以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置1の平面図である。また、図2は、基板処理装置1の縦断面図である。この基板処理装置1は、半導体用途の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置であり、円形のシリコンの基板Wに薬液処理および純水、アルコール等のリンス液を用いたリンス処理を行ってから乾燥処理を行う。より具体的には、基板Wに、SC1液、DHF液、SC2液等の薬液を供給して基板Wを洗浄処理(薬液処理)した後、リンス液を用いてリンス処理を行うことで基板W上から薬液を除去し、最後に基板Wの乾燥処理を行う枚葉式の基板処理装置である。なお、図1はスピンチャック20に基板Wが保持されていない状態を示し、図2はスピンチャック20に基板Wが保持されている状態を示している。
基板処理装置1は、チャンバー10内に、主たる要素として基板Wを水平姿勢(法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持するスピンチャック20と、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための上面処理液ノズル30と、スピンチャック20の周囲を取り囲む処理カップ40と、を備える。また、チャンバー10内における処理カップ40の周囲には、チャンバー10の内側空間を上下に仕切る仕切板15が設けられている。なお、本明細書において、処理液は、薬液、リンス液および洗浄液のすべてを含む総称である。
チャンバー10は、鉛直方向に沿う側壁11、側壁11によって囲まれた空間の上側を閉塞する天井壁12および下側を閉塞する床壁13を備える。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が基板Wの処理空間となる。また、チャンバー10の側壁11の一部には、チャンバー10に対して基板Wを搬出入するための搬出入口およびその搬出入口を開閉するシャッターが設けられている(いずれも図示省略)。
チャンバー10の天井壁12には、基板処理装置1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバー10内の処理空間に供給するためのファンフィルタユニット(FFU)14が取り付けられている。ファンフィルタユニット14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバー10内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPAフィルタ)を備えており、チャンバー10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。ファンフィルタユニット14から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレートを天井壁12の直下に設けるようにしても良い。
スピンチャック20は、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定された円板形状のスピンベース21を備える。スピンベース21の下方には回転軸24を回転させるスピンモータ22が設けられる。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内にて回転させる。また、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲むように筒状のカバー部材23が設けられている。
円板形状のスピンベース21の外径は、スピンチャック20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する保持面21aを有している。
スピンベース21の保持面21aの周縁部には複数(本実施形態では4本)のチャックピン26が立設されている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの外周円に対応する円周上に沿って均等な間隔をあけて(本実施形態のように4個のチャックピン26であれば90°間隔にて)配置されている。図11は、チャックピン26の拡大断面図である。この図に示すように、チャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示しないリンク機構により連結されたベース部材26aと、ベース部材26aに連結され基板Wを挟持するためのV字状の溝部26bが形成された挟持部材26cとからなる。
複数のチャックピン26は、リンク機構によって連動して駆動される。すなわち、複数のチャックピン26はリンク機構によりスピンベース21の回転軸CXを中心に基板Wの半径方向に連動して移動することが可能である。リンク機構が各チャックピン26を半径方向内側に移動させると、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端に当接させて基板Wを把持することにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で保持面21aに近接した水平姿勢にて保持することができる(図2参照)。また、リンク機構が各チャックピン26を半径方向外側に移動させると、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端から離間させて把持を解除することができる。
スピンモータ22を覆うカバー部材23は、その下端がチャンバー10の床壁13に固定され、上端がスピンベース21の直下にまで到達している。カバー部材23の上端部には、カバー部材23から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材25が設けられている。複数のチャックピン26による把持によってスピンチャック20が基板Wを保持した状態にて、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸CXまわりに基板Wを回転させることができる。なお、スピンモータ22の駆動は制御部9によって制御される。
上面処理液ノズル30は、ノズルアーム32の先端に吐出ヘッド31を取り付けて構成されている。ノズルアーム32の基端側はノズル基台33に固定して連結されている。ノズル基台33は図示を省略するモータによって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。ノズル基台33が回動することにより、上面処理液ノズル30の吐出ヘッド31はスピンチャック20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で水平方向に沿って円弧状に移動する。上面処理液ノズル30には、複数種の処理液(少なくとも純水を含む)が供給されるように構成されている。処理位置にて上面処理液ノズル30の吐出ヘッド31から吐出された処理液はスピンチャック20に保持された基板Wの上面に着液する。また、ノズル基台33の回動によって、上面処理液ノズル30はスピンベース21の保持面21aの上方にて揺動可能とされている。
一方、回転軸24の内側を挿通するようにして鉛直方向に沿って下面処理液ノズル28が設けられている。下面処理液ノズル28の上端開口は、スピンチャック20に保持された基板Wの下面中央に対向する位置に形成されている。下面処理液ノズル28にも複数種の処理液が供給されるように構成されている。下面処理液ノズル28から吐出された処理液はスピンチャック20に保持された基板Wの下面に着液する。
また、基板処理装置1には、上面処理液ノズル30とは別に二流体ノズル60が設けられている。二流体ノズル60は、純水などの処理液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体(二流体)を基板Wに噴射するノズルである。二流体ノズル60は、ノズルアーム62の先端に図示省略の液体ヘッドを取り付けるとともに、ノズルアーム62から分岐するように設けられた支持部材に気体ヘッド64を取り付けて構成されている。ノズルアーム62の基端側はノズル基台63に固定して連結されている。ノズル基台63は図示を省略するモータによって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。ノズル基台63が回動することにより、二流体ノズル60はスピンチャック20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で水平方向に沿って円弧状に移動する。液体ヘッドには純水などの処理液が供給され、気体ヘッド64には加圧された不活性ガス(本実施形態では窒素ガス(N2))が供給される。処理位置にて二流体ノズル60から噴出された処理液の混合流体はスピンチャック20に保持された基板Wの上面に吹き付けられる。
