JP6163700B2 - タンパク質間相互作用の検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質間相互作用の検出方法及びその応用、並びに当該方法に用いられるためのキットに関する。
タンパク質間相互作用の検出方法は、主に2つのグループに分けることができる。一つ目は、生細胞から分離された状態のタンパク質を用いることを特徴とする方法である。例えば、表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance)、タンパク質質量分析法(protein mass spectroscopy)、異方性測定法(anisotropy measurements)が挙げられる。しかしながら、これらの方法では、実際の細胞内環境と同様の環境で相互作用を検出することは困難である。
そこで、二つ目の方法として、生細胞を用いてタンパク質間相互作用の検出を行う方法も開発されている。代表的な方法としては、レポーターの転写活性を検出する酵母ツーハイブリッドシステム(yeast two hybrid)やその変法が挙げられる。その他、βガラクトシダーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)等の酵素の再構成を利用する方法も開発されている。
しかしながら、これら方法には、タンパク質間相互作用が発生した位置(タンパク質間相互作用の位置情報)や、タンパク質間相互作用が発生するまでの時間、該相互作用が消失するまでの時間及び該相互作用の持続時間等(タンパク質間相互作用の時間情報)を検出することができないという問題がある。
また、生細胞を用いてタンパク質間相互作用の検出を行う方法として、蛍光タンパク質の再構成を利用する方法もあるが、一度再構成した蛍光タンパク質は解離しないため、タンパク質間相互作用が消失するまでの時間及び該相互作用の持続時間等を検出することができないという問題がある。さらには、タンパク質間相互作用が発生してから、蛍光を発するまでに時間を要するため、タンパク質間相互作用が発生するまでの時間等を検出することができないという問題もある。
さらに、ルシフェラーゼの再構成法を利用する方法もある。かかる方法においては、ルシフェラーゼの再構成と解離とが可逆的に生じるが、再構成したルシフェラーゼによって生じる発光シグナルが弱いため、細胞内での位置情報を得るためには、露光時間を長くする必要があり、ターンオーバーの早いタンパク質間相互作用の位置情報や時間情報を得ることはできない。
また、これら蛍光タンパク質やルシフェラーゼ等の再構成を利用する方法においては、かかる再構成が生じてから、シグナルを検出することができるようになるため、例えば、タンパク質間相互作用によって局在が変化するタンパク質を、該相互作用の発生の前後を通して追跡することは困難であるという問題もある。
一方、生細胞内でタンパク質間相互作用の検出を行う方法として、分子間の距離に依存したエネルギー転移を検出する蛍光共鳴エネルギー移動法(fluorescence resonance energy transfer、FRET)が開発されている。この方法は、タンパク質間相互作用が発生した位置情報と時間情報が得られるという利点を有するものの、この方法に用いられるドナー蛍光タンパク質とアクセプター蛍光タンパク質との相互の位置関係が、タンパク質間相互作用の検出において重要であるため、これら蛍光タンパク質と検出の対象となるタンパク質とを繋ぐリンカー(スぺーサー)の最適化を検討する工程が煩雑であり、系の構築が困難であった。さらに、アクセプター蛍光タンパク質を励起してしまうcross excitationや、アクセプター蛍光タンパク質の蛍光を検出するフィルター(吸収フィルター)セットにドナー蛍光タンパク質の蛍光が漏れ込むbleed throughが発生してしまうため、結果の解析が困難であった。また、2色の蛍光タンパク質(ドナー蛍光タンパク質及びアクセプター蛍光タンパク質)を使用するため、検出対象となるタンパク質以外の情報を検出する目的で使用できる蛍光タンパク質が限定されるという問題もあった。
近年、Tobias Meyerらによって、細胞内局在化(translocation)を利用したタンパク質間相互作用の検出方法が報告された(特許文献1)。この方法は、相互作用を検出するタンパク質の一方に細胞内の特定の部位に特異的に結合するタンパク質を融合し、相互作用を検出するタンパク質の他方に蛍光タンパク質等を融合する。そして、これら融合タンパク質を細胞内で発現させ、細胞内の特定の部位における蛍光タンパク質等のシグナルを指標としてタンパク質間相互作用を検出する。
また、Nibertらによって、相互作用を検出するタンパク質の一方にウィルス封入体(viral inclusion body)を形成するタンパク質を融合した融合タンパク質を用い、相互作用を検出するタンパク質の他方がウィルス封入体に集積することを指標として、タンパク質間相互作用を検出する方法が報告されている(特許文献2)。
しかしながら、これらの細胞内局在化を利用したタンパク質間相互作用の検出方法は、相互作用を検出するタンパク質の一方を強制的(人工的)に細胞内の特定の部位に移行させて拘束するため、本来タンパク質間相互作用が生じる部位、すなわちタンパク質間相互作用に固有な細胞内環境下での検出ができず、タンパク質間相互作用の位置情報が得られない等の問題点がある。また、天然の状態で、細胞内局在化される部位と同じ部位に局在するタンパク質同士の相互作用を検出することもできない。
この問題点に対しては、Sara Peterson Bjornらによって、タンパク質が本来機能する細胞内環境下にて相互作用させた上で、薬剤等の刺激を該細胞に与えることにより、相互作用するタンパク質からなる凝集体の形成を誘導し、該凝集体の形成をもって、タンパク質間相互作用を検出する方法(redistribution−trap method)が報告されている(特許文献3)。
しかしながら、この方法は任意の時点において凝集体の形成を誘導するための刺激を細胞に与える必要があり、刺激を与えた後に引き続き相互作用の有無を検出するためには、刺激を与えるために用いた薬剤等を除く必要がある。従って、かかる方法においては、タンパク質間相互作用が発生した時間情報を得ることができず、また、任意の期間に任意の場所にて変化(発生、消失、再発生等)するタンパク質間相互作用は検出できない等の問題点がある。
国際公開2000/017221号 国際公開2006/099486号 米国特許7282347号明細書
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、細胞内におけるタンパク質間相互作用を、タンパク質間相互作用に固有な細胞内環境下において検出することができ、かつ、タンパク質間相互作用の位置情報及び時間情報を検出することができる方法を提供することにある。
本発明者らは、2つのタンパク質(第1のタンパク質及び第2のタンパク質)の相互作用の検出において、第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質の利用を構想した。具体的には、これら2つの融合タンパク質を細胞内に発現させた場合において、第1のタンパク質と第2のタンパク質とが相互作用すれば、会合誘導タンパク質同士の会合作用が誘導され、これにより融合タンパク質が自立的に会合体を形成し、融合タンパク質に含まれる蛍光タンパク質が蛍光輝点として検出される系の構築を考えた(図1及び2 参照)。そして、前記会合誘導タンパク質として、単量体蛍光タンパク質の一種である、単量体アザミグリーン1(monomeric Azami Green 1、mAG1)と融合させた場合には細胞内にて拡散して存在し、多量化能を有する蛍光タンパク質と融合させた場合には細胞内にて蛍光輝点(会合体)を形成する性質を有するタンパク質の利用を考えた。
そこで、本発明者らは、まず、mAG1又は多量化能を有する蛍光タンパク質を融合させた候補タンパク質を細胞内において発現させ、蛍光輝点の形成を指標とした会合誘導タンパク質のスクリーニングを行った(図3及び4 参照)。
かかるスクリーニングを行った結果、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインが前記会合誘導タンパク質として利用できることが明らかになった。
次いで、本発明者らは、同定したこれらタンパク質を実際にこれら会合誘導タンパク質として、多量化能を有する蛍光タンパク質とを組み合わせて用いることにより、蛍光輝点を指標に任意のタンパク質間相互作用を検出できることを明らかにした。
この方法によれば、タンパク質間相互作用を、そのタンパク質相互作用に固有の細胞内環境下において検出することができ、かつ、タンパク質間相互作用の位置情報及び時間情報も検出することができる。また、タンパク質間相互作用に関与するアミノ酸残基の同定や、タンパク質間相互作用を調製する物質のスクリーニングも可能である。
従って、本発明は、タンパク質間相互作用の検出方法及びその応用、並びに当該方法に用いられるためのキットに関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1) 第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を検出するための方法であって、
第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させる工程と、
前記細胞内における第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合により生じる蛍光輝点を検出する工程と、
前記蛍光輝点の検出により、第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を判定する工程と、
含み、
前記会合誘導タンパク質が、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインからなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であり、かつ
前記蛍光輝点が、拡散状態で存在している前記多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である、方法。
(2) 前記相互作用の発生若しくは消失、該相互作用の発生若しくは消失するまでの時間、又は該相互作用の持続時間を検出するために、前記蛍光輝点を検出する、(1)に記載の方法。
(3) 特定の刺激に応答する前記相互作用の発生若しくは消失、該相互作用の発生若しくは消失するまでの時間、又は該相互作用の持続時間を検出するために、前記蛍光輝点を検出する、(1)に記載の方法。
(4) 特定のタンパク質と相互作用するタンパク質をスクリーニングするための方法であって、第1のタンパク質及び第2のタンパク質のいずれか一方が該特定のタンパク質であり、他方が被検タンパク質であり、前記蛍光輝点の検出により、該特定のタンパク質と相互作用するタンパク質を選択する、(1)〜(3)のうちのいずれか一に記載の方法。
(5) 前記相互作用に関与する第1のタンパク質中のアミノ酸残基又は第2のタンパク質中のアミノ酸残基を同定するための方法であって、該第1のタンパク質及び該第2のタンパク質のいずれかに変異が導入されたタンパク質を用い、前記蛍光輝点の蛍光強度が、変異が導入されていないタンパク質を用いた場合と比較して減弱した場合は、該変異が導入されたアミノ酸残基を前記相互作用に関与すると判定する、(1)〜(3)のうちのいずれか一に記載の方法。
(6) 第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を調節する物質をスクリーニングするための方法であって、
被検化合物存在下で、第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させる工程と、
前記細胞内において第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合により生じる蛍光輝点を検出する工程と、
前記蛍光輝点の蛍光強度が前記被検化合物の非存在下において生じる蛍光輝点の蛍光強度より増大する場合は、前記被検化合物を前記相互作用の誘導物質として選択し、前記蛍光輝点の蛍光強度が前記被検化合物の非存在下において生じる蛍光輝点の蛍光強度より減弱する場合は、前記被検化合物を前記相互作用の抑制物質として選択する工程と、
含み、
前記会合誘導タンパク質が、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインからなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であり、かつ
前記蛍光輝点が、拡散状態で存在している前記多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である、方法。
(7) 会合誘導タンパク質をスクリーニングするための方法であって、
(a)被検タンパク質及びmAG1を含む融合蛋白質を細胞内に発現させる工程と、
(b)前記被検タンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む融合蛋白質を細胞内に発現させる工程と、
(c)(a)に記載の工程においては蛍光輝点が検出されず、(b)に記載の工程においては蛍光輝点が検出された場合に、前記被検タンパク質を会合誘導タンパク質として選択する工程と、
含み、かつ
前記蛍光輝点が、拡散状態で存在している前記多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である、方法。
(8) 前記多量化能を有する蛍光タンパク質が、monomeric Kusabira−Orange2、Azami−Green、Kusabira−Orange1、dimeric Keima−Red、Kikume Green−Red、monomeric Keima−Red、monomeric Midoriishi−Cyan1、monomeric Kusabira−Orange1、monomeric Kikume Green−Red1、Midoriishi−Cyan1、Kusabira−Cyan1、dimeric Azami−Green(AB)、dimeric Azami−Green(AC)、TGuv、Momiji、COR3.01、COR5及びDsRed2からなる群から選択される少なくとも一の蛍光タンパク質である、(1)〜(7)のうちのいずれか一に記載の方法。
(9) 下記(a)及び(b)、又は(c)と、使用説明書とを含み、(1)〜(8)のうちのいずれか一に記載の方法に用いられるためのキット
(a)会合誘導タンパク質をコードするDNAと、該会合誘導タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター、又は第1の融合タンパク質をコードするベクター
(b)多量化能を有する蛍光タンパク質をコードするDNAと、該蛍光タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター、又は第2の融合タンパク質をコードするベクター
(c)第1の融合タンパク質をコードするベクターと第2の融合タンパク質をコードするベクターとを保持する形質転換細胞。
本発明によれば、タンパク質間相互作用をその固有な細胞内環境下において検出することができ、またタンパク質間相互作用の位置情報及び時間情報を検出することが可能となる。
本発明のタンパク質間相互作用の検出方法の概念を示す図である。すなわち、第1のタンパク質(B)及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質(A)及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させた場合に、前記細胞内における第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合体形成により生じる蛍光輝点を検出することにより、第1のタンパク質(B)と第2のタンパク質(A)との相互作用を判定することができることを示す図である。 本発明のタンパク質間相互作用の検出方法の概念を示す図である。すなわち、第1のタンパク質(C)と第2のタンパク質(A)とが相互作用しない場合において、第1のタンパク質(C)及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質(A)及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させても、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質とは会合せず、拡散した状態にて前記細胞内において各々存在することになるため、蛍光輝点は検出されないということを示す図である。 本発明にかかる会合誘導タンパク質のスクリーニング方法の概念を示す図である。すなわち、本発明にかかる会合誘導タンパク質は、多量化能を有する蛍光タンパク質と融合させた場合には細胞内にて会合体(蛍光輝点)を形成できることを示す図である。 本発明にかかる会合誘導タンパク質のスクリーニング方法の概念を示す図である。すなわち、本発明にかかる会合誘導タンパク質は、単量体アザミグリーン1(monomeric Azami Green 1、mAG1)と融合させた場合には細胞内にて拡散して存在することを示す図である。 p62のPB1ドメイン(p62(PB1))にmAG1を融合させたタンパク質(mAG1−p62(PB1))、及びp62(PB1)に多量化能を有する蛍光タンパク質としてAzami Green(AG)を融合させたタンパク質(AG−p62(PB1))を培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 mTORタンパク質のFRBドメイン及びAGタンパク質からなる融合タンパク質と、p62(PB1)及びFKBP12からなる融合タンパク質とを培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、mTORタンパク質のFRBドメイン(mTOR(FRB))とFKBP12タンパク質とは、ラパマイシン(rapamycin)の存在下において相互作用することが知られている。 mTORタンパク質のFRBドメイン及びp62(PB1)からなる融合タンパク質と、AGタンパク質及びFKBP12からなる融合タンパク質とを培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。 mTORタンパク質のFRBドメイン及びp62(PB1)からなる融合タンパク質と、mAG1タンパク質及びFKBP12からなる融合タンパク質とを培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。 mTORタンパク質のFRBドメイン及びAGタンパク質からなる融合タンパク質(mTOR−AG)と、p62(PB1)タンパク質及びFKBP12からなる融合タンパク質(p62(PB1)−FKBP12)とを培養細胞内に発現させ、Rapamycinの非存在下(−)又は存在下(+)にて、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 mTORタンパク質のFRBドメイン及びmAG1タンパク質からなる融合タンパク質(mTOR−mAG1)と、p62(PB1)タンパク質及びFKBP12からなる融合タンパク質(p62(PB1)−FKBP12)とを培養細胞内に発現させ、Rapamycinの非存在下(−)又は存在下(+)にて、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 mTORタンパク質のFRBドメイン及びAGタンパク質からなる融合タンパク質(mTOR−AG)と、ホモ多量体能を喪失したp62(PB1)タンパク質変異体及びFKBP12からなる融合タンパク質(p62(PB1_nc)−FKBP12)とを培養細胞内に発現させ、Rapamycinの非存在下(−)又は存在下(+)にて、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 MEK5のPB1ドメイン(MEK5(PB1))又はNbr1のPB1ドメイン(Nbr1(PB1))に、mAG1タンパク質又はAGタンパク質(多量化能を有する蛍光タンパク質)を融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 PKCiotaのPB1ドメイン(PKCiota(PB1))又はTFGのPB1ドメイン(TFG(PB1))に、mAG1タンパク質又はAGタンパク質を融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 TELのSAMドメイン(TEL(SAM))又はDGKdelta(DGKd)のSAMドメイン(DGKdelta(SAM))に、mAG1タンパク質又はAGタンパク質を融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 TankyraseのSAMドメイン(Tankyrase(SAM))又はEphB2のSAMドメイン(EphB2(SAM))に、mAG1タンパク質又はAGタンパク質を融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 下記融合タンパク質の組み合わせを培養細胞内に発現させ、rapamycin存在下において、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である mTORタンパク質のFRBドメイン及びAGタンパク質からなる融合タンパク質(mTOR(FRB domain)−AG)と、FKBP12タンパク質及びTFG(PB1)からなる融合タンパク質(FKBP12−TFG(PB1))との組み合わせ mTOR(FRB domain)−AGと、FKBP12タンパク質及びTEL(SAM)からなる融合タンパク質(FKBP12−TEL(SAM))との組み合わせ mTOR(FRB domain)−AGと、FKBP12タンパク質及びDGKdelta(SAM)からなる融合タンパク質(FKBP12−DGKd(SAM))との組み合わせ mTOR(FRB domain)−AGと、FKBP12タンパク質及びTankyrase(SAM)からなる融合タンパク質(FKBP12−Tankyrase(SAM))との組み合わせ。 本発明にかかる多量化能を有する蛍光タンパク質として、KO1、dKeima、KikGR、AGを用いることにより、rapamycin依存的な、mTOR(FRB)とFKBP12タンパク質との相互作用を蛍光輝点の形成をもって検出できるかどうかを分析した結果を示す顕微鏡写真である。 p62(PB1)に単量体クサビラオレンジ2(monomeric Kusabira−Orange2、mKO2)を融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の発生の有無を分析した結果を示す顕微鏡写真である。 mTOR(FRB domain)−AGとFKBP12−p62(PB1)とが会合して生じる蛍光輝点の蛍光強度は、rapamycinの濃度依存的なものであるかどうかを分析した結果を示す顕微鏡写真である。 mTOR(FRB domain)−AGとFKBP12−p62(PB1)とが会合して生じる蛍光輝点の蛍光強度が、rapamycinの濃度依存的なものであるかどうかを分析した結果を示すグラフである。 mTOR(FRB domain)−AGとp62(PB1)−FKBP12とが会合して生じる蛍光輝点の蛍光強度が、rapamycinの濃度依存的なものであるかどうかを分析した結果を示すグラフである。 rapamycinの存在下、mTOR(FRB domain)−AGとp62(PB1)−FKBP12とが会合して生じる蛍光輝点の蛍光強度が、FK506の濃度依存的に抑制されるかどうかを分析した結果を示すグラフである。なお、FK506は、FKBP12タンパク質とRapamycinとの相互作用を競合的に阻害することにより、mTORタンパク質のFRBドメイン(mTOR(FRB))とFKBP12タンパク質との相互作用を阻害する。 p62(PB1)及びp53の一部からなる融合タンパク質(p62(PB1)−p53)と、AGタンパク質及びMDM2からなる融合タンパク質(AG−MDM2)とを培養細胞内に発現させ、ナトリン−3(Nutlin−3)存在下における、蛍光輝点の蛍光強度を分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、Nutlin−3は、p53タンパク質とMDM2タンパク質との相互作用に対する阻害剤として知られている。また、図中左下のスケールバーは10μmを示す。 p62(PB1)−p53とAG−MDM2とが会合して生じる蛍光輝点の蛍光強度が、Nutlin−3の濃度依存的に抑制されるかどうかを分析した結果を示すグラフである。 p62(PB1)−p53とAG−MDM2とが会合して生じる蛍光輝点の蛍光強度が、Nutlin−3の濃度依存的に抑制されるかどうかを分析した結果を示すグラフである。 p62(PB1)−p50及びAG−p65を発現させた細胞(IκBα(−))と、p62(PB1)−p50、AG−p65及びIκBαを発現させた細胞(IκBα(+))とを観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、p50とp65とはヘテロダイマーを形成し、核内に局在しているが、さらにIκBαと相互作用することにより、細胞質に局在することになる。また、図中「AG」はAG由来の蛍光を検出した結果を示し、「抗IκBα抗体による免疫染色」は当該免疫染色を施した細胞を観察した結果を示し、「重ね合わせ」は、前記「AG」と、前記「抗IκBα抗体による免疫染色」と、Hoechst33342によって核を染色した細胞を観察した結果とを重ね合わせた結果を示す。 p62(PB1)−p50とAG−p65とが会合して生じる蛍光輝点の細胞内における局在が、IκBαの当該細胞への導入量(pIκBα添加量)に応じて変化するかどうかを分析した結果を示すグラフである。 p62(PB1)−CDK4及びAG−p21を共発現させた細胞(AG−p21+PB1−CDK4)と、p62(PB1)−CDK4、AG−p21及びCyclinD1(サイクリンD1)を発現させた細胞(AG−p21+PB1−CDK4+CyclinD1)とを観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、p21と、CDK4及びCyclinD1とからなる複合体とは相互作用する。また、図中「AG」はAG由来の蛍光を検出した結果を示し、「抗CyclinD1抗体による免疫染色」は当該免疫染色を施した細胞を観察した結果を示し、「重ね合わせ」は、前記「AG」と、前記「抗CyclinD1抗体による免疫染色」とを重ね合わせた結果を示す。 下記融合タンパク質の組み合わせを培養細胞内に発現させ、蛍光輝点の蛍光強度及び局在を分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは20μmを示す p62(PB1)及びSec5タンパク質の一部からなる融合タンパク質(p62(PB1)−Sec5)と、AGタンパク質及びRalBタンパク質(野生型)からなる融合タンパク質(AG−RalB(WT))との組み合わせ p62(PB1)−Sec5と、AGタンパク質及びRalBタンパク質(非活性型変異型)からなる融合タンパク質(AG−RalB(S28N))との組み合わせ p62(PB1)−Sec5と、AGタンパク質及びRalBタンパク質(活性型変異型)からなる融合タンパク質(AG−RalB(Q72L))との組み合わせ なお、Sec5タンパク質はRalBタンパク質のGTP活性化型と相互作用することが知られている。また、RalBの非活性型変異体 RalB(S28N)ではその相互作用が減少し、RalBの活性型変異体 RalB(Q72L)では増大することが知られている。