以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
<タイヤ用ゴム組成物>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、第一シリカと、上記第一シリカよりも平均一次粒子径が小さい第二シリカとを含有し、
上記変性共役ジエン系重合体は、110℃で測定されるムーニー緩和率(MSR)が0.45以下であり、変性率が80質量%以上であり、
上記第二シリカの平均一次粒子径と上記第一シリカの平均一次粒子径との差が2nm以上である。以下、各成分について説明する。
<ゴム成分>
<変性共役ジエン系重合体>
ゴム成分が含有する変性共役ジエン系重合体は、後述するように、重合開始剤を用い、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して得られる共役ジエン系重合体の末端が変性された共役ジエン系重合体であることが好ましい。本実施形態のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分に含まれる変性共役ジエン系重合体は、110℃で測定されるムーニー緩和率(以下、単に「ムーニー緩和率」又は「MSR」ともいう。)が0.45以下であり、変性率が80質量%以上である。
変性共役ジエン系重合体のMSRの上限値は、0.45以下であればよく、例えば0.42以下、0.40以下、0.38以下、又は0.35以下とすることができる。MSRの下限値は、特に限定されず、例えば0.15以上とすることができる。
MSRは、変性共役ジエン系共重合体の分岐構造と分子量の指標となる。例えば、MSRの値が減少するにつれて、分子量及び変性共役ジエン系重合体の分岐数(例えば、星形高分子の分岐数(「星形高分子の腕数」ともいう。))が増加する傾向にある。変性共役ジエン系重合体の分岐が多いほどMSRが小さくなる傾向にあるため、後述するムーニー粘度が等しい変性共役ジエン系重合体を比較する場合、MSRを分岐度の指標として用いることができる。ムーニー緩和率は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
MSRを0.45以下とするためには、例えば、変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量を70万以上かつ分岐度を3以上にする、又は変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量を65万以上かつ分岐度を4以上にすれば、0.45以下となる傾向にある。また、MSRを0.40以下とするためには、例えば、変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量を75万以上かつ分岐度を3以上にする、又は変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量を70万以上かつ分岐度を4以上にすれば、0.40以下となる傾向にある。分岐度は、例えば、変性剤の官能基数、変性剤の添加量、又はメタレーションの進行度によって制御することができる。
変性共役ジエン系共重合体の変性率の下限値は、80質量%以上であればよく、例えば85質量%以上、88質量%以上、又は90質量%以上とすることができる。変性率は、後述する実施例に記載の方法により測定、算出することができる。
変性共役ジエン系重合体は、ムーニー緩和率が0.45以下であり、かつ変性率が80質量%以上であればよく、好ましくは、ムーニー緩和率が0.44以下であり、かつ変性率が80質量%以上であり、より好ましくは、ムーニー緩和率が0.43以下であり、かつ変性率が85質量%以上であり、さらにより好ましくは、ムーニー緩和率が0.42以下であり、かつ変性率が88質量%以上であり、特に好ましくは、ムーニー緩和率が0.40以下であり、かつ変性率が90質量%以上である。変性共役ジエン系重合体のムーニー緩和率が0.45以下であり、かつ変性率が80質量%以上であると、タイヤ用ゴム組成物を加硫物とする際の加工性及び加硫物の耐摩耗性に優れる。
ムーニー緩和率が0.45以下であり、かつ変性率が80質量%以上である変性共役ジエン系重合体を得るためには、例えば、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物等を重合開始剤として用い、重合後にさらに特定の分岐率を与える変性剤を用いて変性することが好ましい。この際、分子内に少なくとも1つ窒素原子を持つ有機リチウム化合物を重合開始剤として用いると連鎖移動反応が促進されることから好ましい。また、所定の値以上の変性率と所定の値以下のMSRを同時に達成するためには、重合条件を制御することが好ましい。
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体は、加硫物とする際の加工性と加硫物としたときの耐摩耗性との観点から、110℃で測定されるムーニー粘度が、100以上200以下であることが好ましく、110以上180以下であることがより好ましく、120以上160以下であることがさらに好ましい。ムーニー粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
変性共役ジエン系重合体は、少なくとも1つの末端に、窒素原子を有し、窒素含有アルコキシシラン置換基を中心とする星形高分子構造を有することが好ましい。少なくとも1つの末端に窒素原子を有するためには、例えば、後述する製造方法に記載する重合工程において、重合開始剤に窒素を含有するものを用いることにより、達成することができる傾向にある。また、その窒素含有アルコキシシランは、変性剤由来の構造であることが好ましい。ここで、本明細書でいう「星形高分子構造」とは、1つの分岐点から線状分子鎖(腕)が複数結合している構造である。また、ここでいう一つの分岐点は、少なくとも窒素原子を含む線状分子鎖と、アルコキシシラン基を含む線状分子鎖と、結合している。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求められるポリスチレン換算の第一の数平均分子量(Mn)に対するGPC−光散乱法測定により求められる第二の数平均分子量(Mn−i)〔(Mn−i/Mn)〕が、1.00以上であることが好ましく、1.20以上であることがより好ましく、1.30以上であることがさらに好ましい。
第一の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、得られるポリスチレン換算の数平均分子量であり、相対分子量である。相対分子量は、測定する高分子の回転半径に影響を受ける。一方、第二の数平均分子量は、GPC−光散乱法測定により測定される数平均分子量であり、絶対分子量である。絶対分子量は、高分子の回転半径に影響を受けない。よって、第一の数平均分子量に対する第二の数平均分子量(Mn−i/Mn)は、高分子の分岐構造と分子量の指標となる。すなわち、(Mn−i/Mn)が1.00以上である場合、分子量が高く、分岐構造を有している構造であることになる。(Mn−i/Mn)の上限は特に限定されないが、3.00以下であることが好ましい。
得られる変性共役ジエン系重合体の(Mn−i/Mn)が1.00以上であると、変性共役ジエン系重合体の星形高分子由来の分岐度が向上する傾向にある。(Mn−i/Mn)が1.00以上である変性共役ジエン系重合体を得るためには、例えば、3以上の分岐を有し、かつ、第一の数平均分子量が30万以上である変性共役ジエン系重合体とすることが好ましく、さらには、4以上の分岐を有し、かつ、第一の数平均分子量が32万以上である変性共役ジエン系重合体とすることがより好ましい。ゲル浸透クロマトグラフィー測定及びGPC−光散乱法測定は、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求められるポリスチレン換算の第一の重量平均分子量(Mw)に対するGPC−光散乱法測定により求められる第二の重量平均分子量(Mw−i)〔(Mw−i/Mw)〕が、1.00以上であることが好ましく、1.02以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましい。
第一の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、得られるポリスチレン換算の重量平均分子量であり、相対分子量である。相対分子量は、測定する高分子の回転半径に影響を受ける。一方、第二の重量平均分子量は、GPC−光散乱法測定により、得られる重量平均分子量は絶対分子量である。絶対分子量は、高分子の回転半径に影響を受けない。よって、第一の数平均分子量に対する第二の数平均分子量(Mw−i/Mw)は、高分子の分岐構造と分子量の指標となる。すなわち、(Mw−i/Mw)が1.00以上である場合は、分子量が高く、分岐構造を有している構造であることになる。(Mw−i/Mw)の上限は特に限定されないが、2.00以下であることが好ましい。
(Mw−i/Mw)が1.00以上であることで、得られる変性共役ジエン系重合体の変性率が向上する傾向にある。(Mw−i/Mw)が1.00以上である変性共役ジエン系重合体を得るためには、例えば、3以上の分岐を有し、かつ、第一の数平均分子量を60万以上である変性共役ジエン系重合体とすることが好ましい。ゲル浸透クロマトグラフィー測定及びGPC−光散乱法測定の方法については、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系重合体は、性能と加工特性とのバランスの観点から、第一の数平均分子量(Mn)が200,000以上2,000,000以下であることが好ましく、250,000以上1,500,000以下であることがより好ましく、300,000以上1,000,000以下であることがさらに好ましい。第一の数平均分子量がこのような下限値以上であることで、加硫物としたときの強度を一層向上させることができる傾向にあり、このような上限値以下であることで、加工性を一層向上させることができる傾向にある。また、本実施形態のタイヤ用ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系重合体は、性能と加工性のバランスの観点から、第一の重量平均分子量が400,000以上4,000,000以下であることが好ましく、500,000以上3,000,000以下であることがより好ましく、600,000以上2,000,000以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の、第一の数平均分子量(Mn)に対する第一の重量平均分子量(Mw)(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.00以上3.50以下であり、より好ましくは1.50以上3.40以下であり、さらに好ましくは1.60以上2.70以下であり、よりさらに好ましくは1.70以上2.50以下である。また、第一の数平均分子量(Mn)が200,000以上2,000,000以下であり、(Mw/Mn)が1.50以上3.50以下であることが、より好ましい。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系重合体が、下記一般式(A)又は(B)で表される変性共役ジエン系重合体を含むことが好ましい。変性共役ジエン系重合体は、式(A)で表される変性共役ジエン系重合体及び式(B)で表される変性共役ジエン系重合体からなる群から選ばれる一種以上を含むことが好ましく、二種以上を含んでもよい。変性共役ジエン系重合体のうち、式(A)で表される変性共役ジエン系重合体及び式(B)で表される変性共役ジエン系重合体の合計の含有量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましく、100質量%であってもよい。
式(A)中、R21〜R24は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R25及びR26は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R27は、水素原子、炭化水素で置換されたシリル基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を表す。a及びcは、各々独立して、1又は2の整数を表し、b及びdは、各々独立して、0又は1の整数を表し、(a+b)及び(c+d)は、各々独立して、2以下の整数を表す。(Polym)は、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と共重合することで得られる共役ジエン系重合体鎖を表し、少なくともその一つの末端が、下記一般式(4)〜(7)のうち少なくとも一つで表される官能基を有する。複数存在する場合のR21、及びR23、並びに複数存在する(Polym)は、各々独立している。
変性共役ジエン系重合体が有し得る、上述した星形高分子構造としては、例えば、式(A)で表される変性共役ジエン系重合体において、R25と結合しているSi原子を分岐点として、その分岐点は、線状分子鎖(腕)である、R25、(OR21)3-a-b、R22 b、及び(Polym)aと結合している構造が挙げられる。
式(B)中、R28〜R33は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R34、R35及びR36は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、a、c、及びeは、各々独立して、1又は2の整数を表し、b、d、及びfは、各々独立して、0又は1の整数を表し、(a+b)、(c+d)、及び(e+f)は、各々独立して、2以下の整数を表し、(Polym)は、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することで得られる共役ジエン系重合体鎖を表し、少なくともその一つの末端が、下記一般式(4)〜(7)のうち少なくとも一つで表される官能基を有する。複数存在する場合のR28、R30、及びR32、並びに複数存在する(Polym)は、各々独立している。
変性共役ジエン系重合体が有し得る、上述した星形高分子構造としては、例えば、式(B)で表される変性共役ジエン系重合体において、R34と結合しているSi原子を分岐点として、その分岐点は、線状分子鎖(腕)である、R34、(OR28)3-a-b、R29 b、及び(Polym)aと結合している構造が挙げられる。
式(4)中、R10及びR11は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を表す。R10及びR11は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR10及びR11は、炭素数5〜12の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。
式(5)中、R12及びR13は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を表す。R12及びR13は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR12及びR13は、炭素数5〜12の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。R14は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数4〜20の共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す。
式(6)中、R15及びR16は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択される少なくとも1種を表す。R15及びR16は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR15及びR16は、結合して炭素数5〜12のアルキレン基を表し、その一部分に分岐構造を有していてもよい。
式(7)中、R17は、炭素数が2〜10の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。R18は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、その一部分に分岐構造を有していてもよい。
式(A)において、R21〜R24は、各々独立して、炭素数1〜8のアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基を表すことがより好ましい。R25及びR26は、各々独立して、炭素数1〜8のアルキレン基を表すことが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基を表すことがより好ましい。R27は、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。また、R21〜R24が表す基としては、以下のものに限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。また、R25及びR26が表すものとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基が挙げられ、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。R27が表すものとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