スピンチャック20を取り囲む処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えている。内カップ41は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この内カップ41は、平面視円環状の底部44と、底部44の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46と、内壁部45と外壁部46との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(スピンチャック20に保持される基板Wの回転軸CXに近づく方向)斜め上方に延びる第1案内部47と、第1案内部47と外壁部46との間から上方に立ち上がる円筒状の中壁部48とを一体的に備えている。
内壁部45は、内カップ41が最も上昇された状態で、カバー部材23と鍔状部材25との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。中壁部48は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中カップ42の後述する第2案内部52と処理液分離壁53との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。
第1案内部47は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部47bを有している。また、内壁部45と第1案内部47との間は、使用済みの処理液を集めて廃棄するための廃棄溝49とされている。第1案内部47と中壁部48との間は、使用済みの処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝50とされている。さらに、中壁部48と外壁部46との間は、内側回収溝50とは種類の異なる処理液を集めて回収するための円環状の外側回収溝51とされている。
廃棄溝49には、この廃棄溝49に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝49内を強制的に排気するための図示省略の排気液機構が接続されている。排気液機構は、例えば、廃棄溝49の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。また、内側回収溝50および外側回収溝51には、内側回収溝50および外側回収溝51にそれぞれ集められた処理液を基板処理装置1の外部に設けられた回収タンクに回収するための回収機構(いずれも図示省略)が接続されている。なお、内側回収溝50および外側回収溝51の底部は、水平方向に対して微少角度だけ傾斜しており、その最も低くなる位置に回収機構が接続されている。これにより、内側回収溝50および外側回収溝51に流れ込んだ処理液が円滑に回収される。
中カップ42は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この中カップ42は、第2案内部52と、この第2案内部52に連結された円筒状の処理液分離壁53とを一体的に備えている。
第2案内部52は、内カップ41の第1案内部47の外側において、第1案内部47の下端部と同軸円筒状をなす下端部52aと、下端部52aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部52bと、上端部52bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部52cとを有している。下端部52aは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47と中壁部48との間に適当な隙間を保って内側回収溝50内に収容される。また、上端部52bは、内カップ41の第1案内部47の上端部47bと上下方向に重なるように設けられ、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47の上端部47bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部52bの先端を下方に折り返して形成される折返し部52cは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、折返し部52cが第1案内部47の上端部47bの先端と水平方向に重なるような長さとされている。
また、第2案内部52の上端部52bは、下方ほど肉厚が厚くなるように形成されており、処理液分離壁53は上端部52bの下端外周縁部から下方に延びるように設けられた円筒形状を有している。処理液分離壁53は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中壁部48と外カップ43との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。
外カップ43は、中カップ42の第2案内部52の外側において、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この外カップ43は、第3案内部としての機能を有する。外カップ43は、第2案内部52の下端部52aと同軸円筒状をなす下端部43aと、下端部43aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部43bと、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cとを有している。
下端部43aは、内カップ41と外カップ43とが最も近接した状態で、中カップ42の処理液分離壁53と内カップ41の外壁部46との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。また、上端部43bは、中カップ42の第2案内部52と上下方向に重なるように設けられ、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、第2案内部52の上端部52bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cは、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、折返し部43cが第2案内部52の折返し部52cと水平方向に重なるように形成されている。
また、内カップ41、中カップ42および外カップ43は互いに独立して昇降可能とされている。すなわち、内カップ41、中カップ42および外カップ43のそれぞれには個別に昇降機構(図示省略)が設けられており、それによって別個独立して昇降される。このような昇降機構としては、例えばボールネジ機構やエアシリンダなどの公知の種々の機構を採用することができる。
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバー10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であっても良いし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであっても良い。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施形態では上面処理液ノズル30および二流体ノズル60のノズル基台33,63を支持するための支持軸を通すための貫通穴が形成されている。
仕切板15の外周端はチャンバー10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む端縁部は外カップ43の外径よりも大きな径の円形形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
また、チャンバー10の側壁11の一部であって、床壁13の近傍には排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は図示省略の排気機構に連通接続されている。ファンフィルタユニット14から供給されてチャンバー10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15との間を通過した空気は排気ダクト18から装置外に排出される。
基板処理装置1に設けられた制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部9は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどを備えて構成される。制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置1の各動作機構が制御部9に制御され、基板処理装置1における処理が進行する。
上述の構成を有する基板処理装置1においては、スピンチャック20に通常の処理対象となる基板Wに代えて洗浄用治具CTを装着して処理カップ40の洗浄処理を行うことができる。図3は、スピンチャック20に装着された洗浄用治具CTを示す平面図である。また、図4は、図3のA−A線から見た断面図である。
洗浄用治具CTは略円板形状の部材である。洗浄用治具CTの径は、少なくとも処理対象となる基板Wの径よりも大きい。つまり、洗浄用治具CTの径は、複数のチャックピン26が配置された円の径よりも大きい。洗浄用治具CTには、下端が開放された内部空間73が設けられている。また、洗浄用治具CTの上面には、ベース面71と傾斜面72とが形成されている。
