JP6157527B2 - 巻き簀 - Google Patents
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Description
従来の骨部には、比較的剛性が高く、表面が平滑である竹材が好適に利用され、また、糸材部には、高い可撓性を発揮すると共に、所要の伸びが可能なように、凧糸等の綿糸の撚り糸が利用されている。
本発明は以上のように構成され、かくして、巻き易く、かつ、衛生的であり、さらに食材を押さえる手加減が容易に分かる丈夫な巻き簀を実現している。
また、このような端末骨部は、前記編み糸部が接続された芯部と、前記芯部に被せて接合した被覆部とからなっていることが好ましい。これにより、芯部に編み糸部の端部を巻き付けたり結んだりした後、当該芯部と被覆部とを編み糸部の端部を挟み込んで接合することで、編み糸部の端部を端末骨部に確実に埋設・固定できる。また、例えば芯部に編み糸部の端部を巻き付けて、その上から被覆部を接合すれば、糸材部を結ぶという難しい作業を省くこともできる。このような芯部と被覆部との接合は、例えば、加熱溶融して溶着する方法、適宜な熱可塑性接着部材を挟み込んで加熱溶着して一体化する方法、エポキシ系等の接着剤を用いて接着接合する方法がある。
なお、前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では第1及び第2の糸材部からなり、これら第1の糸材部と第2の糸材部とは、前記芯部の前記巻く方向の外側端面の位置で結ばれており、前記被覆部は、前記芯部の外側端面を覆って、前記結ばれた結び目及びその先の余剰糸部を埋設させるようにしてもよい。
また、このような芯部と被覆部とからなる端末骨部については、前記芯部の前記巻く方向の外側端面は略平坦面であり、前記被覆部は、前記略平坦面に接合されたシート状であることが好ましい。これにより、略平坦な面に被覆部を接合できるため接合作業が容易であり、さらに、被覆部がシート状であれば、芯部に対して容易な平面的な接着接合が行える。そして、芯部と被覆部を加熱溶融して接合する場合には、被覆部が比較的薄いシート状であれば、芯部と被覆部とを短時間で接合できるので、芯部と被覆部との間にある編み糸部の端部が、加熱により溶融する等して損傷するリスクが軽減される。
そうすると、上述した発明と同様に、食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、骨部を挟むように糸材部を編むことで複数の骨部同士を連結させる編み糸部と、を備え、骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成されている。
さらに、骨部はその表面(外部に露出した面を意味する。以下同じ。)に、編み糸部と係止することで、編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を有する。これにより、骨部と編み糸部とを滑り易くした場合であっても、例えば、骨部の表面に巻く方向に沿って溝部を形成し、この溝部に編み糸部を収容して糸道を付けることにより、編み糸部の蛇行などの動きを規制して、骨部の編み糸部からの横抜けを防止したり、骨部の長手方向の端面を均一に揃えたりすることができる。
先ず、少なくとも前記編み糸部が通る糸道において、前記骨部の上下面と前記巻く方向の側面との境界が角丸形状であることが好ましい(なお、「上下面」の上面と下面とは互いの相対的な位置関係であり、例えば巻き簀を広げて置いた状態から裏返して置けば、下面が上面となり、上面が下面となる関係をいう。以下、同じ。)。
これにより、上下面と側面との境界が編み糸部との滑りを円滑にするため、巻き簀を容易に巻いたり広げたりできる。すなわち、化学繊維からなる編み糸部は、骨部との摺動が伴って良好に巻いたり広げたりできるが、実験では骨部の角部での局部的な摩擦作用によって摺動性の低下が見られた。特に、編み糸部がモノフィラメント繊維である場合、単なるプラスチックの線状物のため剛性が高く低伸度でもあり、従来の巻き簀に用いられている柔軟な綿糸の撚り糸と比較して、骨部の角部境界での繊維の変形が小さいため、角部に局部的に食い込むような摩擦力が発生し、巻いたり広げたりする際の摺動性が低下する。そこで、骨部の角部の角丸形状により編み糸部の局部的摩擦を防止して、編み糸部との滑りをよくし、例えば巻いた巻き簀を平板上に広げ直した際、骨部と編み糸部との位置関係を復元し易くして、巻き作業を容易にしている。また、骨部の上下面と側面との境界が編み糸部との滑りを円滑にできるため、編み糸部は骨部と摺動することで生ずる損傷を軽減し編み糸部の耐久性を向上させることも出来る。
さらに、この骨部の上下面と巻く方向の側面との境界に形成された窪みについては、その窪む方向であって骨部の長手方向の断面形状が略V字状であることが好ましい。これにより、編み糸部は窪みの底部に寄せられ、編み糸部の位置を一定にし易く、複数の骨部をきれいに並べることができる。
そして、このように糸材部が高分子量ポリエチレン繊維からなる場合、糸材部は、複数本の高分子量ポリエチレン繊維の束が、巻き簀の巻く方向に対して互いに斜めに交差するように組紐状に組んで(編んで)形成されるとさらに好ましい。このように、複数本の高分子量ポリエチレン繊維の束を組紐状に組んで糸材部を形成することで、骨部との摩擦や、まな板上で使用される場合等の摩擦や衝撃に対して、より強い耐久性を発揮する。
また、糸材部は、巻く方向に対して互いに斜めに交差するように組まれているため、巻き簀を丸めたり広げたりする際、当該斜めに交差する角度が変化して、その巻く方向に若干で所要の伸縮性を発揮することになる。従って、糸材部を構成する高分子量ポリエチレン繊維が巻く方向に略伸びない低伸度の繊維であっても、隣接する複数の骨部どうしに巻くための角度を付けることが容易であり(恐らく、骨部を上下で挟む第1の糸材部と第2の糸材部との間で骨部を少し回転させると、その回転に追従して糸材部も僅かに伸びることが原因だと推測される)、これにより巻き簀を容易に巻いたり広げたりすることができる。
この様な巻き簀においては、編み糸部のこぶ状の結び目を外側凹部に収容して、結び目の外部への露出を抑えることができる。従って、結び目への汚れ等の付着を防止することによる衛生性の向上、及び、結び目と他の物品との接触を防止することによる編み糸部の耐久性の向上を可能とする。さらに、結び目を上記の外側凹部に収容すれば、結び目より先の余剰糸部の突出度合いも少なくなり、余剰糸部が手に触れることを防止(特に、糸材部がモノフィラメント繊維である場合、針のように手に触れることを防止)できるため、巻き作業の容易さを向上させ、また、衛生面の向上も図ることができる。
