換されるので、小さな広がり角、高い光利用効率及び小型化の条件を共に満たす平行光発生装置を実現することが可能となる。
半導体レーザアレイである光源30から出射する光を、単純にコリメートした場合、レンズ後のビームパターンは、アレイ状になっており、空間的に均一性が低い。一方で、本実施の形態においては、シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面11と、光軸10aに対称形状で凸面形状をなす出射面12を有するレンズ10を、光源30の水平方向がレンズのシリンドリカル形状の曲率方向になるように配置し、かつ垂直方向の焦点距離FFLvの位置に光源30の端面31を配置したことにより、水平方向の各発光点から出射したビームが拡大され、広がり角を小さくしつつ、各ビームを重ねることが可能なので、空間的に均一なビームを得ることができるという特徴がある。空間的に均一なビームは、均一光学系などを使わずに直接照明に使う場合などに特に有用である。さらに、複数の発光点のビームが重なるので、レーザを照明に用いた場合に課題であるスペックルも均一光学系の追加なしに低減することができるという効果がある。
また、非点隔差は、半導体レーザ内部の温度分布の影響を受ける。半導体レーザアレイは、発熱密度が半導体レーザアレイの中心部と端部で異なるため、中心部と端部では内部の温度分布が変化し、非点隔差の大きさが発光点ごとにばらつく要因となる。しかしながら、本実施の形態においては、各発光点で非点隔差のばらつきがあっても、広がり角の増大が抑制でき、安定した平行光が得られるという効果を有する。
なお、光源30が、水平方向の位置によって発光幅または発光点の周期が異なるアレイ状光源であった場合にも、本発明のレンズ10との組み合わせにおいて、同様の効果を得られることは言うまでも無い。
アレイ状光学素子を用いる場合と比較すると、単純な構成で安価であり、また、発光幅及び発光点の周期が水平方向に静的及び動的に変化する場合においても、実施の形態2の構成では小さな広がり角、高い光利用効率及び小型化の条件を満足させることができるという効果がある。
以上説明したように、実施の形態2の平行光発生装置によれば、光源は、一方の方向に複数の発光点を有するようにしたので、平行光発生装置として、小型化、小さな広がり角及び高い光利用効率の条件を満足させることができる。
また、実施の形態2の平行光発生装置によれば、光源を半導体レーザアレイとしたので、空間的に均一なビームを得ることができる。
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態2における光源30の複数の発光点の各発光幅Wと発光点の周期Pから決まるフィルファクタF.F.を定義したものである。
図7は、実施の形態3の光源30の定義を示す説明図である。半導体レーザアレイからなる光源30は、その発光幅Wと発光点の周期Pで特徴づけられ、フィルファクタF.F.を次式(22)で定義する。
F.F.=W/P (22)
本実施の形態では、平行光発生装置が式(22)に示すフィルファクタF.F.が0.5≦F.F.<1の範囲にある半導体レーザアレイを光源30とした場合に、特に好適である。なお、実施の形態3の平行光発生装置における全体の構成及び動作は実施の形態2と同様であるため、ここでの説明は省略する。
光源30の広がり角を、各発光点の光軸に対して対称なレンズからなるアレイ状コリメータレンズを用いて広がり角を小さくする場合を考える。レンズ後の広がり角は、理想的には発光幅Wとレンズの焦点距離fを用いて
θho=2×TAN−1(W/2/f) (23)
となり、レンズ位置で各発光点の光が重ならないように焦点距離fを決めると、
f=(P―W)/(2×Tan(θhi/2)) (24)
となるので、式(23)と式(24)を整理すると、
Tan(θho/2)/Tan(θhi/2)
=F.F./(1−F.F.) (25)
