以下、本発明に係る実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態では、像加熱装置を、未定着トナー像を記録材に定着させる定着装置に適用した構成として説明するが、本発明は、定着済み画像又は半定着画像を担持した記録材を加熱して画像の表面性状を調整する加熱処理装置としても実施することができる。なお、図1は、本発明を適用した電磁誘導加熱方式の定着装置114を備えた画像形成装置100を示す概略構成図である。
[画像形成装置]
本例の画像形成装置100は、転写式電子写真プロセス利用、レーザ走査露光方式の画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能機等)である。図1に示すように、101は原稿読取装置(イメージスキャナ)、102は領域指定装置(デジタイザ)であり、何れも画像形成装置100上面側に配設されている。
原稿読取装置101は、この装置の原稿台上に載置した原稿面を内部に設けた光源等からなる走査照明光学系により原稿を走査し、原稿面からの反射光をCCDラインセンサ等の光センサにより読み取り、画像情報を時系列電気デジタル電気信号に変換する。
領域指定装置102は、原稿の読み取り領域等の設定を行い、信号を出力する。104は、原稿読取装置101、領域指定装置102、プリントコントローラ103等からの信号を受けて、画像出力機構の各部に指令を送る信号処理及び種々の作像シーケンス制御を行う制御部(CPU)である。制御部104は、画像形成装置100における装置各部の動作を統括的に制御する。
以下は、画像出力機構部(作像機構部)の説明である。105は像担持体としての回転ドラム方の電子写真感光体(以下、感光体ドラムと記す)であり、矢印の時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。感光体ドラム105はその回転過程で、帯電装置106により所定の極性・電位の一様な帯電処理を受け、その一様帯電面に対して画像書き込み装置107による像露光(L)を受ける。これにより、一様帯電面の露光明部の電位が衰退して感光体ドラム105面に露光パターンに対応した静電潜像が形成される。
画像書き込み装置107は、本例ではレーザスキャナであり、制御部104において信号処理された画像データに従って変調されたレーザ光Lを出力し、回転する感光体ドラム105の一様帯電面を走査露光して原稿画像情報に対応した静電潜像を形成する。
次いで、その静電潜像が現像装置108によりトナー像として現像される。トナー像が転写帯電ローラ109の位置において、給紙機構部側から感光体ドラム105と転写帯電装置106との対向部である転写部Tに所定の制御タイミングにて給送された被加熱材である記録材Pに、感光体ドラム105面側から静電転写される。
給紙機構部は、本例の場合には、大サイズの記録材Pを積載収容したカセット給紙部111と小サイズの記録材Pを積載収容したカセット給紙部110とを有している。また給紙機構部は、カセット給紙部111又は110から1枚分離給紙された記録材Pを、転写部Tに所定のタイミングにて搬送する記録材搬送路112を有している。なお、感光体ドラム105、現像装置108及び転写部T等により、記録材上にトナー像を形成する画像形成部が構成される。
転写部Tで感光体ドラム105面側からトナー像の転写を受けた記録材Pは、感光体ドラム105面から分離され定着装置(像加熱装置)114へ搬送された未定着トナー像の定着処理を受け、画像形成装置外部の排紙トレイ115上に排紙される。
一方、記録材分離後の感光体ドラム105面は、クリーニング装置113により転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて清掃されて繰り返して作像される。
[定着装置]
次に、図2及び図3を参照して、像加熱装置としての定着装置114について詳細に説明する。なお、図2は定着装置114の要部を示す正面図、図3は定着装置114の要部を示す側面断面図である。
