JP6154601B2 - 車両制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アイドルストップ制御と他の車両制御とを組み合わせて構成した車両制御装置に関するものである。
近年、地球環境の保護の観点から、自動車(以下、車両とも言う)の停車時にエンジンを停止させるアイドリングストップシステム(Idling-stop system、以下、ISSという)が開発されている。このISSによるアイドルストップアンドスタート制御は、所定の停止条件(以下、「エンジン停止条件」という)が成立したときにエンジンを停止させ、所定の再始動条件が成立したときにエンジンを再始動させる。これにより、燃費を向上させ、排出ガスを低減させることができる。
一方、運転操作を容易にするためや走行時や停止時の車両の安定性を確保するために、種々の車両制御が開発されている。
例えば、坂道の一時停止時にブレーキペダルを踏み込んだらその時の制動力を保持してブレーキペダルから足を離しても車両を停止させておくことにより車両のずり下がりを防止するずり下がり防止制御と、車両を発進させる際には保持していた制動力を自動的に解除して坂道を発進する坂道発進制御とを行なうことによって、坂道発進を容易に行なうことができるようにした坂道発進補助装置(Hill Start Assist system)が開発されている。
また、駐車ブレーキを作動させているときに、何らかの原因で万一車両が一定距離移動したら自動的に車両制動時に用いる常用ブレーキを作動させて車両を停止させる駐車補助装置も開発されている。
また、走行中にエンジン出力や各車輪のブレーキを制御して、雪道等の滑り易い路面での車両の走行安定性を確保する車両挙動制御装置(ESP(商標登録)(Electronic Stability Program))も開発されている。なお、この車両挙動制御装置では、各車輪のブレーキを個々に制御するため、ABS(anti-lock brake system)と併用することができる。
さらに、高所作業車などにおいて、駐車ブレーキを作動させて車両停車中の作業時に常用ブレーキを作動させて車両に制動力を加えて車両の移動を防止する車両移動防止制御システム(Lock Brake system)も開発されている。
そこで、アイドルストップ制御と上記の種々の車両制御とを組み合わせたものも開発されている。特に、アイドルストップ制御によりエンジンを停止させているときには、常用ブレーキを作動状態に保持して車両を確実に停止させておくことがより重要になる。特許文献1には、アイドルストップ制御と常用ブレーキを利用した坂道発進補助制御とを組み合わせた技術が開示されている。
この特許文献1の技術は、油圧式ブレーキを作動させて坂道で停車した際に、圧油流路に介装された電磁バルブに電圧を印加して圧油流路を閉鎖してブレーキ油圧を保持するものに、アイドルストップ制御を追加したものである。油圧式ブレーキを作動させ坂道での停車状態を保持した状態でエンジンを停止し、その後の車両発進要求等に応じてエンジンの再始動を行なう。この再始動時には、スタータモータに電力を消費されるためバッテリの電圧が低下して、電磁バルブに所要の電圧を印加できなくなるおそれがあるので、バッテリの電圧を昇圧コンバータで昇圧して電磁弁に印加して、電磁バルブが適正に作動するようにしている。この結果、アイドルストップ制御を実施しても、坂道で車両のずり下がりを招くことなく支障なく車両を発進させることができる。
特開2011−247237号公報
ところで、油圧式常用ブレーキを備えた車両において、アイドルストップ制御と坂道発進補助制御とを組み合わせる場合、ブレーキ油圧を保持するために、圧油流路にバルブを介装して、各車輪のホイールシリンダ内の圧油を流出しないようにして油圧を保持することが必要である。
油圧式常用ブレーキの圧油流路は、ブレーキペダルに連動するブースターに付設されたマスターシリンダから各車輪のホイールシリンダにわたって設けられるが、上記のABSや車両挙動制御装置(ESP)を装備するものに、アイドルストップ制御と坂道発進補助制御とを組み合わせる場合には、装置の各要素を図4に示すように構成することができる。
つまり、アイドルストップ制御を行なうために、図示しないエンジンを制御するエンジンECU11と、エンジンECU11を通じてアイドルストップ制御を行なうアイドルストップ用ECU(ISSECU)12とが、CAN(Controller Area Network)を通じて車載ネットワークとして備えられる。