そして、この外側凹部は、端末骨部の端面部における編み糸部の位置ずれを防止する糸規制部とすることができる。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の図において、同一の符号を付した箇所は同様の構成である。
先ず、本発明の第1の実施形態に係る巻き簀10を図1〜図5を用いて説明する。なお、図1のXYZで示す矢印方向は、各図面における3次元方向を示し、互いに直交している。
図1の巻き簀10は、海苔巻き、巻き寿司、伊達巻き等の食べ物の手巻き作業に使用される巻き簀であり、巻き簾、巻きすだれ等とも呼ばれ、全体がすだれ状に形成され、複数の骨部12と複数の編み糸部14を有している。
そして、骨部12は少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度と剛性を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成されている。
プラスチック材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ABS(アクリルニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ジュラコン等のプラスチック樹脂が利用でき、曲げ剛性と耐熱性に優れた熱可塑性樹脂であることが好ましい。その他のプラスチックとして、ポリエステル、エポキシ樹脂等による繊維強化プラスチック(FRP)が使用できる。これらの樹脂により、中実または中空のパイプ状に形成して使用できる。
金属材としては、アルミ、ステンレス、チタン等の耐腐食性に優れた金属合金が好ましく、重量の関係から中空のパイプ状に形成して使用するのがよい。
なお、巻き簀10は、プラスチック材及び/又は金属材による複数の異なる材料からなる複数の骨部12を適宜に組み合わせて構成してもよい。この場合には、例えば、比較的剛性の高い金属材と比較的剛性の低いプラスチック材による骨部を組合せることで、全体として軽量で曲げ剛性に優れた巻き易い巻き簀が得られる。
図1の各編み糸部14では、竹製巻き簀における周知な編み方と同様である。具体的には、1本の糸材部の中央付近を折り返し、この折り返し部分14cを巻く方向Yの一方の端に配置された端末骨部21に引っ掛けて、上下に分岐させている(端末骨部21は編み始め側となる)。これにより、骨部12を挟んでいる領域では(例えば上面10a及び下面10bを通る際は)、互いに分離した第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとなるように構成される。そして、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bは、折り返し部分14cを基点として、隣接する骨部12,12の間(つまり隙間S1)で、順次、上下方向Zに屈曲するように互いに交差しながら、いずれか一方が骨部12の上面に配置されている際は、いずれか他方がその同じ骨部12の下面に配置される。そして、巻く方向Yの他方の端に配置された端末骨部20(端末骨部20は編み終り側となる)の外側の端面部20aで、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとが結ばれて結び目16が形成されている。このようにして、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bで各骨部12の全周を挟むようにして、複数の骨部12を連結している。
図2は、図1の編み糸部14となる糸材部が化学繊維のモノフィラメント繊維である場合における図1のVa部分の部分拡大図である。
図2の糸材部90は、複数の糸材部を撚り合せた撚り糸(図4参照)ではなく、一本単独に形成されたモノフィラメント(単繊維糸)とされている。
糸材部90は、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)等の熱可塑性樹脂を延伸成形して、例えば0.1〜1mm程度の外径を有するモノフィラメント繊維にしたものが好適に用いられる(図2の糸材部90の直径d1は0.5mmのナイロン繊維のモノフィラメントである)。このようなモノフィラメント繊維からなる糸材部90は、表面が平滑な円柱形状のプラスチック体であり、伸びも少なく高い強度を有し、耐久性が格段に向上している。従って、糸材部90は、汚れの付着や水分の吸収を有効に回避でき、さらに、長時間使用したとしても初期の巻き簀の状態を維持して、伸びて元に戻らないような事態も防止できる。
例えば、糸材部90として、ナイロンのモノフィラメント繊維(直径0.5mm)、及び従来の綿糸の撚糸(直径約1.0mm)について、巻き簀の洗浄作業を想定して骨部の長手方向(図1のX方向)にナイロンブラシで擦る試験を実施した。その結果、撚り糸では約8000回程度の擦りで羽毛立ちが発生し、約15000回程度で切断に至った。これに対し、ナイロンのモノフィラメントでなる糸材部90は、15000回の擦りでは切断に至ることもなく、また損傷等の変化もなかった。
図3は、図1の編み糸部14となる糸材部が、複数本の高分子量ポリエチレン繊維の束を組紐状に組んで形成された場合の図であって、図3(a)は図1のVa部分の部分拡大図、図3(b)は図1のVb部分の部分拡大図である。
図3の糸材部91は、極性基をもたないポリエチレン樹脂により形成されている。このため、糸材部91は、水分を弾く程に吸収せず、水切り乾燥性に優れ、また、汚れ等とも反応し難く、優れた衛生性を保つことができる。
さらに、この糸材部91は、ポリエチレン繊維の中でも特に高分子量ポリエチレン繊維とされている。高分子量ポリエチレン繊維は、分子量が大きいポリエチレン樹脂を原料とするため、高倍率の延伸が可能となり、ヤング率や破断強度を大きくすることができる。そこで、このような性質を有する高分子量のポリエチレン樹脂を溶剤で溶かして糸状にした後延伸して、長い分子鎖構造を伸び切った状態にすることができ(例えばゲル紡糸法)、これにより高い強度をもった繊維にしている。