さらに、RalBタンパク質については、そのC末端がパルミトイル化されることにより、細胞膜に局在することも明らかになっている。 下記融合タンパク質の組み合わせを培養細胞内に発現させ、細胞膜付近のみの蛍光を検出した結果を示す顕微鏡写真である。 p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(WT)との組み合わせ p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(Q72L)との組み合わせ p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(S28N)との組み合わせ p62(PB1)とAG−RalB(WT)との組み合わせ。 p62(PB1)−p53及びAG−MDM2を共発現した細胞(WT)と、p62(PB1)−p53_W23L及びAG−MDM2を共発現させた細胞(W23L)とを観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、p53の23位のアミノ酸はp53とMDM2との相互作用界面部位に位置し、p53におけるW23L変異は当該相互作用を減弱させる。 カルモジュリンタンパク質及びAGタンパク質からなる融合タンパク質(Calmodulin−AG)と、ミオシン軽鎖キナーゼ2の部分配列(M13ペプチド)及びp62(PB1)からなる融合タンパク質(M13peptide−p62(PB1))との会合によって生じる蛍光輝点の発生及び消失を、ヒスタミン(Histamine)添加前、添加後90秒後、添加後620秒後に観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。また、カルモジュリンとM13ペプチドとの相互作用は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)がリガンド(例えば、Histamine)を受容した際に生じる細胞内カルシウムイオン濃度の一過的な上昇に応答して発生することが明らかになっている。 mTOR(FRB domain)とAGタンパク質と核局在シグナル(NLS)とからなる融合タンパク質(mTOR(FRB domain)−AGNLS)と、FKBP12−p62(PB1)との会合によって生じる蛍光輝点の局在を観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、左から数えて、1番目のパネルはrapamycin添加前の細胞の蛍光画像を示し、2番目のパネルはrapamycin添加後の細胞の蛍光画像を示し、3番目のパネルはrapamycin添加後の細胞の蛍光画像と明視野像とを重ね合わせた結果を示す。また、図中右下のスケールバーは5μmを示す。 p62(PB1)及びHRasタンパク質からなり、C末端にプレニル化配列を有する融合タンパク質(p62(PB1)−HRas)と、AGタンパク質及びcRafタンパク質からなる融合タンパク質(AG−cRaf)との会合によって生じる蛍光輝点の局在を観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。 p62(PB1)及びSmacタンパク質の一部からなる融合タンパク質(Smac−p62(PB1))と、XIAPタンパク質の一部及びAGタンパク質からなる融合タンパク質(XIAP−AG)とが会合して生じる蛍光輝点の局在を観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。 p62(PB1)及びBclX(L)タンパク質の一部からなる融合タンパク質(p62(PB1)−BclX(L))と、AGタンパク質及びBADタンパク質の一部からなる融合タンパク質(AG−BAD)とが会合して生じる蛍光輝点の局在を観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。 AGタンパク質及びRac1タンパク質からなる融合タンパク質(AG−Rac1)と、p62(PB1)及びp21結合ドメインからなる融合タンパク質(p62(PB1)−PBD)との会合によって生じる蛍光輝点が核内に局在していることを示す顕微鏡写真である。なお、図中右下のスケールバーは5μmを示す。また、Rac1タンパク質はグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)により活性型に変換される。そして、活性型のRac1タンパク質とPBDとは相互作用することが知られている。さらに、GEFの局在はその種類によって異なるため、Rac1タンパク質とPBDとの相互作用は、種類によって異なるGEFの局在に応じた細胞内の領域において生じることになる。 AG−Rac1とp62(PB1)−PBDとの会合によって生じる蛍光輝点が細胞の辺縁に局在していることを示す顕微鏡写真である。なお図中、下部パネルは、上部パネル内の白線にて囲んだ領域を拡大したものである。また、上部パネル内右下のスケールバーは5μmを示し、下部パネル内左上のスケールバーは1μmを示す。 AG−Rac1とp62(PB1)とを細胞内に発現させた場合には、これらタンパク質は相互作用しないため、蛍光輝点は細胞の辺縁等において検出されないことを示す顕微鏡写真である。なお図中、下部パネルは、上部パネル内の白線にて囲んだ領域を拡大したものである。また、上部パネル内右下のスケールバーは5μmを示し、下部パネル内左上のスケールバーは1μmを示す。 AG−Rac1とp62(PB1)−PBDとを発現させた細胞を、ゲラニルゲラニル基修飾に対する阻害剤であるメバスタチン非存在下(−)又は存在下(+)にて観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、ゲラニルゲラニル基修飾を阻害することにより、Rac1は核内に局在する。また、図中、同一の細胞について、「A」は通常の落射型蛍光倒立顕微鏡にて観察した結果を示し、「B」は、細胞膜付近のみ励起することのできる、アーク光源全反射蛍光顕微鏡システムにて観察した結果を示す。 AG−Rac1とRhoGDI−p62(PB1)とを発現させた細胞を、ゲラニルゲラニル基修飾に対する阻害剤であるメバスタチン非存在下(−)又は存在下(+)にて観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、Rac1タンパク質は、そのゲラニルゲラニル基を介し、RhoGDIと相互作用する。また、図中、同一の細胞について、「A」は通常の落射型蛍光倒立顕微鏡にて観察した結果を示し、「B」は、細胞膜付近のみ励起することのできる、アーク光源全反射蛍光顕微鏡システムにて観察した結果を示す。 p62(PB1)−KRas(WT)及びAG−cRaf(R59A)を発現させた細胞(WT)と、p62(PB1)−KRas(G12D)及びAG−cRaf(R59A)を発現させた細胞(G12D)とを、EGFを添加した後(+)又は非添加(−)にて、これら細胞の細胞膜付近の蛍光のみを検出した結果を示す顕微鏡写真である。なお、EGF依存的に活性化されたKRasと、cRafとは相互作用する。また、このタンパク質間相互作用により、cRafの局在は細胞質から細胞膜に変化する。 p62(PB1)−BclX(L)とBak−AGとを共発現させた細胞における蛍光輝点の総蛍光強度の、ABT−737添加後における経時的変化を示すグラフである。なお、BclX(L)とBakとはBH3ドメインを介して相互作用するが、このタンパク質間相互作用は、ABT−737(BH3模倣薬)によって競合的に阻害される。 p62(PB1)−BclX(L)とAG−Baxとを共発現させた細胞における蛍光輝点の総蛍光強度の、ABT−737添加後の経時的変化を示すグラフである。なお、BclX(L)とBaxとはBH3ドメインを介して相互作用するが、このタンパク質間相互作用は、ABT−737によって競合的に阻害される。 p62(PB1)−p53及びAG−MDM2を安定的に発現している細胞における蛍光輝点の総蛍光強度の、Nutlin−3添加前後における経時的変化を示すグラフである。なお、グラフのx軸はNutlin−3添加時を0とした時間(分)を表わす。 mTOR(FRB domain)−AG及びp62(PB1)−FKBP12を安定的に発現している細胞における蛍光輝点の総蛍光強度の、rapamycin添加前後における経時的変化を示すグラフである。なお、グラフのx軸はrapamycin添加時を0とした時間(分)を表わす。 p62(PB1)−ERK_substrate及びAG−Pin1(ww)−NESを発現している細胞における蛍光輝点の総蛍光強度の、EGF及びU0126添加前後における経時的変化を示すグラフである。なお、EGF刺激により細胞内のERKが活性化されると、ERK基質(ERK_substrate)がリン酸化され、その結果、ERK_substrateとPin1タンパク質のwwドメイン(Pin1(ww))が相互作用する。さらに、MEK阻害剤であるU0126を添加すると、ERKの活性が低下し、結果的にERK基質が脱リン酸化を受け、ERK基質とPin1(ww)との相互作用が解消される。グラフのx軸はEGF添加時を0とした時間(分)を表わす。また、U0126の細胞への添加は、EGFを添加してから14分後に行った。 p62(PB1)−HRas(WT)及びAG−cRaf(R59A)を発現している細胞における蛍光輝点の総蛍光強度の、EGF添加前後における経時的変化を示すグラフである。なお、グラフのx軸はEGF添加時を0とした時間(分)を表わす。 AG−mCAB、p62(PB1)−FKBP12及びmTOR(FRB)−KO1を発現させた細胞を、Ramamycin非存在下(−)若しくは存在下(+)、又は、FK506非存在下(−)若しくは存在下(+)にて観察した結果を示す顕微鏡写真である。なお、RapamycinはFKBP12タンパク質に結合して複合体を形成し、さらにこの複合体とmTORタンパク質のFRBドメイン(mTOR(FRB))とが結合する。また、mCAB(カルシニューリンAの一部とカルシニューリンBの一部とが融合してなるタンパク質)とFKBP12タンパク質とは、FK506を介して相互作用する。図中、「AG」及び「KO1」は、AG及びKO1に由来する蛍光を各々検出した結果を示す。
<タンパク質間相互作用を検出するための方法>
本発明のタンパク質間相互作用を検出するための方法は、
第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を検出するための方法であって、
第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させる工程と、
前記細胞内における第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合により生じる蛍光輝点を検出する工程と、
前記蛍光輝点の検出により、第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を判定する工程と、
を含む方法である。
本発明において「タンパク質」とは2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合した分子及びその修飾体を意味する。従って、完全長のタンパク質のみならず、いわゆるオリゴペプチドやポリペプチドをも含む概念である。タンパク質の修飾としては、例えば、リン酸化、グリコシル化、パルミトイル化、プレニル化(例えば、ゲラニルゲラニル化)、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、SUMO化、ヒドロキシル化、アミド化が挙げられる。
本発明にかかる「第1のタンパク質」及び「第2のタンパク質」としては、相互作用を検出したい所望のタンパク質を用いることができる。
本発明にかかる「第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用」には、直接的な相互作用のみならず、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間に他の分子(タンパク質、核酸、糖、脂質、低分子化合物等)を介して複合体を形成するような、間接的な相互作用も含まれる。
本発明にかかる「多量化能を有する蛍光タンパク質」は、細胞内において、p62のPB1ドメイン(p62(PB1))と融合させて発現させた場合に、このp62(PB1)との融合タンパク質どうしが会合し、蛍光輝点を生じさせることのできる蛍光タンパク質である。従って、「多量化能を有する蛍光タンパク質」には、p62(PB1)と融合せずとも、ホモ多量体を細胞内において形成することができる蛍光タンパク質のみならず、後述の実施例で示すような、一般的に単量体蛍光タンパク質と考えられているmKO2等の蛍光タンパク質も含まれる。かかる「多量化能を有する蛍光タンパク質」としては、例えば、Midoriishi−Cyan1(ミドリイシ−シアン1、MiCy1)、Kusabira−Orange1(クサビラオレンジ1、KO1)、dKeima570(二量体ケイマ570)、dimeric Keima−Red(二量体ケイマ−レッド、dKeima、dKeima−Red)、Azami−Green(アザミグリーン、AG)、Kaede、Kikume Green−Red(キクメ グリーン−レッド、KikGR、KikGR1)、monomeric Kusabira−Orange1(単量体クサビラオレンジ1、mKO1)、monomeric Kusabira−Orange2(単量体クサビラオレンジ2、mKO2)、TurboGFP、TurboYFP、ZsGreen、DsRed、HcRed、eqFP578、eqFP611、EosFP、FP484、Renilla GFP、Dendra、IFP1.4、iRFP、monomeric Keima−Red(単量体ケイマ−レッド、mKeima、mKeima−Red)、monomeric Midoriishi−Cyan1(単量体ミドリイシ−シアン1、mMiCy1)、monomeric Kikume Green−Red1(単量体キクメ グリーン−レッド1、mKikGR1)、Kusabira−Cyan1(クサビラ−シアン1、KCy1)、dimeric Azami−Green(AB)(二量体アザミグリーン(AB)、dAG(AB))、dimeric Azami−Green(AC)(二量体アザミグリーン(AC)、dAG(AC))、TGuv、Momiji(モミジ)、COR3.01、COR5及びDsRed2が挙げられるが、好ましくは、mKO2、mKeima、mMiCy1、mKO1、mKikGR1、MiCy1、KCy1、KO1、dKeima、dAG(AB)、dAG(AC)、TGuv、Momiji、KikGR、AG、COR3.01、COR5及びDsRed2である。また、本発明の方法において明瞭な蛍光輝点を検出し易いという観点から、より好ましくは、TGuv、Momiji、AG、KikGR、COR3.01、COR5、DsRed2等のホモ4量体を形成することができる蛍光タンパク質であり、特に好ましくは、AGである。
なお、mKO2、AG、KO1、dKeima、KikGR、mKeima、mMiCy1、mKO1、mKikGR1、MiCy1、KCy1、dAG(AB)、dAG(AC)、TGuv、Momiji、COR3.01、DsRed2及びCOR5は、典型的には各々、配列番号:133に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB107915で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB128820で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB209968で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB193293で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB209969で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:137に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB128821で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:139に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、Genbankアクセション番号:AB128822で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:141に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:143に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:145に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:147に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:149に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:151に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:153に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号:172に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である。
これら蛍光タンパク質のアミノ酸配列は、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。また、人為的に変異を導入することもできる。このような変異体も、蛍光を発することができ、かつ、細胞内にてホモ多量体を形成することができる限り、本発明において用いることができる。
本発明にかかる「会合誘導タンパク質」は、後述の実施例、並びに図3及び4において示す通り、多量化能を有する蛍光タンパク質を融合させて細胞内に発現させた場合には、この融合タンパク質同士が会合して生じた蛍光輝点が検出され、単量体アザミグリーン1(monomeric Azami Green 1、mAG1)と融合させて発現させた場合には、拡散した状態にて細胞内に存在するタンパク質である。
本発明にかかる「会合誘導タンパク質」としては、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインが好ましく、本発明の方法において蛍光輝点をより検出し易いという観点から、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインがより好ましい。
また、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインは、典型的には各々、配列番号:4で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:12で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:10で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:14で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:18で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号:20で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
これら「会合誘導タンパク質」のアミノ酸配列は、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。また、人為的に変異を導入することもできる。このような変異体も、それ自身では会合能を有しないが、多量化能を有する蛍光タンパク質と融合した場合には会合体(蛍光輝点)を形成する性質を有する限り、本発明において用いることができる。
本発明にかかる「第1の融合タンパク質」においては、会合誘導タンパク質は、第1のタンパク質のN末側、C末側のいずれに融合させてもよい。さらに、直接的に第1のタンパク質に融合させてもよく、スぺーサータンパク質を介して間接的に融合させてもよい。また、本発明にかかる「第1の融合蛋白質」には、他の機能性タンパク質が融合されていてもよい。この場合、他の機能性タンパク質は、融合タンパク質のN末側、C末側のどちらか一方若しくは両側、又は会合誘導タンパク質と第1のタンパク質との間に、直接的に又は間接的に融合させることができる。他の機能性タンパク質としては特に制限はなく、本発明にかかる融合タンパク質に付与したい機能に応じて適宜選択される。例えば、融合タンパク質の精製を容易にする目的で用いる機能性タンパク質としては、Myc−タグ(tag)タンパク質、His−タグタンパク質、ヘマグルチン(HA)−タグタンパク質、FLAG−タグタンパク質(登録商標、Sigma−Aldrich社)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タンパク質、さらには、第2の融合タンパク質における多量化能を有する蛍光タンパク質とは異なる波長特性を示す蛍光タンパク質が挙げられる。
本発明にかかる「第2の融合タンパク質」においては、前記「第1の融合タンパク質」と同様に、多量化能を有する蛍光タンパク質は、第2のタンパク質のN末側、C末側のいずれに融合させてもよい。また、直接的に第2のタンパク質に融合させてもよく、前記スぺーサータンパク質を介して間接的に融合させてもよい。さらに、本発明にかかる「第2の融合タンパク質」には、前記他の機能性タンパク質が融合されていてもよい。この場合、前記「第1の融合タンパク質」と同様に、他の機能性タンパク質は、融合タンパク質のN末側、C末側のどちらか一方若しくは両側、又は多量化能を有する蛍光タンパク質と第2のタンパク質との間に、直接的に又は間接的に融合させることができる。
本発明にかかる「細胞」としては特に制限はなく、真核細胞であってもよく、原核細胞であってもよく、例えば、動物細胞(HeLaS3細胞、U2OS細胞等)、昆虫細胞(Sf9細胞等)、植物細胞、酵母、大腸菌が挙げられる。また、かかる細胞は、生体外で培養した状態(例えば、培地中又は培地上にて生育している細胞)であってもよく、生体内に存在する状態(例えば、第1の融合タンパク質をコードするDNAと第2の融合タンパク質をコードするDNAとが導入されているトランスジェニック動物内の細胞)であってもよい。
本発明にかかる融合タンパク質の前記細胞内における発現は、目的に応じて、一過性の発現であってもよく、恒常的な発現であってもよい。融合タンパク質の細胞における発現は、後述の本発明にかかるベクターを前記細胞に導入することにより行うことができる。細胞にベクターを導入する公知の手法としては、動物細胞に対しては、リポフェクション法、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、ウィルス(アデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス等)を利用した方法が挙げられる。また、昆虫細胞に対しては、バキュロウィルスを利用した方法が挙げられる。さらに、植物細胞に対しては、アグロバクテリウム法、電気穿孔法、パーティクルガン法等が挙げられる。また、酵母に対しては、酢酸リチウム法、電気穿孔法、スフェロプラスト法が挙げられる。さらに、大腸菌に対しては、熱ショック法(例えば、塩化カルシウム法、塩化ルビジウム法)、電気穿孔法等が挙げられる。
本発明において検出する「蛍光輝点」は、第1の融合タンパク質と第2のタンパク質との会合によって生じるものであり、典型的には、拡散状態で存在している多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である(後述の実施例、並びに図1及び2を参照のこと)。
「蛍光輝点の検出」は、例えば、多量化能を有する蛍光タンパク質に対応した励起フィルター及び吸収フィルターを備えた蛍光顕微鏡による観察、IN Cell Analyzer(GEヘルスケア社製)等のイメージングサイトメーターによる解析により行うことができる。
本発明の方法においては、細胞において前記蛍光輝点が検出されれば、第1のタンパク質と第2のタンパク質とは相互作用していると判定することができ、前記蛍光輝点が検出されなければ、第1のタンパク質と第2のタンパク質とは相互作用していないと判定することができる。
<会合誘導タンパク質のスクリーニング方法>
本発明にかかる会合誘導タンパク質は、後述の実施例において示す通り、下記(a)〜(c)に記載の工程を含むスクリーニング方法によって選択することができる
(a)被検タンパク質及びmAG1を含む融合蛋白質を細胞内に発現させる工程
(b)前記被検タンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む融合蛋白質を細胞内に発現させる工程
(c)(a)に記載の工程においては蛍光輝点が検出されず、(b)に記載の工程においては蛍光輝点が検出された場合に、前記被検タンパク質を会合誘導タンパク質として選択する工程。
本発明にかかる「被検タンパク質」としては特に制限はなく、会合誘導能を検出したい所望のタンパク質を用いることができる。
なお、「mAG1」(単量体アザミグリーン1、monomeric Azami Green 1)は、典型的には配列番号:135に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である。また、タンパク質のアミノ酸配列は、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。さらに、人為的に変異を導入することもできる。このような変異体も、蛍光を発することができ、かつ、単量体の状態にて細胞内に存在し得る限り、本発明に用いることができる。
本発明の会合誘導タンパク質のスクリーニング方法において用いられる、多量化能を有する蛍光タンパク質としては前述の通りである。
本発明にかかる「被検タンパク質及びmAG1含む融合蛋白質」又は「被検タンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む融合蛋白質」においては、mAG1又は多量化能を有する蛍光タンパク質は、被検タンパク質のN末側、C末側のいずれに融合させてもよい。また、直接的に被検タンパク質に融合させてもよく、前記スぺーサータンパク質を介して間接的に融合させてもよい。本発明にかかる「被検タンパク質」には、前記他の機能性タンパク質が融合されていてもよい。この場合、他の機能性タンパク質は、融合タンパク質のN末側、C末側のどちらか一方若しくは両側、又は、mAG1若しくは多量化能を有する蛍光タンパク質と被検タンパク質との間に、直接的に又は間接的に融合させることができる。
本発明のスクリーニングにおいては、mAG1と融合して細胞内で発現させた場合には蛍光輝点が検出されず、多量化能を有する蛍光タンパク質と融合して細胞内で発現させた場合には蛍光輝点が検出される、被検タンパク質を会合誘導タンパク質として選択する。
<タンパク質間相互作用の時間情報等を得るための方法>
後述の実施例、特に実施例12において示す通り、本発明の方法は、本発明にかかる蛍光輝点の存在又は非存在を指標として、タンパク質間相互作用の発生のみならず、タンパク質間相互作用の消失を検出することができる。また、実施例19、24〜28等において示す通り、かかるタンパク質間相互作用の発生等を経時的に追跡することもできる。さらに、実施例20〜22等において示す通り、会合誘導タンパク質や多量化能を有する蛍光タンパク質の局在等に影響を受けることなく、本発明においては細胞内の任意の領域においてタンパク質間相互作用を検出することもできる。