油圧式常用ブレーキ20は、ABSやESPのために、圧油流路の途中に、ホイールシリンダ23を個別に制御するハイドロリックユニット22が介装され、ブレーキブースタ21に接続されたマスターシリンダ21aからハイドロリックユニット22までは二系統の油路24a,24bにより構成し、ハイドロリックユニット22から各車輪のホイールシリンダ23まではそれぞれの車輪毎に合計4本の油路25a〜25dで構成している。
ホイールシリンダ23内の油圧を制動状態に保持するバルブ(油圧保持バルブ)26は、各車輪のホイールシリンダ23内の圧油を保持しうる最もシンプルな構成としては、マスターシリンダ21aからハイドロリックユニット22までのハイドロリックユニット22の上流側の油路24a,24bにそれぞれ介装すればよい。なお、特許文献1の場合も、この油圧保持バルブは、車輪毎に分岐した合4本の油路の上流の二系統の油路にそれぞれ介装されている。なお、ここでは、ISSECU12が、油圧保持バルブ26の開閉を制御するものとする。
しかしながら、図4に示すように構成した場合、ESPによる車両挙動安定制御が適正に行われない場合があることが判明した。この原因を究明したところ、車両挙動安定制御を行なうには、各車輪の制動力を速やかに変更することが必要となる場合があり、このため、ハイドロリックユニット22の上流側の油路24a,24bは、要求される圧油供給を速やかに行えるように、例えばハイドロリックユニット22の下流側の各車輪のホイールシリンダ23に至る油路25a〜25dよりも、大幅に大径の配管が適用されている。
しかし、この大径の油路24a,24bに油圧保持バルブ26を介装すると、油圧保持バルブ26の全開時にも油圧保持バルブ26が流路抵抗になって、各車輪のホイールシリンダ23に速やかに圧油を供給できないことが原因であることが分かった。ESPによる車両挙動安定制御の場合、各車輪の制動力をタイミングよく制御できないと車両挙動を安定させることができない。
もちろん、油圧保持バルブ26を十分に余裕のある流路断面積を有する大型のものにして、このような不具合を解消することも考えられる。しかし、大幅に大径の油路24a,24bの流量低下を招かないようにするためには、油圧保持バルブ26を極めて大型のバルブにすることが必要となる。
ところが、こうした大型バルブには、既存のものがなかったり或いは既存のものがあったとしても極めて高価であったりする。特に、制御性を考慮して油圧保持バルブ26に電磁バルブを適用する場合、要求される大型の電磁バルブは適用可能なものはなかなか存在せず、特別に製造したのでは大幅なコスト増を招いてしまい、量産車に適用することは困難である。
本発明は、このような課題を解決するために創案されたもので、アイドルストップ制御と、油圧式常用ブレーキの油圧を保持して車両の移動を防止する制御と、各車輪の制動力を制御しながら車両の挙動を安定させる制御とを組み合わせて行なえるようにしながら、油圧を保持するバルブを大型化せずに車両の挙動安定制御を適切に行なうことができるようにした、車両制御装置を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するために、本発明の車両制御装置は、アイドルストップ条件が成立するとエンジンを停止させ再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段と、油圧式の常用ブレーキの圧油流路内の圧油の流通をバルブによって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止する制動力保持手段と、各車輪のホイールシリンダ内の油圧を調整する油圧ユニットにより各車輪の制動力を個別に制御して前記車両の走行安定性を確保する車両挙動制御手段と、を備え、前記油圧ユニットの上流の上流側圧油流路の流路断面積は前記油圧ユニットの下流の前記各車輪のホイールシリンダに至る下流側圧油流路の流路断面積よりも大きく設定され、前記バルブは、前記各下流側圧油流路にそれぞれ介装されていることを特徴としている。
(2)前記制動力保持手段は、前記車両の坂道でのずり下がりを防止するずり下がり防止制御手段を含み、前記ずり下がり防止制御手段によって保持していた制動力を自動的に解除して前記車両を発進させる坂道発進制御手段をさらに備えていることが好ましい。
(3)前記制動力保持手段は、前記車両の駐車ブレーキを作動させた停車中の作業時に前記常用ブレーキを作動させて前記車両の停止状態を保持する作業時補助制動手段を含むことが好ましい。
