JP6519739B2 - 巻き簀 - Google Patents

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Description

本発明は調理用の巻き簀に関する。
海苔巻き等の手巻き作業に使用される古来の巻き簀は、竹材からなる複数の骨部と、該複数の骨部を連結するための綿糸の撚り糸とからなっている。これら竹材や綿糸は、水分を吸収して洗浄し難く、また、内部に染み込んだ洗剤や汚れ、内部に発生したカビや細菌等を除去し難い。また、竹材はササクレが発生する危険性もある。そして、巻き簀は海苔の湿気を防止する必要性がある一方で、竹材や綿糸は乾燥に長時間を要するなど、種々の問題を有している。
これらの対策として、近年、特許文献1に示されるように、シリコーンゴムで成形された巻き簀が開発されている。特許文献1の巻具(巻き簀)は、断面が直線状の山形である複数の骨材と、この複数の骨材間の薄肉部とを有しており、骨材及び薄肉部はシリコーンゴムで一体成形されている。そして、このシリコーンゴムは柔軟性があるため、巻き簀は丸め易く、また、衛生的にも好ましいといった利点がある。
しかし、特許文献1の巻き簀は、シリコーンゴムが柔らかいため、巻き寿司等を巻いたり形を整えたりする際、食材を押さえる手加減が難しい。そうすると、例えば、強く巻き過ぎて、ご飯粒が不必要に潰れてしまったり、或いは、軽く巻き過ぎて、箸などでとった際に形が崩れてしまったりする等の事態が生じ易い。さらに、骨材は柔らかなシリコーンゴムの薄肉部で連結されているため、その薄肉部が早期に切断してしまう虞もある。
そこで、出願人は、特許文献2に示す巻き簀を提案した。特許文献2の巻き簀は、骨部を挟むように糸材部を編むことで複数の骨部同士を連結させる編み糸部を備え、骨部は少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、編み糸部は化学繊維からなるモノフィラメントでなっている。
この巻き簀は、特許文献1のように樹脂で巻き簀全体を一体成形するのではなく、糸材部を編むことで複数の骨部同士を連結させるため、硬い骨部を用いても、丸め易い巻き簀を作ることができる。そこで、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有する材料で骨部を形成し、これにより、丸め易くも強度的に優れた巻き簀を作ると共に、食材を巻いたり整えたりする際、食材を押さえる力が調理人の手に伝わり易く、手加減が容易に分かる巻き簀を作ることができる。
そして、この編み糸部となるモノフィラメントは、化学繊維の単糸状なので、撚り糸状等のマルチフィラメントに比べて特段に汚れが付着し難く、かつ、水分も吸収しないので、洗浄・乾燥が非常に容易で、内部のカビや細菌の発生を抑制できるなどの大きな利点を有する。
また、骨部もプラスチック材等であるため、水分・汚れ等が吸収され難く、洗浄や乾燥も容易であって、カビや細菌の発生も抑制でき、さらに、竹材のようにササクレも生じない。
かくして、特許文献2の巻き簀は、巻き易く、かつ、衛生的であり、さらに食材を押さえる手加減が容易に分かる丈夫な巻き簀を実現している。
特開2004−201662号公報 国際公開第2014/050176号パンフレット
ところで、特許文献2の巻き簀については、化学繊維のモノフィラメントを用いて骨部を挟むように編んで形成し、従来にはない巻き簀を作った結果、様々な新たなる課題を伴うことになった。
先ず、特許文献2の巻き簀では、編み糸部の先端が棘のように手に接触して作業の邪魔になるため、その図15〜図19に示すように、編み糸部の先端部を巻く方向の端部にある端末骨部に埋設している。また、化学繊維のモノフィラメントの多くは比較的硬いプラスチックであり滑り易いため、骨部が編み糸部から横抜けする虞があり、このため、特許文献2の図8〜図13等に示すように、編み糸部と係止することで、編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を形成している。このように、特許文献2の巻き簀では、編み糸部の端部を端末骨部に埋設したり、糸規制部を形成したりする必要が生じ、その製造に手間がかかっている〔問題1〕。
次に、特許文献2の巻き簀については、出願人の調査の結果、一般的な使用状態では十分に丈夫な巻き簀であるが、一人の作業者が1日に何百もの大量の海苔巻き等の巻物作業を行う食品工場などでは、編み糸部が比較的早期に切断する場合のあることも分かった。そこで、研究の結果、出願人は以下の切断原因をつきとめた。
即ち、巻物作業では、巻き簀を概ね丸めた後に、作業者は巻き締めと呼ばれる動作を行う(ここでは「巻き締め動作」を「締め作業」と呼ぶ。本願の図1(B)参照)。この締め作業は、瞬間的な急激的加圧動作であり、巻き簀の折り返される部分付近の骨部(例えば本願図1(B)の符号TGで示す部分)が作業者の指先により巻物を円形にする方向に強く押し込まれる。このため、該押し込まれる骨部近辺の編み糸部に大きな部分的引張り力が作用する。しかも、同一作業者の正確な作業の繰り返しにより、締め作業時の加圧位置が毎回ほぼ同一となるため、骨部の角部形状に沿った編み糸部のほぼ同一部分に毎回局部的な引張・曲げ・圧縮応力等が作用し(例えば、本願の図1(B)の指FGで押さえ込んでいる骨部TG、及びこれに隣接する骨部TG1付近の縦断面図である図2に示すように、骨部TGにF方向の力が加わると、骨部TGと骨部TG1との間、及びこれに隣接する骨部TG,TG1の角部付近における編み糸部14の寸法L2が寸法L3に伸長しようとして、PN部分の編み糸部14に引張や曲げや圧縮応力が発生し)、やがてこれらの加圧部分にダメージが蓄積して、編み糸部の早期の切断を招く原因となることが分かった〔問題2〕。
さらに、骨部には巻き締め力を伝達するため比較的硬度の高いプラスチック等が採用され、また、編み糸部も硬度の高い化学繊維のモノフィラメントが採用され、それぞれ緩衝性に乏しい硬いもの同士が接触している。また、作業者は作業の短縮化から、巻き簀表面に付着した食材を作業台に叩いて取り払う習慣もある。そのため、緩衝性のない編み糸部は、この食材を叩いて取り払う際の衝撃や、巻物作業時等における緩衝性のない骨部との衝突ないし擦れにより傷つき、この傷が起因して編み糸部の早期切断を招くことも分かった〔問題3〕。
次に、出願人の調査の結果、作業台によっては、特許文献2の巻き簀は滑り易く、これにより作業性が低下する場合があることも分かった〔問題4〕。
これは、特許文献2の編み糸部は、骨部の上下を挟むように編まれ、かつ、硬度の高いモノフィラメントからなっており、巻物作業時において、編み糸部が絶えず作業台に接触すると共に、従来の綿糸の撚り糸を編み糸部としたものと比較して、硬く変形しにくい編み糸部の摩擦力が小さいためである。
本願発明は、モノフィラメントからなる糸材部を編むことで複数の骨部同士を連結させる巻き簀において、製造が容易であり、かつ、使用頻度の高い環境下であっても、編み糸部が切断される恐れを防止し、さらに、作業性のよい巻き簀を提供することを目的とする。