本実施形態の糸材部91は、この高分子量のポリエチレン樹脂の中でも非常に分子量の大きいポリエチレンポリマー(超高分子量ポリエチレン樹脂)を原料としており、これを溶剤で溶かした後、超延伸して形成した超高分子量ポリエチレン繊維とされている。超高分子量ポリエチレン繊維としては、例えば東洋紡績株式会社のダイニーマ(商標)を利用できる。
このように、本実施形態の糸材部91は、超延伸(引張)して形成された超高分子量ポリエチレン繊維が用いられているため、繊維は分子の鎖が長く伸びて形成され、その伸ばした繊維の長さ方向に非常に高い強度を発揮すると共に、殆ど伸びない程の低伸度の物性を備えている。
従って、最も耐久性を必要とする巻く方向Yについて、格段に丈夫で耐久性の高い巻き簀10を形成できる。また、超高分子量ポリエチレン繊維自体は巻く方向Yに殆ど伸びないため、長期間使用したとしても初期の巻き簀10の形状を維持できる。従って、編み糸部14が除々に伸びて骨部12,12どうしの隙間S1が拡がり飯粒が挟まったり、巻き簀10全体が弛んだ状態で海苔巻き作業がしづらくなったり、骨部12が移動し易く抜け出してしまう事態を防止できる。
組紐は、繊維の3条以上の束を組んで形成される紐であり、図3の糸材部91の場合、複数本の超高分子量ポリエチレン繊維をストランド状に揃えた束n1〜n8とし、この束n1〜n8を編み組している。なお、束の数は例えば4〜8本であり、図の束n−1〜n−8は8本であるが、本発明の束の数はこれに限られない。
このようにして、糸材部91を組紐状にすることで、巻く方向Yについて若干で所要の伸縮性を発揮させ、上述のように超高分子量ポリエチレン繊維が巻く方向Yに殆ど伸びない繊維であったとしても、巻き簀の巻く動作に支障が生じることを防げる。即ち、隣接する複数の骨部同士に上下方向に回転(図1(c)のR方向に回転)する際の角度を付けることが容易であり、これにより巻き簀10を容易に巻いたり広げ直したりすることができる。
なお、図3に示す角度θ1と角度θ2の差は僅かであり、差が大き過ぎると図1の骨部12同士の隙間S1が大きくなり過ぎるため好ましくない。
また、本発明の糸材部91は、図4に示すように繊維の束を撚った撚り糸状にしても構わないが、摩擦などで容易に撚り形状が変形して潰れたりする等の変形しやすい構造であるため、長期使用による伸び変形で隙間S1が大きくなって巻き作業に支障を生じるため、上記説明した強度や所要の伸縮性の点から組紐状の方が好ましい。
以下は、巻き簀として、従来の竹製巻き簀における綿糸の破断強度以上の強度を有する糸材部を適用する場合について、これらの乾燥性能を比較調査した概要である。
試料内容
各試料内容は以下の通りである。破断強度は、JISL1013−2010化学繊維フィラメント糸試験方法に準拠して測定した。
●試料1:ポリエステル樹脂のモノフィラメント・・・直径0.4mm、破断強度73N
●試料2:超高分子量ポリエチレン繊維の組紐・・・直径0.4mm、破断強度184N
なお、組紐は丸打紐。
●試料3:ポリエステル繊維の撚り糸・・・直径0.45mm、破断強度88N
●試料4:木綿糸の撚り糸・・・直径0.8mm、破断強度56N
試験方法
上記試料1〜4を夫々1mの長さに切断したものについて、以下の方法1〜3の順で試験を行った。
●方法1:各試料の当初の重量を測定した後、常温の水中に24時間浸漬。
●方法2:浸漬後の重量を測定した後、ポリエステルフィルム上に伸ばした状態で載置。
●方法3:温度16℃、湿度65%の室内に放置後、15分間隔で各試料の重量を測定。
試験結果
上記試料1〜4の乾燥時間は以下の通りであった。以下の数値は、左から当初重量、浸漬後の重量、以降、室内に放置して15分経過時間毎の重量(g)を表わしている。
●試料1:当初0.18→浸漬後0.19→15分後0.18(15分で乾燥)
●試料2:当初0.15→浸漬後0.24→15分後0.17→30分後0.15
(30分で乾燥)
●試料3:当初0.21→浸漬後0.35→15分後0.28→30分後0.23→
45分後0.21(45分で乾燥)
●試料4:当初0.49→浸漬後1.67→15分後1.48→30分後1.29→
45分後1.12→60分後1.04→75分後0.83→90分後0.74
→105分後0.66→120分後0.56→135分後0.49
(135分で乾燥)
とりわけモノフィラメントによる糸材部(試料1)は、乾燥時間がことさら早いため、これを巻き簀の編み糸部となる糸材部に採用することは、細菌等の繁殖を抑制し、衛生性に優れた巻き簀が得られることから好ましい。
また、超高分子量ポリエチレン繊維の組紐(試料2)については、複数の繊維束を互いに斜めに交差するように組紐状にしたため、組んだ繊維の束どうしの間に水分が付着して乾燥性を低下させる恐れもあったが、糸材部を極性基をもたないポリエチレン樹脂としたため、水分の吸収がなくて水切り性に優れていることが判り、乾燥性に優れた巻き簀とすることができる。
また、乾燥性に優れている試料1と試料2とを比較すると、同じ直径において試料2、つまり超高分子量ポリエチレン繊維の組紐(丸打紐)の方が破断強度に優れていることも分かった。このことから、本実施形態のように糸材部を超高分子量ポリエチレン繊維の組紐とすることで、耐久性を格段に向上できる。さらに、試料2(超高分子量ポリエチレン繊維の組紐)の糸材部の破断強度を試料1・3・4と同様の破断強度に落とせば、各試料の中でも最も直径の細い糸材部を構成できる可能性有している。
すなわち、図5(a)の骨部12は、巻く方向Yの縦断面形状が従来の竹製巻き簀と同様、略半円形状とされて、上面10a側が平面状、下面10b側が円弧状に形成され、当該平面状部と円弧状部との交点に角部18が形成されている。
また、図5(b)の骨部12−1は上下面を区別することなく食材を載せて使用可能とするため、巻く方向Yの縦断面形状が八角形とされており、上下(表裏)両面が互いに平行な平面状である。そして、骨部12−1の断面の平面状部22と次の直線部23との交点に角部19が形成されている。
そこで、以下、この復元し難さという問題を解消するために改良した巻き簀について、図6を用いて説明する。
図6は第1の実施形態の変形例に係る巻き簀101〜104であり、骨部の巻く方向Yの縦断面のみを図示している。これらの巻き簀101〜104が上述した巻き簀10と異なるのは、骨部25〜28のみである。