(4)前記バルブは前記エンジンの始動時のスタータモータに給電するバッテリの電力により閉鎖状態を保持する電磁バルブであって、前記エンジンの前記再始動時に前記バッテリの電圧を昇圧して前記電磁バルブに出力する昇圧コンバータを更に備えていることが好ましい。
(1)本発明の車両制御装置によれば、アイドルストップ条件が成立するとアイドルストップ制御手段によりエンジンが停止されるので、燃費を向上させ、排出ガスを低減させることができる。また、制動力保持手段により、油圧式の常用ブレーキの圧油流路内の圧油の流通をバルブによって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止することができる。さらに、車両の走行中には、車両挙動制御手段が油圧ユニットにより各車輪のホイールシリンダ内の油圧を調整し各車輪の制動力を個別に制御して車両の走行安定性を確保する。
制動力を保持するバルブは、油圧ユニットの下流の各車輪のホイールシリンダに至る下流側圧油流路にそれぞれ介装されており、流路断面積が大きい上流側圧油流路にはバルブが介装されないので、上流側圧油流路内を圧油が円滑に流通する。また、下流側圧油流路は上流側圧油流路よりも流路断面積が小さいので、上流側圧油流路に介装する場合よりも小型のバルブを適用しても、流路抵抗を招きにくい。
したがって、油圧ユニットにより各車輪のホイールシリンダ内の油圧調整も応答性の遅れを招くことなく行なうことができ、車両挙動制御手段による制御に際して、油圧ユニットにより各車輪のホイールシリンダ内の油圧を速やかに調整することができ、各車輪の制動力をタイミングよく個別制御でき、車両の走行安定性制御を適切に行なうことができる。
(2)制動力保持手段が、ずり下がり防止制御手段を含み、ずり下がり防止のために保持していた制動力を自動的に解除して車両を発進させる坂道発進制御手段を備えれば、車両のずり下がりを招くことなく坂道発進を容易に安定して行なうことができる。
(3)制動力保持手段が、車両の駐車ブレーキを作動させた停車中の作業時に常用ブレーキを作動させて車両の停止状態を保持する作業時補助制動手段を含んでいれば、作業時に車両停止状態を保持することができ、坂道などの車両が移動しやすい状況下でも支障なく作業を実施することができる。
(4)制動力を保持するバルブがバッテリの電力により閉鎖状態を保持する電磁バルブであれば、速やかに閉鎖状態に設定して、制動力保持による車両の移動防止を実施することができる。エンジンの再始動時にはバッテリの電力がスタータモータに給電され電圧低下を招き、この電圧低下によりバルブの閉鎖状態が保持されなくなるおそれがあるが、エンジンの再始動時には、昇圧コンバータがバッテリの電圧を昇圧して電磁バルブに出力するので、電圧低下が回避されバルブの閉鎖状態が保持される。
本発明の第1実施形態にかかる車両制御装置を示す構成図である。 本発明の第2実施形態にかかる車両制御装置を示す構成図である。 本発明の第3実施形態にかかる車両制御装置を示す構成図である。 本発明の案出過程で創案された車両制御装置を示す構成図である。
以下、図面により本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかる車両制御装置の構成図であり、図2は本発明の第2実施形態にかかる車両制御装置の構成図であり、図3は本発明の第3実施形態にかかる車両制御装置の構成図である。図1,図2,図3において同符号は同様のものを示す。これらの図を用いて、各実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
(構成)
本実施形態にかかる車両制御装置は、図1に示すように、アイドルストップ制御を行なうアイドルストップ用ECU(ISSECU)12と、車両挙動制御(ESP制御)及びABS制御を行なう車両挙動制御用ECU(ABS/ESPECU、車両挙動制御手段)13と、を備えている。また、この車両には、エンジンの作動を制御するエンジンECU11が装備されている。なお、本実施形態では、図示しないが、エンジンと変速機との間のクラッチがアクチュエータで作動する自動クラッチであり、変速機が機械式変速機をアクチュエータで操作される機械式自動変速機であるものとする。
各ECU(Electronic Control Unit)11,12,13は、マイクロプロセッサやROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を集積したLSI(Large Scale Integration)デバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置であり、車載ネットワークを介して互いに接続されるとともに各種デバイスと接続される。ここでは、車載ネットワークとしてCAN(Controller Area Network)を例に挙げて説明するが、FlexRayなどの他の規格の車載ネットワークを用いてもよい。
