JP6158480B2 - ゴム組成物、ゴム組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
このようなゴム組成物においては、原料ゴムとして用いる重合体とフィラーとの親和性を改良する目的で、例えば、原料ゴムであるブタジエン系重合体に所定の官能基を導入し、変性する方法が種々検討されている。
前記変性方法としては、例えば、アニオンリビング重合を利用して開始末端又は終末端へ、あるいはその両方に、官能基を導入する方法が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
また、その他の変性方法としては、官能基を有する単量体を共重合する方法(例えば、特許文献4参照。)や、重合後に主鎖の二重結合に反応させることにより官能基を導入する方法が提案されている(例えば、特許文献5及び6参照。)。
さらに、前記ゴム組成物としては、変性ブタジエンゴムと微粒径シリカとを組み合わせたものが提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
不活性有機溶剤を重合溶媒とし、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重
合開始剤として用い、1,3−ブタジエンを重合、又は1,3−ブタジエンと他の共重合
可能な単量体とを共重合して、かつ変性剤を用いて変性反応を行い、アミノ基、アルコキ
シシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基によ
って末端変性されたブタジエン系重合体を得る工程と、
前記末端変性されたブタジエン系重合体の主鎖のビニル基を、アミノ基、アルコキシシ
リル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロシリル化
合物を用い、ヒドロシリル化反応により主鎖を変性して変性ブタジエン系重合体を得る工程と、
前記変性ブタジエン系重合体を20質量部以上含む原料ゴム100質量部と、CTAB
比表面積が180cm2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカ5〜20
0質量部と、
を、混合する工程と、
を有する、ゴム組成物の製造方法。
〔2〕
不活性有機溶剤を重合溶媒とし、官能基を有するアルカリ金属化合物又はアルカリ土類
金属化合物を重合開始剤として用い、1,3−ブタジエンを重合、又は1,3−ブタジエ
ンと他の共重合可能な単量体とを共重合して、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基か
らなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基によって末端変性されたブ
タジエン系重合体を得る工程と、
前記末端変性されたブタジエン系重合体の主鎖のビニル基を、アミノ基、アルコキシシ
リル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロシリル化
合物を用い、ヒドロシリル化反応により主鎖を変性する工程と、
を実施して、変性ブタジエン系重合体を得、
前記変性ブタジエン系重合体を20質量部以上含む原料ゴム100質量部と、CTAB
比表面積が180cm2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカ5〜20
0質量部と、
を、混合する工程と、
を有する、ゴム組成物の製造方法。
〔3〕
フィラーとしてBET比表面積185m2/g未満のシリカ、又はBET比表面積18
5m2/g未満のカーボンブラックを、5〜100質量部、さらに混合する工程を有する
、
前記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔4〕
架橋処理を施す工程を、さらに有する、
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法によってゴム組成物を得る工程と、得られたゴム組成物を成形する工程と、を有する、タイヤの製造方法。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のゴム組成物は、原料ゴム100質量部と、シリカ5〜200質量部とを含有する。
前記原料ゴムは、当該原料ゴム全体を100質量部としたとき、変性ブタジエン系重合体を20質量部以上含む。
前記変性ブタジエン系重合体は、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基により末端変性されており、さらに、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する珪素変性基により主鎖が変性されている。
前記シリカは、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積が180cm2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上である。
本実施形態のゴム組成物に含有されている原料ゴムは、当該原料ゴム全体を100質量部としたとき、20質量部以上の変性ブタジエン系重合体を含む。
当該変性ブタジエン系重合体は、後述するブタジエン系重合体の重合工程において、さらにはその後の変性工程において、末端変性及び主鎖変性を行ったものである。
前記ブタジエン系重合体としては、1,3−ブタジエンの重合体及び1,3−ブタジエンと他の単量体との共重合体が挙げられる。
前記1,3−ブタジエンと共重合し得る他の単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン以外の共役ジエン化合物、ビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、アクリル酸化合物等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好適な共重合し得る他の単量体としては、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物である。
前記共役ジエン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。前記芳香族ビニル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、p−N,N−ジエチルアミノメチルスチレン、p−N,N−ジエチル−2−アミノエチルスチレン等が挙げられる。好ましい単量体としては、イソプレン、スチレンである。
前記ブタジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体が好ましい。
前記ブタジエン系重合体において、ブタジエン単位の含有率は50〜100質量%が好ましい。
前記原料ゴムに含まれている前記変性ブタジエン系重合体は、上述したブタジエン系重合体に末端及び主鎖に官能基を導入することにより、変性したブタジエン系重合体である。
当該変性ブタジエン系重合体は、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基により末端変性されており、更に、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する珪素変性基により主鎖が変性されている変性ブタジエン系重合体である。
なお、変性ブタジエン系重合体における末端変性は、開始末端又は終了末端のいずれか一方のみにおいて行われていてもよく、あるいは両末端において行われていてもよい。
変性共役ジエン系重合体の数平均分子量を前記範囲とすると、本実施形態のゴム組成物を加硫物としたときの強度を一層向上させることができ、加工性を一層向上させることができる。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.00〜3.50であり、より好ましくは1.10〜3.00である。
一方、分子量分布が広いMw/Mnが1.8以上の変性共役ジエン系重合体は、一般に油展重合体として扱われることが多く、加硫ゴム用途でウェットスキッド抵抗性、ドライスキッド抵抗性等に特徴を有しており、省燃費性に優れた高性能タイヤトレッド用にの原料ゴムとして好適である。
変性率とは、官能基成分を有する重合体の全重合体中の質量比率(%)で表され、官能基成分を有する重合体の定量方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分とを分離できるクロマトグラフィーによって測定する方法を用いることができる。
このクロマトグラフィーを用いた方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が挙げられる。具体的には、後述する実施例において記載の方法により測定できる。