従って、本発明は、本発明にかかる蛍光輝点を検出することによって、タンパク質間相互作用の発生若しくは消失、該相互作用の発生若しくは消失するまでの時間、又は該相互作用の持続時間を検出する方法を提供することができる。
このような「タンパク質間相互作用の発生若しくは消失」の検出に関して、本発明においては、特に後述の実施例21において示す通り、タンパク質間相互作用が生じる細胞内の領域をも特定することもできる。
また、後述の実施例19、23、27〜29等に示す通り、本発明によれば、かかる「タンパク質間相互作用の発生若しくは消失」の検出を通して、当該タンパク質間相互作用が関与するシグナル伝達の発生及び消失、該シグナル伝達の発生若しくは消失するまでの時間並びに該シグナル伝達の持続時間を検出することができ、さらに該シグナル伝達が生じている細胞内の領域をも特定することもできる。
また、後述の実施例において示す通り、第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用が特定の刺激に応答して発生又は消失するものであっても、本発明において検出することができる。従って、本発明は、本発明にかかる蛍光輝点を検出することによって、特定の刺激に応答するタンパク質間相互作用の発生若しくは消失、該相互作用の発生若しくは消失するまでの時間、又は該相互作用の持続時間を検出するために、前記蛍光輝点を検出する方法も提供することができる。
本発明にかかる「特定の刺激」とは、タンパク質間相互作用を直接的に又は間接的に誘導又は阻害できる刺激であればよく、また細胞内で生じる内在性因子による刺激(例えば、細胞内カルシウムイオン濃度の増減、酵素の活性化又は不活性化)であってよく、細胞に与えられる外部からの刺激(例えば、受容体に対するリガンド(アゴニスト又はアンタゴニスト)の細胞への投与)であってもよい。
また、特に後述の実施例19、24〜28において示す通り、かかる本発明の方法においては、本発明にかかる蛍光輝点を検出することによって、特定の刺激の発生若しくは消失、該刺激の発生若しくは消失するまでの時間、又は該刺激の持続時間を検出することもできる。
さらに、後述の実施例11及び13等において示す通り、本発明の方法においては、特定の刺激の程度(例えば、特定の刺激が薬剤である場合には、その濃度)に応じたタンパク質間相互作用の増減も検出することができる。従って、特定の刺激が薬剤である場合には、タンパク質間相互作用に対する、その薬剤の50%効果濃度(EC50)及び50%阻害濃度(IC50)を、本発明によって決定することができる。
また、後述の実施例29において示す通り、本発明の方法においては、同一の細胞において、多種類のタンパク質間相互作用、特定の刺激に各々依存的な多種類のタンパク質間相互作用、ひいてはこれらタンパク質間相互作用が関与するシグナル伝達を、判別し、検出することができる。
<特定のタンパク質と相互作用するタンパク質のスクリーニング方法>
後述の実施例、特に実施例30において示す通り、本発明においては、任意のタンパク質間相互作用を検出することができる。従って、本発明は、特定のタンパク質と相互作用するタンパク質をスクリーニングするための方法であって、第1のタンパク質及び第2のタンパク質のいずれか一方を該特定のタンパク質とし、他方を被検タンパク質とすることにより、本発明にかかる蛍光輝点の検出により、該特定のタンパク質と相互作用するタンパク質を選択する方法を提供することができる。
本発明にかかる「被検タンパク質」としては特に制限はない。網羅的に効率良く特定のタンパク質と相互作用するタンパク質を選択できるという観点から、cDNAライブラリーがコードするタンパク質群を好適に用いることができる。
<タンパク質間相互作用に関与するアミノ酸残基の同定方法>
後述の実施例に示す通り、本発明において、蛍光輝点の蛍光強度とタンパク質間相互作用の強弱とは相関するものである。従って、本発明によれば、タンパク質相互作用に関与する第1のタンパク質中のアミノ酸残基又は第2のタンパク質中のアミノ酸残基を同定するための方法であって、該第1のタンパク質及び該第2のタンパク質のいずれかに変異が導入されたタンパク質を用い、前記蛍光輝点の強度が、変異が導入されていないタンパク質を用いた場合と比較して減弱した場合は、該変異が導入されたアミノ酸残基を前記相互作用に関与すると判定する方法を提供することができる。
本発明にかかる「蛍光輝点の蛍光強度」には、一蛍光輝点の蛍光強度のみならず、一定領域内(例えば、一細胞内、蛍光顕微鏡観察における一視野内、一蛍光画像内)に存在する蛍光輝点の総蛍光強度も含まれる。
「第1のタンパク質等に変異が導入されたタンパク質」の調製は、当業者であれば適宜公知の手法を選択して行うことができる。かかる公知の手法としては、部位特異的変異誘発(site−directed mutagenesis)法が挙げられる。
<タンパク質間相互作用を調節する物質のスクリーニング方法>
前述の通り、本発明の方法において、蛍光輝点の蛍光強度を指標として、タンパク質間相互作用の強弱を把握することができる。従って、本発明によれば、被検化合物存在下で、第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させる工程と、
前記細胞内において第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合により生じる蛍光輝点を検出する工程と、
前記蛍光輝点の強度が前記被検化合物の非存在下において生じる蛍光輝点の強度より増大する場合は、前記被検化合物を前記相互作用の誘導物質として選択し、前記蛍光輝点の強度が前記被検化合物の非存在下において生じる蛍光輝点の強度より減弱する場合は、前記被検化合物を前記相互作用の抑制物質として選択する工程と、
を含む方法を提供することができる。
本発明のスクリーニング方法において使用する被検化合物としては特に制限はなく、例えば、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)の抽出液及び培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーが挙げられる。
また、被検化合物存在下の状態とは、例えば、被検化合物の培地への添加等による被検化合物と本発明にかかる細胞とが接触している状態や、被検化合物が本発明にかかる細胞内に導入された状態が挙げられる。
<本発明の方法に用いられるためのキット>
本発明は、上記方法に用いられるためのキットを提供することができる。本発明のキットは、下記(a)〜(j)からなる群から選択される少なくとも一の物質及び使用説明書を含むキットである。
(a)会合誘導タンパク質をコードするDNAと、該会合誘導タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター
(b)多量化能を有する蛍光タンパク質をコードするDNAと、該蛍光タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター
(c)mAG1をコードするDNAと、該蛍光タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター
(d)第1の融合タンパク質をコードするベクター
(e)第2の融合タンパク質をコードするベクター
(f)(a)又は(d)に記載のベクター及び(b)又は(e)に記載のベクターを含むベクターセット
(g)(b)に記載のベクター及び(c)に記載のベクターを含むベクターセット
(h)第1の融合タンパク質をコードするベクターを保持する形質転換細胞
(i)第2の融合タンパク質をコードするベクターを保持する形質転換細胞
(j)第1の融合タンパク質をコードするベクターと第2の融合タンパク質をコードするベクターとを保持する形質転換細胞。
本発明にかかるベクターとしては、本発明にかかる細胞において、挿入されたDNAを発現(転写及び翻訳)するのに必要な制御配列を含むものであればよい。かかる制御配列としては、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、ポリAテール、リボソーム結合配列(シャイン・ダルガノ(SD)配列)が挙げられる。さらに、本発明にかかるベクターにおいては、選択マーカー(薬剤耐性遺伝子等)、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子等)を含んでいてもよい。また、このような本発明にかかるベクターの態様としては、例えば、プラスミドベクター、エピソーマルベクター、ウィルスベクターが挙げられる。
本発明にかかるベクターにおいてコードされるタンパク質は前述の通り、会合誘導能タンパク質、多量化能を有する蛍光タンパク質、mAG1、及びこれらタンパク質との融合タンパク質であるが、かかるタンパク質をコードするDNAの発現の効率をより向上させるという観点から、当該タンパク質を発現させる細胞の種に合わせてコドンを最適化したDNA(例えば、コドンがヒト化されたDNA)が、本発明にかかるベクターには、挿入されていてもよい。
前記(a)、(b)及び(c)に記載の「任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位」としては、例えば、1又は複数の制限酵素認識部位を含むマルチクローニング部位、TAクローニング部位、GATEWAY(登録商標)クローニング部位が挙げられる。
本発明にかかるベクターの標品においては、緩衝液、安定剤、保存剤、防腐剤等の他の成分が添加してあってもよい。
本発明にかかる形質転換細胞は、前述の通り、本発明にかかるベクターを細胞に導入することにより調製することができる。また、本発明にかかる形質転換細胞の標品には、当該細胞の保存、培養に必要な培地、安定剤、保存剤、防腐剤等の他の成分が添加又は付属してあってもよい。
本発明にかかる「使用説明書」は、前記ベクターや形質転換細胞を本発明の方法に利用するための説明書である。説明書は、例えば、本発明の方法の実験手法や実験条件、及び本発明の標品に関する情報(例えば、ベクターの塩基配列やクローニングサイト等が示されているベクターマップ等の情報、形質転換細胞の由来、性質、当該細胞の培養条件等の情報)を含むことができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<会合誘導タンパク質のスクリーニング1>
タンパク質間相互作用を検出するための系を構築するにあたり、図1及び図2に記載の概念に基づき、図3及び図4に記載の方法にて、本発明にかかる「会合誘導タンパク質」として機能するタンパク質の探索を行った。すなわち、単量体アザミグリーン1(monomeric Azami Green 1、mAG1)と融合させた場合には細胞内にて拡散して存在し(図4 参照)、一方、多量化能を有する蛍光タンパク質と融合させた場合には細胞内にて蛍光輝点(会合体)を形成できるタンパク質(図3 参照)のスクリーニングを行った。
かかるスクリーニングの対象として、先ずPB1(Phox and Bem1p)ドメインに着目し、p62のPB1ドメイン(以後、「p62(PB1)」とも称する)にmAG1を融合させたタンパク質、及びp62(PB1)に多量化能を有する蛍光タンパク質としてAzami Green(AG)を融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、以下に示す方法にて、各々の融合タンパク質による会合、ひいては会合体形成によって生じる蛍光輝点の発生の有無を調べた。なお、AGはホモ4量体化することが知られている。得られた結果を図5に示す。
(プラスミドDNAの調製)
mAG1を融合するためのプラスミドDNAとして、phmAG1−MCLinker(Amalgaam有限会社製)を用いた。
また、AGを融合するためのプラスミド(phAG−MCLinker)の作製においては、先ずコドンをヒト化したAzami Green(AG)遺伝子(配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる領域をコードするDNA(配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA)を人工的に合成した。下記プライマーセットを用いて、人工的に合成した、コドンをヒト化したAG(hAG)遺伝子を鋳型としてPCRにて増幅した
hAGフォワードプライマー1;5’−CTAGCTAGCATTGCCACCATGGTGAGCGTGATCAAGCCCGAG−3’ (配列番号:57)
hAGリバースプライマー1;5’−ACTACCGGTCTTGGCCTGGCTGGGCAGCATGCTGTACC−3’ (配列番号:58)
そして、得られた増幅産物をNheIとAgeIにて切断し、同じ制限酵素にて処理したphmAG1−MCLinkerに挿入することにより、phAG−MCLinkerを作製した。
さらに、phmAG1−p62(PB1)及びphAG−p62(PB1)の作製においては、先ずp62のPB1ドメイン(配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
p62(PB1)フォワードプライマー1;5’−AAGAATTCGATGGCGTCGCTCACCGTGAAGGCCTACCTTCTGGGC−3’ (配列番号:59)
p62(PB1)リバースプライマー1;5’−AATTGGCGGCCGCTTATTTCTCTTTAATGTAGATTCGGAAGATGTC−3’ (配列番号:60)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとNotIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MCLinker及びphmAG1−MCLinkerに挿入することにより、phAG−p62(PB1)及びphmAG1−p62(PB1)を各々作製した。
(培養細胞への遺伝子導入)
phAG−p62(PB1)及びphmAG1−p62(PB1)を導入する培養細胞としてHeLaS3細胞を用いた。なお、HeLaS3細胞は、10%FBS(EQUITECH社製)を含有するDMEM低グルコース(DMEM Low glucose、SIGMA ALDRICH社製)にて培養した。また、かかるHeLaS3細胞を遺伝子導入の前日に35mmガラスベースディッシュ(旭硝子社製)に播種した。そして、遺伝子導入の際には、OptiMEM(Life Technologies社製)にphAG−p62(PB1)又はphmAG1−p62(PB1)1μgを希釈し、ポリフェクト(登録商標)トランスフェクション試薬(PolyFect(R)Transfection Reagent、QIAGEN社製)を10μl添加し、攪拌した。次いで、さらに培養液600μlと混合した後、HeLaS3細胞に添加し、22時間後に観察した。
(遺伝子導入細胞の観察)
遺伝子導入処理を施したHeLaS3細胞は、ハンクス平衡塩液(Hanks’Balanced Salt Solutions、Life Technologies社製)及び20mM HEPES(同仁化学社製)からなるpH7.4緩衝液中にて、IX−71倒立顕微鏡(オリンパス社製)、U−MGFPHQフィルター(オリンパス社製)、ORCA−ERデジタルカメラ(浜松ホトニクス社製)を用いて観察した。
図5に示した結果から明らかなように、p62(PB1)はmAG1を融合させた場合には細胞内で拡散状態にて存在していた。一方、多量化能を有する蛍光タンパク質であるAGを融合させた場合には細胞内において蛍光輝点が検出され、p62(PB1)及びAGからなる融合タンパク質どうしは会合し、蛍光輝点を形成していることが明らかになった。従って、p62のPB1ドメインはそれ自身では会合能を有していないが、多量化能を有する蛍光タンパク質と融合した場合には会合体(蛍光輝点)を形成する性質であることが明らかになり、本発明にかかる会合誘導タンパク質として好適に用いることができることが示唆された。
(実施例2)
<タンパク質間相互作用の検出1>
p62のPB1ドメインが、本発明にかかる会合誘導タンパク質として好適に用いることができることを実証するため、すなわち図1及び2に記載のモデルにp62のPB1ドメインが適用できることを実証するため、薬剤添加により相互作用を誘発することが可能なタンパク質を用いて、以下に示す方法にて試験した。得られた結果を図6〜8に示す。
なお、実施例2において用いたmTORタンパク質のFRBドメイン(「mTOR(FRB)」又は「mTOR(FRB domain)」とも称する)とFKBP12タンパク質とは、ラパマイシン(rapamycin)の存在下において相互作用することが知られている(Chen J ら、Proc Natl Acad Sci U S A.、1995年5月23日、92巻11号、4947〜4951ページ 参照)。
(プラスミドDNAの調製)
AGを融合するためのプラスミド(phAG−MNLinker)の作製においては、先ずコドンをヒト化したAzami Green(AG)遺伝子を下記プライマーセットを用いて、phAG−MCLinkerを鋳型としてPCRにて増幅した
hAGフォワードプライマー2;5’−GGACCGGTATGGTGAGCGTGATCAAGCCCGAG−3’ (配列番号:61)
hAGリバースプライマー2;5’−TTTCTAGATCACTTGGCCTGGCTGGGCAGCATGC−3’ (配列番号:62)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MNLinker(Amalgaam有限会社製)に挿入することにより、phAG−MNLinkerを作製した。
また、p62(PB1)を融合するためのプラスミド(pp62(PB1)−MNLinker)の作製においては、先ずp62のPB1ドメイン(配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
p62(PB1)フォワードプライマー2;5’−GGGACCGGTATGGCGTCGCTCACCGTGAAGGCCTACCTTC−3’ (配列番号:63)
p62(PB1)リバースプライマー2;5’−ACCTCTAGATTATTTCTCTTTAATGTAGATTCGGAAGATG−3’ (配列番号:64)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MNLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−MNLinkerを作製した。
さらに、p62(PB1)を融合するためのプラスミド(pp62(PB1)−MCLinker)の作製においては、先ずp62のPB1ドメイン(配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNA)を、pp62(PB1)−MNLinkerを鋳型として、下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
p62(PB1)フォワードプライマー3;5’−TAGCGCTAGCATTGCCACCATGGCGTCGCTCACCGTGAAGGCCTACCTTC−3’ (配列番号:65)
p62(PB1)リバースプライマー3;5’−AAAACCGGTTTTCTCTTTAATGTAGATTCGGAAGATG−3’ (配列番号:66)
そして、得られた増幅産物をNheIとAgeIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−MCLinkerを作製した。
また、pmTOR(FRB domain)−hAGの作製においては、先ずmTORのFRBドメイン(mTORタンパク質の2025〜2114アミノ酸からなる領域、配列番号:22に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:21に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
mTOR(FRB)フォワードプライマー;5’−GCCGAATTCGGCCACCATGGAGATGTGGCATGAAGGCCTGGAAGAGGCATCTCG−3’ (配列番号:67)
mTOR(FRB)リバースプライマー;5’−GGGCTCGAGCCCTGCTTTGAGATTCGTCGGAACACATGATAATAGAGGTCCC−3’ (配列番号:68)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MNLinkerに挿入することにより、pmTOR(FRB domain)−hAGを作製した。なお、pmTOR(FRB domain)−hAGは、mTOR(FRB)とAGタンパク質とからなる融合タンパク質(「mTOR(FRB)−AG」とも称する)をコードしている。
さらに、pp62(PB1)−FKBP12の作製においては、先ずFKBP12(全長、配列番号:24に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:23に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
FKBP12フォワードプライマー;5’−GCCGAATTCGATGGGAGTGCAGGTGGAAACC−3’ (配列番号:69)
FKBP12リバースプライマー;5’−GGGCTCGAGTTATTCCAGTTTTAGAAGCTCCA−3’ (配列番号:70)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したpp62(PB1)−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−FKBP12を作製した。なお、pp62(PB1)−FKBP12は、p62(PB1)とFKBP12タンパク質とからなる融合タンパク質(「p62(PB1)−FKBP12」とも称する)をコードする。
また、phAG−FKBP12の作製においては、先ずphAG−MCLinkerをNheIとAgeIにて切断することにより、hAG1遺伝子を調製した。次いで、同じ制限酵素で処理してp62(PB1)領域を切り出したpp62(PB1)−FKBP12に、hAG1遺伝子を挿入することにより、phAG−FKBP12を作製した。
さらに、phmAG1−FKBP12の作製においては、先ずphmAG1−MCLinkerをNheIとAgeIにて切断することにより、hmAG1遺伝子を調製した。次いで、同じ制限酵素で処理してp62(PB1)領域を切り出したpp62(PB1)−FKBP12に、hmAG1遺伝子を挿入することにより、phmAG1−FKBP12を作製した。なお、phmAG1−FKBP12は、mAG1タンパク質とFKBP12タンパク質とからなる融合タンパク質(「mAG1−FKBP12」とも称する)をコードする。
さらに、pmTOR(FRB domain)−p62(PB1)の作製においては、先ずpp62(PB1)−MNLinkerをAgeIとXbaIにて切断することにより、p62(PB1)遺伝子を調製した。次いで、同じ制限酵素で処理してhAG領域を切り出したpmTOR(FRB domain)−hAGに挿入することにより、pmTOR(FRB domain)−p62(PB1)を作製した。なお、pmTOR(FRB domain)−p62(PB1)は、mTOR(FRB)とp62(PB1)とからなる融合タンパク質(「mTOR(FRB)−p62(PB1)」とも称する)をコードする。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した
pmTOR(FRB domain)−hAGとpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ
phAG−FKBP12とpmTOR(FRB domain)−p62(PB1)との組み合わせ
phmAG1−FKBP12とpmTOR(FRB domain)−p62(PB1)との組み合わせ
また、遺伝子導入細胞の観察も実施例1に記載の方法と同様の方法にて行った。そして、100nM rapamycin(メルク社製)添加前と添加300秒後に蛍光画像を撮影した。
図6に示した結果から明らかなように、rapamycin添加前ではmTOR(FRB)−AGは拡散して存在していたが(図6左側のパネル参照)、添加後の細胞においては蛍光輝点が検出された(図6右側のパネル参照)。また、図7に示した結果から明らかなように、rapamycin添加前ではAG−FKBP12は拡散して存在していたが(図7上部のパネル参照)、添加後の細胞においては蛍光輝点が検出された(図7下部のパネル参照)。従って、rapamycin依存的なmTOR(FRB)とFKBP12タンパク質との相互作用により、自発的にmTOR(FRB)−AGとp62(PB1)−FKBP12とが会合し、またAG−FKBP12とmTOR(FRB)−p62(PB1)とが会合し、各々蛍光輝点が形成されることが明らかになった。
一方、図8に示した結果から明らかなように、蛍光タンパク質としてmAG1を用いた場合には、rapamycin添加後の細胞において蛍光輝点は検出されず、rapamycin依存的な会合体の形成は観察されなかった。従って、多量化能を有する蛍光タンパク質と会合誘導タンパク質とを組み合わせて用いなければ、タンパク質間相互作用によって会合体は形成されず、蛍光輝点は検出されないことが明らかになり、図1及び2に記載のモデルは実施可能であることが実証された。
(実施例3)
<タンパク質間相互作用の検出2>
図1及び2に記載のモデルにp62のPB1ドメインが適用できることを実証するため、前記mTORのFRBドメインとFKBP12とを用いて、以下に示す方法にて試験した。得られた結果を図9〜11に示す。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例2に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した。そして、100nM rapamycin(メルク社製)添加前と添加300秒後に蛍光画像を撮影した。
pmTOR(FRB domain)−hAGとpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hmAG1とpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hAGとpp62(PB1_nc)−FKBP12との組み合わせ。
(プラスミドDNAの調製)
pmTOR(FRB domain)−hmAG1は、実施例2に記載の方法と同様の方法にて、pmTOR(FRB domain)−hAGから、hAGをコードするDNAを切り出して、代わりにhmAG1をコードするDNAを挿入することにより、調製した。
また、pp62(PB1_nc)−FKBP12は、pp62(PB1)−FKBP12を鋳型として、AMAP複数部位特異的変異導入キット(AMAP(TM) Multi Site−directed Mutagenesis Kit、Amalgaam有限会社製)を用いて、添付の使用説明書に従って、下記プライマーにより変異を導入することにより調製した。
配列番号:154に記載のDNA配列からなるプライマー:5’−GCTTCCAGGCGCACTACCGCGCTGAGCGCGGGGACTTGGTTGCCTTTTC−3’。なお、p62(PB1_nc)は、p62(PB1)同士の相互作用が生じる界面に2アミノ酸の変異を導入し、会合誘導能を解消した変異体である。
図9に示した結果から明らかなように、実施例2にて示した結果同様に、rapamycin添加前ではmTOR(FRB)−AGは拡散して存在していたが(図中上部パネル参照)、添加後の細胞においては蛍光輝点が検出された(図中下部パネル参照)。
一方、図10に示した結果から明らかなように、実施例2にて示した結果同様に、蛍光タンパク質としてmAG1を用いた場合には、rapamycin添加後の細胞においても蛍光輝点は検出されず、rapamycin依存的な会合体の形成は観察されなかった。