ISSECU12は、アイドルストップ条件が成立するとエンジンを停止させ再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるアイドルストップ制御部(アイドルストップ制御手段)12aと、油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内の圧油の流通をバルブ26によって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止する制動力保持制御部(制動力保持手段)12bと、の2つの制御機能を有している。なお、制動力保持制御部12bによる制動力の保持をロックブレーキとも呼ぶ。
ISSECU12には、ISSカットスイッチからのISS禁止/許可信号と、ロックブレーキスイッチからのロックブレーキ作動許可信号と、図示しない車速センサからの車速情報と、図示しないブレーキスイッチからの常用ブレーキ(フットブレーキ)の操作情報と、図示しないブレーキスイッチからの駐車ブレーキの操作情報と、図示しないシフトポジションセンサからのシフトポジション情報と、その他の信号(車両のドア開け,シートベルト外し,PTO使用,キャブチルト等の信号)が入力される。
ISSECU12のアイドルストップ制御部12aでは、ISSECU12に入力される上記の各情報に基づいて、以下のアイドルストップ条件が成立するとエンジンECU11に信号を出力しエンジン10を停止させる。また、このエンジン停止時に、以下のエンジン停止許可条件が成立するとエンジンECU11に信号を出力しエンジン10を停止させる。
アイドルストップ制御部12aは、ISSECU12にISSカットスイッチからのISS禁止信号が出力されない(つまり、ISS許可信号が入力されている)状態で、車両の発進後、車速が制御開始車速(例えば、10km/h)以上となり明らかな走行状態になったら開始し、以下のアイドルストップ条件(エンジン停止条件とも言う)を判定する。
ここで、アイドリングストップ制御開始条件(エンジン停止条件)について説明する。
本実施形態では、クラッチが自動クラッチであり且つ変速機が自動変速機なので、エンジン停止条件には、下記の(1)〜(4)の条件(各条件を個別条件とも言う)が設定され、これらの各条件がいずれも成立した場合に、エンジン停止条件が成立する。
(1)車両が停止あるいは停止直前(以下、単に「停止」という)であること。
(2)常用ブレーキが操作されていること。
(3)Dレンジが選択されていること。
(4)その他の条件が成立していること。
上記の(1)の条件は、具体的には、車速が停止判定車速(例えば、2km/h)以下、即ち、車速0km/h近傍になっていることとする。
上記の(2)の条件は、ブレーキスイッチからON信号が入力されていれば成立し、OFF信号が入力されていれば成立しない。
また、上記の(3)の条件は、シフトポジションセンサから入力された選択レンジ信号がDレンジに対応する信号であれば成立し、そうでなければ成立しない。
上記の(4)の条件としては、図示しないドアが開放されていないこと、シートベルトが外されていること、PTO(Power Take Off)装置が作動していないこと、キャブチルト時でないことなどが挙げられる。
なお、クラッチが図示しないクラッチペダルの操作により作動するマニュアルクラッチであり且つ変速機がマニュアル変速機であれば、その他のエンジン停止条件としては、シフト位置がNレンジであり、クラッチペダルが踏み込まれた状態から離された状態に遷移したことなどが挙げられる。
何れの場合も、エンジン停止条件は例示であり、これらに限るものでなはない。
次に、アイドリングストップ制御終了条件(エンジン再始動条件)について説明する。
本実施形態では、クラッチが自動クラッチであり且つ変速機が自動変速機なので、エンジン再始動条件は、アイドルストップのためのエンジン停止中に、下記の(I)および(II)の条件が設定され、これらの各条件のいずれかが成立した場合に、エンジン再始動止条件が成立する。
(I)Dレンジの選択中にブレーキ操作が解除されること。
(II)エンジン停止中に非走行レンジ(例えばPレンジやNレンジ)に切り替えられ、非走行レンジから走行レンジ(例えばDレンジまたはRレンジ)に切り替えられること。