図2及び図3に示す定着装置114は、加熱ローラ型で、電磁誘導加熱方式の加熱定着装置である。この定着装置114は、感光体ドラム105、現像装置108及び転写部T等から成る上記画像形成部により記録材P上に形成された未定着トナー像tを、この記録材Pに定着させる。
定着装置114は、互いに所定の押圧力で圧接されて所定のニップ長(ニップ幅)の定着ニップ部Nを形成する定着ローラ(像加熱部材)1と加圧ローラ2とを有している。定着ローラ1及び加圧ローラ2は、記録材Pの搬送方向(図2の手前−奥方向、図3の左右方向)に直交する幅方向(図2の左右方向、図3の手前−奥方向)に、互いに平行に延在するように支持されている。
定着ローラ1は、記録材Pの搬送方向(図2の手前−奥方向)に直交する幅方向(図2の左右方向)に長尺に形成され、コイル・アセンブリ3で発生する磁束により発熱して記録材上のトナー像(画像)tを加熱する像加熱部材を構成する。つまり、定着ローラ1は、所定のキュリー温度に調整された整磁合金であって、誘導コイル6から生ずる磁束により生ずる熱により記録材上のトナー像(画像)tを加熱する像加熱部材を構成する。コイル・アセンブリ3は、供給される電流に基づいて磁束を発生する磁束発生手段を構成している。
像加熱部材としての定着ローラ1は、中空(円筒状)の金属層(導電層、芯金)1bを有するローラであり、その外周面には、フッ素樹脂等をコーティングした耐熱性の離型層(伝熱材)1aが形成されている。
誘導発熱体である金属層1bは、キュリー温度を所望に調整した整磁合金によって構成されている(特開2000−39797号公報参照)。この整磁合金として、例えば、鉄、ニッケル、SUS430、鉄−ニッケル合金、鉄−ニッケル−クロム合金、ニッケル−コバルト合金等の磁性金属(導電体、磁性体)が挙げられる。整磁合金は、キュリー点以下では電気抵抗が大きくて発熱量が多いが、キュリー点を超えると磁性を失い電気抵抗が小さくなって発熱量が小さくなる。
定着ローラ1(金属層1b)は、所定のキュリー温度に調整された整磁合金からなり、磁束発生手段としてのコイル・アセンブリ3で発生する磁束により発熱して、通過する記録材上の画像を加熱する。即ち、定着ローラ1の金属層1bは、厚さが例えば0.05〜1.5mmに設定されており、金属層1bのキュリー温度は、記録材Pに対して未定着トナー像tが定着可能な定着温度よりも高く、コイルとしての誘導コイル6の耐熱温度よりも低く設定されている。具体的には、定着温度は195℃に、耐熱温度は230℃に設定され、キュリー温度は205℃に設定される。
定着ローラ1は、両端部側をそれぞれ定着装置114の手前側と奥側の側板(定着ユニットフレーム)21,22間に、軸受23,23を介して回転可能に支持されている。中空円筒状の金属層1bの内方には、磁束発生手段としてのコイル・アセンブリ3が挿入・配置されている。このコイル・アセンブリ3は、定着ローラ1に誘導電流(渦電流)を誘起してジュール熱を発生させる高周波磁界を生じさせる。
加圧ローラ2は、軸芯2a、及び、軸芯2aの外回り同心一体にローラ状に形成具備させた表面離型性耐熱ゴム層(シリコーンゴム層等)である弾性体層2b等からなる弾性ローラである。この加圧ローラ2は、定着ローラ1の下側に並行に配列されて、軸芯2aの両端部側をそれぞれ定着装置114の手前側と奥側の側板21,22間に軸受26,26を介して回転自在に支持されている。
加圧ローラ2は、定着ローラ1の下面に対して不図示の付勢手段により弾性体層2bの弾性に抗して所定の押圧力で圧接されている。これにより、加熱部としての所定のニップ長・ニップ幅の定着ニップ部Nが形成されている。なお、定着ニップ部Nのニップ長とは記録材搬送方向に直交する幅方向の寸法であり、ニップ幅とは記録材搬送方向の寸法である。
コイル・アセンブリ3は、ボビン4、磁性材からなるコア(芯材)5、誘導コイル(励磁コイル、誘導発熱源)6、絶縁部材製のステー7等の組み立て体である。コア5は、ボビン4に形成された通孔に挿入されており、誘導コイル6は、このボビン4の周囲に銅線を巻回して形成されている。これらボビン4、コア5、誘導コイル6のユニットが、ステー7に固定支持されている。コイル・アセンブリ3は、ボビン4とは別体に形成されたステー7に固定されて、定着ローラ1外部に露呈しないように収納されている。