洗浄用治具CTは、スピンチャック20のスピンベース21に着脱自在に装着可能である。洗浄用治具CTをスピンベース21に装着する方式は適宜のものとすることができる。例えば、洗浄用治具CTの周縁下端部に把持機構を設け、その把持機構によってスピンベース21の外周端を把持するようにしても良い。また、図12に示すように、洗浄用治具CTの底部外周全面に沿って通常の基板Wと略同一の厚みを有する鍔部74を設け、この鍔部74を複数のチャックピン26で把持することにより、洗浄用治具CTをスピンチャック20に保持するようにしても良い。
或いは、図13に示すように、洗浄用治具CTの底面75にチャックピン26を収容可能な嵌合部76と、突起部77とを設ける。また、スピンベース21の保持面21a上面には、この突起部77と対向する位置に突起部77と略同一サイズの嵌合部21bを形成する。そして、洗浄用治具CTの突起部77をスピンベース21の嵌合部21bに嵌合させることにより、洗浄用治具CTをスピンベース21に装着するようにしても良い。さらに、洗浄用治具CTに搬送用ロボットのアームが進入可能な凹部78を設け、洗浄用治具CTの底面75がスピンベース21の保持面21aに密着した状態から洗浄用治具CTを該保持面21aから取り外すことができるようにしておくことが望ましい。或いは、洗浄用治具CTの自重によってスピンベース21の保持面21aに単に洗浄用治具CTを載置するだけでも良い。
洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、内部空間73内に複数のチャックピン26の全てが収納され、図3,4に示すように、傾斜面72によって複数のチャックピン26が覆われる。内部空間73は、少なくとも複数のチャックピン26を収容できる空間であれば良く、例えば複数のチャックピン26に1対1で対応するように設けられた複数の個別の空間であっても良い。
洗浄用治具CTのベース面71は平坦な面である。洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、ベース面71は水平面となる。洗浄用治具CTの傾斜面72は、ベース面71の上面周縁部の全周にわたって形設されている。第1実施形態においては、傾斜面72は、略円環形状であり、その内周端の高さ位置はベース面71の外周端の高さ位置と等しい。すなわち、ベース面71と傾斜面72とは、ベース面71の外周端において連続した面を形成している。但し、ベース面71と傾斜面72とは、同一面ではなく、180°未満の鈍角をなす。
図4に示すように、傾斜面72は、ベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜している。すなわち、傾斜面72は、ベース面71の中心から外周に向けて次第に高さが高くなるように設けられている。ベース面71に対する傾斜面72の傾斜角度については適宜のものとすることができる。第1実施形態においては、ベース面71の全周にわたって傾斜面72の傾斜角度および高さ位置は一定である。
次に、基板処理装置1における動作について説明する。まず、通常の処理対象となる基板Wの処理手順について概説する。基板処理装置1における一般的な基板Wの処理手順の概略は、基板Wの表面に薬液を供給して所定の薬液処理を行った後、純水を供給して純水リンス処理を行い、その後基板Wを高速回転させて振り切り乾燥処理を行うというものである。基板Wの処理を行う際には、スピンチャック20に基板Wを保持するとともに、処理カップ40が昇降動作を行う。薬液処理を行うときには、例えば外カップ43のみが上昇し、外カップ43の上端部43bと中カップ42の第2案内部52の上端部52bとの間に、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲を取り囲む開口が形成される。この状態にて基板Wがスピンチャック20とともに回転され、上面処理液ノズル30および下面処理液ノズル28から基板Wの上面および下面に薬液が供給される。供給された薬液は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面および下面に沿って流れ、やがて基板Wの端縁部から側方に向けて飛散される。これにより、基板Wの薬液処理が進行する。回転する基板Wの端縁部から飛散した薬液は外カップ43の上端部43bによって受け止められ、外カップ43の内面を伝って流下し、外側回収溝51に回収される。
また、純水リンス処理を行うときには、例えば、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが上昇し、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲が内カップ41の第1案内部47によって取り囲まれる。この状態にて基板Wがスピンチャック20とともに回転され、上面処理液ノズル30および下面処理液ノズル28から基板Wの上面および下面に純水が供給される。供給された純水は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面および下面に沿って流れ、やがて基板Wの端縁部から側方に向けて飛散される。これにより、基板Wの純水リンス処理が進行する。回転する基板Wの端縁部から飛散した純水は第1案内部47の内壁を伝って流下し、廃棄溝49から排出される。なお、純水を薬液とは別経路にて回収する場合には、中カップ42および外カップ43を上昇させ、中カップ42の第2案内部52の上端部52bと内カップ41の第1案内部47の上端部47bとの間に、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲を取り囲む開口を形成するようにしても良い。
また、振り切り乾燥処理を行うときには、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが下降し、外カップ43の上端部43bの外側上面43dがスピンチャック20に保持された基板Wよりも下方に位置する。この状態にて基板Wがスピンチャック20とともに高速回転され、基板Wに付着していた水滴が遠心力によって振り切られ、乾燥処理が行われる。
このような通常の基板Wの処理が進行するにつれて、飛散した処理液中に含まれる汚染物質が付着して処理カップ40に徐々に汚染が蓄積される。特に、内カップ41、中カップ42および外カップ43の上側湾曲部分、つまり内カップ41の上端部47b、中カップ42の上端部52bおよび外カップ43の上端部43bの内側には比較的汚染が蓄積されやすい。処理カップ40に蓄積した汚染をそのまま放置すると、処理対象となる基板Wに再付着して処理不良の原因となるおそれがある。
このため、本実施形態においては、洗浄用治具CTを用いて処理カップ40の洗浄を行っている。処理カップ40の洗浄は、処理対象となる基板Wの処理を行っていないとき、例えば処理ロット間のタイミングにて行うのが好ましい。
処理カップ40の洗浄を行うときには、前記した複数の装着方法のいずれかを使用して、スピンチャック20のスピンベース21に洗浄用治具CTを装着する。前記した複数の装着方法のいずれを使用した場合でも、スピンチャック20に洗浄用治具CTが装着されることによって、スピンベース21の保持面21aに立設された複数のチャックピン26が傾斜面72によって覆われる。
続いて、処理カップ40を適宜昇降させる。処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えている。これら3つのカップのうち洗浄処理の対象となるカップを上昇させる。例えば、外カップ43の上側湾曲部分を洗浄する場合には、外カップ43のみを上昇させ、外カップ43の上端部43bと中カップ42の第2案内部52の上端部52bとの間に開口を形成する。また、中カップ42の上側湾曲部分を洗浄する場合には、中カップ42および外カップ43を上昇させ、中カップ42の第2案内部52の上端部52bと内カップ41の第1案内部47の上端部47bとの間に開口を形成する。さらに、内カップ41の上側湾曲部分を洗浄する場合には、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てを上昇させる。
本実施形態では、外カップ43を洗浄するべく、外カップ43のみを上昇させる。外カップ43の高さ位置は適宜のものとすることができるが、少なくとも洗浄用治具CTの上端(傾斜面72の外周端)よりも上端部43bが上となるように外カップ43を上昇させる。この状態にてスピンモータ22の駆動によってスピンチャック20のスピンベース21が回転軸CXのまわりで回転する。スピンベース21が回転することによって、それに装着された洗浄用治具CTも回転する。なお、スピンベース21の回転数は、特に限定されるものではなく適宜の値とすることができ、その値は制御部9によって制御される。
スピンベース21を回転させつつ、上面処理液ノズル30のノズル基台33がノズルアーム32を回動させて吐出ヘッド31を回転する洗浄用治具CTの上方に移動させる。そして、回転する洗浄用治具CTのベース面71の中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液(本実施形態では純水)を供給する。また、制御部9の制御によってノズル基台33がノズルアーム32を揺動させ、洗浄液を供給する吐出ヘッド31をベース面71の範囲内で往復移動させるようにしても良い。