特に本実施形態のゴム組成物を加硫物とし、タイヤトレッドに用いる場合は、前記変性ブタジエン系共重合体における結合芳香族ビニル量は、20〜40質量%であることがより好ましい。この場合、タイヤトレッドがキャップトレッドとアンダートレッドからなる場合は、接地する側であるキャップトレッドに用いることが好ましい。
前記結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、タイヤトレッド用途において低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが優れたものとなり、耐摩耗性や破壊強度も満足する加硫物が得られる。
ここで、前記結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定できる。
ビニル結合量が上記範囲であると、本実施形態のゴム組成物を加硫物とし、タイヤトレッド用途に用いた場合において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、かつ高い耐摩耗性や破壊強度が得られる。
ここで、前記変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R. R. Hampton, Analytical Chemistry, 21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−ビニル結合量)を求めることができ、具体的には、後述する実施例において記載する方法により求めることができる。
ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とすることにより測定でき、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定できる。
なお、ビニル結合量は、変性の前後のいずれにおいても同様に測定することができる。
すなわち、重合時に低温とすることにより高ビニル結合量とすることができ、高温とすることにより低ビニル結合量とすることができる傾向にある。
具体的には、重合に際し、昇温しつつ重合する方法が挙げられる。例えば、重合開始温度30℃から最高到達温度90℃までとすると、ビニル化剤の種類と量を適当に設定すると、ビニル結合含量70モル%から30モル%まで連続的に変化させることができる。また、他の方法としては、重合途中にビニル化剤を追加・増量する方法が挙げられる。これにより、低ビニル結合含量から高ビニル結合含量へ変化させることができる。この方法では、ビニル結合量を10モル%から80モル%まで連続的に、あるいは段階的に変化させることができる。
ブタジエン単位とスチレン単位との共重合体の構成は、ランダム構造でもブロック構造でもよい。ランダム構造としては、均一なランダムでもテーパーランダムでもよい。ブロック構造としては、完全なブロックでも一部にランダム構造を含むテーパーブロックでもよい。それぞれ、目的に応じて選択可能である。
前記ブタジエンスチレンランダム共重合体は、スチレン単位の連鎖長が30以上の成分、すなわちブロックスチレンが、少ないものであるか、又は無いものが好ましい。具体的には、前記変性ブタジエン系重合体がブタジエン−スチレンランダム共重合体である場合、Kolthoffの方法(I.M.Kolthoff,et al. , J.Polym.Sci. 1,429(1946)に記載の方法)で、当該変性ブタジエン系重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量(ブロックスチレン量)を分析する公知の方法で測定した場合、前記変性ブタジエン系重合体全量に対し、前記ブロックスチレン量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
さらに好ましくは、詳細には田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))として知られているオゾン分解による方法で、前記変性ブタジエン系重合体を分解し、GPCによりスチレン連鎖分布を分析した場合、単離スチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が1のスチレンが、全結合スチレン量に対し40質量%以上であり、長鎖ブロックスチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が8以上のスチレンが全結合スチレン量に対し10質量%以下であることが好ましい。
伸展油としては、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、さらにIP346法による多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。特に、多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油を用いることが、環境安全上の観点とオイルブリード防止、さらにウェットグリップ特性の観点からより好ましい。
アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52 (12) 799 (1999) に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts/処理留出物芳香族系抽出物)、MES(Mild Extraction Solvates/軽度抽出溶媒和物)の他、SRAE(Special Residual Aromatic Extracts/芳香族系特殊抽出物)、RAE(Residual Aromatic Extracts/残油芳香族系抽出物)等がある。
伸展油の使用量は任意であるが、変性ブタジエン系重合体100質量部に対し、5〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。
前記変性ブタジエン系重合体は、重合体又はその油展重合体において、100℃ムーニー粘度が30〜100であることが好ましく、この範囲で本発明のフィラー分散性が良好で、加硫物の性能が優れるゴム組成物の製造が好適に実施できる。
本実施形態のゴム組成物に含有されている変性ブタジエン系重合体の製造方法について、以下に説明する。
[重合工程及び末端変性工程]
先ず、不活性有機溶剤を重合溶媒とし、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用い、1,3−ブタジエンを重合、又は1,3−ブタジエンと他の共重合可能な単量体とを共重合し、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基によって末端変性されたブタジエン系重合体を得る。
なお、上記のように、末端変性されたブタジエン系重合体を得る工程において、重合開始位置に変性を行う場合は、所定の官能基を有する重合開始剤を用いて重合を行う。重合終了位置に変性する場合は、さらに活性重合末端に官能基を有する変性剤を反応させる工程を実施して変性を行う。また、変性工程は、重合開始位置及び重合終了位置の両方に変性を行うことも含む。さらに、2分子以上の重合体をカップリング反応により結合して変性基を形成することも含む。
前記末端変性されたブタジエン系重合体の主鎖のビニル基を、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロシリル化合物を用い、ヒドロシリル化反応により主鎖を変性することにより、本実施形態のゴム組成物に含まれる変性ブタジエン系重合体が得られる。
前記重合工程においては、不活性有機溶剤を重合溶媒として、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用い、1,3−ブタジエンを重合、又は1,3−ブタジエンと他の共重合可能な単量体とを共重合して活性末端を有するブタジエン系重合体を得る場合を含む。
有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、低分子量有機リチウム化合物、可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物、また、有機基とリチウムの結合様式において炭素−リチウム結合を有する化合物、窒素−リチウム結合を有する化合物、錫−リチウム結合を有する化合物等が挙げられる。
有機リチウム化合物を用いると、開始効率が良く、重合体のリビング率も良い。
有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物がある。有機基としては炭化水素が好適であり、その場合は有機溶剤への溶解性が優れる利点があり、さらに開始速度も優れる。
また、窒素−リチウム結合を有する化合物を用いることにより開始末端にアミノ基を官能基として含む変性基が付与される効果が得られ、更に、重合開始剤として、に官能基を有する炭素−リチウム化合物を用いることにより、開始末端に官能基を含む変性基が付与される。また、錫−リチウム結合を有する化合物を用いることにより開始末端に錫−炭素結合を有する官能基が付与される。
