本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ、以下に詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態の燻し焼き装置の全体構成を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は天面(上面)図である。
図1のように、本実施の形態の燻し焼き装置は、燻し焼き窯100と、支持機構200と、空気導入口300と、煙突400と、燻液原液収容器500とを備えている。
また、図2は本発明の実施の形態の燻し焼き装置においての燻し焼き窯100の構成および燻し焼き手順を説明する図であり、(a)は本体円錐台部120を本体円筒部110から取りはずして分離し、本体天蓋部130を本体円錐台部120から取りはずして分離し、空気導入口300の開閉蓋部330を閉成したときの側面図、(b)は本体円錐台部120の底側周縁部を本体円筒部110の天側周縁部に載置し、本体円錐台部120の天側周縁部に載置して燻し焼き窯本体を構成し、空気導入口300の開閉蓋部330を開成支持部340によって支持して開成し、煙突400の煙突本体接続部420を煙突嵌合部430に挿嵌したときの側面図、(c1)はイネ科の植物原料Mを本体円筒部110にのみ充填したときの燻し焼き窯本体の断面図、(c2)はイネ科の植物原料Mを本体円錐台部120の途中に達するまで充填したときの燻し焼き窯本体の断面図である。なお、図2において、図1と同様のものには同じ符号を付してある。
燻し焼き窯100は、本体円筒部110と、本体円錐台部120と、本体天蓋部130と、グリッド部140と、フック150,160によって構成されている。なお、本体円筒部110、本体円錐台部120、および本体天蓋部130は、内部を燻し焼きのための空隙(底側の空気導入室101およびその天側の燻し焼き室102)とした燻し焼き窯本体を構成している。
本体円筒部110は、底面(下面)は開口されておらず、天面(上面)が開口された略円筒型(略ドラム缶型)をなす、例えばステンレス鋼製あるいは鉄製の金属体であって、燻し焼き窯本体を構成する部分である。
本体円錐台部120は、その天面および底面がいずれも開口された略円錐台型をなす、例えばステンレス鋼製あるいは鉄製の金属体であって、その底側周縁部が本体円筒部110の天側周縁部に載置されて、本体円筒部110とともに燻し焼き窯本体を構成する部分である。
本体天蓋部130は、略円盤型をなす、例えばステンレス鋼製あるいは鉄製の金属体であって、その周縁部が本体円錐台部120の天側周縁部上に載置されて、本体円錐台部120の天面開口を閉成する蓋として、本体円筒部110および本体円錐台部120とともに燻し焼き窯本体を構成する部分である。
このように、燻し焼き窯100の燻し焼き窯本体は、本体円筒部110と本体天蓋部130の間に本体円錐台部120を配設した複合体構造となっている。
なお、本体円錐台部120の天面開口径と本体天蓋部130の径は略同じであり、本体円錐台部120の底面開口径と本体円筒部110の天面開口径も略同じであるが、本体円錐台部120が略円錐台型をなしているため、本体円錐台部120の天面開口径(従って本体天蓋部130の径)は、および本体円錐台部120の底面開口径(従って本体円筒部110の天面開口径)よりも狭くなっている。
側面視において、本体円錐台部120の底角をθとすると、本実施の形態の燻し焼き装置では、底角θは10°〜80°の範囲内とする。つまり、底角θが10°未満あるいは80°を超えるものは、本体円錐台部120として使用しないものとする。
さらに、本体円錐台部120の底角θは、40°〜50°であることが望ましい。つまり、この底角θが40°〜50°の範囲内となるように、本体円錐台部120の天面開口径寸法および底側開口径寸法ならびに高さ寸法を設定することが望ましい。
グリッド部140は、例えばステンレス鋼製あるいは鉄製のグリッド円盤体であって、燻し焼き窯本体の本体円筒部110内に、取りはずし可能に水平張設されている。そして、このグリッド部140によって、燻し焼き窯本体内の空隙は、底側(下側)の空気導入室101と、天側の燻し焼き室102に分割されている。