図5は、回転する洗浄用治具CTに供給された洗浄液の挙動を示す図である。回転する洗浄用治具CTのベース面71の中心近傍に洗浄液を供給すると、遠心力によってベース面71の中心から外周へと向けて洗浄液が流れる。ベース面71と傾斜面72とは連続した面となっているため、ベース面71の外周へと向けて流れる洗浄液は円滑にベース面71から傾斜面72に沿って導かれ、洗浄用治具CTの径方向斜め上方に向けて飛散される。傾斜面72によって斜め上方に向けて飛散された洗浄液は、図5に示すように、外カップ43の上端部43bに到達する。洗浄液が到達することによって、外カップ43の湾曲部分である上端部43bに付着していた汚染物が洗い流されて洗浄される。換言すれば、ベース面71に対する傾斜面72の傾斜角度は、洗浄用治具CTと外カップ43の高さ方向における配置関係に応じて、傾斜面72から飛散する洗浄液が外カップ43の上端部43bに到達する角度であれば良い。
ところで、上述の通り、回転する洗浄用治具CTのベース面71の上面中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液を供給すると、その洗浄液には遠心力が作用してベース面71の中心から外周へと向けて洗浄液が流れる。このとき、吐出ヘッド31からベース面71上に供給された直後の洗浄液は回転方向の速度成分を有していない。その一方、ベース面71の中心近傍に供給されて外周へと向けて流れる洗浄液は、回転するベース面71との摩擦によって徐々に洗浄用治具CTの回転方向の速度成分をも有するようになる。すなわち、洗浄液は遠心力によって洗浄用治具CTの外周に向けて流れるとともに、洗浄液自身の慣性によって洗浄用治具CTの周方向にも流れることとなる。その結果、洗浄用治具CTの中心から外周へと向けて流れる洗浄液は、円板形状の洗浄用治具CTの径方向に沿って直線的には流れず、その径方向から湾曲するような軌跡を描きつつ流れる。
第1実施形態においては、ベース面71の周縁部の全周にわたってベース面71と傾斜面72とが連続した面となっているため、供給された洗浄液が洗浄用治具CTの外周へと向けて流れるとともに、周方向にも流れたとしても、円滑にベース面71から傾斜面72へと案内されることとなる。すなわち、供給された洗浄液が洗浄用治具CTの何らかの部材と衝突するようなことはなく、そのような衝突に起因した意図しない洗浄液の液はねを抑制することができる。その結果、液はねに起因した基板処理装置1内の汚染を防止することができる。
また、スピンベース21上の複数のチャックピン26は洗浄用治具CTの傾斜面72によって覆われている。よって、洗浄用治具CTのベース面71上に供給された洗浄液がチャックピン26に衝突することもなく、チャックピン26による意図しない液撥ねも防止することができる。
このようにして、外カップ43の内側の特に汚染が蓄積されやすい外カップ43の湾曲部分である上端部43bは、洗浄用治具CTの傾斜面72から斜め上方に向けて飛散された洗浄液が到達することにより効果的に洗浄されることとなる。洗浄処理に際しては洗浄用治具CTからの洗浄液の飛散とあわせて、外カップ43を上下に往復移動させるようにしても良い。さらには、洗浄用治具CTの回転数を調整して外カップ43に吹き付ける洗浄液の速度を変化させるようにしても良い。このようにすることにより、外カップ43の内側壁面の広い範囲にわたって適切な強さで洗浄液を到達させることができるとともに、当該内側壁面を効率良く洗浄することができる。特に汚染が蓄積されやすい外カップ43の上端部43bに対して強い勢いで洗浄液が吹き付けられるように、外カップ43の高さ位置および洗浄用治具CTの回転数を調整することが好ましい。なお、外カップ43の内側壁面の汚染の蓄積度に応じて、外カップ43の高さ位置および洗浄用治具CTの回転数を調整して当該内側壁面を効率良く洗浄することもできる。
図5には、外カップ43を洗浄する場合について例示したが、中カップ42および内カップ41を洗浄する場合であっても、対象となるカップを上昇させることによって同様にして洗浄を行うことができる。すなわち、洗浄用治具CTから洗浄液を飛散させることによって、意図しない洗浄液の液はねを抑制しつつ、処理カップ40の洗浄を行うことができる。
第1実施形態においては、洗浄用治具CTのベース面71の周縁部全周にわたってベース面71と傾斜面72とが連続した面となっているため、ベース面71に供給された洗浄液が円滑に傾斜面72へと導かれることとなり、意図しない洗浄液の液はねを抑制しつつ、洗浄液を斜め上方に向けて飛散させることができる。これにより、特に汚染が蓄積されやすい処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。また、チャックピン26も洗浄用治具CTによって覆われているため、チャックピン26による洗浄液の液はねをも防止することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態ではベース面71の周方向に沿った傾斜面72の高さ位置は一定であったが、第2実施形態においてはベース面71の周方向に沿っても傾斜した傾斜面を設けている。
図6は、第2実施形態の洗浄用治具CTを示す斜視図である。第1実施形態と同様に、洗浄用治具CTは、略円板形状の部材であり、スピンチャック20のスピンベース21に着脱自在に装着可能とされている。また、図示しない洗浄用治具CTの下面には複数のチャックピン26を収容可能な内部空間が形設されており、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、傾斜面172によって複数のチャックピン26が覆われる。
洗浄用治具CTの上面には、ベース面71と傾斜面172とが形成されている。ベース面71は平坦な面であり、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、ベース面71は水平面となる。洗浄用治具CTの傾斜面172は、ベース面71の上面周縁部の全周にわたって環状に形設されている。
第2実施形態においては、傾斜面172は、ベース面71の周方向に沿って、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。具体的には、ベース面71の外周端のうち導流口173においてはベース面71の高さ位置と傾斜面172の内周端の高さ位置とが等しい。そして、図6の例では、導流口173の近傍からベース面71の周方向に沿って時計回りに次第に高さが高くなるように傾斜面172が形成されている。よって、導流口173近傍の傾斜面172の最も低い部位と、そこから少し反時計回りに進んだ位置の傾斜面172の最も高い部位とが段差を形成し、それらの間は壁面174となっている。
また、導流口173を除くベース面71の外周端においては、ベース面71の高さ位置よりも傾斜面172の内周端の高さ位置の方が高くなり、それらの間には壁面175が形成される。すなわち、第2実施形態では、ベース面71の外周端のうち導流口173において、ベース面71と傾斜面172とが連続した面を形成している。
また、第1実施形態と同様に、傾斜面172は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように(次第に高さが高くなるように)設けられている。すなわち、第2実施形態においては、傾斜面172は、ベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜するとともに、ベース面71の周方向に沿っても上方に傾斜するように設けられているのである。ベース面71の径方向および周方向についての傾斜面172の傾斜角度は適宜のものとすることができる。洗浄用治具CTの形状を除く第2実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
このような第2実施形態の洗浄用治具CTを用いて処理カップ40の洗浄処理を行うときにも、洗浄用治具CTをスピンチャック20に装着して図6における反時計回り(矢印AR16の向き)にスピンチャック20を回転させつつ、ベース面71の中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液を供給する。既述したように、回転する洗浄用治具CTの中心近傍に供給された洗浄液は、遠心力によって洗浄用治具CTの外周に向けて流れるとともに、洗浄液自身の慣性によって洗浄用治具CTの周方向(スピンチャック20の回転方向の反対方向)にも流れることとなる。その結果、洗浄用治具CTの中心から外周へと向けて流れる洗浄液は、洗浄用治具CTの径方向に沿って直線的には流れず、その径方向から湾曲するような軌跡を描きつつ流れる。
洗浄用治具CTのベース面71の外周へと向けて流れるとともに周方向にも流れる洗浄液のうち、導流口173に到達した洗浄液は図6の矢印AR6にて示すように傾斜面172に導かれる。残余の洗浄液は、ベース面71と傾斜面172との間の壁面175に到達することとなるが、その壁面175の内側に沿って流れて導流口173から傾斜面172に繰り返し導かれる。傾斜面172は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられているため、傾斜面172に流れ込んだ洗浄液は洗浄用治具CTの径方向外向きであって時計方向(スピンチャック20の回転方向AR16の反対方向)の斜め上方に向けて飛散される。そして、傾斜面172の連続する外端部から外カップ43に洗浄液を飛散させることができるので、洗浄用治具CTと外カップ43との高さ方向の配置関係を変更することなく、高さ方向に広い範囲で外カップ43に洗浄液を到達させることができる。これにより、第1実施形態と同様に、汚染が蓄積されやすい処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