上記課題は、食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、前記骨部を挟むように糸材部を編むことで前記複数の骨部同士を連結させる編み糸部とを備え、前記骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では第1及び第2の糸材部からなり、これらの糸材部は前記骨部同士の間で互いに交差しながら編まれており、前記第1及び第2の糸材部は、弾性糸からなるモノフィラメントであり、前記弾性糸は、海苔巻き・巻き寿司・伊達巻き等の巻物の食材を指で押さえながら一方の端部を巻き込まないように把持して持ち上げ前記食材を丸める巻き作業の時には略伸長しないのに対して、前記巻き作業の後に前記指で所定の骨部を前記食材の中心に向かって押さえ込んで行う前記食材を締める締め作業の時に伸長するようにした弾性を有するとともに、ゴム弾性の性質を有するエラストマー樹脂からなり、前記エラストマー樹脂は、前記締め作業の時において引張破断伸度が100%以上、100%モジュラスが3MPa以上の特性を有することを特徴とする巻き簀により解決される。
本発明の巻き簀によれば、食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、骨部を挟むように糸材部を編むことで複数の骨部同士を連結させる編み糸部とを備え、骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では第1及び第2の糸材部からなり、これらの糸材部は骨部同士の間で互いに交差しながら編まれている。従って、巻き簀は、糸状である糸材部を編んで骨部を連結させるため、古来の巻き簀と同様に硬い骨部であっても丸め易い構造とすることができ、そして、骨部にはシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材を採用しているため、衛生的で、かつ、食材を押さえる手加減が容易に分かり、より美味しい巻き寿司等を作ることができる。
しかも、編み糸部はモノフィラメント(釣り糸のような中実一本の単糸)なので、例えば撚り糸状のマルチフィラメントに比べて、非常に汚れが付着し難く、乾燥が容易であるなどの大きな利点があり、衛生管理上、格段に優れた巻き簀を形成できる。
さらに、編み糸部を構成する糸材部は、単なる釣り糸のようなプラスチックのモノフィラメントではなく、特に弾性糸からなるモノフィラメントとされており、例えばゴム弾性の性質を有するモノフィラメントであるのが好ましい。
そうすると、弾性糸は、そのゴム弾性の性質により変形が比較的容易であるため、例えばゴム紐のように、編み糸部の先端が手に接触しても、棘のように刺して作業の邪魔になる虞がなく、その意味では、編み糸部の先端部を巻く方向の端部にある端末骨部に埋設する必要性はない。また、編み糸部がゴム弾性を有する弾性糸であると骨部とのグリップ力が増し、骨部が横抜けする虞も低減されるため、編み糸部が通る糸道を規制するための糸規制部を形成する必要性も少なくなる。従って、巻き簀の製造が容易になる(上記問題1の解決)。
しかも、上記問題2のように糸材部に局部的に応力が頻繁に加わっても、糸材部自身が弾性変形することで、作用する応力を緩和できる。従って、編み糸部のダメージの蓄積を防止して、編み糸部の耐久性を向上することができる(上記問題2の解決)。
また、糸材部は、作業台に衝突したり、比較的高い硬度の骨部と衝突したとしても、ゴム弾性を有するため、衝突時の衝撃を緩和して容易に傷つくことを防止できる(上記問題3の解決)。
なお、上記問題2及び3の解決には、編み糸部を撚り糸などのようにして緩衝性を高める方法もあるが、撚り糸等のマルチフィラメントにすると、フィラメント間に水分が侵入して乾燥しづらく不衛生となる虞がある。あるいは、骨部の方を軟質な樹脂材にして緩衝性を持たせる方法もあるが、骨部自体の剛性が低下して締め作業時の圧力が巻物に伝わりにくく、巻物作業の作業性を低下させる虞がある。従って、編み糸部を構成する第1及び第2の糸材部を弾性糸からなるモノフィラメントにすることが最も好ましい。
さらに、骨部を上下から挟み込む第1及び第2の糸材部がゴム弾性を有するため、グリップ力が大きくなり、巻物作業中の作業台等との滑りやすさを抑制して作業性を向上できる(上記問題4の解決)。
さらに、上述のように、編み糸部が弾性糸であることで、巻き簀を洗浄する際、食材の残りや異物が最も洗浄しにくい骨部同士の間に挟まっていたり、その間に面する側面に付着したりしていても、骨部同士の間隔を拡げて容易に洗浄することができ、これにより、衛生性に優れた巻き簀を提供することができる。この衛生性の効果は編み糸部を弾性糸にしたことにより副次的に発生した効果であり、編み糸部を弾性糸にすることで、上述のようにいくつもの優れた効果を同時に発揮することができる。
み糸部は、巻き作業(食材が置かれた巻き簀を軽く二つ折りにして、食材を大まかに丸める作業)の時には略伸長しないため、骨部同士の間隔が拡がって作業がしづらくなる事態を防止できる。例えば、骨部同士の間隔が大きく拡がってしまうと、食材を大まかに丸める感触を得られ難くなるだけでなく、締め作業時に食材を覆う骨部の本数が減り(或いは、該減った本数が編み糸部のゴム弾性により所要の本数に戻ったとしても、食材を骨部の間に挟んでしまい)、所望する巻物の形状にまとめ難くなるが、そのような事態を防止できる。
これに対して、編み糸部は、巻き作業の後に行う食材を締める締め作業時の加圧に対応して伸長するようになっている。従って、巻物を円形に整える締め作業時、所定の骨部を指で強く押し込むことによる加圧で、編み糸部に対して強い力が局所的に加わっても、編み糸部はその弾性により加圧力に対応した伸度で伸長するため、その際に発生する編み糸部への局部的な応力を有効に緩和して、編み糸部の切断の虞を防止することができ、さらに、締め作業後に加圧が解除されれば、その弾性によって元の状態に復帰する。
なお、この締め作業時には、概略指で押し込む骨部とその一つ外側の骨部との間の編み糸部と、これら骨部の上下面に接触した部分の編み糸部とが主体的に伸びることになるが、この部分の編み糸部の伸長は、食材を覆って締める領域から外れるため締め作業には関係がないので、使用感に与える影響は少ないことも分かった。そして、締め作業中に食材を覆っている領域の編み糸部は、例えば円形以外に積極変形させようとする巻物作業以外には、そもそも伸びることは殆どない。
かくして、巻き作業時と締め作業時の双方において、問題のない巻き簀を提供することができる。
ラストマー樹脂としては、例えば、その弾性特性が、引張試験における100%モジュラスが3MPa以上の特性を有するエラストマー樹脂からなるのが好ましい。
この100%モジュラスとは、モノフィラメントの弾性特性を示すもので、編み糸部の100%伸度時の引張応力であり、実験の結果、その値が引張試験で3MPa未満であると少ない力で伸び易くなって、食材の形を整える締め作業時において、骨部同士の連結が弱まってその間隔が拡がり過ぎて、指で押し込まれる骨部が糸の支持を失い、相当に曲がってしまうことが分かった。このように骨部が曲がり易くなると、食材の一部分だけを押し込んでしまう等、締め作業の支障に繋がる。
そこで、編み糸部の弾性特性について、引張試験における100%モジュラスを3MPa以上にすることで、締め作業時における骨部同士の間隔の相当な拡がりを抑制して、上述した作業への支障を回避できる。また、このように締め作業において骨部同士の間隔の相当の拡がりを抑制できる100%モジュラスの特性であれば、締め作業前の巻き作業において、骨部同士の間隔も略拡がることがない。このようにして、従来の巻き簀を使用するのと違和感がないものにでき、さらに、洗浄時や使用の繰り返しでも骨部同士の連結力を高い状態で維持できるので、編み糸部から骨部が容易に抜け出すことも防止できる。