式(A)において、(Polym)を構成する共役ジエン系重合体部分の数平均分子量は、特に制限されないが、250,000以上1,500,000以下であることが好ましく、350,000以上900,000以下であることがより好ましい。(Polym)を構成する共役ジエン系重合体の詳細は後述する。
式(B)において、R28〜R33は、各々独立して、炭素数1〜8のアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基を表すことがより好ましい。R34、R35及びR36は、各々独立して、炭素数1〜8のアルキレン基を表すことが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基を表すことがより好ましい。また、R28〜R33としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。また、R34、R35及びR36としては、各々独立して、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基が挙げられ、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
式(B)において、(Polym)を構成する共役ジエン系重合体部分の数平均分子量は、特に制限されないが、250,000以上1,500,000以下であることが好ましく、350,000以上900,000以下であることがより好ましい。(Polym)を構成する共役ジエン系重合体の詳細は後述する。
式(4)において、R10及びR11のうち少なくとも一方がアルキル基の場合には、該アルキル基は炭素数1〜6であることが好ましい。R10及びR11のうち少なくとも一方がシクロアルキル基の場合には、該シクロアルキル基は、炭素数5〜7であることが好ましい。R10及びR11のうち少なくとも一方がアラルキル基の場合には、該アラルキル基は、炭素数6〜8であることが好ましい。R10及びR11が結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成している場合には、R10及びR11は、結合して炭素数5〜7のアルキレン基を表すことが好ましい。
R10及びR11が表す基としては、以下のものに限定されないが、それぞれ独立に、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくはブチル基、イソブチル基である。R10及びR11が結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成している場合には、R10及びR11が結合して表す基としては、以下のものに限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基が挙げられ、好ましくは、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基である。
式(5)において、R12及びR13のうち少なくとも一方がアルキル基の場合には、該アルキル基は炭素数1〜8であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましい。アルキル基としては、以下のものに限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくは、ブチル基、イソブチル基である。R12及びR13のうち少なくとも一方がシクロアルキル基の場合には、該シクロアルキル基は、炭素数5〜7であることが好ましい。R12及びR13のうち少なくとも一方がアラルキル基の場合には、該アラルキル基は、炭素数6〜8であることが好ましい。
式(5)において、R12及びR13が結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成している場合には、R12及びR13が結合して表す基としては、炭素数5〜7のアルキレン基が好ましく、以下のものに限定されないが、例えば、ペンチレン基、へキシレン基が挙げられる。
式(5)において、R14は、炭素数1〜8のアルキレン基を表すことが好ましい。R14としては、以下のものに限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基が挙げられ、好ましくは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
式(5)中、R14が共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表すとき、R14が下記式(8)〜(10)の少なくとも一つの繰り返し単位を有することが好ましい。
式(6)において、R15及びR16としては、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、以下のものに限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。
式(7)において、R17は、炭素数4〜6のアルキレン基を表すことが好ましい。また、R17としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基が挙げられ、好ましくは、ペンチレン基、へキシレン基である。
式(7)において、R18は、炭素数1〜4のアルキル基を表すことが好ましい。R18としては、以下のものに限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。
式(A)及び式(B)中の(Polym)は、それぞれ独立して、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することで得られる共役ジエン系重合体鎖を表し、少なくともその一つの末端が、上記一般式(4)〜(7)のうち少なくとも一つで表される官能基を有する。(Polym)を構成する共役ジエン系重合体は、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して得られる共役ジエン系重合体であることが好ましい。
共役ジエン化合物としては、重合可能な単量体であれば以下のものに限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であれば以下のものに限定されないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。また、共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスがさらに優れ、耐摩耗性及び破壊強度もより満足する加硫物を得ることができる傾向にある。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に準じて測定する。
共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10モル%以上75モル%以下であることが好ましく、25モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスがさらに優れ、耐摩耗性及び破壊強度もより満足する加硫物を得ることができる傾向にある。ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンとの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。ランダム共重合体としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
ブロック共重合体としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体が挙げられる。例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBで表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
上記式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
共役ジエン系重合体中、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合が水素化されていてもよい。共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水素化率(単に、「水添率」ともいう。)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。加硫ゴムとして用いる場合には、共役ジエン部の二重結合が部分的に残存していることが好ましい。かかる観点から、重合体中の共役ジエン部の水添率は3.0%以上70%以下であることが好ましく、5.0%以上65%以下であることがより好ましく、10%以上60%以下であることがさらに好ましい。また、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体中の芳香族ビニル化合物に基づく芳香族二重結合の水添率については、特に限定されないが、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であるであることがさらに好ましい。水素化率は、核磁気共鳴装置(NMR)により求めることができる。
ミクロ構造(上記共役ジエン系共重合体中の結合共役ジエン量、結合芳香族ビニル量、及び共役ジエン結合単位中のビニル結合量)が上記範囲にあり、さらに変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45℃以上−15℃以下の範囲にあると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスにより一層優れた加硫物を得ることができる。
変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
共役ジエン系重合体が共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体である場合、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ないか又は無いものであることが好ましい。具体的には、共重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、重合体の総量に対して好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
110℃で測定されるムーニー緩和率(MSR)が0.45以下であり、変性率が80質量%以上である変性共役ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分中、特に限定されないが、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよく、上限は90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。ゴム成分中の、変性共役ジエン系重合体の含有量の含有量が上記範囲内にあることにより省燃費性能と耐摩耗性のバランスに優れる。また、ゴム成分は、MSR又は変性率が上記範囲内にない変性共役ジエン系重合体を含んでもよい。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物が含むゴム成分は、上記変性共役ジエン系重合体と組み合わせて、これ以外のゴム状重合体を含んでもよい。
ゴム状重合体としては、天然ゴム(NR)、又は合成ゴムが好ましく、特に限定されないが、例えばブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ブタジエンゴム(BR)としては、例えば高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等が挙げられる。これのゴム状重合体を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴム状重合体のなかでも、BR、NR、SBR、及び変性SBRからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ウェットスキッド性能を悪化させることなく低燃費性を向上できるという点から、BR及びNRを併用することが好ましい。また、ウェットスキッド性能及び低燃費性を両立しやすいという点から、BR及びSBRを併用、又はBR及び変性SBRを併用することが好ましい。
ゴム成分がBRを含有する場合、BRのビニル結合量は、例えば35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下とすることができる。BRのビニル結合量が35質量%以下であると、摩耗性能が向上する。ゴム組成物がBRを含有する場合、BR含有量の下限値は、ゴム成分100質量%中に、例えば5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上とすることができ、上限値は、例えば55質量%以下、45質量%以下、35質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。BR含有量が5質量%以上であると低燃費性が向上し、55質量%以下であるとウェットスキッド性能が向上する。
ゴム成分がNRを含有する場合、NR含有量の下限値は、ゴム成分100質量%中に、例えば5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上とすることができ、上限値は、例えば55質量%以下、45質量%以下、35質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。NR含有量が5質量%以上であると、耐チップカット性能、及び加工性がより良好となり、55質量%以下であると、ウェットスキッド性能が向上する。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物中のゴム成分の含有量は、特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、上限は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。ゴム成分の含有量が上記範囲内にあると、ウエットスキッド性に優れる。
<第一シリカ及び第二シリカ>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、第一シリカ(以下、「大粒径シリカ」ともいう。)と、第一シリカよりも平均一次粒子径が小さい第二シリカ(以下、「小粒径シリカ」ともいう)とを含み、第一シリカの平均一次粒子径と、第二シリカの平均一次粒子径との差が2nm以上である。ここで、「平均一次粒子径」とは、凝集構造を構成するシリカの最小粒子単位を円として観察し、その最小粒子の絶対最大長を円の直径として測定した値の平均値として算出される平均一次粒子径をいう。シリカの平均一次粒子径は、(株)日本電子製の透過型電子顕微鏡JEM−1230を用いて、一次粒子100個の直径を観察し、その一次粒子100個の直径の平均値を求めることによって得ることができる。
第一シリカの平均一次粒子径と第二シリカの平均一次粒子径との差が2nm以上であることにより、タイヤのウェットスキッド性能と低ヒステリシスロス性能との良好なバランスを実現することができる。平均一次粒子径の差の下限値は、2nm以上であればよく、例えば3nm以上、又は5nm以上とすることができる。平均一次粒子径の差の上限値は、限定されないが、例えば40nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、又は5nm以下とすることができる。
第一シリカの平均一次粒子径の下限値は、第二シリカより2nm以上大きければよく、例えば17nm以上、20nm以上、又は22nm以上とすることができ、上限値は、限定されないが、例えば50nm以下、45nm以下、又は40nm以下とすることができる。第一シリカの平均一次粒子径が17nm以上であると、タイヤの低燃費性が発揮されやすく、50nm以下であると、タイヤの補強性を確保しやすい。
第二シリカの平均一次粒子径の上限値は、第一シリカより2nm以上小さければよく、例えば20nm以下、18nm以下、又は15nm以下とすることができ、下限値は、限定されないが、例えば2nm以上、5nm以上、又は10nm以上とすることができる。第二シリカの平均一次粒子径が20nm以下であると、タイヤの補強性を確保しやすく、2nm以上であると、ゴム組成物の加工性がより良好になり、タイヤの耐久性と補強性とをよりバランス良く確保することができる。