また、第2実施形態では、傾斜面172がベース面71の周方向に沿って、スピンチャック20の回転方向AR16の反対方向(時計回り)に次第に高さが高くなるように、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。このため、洗浄用治具CTに供給された洗浄液がベース面71の外周へと向けて流れるとともに、周方向にも流れたとしても、導流口173を経由して円滑にベース面71から傾斜面172へと案内されることとなる。従って、洗浄液が洗浄用治具CTの何らかの部材に衝突することに起因した意図しない洗浄液の液はねを抑制することができる。
このような意図しない洗浄液の液はねをより効果的に防止するために、ベース面71と傾斜面172との間の壁面175を90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。より好ましくは、壁面175を曲面とする。また、傾斜面172の段差部である壁面174を90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。これにより、意図しない洗浄液の液はねをさらに抑制することができる。壁面174についても曲面としておくのがより好ましい。
また、第2実施形態においても、スピンベース21上の複数のチャックピン26は洗浄用治具CTの傾斜面172によって覆われている。よって、洗浄用治具CTのベース面71上に供給された洗浄液がチャックピン26に衝突することもなく、チャックピン26による意図しない液撥ねも防止することができる。
このように第2実施形態においては、傾斜面172がベース面71の周方向に沿ってベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜しているため、ベース面71に供給された洗浄液は円滑に傾斜面172へと導かれ、傾斜面172から斜め上方に向けて飛散される。これにより、意図しない洗浄液の液はねを抑制しつつ、処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第2実施形態ではベース面71の周方向に沿った傾斜面172の段数が1段であったが、第3実施形態においては傾斜面の段数が複数段とされている。
図7は、第3実施形態の洗浄用治具CTを示す斜視図である。第3実施形態の洗浄用治具CTは、第2実施形態の洗浄用治具CTの傾斜面172をベース面71の周方向に沿って2つに分割したものである。第1実施形態と同様に、洗浄用治具CTは、略円板形状の部材であり、スピンチャック20のスピンベース21に着脱自在に装着可能とされている。また、図示しない洗浄用治具CTの下面には複数のチャックピン26を収容可能な内部空間が形設されており、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、傾斜面272によって複数のチャックピン26が覆われる。
洗浄用治具CTの上面には、ベース面71と2つの傾斜面272とが形成されている。ベース面71は平坦な面であり、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、ベース面71は水平面となる。ベース面71の上面周縁部の全周にわたって環状に連続して2つの傾斜面272が形設されている。
第3実施形態においては、2つの傾斜面272のそれぞれが、ベース面71の周方向に沿って、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。具体的には、ベース面71の外周端のうち導流口273においてはベース面71の高さ位置と各傾斜面272の内周端の高さ位置とが等しい。そして、図7の例では、導流口273の近傍からベース面71の周方向に沿って時計回りに次第に高さが高くなるように各傾斜面272が形成されている。よって、導流口273近傍の一方の傾斜面272の最も低い部位と、他方の傾斜面272の最も高い部位とが段差を形成し、それらの間は壁面274となっている。
また、導流口273を除くベース面71の外周端においては、ベース面71の高さ位置よりも傾斜面272の内周端の高さ位置の方が高くなり、それらの間には壁面275が形成される。すなわち、第3実施形態では、ベース面71の外周端のうち導流口273において、ベース面71と傾斜面272とが連続した面を形成している。
また、第1実施形態と同様に、各傾斜面272は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように(次第に高さが高くなるように)設けられている。すなわち、第3実施形態においては第2実施形態と同様に、傾斜面272は、ベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜するとともに、ベース面71の周方向に沿っても上方に傾斜するように設けられている。ベース面71の径方向および周方向についての傾斜面272の傾斜角度は適宜のものとすることができる。洗浄用治具CTの形状を除く第3実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
このような第3実施形態の洗浄用治具CTを用いて処理カップ40の洗浄処理を行うときにも、洗浄用治具CTをスピンチャック20に装着して図7における反時計回り(矢印AR17の向き)にスピンチャック20を回転させつつ、ベース面71の中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液を供給する。回転する洗浄用治具CTの中心近傍に供給された洗浄液は、遠心力によって洗浄用治具CTの外周に向けて流れるとともに、洗浄液自身の慣性によって洗浄用治具CTの周方向(スピンチャック20の回転方向の反対方向)にも流れる。
洗浄用治具CTのベース面71の外周へと向けて流れるとともに周方向にも流れる洗浄液のうち、導流口273に到達した洗浄液は図7の矢印AR7にて示すように傾斜面272に導かれる。残余の洗浄液は、ベース面71と傾斜面272との間の壁面275に到達することとなるが、その壁面275の内側に沿って流れてベース面71中心に対して反対側の導流口273から傾斜面272に導かれる。傾斜面272は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられているため、傾斜面272に流れ込んだ洗浄液は洗浄用治具CTの径方向外向きであって時計方向(スピンチャック20の回転方向AR17の反対方向)の斜め上方に向けて飛散される。これにより、第1実施形態と同様に、汚染が蓄積されやすい処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
また、第3実施形態では、傾斜面272がベース面71の周方向に沿って、スピンチャック20の回転方向AR17の反対方向(時計回り)に次第に高さが高くなるように、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。このため、洗浄用治具CTに供給された洗浄液がベース面71の外周へと向けて流れるとともに、周方向にも流れたとしても、導流口273を経由して円滑にベース面71から傾斜面272へと案内されることとなる。従って、洗浄液が洗浄用治具CTの何らかの部材に衝突することに起因した意図しない洗浄液の液はねを抑制することができる。
このような意図しない洗浄液の液はねをより効果的に防止するために、第2実施形態と同じく、ベース面71と傾斜面272との間の壁面275を90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。より好ましくは、壁面275を曲面とする。また、2つの傾斜面272の段差部である壁面274を90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。これにより、意図しない洗浄液の液はねをさらに抑制することができる。壁面274についても曲面としておくのがより好ましい。
また、第3実施形態においても、スピンベース21上の複数のチャックピン26は洗浄用治具CTの傾斜面272によって覆われている。よって、洗浄用治具CTのベース面71上に供給された洗浄液がチャックピン26に衝突することもなく、チャックピン26による意図しない液撥ねも防止することができる。
このように第3実施形態においては、ベース面71の周方向に沿って傾斜面が2つに分割されている。そして、分割された2つの傾斜面272のそれぞれがベース面71の周方向に沿ってベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜している。このため、ベース面71に供給された洗浄液は第2実施形態の場合よりも円滑に傾斜面272へと導かれ、傾斜面272から斜め上方に向けて飛散される。これにより、意図しない洗浄液の液はねを抑制しつつ、処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