さらに、図11に示した結果から明らかなように、p62(PB1)の代わりに、ホモ多量体を形成することができなくなった変異体であるp62(PB1_nc)を用いた場合においても、rapamycin添加後の細胞においても蛍光輝点は検出されず、rapamycin依存的な会合体の形成は観察されなかった。
従って、多量化能を有する蛍光タンパク質と会合誘導タンパク質とを組み合わせて用いなければ、タンパク質間相互作用によって会合体は形成されず、蛍光輝点は検出されないことが明らかになり、図1及び2に記載のモデルは実施可能であることが実証された。
なお、かかる本発明のタンパク質間相互作用の検出方法は、タンパク質間相互作用が発生した際に限り、自発的に蛍光輝点が形成される点で、従来のタンパク質間相互作用の検出方法とは全く異なる方法である。
(実施例4)
<会合誘導タンパク質のスクリーニング2>
p62(PB1)と同様の性質を有する会合誘導タンパク質を見出すために、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、スクリーニングを行った。
このようなスクリーニングの対象として、PB1ドメインの他にSAMドメインに着目し、各タンパク質由来のPB1ドメイン若しくはSAMドメインにmAG1を融合させたタンパク質、又は各タンパク質由来のPB1ドメイン若しくはSAMドメインに多量化能を有する蛍光タンパク質としてAGを融合させたタンパク質を培養細胞内に発現させ、以下に示す方法にて、各々の融合タンパク質による会合、ひいては会合によって生じる蛍光輝点の発生の有無を調べた。得られた結果を図12〜15に示す。
(プラスミドDNAの調製)
各タンパク質由来のPB1ドメイン又はSAMドメインを、蛍光タンパク質のC末端側にフレキシブルリンカーを介して融合させて発現させるべく、mAG1を融合するためのプラスミドとしてphmAG1−MCLinkerを用い、AGを融合するためのプラスミドとしてphAG−MCLinkerを用いた。
すなわち、phmAG1−MEK5(PB1)及びphAG−MEK5(PB1)の作製においては、先ずMEK5のPB1ドメイン(MEK5タンパク質の16〜109アミノ酸からなる領域、配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなる領域、「MEK5(PB1)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
MEK5(PB1)フォワードプライマー;5’−CCGAATTCGGTGCTGGTAATTCGCATCAAGATCCCAAA−3’ (配列番号:71)
MEK5(PB1)リバースプライマー;5’−TTCTCGAGTTAGCAGGCTCTTGGAAATATCTGCAG−3’ (配列番号:72)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−MEK5(PB1)及びphAG−MEK5(PB1)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とMEK5(PB1)とからなる融合タンパク質(「mAG1−MEK5(PB1)」とも称する)及びAGタンパク質とMEK5(PB1)とからなる融合タンパク質(「AG−MEK5(PB1)」とも称する)をコードしている。
また、phmAG1−Nbr1(PB1)及びphAG−Nbr1(PB1)の作製においては、先ずNbr1のPB1ドメイン(Nbr1タンパク質の4〜85アミノ酸からなる領域、配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなる領域、「Nbr1(PB1)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:7に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Nbr1(PB1)フォワードプライマー;5’−AAGAATTCGGCAGGTTACTCTAAATGTGACTTTTAAA−3’ (配列番号:73)
Nbr1(PB1)リバースプライマー;5’−TTCTCGAGTTACCCTTCGTGGACTTGCATCTGCAGTT−3’ (配列番号:74)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−Nbr1(PB1)及びphAG−Nbr1(PB1)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とNbr1(PB1)とからなる融合タンパク質(「mAG1−Nbr1(PB1)」とも称する)及びAGタンパク質とNbr1(PB1)とからなる融合タンパク質(「AG−Nbr1(PB1)」とも称する)をコードしている。
さらに、phmAG1−PKCiota(PB1)及びphAG−PKCiota(PB1)の作製においては、先ずPKCiotaのPB1ドメイン(PKCiotaタンパク質の16〜99アミノ酸からなる領域、配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる領域、「PKCiota(PB1)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
PKCiota(PB1)フォワードプライマー;5’−AAGAATTCGCAGGTCCGGGTGAAAGCCTACTACCGCG−3’
(配列番号:75)
PKCiota(PB1)リバースプライマー18;5’−TTCTCGAGTTAACAAGGGAACACATGAATCAAGAGTTCAG−3’ (配列番号:76)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−PKCiota(PB1)及びphAG−PKCiota(PB1)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とPKCiota(PB1)とからなる融合タンパク質(「mAG1−PKCiota(PB1)」とも称する)及びAGタンパク質とPKCiota(PB1)とからなる融合タンパク質(「AG−PKCiota(PB1)」とも称する)をコードしている。
また、phmAG1−TFG(PB1)及びphAG−TFG(PB1)の作製においては、先ずTFGのPB1ドメイン(TFGタンパク質の10〜91アミノ酸からなる領域、配列番号:12に記載のアミノ酸配列からなる領域、「TFG(PB1)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:11に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
TFG(PB1)フォワードプライマー1;5’−AACTGCAGCAAAGCTAATCATCAAAGCTCAACTTGGGGA−3’ (配列番号:77)
TFG(PB1)リバースプライマー1;5’−TTAAGCTTTTAATTAACAAATAATGTCAGTTTCAGTAT−3’ (配列番号:78)
そして、得られた増幅産物をPstIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−TFG(PB1)及びphAG−TFG(PB1)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とTFG(PB1)とからなる融合タンパク質(「mAG1−TFG(PB1)」とも称する)及びAGタンパク質とTFG(PB1)とからなる融合タンパク質(「AG−TFG(PB1)」とも称する)をコードしている。
さらに、phmAG1−TEL(SAM)及びphAG−TEL(SAM)の作製においては、先ずTELのSAMドメイン(TFGタンパク質の38〜124アミノ酸からなる領域、配列番号:14に記載のアミノ酸配列からなる領域、「TEL(SAM)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:13に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
TEL(SAM)フォワードプライマー;5’−AAAAGGATCCGCCACCATGCCTCGAGCGCTCAGGATGGAGGAA−3’ (配列番号:79)
TEL(SAM)リバースプライマー;5’−AAAAAAGCTTTTACCTCTGCTTCAGAATATGCTGAAGGAGTT−3’ (配列番号:80)
そして、得られた増幅産物をBamHIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−TEL(SAM)及びphAG−TEL(SAM)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とTEL(SAM)とからなる融合タンパク質(「mAG1−TEL(SAM)」とも称する)及びAGタンパク質とTEL(SAM)とからなる融合タンパク質(「AG−TEL(SAM)」とも称する)をコードしている。
また、phmAG1−EphB2(SAM)及びphAG−EphB2(SAM)の作製においては、先ずEphB2のSAMドメイン(EphB2タンパク質の905〜981アミノ酸からなる領域、配列番号:16に記載のアミノ酸配列からなる領域、「EphB2(SAM)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:15に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
EphB2(SAM)フォワードプライマー;5’−AAAAGGATCCGCCACCATGCTGGACCGCACGATCCCCGA−3’ (配列番号:81)
EphB2(SAM)リバースプライマー;5’−AAAAAAGCTTTTAAATCTGGTTCATCTGCGCCCG−3’ (配列番号:82)
そして、得られた増幅産物をBamHIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−EphB2(SAM)及びphAG−EphB2(SAM)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とEphB2(SAM)とからなる融合タンパク質(「mAG1−EphB2(SAM)」とも称する)及びAGタンパク質とEphB2(SAM)とからなる融合タンパク質(「AG−EphB2(SAM)」とも称する)をコードしている。
さらに、phmAG1−DGKdelta(SAM)及びphAG−DGKdelta(SAM)の作製においては、先ずDGKdeltaのSAMドメイン(DGKdeltaタンパク質の1097〜1164アミノ酸からなる領域、配列番号:18に記載のアミノ酸配列からなる領域、「DGKdelta(SAM)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:17に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
DGKdelta(SAM)フォワードプライマー;5’−AAAAGGTACCGCCACCATGCCGGTTCACCTCTGGGGGACA−3’ (配列番号:83)
DGKdelta(SAM)リバースプライマー;5’−AAAAAAGCTTTTAGCTGCGGCTCAGCTCCTTGAT−3’ (配列番号:84)
そして、得られた増幅産物をKpnIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−DGKdelta(SAM)及びphAG−DGKdelta(SAM)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とDGKdelta(SAM)とからなる融合タンパク質(「mAG1−DGKdelta(SAM)」とも称する)及びAGタンパク質とDGKdelta(SAM)とからなる融合タンパク質(「AG−DGKdelta(SAM)」とも称する)をコードしている。
また、phmAG1−Tankyrase(SAM)及びphAG−Tankyrase(SAM)の作製においては、先ずTankyraseのSAMドメイン(Tankyraseタンパク質の952〜1078アミノ酸からなる領域、配列番号:20に記載のアミノ酸配列からなる領域、「Tankyrase(SAM)」とも称する)をコードするDNA(配列番号:19に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Tankyrase(SAM)フォワードプライマー;5’−AAAAGGATCCGCCACCATGCTGATAGATGCCATGCCCCCAGA−3’ (配列番号:85)
Tankyrase(SAM)リバースプライマー;5’−AAAAAAGCTTTTAAATTCGAATGACATTGTATCTGTTGAAGA−3’ (配列番号:86)
そして、得られた増幅産物をBamHIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmAG1−MCLinker及びphAG−MCLinkerに挿入することにより、phmAG1−Tankyrase(SAM)及びphAG−Tankyrase(SAM)を各々作製した。なお、これらプラスミドDNAは各々、mAG1タンパク質とTankyrase(SAM)とからなる融合タンパク質(「mAG1−Tankyrase(SAM)」とも称する)及びAGタンパク質とTankyrase(SAM)とからなる融合タンパク質(「AG−Tankyrase(SAM)」とも称する)をコードしている。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
プラスミドDNAは、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した。また、遺伝子導入細胞の観察も実施例1に記載の方法と同様の方法にて行った。
図13、14及び15に示した結果から明らかなように、PKCiota(PB1)、TFG(PB1)、TEL(SAM)、DGKdelta(SAM)及びTankyrase(SAM)は、mAG1を融合させた場合には拡散し、AGを融合させた場合には蛍光輝点(会合体)を形成した。なお、AG−PKCiota(PB1)を発現させた細胞においては、蛍光輝点を形成する細胞と形成しない細胞とが混在していたが、AGタンパク質を含むその他の融合タンパク質を発現する細胞においては、全ての細胞にて蛍光輝点が検出された。
一方、図12及び15に示した結果から明らかなように、MEK5(PB1)、Nbr1(PB1)及びEphB2(SAM)は、mAG1を融合させた場合にも、AGを融合させた場合においても、蛍光輝点の形成を観察することができなかった。
従って、TFG(PB1)、TEL(SAM)、DGKdelta(SAM)及びTankyrase(SAM)は、本発明にかかる会合誘導タンパク質として利用できることが明らかになった。
(実施例5)
<タンパク質間相互作用の検出3>
実施例4において選択した会合誘導タンパク質が、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法に好適に用いることができることを実証するため、以下に示す実施例2に記載の方法と同様の方法にて試験した。得られた結果を図16に示す。
(プラスミドDNAの調製)
pFKBP12−TFG(PB1)の作製においては、先ずTFG(PB1)遺伝子をphAG−TFG(PB1)から下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
TFG(PB1)フォワードプライマー2;5’−AAACCGGTAAGCTAATCATCAAAGCTCAACTT−3’ (配列番号:87)
TFG(PB1)リバースプライマー2;5’−TTTCTAGATTAATTAACAAATAATGTCAGTTTCAGTAT−3’ (配列番号:88)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してp62(PB1)領域を切り出したpFKBP12−p62(PB1)に挿入することにより、pFKBP12−TFG(PB1)を作製した。なお、pFKBP12−TFG(PB1)はFKBP12タンパク質とTFG(PB1)とからなる融合タンパク質(「FKBP12−TFG(PB1)」とも称する)をコードしている。
また、pFKBP12−TEL(SAM)の作製においては、先ずTEL(SAM)遺伝子をphAG−TEL(SAM)から下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した。
TEL(SAM)フォワードプライマー2;5’−AAAAACCGGTCCTCGAGCGCTCAGGATGGAGGAA−3’ (配列番号:89)
TEL(SAM)リバースプライマー2;5’−AAAATCTAGATTACCTCTGCTTCAGAATATGCTGAAGGAGTT−3’ (配列番号:90)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してp62(PB1)領域を切り出したpFKBP12−p62(PB1)に挿入することにより、pFKBP12−TEL(SAM)を作製した。なお、pFKBP12−TEL(SAM)はFKBP12タンパク質とTEL(SAM)とからなる融合タンパク質(「FKBP12−TEL(SAM)」とも称する)をコードしている。
さらに、pFKBP12−DGKdelta(SAM)の作製においては、先ずDGKdelta(SAM)遺伝子をphAG−DGKdelta(SAM)から下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
DGKdelta(SAM)フォワードプライマー2;5’−AAAAACCGGTCCGGTTCACCTCTGGGGGACAGA−3’ (配列番号:91)
DGKdelta(SAM)リバースプライマー2;5’−AAAATCTAGATTAGCTGCGGCTCAGCTCCTTGAT−3’ (配列番号:92)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してp62(PB1)領域を切り出したpFKBP12−p62(PB1)に挿入することにより、pFKBP12−DGKdelta(SAM)を作製した。なお、pFKBP12−DGKdelta(SAM)はFKBP12タンパク質とDGKdelta(SAM)とからなる融合タンパク質(「FKBP12−DGKd(PB1)」とも称する)をコードしている。
また、pFKBP12−Tankyrase(SAM)の作製においては、先ずTankyrase(SAM)遺伝子をphAG−Tankyrase(SAM)から下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Tankyrase(SAM)フォワードプライマー2;5’−AAAAACCGGTCTGATAGATGCCATGCCCCCAGA−3’ (配列番号:93)
Tankyrase(SAM)リバースプライマー2;5’−AAAATCTAGATTAAATTCGAATGACATTGTATCTGTTGAAGA−3’ (配列番号:94)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してp62(PB1)領域を切り出したpFKBP12−p62(PB1)に挿入することにより、pFKBP12−Tankyrase(SAM)を作製した。なお、pFKBP12−Tankyrase(SAM)はFKBP12タンパク質とTankyrase(SAM)とからなる融合タンパク質(「FKBP12−Tankyrase(SAM)」とも称する)をコードしている。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した
pmTOR(FRB domain)−hAGとpFKBP12−TFG(PB1)との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hAGとpFKBP12−TEL(SAM)との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hAGとpFKBP12−DGKdelta(SAM)との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hAGとpFKBP12−Tankyrase(SAM)との組み合わせ。
また、遺伝子導入細胞の観察も実施例1に記載の方法と同様の方法にて行った。そして、100nM rapamycin(メルク社製)を添加する前に各培養細胞において蛍光輝点が検出されないことを確認し、その添加300秒後に蛍光画像を撮影した。
図16に示した結果から明らかように、いずれの融合タンパク質を発現させた場合においても、rapamycin添加前ではmTOR(FRB domain)−AGは拡散して存在していたが(図示せず)、添加後のいずれの細胞においては蛍光輝点が検出された。すなわち、rapamycin依存的なmTOR(FRB domain)とFKBP12タンパク質との相互作用により、自発的にmTOR(FRB domain)−AGとFKBP12−TEL(SAM)等とが会合し、蛍光輝点が形成されることが明らかになった。
従って、p62(PB1)のみならず、TEL(SAM)等といった他のタンパク質由来の他の種類のドメインを会合誘導タンパク質として用いても、タンパク質間相互作用は検出できることが明らかになった。また、かかる結果により、本発明にかかる会合誘導タンパク質のスクリーニング方法として、図3及び4に記載のモデルは実施可能であることが実証された。
(実施例6)
<タンパク質間相互作用の検出3>
本発明のタンパク質相互作用の検出方法において、多量化能を有する蛍光タンパク質として、AGタンパク質以外の蛍光タンパク質が適用可能であるかどうかを以下に示す方法にて検証した。得られた結果を図17に示す。
なお、検証した蛍光タンパク質は、クサビラ オレンジ1(Kusabira Orange1、KO1)、二量体ケイマ−レッド(dKeima)及びキクメ グリーン−レッド(Kikume Green−Red、KikGR)であり、各々、ホモ2量体化、ホモ2量体化及びホモ4量体化することが知られている。
(プラスミドDNAの調製)
pmTOR(FRB domain)−hKO1の作製においては、先ずhKO1遺伝子をphKO1−MN1(Amalgaam有限会社製)から下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
hKO1フォワードプライマー;5’−AAAAACCGGTATGGTGAGCGTGATCAAGCCCGAG−3’ (配列番号:95)
hKO1リバースプライマー;5’−AAAATCTAGATTAGCAGTGGGCCACGGCGTCCTCC−3’ (配列番号:96)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してhAG領域を切り出したpmTOR(FRB domain)−hAGに挿入することにより、pmTOR(FRB domain)−hKO1を作製した。
また、pmTOR(FRB domain)−hdKeima−Redの作製においては、先ずhdKeima遺伝子をphdKeima−Red−MNLinker(Amalgaam有限会社製)をAgeIとXbaIにて切断することにより調製した。そして、得られたhdKeima遺伝子を、同じ制限酵素で処理してhAG領域を切り出したpmTOR(FRB domain)−hAGに挿入することにより、pmTOR(FRB domain)−hdKeima−Redを作製した。
さらに、pmTOR(FRB domain)−hKikGR1の作製においては、先ずhKikGR1遺伝子をphKikGR1−MNLinker(Amalgaam有限会社製)をAgeIとXbaIにて切断することにより調製した。そして、得られたhKikGR1遺伝子を、同じ制限酵素で処理してhAG領域を切り出したpmTOR(FRB domain)−hAGに挿入することにより、pmTOR(FRB domain)−phKikGR1を作製した。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した
pmTOR(FRB domain)−hKO1とpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hdKeima−Redとpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hKikGR1とpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ
pmTOR(FRB domain)−hAGとpp62(PB1)−FKBP12との組み合わせ。
また、遺伝子導入細胞の観察も実施例1に記載の方法と同様の方法にて行った。なお、KO1の観察は励起フィルター(BP520−540HQ、Olympus社)、ダイクロイックミラー(DM545HQ、Olympus社製)、吸収フィルター(BA555−600HQ、Olympus社製)を用いた。dKeimaの観察は励起フィルター(440AF21、OMEGA OPTICAL社製)、ダイクロイックミラー(455DRLP、OMEGA OPTICAL社製)、吸収フィルター(610ALP、OMEGA OPTICAL社製)を用いた。そして、100nM rapamycin(メルク社製)を添加する前とその添加300秒後に蛍光画像を撮影した。
図17に示した結果から明らかなように、AGタンパク質を用いた場合と同じく、試した全ての蛍光タンパク質において、rapamycin添加前では、各蛍光タンパク質を融合したmTOR(FRB)は拡散して存在していたが、添加後は蛍光輝点(会合体)を形成した。従って、本発明において、AGタンパク質のみならず、KO1タンパク質等といった他の多量化能を有する蛍光タンパク質を用いても、タンパク質間相互作用は検出できることが実証された。
(実施例7)
<多量化能を有する蛍光タンパク質のスクリーニング1>
本発明のタンパク質相互作用の検出方法において、多量化能を有する蛍光タンパク質として、AG、KO1、dKeima及びKikGR以外の蛍光タンパク質が適用可能であるかどうかを以下に示す方法にて検証した。すなわち、単量体クサビラオレンジ2(monomeric Kusabira−Orange 2、mKO2)と会合誘導タンパク質であるp62(PB1)とを融合させ、細胞内において発現させた場合に、図3に示すような会合体(蛍光輝点)が形成されるかどうかを調べた。得られた結果を図18に示す。
先ず実施例1に記載の「phmAG1−p62(PB1)及びphAG−p62(PB1)」と同様に、p62(PB1)をコードするDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物をEcoRIとNotIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphmKO2−MCLinker(Amalgaam有限会社製)に挿入することにより、phmKO2−p62(PB1)を作製した。そして、phmKO2−p62(PB1)は、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に導入した。また、遺伝子導入細胞の観察も実施例6に記載の方法と同様の方法にて行った。得られた結果を図18に示す。
図18に示した結果から明らかなように、phmKO2−p62(PB1)がコードするタンパク質mKO2−p62(PB1)どうしは会合し、蛍光輝点を形成した。従って、前述のAG、KO1、dKeima及びKikGRといった、ホモ多量体を細胞内において形成することができる蛍光タンパク質のみならず、一般的に単量体蛍光タンパク質と考えられているmKO2も、本発明の方法において、多量化能を有する蛍光タンパク質として利用できることが明らかになった。