前記炭化水素ジリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロペニルベンゼンとセカンド又はターシャリーブチルリチウムの反応から得られる、1,3−ビス(1−リチオ−1,3−ジメチルペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−リチオ−1,3−ジメチルペンチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−リチオ−1,3,3−トリメチルブチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−リチオ−1,3,3−トリメチルブチル)ベンゼン等がある。
前記炭化水素ポリリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジビニルベンゼン、有機モノリチウム及びブタジエンとの反応生成物、1,3,5−トリメチルベンゼンと有機モノリチウムとの反応生成物等がある。
また、重合開始剤として用いることができる、官能基を有するものとして、特に限定されないが、例えば、第2級アミンの水素をリチウム化して得られるリチウムアミド化合物、また、官能基が結合したアルキルリチウム等がある。これらは重合体の開始末端に官能基を付与することができる。官能基としては、アルカリ金属に対し不活性な官能基が好ましく、例えば、2置換アミノ基、すなわち第3級アミン、保護された1置換アミノ基、保護されたアミノ基が好ましい。なお、保護された1置換アミノ基又は保護されたアミノ基としては、例えば、1置換アミノ基の1個の水素又はアミノ基の2個の水素をトリアルキルシリル基でそれぞれ置換したものが挙げられる。
官能基を有する重合開始剤としては、特に限定されないが、具体的には、下記に示す化合物が挙げられる。なお、重合体に付与することができる官能基の種類をカッコ内に記載する。
例えば、ジプロピルアミノリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム、ジブチルアミノリチウム、テトラメチレンイミノリチウム、ペンタメチレンイミノリチウム、ヘキサメチレンイミノリチウム、ヘプタメチレンイミノリチウム、2−ジメチルアミノエチルリチウム、3−ジメチルアミノプロピルリチウム、3−ジエチルアミノプロピルリチウム、4−ジメチルアミノブチルリチウム(以上は2置換アミノ基)、2−トリメチルシリルエチルアミノエチルリチウム、3−トリメチルシリルメチルアミノプロピルリチウム(以上は1置換アミノ基)、2−ビストリメチルシリルアミノエチルリチウム、3−ビストリメチルシリルアミノプロピルリチウム、4−ビストリメチルシリルアミノブチルリチウム(以上はアミノ基)がある。
また、重合開始剤としては、各種のリチウム系開始剤と単量体とが反応したオリゴマー開始剤を用いることができる。その際に、単量体にアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体を用いることができる。
具体的には、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。その他にも、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等が挙げられる。これらは、他の有機金属化合物と併用してもよい。
また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等の化合物を用いてもよい。これらの有機アルカリ土類金属化合物は、アルカリ金属化合物や、その他有機金属化合物と併用してもよい。
ただし、単量体及び重合溶媒中の水分及び不純物による失活、不純物による連鎖移動、重合末端の金属ハイドライドの生成による失活等を考慮する必要がある。
極性化合物を添加することにより、ビニル芳香族化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができ、また、極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、重合反応の促進等にも効果がある。
極性化合物としては、特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2−エトキシメチルテトラヒドロフラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、2-ジメチルアミノエチル-2−エトキシエチルエーテル等の第3級アミン含有エーテル化合物;カリウム−tert−アミラート、カリウム−tert−ブチラート、ナトリウム−tert−ブチラート、ナトリウムアミラート、ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
通常、重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。このような極性化合物は、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、特開昭59−140211号公報に記載されているような、スチレンの全量と1,3−ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中に残りの1,3−ブタジエンを連続的または断続的に添加する方法を用いてもよい。
連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。
反応器は、撹拌機付きの槽型、管型等のものが用いられる。
回分式では、得られる重合体の分子量分布が一般に狭く、Mw/Mnでは1.0以上、1.8未満、連続式では一般に分子量分布が広く、Mw/Mnでは1.8以上、3以下となる。
上述したように、重合開始位置に変性する場合は、前に述べた官能基を有する重合開始剤を用いて重合を行い、重合終了位置に変性する場合は活性重合末端に官能基を有する変性化合物を反応させて終了末端に変性を行う。
なお、この方法においては、前記ブタジエン系共重合体の活性末端に、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基及び結合を形成する官能基とを有する変性化合物(変性剤)を反応させて結合を形成してもよいが、活性末端と反応することによりアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を形成する化合物を反応させ、終了末端を変性してもよい。なお、重合体活性末端反応して結合を形成する官能基としては、ハロゲン基、二重結合、ケトン基、エステル基、アミド基、エポキシ基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルカリ金属に対し不活性な官能基が好ましく、2置換アミノ基、すなわち第3級アミン、保護された1置換アミノ基、2個の水素が保護されたアミノ基が好ましい。
なお、保護された1置換アミノ基又は2個の水素が保護されたアミノ基の例としては、1置換アミノ基の1個の水素又はアミノ基の2個の水素をトリアルキルシリル基でそれぞれ置換したものである。
前記結合反応後に水酸基が生成する化合物としては、ケトン基、エステル基、アミド基、エポキシ基等が挙げられる。後に加水分解等の反応によって水酸基が生成する化合物としては、アルコキシシリル基、アミノシリル基等が挙げられる。
重合体末端と結合して重合体の末端にアミノ基を形成する変性化合物としては、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド等のC=N二重結合化合物が挙げられる。
重合体末端と結合して重合体の末端にアミノ基及び水酸基を形成する変性化合物としては、特に限定されないが、例えば、N,N,N',N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、N,N,N',N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン等のアミノ基を有するケトン化合物、また、N,N'−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状尿素化合物、環状アミド、すなわちラクタム化合物、さらに、N,N,N',N'−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のアミノ基含有エポキシ化合物、特開2001−131227号に記載の含窒素複素環式基を有するエポキシ化合物が挙げられる。