第3実施形態では、ベース面71の周方向に沿って傾斜面を2つに分割していたが、これを3つ以上に分割しても良い。この場合であっても、分割された複数の傾斜面272のそれぞれがベース面71の周方向に沿ってベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、傾斜面の液の導流口を幅広としている。
図8は、第4実施形態の洗浄用治具CTを示す斜視図である。第4実施形態の洗浄用治具CTは、第3実施形態の洗浄用治具CTの各傾斜面272を最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるようにしたものである。第1実施形態と同様に、洗浄用治具CTは、略円板形状の部材であり、スピンチャック20のスピンベース21に着脱自在に装着可能とされている。また、図示しない洗浄用治具CTの下面には複数のチャックピン26を収容可能な内部空間が形設されており、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、傾斜面372によって複数のチャックピン26が覆われる。
洗浄用治具CTの上面には、ベース面71と2つの傾斜面372とが形成されている。ベース面71は平坦な面であり、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、ベース面71は水平面となる。ベース面71の上面周縁部の全周にわたって環状に連続して2つの傾斜面372が形設されている。
第4実施形態においては、2つの傾斜面372のそれぞれが、ベース面71の周方向に沿って、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。また、2つの傾斜面372のそれぞれが、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。具体的には、各傾斜面372の基端側が導流口373とされており、その高さ位置はベース面71の高さ位置と等しい。そして、図8の例では、傾斜面372の基端側の導流口373から先端側に向けてベース面71の周方向に沿って時計回りに次第に高さが高くなるように、各傾斜面372が形成されている。また、傾斜面372の最も低い高さ位置である基端側の導流口373から最も高い高さ位置である先端側に向けて幅が漸次狭くなるように、各傾斜面372が形成されている。換言すると、各傾斜面372のベース面71との高さ位置が等しい導流口373の幅が、各傾斜面372の導流口373側とは異なる他端側(先端側)の幅よりも広くなっている。これにより第4実施形態では、傾斜面372の先端側が尖鋭な形状とされている。
また、導流口373を除くベース面71と傾斜面372の境界では、ベース面71の高さ位置よりも傾斜面372の内周端の高さ位置の方が高くなり、それらの間には壁面375が形成される。すなわち、第4実施形態では、傾斜面372の基端側の導流口373において、ベース面71と傾斜面372とが連続した面を形成している。
また、第1実施形態と同様に、各傾斜面372は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられている。すなわち、第4実施形態においても第2実施形態と同様に、傾斜面372は、ベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜するとともに、ベース面71の周方向に沿っても上方に傾斜するように設けられている。ベース面71の径方向および周方向についての傾斜面372の傾斜角度は適宜のものとすることができる。洗浄用治具CTの形状を除く第4実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
このような第4実施形態の洗浄用治具CTを用いて処理カップ40の洗浄処理を行うときにも、洗浄用治具CTをスピンチャック20に装着して図8における反時計方向(矢印AR18の向き)にスピンチャック20を回転させつつ、ベース面71の中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液を供給する。回転する洗浄用治具CTの中心近傍に供給された洗浄液は、遠心力によって洗浄用治具CTの外周に向けて流れるとともに、洗浄液自身の慣性によって洗浄用治具CTの周方向(スピンチャック20の回転方向の反対方向)にも流れる。
洗浄用治具CTのベース面71の外周へと向けて流れるとともに周方向にも流れる洗浄液のうち、導流口373に到達した洗浄液は図8の矢印AR8にて示すように傾斜面372に導かれる。残余の洗浄液は、ベース面71と傾斜面372との間の壁面375に到達することとなるが、その壁面375の内側に沿って流れて導流口373から傾斜面372に導かれる。傾斜面372は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられているため、傾斜面372に流れ込んだ洗浄液は洗浄用治具CTの径方向外向きであって時計方向(スピンチャック20の回転方向AR18の反対方向)の斜め上方に向けて飛散される。これにより、第1実施形態と同様に、汚染が蓄積されやすい処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
また、第4実施形態では、傾斜面372がベース面71の周方向に沿って、スピンチャック20の回転方向AR18の反対方向(時計回り)に次第に高さが高くなるように、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。このため、洗浄用治具CTに供給された洗浄液がベース面71の外周へと向けて流れるとともに、周方向にも流れたとしても、導流口373を経由して円滑にベース面71から傾斜面372へと案内されることとなる。従って、洗浄液が洗浄用治具CTの何らかの部材に衝突することに起因した意図しない洗浄液の液はねを抑制することができる。
このような意図しない洗浄液の液はねをより効果的に防止するために、第2実施形態と同じく、ベース面71と傾斜面372との間の壁面375を90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。より好ましくは、壁面375を曲面とする。
さらに、第4実施形態においては、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように傾斜面372が形成されているため、最も低い高さ位置である導流口373の幅が広いものとなる。このため、ベース面71上を流れる洗浄液を効率良く傾斜面372へと導いて飛散させることができる。
また、第4実施形態においても、スピンベース21上の複数のチャックピン26は洗浄用治具CTの傾斜面372によって覆われている。よって、洗浄用治具CTのベース面71上に供給された洗浄液がチャックピン26に衝突することもなく、チャックピン26による意図しない液撥ねも防止することができる。
このように第4実施形態においては、ベース面71の周方向に沿って傾斜面が2つに分割されている。そして、分割された2つの傾斜面372のそれぞれがベース面71の周方向に沿ってベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜している。さらに、2つの傾斜面372のそれぞれが最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。このため、ベース面71に供給された洗浄液は円滑かつ効率良く傾斜面372へと導かれ、傾斜面372から斜め上方に向けて飛散される。これにより、意図しない洗浄液の液はねを抑制しつつ、処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
第4実施形態では、ベース面71の周方向に沿って傾斜面を2つに分割していたが、これを3つ以上に分割しても良い。この場合であっても、分割された複数の傾斜面372のそれぞれがベース面71の周方向に沿ってベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜し、かつ、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるようにすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図9は、第5実施形態の洗浄用治具CTを示す斜視図である。第5実施形態の洗浄用治具CTは、第4実施形態の各傾斜面372の先端側も幅広としたものである。
第5実施形態の洗浄用治具CTの上面には、ベース面71と2つの傾斜面472とが形成されている。ベース面71は平坦な面であり、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、ベース面71は水平面となる。ベース面71の上面周縁部の全周にわたって環状に連続して2つの傾斜面472が形設されている。2つの傾斜面472のそれぞれは、ベース面71の周方向に沿って、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。各傾斜面472の基端側が第4実施形態と同様の幅広の導流口473とされており、その高さ位置はベース面71の高さ位置と等しい。そして、傾斜面472の基端側の導流口473から先端側に向けてベース面71の周方向に沿って時計回りに次第に高さが高くなるように、各傾斜面472が形成されている。