タイヤ用ゴム組成物における第一シリカの含有量の下限値は、ゴム成分100質量部に対して、例えば5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、又は35質量部以上とすることができ、上限値は、例えば80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、又は45質量部以下とすることができる。第一シリカ含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部以上であると、得られるタイヤの低燃費性がより良好となる。第一シリカ含有量の範囲は、ゴム成分100質量部に対して、例えば30〜50質量部、又は35〜45質量部としてもよい。
タイヤ用ゴム組成物における第二シリカの含有量の下限値は、ゴム成分100質量部に対して、例えば5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、又は30質量部以上とすることができ、上限値は、例えば80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、又は35質量部以下とすることができる。第二シリカ含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部以上であると、得られるタイヤの補強性がより良好となる。第二シリカ含有量の範囲は、ゴム成分100質量部に対して、例えば25〜45質量部、又は30〜40質量部としてもよい。
タイヤ用ゴム組成物中の、第一シリカ及び第二シリカの合計含有量の下限値は、ゴム成分100質量部に対して、例えば10質量部以上、40質量部以上、又は70質量部以上とすることができ、上限値は、例えば200質量部以下、150質量部以下、又は100質量部以下とすることができる。第一シリカ及び第二シリカの合計含有量が、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であると、タイヤの補強性を確保しやすく、200質量部以下であると、シリカの分散性及び加工性がより良好になる。
全シリカに対する第一シリカ含有量の下限値は、全シリカの合計含有量を基準として、例えば10質量%以上、20質量%以上、又は50質量%以上とすることができ、上限値は、例えば80質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下とすることができる。全シリカに対する第一シリカ含有量が10質量%以上であると、タイヤの低燃費性が発揮されやすく、80質量%以下であるとウェットスキッド性能がより良好となる。
全シリカに対する第二シリカの含有量の下限値は、限定されないが、全シリカの合計含有量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は45質量%以上とすることができ、上限値は、限定されないが、例えば80質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下とすることができる。全シリカに対する第二シリカ含有量が10質量%以上であると、ウェットスキッド性能が発揮されやすく、80質量%以下であるとタイヤの低燃費性がより良好となる。
第一シリカ及び第二シリカとしては、それぞれ独立して、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、及び湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)からなる群から選択する少なくとも一つとすることができる。第一シリカ及び第二シリカは、表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという観点から、湿式法により調製されたシリカであることが好ましい。
〈その他の成分〉
タイヤ用ゴム組成物は、更にカーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックとしては、以下のものに限定されないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが挙げられる。市販品として、例えば、東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)が挙げられる。これらの中でも、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以下のカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.5質量部以上100質量部以下、0.5質量部以上50質量部以下、又は1.0質量部以上10質量部以下とすることができる。カーボンブラックの配合量は、ドライグリップ性能、導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から、0.5質量部以上とすることが好ましく、分散性の観点から、100質量部以下とすることが好ましい。
タイヤ用ゴム組成物は、金属酸化物、又は金属水酸化物を更に含有してもよい。金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは、金属原子を表し、x及びyは、各々1〜6の整数を表す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、特に限定されないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛が挙げられる。金属水酸化物としては、以下のものに限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウムが挙げられる。また、金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤との混合物を含んでもよい。
金属酸化物、又は金属水酸化物の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.5質量部以上50質量部以下、0.5質量部以上25質量部以下、1.0質量部以上10質量部以下、又は1.0質量部以上5質量部以下とすることができる。
タイヤ用ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィドが挙げられ、市販品としては、例えば、エボニック デグサ社製の商品名「Si75」が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、全シリカ含有量100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下、0.5質量部以上20質量部以下、1.0質量部以上15質量部以下、又は1.0質量部以上10質量部以下とすることができる。シランカップリング剤の配合量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる傾向にある。
変性共役ジエン系重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有させてもよい。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30%以上45%以下のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。市販品として、例えば、S−RAEオイルであるジャパンエナジー社製の商品名「JOMOプロセスNC140」が挙げられる。変性共役ジエン−芳香族ビニル共重合体とともに用いるゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが共重合体との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上90質量部以下がより好ましく、30質量部以上90質量部以下がさらに好ましい。ゴム用軟化剤の配合量が、ゴム成分100質量部に対して、100質量部以下であることで、ブリードアウトと組成物表面のベタツキとを抑制できる傾向にある。
タイヤ用ゴム組成物は、加硫剤によりゴム成分に加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が挙げられる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が挙げられる。加硫剤の使用量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上180℃以下である。
上記加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド、ジフェニルグアニジンが挙げられる。また、加硫助剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、亜鉛華、ステアリン酸が挙げられる。加硫促進剤の使用量は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。
タイヤ用ゴム組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤及び充填剤、さらに、大内新興化学社製の商品名「サンノックN」等のワックス、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等の老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を含んでもよい。その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。その他の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、加硫物とする際の加工性に優れ、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、優れた耐摩耗性及び破壊強度を有する。また、本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、良好な動的弾性率を有する傾向にある。動的弾性率は、後述する実施例に記載のタイヤ用ゴム組成物の転がり抵抗性能をティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の粘弾性試験機(ARES−G2)で測定するときに同時に測定することができる。
<タイヤ用ゴム組成物の製造方法>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、特に限定されないが、
重合開始剤を用い、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して、共役ジエン系重合体を得る工程(以下、単に「重合工程」ともいう)と、
上記共役ジエン系重合体を、変性剤により、変性率が80質量%以上となるよう変性して、変性共役ジエン系重合体を得る工程(以下、単に「変性工程」ともいう)と、
上記変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分と、第一シリカと、上記第一シリカよりも平均一次粒子径が2nm以上小さい第二シリカとを混合する工程(以下、単に「混合工程」ともいう)と、
を含む方法により製造することができる。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物の製造方法の好ましい態様としては、
分子内に少なくとも1つの窒素原子を有する有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して共役ジエン系重合体を得る重合工程と、
前記共役ジエン系重合体と、1分子中にシリル基に結合したアルコキシ基を4つ以上と3級アミノ基とを有する変性剤と、を反応させて、変性率が80質量%以上となるように変性させて変性共役ジエン系重合体を得る変性工程と、
前記変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分と、第一シリカと、前記第一シリカよりも平均一次粒子径が2nm以上小さい第二シリカとを混合する混合工程とを含む製造方法が挙げられる。
以下、各工程について説明する。
<重合工程>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、重合開始剤を用い、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して、共役ジエン系重合体を得る重合工程を含むことが好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物、又は、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する化合物と有機リチウム化合物とを含む重合開始剤系、を用いるのが好ましい。重合開始剤は、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物を、予め所定の反応器で調製しておいてもよいし、後述する重合又は共重合を行うための反応器中に供給し、重合又は共重合と同時、もしくはその前に、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する化合物と有機リチウムを反応させてもよい。
重合開始剤系に用いる、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(24)〜(26)で表される化合物が挙げられる。
式(24)中、R10及びR11は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。R10及びR11は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR10及びR11は、炭素数5〜12の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。
式(25)中、R12及びR13は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。R12及びR13は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR12及びR13は、炭素数5〜12の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。R14は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数4〜20の共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す。Xは、水素原子、Cl原子、Br原子、又はI原子を表す。
式(26)中、R15及びR16は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。R15及びR16は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR15及びR16は、炭素数5〜12のアルキレン基を表し、その一部分に分岐構造を有していてもよい
式(24)において、R10及びR11が表す基としては、以下のものに限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、3−フェニル−1−プロピル基、イソブチル基、デシル基、ヘプチル基、フェニル基が挙げられる。式(24)で表される化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジへプチルアミン、ジへキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ−2−エチルへキシルアミン、ジデシルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルベンジルアミン、メチルフェネチルアミン、が挙げられる。式(24)で表される化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。式(24)で表される化合物は、タイヤ用ゴム組成物のヒステリシスロス低減、不快臭の低減の観点、及び後述する連鎖移動反応制御の観点から、ジブチルアミン、ジへキシルアミンが好ましく、より好ましくはジブチルアミンである。
R10及びR11が結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成している場合に、式(24)で表される化合物としては、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、アザシクロオクタン、1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジンが挙げられる。式(24)で表される化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。式(24)で表される化合物は、タイヤ用ゴム組成物のヒステリシスロス低減、不快臭の低減の観点、及び後述する連鎖移動反応制御の観点から、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、アザシクロオクタン、1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタンが好ましく、より好ましくはピペリジン、ヘキサメチレンイミンであり、さらに好ましくはピペリジンである。