コア5としては、透磁率が大きく自己損失の小さい材料が好ましく、例えばフェライト、パーマロイ、センダスト等が適している。ボビン4は、コア5と誘導コイル6とを絶縁する絶縁部としても機能している。
図3における符号13は分離爪であり、この分離爪13は、定着ニップ部Nに導入されて定着ニップ部Nを出た記録材Pが定着ローラ1に巻き付くことを抑え、定着ローラ1から分離させる役目をする。上述したボビン4、ステー7、分離爪13は、例えば液晶ポリマー、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの耐熱及び電気絶縁性エンジニアリング・プラスチックから形成することができる。
誘導コイル6は、十分な加熱を可能にする交番磁束を発生させるために、抵抗成分を低くし且つインダクタンス(係数が大きい方が好ましい。コイルの巻き数が多い程強くなる)を高くすることが必要である。誘導コイル6の芯線として、φ0.1〜0.3の細線を略80〜160本ほど束ねたリッツ線を用いている。細線には、絶縁被覆電線を用いている。
磁性コア5を支持したボビン4には、その形状に合わせてコイルが定着ローラ1の長手方向に沿うように横長舟型状に複数回巻回されて、誘導コイル6が形成されている。なお、横長舟型状とは、金属層1bの内面形状に適切に沿わせるための横断面略半円筒状(横断面略半円樋型)を意味する。
図2に示すように、定着ローラ1の一端部から、誘導コイル6の2本の外方引出しリード線(コイル供給線)6a,6bが引き出されている。ステー7の手前側の丸軸形状部7aは、中空軸状に形成されている。丸軸形状部7aの中空部から外部に引き出された外方引出しリード線6a,6bは、誘導コイル6に通電する通電部としてのコイル電源116に接続されている。
コイル電源116は、誘導コイル6に高周波電流を供給する電流供給手段として、定電流を供給する定電流化手段として、また、周波数を可変制御する周波数可変制御手段として構成される。また、コイル電源116は、最大電力量を可変に調整可能で、磁束発生手段としてのコイル・アセンブリ3に電流を供給する本発明の電源を構成している。
また、定着ローラ1の上部には、定着ローラ温度の異常上昇時の対策機構としてのサーモスタット15が配置されている。このサーモスタット15は、定着ローラ1の表面に接触しており、予め設定された温度になると接点を開放して誘導コイル6への通電を切断し、定着ローラ1が所定温度以上の高温となることを防止する。
図3に示すように、定着ローラ1の上方には、定着ローラクリーナ14が配置されている。この定着ローラクリーナ14は、クリーニングウエブ14aをロール巻きに保持したウエブ繰り出し軸部14bと、ウエブ巻取り軸部14cとを有している。
これら軸部14b,14c間のウエブ部分を定着ローラ1の外面に押し付ける押し付けローラ14dを有している。押し付けローラ14dで定着ローラ1に押し付けられたウエブ部分により、定着ローラ1面にオフセットしたトナーが拭われることで、定着ローラ面が清掃される。定着ローラ1に押し付けられるウエブ部分は、繰り出し軸部14b側から巻取り軸部14c側にウエブ14aが少しずつ送られることで徐々に更新される。
図2に示すように、本実施形態において通紙は中央基準で行われる。図2に一点鎖線で示すCは、その中央基準である。すなわち、いかなるサイズの記録材でも、記録材の中央部は、定着ローラ1の軸方向中央部を通過する。従って、本実施形態の画像形成装置100では、通紙(通過)できる記録材の最大サイズはA3であり、加熱領域は、A3の記録材の幅である297mmに合わせて設計されている。
また、通紙できる記録材の最小サイズは、ハガキサイズの縦送りである。本実施形態では、大サイズ紙であるA3よりも小さいサイズを小サイズ紙と呼ぶ。この場合、加熱幅よりも記録材の幅が狭いため、記録材の非通紙(非通過)部が加熱されることで非通紙部昇温が起きる可能性がある。