すなわち、図6の巻き簀101〜104は、骨部25〜28の上下面と巻く方向Yの側面との境界が編み糸部14の滑りを円滑にした滑り部25a〜28aとされている。これにより、編み糸部14と骨部25〜28との摺動が円滑になり、巻き簀101〜104を巻いた後であっても、平板上に広げて置いたときに、各骨部25〜28の向きが一様な平面形状とすることができる。
さらに、巻き簀102は、骨部26の上面26bと下面26cが全体的に互いに略平行な平面状とされることで、巻き簀の操作性を高めている。すなわち、図6(a)の巻き簀101は、全体として、下面の半円形状の頂点が凸部、隙間S1が凹部となる凹凸面となり、平面性に欠ける。このため、例えば図7(編み糸部は省略)に示すように海苔巻きWRを締め付け、又は締め付けながら巻く動作を行う際、図6(a)の巻き簀101では、上面と下面又は同じ面同士が擦れ合って、骨部25同士が円滑に滑らないため使用感が好ましくない。そこで、図6(b)及び図7に示すように、骨部26の上面26bと下面26cを略平行にし、巻き簀全体として上下面を平面状にして、擦り動きを滑らかにし、巻き簀の良好な使用感を高めることができる。
さらに、図6(c)の骨部27は、編み糸部14と擦れる部分の全部が角部を持たない断面形状とされ、断面が角丸四角形状、又は長円形状である。
以上より、巻き簀103は、糸材部の種類を問わず、上下面の平面性が確保され、巻き易さや広げ易さが向上している。
次に、本発明の第2の実施形態について、図8を用いて説明する。図8は第2の実施形態に係る巻き簀105であり、一本の骨部30のみを図示している。
この図の巻き簀105が上述した巻き簀10,101〜104と異なるのは、骨部30の上下面の形状のみであり、巻く方向の断面形状において角部が存在しない点等は、図6(c)等と同様である。
このように、凹凸模様32中に糸道となる平坦部34(糸規制部)を形成することで、編み糸部が凹凸模様32によって蛇行したり、凹凸模様32の突起37に引っ掛かったり、骨部30が編み糸部からの横抜けしたりすることを防ぐことができる。
また、平坦部34の長手方向Xの両脇の突起37の高さ(つまり、糸規制部の深さ)H2は、糸規制部周辺を拡大した二点鎖線で囲った図に示すように、編み糸部14の太さと略同等以上であることが好ましく、これにより、編み糸部14と作業台等との摩擦を防ぐことができる。
また、この凹凸模様32は複数の骨部30の全部に設けてもよく、或いは、複数の骨部30の限られた骨部だけに設けるようにしてもよい。
次に、上記第2の実施形態の第1変形例について、図9を用いて説明する。図9は図8の変形例に係る巻き簀106であり、一本の骨部301のみを図示している。
本変形例の骨部301は、下面における凹凸模様32中の平坦部34からなる糸規制部だけでなく、上面301aにも糸規制部29が形成されている。
糸規制部29は、編み糸部の通るべき糸道に対応して形成され、巻き簀の巻く方向(骨部301の短手方向)Yに沿って形成された溝状であり、溝状の内壁と編み糸部とが係止することで、編み糸部の通るべき糸道を規制するようにしている。
なお、糸規制部29の溝状の深さは編み糸部の太さと略同等であり、上下両面において、編み糸部と作業台等との摩擦を防いでいる。
次に、上記第2の実施形態の第2変形例について、図10を用いて説明する。図10は図9の変形例に係る巻き簀109であり、一本の骨部304のみを図示している。
図10の巻き簀109が図9の巻き簀106と異なるのは、上面304aの糸規制部52の構成であり、糸規制部52は、骨部304の上面304aから突出した複数の凸部53からなっている。これにより、所要の剛性を維持しつつ、図9の骨部301に比べて骨部304の基準面(主面となる概ねの領域)の厚み(糸規制部52を除く厚み)H4を小さくすることができる。
凸部53は、巻く方向Yに直交する方向Xの縦断面形状が略円弧状の表面を有し、巻く方向Yに沿って長く形成された棒状である。
このような図10の骨部304は、凸部53及び凹凸模様32からなる糸規制部を有しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、下面304bに凹凸模様32がなく、糸規制部は、上面304aの凸部53だけでもよく、或いは、上下面304a,304bの双方に形成された凸部53であってもよい。
次に、上記第2の実施形態の第3変形例について、図11を用いて説明する。図11は図10の変形例に係る巻き簀111であり、一本の骨部306のみを図示している。
図11の巻き簀111が図10の巻き簀109と異なるのは、糸規制部55を構成する凸部56の形状である。すなわち、本変形例の糸規制部55は、複数のドット状又はドーム状の凸部56が所要の間隔S3を空けながら巻く方向Yに並び、この並んだ複数の凸部56が骨部306の長手方向Xに2列とされることで形成されている。
次に、本発明の第3の実施形態について、図12を用いて説明する。図12は第3の実施形態に係る巻き簀107であり、その骨部の特徴部分を図示している。
図12の骨部302が図8〜図11の骨部と主に異なるのは、編み糸部の糸道を規制するための糸規制部である。すなわち、骨部302の糸規制部は、骨部の上下面302a,302dと巻く方向Yの側面302bとの境界BHに形成された窪み40である。
図12の窪み40は、隣接する骨部302と対向する側面302bに、骨部302の厚み方向に沿って溝状部を作ることで形成されている。この糸規制部となる窪み40は、図1の編み糸部14が通るべき糸道に対応した領域にのみ配置されており、これにより、図12の窪み40の内側側面40bが編み糸部と係止し、糸道を規制するための糸規制部となる。
また、側面302bに溝状の窪み40を形成することで、隣接する2つの骨部302,302どうしの間隔S2を狭めても、編み糸部となる糸材部(不図示)を支障なく編むことができ、これにより、間隔S2に飯粒等が入ることを有効に防止できる。また、窪み40の形成にあたり、側面302bからの深さ(40bの形成高さ)を変化させることで、骨部302どうしの間隔S2を変更することができる。さらに、窪み40の内側底部40aの湾曲した頂部を側面302bと同一の高さまで形成したとしても、窪み40の内側側面40bはその上下部分で編み糸部と係止できるので、糸規制部として機能できる。
なお、骨部302の下面には図8等と同様の凹凸模様が施されてもよい。
次に、上記第3の実施形態の変形例について、図13を用いて説明する。図13は図12の変形例に係る巻き簀108であり、その骨部の特徴部分を図示している。