式(25)において、カーボン、シリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点から、R14は、炭素数2〜16のアルキレン基を表すことが好ましく、より好ましくは炭素数3〜10のアルキレン基を表すことである。式(25)で表される化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、3−クロロ−ジメチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−ジエチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−ジブチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−ジプロピルプロパン−1−アミン、3−クロロ−ジヘプチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−ジヘキシルプロパン−1−アミン、3−クロロロプロピル−エチルヘキサン−1−アミン、3−クロロ−ジデシルプロパン−1−アミン、3−クロロ−エチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−エチルブタン−1−アミン、3−クロロ−エチルプロパン−1−アミン、ベンジル−3−クロロ−エチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−エチルフェネチルプロパン−1−アミン、3−クロロ−メチルフェネチルプロパン−1−アミン、1−(3−クロロプロピル)ピペリジン、1−(3−クロロプロピル)ヘキサメチレンイミン、1−(3−クロロプロピル)アザシクロオクタン、6−(3−クロロプロピル)−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−(3−クロロプロピル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、1−(3−ブロモプロピル)ヘキサメチレンイミン、1−(3−ヨードプロピル)ヘキサメチレンイミン、1−(3−クロロブチル)ヘキサメチレンイミン、1−(3−クロロペンチル)ヘキサメチレンイミン、1−(3−クロロヘキシル)ヘキサメチレンイミン、1−(3−クロロデシル)ヘキサメチレンイミンが挙げられる。式(25)で表される化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。式(25)で表される化合物は、カーボン、シリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点から、3−クロロ−ジブチルプロパン−1−アミン、1−(3−クロロプロピル)ヘキサメチレンイミンが好ましく、より好ましくは1−(3−クロロプロピル)ヘキサメチレンイミンである。
式(25)中、R14が共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表すとき、R14が下記式(28)〜(30)の少なくとも一つの繰り返し単位を有することが好ましい。なお、R14が共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す場合は、Xは、水素原子を表す。
上記のXが水素原子を表す場合に、式(25)で表される化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、N,N−ジメチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジエチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジブチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジプロピル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジへプチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジへキシル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジオクチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−(ジ−2−エチルへキシル)−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジデシル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−エチルプロピル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−エチルブチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−エチルベンジル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−メチルフェネチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジメチル−2−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジエチル−2−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジブチル−2−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジプロピル−2−メチル−2−ブテニル−1−アミン、(N,N−ジへプチル−2−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジへキシル−2−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジメチル−3−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジエチル−3−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジブチル−3−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジプロピル−3−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジへプチル−3−メチル−2−ブテニル−1−アミン、N,N−ジへキシル−3−メチル−2−ブテニル−1−アミン、1−(2−ブテニル)ピペリジン、1−(2−ブテニル)ヘキサメチレンイミン、1−(2−ブテニル)アザシクロオクタン、6−(2−ブテニル)1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−(2−ブテニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、(2−メチル−2−ブテニル)ヘキサメチレンイミン、(3−メチル−2−ブテニル)ヘキサメチレンイミンが挙げられる。式(25)で表される化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。式(25)で表される化合物は、タイヤ用ゴム組成物のヒステリシスロス低減の観点から、1−(2−ブテニル)ピペリジン、N,N−ジブチル−2−ブテニル1−アミン、1−(2−ブテニル)ヘキサメチレンイミンが好ましく、より好ましくは1−(2−ブテニル)ピペリジン、1−(2−ブテニル)ヘキサメチレンイミンであり、さらに好ましくは1−(2−ブテニル)ピペリジンである。
式(26)で表される化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−o−トルイジン、N,N−ジエチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジプロピル−o−トルイジン、N,N−ジプロピル−m−トルイジン、N,N−ジプロピル−p−トルイジン、N,N−ジブチル−o−トルイジン、N,N−ジブチル−m−トルイジン、N,N−ジブチル−p−トルイジン、o−ピペリジノトルエン、p−ピペリジノトルエン、o−ピロリジノトルエン、p−ピロリジノトルエン、N,N,N′,N′−テトラメチルトルイレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルトルイレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラプロピルトルイレンジアミン、N,N−ジメチルキシリジン、N,N−ジエチルキシリジン、N,N−ジプロピルキシリジン、N,N−ジメチルメシジン、N,N−ジエチルメシジン、(N,N−ジメチルアミノ)トルイルフェニルメチルアミン、1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルナフタレン、1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルアントラセンが挙げられる。式(26)で表される化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。式(26)で表される化合物は、タイヤ用ゴム組成物のヒステリシスロス低減の観点から、N,N−ジメチル−o−トルイジンが好ましい。
重合開始剤系に含まれ、上記分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する化合物と反応させる有機リチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウムが挙げられる。
重合開始剤として、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物は、変性率向上と省燃費性能向上の観点から、アニオン重合の重合開始剤として用いることが可能なものであり、下記一般式(14)〜(17)で表される有機リチウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
式(14)中、R10及びR11は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。R10及びR11は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR10及びR11は、炭素数5〜12の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。
式(15)中、R12及びR13は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。R12及びR13は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR12及びR13は、炭素数5〜12の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。R14は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数4〜20の共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す。
式(16)中、R15及びR16は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜14のシクロアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。R15及びR16は、結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成していてもよく、その場合のR15及びR16は、炭素数5〜12のアルキレン基を表し、その一部分に分岐構造を有していてもよい。
式(17)中、R17は、炭素数が2〜10の炭化水素基を表し、その一部分に不飽和結合又は分岐構造を有していてもよい。R18は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、その一部分に分岐構造を有していてもよい。
式(14)において、R10及びR11が表すものとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、及びこれらの類似物が挙げられる。溶媒への可溶性、タイヤ用ゴム組成物のヒステリシスロス低減の観点、及び後述する連鎖移動反応制御の観点から、ブチル基、へキシル基が好ましく、より好ましくはブチル基である。
式(14)において、R10及びR11が結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成している場合に、式(14)で表される有機リチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、ピペリジノリチウム、ヘキサメチレンイミノリチウム、リチウムアザシクロオクタン、リチウム−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジノリチウムが挙げられる。有機リチウム化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。重合開始剤の溶媒への可溶性、後述する変性共役ジエン系重合体の不快臭の低減の観点、及び連鎖移動反応の抑制の観点から、ピペリジノリチウム、ヘキサメチレンイミノリチウム、リチウムアザシクロオクタン、リチウム−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタンが好ましく、より好ましくはピペリジノリチウム又はヘキサメチレンイミノリチウムであり、さらに好ましくはピペリジノリチウムである。
式(15)において、R14は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数4〜20の共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す。
式(15)において、R14が炭素数4〜20の共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す場合、該共役ジエン系化合物に基づく二価の基は、下記式(18)〜(20)からなる群から選ばれる少なくとも一つで表される繰り返し単位を有する共役ジエン系重合体に基づく二価の基を表すことが好ましい。
式(15)において、R14がアルキレン基を表す場合、カーボン、シリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点から、R14は、炭素数2〜16のアルキレン基を表すことが好ましく、炭素数3〜10のアルキレン基を表すことがより好ましい。また、R14が炭素数1〜20のアルキレン基を表す場合、式(15)で表される有機リチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、(3−(ジメチルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジエチルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジプロピルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジブチルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジペンチルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジヘキシルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジオクチルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(エチルへキシルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(ジデシルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(エチルプロピルアミノ−プロピル)リチウム、(3−(エチルブチルアミノ−プロピル)リチウム、(3−(エチルベンジルアミノ)−プロピル)リチウム、(3−(メチルフェネチルアミノ)−プロピル)リチウム、(4−(ジブチルアミノ)−ブチル)リチウム、(5−(ジブチルアミノ)−ペンチル)リチウム、(6−(ジブチルアミノ)−ヘキシル)リチウム、(10−(ジブチルアミノ)−デシル)リチウムが挙げられる。有機リチウム化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。カーボン、シリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点から、(3−(ジブチルアミノ)−プロピル)リチウムがより好ましい。