上記の(I)の条件は、ブレーキスイッチから入力される信号がON信号からOFF信号に変化すると成立し、そうでないと成立しない。また、上記の(II)の条件は、シフトポジションセンサから入力された選択レンジ信号が非走行レンジに対応する信号から走行レンジに対応する信号に変化すると成立し、そうでなければ成立しない。これらの(I)および(II)の条件は例示であり、アイドルストップ制御に用いられる公知のエンジン再始動条件を用いることができる。
なお、クラッチ2が図示しないクラッチペダルの操作により作動するクラッチであり且つ変速機3がマニュアル変速機であれば、エンジン再始動条件としては、シフト位置がNレンジであり、クラッチペダルが踏み込まれた状態から踏み込みが解除された状態に移行したことなどが挙げられる。
何れの場合も、エンジン再始動条件は例示であり、これらに限るものでなはない。
また、ISSECU12の制動力保持制御部12bは、ISSECU12に入力される上記の各情報に基づいて、駐車ブレーキが操作され(ブレーキスイッチオン信号が入力され)、ロックブレーキスイッチがオン操作された(ロックブレーキ作動許可信号が入力された)場合に、制動力保持(ロックブレーキ)を実施する。具体的には、油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内の圧油の流通をバルブ26によって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止する。この制動力保持制御部12bは、制動力を保持することにより坂道での車両のずり下がりを防止するずり下がり防止制御手段としても機能する。
なお、ISSECU12では、アイドルストップ制御と制動力保持制御とが干渉しないように、協調制御を行なう。つまり、制動力保持(ロックブレーキ)を実施する前に、エンジンが停止してしまうと、ロックブレーキが働かない状態で車両の走行駆動力も加わらなくなるので、坂道などでは車両のずり下がりなどを招きやすくなる。また、エンジンの停止後に再始動する際に、ロックブレーキが解除されてしまっていてもロックブレーキが働かない状態で車両の走行駆動力も加わらなくなるので、同様に車両のずり下がりなどを招きやすくなる。
そこで、ISSECU12では、アイドルストップ制御と制動力保持制御とを共に実施する場合には、制動力保持制御を開始してからアイドルストップ制御のエンジン停止を行ない、その後、制動力保持制御を終了する際には、アイドルストップ制御のエンジン再始動を行なってから制動力保持制御を終了するというように、両制御を協調させて行なうように設定されている。
ところで、油圧式常用ブレーキ20は、ABSやESPのために、圧油流路の途中に、ホイールシリンダ23を個別に制御するハイドロリックユニット(油圧ユニット)22が介装され、ブレーキブースタ21に接続されたマスターシリンダ21aからハイドロリックユニット22までは二系統の油路24a,24bにより構成され、ハイドロリックユニット22から各車輪のホイールシリンダ23まではそれぞれの車輪毎に合計4本の油路25a〜25dで構成されている。
ハイドロリックユニット22よりも上流の上流側圧油流路24a,24bの流路断面積は、ハイドロリックユニット22よりも下流で各車輪のホイールシリンダ23に至る下流側圧油流路25a〜25dの流路断面積よりも大きく設定されている。これは、ESPによる車両挙動安定制御を行なうには、各車輪の制動力を速やかに変更することが必要となる場合があり、このため、ハイドロリックユニット22の上流側油路24a,24bは、ハイドロリックユニット22よりも下流の油路25a〜25dのそれぞれに要求される圧油供給を速やかに行えるように、油路25a〜25dよりも大幅に大径の配管が適用されているのである。
そして、制動力を保持するためのバルブ26は、上流側油路24a,24bよりも流路断面積の小さい下流側油路25a〜25dのそれぞれに介装されている。下流側油路25a〜25dは比較的流路断面積が小さいため、ここに介装する各バルブ26も比較的流路断面積が小さい小型のものを適用することができる。
また、バルブ26には電磁バルブが適用されており、制動力保持制御部12bにより出力される制御信号に応じてバッテリ(車載の補機バッテリ)10からの電力を供給されることにより油路25a〜25dを閉鎖して、各車輪のホイールシリンダ23の油圧を保持し制動力を保持する。