重合体末端と結合して重合体の末端にアルコキシシリル基を形成する変性化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメトキクロロシシラン、トリエトキシクロロシラン、ジフェノキシジクリロロシラン等のハロゲン化アルコキシシラン化合物、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エタン等の多官能アルコキシシラン化合物が挙げられる。
重合体末端と結合して重合体の末端にアルコキシシリル基及び水酸基を形成する変性化合物としては、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシ基及びアルコキシシリル基を分子内に有するポリシロキサン化合物が挙げられる。
重合体末端と結合して重合体の末端にアミノ基及びアルコキシシリル基を形成する変性化合物としては、特に限定されないが、例えば、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン等のアミノ置換基を有するアルキル基が結合したアルコキシシラン化合物、N−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕−N,N'−ジエチル−N'−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジニル)プロピルトリエトキシシラン等の、WO2007/034785に記載の保護された1置換アミノ基が結合したアルコキシシラン化合物、N−〔2−(トリメトキシシラニル)−エチル〕−N,N',N'−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−〔3−(トリエトキシシラニル)−プロピル〕−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、ビス−(3−ジメチルアミノプロピル)−ジメトキシシラン等のWO2008/013090に記載の複数の置換アミノ基が結合したアルコキシシラン化合物、1,4−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ピペラジン、1,4−ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ピペラジン等のWO2011/040312に記載の含窒素複素環が結合したアルコキシシラン化合物、3−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ〕プロピルトリメトキシシラン、3−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ〕プロピルメチルジエトキシシラン、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等のWO2011/129425に記載のアザシラン基が結合したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
重合体末端と結合して重合体の末端に水酸基を形成する変性化合物としては、特に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物、ベンゾフェノン等のケトン化合物が挙げられる。
上述した変性化合物(変性剤)の添加量は、特に限定されないが、重合開始剤のモル数すなわち重合体分子数に対して、変性剤の合計モル数が、0.1〜6倍となる範囲であることが好ましく、0.2〜3倍となる範囲であることがより好ましく、0.5〜2倍となる範囲であることがさらに好ましい。目的とする変性共役ジエン系重合体において十分な変性率を得る観点から0.5倍以上とすることが好ましい。
また、加工性を改良するため、重合体末端同士をカップリングさせ、分岐状重合体成分とした後に、上述した変性反応を行ってもよいし、変性剤として複数の結合を形成する多官能の化合物を用いることにより、分岐状重合体の形成と官能基の付与を同時に行ってもよい。
なお、変性剤として多官能の化合物を用いる場合は、結合を形成する官能基数にもよるが、当該変性剤の添加量は、重合開始剤のモル数すなわち重合体の分子量に対して0.5倍以下とすることが好ましい。
終了末端に変性する工程は、重合工程が回分式の場合は、重合工程で用いた反応器中で続いて変性反応を行っても、次の反応器に移送して行ってもよい。
重合工程が連続式の場合は次の反応器に移送して行う。
終了末端に変性する工程は、好ましくは重合工程に引き続いて、直ちに行い、好ましくは5分以内に変性剤を混合して反応を行わせる。
変性反応のための反応器は十分な撹拌が行われるものが好ましい。具体的には、スタティックミキサー型反応器、攪拌機付漕型反応器等がある。
上述のようにして、末端変性されたブタジエン系重合体を得た後、当該末端変性されたブタジエン系重合体の主鎖のビニル基を、ヒドロシリル化反応により、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する珪素変性基により変性する。
当該ヒドロシリル化反応は、有機溶剤溶液中又は重合体のまま(溶剤なしの状態)、混練機中で行なわれ、官能基を有するヒドロシラン化合物を触媒存在下に反応させ、ブタジエン系重合体主鎖に変性を行う。好ましくは、溶液重合における重合後にさらに、上述のように重合体の末端部を変性した重合体溶液をそのまま用いる。
また、ヒドロシラン化反応により直接前記官能基を有する変性基により変性がなされてもよいが、ヒドロシラン化反応の後に加水分解等を行い、アミノ基、アルコキシ基、水酸基を形成させてもよい。
2置換アミノ基を有するヒドロシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルアミノジメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジエチルアミノジエチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメチルシラン、6−ジエチルアミノヘキシルジメチルシランが挙げられる。
保護化1置換アミノ基を有するヒドロシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノジメチルシラン、N−エチル−N−トリメチルシリルアミノジエチルシランが挙げられる。
保護化アミノ基を有するヒドロシラン化合物としては、具体的には、N,N−ビストリメチルシリルアミノジメチルシラン、N,N−ビストリメチルシリルアミノジエチルシランが挙げられる。
水酸基を有するヒドロシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルヒドロキシシラン、ジエチルヒドロキシシラン、ジブチルヒドロキシシランが挙げられる。
また、加水分解により水酸基を有する珪素変性基を導入するヒドロシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルモノメトキシシラン、ジメチルモノエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、ジメチルグリシジルシラン、ジエチルグリシジルシランなどのエポキシ基を有するシラン化合物が挙げられる。
主鎖1モルに対して1〜10モルを変性することにより、後述するように、変性ブタジエン系重合体と、シリカとを混合してゴム組成物を得る際、良好な親和性が得られ、加工性にも優れたものとなる。より好ましくは、主鎖1モルに対し、2〜5モルである。
反応に使う白金触媒の量は、好ましくはヒドロシラン化合物当たり0.01〜10mmol/mol、より好ましくは0.1〜1mmol/molである。
そのほか、ヒドロシリル化反応を行う際に用いる触媒としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Ni、Co、Ru、Rhのうちいずれかを含むメタロセン化合物が挙げられ、特にチタノセン化合物と有機リチウム又は有機アルミニウムとの反応物が好適である。
なお、重合溶液を用い、末端変性反応に続いてヒドロシリル化反応を行う場合は、重合温度と同じ温度で行うことができる。溶液状態では、反応時間は10分〜5時間が好ましく、より好ましくは30分〜2時間の範囲である。
上述のようにして、末端変性及び主鎖変性がなされた、変性ブタジエン系重合体は、溶
液として得られる場合、必要に応じて酸化防止剤、添加剤を加えた後、通常の方法で溶媒
の除去、乾燥を行うことにより、後述するゴム組成物の原料とすることができる。具体的
には、スチームストリッピング及び脱水乾燥による方法、ドラムドライヤー、フラッシン
グ及びベント押出し機による直脱法等である。
前記酸化防止剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
また、必要に応じ、前記添加剤として、イオン性物質を除去、あるいは中和するために
、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールを加えたり、ステアリ