式(15)において、R14が式(18)〜(20)で表される単位を有する共役ジエン系化合物に基づく二価の基を表す場合、式(15)で表される有機リチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、(4−(ジメチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジエチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジブチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジプロピルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジへプチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジへキシルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジオクチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジ−2−エチルへキシルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジデシルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(エチルプロピルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(エチルブチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(エチルベンジルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(メチルフェネチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジメチルアミノ)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジエチルアミノ)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジブチルアミノ)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジプロピルアミノ)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジへプチルアミノ)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジへキシルアミノ)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジメチルアミノ)−3−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジエチルアミノ)−3−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジブチルアミノ)−3−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジプロピルアミノ)−3−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジへプチルアミノ)−3−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジへキシルアミノ)−3−メチル−2−ブテニル)リチウムが挙げられる。有機リチウム化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。開始剤としての反応性の観点、及び後述する連鎖移動反応制御の観点から、4−(ジメチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジエチルアミノ)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ジブチルアミノ)−2−ブテニル)リチウムが好ましく、より好ましくは(4−(ジブチルアミノ)−2−ブテニル)リチウムである。
式(15)において、R12及びR13が結合して隣接した窒素原子とともに環状構造を形成している場合に、式(15)で表される有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、(3−(ピペリジニル)プロピル)リチウム、(3−(ヘキサメチンレンイミニル)プロピル)リチウム、(3−(ヘプタメチレンイミニル)プロピル)リチウム、(3−(オクタメチレンイミニル)プロピル)リチウム、(3−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタニル)プロピル)リチウム、(3−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル)プロピル)リチウム、(2−(ヘキサメチンレンイミニル)エチル)リチウム、(4−(ヘキサメチンレンイミニル)ブチル)リチウム、(5−(ヘキサメチンレンイミニル)ペンチル)リチウム、(6−(ヘキサメチンレンイミニル)ヘキシル)リチウム、(10−(ヘキサメチンレンイミニル)デシル)リチウム、(4−(ピペリジニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ヘキサメチンレンイミニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ヘプタメチレンイミニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(オクタメチレンイミニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ヘキサメチンレンイミニル)−2−メチル−2−ブテニル)リチウム、(4−(ヘキサメチンレンイミニル)−3−メチル−2−ブテニル)リチウムが挙げられる。有機リチウム化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。カーボン、シリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点、後述する連鎖移動反応制御の観点から、(3−(ピペリジニル)プロピル)リチウム、(3−(ヘキサメチンレンイミニル)プロピル)リチウム、(3−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル)プロピル)リチウム、(4−(ピペリジニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ヘキサメチンレンイミニル)−2−ブテニル)リチウムが好ましく、より好ましくは(3−(ヘキサメチンレンイミニル)プロピル)リチウム、(4−(ピペリジニル)−2−ブテニル)リチウム、(4−(ヘキサメチンレンイミニル)−2−ブテニル)リチウムが好ましく、さらに好ましくは(4−(ピペリジニル)−2−ブテニル)リチウムである。
式(16)で表される有機リチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、N,N−ジメチル−o−トルイジノリチウム、N,N−ジメチル−m−トルイジノリチウム、N,N−ジメチル−p−トルイジノリチウム、N,N−ジエチル−o−トルイジノリチウム、N,N−ジエチル−m−トルイジノリチウム、N,N−ジエチル−p−トルイジノリチウム、N,N−ジプロピル−o−トルイジノリチウム、N,N−ジプロピル−m−トルイジノリチウム、N,N−ジプロピル−p−トルイジノリチウム、N,N−ジブチル−o−トルイジノリチウム、N,N−ジブチル−m−トルイジノリチウム、N,N−ジブチル−p−トルイジノリチウム、o−ピペリジノトルエノリチウム、p−ピペリジノトルエノリチウム、o−ピロリジノトルエノリチウム、p−ピロリジノトルエン、N,N,N′,N′−テトラメチルトルイレンジアミノリチウム、N,N,N′,N′−テトラエチルトルイレンジアミノリチウム、N,N,N′,N′−テトラプロピルトルイレンジアミノリチウム、N,N−ジメチルキシリジノリチウム、N,N−ジエチルキシリジノリチウム、N,N−ジプロピルキシリジノリチウム、N,N−ジメチルメシジノリチウム、N,N−ジエチルメシジノリチウム、(N,N−ジメチルアミノ)トルイルフェニルメチルアミノリチウム、1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルナフタレノリチウム、1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルアントラセノリチウムが挙げられる。有機リチウム化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。重合活性の観点から、N,N−ジメチル−o−トルイジノリチウムがより好ましい。
式(17)で表される有機リチウム化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、2−(2−メチルピペリジニル)−1−エチルリチウム(例えば、FMC社製の商品名「AI−250」)が挙げられる。有機リチウム化合物は、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たせば、これらの類似物を含む。
重合工程前に、予め分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物を調製しておいてもよく、その方法は既知のあらゆる方法で調製される。
式(14)で表される、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物は、例えば、式(24)で表される化合物と有機リチウム化合物とを、炭化水素溶媒中で反応させることによって得られる。上記の炭化水素溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の適切な溶媒を選択すればよい。反応温度は0℃以上80℃以下が好ましく、生産性の観点から5.0℃以上70℃以下が好ましく、7.0℃以上50℃以下がさらに好ましい。有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウムが挙げられる。
式(15)で表される、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物は、R14が炭素数1〜20のアルキレン基を表す場合、例えば、式(25)で表される化合物と有機リチウム化合物とを炭化水素溶媒中で反応させ、リチウムアミド化合物を調製し、これに下記式(C)で表される、ジハロゲン化アルキルを反応させ、さらに有機リチウム化合物を反応させることで得られる。
式(C)中、X1及びX2は、各々独立して、I原子、Br原子、又はCl原子を表し、R3aは、炭素数1〜20のアルキレン基を、好ましくは炭素数2〜16のアルキレン基、より好ましくは炭素数3〜10のアルキレン基を表す。
式(C)で表される化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、1−ブロモ−3−クロロプロパン、1−ブロモ−4−クロロブタン、1−ブロモ−5−クロロペンタン、1−ブロモ−6−クロロヘキサン、1−ブロモ−10−クロロデカン、1−ブロモ−3−ヨードプロパン、1−ブロモ−4−ヨードブタン、1−ブロモ−5−ヨードペンタン、1−ブロモ−6−ヨードヘキサン、1−ブロモ−10−ヨードデカン、1−クロロ−3−ヨードプロパン、1−クロロ−4−ヨードブタン、1−クロロ−5−ヨードペンタン、1−クロロ−6−ヨードヘキサン、1−クロロ−10−ヨードデカンが挙げられる。式(C)で表される化合物は、反応性及び安全性の観点から、1−ブロモ−3−クロロプロパン、1−ブロモ−4−クロロブタン、1−ブロモ−5−クロロペンタン、1−ブロモ−6−クロロヘキサン、1−ブロモ−10−クロロデカンが好ましく、より好ましくは1−ブロモ−3−クロロプロパン、1−ブロモ−4−クロロブタン、1−ブロモ−6−クロロヘキサンである。
式(15)で表され、R14が共役ジエン化合物に基づく二価の基である化合物は、特に限定されないが、例えば、式(14)で表される化合物と共役ジエン化合物(例えばブタジエン)を反応させることにより得ることができる。
式(25)で表される化合物、有機リチウム化合物、及び炭化水素溶媒を用いて、リチウムアミド化合物を調製する際の反応温度は、式(24)で表される化合物と有機リチウム化合物とを反応させるときの温度と同様である。リチウムアミド化合物と式(C)で表される化合物とを反応させる際の反応温度は−78℃以上70℃以下であることが好ましく、−50℃以上50℃以下であることがより好ましい。その後、得られた化合物と有機リチウム化合物とを反応させる際の反応温度は、−78℃以上70℃以下であることが好ましく、−50℃以上50℃以下であることがより好ましい。有機リチウム化合物としては、式(24)で表される化合物と反応させる有機リチウム化合物と同様のものを用いることができる。
式(16)で表される、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物は、例えば、式(26)で表される化合物と有機リチウム化合物とを炭化水素溶媒中で反応させ、リチウムアミド化合物を調製し、これと上記式(C)で表される、ジハロゲン化アルキルを反応させ、さらに有機リチウム化合物を反応させることで得られる。
式(26)で表される化合物、有機リチウム化合物、及び炭化水素溶媒を用いて、リチウムアミド化合物を調製する際の反応温度は、式(24)で表される化合物と有機リチウム化合物とを反応させるときの温度と同様である。リチウムアミド化合物に式(C)で表される化合物を反応させる際の反応温度は−78℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは−50℃以上50℃以下である。その後、得られた化合物に有機リチウム化合物を反応させる際の反応温度は、−78℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは−50℃以上50℃以下である。有機リチウム化合物としては、式(24)で表される化合物と反応させる有機リチウム化合物と同様のものを用いることができる。
式(15)中、R14が式(18)〜(20)のいずれか一つで表される単位を有する、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物は、好ましくは以下のステップ(i)〜(iv)を順に含む方法により合成される。
(i):式(25)で表される化合物と有機リチウム化合物とを炭化水素溶媒中で反応させ、リチウムアミド化合物を合成する。
(ii):炭化水素溶媒中、得られたリチウムアミド化合物と、ブタジエン又はイソプレンとを反応させる。
(iii):アルコールを加えてリチウムを失活させ、得られた生成物を減圧蒸留する。
(iv):上記ステップ(iii)の減圧蒸留することにより得られた生成物と有機リチウム化合物とを炭化水素溶媒中で反応させる。
上記ステップ(i)の反応温度は式(24)で表される化合物と有機リチウム化合物とを反応させるときの温度と同様である。上記ステップ(iii)におけるアルコールは一般的なものが使用できるが、低分子量のものが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましく、より好ましくはエタノールである。ステップ(iv)の反応温度は、0℃以上80℃以下であり、好ましくは10℃以上70℃以下である。また、有機リチウム化合物としては、式(24)で表される化合物と反応させる有機リチウム化合物と同様のものを用いることができる。
上記式(14)〜(17)で表される、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物の調製の際には、系内に極性化合物を添加してもよい。生成の促進及び炭化水素溶媒への可溶化が図れる傾向にある。極性化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、3級モノアミン、3級ジアミン、鎖状又は環状エーテルが挙げられる。
3級モノアミンとしては、以下のものに限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタールが挙げられる。
3級ジアミンとしては、以下のものに限定されないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノペンタン、ジピペリジノエタンが挙げられる。
鎖状エーテルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
環状エーテルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパンが挙げられる。