第1サーミスタ11及び第2サーミスタ12が、定着ローラ1(金属層1b)を隔てて誘導コイル6に向かい合うように、定着ローラ1の表面に対して弾性部材で押圧されて弾性的に圧接されている。
第1サーミスタ11は、定着ローラ1の中央温度検知装置として、小サイズ紙(ハガキサイズ紙)の通紙部領域(通過部)P2の略中央部に対応する定着ローラ中央部分に接触している。この第1サーミスタ11は、像加熱部材としての定着ローラ1の表面のうち、所定サイズ(小サイズ紙:B5サイズ紙、ハガキサイズ紙等)の記録材が通過する通紙部領域(通過部)P2の温度を検知する本発明の第1温度検知手段を構成する。言い換えると、第1サーミスタ11は、記録材Pの搬送方向と直交する方向において通紙可能な最小サイズ(小サイズ紙:B5サイズ紙、ハガキサイズ紙等)の幅の記録材が通過する通紙部(通過部)の温度を検知する第1温度検知手段を構成する。
通紙される記録材Pが小サイズ紙(ハガキサイズ紙)の場合、定着ニップ部Nにおける大サイズ紙(A3サイズ紙)の通紙部領域P1と小サイズ紙の通紙部領域P2との差領域が非通紙部領域(非通過部,非通過領域)P3となる。
第2サーミスタ12は、定着ローラ1の小サイズ紙を通紙した際の非通紙部温度を検知するように、大サイズ紙(A3サイズ紙)の通紙部領域P1と小サイズ紙(ハガキサイズ紙)の通紙部領域P2との差領域である非通紙部領域P3に対して接触している。第2サーミスタ12は、像加熱部材としての定着ローラ1の表面のうち、通紙部領域(通紙部)P2から外れた非通紙部領域(非通紙部)P3の温度を検知する本発明の第2温度検知手段を構成する。
第1及び第2サーミスタ11,12の定着ローラ温度検知信号は、画像形成装置100に設けられた制御部(CPU)104に入力される。この制御部104は、装置のメイン電源スイッチ(不図示)のONにより装置を起動させ、所定の作像シーケンス制御をスタートさせる。定着装置114は、駆動源(不図示)の起動により定着ローラ1の回転を開始する。この定着ローラ1の回転に従動して加圧ローラ2も回転(連れ回り回転)する。
制御部104は、第1サーミスタ(第1温度検知手段)11の検知結果が所定のキュリー温度(例えば205℃)よりも低い第1温度(定着温度で例えば195℃)となるように、コイル電源116を制御する制御手段を構成する。制御部104は、第2サーミスタ12の検知結果が、所定のキュリー温度(例えば205℃)以下で且つ上記第1温度(例えば195℃)よりも高い第2温度に達した場合に、コイル電源116の最大電力量(電力量)を上記第2温度に達する前の最大電力量(電力量)よりも低下させる。なお、本実施形態では、上記第2温度は例えば、A3サイズ紙の場合は205℃、ハガキサイズ紙の場合は200℃である。
制御部104は、第2温度として、記録材通紙方向に直交する幅が大きい記録材(大サイズ紙:A3サイズ紙)の第2温度(例えば205℃)よりも、幅が小さい記録材(小サイズ紙:ハガキサイズ紙)の第2温度(例えば200℃)の方が低くなるように設定する。
制御部104は、誘導コイル6を駆動するためのコイル電源116を起動させ、このコイル電源116から誘導コイル6に高周波電流(例えば10〜500kHz)を供給させる。これにより、誘導コイル6の周囲に高周波交番磁束が発生し、定着ローラ1が電磁誘導発熱して定着温度(所定温度)に向かって、つまり本実施形態では195℃に向かって昇温していく。この定着ローラ1の昇温が第1及び第2サーミスタ11,12で検知され、その検知温度情報が制御部104に入力される。
制御部104は、第1及び第2サーミスタ11,12から入力される定着ローラ1の検知温度が、第1温度(定着温度)である例えば195℃に維持されるように、コイル電源116から誘導コイル6に供給される電力(電力量)を制御して、定着ローラ1の温度を立ち上げる。これにより、定着ローラ1を定着温度195℃とする温度調整が行われる。