となり、光源30からの水平方向広がり角とアレイ状レンズ後の広がり角は光源30のフィルファクタF.F.で制限される。式(25)より、フィルファクタF.F.が0.5以上のアレイ状光源は、従来の対称なレンズでコリメートするために、前側焦点位置に光源を配置した場合には、ある広がり角θ内のビームに対してケラレが無い条件で、水平方向の広がり角を小さくすることができないことがわかる。
また、各発光点の光軸に対して対称でないレンズをアレイ状に組み合わせたコリメータレンズを用いることも考えられるが、レンズの作製難度が高く、安価に作ることが難しい。また、光源とレンズの組立て難度も高くなる。
一方で、本発明のレンズ10と半導体レーザアレイからなる光源30との組み合わせにおいては、いかなるフィルファクタF.F.のアレイ状光源においても水平方向の広がり角を小さくすることが可能であり、小さな広がり角、高い光利用効率及び小型化の条件を満足させることのできる平行光発生装置が実現できる。
いま、光源30の発光幅Wと発光幅の周期Pに合わせて、レンズ10をアレイ状に配置した光学素子を用いた場合について考える。この場合、水平方向の広がり角は、これまでの説明と同様で、入射面と出射面でのビーム径の比率である倍率で決まる。ここで、入射面でのビーム径が、発光幅Wより小さくならないこと、及びレンズ内部及び出射面でケラレが発生しないためには出射面でのビーム径は発光点の周期Pより大きくできないので、最大の倍率は、
m=P/W=1/F.F. (26)
と制限される。これよりレンズ後の水平方向の広がり角は、元の広がり角のフィルファクタF.F.倍に制限されてしまう。
以上の結果から、式(22)に示すフィルファクタF.F.が0.5〜1の範囲にある半導体レーザアレイを光源30とした場合に、実施の形態3の平行光発生装置は特に好適である。
以上説明したように、実施の形態3の平行光発生装置によれば、光源は、複数の発光点の各発光幅Wと発光点の周期Pから決まるフィルファクタF.F.が0.5≦F.F.<1を満たすアレイ状光源としたので、平行光発生装置として、小型化、小さな広がり角及び高い光利用効率の条件をさらに満足させることができる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
以上のように、この発明に係る平行光発生装置は、光軸に対して垂直な面内に含まれる2軸方向に非対称な広がり角を有する光を出射する光源と、光源からの出力光の広がり角を小さくする変換光学系を備えた構成に関するものであり、LEDやレーザを用いた固体照明に用いるのに適している。
10 レンズ、10a 光軸、11 入射面、12 出射面、20,30 光源、20a,30a 水平方向の光線、20b,30b 垂直方向の光線、20c 水平方向の発光幅、20d 垂直方向の発光幅、21a 内部位置、21b,31 端面。

Claims (7)

  1. シリンドリカル形状で凹面形状をなす入射面と光軸に対して対称な凸面形状をなす出射面とを有するレンズと、
    前記光軸に対して垂直な面内における一方の方向と、当該一方の方向とは90度異なる他方の方向との広がり角が異なる光源とを備え、
    前記光源は前記レンズの前記他方の方向の入射面側焦点距離の位置に配置され、かつ、前記光源の一方の方向が前記レンズのシリンドリカル形状の曲率方向に配置されたことを特徴とする平行光発生装置。
  2. 前記光源の前記一方の方向の発光点幅が前記他方の方向の発光点幅より大きいことを特徴とする請求項1記載の平行光発生装置。
  3. 前記光源は非点隔差を有する光源であることを特徴とする請求項1記載の平行光発生装置。
  4. 前記光源は半導体レーザであることを特徴とする請求項3記載の平行光発生装置。
  5. 前記光源は、前記一方の方向に複数の発光点を有することを特徴とする請求項1記載の平行光発生装置。
  6. 前記光源は、前記複数の発光点の各発光幅Wと発光点の周期Pから決まるフィルファクタF.F.が0.5≦F.F.<1を満たすアレイ状光源であることを特徴とする請求項5記載の平行光発生装置。
  7. 前記光源は、半導体レーザアレイであることを特徴とする請求項5記載の平行光発生装置。
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