(実施例8)
<多量化能を有する蛍光タンパク質のスクリーニング2>
前記AG、KO1、dKeima及びKikGR以外に、ホモ多量体を細胞内において形成することができる蛍光タンパク質として知られているMiCy1、KCy1、dAG(AB)及びdAG(AC)(ホモ2量体化できる蛍光タンパク質)並びにTGuv、Momiji、COR3.01、COR5及びDsRed2(ホモ4量体化できる蛍光タンパク質)についても、本発明のタンパク質相互作用の検出方法に利用できることを下記方法にて確認した。
また、mKO2のような一般的に単量体蛍光タンパク質と考えられていながらも、本発明の方法に利用できる蛍光タンパク質を見出すべく、下記方法にてスクリーニングを行った。
(タンパク質間相互作用の検出方法)
実施例5及び6に記載の方法と同様の方法にて、p62(PB1)−FKBP12、FKBP12−DGKd(SAM)、FKBP12−TEL(SAM)又はFKBP12−Tankyrase(SAM)と、表1に記載の各蛍光タンパク質を融合させたmTOR(FRB)とを、HeLaS3細胞内にて発現させ、ラパマイシン添加後の蛍光輝点(会合体)の形成の程度を評価した。なお、mTOR(FRB)と各蛍光タンパク質とからなる融合タンパク質をコードするプラスミドDNAは、実施例2に記載の方法と同様の方法にて適宜調製した。また、FKBP12−Tankyrase(SAM)において、mKO2、mKeima、mMiCy1、mKO1、MiCy1及びTGuvの組み合わせに関しては、293T細胞に遺伝子導入を行い試験した。すなわち、293T細胞は、10%FBS(EQUITECH社製)を含有するDMEM高グルコース(DMEM High glucose、SIGMA ALDRICH社製)にて培養した。また、293T細胞を前記プラスミドDNAを導入する6時間前に8ウェルチャンバー(nunc社製)に播種した。そして、遺伝子導入の際には、30μlのOptiMEM(Life Technologies社製)に、FKBP12−Tankyrase(SAM)をコードするプラスミドDNA200ngと、前記蛍光タンパク質及びmTOR(FRB)からなる融合タンパク質をコードするプラスミドDNA各200ngとを希釈し、TurboFectトランスフェクション試薬(TurboFect Transfection Reagent、Thermo Scientific社製)を1.2μl添加し、攪拌した。次いで、さらに培養液300μlを混合した後、293T細胞に添加し、48時間後に観察した。得られた結果を表1に示す。表1中、5割以上のHeLaS3細胞で蛍光輝点が観察された組み合わせを「+++」にて示し、5割以下のHeLaS3細胞で蛍光輝点が観察された組み合わせを「++」にて示し、HeLaS3細胞よりもタンパク質発現量の高い293T細胞で蛍光輝点が観察された組み合わせを「+」にて示す。
表1に示した結果から明らかなように、ホモ多量体を細胞内において形成することができる蛍光タンパク質は、いずれも本発明の方法に利用できることが確認された。また、TEL(SAM)及びTankyrase(SAM)の結果から、蛍光タンパク質の多量化能が高いほど、タンパク質間相互作用による蛍光輝点(会合体)が形成され易い傾向にあることが見受けられる。さらに、表1に示す通り、mKO2以外にも、一般的に単量体蛍光タンパク質と考えられているmKeima、mMiCy1、mKO1及びmKikGR1についても、本発明の方法に利用できることが明らかになった。
(実施例9)
<タンパク質間相互作用の検出5>
実施例6〜8にて、本発明の方法に利用できることが確認された多量化能を有する蛍光タンパク質について、会合誘導タンパク質として、TFG(PB1)と組み合わせて用いても、タンパク質間相互作用を検出できることを、以下に示す方法にて確認した。得られた結果を表2に示す。
(タンパク質間相互作用の検出方法)
実施例5及び6に記載の方法と同様の方法にて、TFG(PB1)と、mKikGR1、dAG(AC)、Momiji、KikGR、AG,COR3.01、COR5又はDsRed2を融合させたmTOR(FRB)とを、HeLaS3細胞内にて発現させ、ラパマイシン添加後の蛍光輝点(会合体)の形成の程度を評価した。また、実施例8に記載の方法と同様の方法にて、TFG(PB1)と、KO1又はdAG(AB)を融合させたmTOR(FRB)とを、293T細胞内にて発現させ、ラパマイシン添加後の蛍光輝点(会合体)の形成の程度を評価した。得られた結果を表2に示す。表2中、5割以下のHeLaS3細胞で蛍光輝点が観察された組み合わせを「++」にて示し、HeLaS3細胞よりもタンパク質発現量の高い293T細胞で蛍光輝点が観察された組み合わせを「+」にて示す。
表2に示した結果から明らかなように、多量化能を有する蛍光タンパク質について、実施例8に示したタンパク質以外の会合誘導タンパク質を組み合わせて用いても、タンパク質間相互作用を検出できることが確認された。
(実施例10)
<タンパク質間相互作用の検出6>
本発明にかかる蛍光輝点(会合体)は、前述の通り、タンパク質間相互作用に起因するものである。そのため、蛍光輝点の蛍光強度は、タンパク質間相互作用の強弱を反映することが考えられる。また、タンパク質間相互作用の検出方法において、該相互作用の強弱を定量化して比較できることは、タンパク質間相互作用の抑制物質(阻害剤)の評価、タンパク質間相互作用を調節する因子の評価に有用である。
そこで、タンパク質間相互作用を誘導する化合物の濃度を変化させ、蛍光輝点(会合体)の蛍光強度が化合物の濃度依存的に変化するか、以下に示す方法にて試験した。
(細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察及び分析)
pmTOR(FRB domain)−hAGとpFKBP12−p62(PB1)とを等量混合し、HeLaS3細胞に実施例1に記載の方法と同様の方法にて導入した。導入してから24時間後に、細胞を回収し、96マイクロウェルオプティカルボトムプレート(Nunc社製)に20000細胞数/ウェルとなるように播種した。そして、播種してから24時間後に、Hoechst33342(Dojindo社製)を5.6μg/mlとなるように観察用緩衝液にて希釈した溶液をプレートに添加し、さらに30分間培養した。その後、D−PBS(−)(和光純薬工業社製)にてプレートを2回洗浄した。次いで、Rapamycinを各濃度に希釈した観察用緩衝液に置換し、15分後、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(4% Paraformaldehyde Phosphate Buffer Solution、和光純薬工業社製)にて固定した。なお、Rapamycinの濃度は0.1nM、0.2nM、0.5nM、1.4nM、4.1nM、12.3nM、37.0nM、111.1nM、333.3nM、1000nMにて各々使用した。そして、作製したサンプルはIN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare社製)を用いて観察を行なった。得られた結果の一部を図19に示す。
また、複数の視野における蛍光画像の解析を行い、各濃度にてRapamycinを添加したウェルを撮影した画像の1細胞あたりの蛍光輝点(会合体)の総輝度(総蛍光強度)を計算し、Rapamycinの濃度との相関を分析した。得られた結果の一部を図20に示す。なお、図20中、X軸は各ウェルに添加したRapamycinの濃度を示し、Y軸は一細胞あたりの蛍光輝点(会合体)の総輝度(総蛍光強度)を示し、ドットは実測値を示す。また、そのドットに付したフィッティングカーブ(曲線)はIgor(R)(WaveMetrics,Inc製)を用い、[Dot Intensity/Cells]=y、[Canc.(nM)]=xとして、式:y=base+(max−base)/[1+(xhalf/x)^rate]にフィッティングさせた関数を表わす。(base=0.0028731、max=0.1823、rate=1.4516、xhalf=46.99)。
図19及び20に示した結果から明らかなように、mTOR(FRB domain)−AGとFKBP12−p62(PB1)とを発現させた細胞に、mTOR(FRB domain)とFKBP12タンパク質との相互作用を誘導する化合物 Rapamycinを添加したところ、添加したRapamycinの濃度依存的に蛍光輝点の蛍光強度が増加することが明らかになり、該濃度依存的にmTOR(FRB domain)−AGとFKBP12−p62(PB1)との会合体が形成されることも示された。
(実施例11)
<タンパク質間相互作用の検出7>
本発明の方法が、タンパク質間相互作用に対する、薬剤の50%効果濃度(EC50)及び50%阻害濃度(IC50)を決定するのに利用できるかどうかを、以下に示す方法にて評価した。
(プラスミドDNAの調製)
実施例2に記載のpmTOR(FRB domain)−hAGとpFucci−S/G2/M Green−Hyg(Amalgaam有限会社製)を用い、定法に沿って、薬剤耐性遺伝子をハイグロマイシンB耐性遺伝子に変換したpmTOR(FRB domain)−hAG_Hygを作製した。
(安定発現細胞株の作製)
実施例1に記載の方法と同様の方法にて、前記pmTOR(FRB domain)−hAG_Hygと、実施例2に記載のpp62(PB1)−FKBP12とをHeLaS3細胞株に導入し、培養した。
また、前記プラスミドDNAをHeLaS3細胞株に導入してから24時間後に、600μg/mL G418(和光純薬製薬社)及び150μg/mL Hygromycin(nacalai tesque社製)を含有する培地に交換した。そして、この培地にて一週間培養して生き残った細胞を、コロニーピックアップ法によりクローン化した。
(遺伝子導入細胞の観察及び分析)
前記クローン化した細胞株を96wellプレートに播種した。そして、その翌日にPBSで2回洗った後、Hoechst33342(Dojindo社製)を含む観察用緩衝液を各ウェルに播種した細胞株に添加し、37℃にて15分間インキュベートすることにより、核染色を行った。
さらに、これら細胞株を観察用緩衝液にて2回洗った後、任意の濃度のRapamycin、又はRapamycin及びFK506を含む観察用緩衝液を各ウェルに添加し、20分間インキュベートした。
なお、Rapamycinの添加濃度は0.39nM、0.78nM、1.56nM、3.13nM、6.25nM、12.50nM、25.00nM、 50.00nM、
100.00nM、200.00nM、400.00nM又は800.00nMである。また、FK506は、FKBP12とRapamycinとの相互作用を競合的に阻害する物質として知られており、本実施例においては、20nM Rapamycinを含む緩衝液にて、0.008μM、0.016μM、0.031μM、0.063μM、0.125μM、0.250μM、0.500μM、1.000μM、2.000μM、4.000μM、8.000μM又は16.000μMとなるように希釈し、各ウェルに添加した。
各種薬剤を添加してインキュベートした後、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(4% Paraformaldehyde Phosphate Buffer Solution、和光純薬工業社製)を各ウェルに添加し、室温で15分間インキュベートすることにより、これら細胞株を固定した。そして、これら細胞株を観察用緩衝液にて3回洗浄した後、各ウェルにつき、蛍光顕微鏡にて3視野の画像を取得した。次いで、それぞれの蛍光画像をiCY(de Chaumont Fら、Nature Methods、6月28日、9号、7巻、690〜696ページ 参照)を用いて解析し、1細胞あたりの蛍光輝点(会合体)の総輝度(総蛍光強度)を計算し、各種薬剤の添加濃度との相関を分析した。Rapamycinのみを添加した結果を図21に示し、Rapamycin及びFK506を添加した結果を図22に示す。
なお、図21及び22中、X軸は細胞株に添加した薬剤濃度を示し、Y軸は一細胞あたりの蛍光輝点(会合体)の総輝度(総蛍光強度)を示し、ドットは実測値を示す。また、そのドットに付したフィッティングカーブ(曲線)はIgor(R)(WaveMetrics,Inc製)を用いて解析した結果を示すものである。
図21に示した結果から明らかなように、mTOR(FRB domain)−AGとp62(PB1)−FKBP12とを安定的に発現させた細胞に、mTOR(FRB domain)とFKBP12タンパク質との相互作用を誘導する化合物 Rapamycinを添加したところ、添加したRapamycinの濃度依存的に蛍光輝点の蛍光強度が増加することが明らかになり、該濃度依存的にmTOR(FRB domain)−AGとp62(PB1)−FKBP12との会合体が形成されることが示された。さらに、図21に示したフィッティングカーブに基づき、f(x)=max+(min−max)/(1+(x/EC50)^hill)にて、mTOR(FRB domain)とFKBP12とのタンパク質間相互作用に対するRapamycinのEC50は3.36nMと算出することができた。
一方、図22に示した結果から明らかなように、FK506をRapamycin存在下で添加したところ、添加したFK506の濃度依存的に蛍光輝点の蛍光強度が減少することが明らかになり、該濃度依存的にmTOR(FRB domain)−AGとp62(PB1)−FKBP12との会合体の形成を阻害することが示された。さらに、図22に示したフィッティングカーブに基づき、f(x)=min+(max−min)/(1+(x/IC50)^hill)にて、RapamycinとFKBP12との相互作用、ひいてはmTOR(FRB domain)とFKBP12とのタンパク質間相互作用に対するFK506のIC50は0.68μMと算出することができた。
(実施例12)
<タンパク質間相互作用の検出8>
実施例10及び11と同様の目的にて、本発明の方法において、タンパク質間相互作用に特異的な阻害剤によって、会合体(蛍光輝点)を構成していた融合タンパク質が分散するかどうか、また当該阻害剤の濃度を変化させ、蛍光輝点の蛍光強度が該阻害剤の濃度依存的に変化するかどうか、以下に示す方法にて試験した。
なお、かかる試験において検出対象としたのは、p53タンパク質とMDM2タンパク質との相互作用であり、また該相互作用の阻害剤として知られているナトリン−3(Nutlin−3)を実施例12において用いた(Vassilev LT ら、Science、2004年2月6日、303号、5659巻、844〜848ページ 参照)。
(プラスミドDNAの調製)
pp62(PB1)−p53の作製においては、先ずp53の一部(p53タンパク質の1〜70アミノ酸からなる領域、配列番号:26に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:25に記載の塩基配列からなるDNA)を、U2OS細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
p53フォワードプライマー;5’−AAGGATCCATGGAGGAGCCGCAGTCAGATCCTAGCGTCG−3’ (配列番号:97)
p53リバースプライマー48;5’−TTGCGGCCGCTTAAGCAGCCTCTGGCATTCTGGGAGCTTCATC−3’ (配列番号:98)
そして、得られた増幅産物をBamHIとNotIにて切断し、同じ制限酵素で処理したpp62(PB1)−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−p53を作製した。
また、phAG−MDM2の作製においては、先ずMDM2の一部(MDM2タンパク質の7〜125アミノ酸からなる領域、配列番号:28に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:27に記載の塩基配列からなるDNA)を、U2OS細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
MDM2フォワードプライマー;5’−AAGGATCCATGTGCAATACCAACATGTCTGTACCTACTGATGGTGC−3’ (配列番号:99)
MDM2リバースプライマー;5’−TTCTCGAGTTAACCTGAGTCCGATGATTCCTGCTGATTG−3’ (配列番号:100)
そして、得られた増幅産物をBamHIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MCLinkerに挿入することにより、phAG−MDM2を作製した。
(細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察及び分析)
pp62(PB1)−p53とphAG−MDM2とを等量混合し、HeLaS3細胞に実施例1に記載の方法と同様の方法にて導入した。導入してから24時間後に、培養液を除き、0.19μM Nutlin−3が含まれた観察用緩衝液を1.5ml入れ、その15分後に蛍光画像を撮影した。その後、観察用緩衝液を除き、0.77μM Nutlin−3が含まれた観察用緩衝液を1.5ml入れ、15分後に再度蛍光画像を撮影した。同様の工程を4.8μM、12μM Nutlin−3についても実施した。得られた結果を図23に示す。また、各濃度にてNutlin−3を添加した細胞を撮影した蛍光画像における、蛍光輝点(会合体)の総輝度を計算し、Nutlin−3の濃度との相関をグラフ化した。得られた結果を図24に示す。なお、図24中、X軸は細胞に添加したNutlin−3の濃度を示し、Y軸は一蛍光画像(一視野)あたりの蛍光輝点の総輝度(総蛍光強度)を示す。
図23に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−p53とAG−MDM2とを細胞内に発現させると蛍光輝点が検出された。そして、同一視野において、p53とMDM2との相互作用に対する阻害剤(Nutlin−3)の添加濃度を段階的に上昇させた結果、蛍光輝点(会合体)は徐々に消失していくことが観察され、該会合体を構成していた融合タンパク質が分散していくことが確認された。また、図24に示した結果から明らかなように、視野内の蛍光輝点の蛍光輝度は阻害剤の濃度に依存して減少した。
(実施例13)
<タンパク質間相互作用の検出9>
実施例11同様に、本発明の方法が、タンパク質間相互作用に特異的な阻害剤のIC50を決定するのに利用できるかどうかを、以下に示す方法にて評価した。
(プラスミドDNAの調製)
先ず、実施例12に記載のphAG−MDM2とpFucci−S/G2/M Green−Hyg(Amalgaam有限会社製)とを用い、定法に沿って、薬剤耐性遺伝子をG418耐性遺伝子からハイグロマイシンB耐性遺伝子に変換したphAG−MDM2_Hygを作製した。
(安定発現細胞株の作製)
次に、前記phAG−MDM2_Hygと、実施例12に記載のpp62(PB1)−p53とをCHO−K1細胞株に導入した。なお、CHO−K1細胞は、10%FBS(EQUITECH社製)を含有するNUTRIENT MIXTURE F−12 HAM(SIGMA ALDRICH社製)にて培養した。
そして、前記プラスミドDNAをCHO−K1細胞株に導入してから24時間後に、100μg/ml G418(和光純薬製薬社)及び200μg/ml Hygromycin(nacalai tesque社製)を含有する培地に交換した。そして、この培地にて一週間培養して生き残った細胞を、限界希釈法により単一クローン化した。
(遺伝子導入細胞の観察及び分析)
前記単一クローン化した細胞株を、実施例11に記載の方法と同様の方法にて、核染色した後、任意の濃度のNutlin−3(CALBIOCHEM社製)を含む観察用緩衝液を各ウェルに添加し、20分間インキュベートした。なお、Nutlin−3は最終濃度、0.2μM、0.3μM、0.6μM、0.9μM、1.6μM、2.6μM、4.3μM、7.2μM、12.0μM、20.0μMになるように調製して添加した。
続いて、実施例11に記載の方法と同様の方法にて、細胞株を固定し、各ウェルにおいて、蛍光顕微鏡に画像を取得し、それぞれの蛍光画像をiCYを用いて解析し、1細胞あたりの蛍光輝点の総輝度を計算し、Nutlin−3の添加濃度との相関を分析した。得られた結果を図25に示す。なお、図25中、X軸は細胞株に添加した薬剤濃度を示し、Y軸は一細胞あたりの蛍光輝点(会合体)の総輝度(総蛍光強度)を示し、ドットは実測値を示す。また、そのドットに付したフィッティングカーブ(曲線)はIgor(R)を用いて解析した結果を示すものである。
図には示さないが、実施例12同様に、p62(PB1)−p53及びAG−MDM2が安定的に発現しているCHO−K1細胞においても、p53とMDM2とのタンパク質間相互作用に起因する蛍光輝点(会合体)が観察された。また、図25に示す通り、これら会合体の蛍光輝度は阻害剤であるNutlin−3の濃度に依存して減少した。さらに、図25に示したフィッティングカーブに基づき、f(x)=min+(max−min)/(1+(x/IC50)^hill)にて、p53とMDM2とのタンパク質間相互作用に対するNutlin−3のIC50は8.9μMと算出することができた。
以上、実施例10〜13に示した結果から、本発明にかかる蛍光輝点の蛍光輝度はタンパク質間相互作用の強弱を反映し、タンパク質間相互作用を定量化できることが実証された。さらに、会合体の形成は可逆的であることも明らかになり、かかる定量化は、固定細胞を用いても(図20 参照)、生細胞でのライブイメージングによる手法を用いても(図24 参照)、実施可能であることが示された。また、本発明によれば、実施例11及び13に示す通り、薬剤のタンパク質間相互作用に対する濃度依存的な促進反応及び阻害反応を検出することができ、さらに、その薬剤のEC50及びIC50の算出が可能であることが明らかになった。従って、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法は、タンパク質間相互作用を調節する物質の評価及びスクリーニングに適用できることが示された。
(実施例14)
<タンパク質間相互作用の検出10>
p50とp65とはヘテロダイマーを形成し、NFκBを構成することが知られている。さらに、NFκBは炎症性サイトカインの発現調節を担う転写因子として核内で機能するが、IκBαと相互作用することで細胞質に保持され、その転写機能は抑制されることが知られている(Marc D.Jacobsら、Cell、1998年12月11日、95巻、749〜758ページ 参照)。従って、p50とp65とを過剰発現させた場合、内在性のIκBαとの化学量論的バランスが合わず、前記ヘテロダイマーは主に核内に局在する。一方、IκBαを過剰発現させることで、IκBαをさらに含むヘテロ三量体は細胞質に保持されることになる。
そこで、本実施例においては、IκBαの有無に応じた、p50及びp65を含む複合体の細胞内における局在の変化を、本発明の方法により検出できるかどうかを、以下に示す方法にて試験した。
先ず、pp62(PB1)−p50及びphAG−p65を、実施例2に記載の方法と同様の方法にて各々調製した。pp62(PB1)−p50及びphAG−p65には、各々配列番号:156及び158に記載のアミノ酸配列からなる領域をコードするDNA(各々配列番号:155及び157)が挿入されている。
また、pIκBαは、Genbankアクセション番号:NP_065390.1で特定されるアミノ酸配列をコードするDNA配列を用いて、実施例1に記載の方法と同様の方法にて作製した。
そして、HeLaS3細胞を8ウェルチャンバー(nunc社製)中の4ウェルに播種し、その翌日、前記プラスミドDNAをこれら細胞に導入した。遺伝子導入には、OptiMEM(Life Technologies社製)に、pp62(PB1)−p50及びphAG−p65各々100ngを添加し、更にpIκBαの量を変化させて添加したものを用いた。なお、pIκBαの添加量は、0ng(無添加)又は100ngとし、更にプラスミドDNAの総添加量を統一するために、pmKeima−Red−S1(Amalgaam有限会社製)を、300ng又は0ng添加した。次いで、これらOptiMEMにポリフェクト(登録商標)トランスフェクション試薬を1.5μl各々添加し、攪拌した。さらに培養液200μlと混合した後、HeLaS3細胞に添加した。そして、この遺伝子導入を行ってから22時間後に、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(4% Paraformaldehyde Phosphate Buffer Solution、和光純薬工業社製)により室温で15分間細胞固定し、0.2% TritonX−100/PBSで5分間細胞膜を可溶化したのち、抗IκBα抗体(Cell Signaling Technology社製)を用い、免疫染色を行った。更に核をHoechst33342を用いて染色した。そして、免疫染色した細胞を、実施例1に記載の方法と同様の方法にて観察した。得られた結果を図26示す。なお、図中「重ね合わせ」は、AG由来の蛍光を取得した画像(図中左側の2パネル)と、抗IκBα抗体による免疫染色の結果を示す画像(図中真ん中の2パネル)と、Hoechst33342による核染色の結果を示す画像とを重ね合わせた結果を示す。
図26に示した結果から明らかなように、IκBαを導入しない細胞においては、p50とp65とからなるヘテロダイマーが核内に形成されていることが確認された。一方、IκBαを導入した際には、AG由来の蛍光を取得した画像(図中、左下のパネル参照)において検出される蛍光輝点と同一の場所にIκBα由来のシグナルが検出され(図中、真ん中下のパネル参照)、p50及びp65を含む複合体にIκBαが含まれていることが確認された。さらに、IκBαの存在下では、p50及びp65を含む複合体の局在が前記核内から細胞質内に変化することも、本発明の方法によって確認された。
(実施例15)
<タンパク質間相互作用の検出11>
本実施例においては、実施例14においても検出したp50及びp65を含む複合体を通して、IκBαの量的バランスに応じた、当該複合体の細胞内における局在の変化を、本発明の方法により定量的に検出できるかどうかを、以下に示す方法にて試験した。
先ず、HeLaS3細胞を8ウェルチャンバー(nunc社製)中の4ウェルに播種した。そして、その翌日、実施例13に記載の、pp62(PB1)−p50、phAG−p65、pIκBαをこれら細胞に導入した。遺伝子導入には、OptiMEM(Life Technologies社製)に、pp62(PB1)−p50及びphAG−p65各々100ngを添加し、更にpIκBαの量を変化させて添加したものを用いた。なお、pIκBαの添加量は、(0)無添加、(1)33ng、(2)100ng又は(3)300ngとし、更にプラスミドDNAの総添加量を統一するために、pmKeima−Red−S1(Amalgaam有限会社製)を、(0)に300ng、(1)に267ng、(2)に200ng、(3)に0ng添加した。次いで、これらOptiMEMにポリフェクト(登録商標)トランスフェクション試薬を1.5μl各々添加し、攪拌した。さらに培養液200μlと混合した後、HeLaS3細胞に添加し、22時間後に、実施例1に記載の方法と同様の方法にて観察した。
前記(0)〜(3)の条件にてプラスミドDNAを導入した細胞を、各々150個以上撮影し、蛍光輝点の局在に従って、(A)〜(C)の3通りのグループに分類した。すなわち、蛍光輝点が、(A)細胞質のみにて検出される細胞、(B)細胞質と核内とにて検出される細胞、(C)核内のみに検出される細胞、である。そして、各グループに含まれる細胞数の割合を算出し、グラフ化した。得られた結果を図27に示す。