図13の巻き簀108が図12の巻き簀107と異なるのは、糸道を規制するための糸規制部の構成のみである。
すなわち、図13の糸道規制部は、骨部の上下面302a,302dと側面302bとの境界(即ち角部)BHにおいて、糸道に対応した領域にのみ形成された窪み401であるが、この窪み401は、その窪む方向であって骨部302−1の長手方向Xの断面形状が略V字状とされている。換言すれば、窪み401の内側側面401b,401bは、内側底部401aに向かうに従って除々に近づくように傾斜しており、例えば、窪み401における骨部302−1の長手方向Xの縦断面形状(図13(a)のT−T断面)は図13(c)に示すように略V字状である。
なお、図の窪み401の内側底部401aは、図13(c)の内側底部401a付近の拡大図である二点鎖線で囲った図(ここでは編み糸部14も図示)に示すように、骨部の長手方向Xの断面が鋭角ではなく、内側底部401aが湾曲して丸みを帯びている。この内側底部401aの丸みを形成する曲率半径r4は、少なくとも編み糸部14である糸材部14の丸みを形成する曲率半径r5よりも大きいのが好ましい。これにより、窪み401内を編み糸部14が円滑に摺動することになる。
そして、図13(b)に示すように、窪み401の内側底部401aについては、巻く方向Yの縦断面形状が角丸形状となっている(図の場合、上側の糸規制部401−1は斜め上方に向かって、下側の糸規制部401−2は斜め下方に向かって湾曲している)。なお、骨部302−1の内側底部401aを通る巻く方向Yの断面(図13(a)のH−H断面)は略長円状である。
さらに、窪み401は、内側側面401b,401bが内側底部401aに向かうに従って互いに近づくように傾斜しているため、編み糸部は内側底部401aに寄せられ、編み糸部の位置が一定で、複数の骨部302をきれに並べることができる。
そして、内側底部401aについては、巻く方向Yの縦断面形状が角丸形状であり、さらに骨部の長手方向Xの断面が湾曲して丸みを帯びている。従って、窪み401内を通る編み糸部の食い込みや損傷を防止できる。
しかも、窪み401は図12の窪み40に比べて小さくて済むと共に、急激に屈曲する部分も少ないため、曲げに対して強い骨部302−1を形成できる。
次に、本発明の第4の実施形態について、図14を用いて説明する。図14は第4の実施形態に係る巻き簀112であり、その特徴部分を図示している。
図14の巻き簀112は、図1〜図13の巻き簀と同様、食材を巻く方向Yに列設した複数の骨部12と、この骨部12を挟むように糸材部を編むことで複数の骨部12同士を連結させる編み糸部14とを備えている。
図14の巻き簀112が上述した各図の巻き簀10,101〜108と異なるのは、端末骨部20,21の形状である。
すなわち、複数の骨部のうち巻く方向Yの端に配置される端末骨部20,21は、巻く方向Yの外側の端面部20a,21a(図14(b)参照)であって、編み糸部14の通るべき糸道(特に結び目16)に対応した位置に、巻く方向Yの内側に向かって窪んだ外側凹部57が形成されている。この外側凹部57は、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとの結び目16が収容可能な深さD4(図14(c)参照)を有しており、また、上面視が略V字状となるように、巻く方向Yの内側に向かって窪んでいる。なお、図14の外側凹部57は両端の端末骨部20,21に形成されている。
また、外側凹部57は、端末骨部20,21の端面部20a,21aにおける編み糸部14の位置ずれを防止する糸規制部ともなる。特に、図14の外側凹部57はV字溝状であるため、編み糸部14と係止し易く、位置ずれを確実に防止できる。
さらに、巻く作業の際に結び目16や余剰糸部49は邪魔になり易いが、外側凹部57を設けることで、結び目16を収容すると共に、余剰糸部49の端面部20aからの突出した長さL3も抑え、巻き作業が容易になる。
また、図14では両端の端末骨部20,21に外側凹部57が形成されているが、本発明はこれに限られず、結び目16を有する端末骨部20にのみ外側凹部57を形成してもよい。
また、この余剰糸部49の切断は加熱溶断又は火炎等で切断する手段が用いられ、これにより、余剰糸部49を拡大した二点鎖線で囲った図に示すように、切断面に丸み・球状部49aが形成されている。従って、編み糸部14となる糸材部が特にモノフィラメント繊維(図2参照)である場合、余剰糸部49が棘のように手に接触する事態を防止できる。また、高分子量ポリエチレン繊維の束を組紐にした糸材部(図3参照)であっても、余剰糸部49における糸の解れを防止して衛生面を向上させ、さらに、結び目16が解ける事態も防止できる。
次に、本発明の第5の実施形態について、図15を用いて説明する。
図15は第5の実施形態に係る巻き簀114であり、上述した各図の巻き簀10,101〜113と異なるのは、編み糸部14となる糸材部の材料と、端末骨部64の形状である。
先ず、図15の巻き簀114について、編み糸部14となる糸材部には、図2のモノフィラメント繊維、又は、図3の高分子量のポリエチレン樹脂を延伸して繊維状にした高分子量ポリエチレン繊維が最も好ましい材料ではあるが、必ずしもこれらの材質に限られず、その他の化学繊維、例えばナイロン、ポリエステル、ビニロン、レーヨン、ポリプロピレン繊維等による撚り糸であってもよい。
このような端末骨部64は、図15のように1本の糸材部を折り返して使用する場合以外に、互いに分離した2本の糸材部を用いて編み糸部14を形成する場合は、巻き簀114の巻く方向の両端に形成してもよい。
なお、端末骨部64は、図15(a)に示すように、長手方向Xの外側の角部が面取りされている。また、端末骨部64の表面には編み糸部14が通らないため、図15(b)に示すように、上下面と側面との境界に角部31が形成されており、これにより、端末骨部64を摘む際の滑りを防止している。この滑り防止については、端末骨部64の上下面に浅い窪みを形成することで行ってもよい。