この状態において、定着ニップ部Nに対して作像部側から未定着トナー像tを担持した記録材Pが導入されて定着ニップ部Nを挟持搬送されていくことで、定着ローラ1の熱と定着ニップ部Nの加圧力とで、未定着トナー像tが記録材Pの面に加熱定着される。
例えば、小サイズ紙の通紙が連続的になされると、通紙部領域である小サイズ紙の通紙部領域P2に対応する定着ローラ部分の温度は、第1温度(定着温度)である195℃に維持される。この場合、非通紙部領域(非通紙部)P3に対応する定着ローラ部分の温度は、この定着ローラ部分の熱が記録材やトナー像の加熱に消費されないので、定着温度195℃を越えて昇温していく。
本実施形態では、低減した最大電力量を復帰する場合は、以下のように制御する。即ち制御部104は、コイル電源116の最大電力量を低下させた後で、第2サーミスタ12による検知結果(非通紙部温度)が、第1温度以下(定着温度以下)となった際に、コイル電源116の最大電力量を低下させる前の最大電力量に復帰させる。つまり、最大電力量を元に戻すように制御する。なお、本実施形態では、上記第1温度以下とは、例えば195℃若しくは195℃よりも低くなった場合である。
また本実施形態は、像加熱装置としての定着装置114と、定着装置114に記録材を搬送する搬送手段としての例えば感光体ドラム105及び転写帯電ローラ109とを有する構成を備える。さらに、感光体ドラム105及び転写帯電ローラ109を制御して、定着装置114に順次搬送される記録材の間隔(紙間)を調整する調整手段としてのプリントコントローラ103を有している(図1参照)。
このプリントコントローラ103は、コイル電源116の最大電力量を低下させた場合の方が、コイル電源116の最大電力量を低下させる前よりも記録材の間隔(いわゆる「紙間」)を長くするように制御する。これにより、低下した最大電力量供給時での定着ローラ1による定着を良好に行うことができる。
ここで、定着ローラ1が、キュリー温度付近で昇温し難くなるメカニズムについて説明する。
すなわち、電磁誘導加熱の発熱量Pは、定着ローラ1の金属層1bの表皮抵抗Rsに比例し、渦電流iの2乗に比例することから、下記の式(1)で表される。
そして、表皮抵抗Rsは、下記の式(2)で表される。
渦電流iは、誘導コイル6によって発生する磁界Hに比例する。
また、磁界Hは、コイルのターン数Nとコイル電流Iに比例することから、定着ローラ1がキュリー温度未満での発熱量Pは、下記の式(3)で表される。
上記式(3)より、定着ローラ1の温度が上昇して、透磁率μが下がると、発熱量Pが減少することがわかる。
ここで、非通紙部昇温にいたる枚数について説明すると、本実施形態では、例えば、プロセススピード350mm/sで、1分間に、A4サイズの記録材を75枚通紙することが可能である。この速度で、本発明に係るキュリー点を設定した部材(キュリー材)を用いた定着ローラ1ではなく、一般的な鉄の芯金を用いた定着ローラでB5サイズを連続通紙した場合には、150枚で、非通紙部の温度の上限である耐熱温度230℃に達してしまった。
ここで、コイル電源116の部品の昇温について説明する。つまり、上記式(2)より、定着ローラ1の温度が上昇して透磁率μが下がると、定着ローラ1の表皮抵抗Rsが小さくなるため、定着ローラ1のインピーダンスが小さくなる。このとき、電力制御を定電力制御で行っている場合、コイル電源116側からみた外部抵抗である定着ローラ1のインピーダンスが小さくなると、定着ローラ1で消費されない電力は、コイル電源116の内部抵抗で消費しなければならない。
定着ローラの温度調節制御は、一般に、定着装置で利用できる電力を最大限利用できるように、定電力制御で行うことが一般的である。従って、本発明に係る制御を行わない従来の定着装置では、定着ローラがキュリー温度付近になると、コイル電源の内部抵抗による消費電力が増えて、高周波電源による電源供給が不安定になる場合がある。
また、定着ローラ1の温度調節時の目標温度をキュリー温度以下に設定しても定着ローラ1がキュリー温度付近に昇温する原因は、前述した非通紙部昇温によるものである。非通紙部昇温する幅は、記録材の搬送方向と直交する幅方向(図2の左右方向)での記録材の幅で決まる。以下、「記録材の幅」は、記録材の搬送方向と直交する幅方向の記録材の幅を示すこととする。