図27に示した結果から明らかなように、IκBαの量依存的に細胞質にて検出される蛍光輝点の割合が増加した。このように、本発明によれば、蛍光輝点の局在に従って細胞をグループ分けし、各グループに含まれる細胞数を比較する方法を提供することができる。さらに、実施例14においても示す通り、本発明の方法によれば、直接的な検出対象である第1のタンパク質及び第2のタンパク質(例えば、p50及びp65)の相互作用の局在を介して、第3のタンパク質(例えば、IκBα)が当該相互作用に及ぼす影響や、第3のタンパク質の発現量も定量化できることも明らかになった。
(実施例16)
<タンパク質間相互作用の検出12>
細胞の核内にて、p21は、CDK4とCyclinD1とからなる複合体を認識し、相互作用することが知られている(LaBaer Jら、Genes Dev.、1997年4月1日、11巻7号847〜862ページ 参照)。そして、かかるヘテロ3量体の形成により、CDK4とCyclinD1とからなる複合体によって促進される細胞周期の進行(G1期からS期への移行)が阻害されることも明らかになっている。
そこで、本実施例においては、実施例14及び15同様に、3種類の異なるタンパク質からなる複合体の形成を本発明によって検出できるかどうかを以下に示す方法にて試験した。
(プラスミドDNAの調製)
pp62(PB1)−CDK4、phAG−p21及びpCyclinD1は、各々Genbankアクセション番号:NP_000066.1、NP_000380.1及びNP_444284.1で特定されるアミノ酸配列をコードするDNA配列に基づき、実施例1に記載の方法と同様の方法にて作製した。
(培養細胞への遺伝子導入、細胞免疫染色、並びに細胞の観察)
前記プラスミドDNAを導入する培養細胞としてHeLaS3細胞を用いた。また、HeLaS3細胞は、実施例1に記載の方法と同様の方法にて培養した。さらに、遺伝子導入においては、8ウェルチャンバー(nunc社製)の2ウェルにHeLaS3細胞を播種し、その翌日に、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、下記組み合わせにて、各々130ngのプラスミドDNAをトランスフェクション試薬1μlを用いて、HeLaS3細胞に導入した。
pp62(PB1)−CDK4とphAG−p21とpCyclinD1との組み合わせ、
pp62(PB1)−CDK4とphAG−p21とphmKGC−MN(Amalgaam有限会社製)との組み合わせ(なお、phmKGC−MNは、プラスミドの総量を統一させるために添加した)。
そして、遺伝子を導入してから24時間後、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(4% Paraformaldehyde Phosphate Buffer Solution、和光純薬工業社製)により室温で15分間細胞固定し、 0.2% TritonX−100/PBSで5分間細胞膜を可溶化したのち、抗CyclinD1抗体(株式会社医学生物学研究所製)4μg/mlを用い、免疫染色を行った。免疫染色した細胞は実施例1に記載の方法と同様の方法にて観察した。得られた結果を図28に示す。
図28に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−CDK4とAG−p21とを発現させるだけでは多くの細胞で明瞭な会合体(蛍光輝点)は観察されなかった。しかし、p62(PB1)−CDK4とAG−p21とに加え、CyclinD1を強制的に発現させた場合には、前記ヘテロ3量体の形成に必要な要素の発現を化学量論的に揃えることができ、ほぼすべての細胞にて明瞭な蛍光輝点が観察された。さらにCyclinD1の免疫染色像から、観察された蛍光輝点にはCyclinD1が局在していることも確認された。
従って、実施例14及び15に示した結果同様に、3量体以上の複合体の形成におけるタンパク質間相互作用を本発明によって検出できることが確認された。
また、本発明によれば、このように、二種のタンパク質(実施例14及び15においてはp50及びp65、実施例16においてはCDK4及びp21)が、さらに「ある分子」(実施例14及び15においてはIκBα、実施例16においてはCyclinD1)を含み、複合体を形成していると予測される場合に、この二種のタンパク質を各々「会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質」と「多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質」として細胞に発現させ、さらにcDNA発現ライブラリーがコードするタンパク質を当該細胞に発現させることによって、蛍光輝点(例えば、蛍光輝点の発生・消失、蛍光輝点の局在の変化)を指標とし、前記「ある分子」(複合体の構成因子)を探索できる。
また、実施例14〜16において示した通り、本発明によれば、複合体の構成因子(実施例14及び15においてはIκBα、実施例16においてはCyclinD1)の発現量を蛍光輝点を指標に解析でき、ひいては当該発現量を通して、前記複合体が制御する細胞周期や前記複合体が応答するストレス等といった細胞が面している状態を解析することもできる。
(実施例17)
<タンパク質相互作用の検出13>
実施例10〜13に示した通り、本発明にかかる蛍光輝点の蛍光強度が、タンパク質間相互作用の強弱を反映することが明らかになった。従って、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法において、本発明にかかる蛍光輝点の蛍光強度を指標として、相互作用に重要なアミノ酸を同定することもできることが想定される。そこで、タンパク質間相互作用の減弱又は増強に関与することが知られているアミノ酸変異を用いた試験を、以下に示す方法にて行った。
なお、かかる試験において検出対象としたのは、Sec5タンパク質とRalBタンパク質との相互作用であり、Sec5タンパク質はRalBタンパク質のGTP活性化型と相互作用することが知られている(Moskalenko S ら、Nat Cell Biol.、2002年1月、4巻、1号、66〜72ページ 参照)。RalBの非活性型変異体 RalB(S28N)ではその相互作用が減弱し、RalBの活性型変異体 RalB(Q72L)では増強することが知られている(Shipitsin M ら、Mol Cell Biol.、2004年7月、24巻、13号、5746〜5756ページ 参照)。さらに、膜アンカー型タンパク質であるRalBタンパク質については、そのC末端がパルミトイル化されることにより、細胞膜に局在することも明らかになっている。
(プラスミドDNAの調製)
pp62(PB1)−Sec5の作製においては、先ずSec5の一部(Sec5タンパク質の1〜99アミノ酸からなる領域、配列番号:30に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:29に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Sec5フォワードプライマー;5’−CCCGGATCCATGTCTCGATCACGACAACCC−3’ (配列番号:101)
Sec5リバースプライマー;5’−GGGAAGCTTTTATTAGCCTATTTTCTCAGGTTTGAGTA−3’ (配列番号:102)
そして、得られた増幅産物をBamHIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したpp62(PB1)−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−Sec5を作製した。なお、pp62(PB1)−Sec5は、p62(PB1)とSec5の部分タンパク質との融合タンパク質(「p62(PB1)−Sec5」とも称する)をコードする。
また、phAG−RalB(WT)の作製においては、先ずRalB(配列番号:32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードするDNA(配列番号:31に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
RalBフォワードプライマー;5’−CCCGGATCCATGGCTGCCAACAAGAGTAAG−3’ (配列番号:103)
RalBリバースプライマー;5’−GGGAAGCTTTTATCATAGTAAGCAACATCTTTC−3’ (配列番号:104)
そして、得られた増幅産物をBamHIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MCLinkerに挿入することにより、phAG−RalB(WT)を作製した。なお、phAG−RalB(WT)は、AGタンパク質とRalBタンパク質との融合タンパク質(「AG−RalB(WT)」とも称する)をコードする。
さらに、phAG−RalB(Q72L)の作製は、phAG−RalB(WT)を鋳型として、AMAP複数部位特異的変異導入キット(AMAP(TM) Multi Site−directed Mutagenesis Kit、Amalgaam有限会社製)を用いて、添付の使用説明書に従って、下記プライマーにより変異を導入した
RalB(Q72L)プライマー;5’−CTGGACACCGCTGGGCTAGAGGACTACGCAGCCA−3’ (配列番号:105)。
なお、RalB(Q72L)タンパク質のアミノ酸配列を配列番号:34に示す。また、該タンパク質をコードするDNAの塩基配列を配列番号:33に示す。さらに、phAG−RalB(Q72L)は、AGタンパク質とRalB(Q72L)タンパク質との融合タンパク質(「AG−RalB(Q72L)」とも称する)をコードする。
また、phAG−RalB(S28N)の作製は、phAG−RalB(WT)を鋳型として、AMAP(TM) Multi Site−directed Mutagenesis Kitを用いて、添付の使用説明書に従って、下記プライマーにより変異を導入した
RalB(S28N)プライマー;5’−CAGCGGAGGCGTTGGCAAGAACGCCCTGACGCTTCAGTTCA−3’ (配列番号:106)。
なお、RalB(S28N)タンパク質のアミノ酸配列を配列番号:36に示す。また、該タンパク質をコードするDNAの塩基配列を配列番号:35に示す。phAG−RalB(S28N)は、AGタンパク質とRalB(S28N)タンパク質との融合タンパク質(「AG−RalB(S28N)」とも称する)をコードする。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した
pp62(PB1)−Sec5とphAG−RalB(WT)との組み合わせ
pp62(PB1)−Sec5とphAG−RalB(Q72L)との組み合わせ
pp62(PB1)−Sec5とphAG−RalB(S28N)との組み合わせ
pp62(PB1)とphAG−RalB(WT)との組み合わせ。
また、遺伝子導入細胞の観察も実施例1に記載の方法と同様の方法にて行った。得られた結果を図29に示す。さらに、細胞膜付近のみ励起することのできる、アーク光源全反射蛍光顕微鏡システム(オリンパス社製、IX71−ARCEVA)を用い画像を取得した。得られた結果を図30に示す。
図29に示した結果から明らかなように、C末端がパルミトイル化されたRalBタンパク質は細胞膜に局在するため、野生型のRalBタンパク質(RalB(WT))を発現させた場合には、細胞膜付近においてSec5タンパク質との相互作用に由来する蛍光輝点が検出された。一方、p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(S28N)とを共発現させた細胞においては、蛍光輝点が検出されず、前述の通り、RalBの非活性型変異体 RalB(S28N)では、Sec5タンパク質との相互作用が減弱していることが確認された。また、p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(Q72L)を共発現させた細胞ではp62(PB1)−Sec5とAG−RalB(WT)を共発現させた細胞より蛍光強度(輝度)の高い蛍光輝点が検出され、前述の通り、RalBの活性型変異体 RalB(Q72L)では、Sec5タンパク質との相互作用が増強していることも確認された。
また、図30に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(WT)とを共発現した細胞において、会合体が観察された。図30に示した結果は、細胞膜付近のみ励起することのできる観察系を用いた結果である。従って、図29に示した結果同様に、細胞膜付近における野生型のRalBタンパク質とSec5タンパク質との相互作用を、本発明の方法により検出できることが実証された。
また、図30に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(Q72L)とを共発現した細胞ではより顕著な会合体の形成が観察された。一方、p62(PB1)−Sec5とAG−RalB(S28N)とを共発現させた細胞においては会合体が観察されなかった。従って、図29に示した結果同様に、本発明の方法によって、RalB(S28N)におけるSec5タンパク質との相互作用の減弱、及び、RalB(Q72L)における当該相互作用の増強を検出できることが実証された。
(実施例18)
<タンパク質相互作用の検出14>
実施例17同様に、タンパク質間相互作用の減弱に関与することが知られているアミノ酸変異を用いた試験を、以下に示す方法にて行った。
(プラスミドDNAの調製)
pp62(PB1)−p53_W23Lは、実施例12に記載のpp62(PB1)−p53に配列番号:159に記載の塩基配列(5‘−ACATTTTCAGACCTATTGAAACTACTTCCTGAAAACAACGT−3’)からなるプライマーを用い、実施例17に記載の方法と同様の方法にて変異を導入することにより調製した。
なお、p53の23位のアミノ酸はp53とMDM2との相互作用界面部位に位置し、さらに、p53における「W23L」変異は当該相互作用を減弱させる変異として知られている(文献Zondlo SC、Biochemistry.、2006年10月3日、45巻、39号、11945〜11957ページ参照)。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
実施例1に記載の方法と同様の方法にて、下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを細胞に導入し、当該細胞を観察した。得られた結果を図31に示す。
pp62(PB1)−p53とphAG−MDM2との組み合わせ。
pp62(PB1)−p53_W23L とphAG−MDM2との組み合わせ。
図31に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−p53とAG−MDM2とを共発現した細胞では顕著に蛍光輝点(会合体の形成)が観察された(図中、左パネル)。一方、p62(PB1)−p53_W23LとAG−MDM2とを共発現させた細胞には会合体が観察されなかった(図中、右パネル)。
従って、実施例17及び18に示す通り、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法において、本発明にかかる蛍光輝点の蛍光強度を指標として、相互作用に重要なアミノ酸を同定することができることも明らかになった。特に、本発明の方法によって、タンパク質間相互作用の界面に変異を入れた上で当該相互作用の有無を検出することにより、非常に簡便に当該相互作用に関与しているアミノ酸を特定することができる。すなわち、アラニンスキャン等のタンパク質変異導入法と本発明の方法とを組み合わせることにより、タンパク質相互作用に重要な部位(ホットスポット)を、非常に簡便に探索することができる。
(実施例19)
<タンパク質間相互作用の検出15>
前述の通り、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法においては、タンパク質間相互作用の発生及び消失を定量的に実時間測定することが可能であることが示された。そこで、本発明の方法を用いて、細胞内の内在性のシグナル伝達が経時的に変化する様子を、該シグナルに応答して発生するタンパク質間相互作用を通じて検出できるかどうかを試験した。
すなわち、本試験において検出対象としたタンパク質間相互作用は、カルモジュリン(Calmodulin)とミオシン軽鎖キナーゼ2(myosin light chain kinase 2)の部分配列(M13ペプチド、M13peptide)との相互作用であり、該相互作用は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)がリガンドを受容した際に生じる細胞内カルシウムイオン濃度の一過的な上昇(セカンドメッセンジャー)に応答して発生することが明らかになっている(Miyawaki A ら、Nature、1997年8月28日、388巻、6645号、882〜887ページ 参照)。そこで、前記相互作用を通じて、細胞内カルシウムイオン濃度の経時的な変化を検出することができるかどうかを、以下に示す方法にて試験した。得られた結果を図32に示す。
(プラスミドDNAの調製)
pCalmodulin−hAGの作製においては、先ずCalmodulin(配列番号:38に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードするDNA(配列番号:37に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Calmodulinフォワードプライマー;5’−TTGGATCCGCCACCATGGACCAACTGACAGAAGAGCAGATTGC−3’ (配列番号:107)
Calmodulinリバースプライマー;5’−AAGAATTCCCCTTTGCTGTCATCATTTGTACAAACTCTTC−3’ (配列番号:108)
そして、得られた増幅産物をBamHIとEcoRIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MNLinkerに挿入することにより、pCalmodulin−hAGを作製した。なお、pCalmodulin−hAGは、Calmodulinタンパク質とAGタンパク質との融合タンパク質(「Calmodulin−AG」とも称する)をコードする。
また、pM13peptide−p62(PB1)の作製においては、先ずmyosin light chain kinase2の一部(myosin light chain kinase2タンパク質の566〜591アミノ酸からなる領域、配列番号:40に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:39に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
M13ペプチドフォワードプライマー;5’−TTGGATCCGCCACCATGAAGAGGCGCTGGAAGAAAAACTTCATTGC−3’ (配列番号:109)
M13ペプチドリバースプライマー;5’−CCGAATTCCCCAGTGCCCCGGAGCTGGAGATCTTCTTG−3’ (配列番号:110)
そして、得られた増幅産物をBamHIとEcoRIにて切断し、同じ制限酵素で処理したpp62(PB1)−MNLinkerに挿入することにより、pM13peptide−p62(PB1)を作製した。なお、pM13peptide−p62(PB1)は、M13ペプチドとp62(PB1)との融合タンパク質(「M13peptide−p62(PB1)」とも称する)をコードする。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
pCalmodulin−hAGとpM13peptide−p62(PB1)とを等量混合し、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に導入した。そして、200μM ヒスタミン(Histamine、和光純薬工業社製)を添加し、経時的に蛍光画像を撮影した。なお、Histamineは、HeLaS3細胞にも発現しているGPCRの1種 H1レセプターのリガンドとして機能することが明らかになっている。
図32に示した結果から明らかなように、リガンド(Histamine)添加前は、Calmodulin−AGは細胞内に拡散して存在していたが、リガンドを添加してから90秒後には、蛍光輝点の発生が検出され、M13peptide−p62(PB1)との会合体の形成が確認された。しかし、細胞質カルシウムイオン濃度の低下に伴い、490秒後には蛍光輝点(会合体)は消失した。
従って、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法を利用することにより、H1レセプターからのシグナル伝達により、一過的に上昇するカルシウムイオン濃度の実時間測定が可能であることが明らかになった。
また、この実施例19の結果から、本発明は一過的なタンパク質間相互作用も検出することができ、さらには、タンパク質間相互作用を発生させるセカンドメッセンジャー等の内在性因子、該セカンドメッセンジャー等が寄与するシグナル伝達、及び該シグナル伝達を惹起する細胞外リガンド等の外部からの刺激の検出並びにスクリーニングに適用できることも示された。
(実施例20)
<タンパク質間相互作用の検出16>
国際公開第2000/017221号、国際公開第2006/099486号に代表される従来のタンパク質間相互作用の検出方法においては、タンパク質間相互作用によって生じる複合体を構成する一方のタンパク質を強制的(人工的)に細胞内の特定の領域に拘束してしまうため、該相互作用に固有な細胞内環境下での検出ができなかった。しかし、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法は、相互作用した場合に限り自立的に蛍光輝点(会合体)を形成するため、従来の方法が有する前記問題点を解決できることが予測される。そこで、本発明によって、細胞内の任意の領域において相互作用の検出ができるかどうかを、以下に示す方法にて試験した。
(プラスミドDNAの調製)
pmTOR(FRB domain)−AGNLSの作製においては、先ずAGNLS遺伝子をpNP−AG(Amalgaam有限会社製)から、下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
AGNLSフォワードプライマー;5’−AAACCGGTATGGTGAGTGTGATTAAACCAGAG−3’ (配列番号:111)
AGNLSリバースプライマー;5’−AATCTAGATTATTTATCCTTTTCCTTTTTACTCTTCTTCTTAGCTACTTC−3’ (配列番号:112)
そして、得られた増幅産物をAgeIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してhAG領域を切り出したpmTOR(FRB domain)−hAGに挿入することにより、pmTOR(FRB domain)−AGNLSを作製した。なお、pmTOR(FRB domain)−AGNLSは、mTOR(FRB domain)とAGタンパク質と核局在シグナル(NLS)とからなる融合タンパク質(「mTOR(FRB domain)−AGNLS」とも称する)をコードする。また、mTOR(FRB domain)−AGNLSは、mTOR(FRB domain)−AGのC末端に核局在シグナルを融合させているので、細胞の核内に局在する。
また、pp62(PB1)−HRasの作製においては、先ずHRasタンパク質をコードするDNAを、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから、下記プライマーセットを用いたPCRにて増幅し、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断した
HRasフォワードプライマー;5’−AAGAATTCGATGACGGAATATAAGCTGGTGGTGGTGGGCGCCGTCGGTGTGGGCAAGAGTGC−3’ (配列番号:113)
HRasリバースプライマー;5’−TTCTCGAGACCTCCGGAGACGTTCAGCTTCCGCAGCTTGTGCTGCCGGATCTCACGCACCAAC−3’ (配列番号:114)。
さらに、KRasタンパク質由来のプレニル化配列を、下記プライマーセットを用いたPCRにて増幅し、得られた増幅産物をXhoIとNotIにて切断した
KRasフォワードプライマー;5’−AACTCGAGAAGATGAGCAAAGATGGTAAAAAGAAGAAAAAGAAGTCAAAGACAAAGTGTG−3’ (配列番号:115)
KRasリバースプライマー;5’−TTGCGGCCGCTTACATAATTACACACTTTGTCTTTGACTTCTTTTTCTTCTTTTTACCAT−3’ (配列番号:116)。
そして、このように調製した前記2種のDNA断片を、EcoRIとNotIにて処理したpp62(PB1)−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−HRas(WT)を作製した。
さらに、恒常活性型変異体であるHRasとp62(PB1)との融合タンパク質をコードするpp62(PB1)−HRasの作製は、pp62(PB1)−HRas(WT)を鋳型として、AMAP複数部位特異的変異導入キット(AMAP(TM) Multi Site−directed Mutagenesis Kit、Amalgaam有限会社製)を用いて、添付の使用説明書に従って、下記プライマーにより変異を導入した
HRas変異プライマー;5’−GCTGGTGGTGGTGGGCGCCGTCGGTGTGGGCAAGAGTGCGC−3’ (配列番号:117)。
なお、pp62(PB1)−HRasは、p62(PB1)とC末にKRasタンパク質由来のプレニル化配列を付加したHRas(配列番号:42に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードするDNA(配列番号:41に記載の塩基配列からなるDNA)とを融合したタンパク質をコードする。また、この融合タンパク質は、プレニル化配列を有することにより、細胞内において翻訳後脂質修飾を受け、細胞膜に局在することになる。
phAG−cRafの作製においては、先ずcRafの一部(cRafタンパク質の51−131アミノ酸からなる領域、配列番号:44に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:43に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーを鋳型として、下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
cRafフォワードプライマー;5’−AAGGTACCCCTTCTAAGACAAGCAACACTATCCGTGTTTTCTTGCCGAACAAGCAAAGAA−3’ (配列番号:118)
cRafリバースプライマー71;5’−TTAAGCTTTTACAGGAAATCTACTTGAAGTTCTTCTCCAATCAAAGACGCAG−3’ (配列番号:119)
そして、得られた増幅産物をKpnIとHindIIIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MCLinkerに挿入することにより、phAG−cRafを作製した。なお、phAG−cRafは、AGタンパク質とcRafタンパク質の一部との融合タンパク質(「AG−cRaf」とも称する)である。また、当該cRafタンパク質の一部とはHRasタンパク質とは相互作用することは知られている(Mochizuki N ら、Nature、2001年6月28日、411巻、6841号、1065〜1068ページ 参照)。