極性化合物の中でも、3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン;3級ジアミンであるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン;環状エーテルであるテトラヒドロフラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンが好ましい。極性化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機リチウム化合物を調製する際に極性化合物を添加する場合は、調製するときに用いられる溶媒に対し30質量ppm以上50,000質量ppm以下の範囲内で添加することが好ましく、200質量ppm以上20,000質量ppm以下の範囲内で添加することがより好ましい。反応促進及び溶媒への可溶化の効果を十分に発現するためには、30質量ppm以上の添加が好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保すること及び重合後の溶媒を回収し、精製する工程における重合溶媒との分離を考慮すると、50,000質量ppm以下で添加することが好ましい。
変性前の共役ジエン系重合体は、上述した分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物、又は、少なくとも1つ窒素原子を有する化合物と有機リチウム化合物とを含む重合開始剤系を用いて、共役ジエン化合物を用いて重合し、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって製造するのが好ましい。
重合工程においては、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物を、予め所定の反応器で調製しておき、共役ジエン化合物の重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行う反応器に供給して重合反応を行ってもよい。あるいは、上述した分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する化合物と有機リチウム化合物をスタテックミキサー又はインラインミキサーを用いて混合して重合開始剤系を調製してもよい。重合開始剤系は、上述した分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物を用いる場合には、1種のみならず2種以上の混合物でもよい。
重合工程における、重合開始剤(重合開始剤系であってもよい)と共役ジエン化合物との反応、又は、重合開始剤(重合開始剤系であってもよい)と共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを含む単量体との反応は、連続式でもバッチ式でもよいが、生産効率の観点からは、共役ジエン化合物を含む単量体と、重合開始剤を重合槽に連続的に供給し、連続的に重合する連続式が好ましい。連続式の場合、重合に用いられる単量体、溶媒、重合開始剤はそれぞれ別々に重合槽にフィードしてもよいし、攪拌機を備えた混合槽を用いる方法、配管内でスタッティクミキサーやラインミキサーを使って連続的に混合する方法であってもよい。
分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する化合物及び有機リチウム化合物を含む重合開始剤系を用いて、共役ジエン系重合体が共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体となる重合を行う場合には、Makromol.chem 186.1335−1350(1985)に記載されているように、重合開始剤系の分子内に少なくとも1つ窒素原子の影響により、連鎖移動反応が促進されることから、リビング活性末端が失活する傾向にあり、変性率を高めるためには、特定の製造条件が必要となる場合がある。上述したように、例えば、重合温度が高くなると、連鎖移動速度又は連鎖移動率が高くなり、得られる重合体の数平均分子量は減少し、分岐度は増加し、分子量分布は広くなり、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロック部分の数が低下又は無くなる傾向にあるため、MSRが減少する傾向にある。しかし、リビング活性末端の失活が促進されると推察され、製造条件を制御しない場合には、変性率は低下してしまう傾向にある。なお、バッチ式と連続式それぞれの重合法では、連続式の重合法がより連鎖移動反応を進行させる傾向にある。
重合温度は、アニオン重合が進行し、連鎖移動反応が制御され、芳香族ビニル化合物単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ない又は無い範囲であると好ましく、特に限定されないが、生産性の観点から、45℃以上であることが好ましく、連鎖移動反応を制御し、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、80℃以下であることがより好ましく、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ないという観点から、50℃以上78℃以下がさらに好ましく、60℃以上75℃以下がよりさらに好ましい。
重合工程において、上述の連鎖移動反応制御の観点から、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物、並びに溶剤の総質量に対して、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物類等の含有量であるソリッドコンテント(「モノマー濃度」ともいう。)が、16質量%以下である方が好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは14%質量以下である。また、ソリッドコンテントの下限は特に制限されないが、12.5質量%以上であることが好ましい。
重合工程は、バッチ式、連続式のどちらの重合方式で重合してもよいが、高変性率、高分子量、及び高分岐の共役ジエン系重合体を安定的に生産する観点から、連続式で重合することが好ましく、1個の反応器又は2個以上の連結された反応器での連続式で重合することがより好ましい。
重合工程において、連鎖移動反応制御及び活性末端失活抑制の観点から、重合方式が連続式であり、重合温度が45℃以上80℃以下であり、かつ、ソリッドコンテントが16質量%以下であることが好ましい。
変性共役ジエン系重合体の変性率を80質量%以上、MSRを0.45以下にするためには、重合工程における重合温度を50℃以上80℃以下の範囲に制御し、かつ、ソリッドコンテントを16.0質量%以下にすることが好ましい。重合開始剤のフィード組成が、炭化水素溶媒に対して、0.001mol/L以下にすることが好ましい。変性共役ジエン系重合体の変性率を85質量%以上、MSRを0.43以下にするためには、重合温度を50℃以上78℃以下の範囲に制御し、かつ、ソリッドコンテントを16.0質量%以下、かつ、有機リチウム化合物のフィード組成が炭化水素溶媒に対して、0.001mol/L以下にすることが好ましい。変性共役ジエン系重合体の変性率を88質量%以上、MSRを0.42以下にするためには、重合温度を55℃以上76℃以下、かつ、ソリッドコンテントを15.0質量%以下、かつ、有機リチウム化合物のフィード組成が炭化水素溶媒に対して0.0008mol/L以下にすることが好ましい。さらに好ましくは、後述する連鎖移動反応を適切に制御し、変性共役ジエン系重合体の変性率を90質量%以上、MSRを0.40以下、すなわち高変性率、高分子量、及び高分岐を達成する観点から、連続式の重合であり、重合温度が60℃以上72℃以下であり、ソリッドコンテントが14.0質量%以下であり、有機リチウム化合物が連続的に添加され、有機リチウム化合物のフィード組成が炭化水素溶媒に対して0.00070mol/L以下であることが好ましい。
共役ジエン系重合体は、炭化水素溶媒中で、少なくとも共役ジエン化合物を重合して得られ、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して得てもよい。共役ジエン系重合体は、上記分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物を重合開始剤とし、連続重合法を用いたアニオン重合反応により成長して得られることが好ましい。特に、共役ジエン系重合体は、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることがより好ましい。これにより、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
共役ジエン化合物としては、重合可能な単量体であれば以下のものに限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であれば以下のものに限定されないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
重合工程は、溶媒中で重合することが好ましい。溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的な炭化水素系溶媒として、以下のものに限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。
共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及び重合溶媒は、それぞれ単独で、又はこれらの混合液を、予め重合反応に供する前に、不純物であるアレン類及びアセチレン類を、有機金属化合物を反応させ処理しておくこともできる。これにより、不純物による重合の阻害が防止でき、重合体の活性末端量が高濃度となり、よりシャープな分子量分布(Mw/Mn)を達成でき、さらには高い変性率が達成される傾向にあるため、好ましい。
共役ジエン系重合体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができ、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。また、重合速度の改善等にも効果がある。
極性化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる傾向にある。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、特開昭59−140211号公報に記載されているような、共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
上述した製造方法により得られた共役ジエン系重合体を、不活性溶剤中でさらに水素化することによって、二重結合の全部又は一部を飽和炭化水素に変換してもよい。その場合、耐熱性、耐候性が向上し、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができる傾向にある。その結果、自動車用途等種々の用途で一層優れた性能を発揮する。
水素化の方法としては、特に限定されず、公知の方法が利用できる。好適な水素化の方法としては、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法で水素化する方法が挙げられる。触媒としては、例えば、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒等の不均一系触媒;ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等の均一系触媒が挙げられる。これらの中でも、特にマイルドな水素化条件を選択できる観点から、チタノセン触媒が好ましい。また、芳香族基の水素化は、貴金属の担持触媒を用いることによって行うことができる。
水素化触媒の具体例としては、以下のものに限定されないが、例えば、(1)Ni,Pt,Pd,Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni,Co,Fe,Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti,Ru,Rh,Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体が挙げられる。さらに、水素化触媒として、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報、特開平8−109219号公報に記載された水素化触媒も挙げられる。好ましい水素化触媒としては、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する変性の反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、共役ジエン化合物の総量に対して、200質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以下であることがさらに好ましい。アレン類としては、例えば、プロパジエン、1,2−ブタジエンが挙げられる。アセチレン類としては、例えば、エチルアセチレン、ビニルアセチレンが挙げられる。
<変性工程>
本実施形態において、変性工程は、上記重合工程により得られた共役ジエン系重合体を、変性率が80質量%以上となるよう変性させる工程であり、1分子中にシリル基に結合したアルコキシ基を4つ以上と3級アミノ基とを有する変性剤により、変性することが好ましい。
変性剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタントリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)アミンが挙げられる。
省燃費性能の観点から、変性剤は、下記一般式(1)〜(3)のいずれか一つで表される変性剤を含むことが好ましい。
式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、2又は3の整数を表す。(m+n)は、4以上の整数である。複数存在する場合のR1〜R4は、各々独立している。
式(2)中、R1〜R6は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R7〜R9は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、m、n、及びlは、各々独立して、1〜3の整数を表し、(m+n+l)は、4以上の整数を表す。複数存在する場合のR1〜R6は、各々独立している。
式(3)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5及びR6は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、m及びnは、各々独立して、1〜3の整数を表し、(m+n)は、4以上の整数を表し、R7は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭化水素基で置換されたシリル基を表す。複数存在する場合のR1〜R4は、各々独立している。
式(1)で表される変性剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンが挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点、並びに加工性の観点から、mが2を表し、かつnが3を表すものが好ましい。具体的には、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンが好ましい。
式(1)の変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0℃以上120℃以下で、30秒以上反応させることが好ましい。式(1)で表される変性剤の化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、重合開始剤(重合開始剤系でもよい)を構成するリチウムのモル数の0.6倍以上3.0倍以下となる範囲であることが好ましく、0.8倍以上2.5倍以下となる範囲であることがより好ましく、0.8以上2.0倍以下となる範囲であることがさらに好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体が十分な変性率及び分子量と分岐構造を得る観点から、0.6倍以上とすることが好ましく、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことに加え、変性剤コストの観点から、3.0倍以下とすることが好ましい。
式(2)で表される変性剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリメトキシシリルエチル)アミン、トリス(4−トリメトキシシリルブチル)アミンが挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点、並びに加工性の観点から、n、m、lが全て3を表すものであることが好ましい。好ましい具体例としては、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンが挙げられる。
式(2)で表される変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0℃以上120℃以下で、30秒以上反応させることが好ましい。式(2)で表される変性剤の化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述した重合開始剤(重合開始剤系であってもよい)を構成するリチウムのモル数の0.6倍以上3.0倍以下となる範囲であることが好ましく、0.8倍以上2.5倍以下となる範囲であることがより好ましく、0.8倍以上2.0倍以下となる範囲であることがさらに好ましい。変性共役ジエン系重合体において十分な変性率及び分子量と分岐構造を得る観点から、0.6倍以上とすることが好ましく、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことに加え、変性剤コストの観点から、3.0倍以下とすることが好ましい。