ラストマー樹脂は、その引張破断伸度が100%以上であるため、締め作業時において、編み糸部の伸長に伴う安全率が不足して早期に破断する虞を効果的に防止できる。即ち、締め作業中に指先で局所的に押圧された骨部の近くの編み糸部については、局所的に100%程度伸びる可能性がある。そこで、引張破断伸度が100%以上のエラストマー樹脂によるモノフィラメントとすることで、締め作業時における編み糸部の破断を有効に防止できる。また、エラストマー樹脂は、締め作業時において、100%モジュラスが3MPa以上の特性を有するため、締め作業時における骨部同士の間隔の相当な拡がりを抑制することができる。

さらに、前記エラストマー樹脂は、JIS−A硬度70〜100若しくはJIS−D硬度30〜80のゴム硬度を有する熱可塑性エラストマー樹脂であるのが好ましい(上記JIS硬度は、JISK6253のデュロメータタイプA硬度、同じくタイプD硬度による。)。
即ち、このJIS−A硬度及びJIS−D硬度の範囲については、概説すれば、例えば低硬度ゴム等に比べれば硬いのに対して、通常のプラスチックに比べれば柔らかいという特性を有する。そうすると、編み糸部は巻き簀にとっては硬すぎず、所要のゴム変形量によりグリップ力を確保して、作業台等との滑りやすさを有効に抑制でき、また、作業台等の他の物品に衝突したり、第1の糸材部と第2の糸材部とが衝突したりしても、その衝撃を有効に緩和して、編み糸部の損傷を防止できる。また、編み糸部は低硬度すぎると上記所要の弾性特性が得られなくなる他、例えば作業台上に接する編み糸部が軟らかすぎて、作業台上で巻き簀が余りにも滑らなくなり過ぎて作業に支障を来す虞があり、編み糸部が高硬度すぎればプラスチックのモノフィラメントによる上述の諸問題を誘発する虞があり、上記所要の硬度範囲であれば、そのような好ましくない諸問題に至る虞を防止して、良好な使用感を得ることができる。
しかも、このようなJIS−A硬度又はJIS−D硬度を有する熱可塑性エラストマー樹脂であれば、押出成形により単線状のモノフィラメントを容易に形成することもできる。
なお、上述のようなエラストマー樹脂には、例えば、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、等のエラストマー樹脂を好適に用いることができる。これらのエラストマー樹脂を利用すれば、上述した種々の物性値を得るなどして、所要の機械的強度に優れると共に、耐衝撃性と耐摩耗性に優れた特性を併せ持つエラストマーからなるモノフィラメントを形成することができる。従って、上述のようにゴム弾性と柔軟性を有しつつも、容易に切断に至ることのない弾性糸を形成することができる。
以上、本発明によれば、モノフィラメントからなる糸材部を編むことで複数の骨部同士を連結させる巻き簀において、製造が容易であり、かつ、使用頻度の高い環境下であっても、編み糸部が切断される恐れを防止し、さらに、職人の高度な作業性に応じた作業性のよい巻き簀を提供することができる。
巻き簀の使用状態を示す図であり、図1(A)は巻き作業を、図1(B)は締め作業を行っている図。 図1(B)の指で押さえ込んでいる骨部、及びこれに隣接する骨部付近の縦断面図。 本発明の実施形態に係る巻き簀であり、図3(a)はその上面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図。 図3(a)のB−B断面図。 図3の編み糸部のVa部分の拡大斜視図。 本発明の実施形態の第1変形例に係る巻き簀における一本の骨部であり、図6(a)はその上面図、図6(b)は図6(a)のC−C断面図。 本発明の実施形態の第2変形例に係る巻き簀の上面図。 図7の巻き簀の端末骨部付近の下面側の部分拡大斜視図。
本発明の好ましい実施形態を詳しく説明する前に、本発明の巻き簀についての理解を深めるため、先ず、巻き簀の使用態様について図1を用いて説明する。
図1は、巻き簀92の使用状態を示す図面であり、具体的には、後述する実施形態の第2変形例に対応した巻き簀92を用いて、巻き作業と締め作業を行っている図である(但し、後述の糸規制部、凹凸模様、及び骨部の一部は不図示)。
この巻き簀92は、海苔巻き・巻き寿司・伊達巻き・カリフォルニアロール等の巻物と呼ばれる食べ物の手巻き作業に使用される調理用具であり、これを利用した巻物の調理工程は、一般的な調理工程と変わる点はなく、以下のように作業を段階に分けて説明することができきる。
例えば、巻き寿司を調理する場合、大まかには、図示していない準備作業、図1(A)に示す巻き作業、及び図1(B)に示す締め作業の順に作業が行われる。
準備作業は、図示していないが、巻き簀の上に食材を置く作業であり、先ず略平坦な作業台の上に巻き簀を広げ置き、その巻き簀の中央領域上に海苔を広げ置く。その後、該海苔の上に酢飯を平らに広げて置き、さらに、その酢飯の上にかんぴょうなどの具材を置いて巻く準備をする。
次いで、図1(A)に示すように巻き作業を行う。巻き作業は準備工程で巻き簀92の上に置いた食材MTを大まかに丸める作業である。即ち、食材MTが巻き簀92から離れないように中指等で軽く押えながら、巻き簀92の骨部12が並べられた方向Yの一方の端部92aを巻き込まないように把持して持ち上げ、食材MTをロール状に転がしながら、図1(A)の一点鎖線で示すように、該一方の端部92aを他方の端部92bの側に近づけて置く。このように巻き作業は、食材MTを丸めるというよりも軽く二つ折りにするかのような感覚を持って行う作業である。
次いで、図1(B)に示すように締め作業を行う。締め作業は巻き作業で大まかに丸めた食材MTの形を整えて、食材MTがバラバラにならないように固める作業であり、指FGで所定の骨部TGを食材MTの略中心に向かって押え込んで行う。この締め作業により初めて食材MTは所望の丸められた形状になるため、締め作業を巻き締め作業とも呼ぶことができる。
そして、巻き簀92を広げれば巻き寿司は完成する。なお、海苔巻き・伊達巻き・カリフォルニアロール等について、食材や若干の力の入れ具合の違いはあれ、その作業工程は巻き寿司と概ね同じである。
巻き簀の使用態様は上述の通りであり、次に、本発明の好ましい実施形態を図3〜図5を参照して詳しく説明する。
図3は本発明の実施形態に係る巻き簀10であり、図3(a)はその上面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図、図4は図3(a)のB−B断面図、図5は図3の編み糸部14のVa部分の拡大斜視図である。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
また、以下の図において、同一の符号を付した箇所は同様の構成である。
また、以下に説明する上面と下面との関係は、特段の言及がない限り、相対的な位置関係を示す便宜的な説明であり、例えば下面を上側に露出させて置けば上面となる。
また、以下の図のXYZで示す矢印方向は3次元方向を示し、互いに直交している。
図3〜図5の巻き簀10は、上述のように巻物の手巻き作業に使用される調理用具であり、巻き簾、巻きすだれ等とも呼ばれ、全体がすだれ状に形成され、複数の骨部12と複数の編み糸部14を有している。
骨部12は、一般的な竹材の巻き簀における竹ひごと同様の機能を有する部材であり、長い棒状であって、その長手方向Xの両端を揃えるようにして、食材を巻く方向Yに複数並べられている。なお、骨部12同士の間には所要の隙間S1が設けられており、この隙間S1毎に、骨部12は隣接する骨部12に対して上下方向に回転する角度を付け、これにより巻き簀10を巻くことができる。
この骨部12は少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度と剛性を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成されている。