さらに、pSmac−p62(PB1)の作製においては、先ずSmacの一部(Smacタンパク質の1〜10アミノ酸からなる領域、配列番号:46に記載のアミノ酸配列からなる領域)とp62(PB1)との融合タンパク質をコードするDNAを、pp62(PB1)−MNLから、下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Smacフォワードプライマー;5’−AGGATCCGCCACCATGGCCGTGCCCATCGCCCAGAAATCAGAGAATTCGG−3’ (配列番号:120)
p62(PB1)リバースプライマー2;5’−ACCTCTAGATTATTTCTCTTTAATGTAGATTCGGAAGATG−3’ (配列番号:64)
そして、得られた増幅産物をBamHIとXbaIにて切断し、同じ制限酵素で処理してリンカー及びp62(PB1)を切り出したpp62(PB1)−MNLに挿入することにより、pSmac−p62(PB1)を作製した。なお、pSmac−p62(PB1)は、Smacの一部とp62(PB1)との融合タンパク質(「Smac−p62(PB1)」とも称する)をコードする。
また、pXIAP−hAGの作製においては、先ずXIAPの一部(XIAPタンパク質の243〜356アミノ酸からなる領域、配列番号:48に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:47に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
XIAPフォワードプライマー;5’−TTGGATCCGCCACCATGGCTGTGAGTTCTGATAGGAATTTCCCAAATTC−3’ (配列番号:121)
XIAPリバースプライマー;5’−TTGAATTCTCAGTAGTTCTTACCAGACACTCCTCAAGTGAATGAG−3’ (配列番号:122)
そして、得られた増幅産物をBamHIとEcoRIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MNLinkerに挿入することにより、pXIAP−hAGを作製した。なお、pXIAP−hAGはXIAPの一部とAGタンパク質との融合タンパク質(「XIAP−AG」とも称する)をコードする。また、前記Smacの一部と前記XIAPの一部とは細胞質内において相互作用することが知られている(Liu Z ら、Nature、2000年12月21−28日、408巻、6815号、1004〜1008ページ 参照)。
さらに、pp62(PB1)−BclX(L)の作製においては、先ずBclX(L)の一部(BclX(L)タンパク質の1〜209アミノ酸からなる領域、配列番号:50に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:49に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
BclX(L)フォワードプライマー;5’−TTCTCGAGGATGTCTCAGAGCAACCGGGAGCTGGTGGTTGAC−3’ (配列番号:123)
BclX(L)リバースプライマー;5’−CTAAGCGGCCGCTTAGCGTTCCTGGCCCTTTCGGCTCTCGGCTG−3’ (配列番号:124)
そして、得られた増幅産物をXhoIとNotIにて切断し、同じ制限酵素で処理したpp62(PB1)−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−BclX(L)を作製した。なお、pp62(PB1)−BclX(L)は、p62(PB1)とBclX(L)の一部との融合タンパク質(「p62(PB1)−BclX(L)」とも称する)をコードする。
また、phAG−BADの作製においては、先ずBADの一部(BADタンパク質の103〜127アミノ酸からなる領域、配列番号:52に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:51に記載の塩基配列からなるDNA)を下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
BADフォワードプライマー1;5’−GCAGCACAGCGCTATGGCCGCGAGCTCCGGAGGATGAGTGACGAGTTTGT−3’ (配列番号:125)
BADフォワードプライマー2;5’−TTGGATCCAACCTCTGGGCAGCACAGCGCTATGGCCGCGAGCTCCGGAGG−3’ (配列番号:126)
BADリバースプライマー;5’−TTGAATTCTTACTTCTTAAAGGAGTCCACAAACTCGTCACTCATCCTCCG−3’ (配列番号:127)
そして、得られた増幅産物をBamHIとEcoRIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MCLinkerに挿入することにより、phAG−BADを作製した。なお、AGタンパク質とBADの一部との融合タンパク質(「AG−BAD」とも称する)をコードする。また、前記BclX(L)の一部と前記BADの一部とは、細胞質内において相互作用することが知られている(Sattler M ら、Science、1997年2月14日、275巻、5302号、983〜986ページ 参照)。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、HeLaS3細胞に各々導入した
pFKBP12−p62(PB1)とpmTOR(FRB domain)−AGNLSとの組み合わせ
pp62(PB1)−HRasとphAG−cRafとの組み合わせ
pSmac−p62(PB1)とpXIAP−hAGとの組み合わせ
pp62(PB1)−BclX(L)とphAG−BADとの組み合わせ。
また、遺伝子導入細胞の観察も実施例1に記載の方法と同様の方法にて行った。但し、pFKBP12−p62(PB1)とpmTOR(FRB domain)−AGNLSとを導入した細胞に関しては、100nM Rapamycinを添加してから300秒後に蛍光画像と位相差画像とを撮影した。得られた結果を図33〜36に示す。
図33に示した結果から明らかなように、mTOR(FRB domain)−AGNLSとFKBP12−p62(PB1)とを細胞内に発現させた際に、mTOR(FRB domain)−AGNLSは、そのC末端に核局在シグナル配列を有することにより、細胞の核内において拡散した状態にて局在した(図33 左側のパネル参照)。そして、Rapamycinを添加することにより、FKBP12−p62(PB1)とmTOR(FRB domain)−AGNLSとが会合して生じる蛍光輝点は核内のみにおいて検出された(図33 右側の2パネル参照)。
また、図34に示した結果から明らかなように、C末端にプレニル化配列を有するp62(PB1)−HRasと、AG−cRafとを細胞内に発現させた際に、プレニル化配列によって、p62(PB1)−HRasとAG−cRafとが会合して生じる蛍光輝点は細胞膜において検出された。
さらに、図35に示した結果から明らかなように、Smac−p62(PB1)とXIAP−AGとを細胞内に発現させた際に、細胞質内において生じることが知られているSmacタンパク質とXIAPタンパク質との相互作用を反映し、Smac−p62(PB1)とXIAP−AGとが会合して生じる蛍光輝点も細胞質内において検出された。
また、図36に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−BclX(L)とAG−BADとを細胞内に発現させた際に、細胞質内において生じることが知られているBclX(L)タンパク質とBADタンパク質との相互作用を反映し、p62(PB1)−BclX(L)とAG−BADとが会合して生じる蛍光輝点も細胞質内において検出された。
(実施例21)
<タンパク質間相互作用の検出17>
実施例20と同様に、本発明の方法を用いることにより、対象とするタンパク質に固有な細胞内環境下において、タンパク質間相互作用が検出できるかどうかについて、以下に示す方法にて試験した。
なお、本実施例21においては、Rac1タンパク質とPBD(p21結合ドメイン)とのタンパク質間相互作用を検出の対象とした。低分子量Gタンパク質のRac1タンパク質は、Tiam1、Trio、VAV1等のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)により、不活性型のGDP結合型から活性型のGTP結合型に変換される。そして、活性型のRac1タンパク質と、Cdc42/Racエフェクタータンパク(p21活性化キナーゼ1:PAK1)のPBDとは相互作用することが知られている。また、GEFの局在はその種類によって異なり、核内や細胞の辺縁(細胞膜近傍)等になる。そのため、Rac1タンパク質は細胞内全体に存在しているが、Rac1タンパク質の活性化、並びに活性型のRac1タンパク質とPBDとの相互作用は、種類によって異なるGEFの局在に応じた細胞内の領域において生じることになる(Benard V ら、J Biol Chem.、1999年5月7日、274巻、19号、13198〜13204ページ 参照)。
(プラスミドDNAの調製)
phAG−Rac1の作製において、先ずRac1タンパク質(配列番号:54に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードするDNA(配列番号:53に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから、下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
Rac1フォワードプライマー;5’−GAGAATTCGATGCAGGCCATCAAGTGTGTGGTGG−3’ (配列番号:128)
Rac1リバースプライマー;5’−GGCTCGAGTTACAACAGCAGGCATTTTCTCTTCC−3’ (配列番号:129)
そして、得られた増幅産物をEcoRIとXhoIにて切断し、同じ制限酵素で処理したphAG−MNLinkerに挿入することにより、phAG−Rac1を作製した。
また、pp62(PB1)−PBDの作製において、先ずPBD(PAK1タンパク質の67〜150アミノ酸からなる領域、配列番号:56に記載のアミノ酸配列からなる領域)をコードするDNA(配列番号:55に記載の塩基配列からなるDNA)を、HeLaS3細胞のcDNAライブラリーから、下記プライマーセットを用いて、PCRにて増幅した
PBDフォワードプライマー;5’−TTGGATCCAAGAAAGAGAAAGAGCGGCCAGAGATTTCTCTCCC−3’ (配列番号:130)
PBDリバースプライマー;5’−CCGAATTCTTACGCTGACTTATCTGTAAAGCTCATGTATTTCTGGC−3’ (配列番号:131)
そして、得られた増幅産物をBamHIとEcoRIにて切断し、同じ制限酵素で処理したpp62(PB1)−MCLinkerに挿入することにより、pp62(PB1)−PBDを作製した。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、U2OS細胞に各々導入した
phAG−Rac1とpp62(PB1)−PBDとの組み合わせ
phAG−Rac1とpp62(PB1)−MNLinkerとの組み合わせ
得られた結果を図37〜39に示す。
図37及び38に示した結果から明らかなように、AG−Rac1とp62(PB1)−PBDとを細胞内において発現させた際に、核内(図37)と細胞の辺縁(図38)にて、AG−Rac1とp62(PB1)−PBDとの会合による蛍光輝点が検出された。
一方、図39に示した結果から明らかなように、AG−Rac1と、PBDを融合していないp62(PB1)とを細胞内において発現させた際には、蛍光輝点は検出されなかった。
以上の結果より、同一のタンパク質間相互作用を、細胞内の複数種の領域にて検出できることが示された。従って、本発明は、タンパク質間相互作用によって生じる複合体を構成するタンパク質を強制的(人工的)に細胞内の特定の領域に拘束することなく、該タンパク質の局在に応じた固有な細胞内環境下にて、当該タンパク質間相互作用を検出できることが明らかになった。
また、当該タンパク質間相互作用の検出を通じて、活性型(GTP結合型)のRac1タンパク質を本発明において検出できることも示された。さらに、当該活性型のGTP結合型への変換の検出を通じて、細胞内在性の酵素であるGEFの局在並びに活性も検出できることが実証され、本発明の方法は、タンパク質間相互作用を通じて、内在性因子の活性も検出できることが明らかになった。
(実施例22)
<タンパク質間相互作用の検出18>
実施例21に記載の通り、活性型のRac1タンパク質は、Cdc42/Racエフェクタータンパク(p21活性化キナーゼ1:PAK1)のPBDと相互作用することが明らかになっている。
また、Rac1タンパク質は、そのC末端がゲラニルゲラニル基修飾(プレニル化)されることによって、その局在が変化することも知られている。さらに、Rac1タンパク質は、そのゲラニルゲラニル基を介してRhoGDIと相互作用することも知られている。
そこで、これらのタンパク質間相互作用の局在の変化を本発明の方法によって検出できることを以下に示す方法にて確認した。
先ず、pRhoGDI−p62(PB1)は、Genbankアクセション番号:NP_004300で特定されるアミノ酸配列をコードするDNA配列に基づき、実施例2に記載の方法と同様の方法にて作製した。また、phAG−Rac1及びpp62(PB1)−PBDについては実施例21に記載の通りである。
そして、下記プラスミドDNAの組み合わせにて等量混合したものを、実施例2と同様の方法により、細胞に導入した。
phAG−Rac1とpp62(PB1)−PBDとの組み合わせ
phAG−Rac1とpRhoGDI−p62(PB1)との組み合わせ。
そして、遺伝子導入後6時間培養した後、ゲラニルゲラニル基修飾に対する阻害剤であるメバスタチン(Mevastatin、Enzo Life Sciences社)を最終濃度10μMとなるように添加し、更に15時間培養し、観察した。AG−Rac1とp62(PB1)−PBDとを共発現させた細胞についての結果を図40に示し、AG−Rac1とRhoGDI−p62(PB1)とを共発現させた細胞についての結果を図41に示す。なお、図40及び41においては、同一細胞について、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、通常の落射型蛍光倒立顕微鏡を用いて撮影したもの(A)と、実施例17に記載の方法と同様の方法にて、アーク光源全反射蛍光顕微鏡システムを用いて撮影したもの(B)とを併せて示す。
図40の上部2パネルに示した結果から明らかなように、通常の状態では、核内でも核外でもRac1とPBDとがタンパク質間相互作用していること、すなわちRac1が活性化状態で存在していることが、本発明の方法によって確認された。
ゲラニルゲラニル基修飾をメバスタチン等の薬剤により阻害するとRac1は核内に局在することが知られている。この知見に関し、図40の下部2パネルに示した結果から明らかなように、メバスタチン処理により、Rac1とPBDとの相互作用が核内のみにて生じるように変化することも、本発明の方法によって確認された。さらに、当該相互作用の検出を通して、ゲラニルゲラニル基修飾が無い状態であっても、Rac1は活性化状態で存在していることも、本発明の方法によって確認された。
また、Rac1とRhoGDIとの相互作用に関し、図41の上部2パネルに示した結果から明らかなように、通常の状態では、核外にてRac1とRhoGDIとがタンパク質間相互作用していることが、本発明の方法によって確認された。
一方、図41の下部2パネルに示した結果から明らかなように、メバスタチン処理により、前述の通り、Rac1の局在は核内のみとなり、さらには当該Rac1はゲラニルゲラニル基修飾は抑制されているため、Rac1とRhoGDIとの相互作用が減少することも、本発明の方法によって確認された。
従って、本発明によって、細胞内の複数種の領域において生じるタンパク質間相互作用が、外部からの刺激によって変化する様子を検出することができることが確認された。さらには、タンパク質間相互作用に影響を与えるタンパク質の修飾(例えば、Rac1とRhoGDIとの相互作用における、Rac1のゲラニルゲラニル基修飾)の有無も検出することができることが確認された。
(実施例23)
KRasとcRafとの相互作用は、細胞増殖、分化等において重要なシグナル伝達の1つである。また、このタンパク質間相互作用は、上皮成長因子(EGF)によって活性化されたEGF受容体から、Grb2−SOSを介してシグナルが流れ、その結果、KRasが活性化されることにより生じることが明らかになっている。さらに、このタンパク質間相互作用により、cRafの局在が細胞質から細胞膜に変化することも知られている。
このように、KRasとcRafとの相互作用は、EGF依存的なものであるため、EGF非存在下においては生じない。しかし、KRasの変異体において、EGF非存在下でもcRafと相互作用することのできる恒常活性化型の変異体(例えば、KRasG12D)も存在しており、さらには、かかる変異体は種々の癌にて検出されている。従って、有効な癌治療法の開発等において、KRas又はその変異体とcRafとの会合体形成や該会合体の局在等といった、タンパク質間相互作用の位置情報及び時間情報を検出することは重要である。
そこで、本発明によって、疾患関連変異を有するタンパク質と、その野生型タンパク質とのタンパク質間相互作用における差異を検出できるかどうかを、以下に示す方法にて試験した。
(プラスミドDNAの調製)
pp62(PB1)−KRas(WT)は、Genbankアクセション番号:NP_004976で特定されるアミノ酸配列をコードするDNA配列に基づき、実施例2に記載の方法と同様の方法にて作製した。
pp62(PB1)−KRas(G12D)は、pp62(PB1)−KRas(WT)に、配列番号:160に記載のDNA配列(5‘−CTTGTGGTAGTTGGAGCTGACGGCGTAGGCAAGAGTGCCTTG−3’)
からなるプライマーを用いて実施例17に記載の方法と同様の方法にて変異を導入した。phAG−cRaf(R59A)は、配列番号:162に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA配列(配列番号:161)に基づき、実施例2に記載の方法と同様の方法で作製した。なお、cRafについては、Harvey CD ら、Science.、2008年7月4日321巻、5885号、136−140ページに記載の方法を参照にして、当該タンパク質の変異体(cRaf(R59A))を本実施例において用いた。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
前記プラスミドDNAを下記組み合わせにて等量混合し、実施例2に記載の方法と同様の方法にて、Cos−7細胞に導入した。
pp62(PB1)−KRas(WT)とphAG−cRaf(R59A)との組み合わせ
pp62(PB1)−KRas(G12D)とphAG−cRaf(R59A)との組み合わせ。
細胞の観察は、細胞膜付近のみ励起することのできる、アーク光源全反射蛍光顕微鏡システム(オリンパス社製、IX71−ARCEVA)を用いて行った。また、pp62(PB1)−KRas(WT)とphAG−cRaf(R59A)との組み合わせについては、EGF無添加時の画像取得後、EGF(SIGMA社製)を最終濃度50ng/mlで添加し、37℃で30分間静置後に再び観察を行った。得られた結果を図42に示す。
図42に示した結果から明らかなように、p62(PB1)−KRas(WT)とAG−cRaf(R59A)とを共発現させた細胞において、外部からの刺激が無い状態(EGF非添加)では、蛍光輝点(会合体の形成)が観察されなかった。しかし、EGF添加に伴って細胞膜における会合体の形成が認められた。一方、pp62(PB1)−KRas(G12D)とphAG−cRaf(R59A)との組み合わせでは、外部からの刺激が無い状態であっても細胞膜で会合体の形成が認められた。
従って、本発明によれば、疾患に関連する変異によって生じるタンパク質間相互作用の差異(外部刺激依存性等)を明確に捉えることができるので、疾患に関連するタンパク質等の細胞内動態、機能の解析において、本発明の方法は有効である。
(実施例24)
<タンパク質間相互作用の検出20>
実施例19においても示した通り、本発明によりタンパク質間相互作用の経時的変化を検出できることを以下に示す方法にて確認した。
なお、実施例24において、対象としたタンパク質間相互作用は、BclX(L)とBakとの相互作用、BclX(L)とBaxとの相互作用である。Bak及びBaxは共にBH3ドメインを介して、BclX(L)と相互作用することが明らかになっているが、BclX(L)とBak BH3ドメインとの解離定数は340nMであり、BclX(L)とBax BH3ドメインとの解離定数は13μMである(Sattler Mら、Science.、1997年2月14日、275巻5302号、983〜986ページ参照)ことが明らかになっている。また、これらタンパク質間相互作用は、ABT−737(BH3模倣薬)によって競合的に阻害されることも知られている。
(プラスミドDNAの調製)
pBak−hAGは、配列番号:164に記載のアミノ酸配列からなる領域をコードするDNA(配列番号:163)を用いて、実施例2に記載の方法と同様の方法にて作製した。phAG−Baxは、配列番号:166に記載のアミノ酸配列からなる領域をコードするDNA(配列番号:165)を用いて、実施例2に記載の方法と同様の方法にて作製した。また、pp62(PB1)−BclX(L)については、実施例20に記載の通りである。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
下記組み合わせにてプラスミドDNAを等量混合したものを、実施例2に記載の方法と同様の方法にて、293細胞に遺伝子導入した。
pp62(PB1)−BclX(L)とpBak−hAGとの組み合わせ
pp62(PB1)−BclX(L)とphAG−Baxとの組み合わせ。
そして、これらプラスミドDNAを導入した293細胞に、ABT−737(santa cruz biotechnology社製)を最終濃度15μMになるよう添加し、実施例2に記載の方法と同様の方法にて、p62(PB1)−BclX(L)とBak−AGとを共発現させた細胞については30分おきに、p62(PB1)−BclX(L)とAG−Baxとを共発現させた細胞については、画像を5分おきに取得した。得られた画像に基づき、実施例11に記載の方法と同様の方法にて解析し、時間に対して蛍光輝点(会合体)の総蛍光強度をプロットしたグラフを作製した。なお、グラフのx軸は薬剤添加時を0とした時間(分)を表し、y軸は蛍光輝点(会合体)の総蛍光強度を表している。p62(PB1)−BclX(L)とBak−AGとを共発現させた細胞についての結果を図43に、p62(PB1)−BclX(L)とAG−Baxとを共発現させた細胞についての結果を図44に示す。
図43及び44に示した結果から明らかなように、BclX(L)とBakとの相互作用、BclX(L)とBaxとの相互作用、共にこれらタンパク質間相互作用依存的に形成された会合体の総蛍光輝度は、ABT−737の添加により経時的に減少していった。従って、本発明によれば、蛍光輝点を検出することによって、タンパク質間相互作用の消失するまでの時間を検出できることが実証された。
また、総蛍光輝度が半値を示した時間は、BclX(L)及びBakに関してはおよそ80分であり、BclX(L)及びBaxに関してはおよそ35分であった。このように、解離定数が小さいBclX(L)及びBak(解離定数:340nM)の方が、BclX(L)及びBax(解離定数:13μM)よりも会合体の減少が遅かったため、前述の通り、本発明によってタンパク質間相互作用の強弱を評価できることが確認された。
(実施例25)
<タンパク質間相互作用の検出21>
実施例24においても示した通り、本発明によりタンパク質間相互作用の発生の経時的変化を検出できることを以下に示す方法にて確認した。
先ず、実施例13に記載の、p62(PB1)−p53及びAG−MDM2を安定的に発現しているCHO−K1細胞を、35mmガラスベースディッシュ(旭硝子社製)に播種した。そして、その翌日、Nutlin−3(CALBIOCHEM社製)を最終濃度10μMで添加し、実施例1に記載の方法と同様の方法にて観察し、当該添加の2分前から15秒おきに画像を取得した。取得した画像は、実施例11に記載の方法と同様の方法を用いて会合体の総蛍光輝度を解析し、時間に対してプロットしたグラフを作製した。得られた結果を図45に示す。
図45に示した結果から明らかなように、Nutlin−3(CALBIOCHEM社製)添加とともに速やかに会合体の総蛍光輝度が減少し、その半値を示した時間はおよそ3分であった。従って、本発明によって、蛍光輝点を検出することによって、タンパク質間相互作用の消失するまでの時間及びその過程を検出できることが確認された。
(実施例26)
<タンパク質間相互作用の検出22>
上記同様に、本発明によりタンパク質間相互作用の発生の経時的変化を検出できることを以下に示す方法にて確認した。
先ず、実施例11に記載の、mTOR(FRB domain)−AG及びp62(PB1)−FKBP12を安定的に発現しているHeLaS3細胞に、rapamycinを最終濃度20nMになるよう添加し、実施例11に記載の方法と同様の方法にて解析した。得られた結果を図46に示す。
図46に示した結果から明らかなように、rapamycin添加後、経過時間と共に会合体の形成が誘導され、その半値を示す時間はおよそ3分であった。従って、本発明によれば、蛍光輝点を検出することによって、タンパク質間相互作用が発生する時間、及びその過程を検出できることが確認された。
(実施例27)
<タンパク質間相互作用の検出23>
EGF刺激により細胞内のERKが活性化されると、ERK基質(ERK_substrate)がリン酸化され、その結果、ERK_substrateとPin1タンパク質のwwドメイン(Pin1(ww))とが相互作用することが明らかになっている。さらに、MEK阻害剤であるU0126を添加すると、ERKの活性が低下し、結果的にERK基質が脱リン酸化を受け、ERK基質とPin1(ww)との相互作用が解消されることも知られている。
本実施例においては、ERKの活性化を介し、EGFによって間接的に誘導されるERK基質とPin1(ww)との相互作用を本発明によって検出できること、また、ERKの不活性化を介し、U0126によって間接的に抑制されるERK基質とPin1(ww)との相互作用を本発明によって検出できること、さらに、EGF刺激依存的なシグナル伝達を本発明によって経時的に検出できることを、以下に示す方法にて確認した。
(プラスミドDNAの調製)
本実施例において、EGF刺激依存的なERK基質とPin1(ww)との相互作用を検出するため、該相互作用をFRETを利用して検出する系(Christopher D.Harveyら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2008年12月9日、105巻、49号、19264〜19269ページ 参照)を参考にし、pp62(PB1)−ERK_substrate−P2A−hAG−Pin1(ww)−NESを、配列番号:168に記載のアミノ酸配列からなる領域をコードし、化学的に合成されたDNA(配列番号:167)を用いて、実施例2に記載の方法と同様の方法にて作製した。