ただし、本装置は、アイドルストップ制御も行なうので、バルブ26に電力を供給して油路25a〜25dを閉鎖している状態でエンジンのスタータモータ(図示略)に給電してエンジンの再始動を行なう場合がある。この場合、バッテリ10の電力がスタータモータに給電され電圧低下を招くので、この電圧低下によりバルブの供給電圧が低下し、閉鎖状態が保持されなくなるおそれがある。そこで、バッテリ10と各バルブ26との間の給電系統に、DC/DCコンバータ(昇圧コンバータ)31を介装し、ISSECU12の制御により、エンジンの再始動時には、DC/DCコンバータータ31がバッテリ10の電圧を昇圧して電磁バルブ26に出力し、電圧低下を回避し電磁バルブ26の閉鎖状態を保持するようになっている。
なお、ABS/ESPECU13には、常用ブレーキ(フットブレーキ)の操作情報や、ブレーキ各車輪の車輪速センサ(図示略)からの車輪速情報や、ヨーレイトセンサや横Gセンサや前後Gセンサや車速センサなど(図示略)の車両挙動センサからの車両挙動情報が入力される。そして、ABS/ESPECU13は、制動時にいずれかの車輪がロック傾向になったら、ハイドロリックユニット22を制御してその車輪のホイールシリンダ23の油圧を低下させて制動力を抑制し車輪のロックを回避する(ABS制御)。また、車両が横滑りを生じたり横滑りや横転等のおそれが生じたりしたら、ハイドロリックユニット22を制御して各車輪のホイールシリンダ23の油圧を個々に調整して横滑りや横転を回避する(ESP制御)。
(作用、効果)
本発明の第1実施形態にかかる車両制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
アイドルストップ条件が成立するとアイドルストップ制御部12aによりエンジン10が停止されるので、燃費を向上させ、排出ガスを低減させることができる。
また、制動力保持制御部12bにより、油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内の圧油の流通を電磁バルブ26によって遮断して制動力を保持するので車両の移動を防止することができる。例えば、車両の停車中の作業時制動力保持制御を行なえば、作業時に車両停止状態を保持することができ、坂道などの車両が移動しやすい状況下でも支障なく作業を実施することができる。
さらに、車両の走行中に、ABS/ESPECU13が制動時の車輪のロックを回避し、車両の横滑りや横転を回避して、車両の走行安定性を確保することができる。
特に、制動力を保持する電磁バルブ26は、ハイドロリックユニット22の下流の各車輪のホイールシリンダ23に至る下流側圧油流路25a〜25dにそれぞれ介装されており、流路断面積が大きい上流側圧油流路24a,24bにはバルブが介装されないので、上流側圧油流路24a,24b内を圧油が円滑に流通する。また、下流側圧油流路25a〜25dは上流側圧油流路24a,24bよりも流路断面積が小さいので、上流側圧油流路に介装する場合よりも小型の電磁バルブ26を適用しても、流路抵抗を招きにくい。
したがって、ハイドロリックユニット22による各車輪のホイールシリンダ23内の油圧調整も応答性の遅れを招くことなく行なうことができ、ABS/ESPECU13による車両挙動制御に際して、ハイドロリックユニット22により各車輪のホイールシリンダ23内の油圧を速やかに調整することができ、各車輪の制動力をタイミングよく個別制御でき、車両の走行安定性制御を適切に行なうことができる。
また、電磁バルブ26に比較的小型のバルブを適用できるので、既存の電磁バルブを適用しやすい。このため、電磁バルブ26の数が増えても個々の電磁バルブ26のコストを大きく削減することができるので、電磁バルブ26に要するコストを全体としても大幅に削減することができる。
〔第2実施形態〕
(構成)
本実施形態にかかる車両制御装置は、図2に示すように、アイドルストップ制御を行なうアイドルストップ用ECU(ISSECU)12と、車両挙動制御(ESP制御)及びABS制御を行なう車両挙動制御用ECU(ABS/ESPECU)13と、油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内の圧油の流通をバルブ26によって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止する制動力保持制御用ECU(ロックブレーキECU、制動力保持手段)14と、を備えている。