第5実施形態においても、2つの傾斜面472のそれぞれが、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。すなわち、第4実施形態と同じく、傾斜面472の最も低い高さ位置である基端側の導流口473から最も高い高さ位置である先端側に向けて幅が漸次狭くなるように、各傾斜面472が形成されている。すなわち、各傾斜面472のベース面71との高さ位置が等しい導流口473の幅が、各傾斜面472の導流口473側とは異なる他端側(先端側)の幅よりも広くなっている。但し、図9に示すように、第5実施形態においては、各傾斜面472の先端側もある程度の幅を有しており、傾斜面472の幅が狭くなる程度は第4実施形態に比較すると緩やかである。
また、導流口473を除くベース面71と傾斜面472の境界では、ベース面71の高さ位置よりも傾斜面472の内周端の高さ位置の方が高くなり、それらの間には壁面475が形成される。すなわち、第5実施形態では、傾斜面472の基端側の導流口473において、ベース面71と傾斜面472とが連続した面を形成している。
また、第1実施形態と同様に、各傾斜面472は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられている。すなわち、第5実施形態においても第2実施形態と同様に、傾斜面472は、ベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜するとともに、ベース面71の周方向に沿っても上方に傾斜するように設けられている。ベース面71の径方向および周方向についての傾斜面472の傾斜角度は適宜のものとすることができる。洗浄用治具CTの形状を除く第5実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
このような第5実施形態の洗浄用治具CTを用いた処理カップ40の洗浄処理は、概ね第4実施形態と同様であり、同様の作用効果を得ることができる。すなわち、洗浄用治具CTをスピンチャック20に装着して図9における反時計方向(矢印AR19の向き)にスピンチャック20を回転させつつ、ベース面71の中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液を供給する。回転する洗浄用治具CTの中心近傍に供給された洗浄液は、遠心力によって洗浄用治具CTの外周に向けて流れるとともに、洗浄液自身の慣性によって洗浄用治具CTの周方向(スピンチャック20の回転方向の反対方向)にも流れる。
洗浄用治具CTのベース面71の外周へと向けて流れるとともに周方向にも流れる洗浄液のうち、導流口473に到達した洗浄液は図9の矢印AR9にて示すように傾斜面472に導かれる。残余の洗浄液は、ベース面71と傾斜面472との間の壁面475に到達することとなるが、その壁面475の内側に沿って流れて導流口473から傾斜面472に導かれる。傾斜面472は、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられているため、傾斜面472に流れ込んだ洗浄液は洗浄用治具CTの径方向外向きであって時計方向(スピンチャック20の回転方向AR19の反対方向)の斜め上方に向けて飛散される。これにより、第1実施形態と同様に、汚染が蓄積されやすい処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
また、傾斜面472がベース面71の周方向に沿って、スピンチャック20の回転方向AR19の反対方向(時計回り)に次第に高さが高くなるように、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。このため、洗浄用治具CTに供給された洗浄液がベース面71の外周へと向けて流れるとともに、周方向にも流れたとしても、導流口473を経由して円滑にベース面71から傾斜面472へと案内されることとなる。従って、洗浄液が洗浄用治具CTの何らかの部材に衝突することに起因した意図しない洗浄液の液はねを抑制することができる。
このような意図しない洗浄液の液はねをより効果的に防止するために、第2実施形態と同じく、ベース面71と傾斜面472との間の壁面475を90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。より好ましくは、壁面475を曲面とする。
また、第5実施形態においては、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように傾斜面472が形成されているため、最も低い高さ位置である導流口473の幅が広いものとなる。このため、ベース面71上を流れる洗浄液を効率良く傾斜面472へと導いて飛散させることができる。
さらに、第5実施形態においては、傾斜面472の先端側もある程度の幅を有しており、傾斜面472の幅が狭くなる程度は第4実施形態に比較すると緩やかである。このため、一旦傾斜面472へと導かれてから傾斜面472から落下する洗浄液の量を低減することができ、洗浄液を斜め上方に向けて効率良く飛散させることができる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図10は、第6実施形態の洗浄用治具CTを示す斜視図である。第6実施形態の洗浄用治具CTは、第4実施形態の洗浄用治具CTにおいて2つの傾斜面の形状を異なるようにしたものである。
第1実施形態と同様に、洗浄用治具CTは、略円板形状の部材であり、スピンチャック20のスピンベース21に着脱自在に装着可能とされている。また、図示しない洗浄用治具CTの下面には複数のチャックピン26を収容可能な内部空間が形設されており、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、傾斜面572a,572bによって複数のチャックピン26が覆われる。
洗浄用治具CTの上面には、ベース面71と2つの傾斜面572a,572bとが形成されている。ベース面71は平坦な面であり、洗浄用治具CTがスピンチャック20に装着されると、ベース面71は水平面となる。ベース面71の上面周縁部の全周にわたって環状に連続して2つの傾斜面572a,572bが形設されている。
第6実施形態においては、2つの傾斜面572a,572bのそれぞれが、ベース面71の周方向に沿って、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。また、2つの傾斜面572a,572bのそれぞれが、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。具体的には、一方の傾斜面572aの基端側が導流口573aとされており、その高さ位置はベース面71の高さ位置と等しい。また、もう一方の傾斜面572bの基端側が導流口573bとされており、その高さ位置はベース面71の高さ位置と等しい。但し、傾斜面572bの導流口573bの幅よりも傾斜面572aの導流口573aの幅の方が広い。
図10の例では、傾斜面572a,572bの基端側の導流口573a,573bから先端側に向けてベース面71の周方向に沿って時計回りに次第に高さが高くなるように、2つの傾斜面572a,572bが形成されている。また、傾斜面572aの最も低い高さ位置である基端側の導流口573aから最も高い高さ位置である先端側に向けて幅が漸次狭くなるように、傾斜面572aが形成されている。同じく、傾斜面572bの最も低い高さ位置である基端側の導流口573bから最も高い高さ位置である先端側に向けて幅が漸次狭くなるように、傾斜面572bが形成されている。すなわち、傾斜面572a,572bのベース面71との高さ位置が等しい導流口573a,573bの幅が、傾斜面572a,572bの導流口573a,573b側とは異なる他端側(先端側)の幅よりも広くなっている。これにより、第6実施形態では、傾斜面572a,572bの先端側が尖鋭な形状とされている。導流口573bの幅よりも導流口573aの幅の方が広いため、面の幅が漸次狭くなる程度は傾斜面572bの方が緩やかである。
また、導流口573aを除くベース面71と傾斜面572aとの境界では、ベース面71の高さ位置よりも傾斜面572aの内周端の高さ位置の方が高くなり、それらの間には壁面575aが形成される。導流口573bを除くベース面71と傾斜面572bとの境界では、ベース面71の高さ位置よりも傾斜面572bの内周端の高さ位置の方が高くなり、それらの間には壁面575bが形成される。すなわち、第6実施形態では、傾斜面572a,572bの基端側の導流口573a,573bにおいて、ベース面71と傾斜面572a,572bとが連続した面を形成している。