式(3)で表される変性剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、ビス(3−(メチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、ビス(3−(エチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、ビス(3−(プロピルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、ビス(3−(ブチルアミノ)プロピル)トリメトキシシランが挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点、並びに加工性の観点から、n及びmがいずれも3であることが好ましい。好ましい具体例としては、ビス(3−(メチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、ビス(3−(エチルアミノ)プロピル)トリメトキシシランが挙げられる。
式(3)で表される変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0℃以上120℃以下で、30秒以上反応させることが好ましい。
変性剤は、高変性率、高分子量、及び高分岐と、加硫物としたとの省燃費性能、加工性、及び耐摩耗性との優れたバランスを有する変性共役ジエン系重合体を得る観点から、式(1)で表されmが2であり、かつnが3である変性剤、及び式(2)で表されn、m、及びlが全て3である変性剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
式(3)で表される変性剤の化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、重合開始剤(重合開始剤系であってもよい)を構成するリチウムのモル数の0.6倍以上3.0倍以下となる範囲であることが好ましく、0.8倍以上2.5倍以下となる範囲であることがより好ましく、0.8倍以上2.0倍以下となる範囲であることがさらに好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体が十分な変性率及び分子量と分岐構造を得る観点から、0.6倍以上とすることが好ましく、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことに加え、変性剤コストの観点から、3.0倍以下とすることが好ましい。
変性率向上の観点から、変性工程においては、共役ジエン化合物を含む単量体の含有量は、全単量体及び重合体の総量に対して、100質量ppm以上50000質量ppm以下含むことが好ましく、200質量ppm以上10000質量ppm以下であることがより好ましく、300質量ppm以上5000質量ppm以下であることがさらに好ましい。溶液中の共役ジエン化合物を含む単量体の含有量は後述する実施例記載の方法において測定することができる。
変性共役ジエン系重合体の製造においては、変性反応を行った後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。中和剤としては、以下のもの限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガスが挙げられる。
変性共役ジエン系重合体は、重合後のゲル生成を防止する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。ゴム用安定剤としては、以下のものに限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
変性共役ジエン系重合体の加工性をより改善するために、必要に応じて、伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、以下のものに限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10質量部以上60質量部が好ましく、15質量部以上37.5質量部以下がより好ましい。
変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。その方法として、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
<混合工程>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分と、第一シリカと、上記第一シリカよりも平均一次粒子径が2nm以上小さい第二シリカとを混合する工程(混合工程)を含む。
混合工程において混合する手順は、下記に限定されないが、例えば、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、第一シリカ又は第二シリカのいずれか一方とを混練してマスターバッチを調製し(工程(I))、次いで前記マスターバッチと、前記第一シリカ又は前記第二シリカの他方とを混練する(工程(II))ことが好ましい。このように、第一シリカと第二シリカとを別々に変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と混練することで、先に混練したシリカが良好に分散することができ、これにより所望の性能の改善効果を向上することができる。例えば、第一シリカを工程(I)で先に混練した場合には、低燃費性の改善効果を向上でき、第二シリカを先に混練した場合には、耐摩耗性等の改善効果を向上できる。
工程(I)では、例えば、ゴム成分と、第一シリカ又は第二シリカのいずれか一方と、更にシランカップリング剤及び/又は他のすべての成分とを混練して、混練物(マスターバッチ)を調製してもよいし、ゴム成分と、第一シリカ又は第二シリカのいずれか一方とのみを混練して、マスターバッチを調製してもよい。混練方法としては特に限定されず、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、オープンロールなど、公知の方法を使用できる。所望の性能の改善効果を充分に向上できるという点から、工程(I)では、ゴム成分の全部と、第一シリカ又は第二シリカのいずれか一方の全部とを混練することが好ましい。
工程(I)において、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、第一シリカとを混練する場合、第一シリカの配合量の上限値は、工程(I)で混練するゴム成分(変性共役ジエン系重合体及びその他のゴム成分の合計)100質量部に対して、例えば95質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、又は70質量部以下とすることができ、下限値は、例えば10質量部以上、15質量部以上、30質量部以上、45質量部以上、又は60質量部以上とすることができる。工程(I)における第一シリカの配合量が10質量部以上であると、低燃費性等の改善効果をより向上することができる。
工程(I)において、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、第二シリカとを混練する場合、第二シリカの配合量の上限値は、工程(I)で混練するゴム成分100質量部に対して、例えば95質量部以下、85質量部以下、75質量部以下、又は65質量部以下とすることができ、下限値は、例えば10質量部以上、15質量部以上、30質量部以上、45質量部以上、又は55質量部以上とすることができる。工程(I)における第二シリカの配合量が95質量部以下であると、マスターバッチ中に第二シリカを均一に分散させることが容易になり、10質量部以上であると、耐摩耗性等の改善効果をより向上できる。
工程(I)における混練後の混練物の温度(以下、「排出温度」ともいう)は、特に限定されないが、シリカが良好に分散したマスターバッチを効率良く得られるという点から、下限値は、例えば100℃以上、又は110℃以上とすることができ、上限値は、例えば170℃以下、又は165℃以下とすることができる。
工程(I)における混練時間は特に限定されないが、シリカが良好に分散したマスターバッチを効率良く得られるという点から、下限値は、例えば1分以上、又は2分以上とすることができ、上限値は、例えば30分以下、20分以下、10分以下、又は5分以下とすることができる。
工程(II)では、例えば、第一シリカ及び第二シリカのうち、工程(I)で混練しなかったシリカと、その他の成分とを、工程(I)で得られたマスターバッチに加え、更に混練することで混練物を調製する。混練方法としては特に限定されず、工程(I)と同様の方法を使用できる。所望の性能の改善効果を充分に向上できるという点から、工程(II)では、工程(I)で混練しなかったシリカの全部を、マスターバッチに添加して、混練することが好ましい。
工程(II)において、第一シリカとマスターバッチとを混練する場合、第一シリカの配合量の上限値は、工程(II)で混練するゴム成分(マスターバッチ中の変性共役ジエン系重合体及びその他のゴム成分の合計)100質量部に対して、例えば95質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、又は45質量部以下とすることができ、下限値は、例えば5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、又は35質量部以上とすることができる。工程(II)における第一シリカの配合量が95質量部以下であると、混練物中に第一シリカを均一に分散させること容易となり、5質量部以上であると、混練物中の第一シリカの含有量が多くなり、低燃費性等の改善効果を得やすい。
工程(II)において、第二シリカとマスターバッチとを混練する場合、第二シリカの配合量の上限値は、工程(II)で混練するゴム成分(マスターバッチ中のゴム成分及びその他のゴム成分の合計)100質量部に対して、例えば95質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、又は40質量部以下とすることができ、下限値は、例えば5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、又は30質量部以上とすることができる。工程(II)における第二シリカの配合量が95質量部以下であると、混練物中に第二シリカを均一に分散させること容易となり、5質量部以上であると、混練物中の第二シリカの含有量が多くなり、耐摩耗性等の改善効果を得やすい。
工程(II)における排出温度は、シリカが良好に分散した混練物を効率良く得られるという点から、下限値は、例えば100℃以上、又は110℃以上とすることができ、上限値は、例えば170℃以下、又は165℃以下とすることができる。
工程(II)における混練時間は、シリカが良好に分散した混練物を効率良く得られるという点から、下限値は、例えば1分以上、2分以上、又は5分以上とすることができ、上限値は、例えば30分以下、20分以下、又は10分以下とすることができる。
シリカが良好に分散した混練物が得られるという点から、加硫剤及び加硫促進剤以外の成分、例えばシランカップリング剤、及びカーボンブラック等は、工程(I)及び/又は工程(II)において混練することが好ましい。
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物の製造方法に含まれる混合工程は、別の態様として、ゴム成分と、第一シリカと、第二シリカとを同時に供給して混練する工程(工程(I’))を含んでもよい。混合工程中、工程(I’)において、その他の成分(ゴム成分と第一シリカと第二シリカ以外の成分)も同時に供給して混練してもよいし、ゴム成分と第一シリカと第二シリカとのみを混練する工程(I’)の後、その他の成分を加えて混練してもよい。
また、本実施形態のタイヤ用ゴム組成物の製造方法に含まれる混合工程においては、ゴム成分100質量部に対して、第一シリカが5質量部以上、第二シリカが5質量部以上、かつ第一シリカ及び第二シリカの合計が10〜200質量部となるように混合することが好ましい。
混合工程は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分、前記第一シリカ、及び前記第二シリカを含む混練物と、加硫剤又は加硫促進剤とを混練する工程(工程III)を含むことが好ましい。
工程(III)において、加硫剤は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下がとなるように配合して混練する。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上180℃以下である。加硫促進剤は、ゴム成分100質量部に対して、好ましく0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下となるように配合して混練する。
また、混合工程は、さらに、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを0.5〜100質量部更に混合する工程を含むことが好ましい。
変性共役ジエン系重合体とその他のゴム状重合体、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック及びその他の充填剤、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の添加剤を混合する方法については特に限定されるものではない。その方法として、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。また、変性共役ジエン系重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
<トレッド及びタイヤ>
本実施形態のトレッドは、上記タイヤ用ゴム組成物を含む。本実施形態のタイヤは、本実施形態のトレッドを含む。本実施形態のトレッド、及び本実施形態のタイヤは、通常の方法で製造することができる。例えば、本実施形態のタイヤ用ゴム組成物を、未加硫の状態でトレッドなどの所望の形状にあわせて押出加工することにより、本実施形態のトレッドを製造することができる。得られた本実施形態のトレッドを、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機を用いて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成することができる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本実施形態のタイヤを製造することができる。
以下の具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
後述する、実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
(物性1)変性共役ジエン系重合体の結合スチレン量
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料100mgをクロロホルムで100mLにメスアップ、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料である重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製の商品名「UV−2450」)。
(物性2)変性共役ジエン系重合体のブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2−ビニル結合量(mol%)を求めた(日本分光社製の商品名「FT−IR230」)。
(物性3)変性共役ジエン系重合体等のムーニー粘度及びムーニー緩和率
変性剤添加前の共役ジエン系共重合体、又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300(ISO289−1)及びISO289−4に準拠し、ムーニー粘度及びムーニー緩和率を測定した。測定温度は110℃とした。また、伸展油を用いて伸展した試料の場合には100℃で測定した。まず、試料を1分間予熱した後、2rpmでローターを回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML(1+4))とした。その後、変性共役ジエン系重合体を試料とした場合については、即座にローターの回転を停止させ、停止後1.6〜5秒間の0.1秒ごとのトルクをムーニー単位で記録し、トルクと時間(秒)を両対数プロットした際の直線の傾きを求め、その絶対値をムーニー緩和率(MSR)とした。
(物性4)変性共役ジエン系重合体の変性率
変性共役ジエン系重合体を試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムとの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。具体的には、以下に示す通りである。