ン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、デカン酸、クエン酸、リンゴ酸等のカル
ボン酸、無機酸水溶液、炭酸ガス等が加えたりしてもよい。
上述したように、本実施形態のゴム組成物に含有されている原料ゴムは、当該原料ゴム全体を100質量部としたとき、20質量部以上の変性ブタジエン系重合体を含む。
変性ブタジエン系重合体以外の原料ゴムとしては、特に限定されず、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、その他の共役ジエン系共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。
前記共役ジエン系重合体又はその水素添加物の具体例としては、特に限定されず、例えば、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
前記共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物の具体例としては、特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム又はその水素添加物、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム又はその水素添加物が挙げられる。
前記共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物の具体例としては、特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマーが挙げられる。
前記その他の共役ジエン系共重合体又はその水素添加物の具体例としては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
また、前記非ジエン系重合体としては、特に限定されず、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム状重合体の重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,500,000であることがより好ましい。また、低分子量のいわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ここでいう重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
原料ゴム100質量部中の変性ブタジエン系重合体の含有量を20質量部以上とすることにより、本発明の目的とするフィラー分散性が優れ、本実施形態のゴム組成物を加硫化組成物とした場合、引っ張り特性、粘弾性特性などの性能が優れ、タイヤ用の材料として用いた場合、当該タイヤにおいて優れた燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性、剛性が得られる。
また、該変性ブタジエン系重合体の原料ゴム100質量部中の含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
90質量部以下とすることにより、本実施形態の未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を下げて加工性が向上する。
本実施形態のゴム組成物は、変性ブタジエン系重合体を20質量部以上含む原料ゴム100質量部、及び、CTAB比表面積が180m2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカ5〜200質量部からなるゴム組成物である。
好ましくは、アグリゲートサイズが30nm以上であるシリカを用いるゴム組成物である。
また、好ましくは、さらにフィラーとしてBET比表面積185m2/g未満のシリカ又はカーボンブラックを5〜100質量部含むゴム組成物である。
上述したように、本実施形態のゴム組成物は、CTAB比表面積が180m2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカ(以下、「微粒径シリカ」ともいう)を含有する。
このような微粒径シリカを配合することによって、本実施形態のゴム組成物において、優れた低燃費性、耐摩耗性、ウェットスキッド性能及び操縦安定性が得られる。
CTAB比表面積が180m2/g以上であると耐摩耗性に優れるゴム組成物が得られる。
前記CTAB比表面積は、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、さらに好ましくは250m2/g以下である。
前記CTAB比表面積が500m2/g以下であると、加工性が優れるゴム組成物が得られる。
より好ましくは、CTAB比表面積は、190〜300m2/gである。
なお、CTAB比表面積は、ASTM D3765−92に準拠して測定される。
BET比表面積が185m2/g以上であると、耐摩耗性に優れるゴム組成物が得られる。
該BET比表面積は、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、さらに好ましくは260m2/g以下である。
BET比表面積が500m2/g以下であると、加工性に優れるゴム組成物が得られる。
なお、シリカのBET比表面積は、ASTM D3037−81に準じて測定される。
また、アグリゲートサイズは、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは70nm以下、さらにより好ましくは65nm以下である。
このようなアグリゲートサイズを有することにより、良好な分散性を有しながら、優れた補強性、低燃費性、耐摩耗性、ウェットスキッド性能及び操縦安定性を与えることができる。
アグリゲートサイズは、凝集体径又は最大頻度ストークス相当径とも呼ばれているものであり、複数の一次粒子が連なって構成されるシリカの凝集体を一つの粒子と見なした場合の粒子径に相当するものである。
アグリゲートサイズは、例えば、BI-XDC(Brookhaven Instruments Corporation製)等のディスク遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
具体的には特開2011−132307号に記載されている方法により測定できる。
該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上である。
この範囲であると、分散性と補強性に優れる。
なお、微粒径シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
該微粒径シリカの配合量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、特に好ましくは55質量部以下である。
微粒径シリカの配合量を5質量部以上とすることにより、配合効果が十分に得られ、200質量部以下とすることにより、実用上良好な加工性が得られる。
本実施形態のゴム組成物は、上述のようにして末端変性及び主鎖変性を行った、変性ブタジエン系重合体を用いているため、シリカの分散性が良好であり、高い比表面積のシリカを用いても分散性が良好である。
本実施形態のゴム組成物においては、上述したシリカの他、さらに他のフィラーを併用することができる。
上述した変性ブタジエン系重合体の種々の官能基の組み合わせ効果により、微粒径シリカ及び他のフィラー双方の分散が良くなって、すぐれた補強効果が得られる。
例えば、フィラーとして、BET比表面積185m2/g未満のシリカ又はカーボンブラックを、上述した原料ゴム100質量部に対して5〜100質量部、さらに含むゴム組成物が好ましいものとして挙げられる。
上述したCTAB比表面積が180m2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカと、BET比表面積185m2/g未満のシリカ又はカーボンブラックの比率は任意であり、1対99〜99対1で用いられる。
好ましくは、30対70〜70対30である。
併用して用いることにより、より加工性と耐摩耗性、剛性のバランスが向上する。
カーボンブラックを併用することにより、補強性を高めることができるとともに、タイヤトレッド用途においてドライグリップ性能を向上させることができる。
カーボンブラックは、BET法窒素吸着比表面積(N2SA)が、好ましくは185m2/g未満のものが用いられ、好ましくは30 m2/g以上であり、より好ましくは50〜130m2/gの範囲である。この範囲において補強性と分散性のバランスが良い。タイヤトレッド用途において更に好ましくはN220、N330、N339である。
例えば、アルミナ類、炭酸カルシウム、クレー、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、酸化チタン、雲母等である。
原料ゴムに対するフィラーの使用量は、フィラーを多く用いると、硬さ、モジュラス等の物性が上昇し、用途に応じ所望の物性となるように調整される。