定着ローラ1のインピーダンスは、非通紙部昇温している長さによって変化するため、本実施形態では、非通紙部の温度を第2サーミスタ12によって検知すると共に、記録材の幅に対応して、定着ローラ1に供給する最大電力量を低減するように制御する。
すなわち、記録材のサイズが小さく、非通紙部昇温する長さが長い場合には、低い温度で、定着ローラ1に供給する最大電力量を小さくする。より具体的には、非通紙部昇温の判断は、A3サイズでは、設定されたキュリー温度である205℃で最大電力量を低減する設定とし、ハガキサイズでは、キュリー温度手前の200℃で最大電力量を低減するようにしている。その他のサイズに関しては、比例計算で、最大電力量を下げる温度を決定している。
このように、最大電力量を下げると、結果として、定着ローラ1の温度が下がってしまうため、定着温度(像加熱温度)を維持することが難しくなる。そこで、定着温度が、トナーの定着に必要な最低の温度になった場合には、記録材の通紙間隔(紙間)を長くして定着ローラ1の温度ができるだけ下がらないようにする制御を行う。
すなわち、非通紙部昇温に対して、最大電力量を下げた結果、生産性が下がることがある。従って、少しでも生産性を維持するために、非通紙部昇温の検知をできるだけ遅らせて、最大電力量を下げるタイミングを遅くし、生産性の低下を抑えることが可能である。このような制御を行うことで、画像形成枚数があまり多くない場合は、端部昇温しないので、生産性に影響を与えないようにすることができる。
そして、非通紙部昇温していない状態での最大電力量は、例えば1000Wであるのに対して、非通紙部がキュリー温度の205℃になった状態でA3サイズを定着している場合は、約900Wに変更する。また、ハガキサイズの場合には、約300Wに変更する。
制御部104は、コイル電源116の最大電力量を低下させる際に、記録材の通紙方向に直交する幅が大きい記録材(大サイズ紙(A3サイズ紙))よりも、幅が小さい記録材小サイズ紙(ハガキサイズ紙)の方が、低下後の最大電力量が低くなるように制御する。
コイル電源116から定着ローラ1の誘導コイル6に供給する電力Psは、下記の式(4)で表される。但し、式(4)におけるLは、記録材の幅方向の幅(スラスト幅:mm)を示す。
ここで、本実施形態の定着装置114を用いた作動について図4のフローチャートを参照して説明する。
すなわち、処理がスタートすると、ステップS1において画像形成装置100にプリントジョブが入力される。そしてステップS2にて、制御部104は、第1サーミスタ11による検知温度が、所定のキュリー温度(例えば205℃)よりも低い第1温度(例えば195℃)になったか否かを判断する。その結果、第1サーミスタ11の検知温度が第1温度になっていなければ、ステップS2を繰り返す。
一方、ステップS2にて、第1サーミスタ11の検知温度が第1温度になったと判断すると、制御部104は、ステップS3において、定着装置114による定着を開始する。
引き続き、ステップS4にて、制御部104は、第2サーミスタ12による検知温度が、所定のキュリー温度以下で、且つ第1温度よりも高い第2温度(例えば、大サイズ紙の場合は205℃、小サイズ紙の場合は200℃)に達したか否かを判断する。その結果、検知温度が、所定のキュリー温度以下で、且つ第1温度よりも高い第2温度に達していなければ、ステップS3を繰り返す。
一方、ステップS4で、検知温度が、所定のキュリー温度以下で且つ第1温度よりも高い第2温度に達したと判断した場合、制御部104は、ステップS5にて、コイル電源116の最大電力量を、第2温度に達する前の最大電力量よりも低下させるように制御する。
引き続き、ステップS6にて、制御部104は、第2サーミスタ12の温度検知に基づき、第2温度が第1温度以下になったか否かを判断する。その結果、第2温度が第1温度以下になっていなければ、ステップS5を繰り返す。