フック150は、本体円筒部110の天側周縁部近傍の側面部位に複数個設けられており、本体円筒部110の天側周縁部上に載置された本体円錐台部120を当接固定する役目を果たす。
同様に、フック160は、本体円錐台部120の天側周縁部近傍の側面部位に複数個設けられており、本体円錐台部120の天側周縁部上に載置された本体天蓋部130を本体円錐台部120に当接固定する役目を果たす。
燻し焼き窯100の燻し焼き窯本体において、本体円錐台部120は、本体円筒部110から取りはずし可能であり、本体天蓋部130も、本体円錐台部120から取りはずし可能である。
つまり、本体円筒部110と、本体円錐台部120と、本体天蓋部130とは、互いに分離可能な単体部品となっている。なお、本体円筒部110と本体円錐台部120を分離不可能な一体構造とすること、または/および本体円錐台部120と本体天蓋部130を分離不可能な一体構造とすることも可能である。
イネ科の植物原料の燻炭化およびこの燻炭の燻灰化の際には、燻し焼き窯本体内に燻し焼きのための略閉成された空隙を確保する必要がある。
本実施の形態の燻し焼き装置では、本体円錐台部120をフック150で本体円筒部110の天側周縁部に当接固定し、本体天蓋部130をフック160で本体円錐台部120の天側周縁部に当接固定して本体円錐台部120の天面開口を閉成することによって、上記の空隙を確保する。
しかし、上記植物原料を燻し焼き窯本体の燻し焼き室内に充填する際や、燻し焼きによって得られた燻炭あるいは燻灰を燻し焼き室内から取り出す際には、上記空隙の一部に開口を確保する必要がある。
本実施の形態の燻し焼き装置では、本体円錐台部120および本体天蓋部130を本体円筒部110から取りはずす、あるいは本体天蓋部130を本体円錐台部120から取りはずすことによって、上記植物原料の充填および燻炭または燻灰の取り出しのための開口を確保する。
また、上記植物原料の燻炭化を開始するにあたっては、この植物原料の天面に点火するが、この点火のための種火を投入する投入口あるいは隙間を確保する必要がある。
本実施の形態の燻し焼き装置では、本体天蓋部130の周端部位を持上げることによって、本体円錐台部120の天側周縁部との間に僅かな略円環型の隙間を作り、この隙間から種火を投入することによって、上記植物原料の天面に点火をする。
本体円錐台部120を本体円筒部110から取りはずし可能な構成とすることによって、本体円筒部110,本体円錐台部120,本体天蓋部130の内面の洗浄や、グリッド部140の取りはずし洗浄等、燻し焼き窯100のメンテナンス作業を容易にすることができるとともに、植物原料Mの充填作業や燻炭または燻灰の取り出し作業を容易にすることができる。
また、本体天蓋部130を本体円錐台部120から取りはずし可能な構成とすることによって、本体天蓋部130の洗浄等のメンテナンス作業を容易にすることができるとともに、植物原料Mの点火の際の種火の投入のための隙間を容易に確保できるので、種火の投入口を設ける必要がない。
支持機構200は、燻し焼き窯100の周面に凸設された2つの支軸を掛支することによって、燻し焼き窯100を中空位置に支持している。なお、上記2つの支軸は、上面視において、互いのなす中心角が180°となり、かつそれぞれが空気導入口300となす中心角が90°となる位置に設けられている。
この支持機構200は、植物原料Mの充填作業や燻炭または燻灰の取り出し作業の際には、上記2つの支軸を揺動軸として揺動可能なように燻し焼き窯100を支持し、燻し焼きの際には、上記揺動を抑止して中空に静止固定されるように燻し焼き窯100を支持する。
空気導入口300は、開口部310と、フード部320と、開閉蓋部330と、開成支持部340によって構成されている。
この空気導入口300は、本体円筒部110の底面に近い周面部位に設けられて燻し焼き窯100の空気導入室101に通じており、開成時には、燻し焼き窯100の空気導入室101およびグリッド部140を介して、燻し焼き窯100の燻し焼き室102内に空気(大気)を自然送気し、閉成時には、空気の自然送気を停止する役目を担っている。