タイヤ用途では、好ましくはフィラー使用量が、原料ゴム100質量部に対して、5〜150質量部であり、履物用途では、好ましくは30〜200質量部である。
すなわち、発明の範囲では、柔らかいものから硬いものまで広く対応可能である。
また、本実施形態のゴム組成物には、上記シランと組み合わせてシランカップリング剤を用いてもよい。
シランカップリング剤は、分子中にシリカ親和部とポリマー親和部の両方を有する化合物であり、シリカ親和部として、代表的にはアルコキシシリル基であり、ポリマー親和部として、ポリスルフィド、メルカプト基、エチレン2重結合等である。
例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が用いられる。
シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部である。
シランカップリング剤をこの範囲で配合すると、シリカの分散性がより改善され、加工性が良くなり、さらに耐摩耗性が向上する等加硫ゴムの性能が改良される。
本実施形態のゴム組成物には、所定の可塑剤を用いてもよい。
可塑剤を用いることにより、硬さ、モジュラスの調整は可能である。
可塑剤としては、上記の伸展油と同様のオイルが使用可能であり、そのほかに、種々の天然物オイル、合成オイル、低分子量重合体等が用いられる。また、公知の加工助剤を用いることができる。
本実施形態のゴム組成物は、架橋剤、配合剤等を加えて、架橋処理をさらに施したゴム組成物としてもよい。
架橋剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物等が用いられる。
硫黄系加硫剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等が用いられ、有機過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が用いられる。
また、必要に応じて加硫促進剤を配合してもよく、加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアジニン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも1つを含有するものを使用することができる。
さらに、必要に応じて加硫助剤を配合してもよく、加硫助剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸等を使用することができる。
またさらに、老化防止剤を用いることができる。
本発明のゴム組成物は加硫ゴムとして、タイヤ、防振ゴム、各種工業用品に用いられる。特に、タイヤのトレッド用ゴムとして用いられ、SBRは特にキャップトレッド用に好適に用いられる。
本実施形態のゴム組成物は、上述した原料ゴム、シリカ、必要に応じてその他のフィラー、架橋剤、各種添加剤、可塑剤等を配合し、機械的に混合する方法、溶液、分散液状態での混合等の方法を適用することにより製造できる。特に、混練機により機械的に練る方法が好ましく、例えば、ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等、公知の方法で可能である。
本実施形態のゴム組成物は、常法に従い加硫成形することにより、タイヤとすることができる。
様々なタイヤ部材として使用することができるが、中でもタイヤトレッド材として使用することが好ましい。
〔(1)結合スチレン量〕
測定用の試料(組成物の原料となる変性ブタジエン系重合体)をクロロホルム溶液とし、測定機器として島津製作所製UV−2450を用いて、スチレンのフェニル基による波長254nmの紫外線(UV)の吸収量を測定し、結合スチレン量(質量%)を測定した。
前記測定用の試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを作製し、測定機器として日本分光(株)製:FT−IR230を用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度により、ハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)を求めた。
JIS K6300−1に従い、L型ローターを用い、100℃で予熱を1分間行い、その4分後の粘度を測定した。
数値が小さいほど粘度が小さいことを示す。
ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製、示差走査熱量計DSC3200Sを用い、ヘリウム50mL/分の流通下、−100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー社製 TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。
オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製、「HLC8020」)を用いた。
測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLを前記GPC測定装置に注入して測定した。
上記のようにして求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)により、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。
以下に示すようにして、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。低分子量内部標準ポリスチレンとして市販の分子量5000の標準ポリスチレンを用いた。
<試料溶液の調製>
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
<ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料溶液200μLを装置に注入して測定した。
カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。
カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。
カラムは、ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60Sを使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分で、東ソー社製 CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021で、RI検出器を用いて測定し、クロマトグラムを得た。
<変性率の計算方法>
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
Kolthoffの方法に従い、測定用の試料のオスミウム酸分解生成物を得、これを用いて、メタノール中でブロックポリスチレンに相当する不溶ポリスチレンを析出させた。
この不溶ポリスチレン量を定量し、共重合体当たりの質量%としてブロックスチレン量を算出した。
また、スチレン単位が1個のスチレン単連鎖及びスチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の結合スチレン量に対する含有率は、田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))に従って、スチレン−ブタジエン共重合ゴムをオゾンによって分解した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分析して求めた。
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレ
ーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチ
レン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラ
ニル)プロパン1.30gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液を、リチウム添加量とし
て10.4mmolとなるように反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の
温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達から2分後、反応器にN,N,N',N'−テトラグリシジル−1,
3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.52mmol添加し、当該添加から更に2分
後に、1−〔3−(トリエトキシシラニル)−プロピル〕−4−メチルピペラジンを8.
3mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジエチルアミノジメチルシラン42mmol及び塩化白金酸イソプロパノール
溶液を加えた。用いた塩化白金酸は前記ヒドロシラン化合物に対し0.25mmol/m
olとした。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、安定
剤としてBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)を共重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、共重合体を得た。得られた共重合体を重合体Aとした。
重合体Aを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量
%であった。
100℃でのムーニー粘度は50であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン
部分のミクロ構造の1,2−ビニル結合量は52モル%であった。
また、変性率は99%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。
その他、分子量、分子量分布、ブロックスチレン量、単鎖及び長鎖スチレン量を含め、
重合体Aの分析結果を下記表1に示した。
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.30gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤として、ヘキサメチレンイミン(10.4mmol)とn−ブチルリチウム(10.4mmol)とを、あらかじめ反応させた、ヘキサメチレンイミノリチウムのシクロヘキサン溶液を、リチウム添加量として10.4mmolとなるように反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達から2分後、反応器にN,N,N',N'−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.78mmol添加し、当該添加から更に25分後に、N,N,N',N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノンを7.2mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジメチルモノエトキシシラン21mmol及び塩化白金酸イソプロパノール溶液を加えた。用いた塩化白金酸は前記ヒドロシラン化合物に対し0.30mmol/molであった。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを共重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、共重合体を得た。得られた共重合体を重合体Bとした。
重合体Bを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は57であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−ビニル結合量は52モル%であった。
また、変性率は99%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。
その他、分子量、分子量分布、ブロックスチレン量、単鎖及び長鎖スチレン量を含め、重合体Bの分析結果を下記表1に示した。
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.45gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤として、ヘキサメチレンイミン(13.0mmol)とn−ブチルリチウム(13.0mmol)とを、あらかじめ反応させた、ヘキサメチレンイミノリチウムのシクロヘキサン溶液を、リチウム添加量として13.0mmolとなるように反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達から2分後、反応器に2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを3.25mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジエチルアミノジメチルシラン26mmol及び塩化白金酸イソプロパノール溶液を加えた。用いた塩化白金酸は前記ヒドロシラン化合物に対し0.30mmol/molであった。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを共重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、共重合体を得た。得られた共重合体を重合体Cとした。
重合体Cを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は63であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は52モル%であった。
また、変性率は99%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。
その他、分子量、分子量分布、ブロックスチレン量、単鎖及び長鎖スチレン量を含め、重合体Cの分析結果を下記表1に示した。
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.0gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液を、リチウム添加量として7.9mmolとなるように反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は88℃に達した。
反応温度のピーク到達から2分後、反応器に3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシランを3.96mmol添加し、5分間変性反応を行った。
その後、ブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを共重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、共重合体を得た。得られた共重合体を重合体Dとする。
重合体Dを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は58であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は53モル%であった。
また、変性率は80%であった。
ガラス転移温度は−29℃であった。
その他、分子量、分子量分布、ブロックスチレン量、単鎖及び長鎖スチレン量を含め、重合体Dの分析結果を表1に示した。
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.45gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液を、リチウム添加量として13.0mmolとなるように反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達から2分後、反応器に4塩化珪素を3.25mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジエチルアミノジメチルシラン26mmol及び塩化白金酸イソプロパノール溶液を加えた。用いた塩化白金酸は前記ヒドロシラン化合物に対し0.25mmol/molであった。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、その後、ブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを共重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、共重合体を得た。得られた共重合体を重合体Eとした。
重合体Eを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は62であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−ビニル結合量は52モル%であった。
また、変性率は90%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。
その他、分子量、分子量分布、ブロックスチレン量、単鎖及び長鎖スチレン量を含め、重合体Eの分析結果を下記表1に示した。
(*1)
NBL ノルマルブチルリチウム
HMI-Li ヘキサメチレンイミノリチウム
(*2)
TGAMC N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
TESPMP 1−〔3−(トリエトキシシラニル)−プロピル〕−4−メチルピペラジン
TMDABPO N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン
AS-1 2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン
DMAPTES 3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン
SiCL4 4塩化珪素
(*3)
DEASiH ジエチルアミノジメチルシラン
EOSiH ジメチルモノエトキシシラン
上述のようにして得られた重合体A〜Eを原料ゴムとして、以下に示す配合1〜3に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
変性ブタジエン系共重合体(重合体A〜E):100.0質量部
微粒径シリカ(ローディア社製シリカZeosil Premium 200MP(注1)):25.0質量部