一方、ステップS6にて、第2温度が第1温度以下になったと判断すると、制御部104は、ステップS7において、コイル電源116の最大電力量を、ステップS5で低減する前の最大電力量に復帰させる。
そして、ステップS8にて、制御部104は、プリントジョブに残が有るか否かを判断し、プリント残が有ると判断した場合には、ステップS3から処理を繰り返す。一方、プリント残が無いと判断した場合にはジョブを終了する。
以上の本実施形態では、制御部104が、第2サーミスタ12の検知結果が所定のキュリー温度以下で且つ第1温度よりも高い第2温度に達した場合に、コイル電源116の最大電力量を、第2温度に達する前の最大電力量よりも低下させるように制御する。これにより、定着ローラ1における非通紙部昇温を有効に抑制することができる。さらに、通紙部の温度が設定温度に維持されている状態で端部の温度が上昇したときのコイル電源116への負荷を小さくすることが可能となる。
なお、本実施形態では、もし仮に定着ローラ1が耐熱温度を超えようとした場合でも、定着ローラ1上部に接触するサーモスタット15が、耐熱温度を超えようとする時点で接点を開放して誘導コイル6への通電を確実に遮断する。これにより、定着ローラ1が耐熱温度を超える高温となることを確実に防止することができる。
このように本実施形態では、キュリー温度は、定着ローラ1で画像を加熱する定着温度(像加熱温度)よりも高い温度であって定着装置114の耐熱温度よりも低い温度に設定される。ここで、第1サーミスタ11による検知温度が定着温度となるように誘導コイル6への通電を制御する制御部104が、第2サーミスタ12による検知温度がキュリー温度未満であって定着温度よりも高い第2温度(設定温度)に達したときに、以下のようにできる。つまり、制御部104により、誘導コイル6に印加する最大電力量を、第2サーミスタ12による検知温度が第2温度に達する前の誘導コイル6に印加する最大電力量よりも小さくして、第1サーミスタ11により検知した温度が定着温度になるように制御できる。
そして、通紙部領域(通紙部)P2の温度が定着温度に維持されている状態で端部の温度が上昇したときのコイル電源116への負荷を小さくすることが可能となる。本実施形態では、定着温度の設定温度は、誘導コイル6に印加する最大電力量を小さくする前と後で同じとする。なお、最大電力量を小さくする制御を行った時には定着温度の設定温度は変えないが、その後、定着温度の設定温度を、最大電力量を小さくする制御よりも前の設定温度よりも低くしても良い。この場合でも、例えば、プロセススピードを低下させる等の制御を行うことにより、定着性を確保することができる。
本実施形態では、第1及び第2温度検知手段として第1及び第2サーミスタ11,12を用いたが、第2サーミスタ12に代えて、磁束検知手段としての磁気コイル12A(図2に破線で示す)を用いることも可能である。つまり、定着ローラ1の非通紙部領域(非通紙部)P3の温度がキュリー点に接近した際に変化する漏洩磁束を磁気コイル12Aに流れる渦電流として検知することも可能である。或いは、磁性変化に伴って励磁コイル(不図示)に供給される電流値や消費電力の変化を検知する手段を用いることも可能である。
本実施形態の電磁誘導加熱方式の定着装置114では、像加熱部材の形態は定着ローラ1に限られず、エンドレスベルト体など他の回転体による形態とすることもできる。また、像加熱部材は誘導発熱体単体の部材として構成することもでき、また、誘導発熱体の層を含む、耐熱性樹脂・セラミックス等の他の材料層との2層以上の複合層部材として構成することもできる。
以上説明した磁束発生手段による誘導発熱体の誘導加熱は、内部加熱方式に限られず、磁束発生手段を誘導発熱体の外側に配設した外部加熱方式の装置構成とすることも可能である。
なお、温度検知手段は、第1及び第2サーミスタ11,12に限らず、他の如何なる温度検知素子であってもよく、また、接触式に限らず非接触式の形態とすることもできる。
また、本実施形態では、記録材の搬送を中央基準で搬送する装置構成として説明したが、これに限らず、片側基準で搬送する構成の装置にも本発明を有効に適用できることは勿論である。