つまり、第1実施形態におけるISSECU12が、アイドルストップ制御部(アイドルストップ制御手段)12aと、制動力保持制御部(制動力保持手段)12bと、の2つの制御機能を有しているのに対して、本実施形態のISSECU12Aは、アイドルストップ制御部(アイドルストップ制御手段)12aとしての機能のみを有し、制動力保持制御部(制動力保持手段)12bとしての機能は、専用のロックブレーキECU14が担っている。
したがって、ISSECU12には、ISSカットスイッチからのISS禁止/許可信号と、図示しない車速センサからの車速情報と、図示しないブレーキスイッチからの常用ブレーキ(フットブレーキ)の操作情報と、図示しないシフトポジションセンサからのシフトポジション情報と、その他の信号(車両のドア開け,シートベルト外し,PTO使用,キャブチルト等の信号)が入力される。
また、ロックブレーキECU14には、ロックブレーキスイッチからのロックブレーキ作動許可信号と、図示しないブレーキスイッチからの駐車ブレーキの操作情報とが入力される。なお、ロックブレーキECU14もマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置であり、車載ネットワークのCANを介して互いに接続されるとともに各種デバイスと接続される。
第1実施形態では、ISSECU12のアイドルストップ制御部12aと、制動力保持制御部12bとの間で、アイドルストップ制御と制動力保持制御とが干渉しないように、協調制御を行なっているが、本実施形態では、ISSECU12AとロックブレーキECU14との間で、CAN通信を介して第1実施形態と同様の協調制御を行なうようになっている。
(作用、効果)
本発明の第2実施形態にかかる車両制御装置は上述のように構成されているので、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
特に、ISSECU12AとロックブレーキECU14とが別体になっているので、既存のISSECU12AやロックブレーキECU14を適用して装置を構成することが容易である。
〔第3実施形態〕
(構成)
本実施形態にかかる車両制御装置は、図3に示すように、アイドルストップ制御を行なうアイドルストップ用ECU(ISSECU)12と、車両挙動制御(ESP制御)及びABS制御を行なう車両挙動制御用ECU(ABS/ESPECU)13と、坂道での一時停止時にブレーキペダルを踏み込んだ際に油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内の圧油の流通をバルブ26によって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止し車両を発進させる際に制動力を自動的に解除する坂道発進補助制御用ECU(ヒルホールダーECU、坂道発進補助制御手段)15と、を備えている。つまり、本実施形態は、第2実施形態のロックブレーキECU14をヒルホールダーECU15に変更したものと言える。
ヒルホールダーECU15には、坂道発進補助制御許可スイッチ(メーンスイッチ)からの信号と、車速信号と、常用ブレーキ及び図示しない駐車ブレーキの作動信号と、クラッチ断接信号と、エンジン作動信号等が入力される。ヒルホールダーECU15では、坂道発進制御許可スイッチがオン(坂道発進補助制御許可)とされ、停車(車速0km/h近傍、ただし、急停車の場合には坂道発進補助を許可しない)時で、常用ブレーキがオン(ブレーキペダルを踏み込んで停車)で、駐車ブレーキがオフで、クラッチが遮断(動力伝達遮断状態)で油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内の圧油の流通をバルブ26によって遮断して制動力を保持する。これは、第1,2実施形態のロックブレーキに相当する機能である。
また、ヒルホールダーECU15では、この状態での停車時に、エンジン運転状態であり、常用ブレーキ及び駐車ブレーキがオフで、アクセル操作がされると、油圧式常用ブレーキ20の圧油流路内のバルブ26を解除しながらしてクラッチを締結する。これにより、坂道発進を補助することができる。
第2実施形態では、ISSECU12とロックブレーキECU14との間で、CAN通信を介して第1実施形態と同様の協調制御を行なっているが、本実施形態では、ISSECU12とヒルホールダーECU15のアイドルストップ制御部12aと、制動力保持制御部12bとの間でとの間で、CAN通信を介して協調制御を行なうようにしている。つまり、ヒルホールダーECU15はエンジン運転状態を前提としているので、ISSECU12によるエンジン停止は、ヒルホールダーECU15によりバルブ26を閉鎖した後に行ない、ISSECU12によるエンジン再始動は、ヒルホールダーECU15によりバルブ26を解除する前に行うようにしている。