すなわち、図15(a)の巻き簀114を製造する方法を説明する図15(c)に示すように、端末骨部64とその一つ内側の骨部12との隙間S1より外側で、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとを結ぶ(すなわち、図6(c)に示す巻き簀103を一旦形成する)。次いで、その結び目16や余剰糸部49を上下2枚の細長板状のプラスチック端末材64−1,64−2で挟む。次いで、編み糸部14の端部が端末骨部64から抜けないように、プラスチック端末材64−1,64−2を図のZ1の方向に図示しない加熱プレス装置にて加圧及び加熱して、プラスチック端末材自体を加熱溶融して接着させるか、あるいは熱可塑性又は熱硬化性樹脂による接着用材料を挟み込んでプラスチック端末材と共に接着する。このようにして、結び目16と余剰糸部49を2枚のプラスチック端末材64−1,64−2の間に埋設すると共に一体化させて、端末骨部64を形成する。
延長糸部48は、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bを単に延長させて埋設してもよいが、第1及び第2の糸材部14a,14bを撚り合わせた状態で埋設したり、あるいは、第1及び第2の糸材部14a,14bを樹脂等の接着剤で一旦固定化したり、加熱融着して固定化したりするなどして、その後上記のような方法で埋設してもよい。これにより、編み糸部14の端部を埋設する作業が楽になると共に、編み糸部14の緩みや抜けが防止できる。
また、結び目16は、複数形成してもよいし、大きく形成してもよい。さらには、結び目16に代えて第1及び第2の糸材部14a,14b同士を適当な固定具で固定した後、固定具ともども埋設してもよい。或いは、加熱により大きなこぶ部を形成してもよい(いずれも図示せず)。これらにより、編み糸部14の端部の緩みや抜けを有効に防止できる。
尚、延長糸部48の端部は、図15(b)の如く端末骨部64の巻く方向Yの外側端面まで到達していなくてもよいし、図15(d)の如く端末骨部64の外側端面にまで到達していても構わない。
次に、上記第5の実施形態の第1変形例について、図16を用いて説明する。図16は図15の変形例に係る巻き簀115であり、その特徴部分を図示している。なお、理解の便宜のため、図16(a)では、端末骨部60の内側に埋設された編み糸部14の端部14−1を細い実線で図示している。
この巻き簀115が図15の巻き簀114と異なるのは、端末骨部60の領域である。
すなわち、端末骨部60は、編み糸部14の端部14−1が接続された芯部58と、芯部58に被せて接合した被覆部59とからなり、これにより、編み糸部14の端部14−1は端末骨部60に埋設されると共に固定される。
図16の芯材58は、後述する図16(b)に示されるように、端末骨部60の厚み方向Zの中央部に配置され、編み糸部14の結び目のない端部14−1が巻かれている。これにより、端部14−1を端末骨部60内に固定して、編み糸部14の緩みや抜けが有効に防止できる。また、編み糸部14の端部14−1には結び目がないため、煩わしい結び目の形成作業を省略できる。
これに対して、被覆部59は外部に晒されるため、プラスチック材により形成される。プラスチック材としては、他の骨部12と同様でもよいし、異なるプラスチック材でもよい。この被覆部59は、編み糸部14の端部が外れないように、芯部58の上下面及び側面を通る編み糸部14の端部を出来るだけ覆える構成とするのが好ましく、図の場合、隣接する骨部12との間の編み糸部14の通り道のみを残すように、芯部58の全周を覆っている。
なお、編み糸部14の端部14−1を芯部58の外周に巻き付ける場合は、少なくとも1周、好ましくは2周以上巻き付けるのがよく、これにより端末骨部60内に確実に固定できる。また、端部14−1については、芯部58と被覆部59との間に隙間が生じないように、巻回方向に重ならないように巻かれるのが好ましい。
そして、このような端末骨部60は、完全に分離した2本の糸材部を用いて編み糸部14を形成する場合は、巻き簀115の巻く方向の両端に形成してもよい。
即ち、図16(c)の左図では、巻く方向Yの縦断面がU字状又はコの字状である被覆部59を別途用意しておく。そして、このU字状等の内側空間に、端部14−1を巻いた後の芯部58を収容し、その後、当該内側空間を閉じる方向Z3に加圧及び加熱している。これにより、被覆部59を予めU字状又はコの字状にしている分、芯部58と被覆部59との組み付けが容易で端末骨部60の成形が能率よく行える。
また、図16(b)(c)の右図のような、加熱溶融して変形した後の被覆部59の形状のように予め異形断面に成形された2つのプラスチック端末材(例えば断面I字状とL字状など)を別途用意し、これらを適宜な接着剤で接着固定して端末骨部60を形成することもできる。
なお、図16(c)の編み糸部14の端部14−1の芯部58への巻付け方及び巻付け数等は適宜選択できる。また、芯部58のY方向の両側端面に第1及び第2の糸材部14a,14bを食い込み固定させるための切込み部(不図示)を設けてもよく、これにより、編み糸部14の端部14−1が芯部58へ確実に固定され、編み糸部14の緩みや抜けが有効に防止できる。
次に、上記第5の実施形態の第2変形例について、図17を用いて説明する。図17は図16の変形例に係る巻き簀116であり、その特徴部分を図示している。なお、図17(a)では理解の便宜のため、端末骨部70の内側に埋設された編み糸部14の端部14−2を細い実線で図示している。また、図17(b)では端末骨部70の被覆部69の一部を切り欠いて、内側の芯部68を図示している。
図17の場合、溝状部72の深さは部位により異なっており、結び目16と余剰糸部49が配置される溝状部72aの深さD2が大きく、結び目16と余剰糸部49を除く糸材部だけの端部14−2が配置される溝状部72bの深さD3は相対的に小さく形成されている。図17では、D2は結び目16の最大外形と同等の寸法であり、D3は第1及び第2の糸材部14a,14bの外径と同等の寸法である。
なお、骨部12の片面には、図11と同様の凸部56による糸規制部55が設けられている。
次に、上記第5の実施形態の第3変形例について、図18を用いて説明する。図18は図17の変形例に係る巻き簀117であり、その特徴部分を図示している。なお、図18(b)では理解の便宜のため、端末骨部80の被覆部79の一部を切り欠いて図示している。