プラスチック材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ABS(アクリルニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ジュラコン等のプラスチック樹脂が利用でき、曲げ剛性と耐熱性に優れた熱可塑性樹脂であることが好ましい。その他のプラスチックとして、ポリエステル、エポキシ樹脂等による繊維強化プラスチック(FRP)が使用できる。これらの樹脂により、中実または中空のパイプ状に形成して使用できる。
金属材としては、アルミ、ステンレス、チタン等の耐腐食性に優れた金属合金が好ましく、重量の関係から中空のパイプ状に形成して使用するのがよい。
なお、巻き簀10は、プラスチック材及び/又は金属材による複数の異なる材料からなる複数の骨部12を適宜に組み合わせて構成してもよい。この場合には、例えば、相対的に剛性の高い金属材と剛性の低いプラスチック材による骨部を組合せることで、全体として軽量で曲げ剛性に優れた巻き易い巻き簀が得られる。
より好ましくは、骨部12には金属材よりも硬度の低いプラスチック材が利用され、これにより、編み糸部14に対して可及的に柔らかく接することができる。
骨部12の各寸法や本数は巻物の用途に応じて決定すればよい。本実施形態の骨部12はポリプロピレン樹脂からなるプラスチック材で形成され、海苔巻き等に好適に使用できるように、例えば、幅W1が4〜6mm、高さ(厚さ)H1が3〜5mm、長さ(巻き簀10の幅に相当)L1が200〜300mmである。そして、巻き簀10は例えば20〜60本の骨部12を巻く方向Yに並べて構成される。なお、プラスチック製の骨部12は、長手方向Xの剛性を確保するため、幅W1に対する高さH1の比率を、竹製骨部の幅に対する高さの比率に比べて大きくしてもよい。
編み糸部14は、骨部12を介在させながら、巻き簀10の巻く方向Yに糸材部を編むことで、複数の骨部12同士を連結させており、巻く方向Yと直交する方向Xに所要の間隔(図3の場合は互いに等間隔)S2をあけながら、複数列に並べられている。
各編み糸部14は、竹製巻き簀における周知な編み方と同様である。具体的には、図3及び図4に示すように、1本の糸材部の中央付近を折り返し、この折り返し部分14cを巻く方向Yの一方の端に配置された端末骨部21に引っ掛けて、上下に分岐させている(端末骨部21は編み始め側となる)。これにより、骨部12を挟んでいる領域では(例えば上面10a及び下面10bを通る際は)、互いに分離した第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとなるように構成される。そして、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bは、折り返し部分14cを基点として、隣接する骨部12,12の間(つまり隙間S1)で、順次、上下方向Zに屈曲するように互いに交差しながら、いずれか一方が骨部12の上面に配置されている際は、いずれか他方がその同じ骨部12の下面に配置される。そして、巻く方向Yの他方の端に配置された端末骨部20(端末骨部20は編み終り側となる)の外側の端面部20aで、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとが結ばれて結び目16が形成されている。このようにして、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bで各骨部12の略全周を挟むようにして、複数の骨部12を連結している。
ここで、上記第1の糸材部14aと第2の糸材部14bを骨部12の隙間S1間で上下方向に交差させる際に、これら上下の糸材部14a,14bに1回転又は複数回転のねじりを加えることにより、骨部12の断面形状に倣って、より密接して糸材部14a,14bを沿わせることができるので、編み糸部14の骨部12への把持力が高められ、骨部14の抜け出しをより防止することができる。
本発明では図3と異なり、独立した2本の糸材部を用いて互いに分離した第1及び第2の糸材部14a,14bを構成し、両端の端末骨部20,21の両側に結び目16が形成されても構わない。しかし、巻き簀10を使用する際、結び目16やその先の余剰糸部49は邪魔になり易いため、図3及び図4に示すように、1本の糸材部で第1及び第2の糸材部14a,14bを構成し、結び目16や余剰糸部49を片側のみとするのが好ましい。
本実施形態の編み糸部14にはモノフィラメントが使用されている。モノフィラメントは、複数の糸材部を撚り合せた撚り糸ではなく、図5に示すように、一本単独に形成された単糸(丸紐)であるため、とりわけ乾燥時間が早く、これにより、細菌等の繁殖を抑制し、衛生性に最も優れた巻き簀を得ることができる。図5の丸紐状の糸状体であるモノフィラメントは、編んだ時に生ずる骨部12同士の間隔S1を考慮すれば、その直径d1を約1mm以下とするのがよいが、その他、後述する硬度や弾性、強度、耐久性等を考慮すれば、約0.4〜1.2mmの範囲で採用可能であり、好ましくは約0.6〜1.0mmの範囲が好ましい。直径が細すぎるとモノフィラメントの強度が不足し耐久性が低下する。また、太すぎる直径の編み糸部で編むと骨部12同士の間隔が拡がりすぎて巻き締め作業に影響するからである。また、編み糸部の洗浄性と製作の容易性からその横断面形状が円形のものを用いるとよい(本実施形態の直径d1には約0.8mmの円形状を採用)。
ここで、編み糸部14(第1及び第2の糸材部14a,14b)は弾性糸からなるモノフィラメントとされており、例えばゴム弾性の性質を有するエラストマーから形成されている。そうすると、弾性糸は、その弾性変形が可能であるため、局部的に応力が頻繁に加わっても、編み糸部14自身が弾性変形することで、作用する応力を緩和できる。また、編み糸部14は、図3及び図4の骨部12の上下に位置する部分が作業台と接触した際に、弾性変形によりグリップ力を効果的に発揮し、巻き簀10の滑りを防止して作業性を向上させることもできる。
本発明の編み糸部14を形成するエラストマーには、比較的ゴム弾性の性質を有する材料であれば如何なる材料も使用できるが、エラストマーは成形上の特性から熱硬化性エラストマーまたは熱可塑性エラストマーに大別される。
熱硬化性エラストマーとしては天然ゴム、合成ゴム等の加硫ゴムのほか、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、等の熱可塑性エラストマーが挙げられ、本発明ではこれら何れのエラストマーも採用可能である。
成形性の観点からは熱可塑性エラストマーによるモノフィラメントが好ましい。熱可塑性エラストマーは例えば加熱による押出加工により、連続的で能率よく容易にエラストマーからなるモノフィラメントを成形できるためである。
熱可塑性エラストマーはゴム弾性を有し機械的強度等に優れたエラストマーであり、その中でも、ポリウレタン系エラストマー樹脂、ポリアミド系エラストマー樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂等の熱可塑性エラストマー樹脂は、耐久性に優れたゴム弾性と柔軟性を有しており、耐熱性にも優れ煮沸消毒も可能であるなど、硬度、性能等の特性種類が豊富で多様な特性のモノフィラメントの成形が可能であるため、好適に採用できる。