なお、配列番号:168に記載のアミノ酸配列において、1〜102位のアミノ酸配列はp62(PB1)のアミノ酸配列を示す。103〜128位のアミノ酸配列をリンカー配列を示す。129〜138位のアミノ酸配列は、ERK基質であるヒトCdc25Cの43〜52位のアミノ酸配列を示し、139〜142位のアミノ酸配列はERKドッキング部位のアミノ酸配列を示す。146〜164位のアミノ酸配列はP2Aペプチドのアミノ酸配列を示す。165〜390位のアミノ酸配列はAGのアミノ酸配列を示す。391〜416位のアミノ酸配列はリンカー配列を示す。417〜470位のアミノ酸配列はPin1(ww)のアミノ酸配列を示す。471〜482位のアミノ酸配列はMEKの核排出シグナル(NES)のアミノ酸配列を示す。
また、p62(PB1)−ERK_substrateとAG−Pin1(ww)−NESとの間に挿入したP2Aペプチドは、豚テッショウウィルス(porcine teschovirus)由来のCHYSEL(シス作用性加水分解酵素因子:cis−acting hydrolase element)配列であり、タンパク質翻訳時にリボソームスキッピングが起こり、当該アミノ酸配列(ATNFSLLKQAGDVEENPGP)中の最後のプロリンの手前で分裂が起きることが知られている(Donnelly MLら、J Gen Virol.、2001年5月82巻5号1013〜1025ページ参照)。従って、pp62(PB1)−ERK_substrate−P2A−hAG−Pin1(ww)−NESを細胞に導入した場合には、結果的にp62(PB1)−ERK_substrateのC末端にP2Aペプチドの一部が融合したものと、AG−Pin1(ww)−NESのN末端にP2Aペプチドの一部が融合したものとが分裂して当該細胞内にて発現することになる。
(培養細胞への遺伝子導入、並びに遺伝子導入細胞の観察)
pp62(PB1)−ERK_substrate−P2A−hAG−Pin1(ww)−NESを、実施例1に記載の方法と同様の方法にて293細胞にトランスフェクションした。その翌日、EGF(SIGMA社製)を最終濃度50ng/mlになるよう細胞に添加し、さらにその14分後、U0126を最終濃度10μMになるよう細胞に添加した。また、細胞の観察は、EGF添加2分前から開始し、観察画像を15秒おきに取得した。取得した画像は実施例11に記載の方法と同様の方法にて蛍光輝点(会合体)の総蛍光輝度を解析し、時間に対してプロットしたグラフを作製した。得られた結果を図47に示す。
図47に示した結果から明らかなように、EGFを添加した後、p62(PB1)−ERK_substrateと、AG−Pin1(ww)−NESとが発現している細胞において、蛍光輝点(会合体)が時間とともに顕著に観察されるようになった。しかし、U0126を添加してからは、当該添加による内在性ERKの不活性化に応じて生じた、ERK基質の脱リン酸化の促進を反映し、緩やかに蛍光輝点が減少していった。
ERK基質とPin1(ww)と相互作用に示す蛍光輝点(会合体)の総蛍光輝度の経時的な変化は、Christopher D.Harveyら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2008年12月9日、105巻、49号、19264〜19269ページに記載のERK基質とPin1(ww)との相互作用をFRETを用いて測定した結果と同程度なものであった。
このように、本発明によれば、蛍光輝点を検出することによって、特定の刺激によって間接的に誘導又は阻害されるタンパク質間相互作用を検出することができる。また、本発明によれば、シグナル伝達を経時的に検出することもできる。
(実施例28)
<タンパク質間相互作用の検出24>
上記同様に、本発明によりタンパク質間相互作用の発生の経時的変化を検出できることを、実施例20に記載のHRasとcRafとの相互作用を通して確認した。
すなわち、実施例20に記載のpp62(PB1)−HRas(WT)と、実施例23に記載のphAG−cRaf(R59A)とを、実施例23に記載の方法と同様の方法にて、細胞に導入し、EGF(SIGMA社製)を最終濃度50ng/mlになるよう添加し、細胞膜付近のみの蛍光シグナルを検出可能な測定装置を使用して観察した。なお、観察は、EGF添加の5分前から開始し、添加後30分まで5分間隔で行い、更に30分後に行い、得られた画像データに基づき、実施例11に記載の方法と同様の方法にて解析し、時間に対して蛍光輝点(会合体)の総蛍光強度をプロットしたグラフを作製した。なお、グラフのx軸はEGF添加時を0とした時間(分)を表し、y軸は蛍光輝点(会合体)の総蛍光強度を表している。得られた結果を図48に示す。
図48に示した結果から明らかなように、EGF添加によって生じるHRasとcRafとの相互作用を経時的に検出することができた。
また、前述の通り、EGFを細胞に添加した場合、該細胞のEGF受容体から、Grb2−SOS複合体を介してシグナルが流れ、その結果HRasが活性化され、cRafと相互作用することが知られている。従って、図48に示した結果から、本発明によって、細胞に与えられる外部からの刺激(EGF等)に対して細胞内シグナル伝達系路(Grb2−SOS複合体を介するシグナル伝達経路等)が活性化する過程を経時的に追跡できることを確認できた。
(実施例29)
<タンパク質間相互作用の検出25>
前述の通り、RapamycinはFKBP12タンパク質に結合し、さらにこの複合体とmTORタンパク質のFRBドメイン(mTOR(FRB))とが結合することが明らかになっている。mTORタンパク質は、タンパク質合成や細胞増殖に関わるシグナル伝達を活性化する機能を有するセリン/スレオニンキナーゼであるが、かかるFKBP12タンパク質とRapamycinとの複合体形成により、その機能は阻害されることも明らかになっている。
さらに、FKBP12タンパク質については、触媒サブユニットA(カルシニューリンA)及び調節サブユニットB(カルシニューリンB)からなるプロテインホスファターゼ(カルシニューリン)とFK506を介して相互作用することが知られている。カルシニューリンは、T細胞等のシグナル伝達において非常に重要な機能を担っている酵素であるが、かかるFKBP12タンパク質とFK506との複合体形成により、その機能は阻害されることも明らかになっている。
そこで、本実施例においては、FKBP12と、mTOR(FRB)と、カルシニューリンA及びカルシニューリンBとを、同一の細胞内に共発現させ、当該細胞内における、Rapamycin依存的に形成されるFKBP12とmTOR(FRB)との複合体、並びにFK506依存的に形成されるFKBP12とカルシニューリンA及びカルシニューリンBとの複合体を、ひいてはこれら複合体が関与するシグナル伝達の阻害を、本発明によって検出、判別することができるかどうかを、以下に示す方法にて試験した。
なお、細胞に発現させる「カルシニューリンA及びカルシニューリンB」としては、カルシニューリンAの一部とカルシニューリンBの一部とが融合してなるmCABタンパク質を用いた(Clemons PAら、Chem Biol.、2002年1月、9巻、1号、49〜61ページ 参照)。
先ず、phAG−mCAB、pp62(PB1)−FKBP12及びpmTOR(FRB)−hKO1をHeLaS3細胞に導入した。phAG−mCABは、配列番号;170に記載のアミノ酸配列からなる領域をコードし、人工的に合成したDNA(配列番号:169)を用いて、実施例2に記載の方法と同様の方法にて作製した。pp62(PB1)−FKBP12については実施例2に記載の通りである。pmTOR(FRB)−hKO1(pmTOR(FRB domain)−hKO1)については実施例6に記載の通りである。
また、HeLaS3細胞は、実施例1に記載の方法と同様の方法にて培養した。さらに、遺伝子導入においては、8ウェルチャンバー(nunc社製)の2ウェルにHeLaS3細胞を播種し、その翌日に、実施例1に記載の方法と同様の方法にて、前記プラスミドDNA各々130ngをトランスフェクション試薬1μlを用いて、HeLaS3細胞に導入した。
そして、その24時間後、遺伝子導入した細胞を実施例1に記載の方法と同様の方法にて観察し、これにRamamycin又はFK506を最終濃度500nMになるよう添加し、さらに15分後観察を行った。得られた結果を図49に示す。
図49に示した結果から明らかなように、AG−mCAB、p62(PB1)−FKBP12及びmTOR(FRB)−KO1を発現させた細胞にRapamycinを添加することでmTOR(FRB)とFKBP12との相互作用がKO1由来の蛍光シグナルを発する蛍光輝点として観察された。一方、FK506を添加することでmCABとFKBP12との相互作用がAG由来の蛍光シグナルを発する蛍光輝点として観察された。
従って、本発明によって、同一細胞において多種類のタンパク質間相互作用、特に、同一細胞において異なる刺激に依存する多種のタンパク質間相互作用を検出できることが確認された。
また、このように同一細胞においてシグナル伝達に関わる多種のタンパク質間相互作用を検出することによって、同一細胞において多種類のシグナル伝達を検出、判別する方法を、本発明は提供することができる。
さらに、本実施例においても示した通り、生細胞内でタンパク質間相互作用の検出を行う他の方法であるFRETとは異なり、アクセプター及びドナーの条件に合致した蛍光タンパク質を選択する必要もなく、アクセプター蛍光タンパク質を励起してしまうcross excitation及びアクセプター蛍光タンパク質の蛍光を検出するフィルター(吸収フィルター)セットにドナー蛍光タンパク質の蛍光が漏れ込むbleed throughを考慮する必要がない。従って、本発明においては、波長特性の異なる多種の蛍光タンパク質を容易に選択し、組み合わせて利用することができる。
(実施例30)
<タンパク質間相互作用の検出26>
実施例2に記載の方法にて、表3に記載の公知のタンパク質間相互作用を、会合誘導タンパク質としてp62(PB1)、多量化能を有する蛍光タンパク質としてAGタンパク質を用いた本発明の方法にて検出できるかどうかを試験した。
その結果、図には示さないが、いずれの組み合わせにおいてもタンパク質間相互作用を蛍光輝点として検出できることが実証され、本発明が汎用的なタンパク質間相互作用の検出方法であることが示された。
以上説明したように、本発明によれば、タンパク質間相互作用をその固有な細胞内環境下において検出することができ、またタンパク質間相互作用の位置情報及び時間情報を検出することができる。また、本発明においては、タンパク質間相互作用の強弱と蛍光輝点の蛍光強度とが相関しているので、前記蛍光強度を指標として、タンパク質間相互作用に関与するアミノ酸残基の同定や、タンパク質間相互作用を調節する物質のスクリーニングにもこの方法を利用できる。
したがって、本発明のタンパク質間相互作用の検出方法等、並びにこれらの方法に用いられるためのキットは、生体内における様々なシグナル伝達や、様々な生体反応の制御等の解明、ひいては疾患メカニズムの解明を通した医薬品等の開発において有用である。
配列番号1及び2
<223> コドンをヒト化したAzami Green(AG)
配列番号3及び4
<223> p62のPB1ドメイン
配列番号5及び6
<223> MEK5のPB1ドメイン
配列番号7及び8
<223> Nbr1のPB1ドメイン
配列番号9及び10
<223> PKCiotaのPB1ドメイン
配列番号11及び12
<223> TFGのPB1ドメイン
配列番号13及び14
<223> TELのSAMドメイン
配列番号15及び16
<223> EphB2のSAMドメイン
配列番号17及び18
<223> DGKdeltaのSAMドメイン
配列番号19及び20
<223> Tankyrase−1のSAMドメイン
配列番号21及び22
<223> mTORのFRBドメイン
配列番号23及び24
<223> FKBP12
配列番号25及び26
<223> p53
配列番号27及び28
<223> MDM2
配列番号29及び30
<223> Sec5
配列番号31及び32
<223> RalB
配列番号33及び34
<223> RalBタンパク質Q72L変異体
配列番号35及び36
<223> RalBタンパク質S28N変異体
配列番号37及び38
<223> カルモジュリン
配列番号39及び40
<223> M13ペプチド
配列番号41及び42
<223> HRas
配列番号43及び44
<223> cRaf
配列番号45及び46
<223> Smac
配列番号47及び48
<223> XIAP
配列番号49及び50
<223> BclX(L)
配列番号51及び52
<223> BAD
配列番号53及び54
<223> Rac1
配列番号55及び56
<223> PBD
配列番号57
<223> 人工的に合成されたhAGフォワードプライマー1の配列
配列番号58
<223> 人工的に合成されたhAGリバースプライマー1の配列
配列番号59
<223> 人工的に合成されたp62(PB1)フォワードプライマー1の配列
配列番号60
<223> 人工的に合成されたp62(PB1)リバースプライマー1の配列
配列番号61
<223> 人工的に合成されたhAGフォワードプライマー2の配列
配列番号62
<223> 人工的に合成されたhAGリバースプライマー2の配列
配列番号63
<223> 人工的に合成されたp62(PB1)フォワードプライマー2の配列
配列番号64
<223> 人工的に合成されたp62(PB1)リバースプライマー2の配列
配列番号65
<223> 人工的に合成されたp62(PB1)フォワードプライマー3の配列
配列番号66
<223> 人工的に合成されたp62(PB1)リバースプライマー3の配列
配列番号67
<223> 人工的に合成されたmTOR(FRB)フォワードプライマーの配列
配列番号68
<223> 人工的に合成されたmTOR(FRB)リバースプライマーの配列
配列番号69
<223> 人工的に合成されたFKBP12フォワードプライマーの配列
配列番号70
<223> 人工的に合成されたFKBP12リバースプライマーの配列
配列番号71
<223> 人工的に合成されたMEK(PB1)フォワードプライマーの配列
配列番号72
<223> 人工的に合成されたMEK(PB1)リバースプライマーの配列
配列番号73
<223> 人工的に合成されたNbr1(PB1)フォワードプライマーの配列
配列番号74
<223> 人工的に合成されたNbr1(PB1)リバースプライマーの配列
配列番号75
<223> 人工的に合成されたPKCiota(PB1)フォワードプライマーの配列
配列番号76
<223> 人工的に合成されたPKCiota(PB1)リバースプライマーの配列
配列番号77
<223> 人工的に合成されたTFG(PB1)フォワードプライマーの配列
配列番号78
<223> 人工的に合成されたTFG(PB1)リバースプライマーの配列
配列番号79
<223> 人工的に合成されたTEL(SAM)フォワードプライマーの配列
配列番号80
<223> 人工的に合成されたTEL(SAM)リバースプライマーの配列
配列番号81
<223> 人工的に合成されたEphB2(SAM)フォワードプライマーの配列
配列番号82
<223> 人工的に合成されたEphB2(SAM)リバースプライマーの配列
配列番号83
<223> 人工的に合成されたDGKdelta(SAM)フォワードプライマーの配列
配列番号84
<223> 人工的に合成されたDGKdelta(SAM)リバースプライマーの配列
配列番号85
<223> 人工的に合成されたTankyrase(SAM)フォワードプライマーの配列
配列番号86
<223> 人工的に合成されたTankyrase(SAM)リバースプライマーの配列
配列番号87
<223> 人工的に合成されたTFG(PB1)フォワードプライマー2の配列
配列番号88
<223> 人工的に合成されたTFG(PB1)リバースプライマー2の配列
配列番号89
<223> 人工的に合成されたTEL(SAM)フォワードプライマー2の配列
配列番号90
<223> 人工的に合成されたTEL(SAM)リバースプライマー2の配列
配列番号91
<223> 人工的に合成されたDGKdelta(SAM)フォワードプライマー2の配列
配列番号92
<223> 人工的に合成されたDGKdelta(SAM)リバースプライマー2の配列
配列番号93
<223> 人工的に合成されたTankyrase(SAM)フォワードプライマー2の配列
配列番号94
<223> 人工的に合成されたTankyrase(SAM)リバースプライマー2の配列
配列番号95
<223> 人工的に合成されたhKO1フォワードプライマーの配列
配列番号96
<223> 人工的に合成されたhKO1リバースプライマーの配列
配列番号97
<223> 人工的に合成されたp53フォワードプライマーの配列
配列番号98
<223> 人工的に合成されたp53リバースプライマーの配列
配列番号99
<223> 人工的に合成されたMDM2フォワードプライマーの配列
配列番号100
<223> 人工的に合成されたMDM2リバースプライマーの配列
配列番号101
<223> 人工的に合成されたSec5フォワードプライマーの配列
配列番号102
<223> 人工的に合成されたSec5リバースプライマーの配列
配列番号103
<223> 人工的に合成されたRalBフォワードプライマーの配列
配列番号104
<223> 人工的に合成されたRalBリバースプライマーの配列
配列番号105
<223> 人工的に合成されたRalB(Q72L)変異プライマーの配列
配列番号106
<223> 人工的に合成されたRalB(S28N)変異プライマーの配列
配列番号107
<223> 人工的に合成されたカルモジュリンフォワードプライマーの配列
配列番号108
<223> 人工的に合成されたカルモジュリンリバースプライマーの配列
配列番号109
<223> 人工的に合成されたM13ペプチドフォワードプライマーの配列
配列番号110
<223> 人工的に合成されたM13ペプチドリバースプライマーの配列
配列番号111
<223> 人工的に合成されたAGNLSフォワードプライマーの配列
配列番号112
<223> 人工的に合成されたAGNLSリバースプライマーの配列
配列番号113
<223> 人工的に合成されたHRasフォワードプライマーの配列
配列番号114
<223> 人工的に合成されたHRasリバースプライマーの配列
配列番号115
<223> 人工的に合成されたKRasフォワードプライマーの配列
配列番号116
<223> 人工的に合成されたKRasリバースプライマーの配列
配列番号117
<223> 人工的に合成されたHRas変異プライマーの配列
配列番号118
<223> 人工的に合成されたcRafフォワードプライマーの配列
配列番号119
<223> 人工的に合成されたcRafリバースプライマーの配列
配列番号120
<223> 人工的に合成されたSmacフォワードプライマーの配列
配列番号121
<223> 人工的に合成されたXIAPフォワードプライマーの配列
配列番号122
<223> 人工的に合成されたXIAPリバースプライマーの配列
配列番号123
<223> 人工的に合成されたBclX(L)フォワードプライマーの配列
配列番号124
<223> 人工的に合成されたBclX(L)リバースプライマーの配列
配列番号125
<223> 人工的に合成されたBADフォワードプライマー1の配列
配列番号126
<223> 人工的に合成されたBADフォワードプライマー2の配列
配列番号127
<223> 人工的に合成されたBADリバースプライマーの配列
配列番号128
<223> 人工的に合成されたRac1フォワードプライマーの配列
配列番号129
<223> 人工的に合成されたRac1リバースプライマーの配列
配列番号130
<223> 人工的に合成されたPBDフォワードプライマーの配列
配列番号131
<223> 人工的に合成されたPBDリバースプライマーの配列
配列番号132
<223> KO(クサビラオレンジ)単量体型の塩基配列
配列番号133
<223> KO(クサビラオレンジ)単量体型のアミノ酸配列
配列番号134及び135
<223> コドンをヒト化したmAG1
配列番号136及び137
<223> mMiCy1
配列番号138及び139
<223> mKikGR1
配列番号140及び141
<223> KCy1
配列番号142及び143
<223> dAG(AB)
配列番号144及び145
<223> dAG(AC)
配列番号146及び147
<223> TGuv
配列番号148及び149
<223> モミジ
配列番号150及び151
<223> COR3.01
配列番号152及び153
<223> DsRed2
配列番号154、159及び160
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
配列番号155、157、161、163、165、167及び169
<223> 人工的に合成されたポリヌクレオチドの配列
配列番号156、158、162、164、166、168及び170
<223> 人工的に合成されたポリペプチドの配列
配列番号171及び172
<223> COR5

Claims (9)

  1. 第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を検出するための方法であって、
    第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させる工程と、
    前記細胞内における第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合により生じる蛍光輝点を検出する工程と、
    前記蛍光輝点の検出により、第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を判定する工程と、
    含み、
    前記会合誘導タンパク質が、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインからなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であり、かつ
    前記蛍光輝点が、拡散状態で存在している前記多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である、方法。
  2. 前記相互作用の発生若しくは消失、該相互作用の発生若しくは消失するまでの時間、又は該相互作用の持続時間を検出するために、前記蛍光輝点を検出する、請求項1に記載の方法。
  3. 特定の刺激に応答する前記相互作用の発生若しくは消失、該相互作用の発生若しくは消失するまでの時間、又は該相互作用の持続時間を検出するために、前記蛍光輝点を検出する、請求項1に記載の方法。
  4. 特定のタンパク質と相互作用するタンパク質をスクリーニングするための方法であって、第1のタンパク質及び第2のタンパク質のいずれか一方が該特定のタンパク質であり、他方が被検タンパク質であり、前記蛍光輝点の検出により、該特定のタンパク質と相互作用するタンパク質を選択する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記相互作用に関与する第1のタンパク質中のアミノ酸残基又は第2のタンパク質中のアミノ酸残基を同定するための方法であって、該第1のタンパク質及び該第2のタンパク質のいずれかに変異が導入されたタンパク質を用い、前記蛍光輝点の強度が、変異が導入されていないタンパク質を用いた場合と比較して減弱した場合は、該変異が導入されたアミノ酸残基を前記相互作用に関与すると判定する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の方法。
  6. 第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を調節する物質をスクリーニングするための方法であって、
    被検化合物存在下で、第1のタンパク質及び会合誘導タンパク質を含む第1の融合タンパク質と、第2のタンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む第2の融合タンパク質とを細胞内に発現させる工程と、
    前記細胞内において第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質との会合により生じる蛍光輝点を検出する工程と、
    前記蛍光輝点の蛍光強度が前記被検化合物の非存在下において生じる蛍光輝点の蛍光強度より増大する場合は、前記被検化合物を前記相互作用の誘導物質として選択し、前記蛍光輝点の蛍光強度が前記被検化合物の非存在下において生じる蛍光輝点の蛍光強度より減弱する場合は、前記被検化合物を前記相互作用の抑制物質として選択する工程と、
    含み、
    前記会合誘導タンパク質が、p62のPB1ドメイン、TFGのPB1ドメイン、PKCiotaのPB1ドメイン、TELのSAMドメイン、DGKdeltaのSAMドメイン及びTankyrase−1のSAMドメインからなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であり、かつ
    前記蛍光輝点が、拡散状態で存在している前記多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である、方法。
  7. 会合誘導タンパク質をスクリーニングするための方法であって、
    (a)被検タンパク質及びmAG1を含む融合蛋白質を細胞内に発現させる工程と、
    (b)前記被検タンパク質及び多量化能を有する蛍光タンパク質を含む融合蛋白質を細胞内に発現させる工程と、
    (c)(a)に記載の工程においては蛍光輝点が検出されず、(b)に記載の工程においては蛍光輝点が検出された場合に、前記被検タンパク質を会合誘導タンパク質として選択する工程と、
    含み、かつ
    前記蛍光輝点が、拡散状態で存在している前記多量化能を有する蛍光タンパク質の蛍光強度よりも高い蛍光強度を有する、0.2〜5μmの領域である、方法。
  8. 前記多量化能を有する蛍光タンパク質が、monomeric Kusabira−Orange2、Azami−Green、Kusabira−Orange1、dimeric Keima−Red、Kikume Green−Red、monomeric Keima−Red、monomeric Midoriishi−Cyan1、monomeric Kusabira−Orange1、monomeric Kikume Green−Red1、Midoriishi−Cyan1、Kusabira−Cyan1、dimeric Azami−Green(AB)、dimeric Azami−Green(AC)、TGuv、Momiji、COR3.01、COR5及びDsRed2からなる群から選択される少なくとも一の蛍光タンパク質である、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の方法。
  9. 下記(a)及び(b)、又は(c)と、使用説明書とを含み、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の方法に用いられるためのキット
    (a)会合誘導タンパク質をコードするDNAと、該会合誘導タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター、又は第1の融合タンパク質をコードするベクター
    (b)多量化能を有する蛍光タンパク質をコードするDNAと、該蛍光タンパク質と融合して発現されるように、任意のタンパク質をコードするDNAの挿入を可能にするクローニング部位とを含むベクター、又は第2の融合タンパク質をコードするベクター
    (c)第1の融合タンパク質をコードするベクターと第2の融合タンパク質をコードするベクターとを保持する形質転換細胞。
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