また、第1実施形態と同様に、傾斜面572a,572bは、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられている。すなわち、第6実施形態においても第2実施形態と同様に、2つの傾斜面572a,572bは、ベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜するとともに、ベース面71の周方向に沿っても上方に傾斜するように設けられている。ベース面71の径方向および周方向についての傾斜面572a,572bの傾斜角度は適宜のものとすることができる。洗浄用治具CTの形状を除く第6実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
このような第6実施形態の洗浄用治具CTを用いて処理カップ40の洗浄処理を行うときにも、洗浄用治具CTをスピンチャック20に装着して図10における反時計方向(矢印AR20の向き)にスピンチャック20を回転させつつ、ベース面71の中心近傍に吐出ヘッド31から洗浄液を供給する。回転する洗浄用治具CTの中心近傍に供給された洗浄液は、遠心力によって洗浄用治具CTの外周に向けて流れるとともに、洗浄液自身の慣性によって洗浄用治具CTの周方向(スピンチャック20の回転方向の反対方向)にも流れる。
洗浄用治具CTのベース面71の外周へと向けて流れるとともに周方向にも流れる洗浄液のうち、導流口573a,573bに到達した洗浄液は図10の矢印AR10にて示すように傾斜面572a,572bに導かれる。残余の洗浄液は、ベース面71と傾斜面572a,572bとの間の壁面575a,575bに到達することとなるが、その壁面575a,575bの内側に沿って流れて導流口573a,573bから傾斜面572a,572bに導かれる。傾斜面572a,572bは、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜するように設けられているため、傾斜面572a,572bに流れ込んだ洗浄液は洗浄用治具CTの径方向外向きであって時計方向(スピンチャック20の回転方向AR20の反対方向)の斜め上方に向けて飛散される。これにより、第1実施形態と同様に、汚染が蓄積されやすい処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
また、第6実施形態では、傾斜面572a,572bがベース面71の周方向に沿って、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜している。このため、洗浄用治具CTに供給された洗浄液がベース面71の外周へと向けて流れるとともに、周方向にも流れたとしても、導流口573a,573bを経由して円滑にベース面71から傾斜面572a,572bへと案内されることとなる。従って、洗浄液が洗浄用治具CTの何らかの部材に衝突することに起因した意図しない洗浄液の液はねを抑制することができる。
このような意図しない洗浄液の液はねをより効果的に防止するために、第2実施形態と同じく、ベース面71と傾斜面572aとの間の壁面575aおよび傾斜面572bとの間の壁面575bを90°未満の傾斜角度を有するテーパ面としても良い。より好ましくは、壁面575a,575bを曲面とする。
さらに、第6実施形態においては、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように傾斜面572a,572bが形成されているため、最も低い高さ位置である導流口573a,573bの幅が広いものとなる。このため、ベース面71上を流れる洗浄液を効率良く傾斜面572a,572bへと導いて飛散させることができる。
また、第6実施形態においても、スピンベース21上の複数のチャックピン26は洗浄用治具CTの傾斜面572a,572bによって覆われている。よって、洗浄用治具CTのベース面71上に供給された洗浄液がチャックピン26に衝突することもなく、チャックピン26による意図しない液撥ねも防止することができる。
このように第6実施形態においては、ベース面71の周方向に沿って2つの異なる形状の傾斜面を組み合わせるように設けている。そして、2つの傾斜面572a,572bのそれぞれがベース面71の周方向に沿って、スピンチャック20の回転方向AR20の反対方向(時計回り)に次第に高さが高くなるように、ベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜している。さらに、2つの傾斜面572a,572bのそれぞれが最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。このため、ベース面71に供給された洗浄液は円滑かつ効率良く傾斜面572a,572bへと導かれ、傾斜面572a,572bから斜め上方に向けて飛散される。これにより、意図しない洗浄液の液はねを抑制しつつ、処理カップ40の上側湾曲部分に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
第6実施形態では、ベース面71の周方向に沿って2つの異なる形状の傾斜面を組み合わせていたが、これを3つ以上の異なる形状の傾斜面を組み合わせるようにしても良い。この場合であっても、複数の傾斜面のそれぞれがベース面71の周方向に沿ってベース面71と同じ高さ位置から上方に傾斜するとともに、ベース面71の中心から外周に向けても上方に傾斜し、かつ、最も低い高さ位置から最も高い高さ位置に向けて幅が漸次狭くなるようにすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、洗浄用治具CTの傾斜面を所定の傾斜角度を有する平坦な面としていたが、傾斜面を湾曲させるようにしても良い。傾斜面の湾曲は、上側を凸とするように反るものであっても良いし、下側を凸とするように反るものであっても良い。また、傾斜面の湾曲は、ベース面71の径方向および周方向の双方について形成されていても良い。
また、上記各実施形態においては、スピンベース21上の複数のチャックピン26を洗浄用治具CTの傾斜面によって覆うようにしていたが、洗浄用治具CTの形状や大きさによってはベース面71にて複数のチャックピン26を覆うようにしても良い。
また、第2実施形態から第5実施形態では、ベース面71の周方向に沿って時計回りに次第に高さが高くなるように傾斜面を形成していたが、反時計回りに次第に高さが高くなるように傾斜面を形成しても良く、それに応じて洗浄用治具CTの回転方向も適宜のものをすれば良い。
また、第2実施形態から第6実施形態では、傾斜面172(第2実施形態)、272(第3実施形態)、372(第4実施形態)、472(第5実施形態)、572a、572b(第6実施形態)がベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜するように設けられていた。しかし、仮に傾斜面172、272、372、472、572a、572bがベース面71の中心から外周に向けて上方に傾斜していなくても(言い換えると水平面であっても)、ベース面71と傾斜面172、272、372、472、572a、572bとの間の壁面175(第2実施形態)、275(第3実施形態)、375(第4実施形態)、475(第5実施形態)、575a、575b(第6実施形態)が90°未満の傾斜角度を有するテーパ面であれば、ベース面71に供給された洗浄液を各壁面175、275、375、475、575a、575bから斜め上方に飛散させることができる。これにより意図しない洗浄液の液跳ねを抑制しつつ、処理カップ40の上側湾曲部に洗浄液を吹き付けて効果的な洗浄を行うことができる。
さらに、第2実施形態から第6実施形態において、傾斜面172(第2実施形態)、272(第3実施形態)、372(第4実施形態)、472(第5実施形態)、572a、572b(第6実施形態)および壁面175(第2実施形態)、275(第3実施形態)、375(第4実施形態)、475(第5実施形態)、575a、575b(第6実施形態)がベース面71の径方向の傾斜成分を有さず、専らベース面71の周方向の傾斜成分のみによってベース面71から処理カップ40の内面に向けて洗浄液を飛散させる態様も考えられる。
また、上記各実施形態においては、処理カップ40に互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えていたが、3つのカップが一体に構成されて昇降するものであっても良い。さらに、処理カップ40はスピンベース21を取り囲む1段のカップのみを備えるものであっても良い。
また、基板洗浄装置1によって処理対象となる基板は半導体用途の基板に限定されるものではなく、太陽電池用途の基板や液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板であっても良い。
さらに、基板処理装置1は、スピンチャックに保持した基板を回転させつつ、その表面に処理液を供給し、基板から飛散した処理液をカップによって受け止める装置であれば良く、枚葉式の洗浄処理装置やエッチング処理装置の他に、例えばレジストなどを塗布する回転塗布装置(スピンコータ)や回転現像装置(スピンデベロッパー)であっても良い。回転塗布装置のように、カップに容易に塗布液が付着して汚染源となる装置には、本発明に係るカップ洗浄技術を好適に適用することができる。或いは、基板処理装置1は、回転する基板の表面に洗浄液を供給しつつブラシを当接または近接させてスクラブ洗浄処理を行うスピンスクラバであっても良い。