大粒径シリカ(ローディア社製シリカZeosil 1115MP(注2)):35.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製 Si75):4.8質量部
S-RAEオイル(ジャパンエナジー社製、JOMOプロセスNC140):10.0質量部
ワックス(大内新興化学社製、サンノックN):1.5質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:1.5質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.3質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):1.6質量部
合計:187.2質量部
(注1)CTAB比表面積:200m2/g、BET比表面積:220m2/g、平均一次粒子径:25nm、アグリゲートサイズ:65nm
(注2)CTAB比表面積:105m2/g、BET比表面積:115m2/g、平均一次粒子径:10nm、アグリゲートサイズ:92nm
前記(注1)、(注2)については、以下、同様とする。
変性ブタジエン系共重合体(重合体A〜E):100.0質量部
微粒径シリカ(ローディア社製シリカZeosil Premium 200MP(注1)):35.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストKH(N339)):25.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製 Si75):3.0質量部
S-RAEオイル(ジャパンエナジー社製、JOMOプロセスNC140):10.0質量部
ワックス(大内新興化学社製、サンノックN):1.5質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:1.5質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.3質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):1.6質量部
合計:185.4質量部
変性ブタジエン系重合体(重合体A〜E):100.0質量部
中粒径シリカ(ローディア社製シリカZeosil 1165MP (注3)):60.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製Si75):4.8質量部
S-RAEオイル(ジャパンエナジー社製、JOMOプロセスNC140):10.0質量部
ワックス(大内新興化学社製、サンノックN):1.5質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0
質量部
硫黄:1.5質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.3質
量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):1.6質量部
合計:187.2質量部
(注3)CTAB比表面積:160m2/g、BET比表面積:165m2/g、平均一次粒子径:15nm
配合1〜3に記載の材料を、下記の方法により混練してゴム組成物を得た。
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(重合体A〜E)、フィラー(シリカ、カーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。
このとき、密閉混合機の温度を制御し、8分間混練りし、排出温度は155〜160℃として配合物を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度4分間混練した。この場合も、混合機の温度制御により排出温度を155〜160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練し、配合物を得た。
その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫し、加硫物を得た。
加硫後、ゴム組成物の物性を測定した。
物性測定結果を下記表2に示した。
ゴム組成物の物性は、下記の方法により測定した。
<(1)配合物のムーニー粘度>
ここで、測定対象の配合物とは、前記(ゴム組成物の製造方法)中、前記第三段の混練を行った後、得られた配合物を言う。
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300-1に準じて、130℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定し、後述する比較例1の結果を100として指数化した。
値が小さいほど加工性に優れることを示す。
前記(ゴム組成物の製造方法)中、第二段の混練り後、直ちに配合物を70℃に設定したオープンロールに3回通し、練りゴムの表面肌の状態(ロール肌)とエッジの状態(ロールエッジ)を目視で評価した。
前記(ロール肌)については、表面が滑らかで光沢があるものを○、表面がなめらかだが光沢がないものを△、表面に凹凸が見られるものを×とした。
前記(ロールエッジ)については、エッジの状態は滑らかなものを○、わずかにギザギザがあるものを△、大きくギザギザがあるものを×とした。
JIS K6251の引張特性の求め方に準じてダンベル状試験片5号形を用いて測定し、比較例1の結果を100として指数化した。
300%モジュラスとは伸び300%になるまでの引張応力である。
切断時伸びは破断伸びともいう。
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
各々の測定値は比較例1を100として指数化した。
0℃において周波数10Hz、歪み1%で測定したtanδをウェットグリップ性能の指標とした。値が大きいほどウェットグリップ性能が良好であることを示す。
また、50℃において周波数10Hz、歪み3%で測定したtanδを省燃費性能の指標とした。値が小さいほど省燃費性能が良好であることを示す。
50℃において周波数10Hz、歪み10%で測定した貯蔵弾性率G'と歪み0,1%で測定した貯蔵弾性率G'の差であるペイン効果ΔG'を、フィラー分散性の指標とした。値が小さいほど
フィラー分散が良好であることを示す。さらに、50℃において周波数10Hz、歪み3%で測定した貯蔵弾性率G'を剛性の指標とした。値が大きいほど剛性が高く、タイヤに用いた場合の走行安定性が高い。
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所製)を使用し、JIS K6264-2に準じて、荷重44.1N、1000回転の摩耗量を測定し、比較例1を100として指数化した。指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
シスロスが少なく、タイヤの省燃費性能が実現されているとともに、0℃のtanδも高くウェットグリップ性能に優れていることが確認された。
加えて、比較例1の重合体のゴム組成物と比較して、耐摩耗性及び50℃の貯蔵弾性率G‘により測定した剛性が優れていることが確認された。
Claims (5)
- 不活性有機溶剤を重合溶媒とし、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重
合開始剤として用い、1,3−ブタジエンを重合、又は1,3−ブタジエンと他の共重合
可能な単量体とを共重合して、かつ変性剤を用いて変性反応を行い、アミノ基、アルコキ
シシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基によ
って末端変性されたブタジエン系重合体を得る工程と、
前記末端変性されたブタジエン系重合体の主鎖のビニル基を、アミノ基、アルコキシシ
リル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロシリル化
合物を用い、ヒドロシリル化反応により主鎖を変性して変性ブタジエン系重合体を得る工程と、
前記変性ブタジエン系重合体を20質量部以上含む原料ゴム100質量部と、CTAB
比表面積が180cm2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカ5〜20
0質量部と、
を、混合する工程と、
を有する、ゴム組成物の製造方法。 - 不活性有機溶剤を重合溶媒とし、官能基を有するアルカリ金属化合物又はアルカリ土類
金属化合物を重合開始剤として用い、1,3−ブタジエンを重合、又は1,3−ブタジエ
ンと他の共重合可能な単量体とを共重合して、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基か
らなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性基によって末端変性されたブ
タジエン系重合体を得る工程と、
前記末端変性されたブタジエン系重合体の主鎖のビニル基を、アミノ基、アルコキシシ
リル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロシリル化
合物を用い、ヒドロシリル化反応により主鎖を変性する工程と、
を実施して、変性ブタジエン系重合体を得、
前記変性ブタジエン系重合体を20質量部以上含む原料ゴム100質量部と、CTAB
比表面積が180cm2/g以上、BET比表面積が185m2/g以上のシリカ5〜20
0質量部と、
を、混合する工程と、
を有する、ゴム組成物の製造方法。 - フィラーとしてBET比表面積185m2/g未満のシリカ、又はBET比表面積18
5m2/g未満のカーボンブラックを、5〜100質量部、さらに混合する工程を有する
、
請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。 - 架橋処理を施す工程を、さらに有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法によってゴム組成物を得る工程と、得られたゴム組成物を成形する工程と、を有する、タイヤの製造方法。
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