例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂は特に機械的強度と伸縮性に優れるため、当該樹脂によるモノフィラメントを編み糸部14として採用すれば、締め作業時(図1(B)参照)における局部的な応力に対して、自身の弾性変形によって応力を緩和して、編み糸部14の耐久性を向上させ、早期の切断を防止できる。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂は耐衝撃強度が高いため、比較的硬度の高い骨部12に接する状態で使用されたとしても、取り扱い中に加わる衝撃に対して容易に傷つくことがなくなり、編み糸部14の耐久性を向上できる。
さらに、熱可塑性ポリウレタン樹脂は耐摩耗性が非常に優れる樹脂であるため、図4の隙間S1で交差する第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとが擦れ合ったり、これら第1及び第2の糸材部14a,14bと作業台とが擦れ合ったりしても、その摩耗を低減して耐久性に優れた編み糸部14を提供することができる。
この点、ゴム弾性の特性として、そのゴム硬度が小さいと柔軟性が高まるため、ゴム硬度が小さすぎるエラストマーのモノフィラメントを編み糸部14に採用すると、骨部12同士の連結力が弱まって巻き簀全体が伸び易くなり、巻き作業時(巻き簀10を概ね丸める作業時)に骨部12同士の間隔(隙間S1)が拡がって、食材が挟まる事態を招いたり、作業がしづらくなる虞がある(例えば、食材を丸めることも難しいが、それだけではなく、巻き作業時に骨部12同士の間隔S1が開いてしまうと、締め作業時に食材を覆う骨部12の本数が減るなどして、形を整えたり食材を固めたりし難くなる)。
逆に、ゴム硬度が大きすぎる場合には、プラスチックの性質に近づくため、骨部12同士の連結力が強く、巻き簀全体としては確りとしているが、上述の編み糸部14に作用する局部的な応力を緩和する効果が得られなくなり、特に、巻き作業時の後に行う締め作業時において、応力緩和の効果が得られないと、高頻度の作業によって早期の切断に繋がる虞がある。
このような巻き作業から締め作業までの一連の作業の流れに鑑みると、編み糸部14は、巻物の食材を大まかに丸める巻き作業時には略伸長しないが、その後に行う締め作業時の局部的な加圧に対応して伸長するようにした弾性を有するのが好ましい(なお、本実施形態にいう「略伸長しない」とは、多少の伸長は許容するものだが、巻き作業時に、巻き簀10が全体として、骨部12の1本分の幅寸法W1を超えるような伸長はしないことを意味する)
このように、編み糸部14は、破断防止という観点からだけで言えば、締め作業時にいくら伸びても構わないことになるが、より好ましくは、一本当たりの編み糸部14は、引張試験における100%モジュラスが3MPa以上の特性を有するエラストマー樹脂がよい。即ち、100%モジュラスは、編み糸部14の100%伸度時の引張応力であり、実験の結果、その値が3MPa未満であると少ない力で伸び易くなって、食材の形を整える締め作業時において、局部的に骨部12同士の間隔S1が拡がり過ぎて(編み糸部14の支持力が小さくなり過ぎて)、指で押し込まれるプラスチック製の骨部12が締め作業に看過できないような支障をきたす曲がりになってしまうことがあった。しかし、実験により、編み糸部14の100%モジュラスを3MPa以上にすることで、締め作業時における骨部12同士の間隔S1の該相当な拡がりを抑制することができた。なお、締め作業において骨部12同士の間隔S1の相当の拡がりを抑制できる100%モジュラスであれば、巻き作業においても、編み糸部14は略伸びることがない。
なお、上記実験は図1に示す巻き簀(図7の第2変形例に係る巻き簀)92を用いて行った。即ち、骨部12としてポリプロピレン樹脂製で、長さLが約250mmであって、重量が約4.7gの骨部12を40本(図1では複数本を省略して図示)、及び約9gの骨部64を1本、巻く方向Yに並べ、そして、骨部12の長手方向Xに互いに等間隔となるように5列のエラストマーからなる編み糸部14を配列させた形態の巻き簀を用いた。
編み糸部14はポリウレタン樹脂製であり、断面直径が約0.8mm(断面積約0.5mm)の円形状のモノフィラメントである。実験に使用する巻き簀はAとBの2種類のモノフィラメントを編み糸部14として採用した巻き簀Aと巻き簀Bとを用意した。巻き簀Aでは、ゴム硬度が70A、100%モジュラスが3MPa、引張破断伸度が700%のモノフィラメントAを使用した。また、巻き簀Bでは、ゴム硬度が95A、100%モジュラスが12MPa、引張破断伸度が450%のモノフィラメントBを使用した。これらA,Bのモノフィラメントを使用した巻き簀A,Bは、何れも約1〜3Nの張力を付与して編まれたものである。
そして、これらの巻き簀A,Bの重量はそれぞれ略200gであり、この巻き簀A及びBに対して、約400gの食材(海苔とご飯)を平らに置いて、巻き作業から締め作業までを行った。
ここで、実験に使用する巻き簀A,Bについて、巻き簀の一端部(図1の骨部92a又は骨部92b)を把持して全体を持ち上げたり振ったりしても、骨部同士の間隔(図3のS1)が開くこともなく、巻き簀A,Bとも編み糸部による骨部の連結力は取り扱い上問題のない強度を有していた。また、巻き簀の両端部(図1の骨部92a,92b)を把持して両側に引っ張ると、巻き簀Aは比較的軽い力で、また巻き簀Bは強めの力で伸長して骨部同士の間隔が拡がるが、両者とも力を緩めれば元に戻るため、取り扱い上問題となる違和感はなかった。むしろ、骨部間に異物が挟まったときに、これの除去がし易く、また、骨部間の洗浄が容易に行えることが分かった。
また、巻き簀の両端部を把持して、全体を巻く方向Yの方向に約5cm(約20%の伸度として)引っ張ると、上下の糸材部が10本で構成されることから、巻き簀A(100%モジュラスが3MPaのもの)では約3Nの引張力が、巻き簀B(100%モジュラスが12MPaのもの)では約12Nの引張力が、それぞれ必要であった。この時、巻き簀A,Bとも、骨部同士の間隔が約1mmであったものが、約2mmへと拡がり、まさにスプリング状に伸び縮みする巻き簀であった(なお、全体20%の伸度で骨部同士の間隔が倍になったのは、骨部の上下面に接触した部分の編み糸部が余り伸長しなかったためと思われる)。そして、巻き簀A,Bとも容易に引っ張れる範囲のスプリング強度であるが、特に巻き簀Aについてのスプリング力については弱めで頼りなく感じられ、この辺りが作業に支障を及ぼさない程度の限界のスプリング力かと感じられた。また、巻き簀Bについては、かなり確りとしたスプリング力であり、全く違和感のない巻き簀であった。そのため、モノフィラメントの100%モジュラスは少なくとも3MPa以上あるのが好ましいと感じられた。
そして、実際に上記巻き簀A,Bを使用して海苔巻きの調理作業を行ったところ、まず、巻き簀の上に具材を置く作業となる準備作業において、巻き簀A,Bについて一切の違和感と問題もなく行うことができた。
次に、巻き作業を行った。巻き作業は準備工程で巻き簀の上に置いた食材を大まかに丸める作業であり、食材が巻き簀から離れないように中指等で軽く押えながら、巻き簀の一方の端部(図1の骨部92a)を把持して持ち上げ、他方の端部(図1の骨部92b)の側に近づけ、食材を転がしながら丸めて見たが、巻き簀A,Bについて一切の違和感と問題もなく行うことができた。
次いで、締め作業を行った。締め作業は巻き作業で大まかに丸めた食材の形を整えて、食材がバラバラにならないように固める作業であり、左右の手の人差し指、中指、薬指の6本の指先で(図1(B)参照)所定の骨部を食材の巻く方向に強く押し込み、また、全体を押え込んでロール状に整形したところ、巻き簀A,Bとも問題なくおいしそうな海苔巻きが整形できた。