(作用、効果)
本発明の第3実施形態にかかる車両制御装置は上述のように構成されているので、第1,2実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
特に、ISSECU12とヒルホールダーECU15とが別体になっているので、既存のISSECU12やヒルホールダーECU15を適用して装置を構成することが容易である。
しかも、ヒルホールダーECU15が、坂道での車両のずり下がりを防止すると共に、その後の車両の発進を補助するので、車両のずり下がりを招くことなく坂道発進を容易に安定して行なうことができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態を適宜変更して実施しうるものである。
例えば、上記実施形態では、バッテリ10と各バルブ26との間の給電系統に、DC/DCコンバータ31を介装し、エンジンの再始動時には、DC/DCコンバータータ31がバッテリ10の電圧を昇圧して電磁バルブ26に出力し、電圧低下を回避し電磁バルブ26の閉鎖状態を保持するようにしているが、電圧低下の影響がなければDC/DCコンバータータ31は省略可能である。
また、上記実施形態では、油圧式常用ブレーキ20が全て油圧(液圧)を用いる構成としたが、部分的にエア圧等を用いる構成であっても良い。
また、上記実施形態では、車両挙動制御用ECU13がABS及びESPの両者を実施する構成になっているが、ABS及びESPの一方のみを実施する構成にしてもよい。
10 エンジン
11 エンジンECU
12 アイドルストップ用ECU(ISSECU)
12a アイドルストップ制御部(アイドルストップ制御手段)
12b 制動力保持制御部(制動力保持手段,ずり下がり防止制御手段)
13 車両挙動制御用ECU(ABS/ESPECU、車両挙動制御手段)
14 制動力保持制御用ECU(ロックブレーキECU、制動力保持手段)
15 坂道発進補助制御用ECU(ヒルホールダーECU、坂道発進補助制御手段)
20 油圧式常用ブレーキ
21 ブレーキブースタ
21a マスターシリンダ
22 ハイドロリックユニット(油圧ユニット)
23 ホイールシリンダ
24a,24b 上流側圧油流路
25a〜25d 下流側圧油流路
26 制動力を保持するためのバルブ
30 バッテリ
31 DC/DCコンバータ(昇圧コンバータ)

Claims (4)

  1. アイドルストップ条件が成立するとエンジンを停止させ再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるアイドルストップ制御手段と、
    油圧式の常用ブレーキの圧油流路内の圧油の流通をバルブによって遮断して制動力を保持し車両の移動を防止する制動力保持手段と、
    各車輪のホイールシリンダ内の油圧を調整する油圧ユニットにより各車輪の制動力を個別に制御して前記車両の走行安定性を確保する車両挙動制御手段と、を備え、
    前記油圧ユニットの上流の上流側圧油流路の流路断面積は前記油圧ユニットの下流の前記各車輪のホイールシリンダに至る下流側圧油流路の流路断面積よりも大きく設定され、
    前記バルブは、前記各下流側圧油流路にそれぞれ介装されている
    ことを特徴とする、車両制御装置。
  2. 前記制動力保持手段は、前記車両の坂道でのずり下がりを防止するずり下がり防止制御手段を含み、前記ずり下がり防止制御手段によって保持していた制動力を自動的に解除して前記車両を発進させる坂道発進制御手段をさらに備えている
    ことを特徴とする、請求項1記載の車両制御装置。
  3. 前記制動力保持手段は、前記車両の駐車ブレーキを作動させた停車中の作業時に前記常用ブレーキを作動させて前記車両の停止状態を保持する作業時補助制動手段を含む
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両制御装置。
  4. 前記バルブは、前記エンジンの始動時のスタータモータに給電するバッテリの電力により閉鎖状態を保持する電磁バルブであって、
    前記エンジンの前記再始動時に前記バッテリの電圧を昇圧して前記電磁バルブに出力する昇圧コンバータを備えている
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両制御装置。
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