この巻き簀117は、図17の被覆部69が芯部68の上下面及び側面を可及的に覆うようにしているのに対して、図18の被覆部79は、芯部78の外側端面78dのみを覆って、結び目16及びその周辺、並びにその先の余剰糸部49を埋設させており、被覆部79は芯部78の内側の端面78a、及び上下面78b,78cを覆わないようにしている。これにより、芯部78と被覆部79とを接合する際、加熱溶融物又は接着材等が端末骨部80とそれに隣接する骨部12との間S1に侵入することを防止できる。従って、内側の端面78a等にはみ出し(バリ)が形成されて、これの除去で編み糸部14を傷つける虞を防止でき、また、芯部78を巻くように被覆部79を接合しなくてもよい分、作業も容易である。
このように図18の芯部78はもはや芯部と言うよりも、他の骨部12と変わらない骨部そのものであり、端末骨部80は、例えば、図6(c)に示す端末骨部27に図18の被覆部79を接合したものと捉えることもできる。
そして、端末骨部80は、被覆部79が接合された分、他の骨部12よりも巻く方向Yの寸法が大きくなるが、巻き簀の使用目的に大きく寄与しない位置に存在するため、使用に支障はない。
そして、芯部78の外側端面78dの位置で第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとを結んで結び目16を形成する。次いで、余剰糸部49を芯部78の長手方向Xに広げた後(図18(b)参照)、Z4方向に押圧しながら外側端面78dを被覆部79で覆い、加熱溶融接着又は接着剤による接着等によりこれらを一体化して、編み糸部14の端部を端末骨部80に埋設する。
なお、図18(d)の被覆部79は、芯部78の外側の端面78dの形状に予め湾曲形成しているが、例えば加熱溶融接着する場合には、図18(e)に示す縦断面が略矩形状で棒状(平板状)の被覆部79−1を使用して、加熱溶融接着と同時に外側端面78dの形状に加熱溶融変形させながら接着してもよい。
さらに、上記のような端末骨部80の形成に当り、余剰糸部49を図18(b)の如く長手方向Xに必ずしも広げなくてもよく、このため被覆部79で完全に覆えず、余剰糸部49の一部が端末骨部80から露出したとしてもよい。この場合には、最終的に露出した部分を切断除去すればよく、結果として編み糸部の端部は埋設されることになるが、可能な範囲の余剰糸部49は予め切断除去して端末骨部80を形成するのが好ましい。
なお、本発明は上述した構成に限らず、例えば、芯部78には図14に示す如くの外側凹部57が形成されたもののほか、図17に示す溝状部72a,72bが形成されてもよい。
なお、他の骨部12の片面には、図8と同様の凹凸模様32と平坦部34による糸規制部が設けられている。
次に、上記第5の実施形態の第4変形例について、図19を用いて説明する。図19は図18の変形例に係る巻き簀118であり、その特徴部分を図示している。なお、図19(b)では理解の便宜のため、端末骨部180の被覆部179等の一部を切り欠いて図示している。
本変形例では、図19(c)に示すように、端末骨部180を構成する芯部178は、巻く方向Yの外側端面178dが略平坦面とされている(但し、一部に溝状部172aを有している)。具体的には、芯部178の内側の端面178aは凸状に湾曲し、外側端面178dは上下面178b,178cと略垂直な平面を持つようにされている。これにより、平板状の被覆部179を好ましく採用でき、この場合、芯部178の外側端面178dが略平坦状となるため、例えば図18(e)の被覆部79−1に比べて、平板状の被覆部179の厚さを薄くしたシート状(フィルム状とも言う)とすることができる。従って、図19(d)のように、芯部178の外側端面178dに対して被覆部179を加熱溶融して接着する場合、加熱溶融接着が短時間で行えるようになり、編み糸部14の端部の加熱に起因する損傷リスクが軽減できる。なお、図19の被覆部179は各列の編み糸部14(具体的には結び目16と余剰糸部49)に対応した領域にのみ配置されており(図19(a)参照)、加熱溶着接着が芯部178に与える影響も軽減している。
また、芯部178の外側端面178dが略平坦面であり、且つ、被覆部179が略平坦なシート状であるため、これらの接合が平面的な接着となって、接合方法の種類を問わずに接合作業が容易となる。
また、図19(a)に示すように、芯部178の巻く方向Yの寸法(幅)W3が他の骨部12の寸法W1に比べて大きく形成され、巻き簀118を巻く際に端末骨部180をつかみ易く、操作し易いようになっている。また、この様に端末骨部180(芯部178)の幅を大きくすることで、この部分にロゴやデザイン等を施すこともできる。
また、図19の巻き簀118には、既に説明した各実施形態及びその変形例の形状・材料などを適宜付加・選択でき、例えば、巻き簀118がカリフォルニア巻等に利用されるものであれば、図8〜図11に示される凹凸模様34を骨部に形成してもよい。
このような背景から、端末骨部64,60,70,80,180を例えば、他の骨部12と異なる材質のプラスチック材で構成することができる。例えば、図15の端末骨部64、図16の芯部58及び被覆部59、図17〜図19の芯部68,78,178及び被覆部69,79,179を構成する各プラスチック材において、編み糸部14となる糸材部よりも耐熱(融点)温度の低いプラスチック材とすることができる。これによって、これらのプラスチック材を加熱溶融させて編み糸部の端部を端末骨部に埋設する場合に、糸材部が溶融して切断し、また損傷することを防止できる。
さらに、熱可塑性、熱硬化性等の接着材料(接着剤)を介在させて、編み糸部の端部を端末骨部に埋設する場合、芯部と被覆部は、容易に剥離して水密性を損ねないように、接着材料と接着性に優れるプラスチック材料を適宜選択して適用するのがよい。
また、本発明の端末骨部は、他の骨部と異なる着色を施したり、さらに、これらの端末骨部の部分に意匠模様を付加したりしてもよい。また、これらの端末骨部の成形と同時にこのような意匠模様を付加することが可能となる。さらに、端末骨部の形状は、その長さ、厚さ、幅等の寸法及び形状を他の骨部と異なるものとしてもよい。
例えば、図1の変形例である図20の巻き簀119に示すように、並列した各列の編み糸部14は、複数本の糸材部140,141を有し、糸材部140と糸材部141とは、互いに接触又は撚らずに近接して並べられてもよい。
或いは、複数本の糸材部140,141は、例えば図21に示すように互いに撚らずに接触させ、或いは、撚り合せて構成することもできる。
なお、各列の編み糸部14は図20及び図21に示すように、2本の糸材部140,141であってもよいし、3本以上の糸材部であってもよい。