ここで、左右の指先で食材を巻く方向に骨部を強く押し込む締め作業において、指先で押し込まれる骨部(図1の骨部TG)と、その隣の骨部(図1の骨部TG1)との間隔が局部的に開くことを確認した(図2参照)。巻き簀Aでの最大の開き(図2のL3−L2)はおよそ6mmの開きであった。また、巻き簀Bでの最大の開きはおよそ3mmであった(最大の開き(図2のL3−L2)は、骨部同士の間隔部分とこれに隣接する骨部の角部付近における編み糸部の伸びに相当)。この際、骨部の間隔が開くことに見た目の違和感を感じはしたが、締め作業に影響するものではないことが確認でき、良好な海苔巻きを完成した。
但し、巻き簀Aについては、締め作業時に開く骨部間隔が大きく(これはモノフィラメントAの100%モジュラス値が小さいことに起因する)、また、押し込まれる骨部(図1の骨部TG)が大きく湾曲変形することから、編み糸部の伸長の限界を感じるものであった。また、この際、巻き簀Aのモノフィラメントは局部的に100%以上伸長していることが認識され、モノフィラメントの破断伸度は100%以上必要であることが認識された。
次に、巻き簀A,Bを使用して同様にして海苔巻きを何回か巻いてみたところ、巻き簀の骨部表面に細かい海苔粉が付着しているのが観察できた。そして、この細かい海苔粉は、骨部の側面やモノフィラメントにも付着しているのが観察された。そのため、ブラシを使用して水洗してみたが、特に骨部の側面に付着した海苔粉は十分取り切れていないことが確認された。そのため、巻き簀の両端部を引っ張るなどして骨部同士の間隔を拡げて洗浄したところ、目視で判断できる海苔粉を全て取り去ることができ、衛生性に優れる巻き簀であると感じられた。
また、上記の実験は、ポリエチレン製のまな板の上で巻物作業を行ったのであるが、特にポリエチレンは滑りやすいプラスチックであっても、実験に使用した巻き簀A、Bとも、まな板上で滑ることなく、巻き締め作業が一瞬で完了でき、非常に使いやすい巻き簀であった。さらに、硬いプラスチックのまな板上での巻き作業であるが、適度なクッション性が感じられ、作業者への手首への負担を軽減する可能性を感じるものであった。
一方、以上の実験からも、このような弾性特性を有するエラストマー樹脂については、引張破断伸度が100%以上の特性を有するのが好ましい。そうすると、図1(B)に示す締め作業時における編み糸部14の伸長に伴う安全率が不足して早期に破断する事態を効果的に防止できる。即ち、例えば、100%モジュラスが3MPaである編み糸部14が本実施形態のように5列に配列された場合であっても、図1(B)、図2に示すように、締め作業時では指先FGで局所的に骨部TGを押圧するため、編み糸部14のうち押圧された骨部TGの近くの部分だけが100%以上伸びる可能性がある。そこで、1本当たりの編み糸部14の引張破断伸度を少なくとも100%以上とすることで、締め作業時における編み糸部14の破断を有効に防止できる。さらなる安全率を考慮すれば、少なくとも200%以上の引張破断伸度を有するモノフィラメントであるのがより好ましい。
また、以上の実験からも、巻き作業から締め作業までの一連の作業を考慮すれば、編み糸部14は100%モジュラスが3MPa以上であって、かつ、引張破断伸度が100%以上の特性を有すればよいが、締め作業により押し込まれる骨部(図1の骨部TG)の大きな変形、或いはまた、洗浄作業(例えばタワシを用いた巻き簀10にとって過酷の洗浄で編み糸部が不必要に伸びる可能性)などをさらに考慮すれば、編み糸部14は、その100%モジュラスが6MPa以上のモノフィラメントを用いるのがより好ましい。
さらに、編み糸部14については、巻き作業、締め作業、洗浄作業以外にも、滑り性・衝撃という要因を加味して、その特性を決めることが好ましい。
具体的には、編み糸部14は、JIS−A硬度が70〜100、又はJIS−D硬度が30〜80のゴム硬度を有する熱可塑性エラストマー樹脂を用いることができ、より好ましくは、JIS−A硬度が90〜100、又は、JIS−D硬度で40〜70のゴム硬度を有する熱可塑性エラストマー樹脂を用いるのがよい。この硬度を基準にすると、編み糸部の長さ方向だけはなく断面方向の硬度も考慮することができる。そこで、所要のゴム変形量によりグリップ力を確保して、作業台との滑りやすさを有効に抑制でき、また、作業台等の他の物品に衝突したり、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとが衝突したりしても、その衝撃を有効に緩和して、編み糸部14の損傷を防止できる。
しかも、このようなJIS−A硬度又はJIS−D硬度を有する熱可塑性エラストマーであれば、押出成形により単線状のモノフィラメントを容易に形成することもできる。
以上、実験結果及び巻き簀10の一連の動き、洗浄、作業台との滑り・衝撃、製造性を総合的に考察すれば、最も好ましい編み糸部14は、「引張試験における100%モジュラスが6MPa以上」「JIS−A硬度は90〜100、又は、JIS−D硬度で40〜70」「引張破断伸度が200%以上」である熱可塑性エラストマー樹脂を用いるのがよい。
さらに、本実施形態では、骨部12同士間における第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとが交差する位置の擦れ(図4参照)等も考慮して、摩耗減量が50mg以下(JIS−K7311−H22輪)であるポリウレタン樹脂を用いている。
また、本実施形態の場合、図4に示すように、少なくとも編み糸部14が通る糸道において、骨部12の上下面12c,12dと巻く方向Yの側面との境界12aを、所定の曲率半径r1を有する角丸形状にしている。これにより、骨部12と編み糸部14(第1及び第2の糸材部14a,14b)との接触個所に鋭角な部分が形成されることを防止して、編み糸部14が骨部12の角に局部的に擦れて損傷する恐れを防止できる。
なお、骨部12は、該境界12aを角丸形状としているが、上下面12c,12dは平坦面とされている。これにより、巻き簀10は上下両面とも全体的には略平面状とされ、両面ともに食材を載せての巻き作業が可能となる。
ところで、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとの間で骨部12が回転すると、骨部12と第1及び第2の糸材部14a,14bとの擦れにより、編み糸部14の損傷の虞(=切断の虞)が高まり、さらに、巻き終えて作業台上に巻き簀10を広げて置いたときに、各骨部12の向きを一様な平面状とすることもできない。このため、第1の糸材部14aと第2の糸材部14bとの間における骨部12の回転を防止するのが好ましい。
この回転を防止するためには、編み糸部14(第1及び第2の糸材部14a,14b)のグリップ力(ゴム変形量・弾性係数・摩擦係数)を高めるのがよく、その意味においては、編み糸部14を弾性糸とする意義は大きい。しかし、摩擦係数を高めるために編み糸部14の表面を粗くするのは、切断の虞を高めるために好ましくはない。そこで、摩擦係数については、少なくとも編み糸部14に比べて骨部12の方を大きくするとよい。本実施形態の骨部12の表面は、竹の表面のような円滑な表面ではなく粗面にして摩擦力を高めており、その表面の算術平均粗さ(Ra)を1〜100μmとしている。
なお、骨部12については、編み糸部14が通る糸道、又はその糸道を含むその周辺(例えば図3の破線で囲った部分)ARを粗面にし、その他の表面の算術平均粗さを相対的に低くする円滑面にしてもよい。これにより、第1及び第2の糸材部14a,14b(図4参照)に挟まれた骨部12の回転を防止すると共に、食材の骨部12への付着も有効に防止できる。