試料調製:試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。
ポリスチレン系カラムGPC測定条件:THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn HHR−H」と、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultipore HZ−H」3本とを接続して使用した。カラムオーブン温度:40℃、THF in TEA溶液を流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
シリカ系カラムGPC測定条件:THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、デュポン社製の商品名「Zorbax」を使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
変性率の計算方法:ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料の面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
(物性5)変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量、数平均分子量
変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製社製の商品名「TSKguardcolumn HHR−H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultipore HZ−H」3本とを接続して使用した。オーブン温度40℃、THF in TEA流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いた。測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLをGPC測定装置に注入して測定した。
(物性6)変性共役ジエン系重合体のGPC−光散乱法測定による分子量(絶対分子量)
変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC−光散乱測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、溶液粘度及び光散乱法に基づいて重量平均分子量(Mw−i)と数平均分子量(Mn−i)を求めた(絶対分子量とも呼ぶ)。溶離液はテトラヒドロフランとトリエチルアミンの混合溶液(THF in TEA:トリエチルアミン5mLをテトラヒドロフラン1Lに混合させ調整した。)を使用した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn HHR−H」と、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel G6000HHR」、「TSKgel G5000HHR」、「TSKgel G4000HHR」とを接続して使用した。オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、GPC−光散乱測定装置(マルバーン社製の商品名「Viscotek TDAmax」)を用いた。測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLをGPC測定装置に注入して測定した。
(物性7)変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度(Tg)
変性共役ジエン系重合体を試料として、ISO 22768:2006に準拠して、示差走査熱量計(マックサイエンス社製の商品名「DSC3200S」)を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、−100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
(物性8)タイヤ用ゴム組成物の転がり抵抗性能
タイヤ用ゴム組成物を試料として、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の
粘弾性試験機(ARES−G2)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した
。温度50℃、周波数10Hz、ひずみ3%の条件で測定を行い、測定したtanδを転
がり抵抗性能(省燃費性)の指標とした。比較例1の測定値を100として、各実施例及
び比較例の各々の測定値を指数化した。値が大きいほど転がり抵抗性能が良好であることを示す。
(物性9)タイヤ用ゴム組成物のウェットスキッド抵抗性能
タイヤ用ゴム組成物を試料として、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の粘弾性試験機(ARES−G2)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。温度0℃、周波数10Hz、ひずみ1%の条件で測定を行い、測定したtanδをウェットスキッド抵抗性能の指標とした。比較例1の測定値を100として、各実施例及び比較例の各々の測定値を指数化した。値が大きいほどウェッドスキッド抵抗性能が良好であることを示す。
(物性10)タイヤ用ゴム組成物のムーニー粘度(加工性能)
タイヤ用ゴム組成物を試料として、ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1
に準じて、100℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転さ
せた後の粘度を測定した。値が大きいほど加工性能に優れていることを示す。
(物性11)タイヤ用ゴム組成物のタイヤ用ゴム組成物の機械性能
タイヤ用ゴム組成物を試料として、JIS K6251の引張試験法により、引張破断強度(TB)を測定した。比較例1の測定値を100として、各実施例及び比較例の各々の測定値を指数化した。数値が大きいほど機械性能に優れていることを示す。
(物性12)タイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性能
タイヤ用ゴム組成物を試料として、アクロン摩耗試験機(安田精機製作所製)を使用し、JIS K6264−2に準じて、荷重44.1N、3000回転の条件で、摩耗量を測定した。比較例1の測定値を100として、各実施例及び比較例の各々の測定値を指数化した。値が大きいほど、耐摩耗性能に優れていることを示す。
実施例及び比較例で用いた各変性共役ジエン系重合体の製造方法について以下記載する。
〔製造例1〕SBR1(変性共役ジエン系重合体)の製造
内容積が10Lであり、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口を有し、頂部に出口を有し、攪拌機および温度調整用のジャケットを有するオートクレーブを2基連結した。さらに、2基目の反応器出口下流にスタティックミキサーを1基連結した。予め水分等の不純物を除去した1,3−ブタジエンを、29.0g/分、スチレンを18.9g/分、n−ヘキサンを180.2g/分で混合した。この混合溶液が1基目の反応器に入る直前で、不純物不活性化処理用のn−ブチルリチウムを0.087mmol/分で供給しスタティックミキサーで混合した後、1基目の反応器の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.018g/分の速度で、重合開始剤として、予め調製したリチウムアミドとしてピペリジノリチウム(「1−リチオピペリジン」ともいう。)とn−ブチルリチウムとの混合溶液(ピペリジノリチウムとn−ブチルリチウムのモル比は0.75:0.25とした。この混合溶液のことを、表中「LA−1」と略す。)を、0.180mmol/分の速度で、1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温度を67℃に保持した。1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し72℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。2基目反応器出口より、変性剤添加前の共重合体溶液を少量抜き出し、酸化防止剤(BHT)をポリマー100gあたり、0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度を測定した結果、62であった。
次に、スタティックミキサー中に連続的に流れる共重合体溶液に、変性剤2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン(以下及び表中、「AS−1」と略す。)を0.047mmol/分の速度で添加し、変性反応を実施した。スタティックミキサーから流出した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を、ポリマー100gあたり0.2gとなるように連続的に添加し、変性反応を終了させ、その後溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体(SBR1)を得た。
SBR1を分析した結果、110℃のムーニー粘度は128、結合スチレン量は35質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は40モル%、変性率は92.1%であった。SBR1のその他の物性も併せて表1に示す。なお、「変性反応時の単量体濃度」は、上記変性反応中の反応液についてガスクロマトグラフィーにより測定した。
〔製造例2〕SBR2(変性共役ジエン系重合体)の製造
変性剤としての2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン(AS−1)をトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン(以下及び表中、「AS−2」と略す。)に替え、その添加量を0.032mmol/分に変えた以外は、製造例1と同様にして、SBR2を得た。SBR2の物性を表1に示す。
〔製造例3〕SBR3(変性共役ジエン系重合体)の製造
ピペリジノリチウムをn−ブチルリチウムに替えた(すなわち、重合開始剤としてのLA−1を、全てn−ブチルリチウムに替えた)以外は、製造例1と同様にして、SBR3を得た。SBR3の物性を表1に示す。
〔製造例4〕SBR4(変性共役ジエン系重合体)の製造
極性物質2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンの添加量を0.016g/分に変え、ピペリジノリチウムをn−ブチルリチウムに替え(すなわち、重合開始剤としてのLA−1を、全てn−ブチルリチウムに替え)、変性剤としての2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン(AS−1)をトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン(AS−2)に替え、その添加量を0.032mmol/分に変えた以外は、製造例1と同様にして、SBR4を得た。SBR4の物性を表1に示す。
以下、実施例及び比較例で使用した各材料をまとめて説明する。
SBR1:製造例1で作成した変性SBR
SBR2:製造例2で作成した変性SBR
SBR3:製造例3で作成した変性SBR
SBR4:製造例4で作成した変性SBR
BR:非変性ポリブタジエン(宇部興産株式会社製、商品名「UBEPOL BR150」)
NR:天然ゴム(RSS♯3)
第一シリカ(大粒径シリカ):ソルベイジャパン株式会社製、商品名「ZEOSIL 115GR」(平均一次粒子径:24nm)
第二シリカ(小粒径シリカ):(ソルベイジャパン株式会社製、商品名「ZEOSIL PREMIUM 200MP」(平均一次粒子径:10nm))
カーボンブラック:東海カーボン社製、商品名「シーストKH(N339)」
シランカップリング剤:エボニック デグサ社製、商品名「Si75(主成分:ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)」
加工助剤:Schill+Seilacher“Struktol”AG.社製、商品名「ストラクトールA60」
S−RAEオイル(オイル):JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「プロセスNC140」)
ワックス:大内新興化学社製、商品名「サンノック」
酸化亜鉛(亜鉛華):堺化学工業社製、2種
ステアリン酸:花王社製、商品名「ルナックS−90」
老化防止剤6C:大内新興化学社製、商品名「ノクラック6C」(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業社製(JIS2種)
加硫促進剤CZ:大内新興化学社製、商品名「ノクセラ−CZ−G」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:(大内新興化学社製、商品名「ノクセラーD−P」(1,3−ジフェニルグアニジン)
表2に記載の配合量に従い、下記のように未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を製造した。
〔実施例1〕
上記の材料を下記の方法により混練して、未加硫ゴム組成物シート、及び加硫ゴム組成物シートを作製した。
工程(I)の混練として、温度制御装置を具備した加圧ニーダー(内容量0.5L)を使用し、充填率60%、ローター回転数50rpmの条件で、変性共役ジエン重合体(SBR1)、第一シリカ(大粒子シリカ)、シランカップリング剤、及び加工助剤を3分混練した。この時、加圧ニーダーの温度制御により排出温度(混練物)を155〜160℃に調整した。
次に、工程(II)の混練として、非変性ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、第二シリカ(小粒子シリカ)、カーボンブラック、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、及びワックスを加え、上記加圧ニーダーにて7分間(工程(I)及び工程(II)の合計で10分間)混練した。この時、加圧ニーダーの温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。加圧ニーダーから上記配合物を排出した後、すぐに混練物をオープンロールに6回通して、冷却し、未加硫ゴム組成物シートを作製した。
更にオーブンを用いて未加硫ゴム組成物シートを70℃で20分間加温した後、工程(III)の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤CZ、及び加硫促進剤DPGを加えて混練し、加硫ゴム組成物を得た。その加硫ゴム組成物を160℃で20分間、加硫プレスにて加硫成形して加硫ゴム組成物シートを得た。得られた加硫ゴム組成物シートの転がり抵抗性能、ウェットスキッド性能、機械性能、耐摩耗性能を評価した。
〔実施例2〜4、及び比較例1〜4〕
変性共役ジエン系重合体の種類、及び/又は、第一のシリカと第二のシリカの混練順序を表2に示すように変化させたこと以外は実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物シート、及び加硫ゴム組成物シートを作製した。また、実施例1と同様にして、得られた加硫ゴム組成物シートの転がり抵抗性能、ウェットスキッド性能、機械性能、耐摩耗性能を評価した。
〔実施例5〕
温度制御装置を具備した加圧ニーダー(内容量0.5L)を使用し、充填率60%、ローター回転数50rpmの条件で、変性共役ジエン重合体(SBR1)、非変性ポリブタジエン、天然ゴム、第一シリカ(大粒径シリカ)、第二シリカ(小粒径シリカ)、シランカップリング剤、カーボンブラック、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、及びワックスを10分間混練した。この時、加圧ニーダーの温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。加圧ニーダーから上記混練物を排出し、すぐに混練物をオープンロールに6回通して、冷却し、未加硫ゴム組成物シートを作成した。得られた未加硫ゴム組成物シートの加工性能を評価した。
得られた未加硫ゴム組成物シートから、実施例1と同様の方法で、加硫ゴム組成物シートを作製した。得られた加硫ゴム組成物シートの転がり抵抗性能、ウェットスキッド性能、機械特性、耐摩耗性能を評価した。
〔実施例6、並びに比較例5及び6〕
変性共役ジエン系重合体の種類を表2に示すように変化させたこと以外は実施例5と同様にして、未加硫ゴム組成物シート、及び加硫ゴム組成物シートを作製した。また、実施例1と同様にして、得られた加硫ゴム組成物シートの転がり抵抗性能、ウェットスキッド性能、機械性能、耐摩耗性能を評価した。
実施例1〜6、及び比較例1〜6における、各工程における配合成分及びその配合量を表2に示す。また、各加硫ゴム組成物シートの転がり抵抗性能、ウェットスキッド性能、加工性能、機械性能、耐摩耗性能の評価結果を表3に示す。