図20及び図21の例によれば、一本当たりの糸材部に加わる力を弱めて、切断の恐れを有効に防止できる。また、複数本の糸材部140,141を撚らずに接触又は近接させる構成では、糸材部140,141の外径を相対的に小さくして、隣接する骨部12,12同士の間である隙間S1を小さくして、食材が隙間S1に入り込む恐れを軽減することもできる。
また、図20の例では、互いに近接した複数の糸材部140,141は、互いを接触又は撚り合わせるようなことなく独立した列状の糸材部140,141として並べられているため、接触部や撚り目に汚れや水分が浸入する恐れも防止され、衛生面も確保できる。
Claims (10)
- 食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、
前記骨部を挟むように糸材部を編むことで前記複数の骨部同士を連結させる編み糸部と、
を備え、
前記骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、
前記糸材部は、化学繊維からなっており、
前記編み糸部の端部は、前記複数の骨部のうち前記巻く方向の末端に配置された端末骨部に埋設されている
ことを特徴とする巻き簀。 - 前記端末骨部は、前記編み糸部の端部をプラスチック材で挟んで、前記編み糸部の端部と前記プラスチック材を接着一体化して形成することで、前記編み糸部の端部を埋設するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の巻き簀。
- 前記端末骨部は、前記編み糸部の端部が接続された芯部と、この芯部に被せて接合した被覆部とからなることを特徴とする請求項1に記載の巻き簀。
- 前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では第1及び第2の糸材部からなり、これら第1の糸材部と第2の糸材部とは、前記芯部の前記巻く方向の外側端面の位置で結ばれており、
前記被覆部は、前記芯部の外側端面を覆って、前記結ばれた結び目及びその先の余剰糸部を埋設させたことを特徴とする請求項3に記載の巻き簀。 - 前記芯部の外側端面は略平坦面とされていることを特徴とする請求項4に記載の巻き簀。
- 前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では互いに分離した第1及び第2の糸材部から構成され、これらの糸材部は前記骨部同士の間で互いに交差しながら編まれており、
前記骨部はその表面に、前記編み糸部と係止することで、前記編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の巻き簀。 - 食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、
前記骨部を挟むように糸材部を編むことで前記複数の骨部同士を連結させる編み糸部と、
を備え、
前記骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、
前記糸材部は、化学繊維からなっており、
前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では互いに分離した第1及び第2の糸材部から構成され、これらの糸材部は前記骨部同士の間で互いに交差しながら編まれており、
前記骨部はその表面に、前記編み糸部と係止することで、前記編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を有し、
前記糸規制部は、前記骨部の上面及び/又は下面に形成されており、
前記糸道が平坦部とされ、この平坦部の周辺に細かな凹凸模様が配置されることで前記糸規制部が形成されている
ことを特徴とする巻き簀。 - 食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、
前記骨部を挟むように糸材部を編むことで前記複数の骨部同士を連結させる編み糸部と、
を備え、
前記骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、
前記糸材部は、化学繊維からなっており、
前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では互いに分離した第1及び第2の糸材部から構成され、これらの糸材部は前記骨部同士の間で互いに交差しながら編まれており、
前記骨部はその表面に、前記編み糸部と係止することで、前記編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を有し、
前記糸規制部は、前記骨部の上下面と前記巻く方向の側面との境界に形成された窪みであって、この窪みにおける前記巻く方向の縦断面形状が角丸形状であり、
前記窪みは、その窪む方向であって前記骨部の長手方向の断面形状が略V字状であり、
前記骨部の前記窪み以外の領域における前記上下面と前記側面との境界は略角とされている
ことを特徴とする巻き簀。 - 食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、
前記骨部を挟むように糸材部を編むことで前記複数の骨部同士を連結させる編み糸部と、
を備え、
前記骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、
前記糸材部は、化学繊維からなっており、
前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では互いに分離した第1及び第2の糸材部から構成され、これらの糸材部は前記骨部同士の間で互いに交差しながら編まれており、
前記骨部はその表面に、前記編み糸部と係止することで、前記編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を有し、
前記複数の骨部のうち前記巻く方向の末端に配置される端末骨部は、前記巻く方向の外側の端面部が前記巻く方向の内側に向かって窪んだ外側凹部を有しており、前記外側凹部が前記糸規制部とされている
ことを特徴とする巻き簀。 - 前記第1の糸材部と前記第2の糸材部とは、前記外側凹部の位置で結ばれていることを特徴とする請求項9に記載の巻き簀。
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