本実施形態の巻き簀10は以上のように構成され、編み糸部14を構成する第1及び第2の糸材部14a,14bは、弾性糸からなるモノフィラメントであるため、局部的に応力が加わっても、その応力を緩和して、編み糸部14の耐久性を向上することができる。また、高い硬度の骨部12等と編み糸部14とが衝突しても、衝撃を緩和して容易に傷つくことを防止できる。また、編み糸部14はそのゴム弾性によりグリップ力が大きくなり、巻物作業中の作業台等との滑りやすさを抑制して作業性が向上できる。さらに、骨部同士の間隔を拡げて挟まった異物等を容易に除去したり、骨部側面を容易に洗浄することができる。
しかも、編み糸部14は、機械的強度に優れると共に耐衝撃性と耐摩耗性に優れた特性を併せ持つ例えばポリウレタン樹脂からなるエラストマーであるため、ゴム弾性と柔軟性を有しつつも、容易に切断に至ることのない弾性糸を形成することができる(編み糸部14には、ポリウレタン樹脂の他にも、例えばポリアミド樹脂を用いて、ポリウレタン樹脂と同様の特性を有するエラストマーを形成することもできる)。
そして、弾性糸からなる編み糸部14は、そのゴム弾性により変形が比較的容易であるため、編み糸部14の先端が棘のように手に接触して作業の邪魔になる虞が少なく、その意味では、編み糸部14の先端部を巻く方向Yの端部にある端末骨部に埋設する必要性はない。また、編み糸部14がゴム弾性を有すると、グリップ力が増して骨部12から横抜けする虞も低減されるため、糸道を規制するための糸規制部を形成する必要性も少なくなる。従って、巻き簀10の製造は容易になる。
なお、以上のように、本発明の巻き簀10は、編み糸部14の端部を埋設する骨部12を形成したり、骨部12に糸規制部を形成する必要性はかなり少なくなった。しかし、衛生面を向上させるという観点からは、編み糸部14の端部を骨部12に埋設するのは好ましく、また、横抜けする虞はなくなったが、骨部12の長手方向Xの両端を均一に揃え易くするという意味では、編み糸部14の糸道を規制することは、性能上より好ましい。
従って、本発明については、編み糸部14の端部を骨部12に埋設する構成態様、及び、骨部12に糸規制部を形成する構成態様を除外するものではない。
そこで、以下、これらの糸規制部等の構成態様を利用した第1変形例、及び第2変形例について、従来にはない特有な構成態様を含めて説明する。
〔第1変形例〕
図6は上述した実施形態の第1変形例に係る巻き簀90であって、その一本の骨部12のみを図示しており、図6(a)はその上面図、図6(b)は図6(a)のC−C断面図である。なお、二点鎖線で囲った図は、糸規制部37周辺の拡大図である。
この図の巻き簀90は、全体的にすだれ状である点や編み糸部14の構成などは図3〜図5と同様であり、図3〜図5の巻き簀10と異なるのは、糸規制部37が形成された点である。
即ち、骨部12は、その表面に、編み糸部14と係止することで、編み糸部14が通る糸道34を規制するための糸規制部37を有している。糸規制部37は、糸道34を規制して、編み糸部14の蛇行や骨部12の横抜けを防止したり、骨部12の長手方向Xの端面を均一に揃えたりするためのものである。
図6の場合、骨部12は、上面12cが全体的に略平坦であり、下面12dにのみ糸規制部37が形成されているが、本発明はこれに限られず、例えば、骨部12の上下面12c,12dに糸規制部37を形成してもよい。
図の糸規制部37は、二点鎖線で囲った図に示すように、編み糸部14が通る糸道34の周辺であって、骨部12の主面から突出した凸状部により構成されており、この凸状部に編み糸部14が係止することで、糸道34が規制される。このように糸規制部37を骨部12の表面の基準面(即ち、主面の概ねの領域)より高さが減じない凸状部とすることで、骨部12の厚さ(高さ)を必要最小限の設計値の高さで形成できる。すなわち、もし糸規制部37が骨部12の表面の巻く方向Yに沿った溝状部であると仮定すると、その溝状部に応力が集中して骨部12が折れ曲る虞が高まるため、強度確保の上から骨部12全体を厚く形成せざるを得ない。しかし、糸規制部37が凸状部であると、そのような応力集中はなく、所要の剛性を確保しつつ、骨部12の主面となる概ねの領域をより薄く形成できる。従って、巻き簀90全体を軽量にでき、また、締め作業時における骨部12の大きな曲がりを防止できる。
具体的には、糸規制部37は、骨部12の長手方向Xに並んだ2つの凸状部で糸道34(各列の編み糸部14に対応した領域)を挟み、これにより、編み糸部14の長手方向Xの動きを規制するように係止している。この糸規制部37に挟まれた糸道34は、全体的には略平坦であるが、上述したように所定の算術平均粗さを有する粗面とするのが好ましい。また、算術平均粗さについては、骨部12の糸道34以外の表面は糸道34の表面よりも小さいのが好ましい。
糸規制部37の高さH2については、編み糸部14の直径d1に比べて小さい。従って、編み糸部14は、骨部12の厚み方向Zについて、糸規制部(凸状部)37よりも外側に突出し、ゴム弾性のある編み糸部14と作業台とを接触させて、編み糸部14のグリップ力で巻き簀90の滑り易さを抑制して作業性を向上することができる。このようにグリップ力で巻き簀90の滑りを防止すると、編み糸部14は作業台と衝突又は擦れることになるが、図3〜図5で述べたJIS−A硬度やJIS−D硬度、及び摩耗減量を加味した編み糸部14を形成しているため、早期に破断・切断するようなことはない。
さらに、本変形例の場合、糸規制部37と同様に編み糸部14の直径d1に比べて低い凸状部を、骨部12の表面に平坦な糸道34を残すようにして多数形成し、骨部12の表面全体に細かな凹凸模様(ドット状、筋状、梨地状等の細かな模様で、エンボス模様、エッチング模様等とも言う)32を形成させている(図8を参照)。これにより、上面12cでは海苔巻き等を、下面12dでは飯粒の粘着防止効果を発揮させて、カリフォルニア巻等のライスが外側に配置される巻物を容易に作ることができる。
なお、本発明は本変形例に係る態様に限られるものではなく、糸規制部37、及び/又は凹凸模様32は骨部12の上面12cにも設けてもよく、或いは、複数の骨部12の限られた骨部だけに設けるようにしてもよい。また、例えば、上下面12c,12dに凹凸模様32がなく、糸規制部37だけを設けてもよい。
〔第2変形例〕
図7は上述した実施形態の第2変形例に係る巻き簀92の上面図、図8は巻き簀92の端末骨部64付近の下面側の部分拡大斜視図である。なお、図8の二点鎖線で囲った図は、糸規制部40を骨部12の長手方向Xで切断した場合の部分断面図である。
これらの図の巻き簀92は、図3〜図5の巻き簀と同様、食材を巻く方向Yに列設した複数の骨部12と、この骨部12を挟むように糸材部14a,14bを編むことで複数の骨部12同士を連結させる編み糸部14とを備えている。そして、骨部12や編み糸部14の物性は図3〜図5で既に説明した通りである。
これらの図の巻き簀92が、図3〜図6の巻き簀10,90と異なるのは、糸規制部40、及び端末骨部64の構成態様である。
先ず、糸規制部40から説明する。
図7及び図8に示すように、骨部12は全体的には略矩形状であるが、上下面12c,12dと側面12bとの境界(即ち角部)BHにおいて、糸道に対応した領域のみが窪んでおり、この窪んだ部分に編み糸部14が入るようにして糸規制部40が形成されている。この糸規制部40は、図8の二点鎖線で囲った図に示すように、その窪む方向であって骨部12の長手方向Xに沿った縦断面形状が略V字状とされている。換言すれば、糸規制部40の内側側面40b,40bは、内側底部40aに向かうに従って除々に近づくように傾斜している。これにより、上記第1変形例に係る糸規制部と同様、編み糸部14の通るべき糸道が外れないように糸道を規制でき、さらに、編み糸部14は内側底部40aに寄せられ、編み糸部14の位置が一定で、複数の骨部12をきれいに並べることができる。
この糸規制部40の内側底部40aは、長手方向Xの断面が鋭角ではなく、湾曲して丸みを帯びている。この内側底部40aの丸みを形成する曲率半径は、編み糸部14である糸材部の丸みを形成する曲率半径r3と同様であるのが好ましい。これにより、内側底部40aと編み糸部14との接触面積を増やして、糸規制部40内で編み糸部14が滑ることを防止できる。また、編み糸部14と接触する少なくとも内側底部40aの表面については、図3〜図5で説明した所定の算術平均粗さを有する粗面とし、この際、内側側面40bの表面については、内側底部40aに比べて算術平均粗さを低くした円滑面として、糸規制部40内の清掃を容易にしてもよい。
また、糸規制部40の内側底部40aについては、巻く方向Yの縦断面形状が丸みを帯びる曲面形状(角丸形状)とされている。
次に、端末骨部64について説明する。
第2変形例の巻き簀92については、編み糸部14の端部(例えば、結び目16、及びその先の余剰糸部49)は、複数の骨部12のうち巻く方向Yの端に配置される端末骨部64に埋設されている。これにより、当該端部の露出を防止して、巻き簀92は衛生面及び巻き易さの双方において、最も好ましい編み糸部14の端末処理が可能となる。
このような編み糸部14の端部を端末骨部64に埋設する方法の例として次のものがある。即ち、端末骨部64に編み糸部14の端部を巻き付けたり結んだりして接続し、該編み糸部14の端部を隠すように被覆部38を被せて、これら端末骨部64と被覆部38を加熱溶融接着等して一体化することで形成できる。この形成方法では、編み糸部14の緩みや抜けを有効に防止できる。なお、被覆部38は、図8のように、編み糸部14の結び目16、及びその先の余剰糸部49、並びにそれらの周辺のみに被せてもよいし、或いは、端末骨部64の殆どを覆うようにしてもよい。
この点、第2変形例の編み糸部14は、熱可塑性ポリウレタン樹脂から形成されたエラストマーであり、このポリウレタン樹脂は高いゴム弾性と機械的強度を兼ね備えるという優れた特性を有する一方で、比較的熱に弱いという特性を有する。このため、図のように編み糸部14を接続した端末骨部64に被覆部38を加熱溶融して接続する際、ポリウレタン樹脂のエラストマーからなる編み糸部14が損傷する虞がある。そこで、該損傷リスクを軽減するため、端末骨部64を他の骨部12の材料と異ならせ、端末骨部64及び被覆部38の融点を、編み糸部14の融点に近似させるとよく、さらに、編み糸部14の融点と同等以下にするとより好ましい。これにより、端末骨部64に対して被覆部38を加熱溶融して一体化する際、編み糸部14が溶融などして損傷する事態を効果的に防止できる。このような端末骨部64には、例えば、低融点のポリエチレン、低融点のポリプロピレン等で当該ポリウレタン樹脂より低融点の材料を利用することができる。
なお、第2変形例の端末骨部64は、上述のように編み糸部14の融点に近似、或いは同等以下の融点にしているため、硬度や強度が他の骨部12に比べて落ちる恐れがあるが、端末骨部64は締め作業(図1(B)参照)に略関与しない部分であるため、食材を押さえる手加減が分かり難くなる等といった問題は生じない。
また、端末骨部64の巻く方向Yの外側端面64aを略平坦面にするのも好ましく、これにより、平板状の被覆部38を好ましく採用でき、この場合、端末骨部64の外側端面64aが略平坦状となるため、平板状の被覆部38の厚さを薄くしたシート状(フィルム状とも言う)とすることができる。従って、該外側端面64aに対して被覆部38を加熱溶融して接着する場合、加熱溶融接着を短時間で行うことができる。
端末骨部64は以上のように構成されており、従って、編み糸部14の端部は端末骨部64に埋設され、衛生面や巻き易さにおいて、最も好ましい巻き簀92を提供でき、さらに、編み糸部14にポリウレタン樹脂が利用されていても、上述した種々の工夫により、損傷リスクを軽減することができる。
また、第2変形例では、端末骨部64と被覆部38とを加熱溶融して一体化しているが、本発明はこれに限らず、端末骨部64と被覆部38とを熱可塑性・熱硬化性の接着材料(接着剤)を介在させて接着しても構わない。
本発明の上述した実施形態及びその変形例の巻き簀10,90,92は以上のように構成されているが、本発明はこれらに限定されない。各図の実施形態の各構成はこれらを適宜相互に組み合わせ、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
例えば、図3及び図7の並列した複数の編み糸部14の夫々を複数本の糸材部から構成し、該複数本の糸材部同士を、例えば図3のX方向に互いに接触又は近接して並べたり、或いは、該複数本の糸材部を撚り合せて構成してもよい。これにより、一本当たりの糸材部に加わる力を弱めて、切断の恐れを有効に防止できる。
また、複数の棒状の骨部として、その断面形状が、上述の実施形態のような両面が略平行な形状の骨部のほか、例えば、一面が平らな半円形状の骨部、略楕円形状の骨部、略円形状・略台形状・略三角形状等の任意の断面形状が採用でき、例えば、伊達巻たまご用の断面三角形状の骨部を複数並べて構成された通称鬼巻き簀にも好ましく適用できる。
また、各編み糸部14(モノフィラメント)の横断面形状については、円形だけではなく、楕円形、長円形、四角形、長方形、多角形、その他任意の形状、及びこれらの中実体又は中空体等の形態で採用可能であるが、好ましくは、その機械的強度、成形の容易性、使用時の洗浄性等を考慮すれば、表面が滑らかな円形状の中実体による単線状の糸状体の丸紐がよい。
10,90,92・・・巻き簀、12・・・骨部、14・・・編み糸部、14a・・・第1の糸材部、14b・・・第2の糸材部、34・・・糸道、37,40・・・糸規制部、64・・・端末骨部

Claims (1)

  1. 食材を巻く方向に並べられる棒状の複数の骨部と、前記骨部を挟むように糸材部を編むことで前記複数の骨部同士を連結させる編み糸部とを備え、
    前記骨部は、少なくともシリコーン樹脂に比べて高い硬度を有するプラスチック材及び/又は金属材で形成され、
    前記編み糸部は、前記骨部の上面及び下面を挟む領域では第1及び第2の糸材部からなり、これらの糸材部は前記骨部同士の間で互いに交差しながら編まれており、
    前記第1及び第2の糸材部は、弾性糸からなるモノフィラメントであり、
    前記弾性糸は、海苔巻き・巻き寿司・伊達巻き等の巻物の食材を指で押さえながら一方の端部を巻き込まないように把持して持ち上げ前記食材を丸める巻き作業の時には略伸長しないのに対して、前記巻き作業の後に前記指で所定の骨部を前記食材の中心に向かって押さえ込んで行う前記食材を締める締め作業の時に伸長するようにした弾性を有するとともに、ゴム弾性の性質を有するエラストマー樹脂からなり、
    前記エラストマー樹脂は、前記締め作業の時において引張破断伸度が100%以上、100%モジュラスが3MPa以上の特性を有する
    ことを特徴とする巻き簀。
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