開口部310は、本体円筒部110の底面に近い周面部位に削設されており、この部位を開口している。
フード部320は、開口部310を囲い込むようにして、本体円筒部110の周面に突設された略角筒型の部分である。
開閉蓋部330は、フード部320の突端に設けられており、フード部320の天側端辺(上端辺)を回動軸として回動可能であり、この開閉蓋部330を回動させることによって、空気導入口300を開閉可能としている。
つまり、開閉蓋部330をフード部320の左右端辺および底側端辺(下端辺)から離間させることによって、空気導入口300が開成され、燻し焼き窯100の空気導入室101に空気が自然送気される。
逆に、開閉蓋部330をフード部320の左右端辺および底側端辺に当接させることによって、空気導入口300が閉成され、燻し焼き窯100の空気導入室101に空気が自然送気されないようにする。
開成支持部340は、開閉蓋部330を静止支持して、フード部320の左右端辺および底側端辺から離間させることによって、空気導入口300の開口量を固定保持する。
煙突400は、煙突本体長筒部410と、煙突本体接続部420によって構成されている。
この煙突400は、植物原料Mの燻し焼き(燻炭化)の際に燻し焼き窯100の燻し焼き室102内に生じる燻煙(炭化時燻煙)を自然排気し、燻炭の燻し焼き(燻灰化)の際に燻し焼き室102内に生じる燻煙(灰化時燻煙)を自然排気する役目を果たすとともに、内部を通過する燻煙を高効率に冷却して燻液原液を結露生成させる役目を果たす。
煙突本体長筒部410は、略長筒をなしており、その底部近傍の側面部位において煙突本体接続部420の一端に連接されており、この煙突本体接続部420との連接部位を中心軸として回転可能である。
この煙突本体長筒部410の長尺の略中間位置には、1個または複数個の冷却孔が設けられている。また、この煙突本体長筒部410の底部には、燻液原液の滴下孔が設けられている。
煙突本体接続部420は、L字型の略円筒をなしており、その他端は、本体天蓋部130に固設された煙突嵌合部430の内周面に取りはずし可能に挿嵌されている。
煙突嵌合部430は、本体天蓋部130の周端部の近く、上面視において本体天蓋部130の中心からずれた部位に、略円筒をなして凸設されている。
この煙突嵌合部430内においては、本体天蓋部130が開口されているので、突嵌合部430に煙突接続部420が挿嵌されることによって、燻し焼き窯100に煙突400が取りはずし可能に挿通接続されることとなる。
そして、上面視円周において、空気導入口300の位置を回転角0°の位置とすると、本体天蓋部130は、煙突嵌合部430が回転角約180°の位置となるように、本体円錐台部120の天側周縁部上に載置される。従って、上面視において、煙突嵌合部430と、燻し焼き窯100の周面に設けられている空気導入口300とのなす中心角は、約180°となる。
なお、煙突嵌合部430は、上記のように本体天蓋部130の中心からずれた部位に設けることの他、本体天蓋部130の略中心部位に設けることも可能である。また、煙突嵌合部430に煙突嵌合部430の内周面が挿嵌される構成とすることも可能である。
煙突支柱部440は、煙突本体長筒部410の長尺中間位置よりも天側の部位と燻し焼き装置の設置面(例えば地面等の水平面)の間に配置されて、煙突本体長筒部410を支持する。
燻液原液収容器500は、煙突本体長筒部410の燻液原液の滴下孔の直下に位置するように、煙突本体長筒部410の底部に釣下げられている。
上記の煙突400は、その長尺が傾斜するようにして配置される。つまり、煙突本体長筒部410が、例えばその長尺が鉛直と鈍角をなすように(燻し焼き装置の設置面と鋭角をなすように)、傾斜して配設される。
そして、この煙突本体長筒部410を傾斜配置した構成、さらには煙突本体長筒部410に冷却孔を設けた構成によって、煙突本体長筒部410内面において高効率に冷却結露生成された燻液原液が、滴下孔から滴下して、燻液原液収容器500内に貯められる。
本実施の形態の燻し焼き装置を使用して、燻炭,燻灰,燻液を製造する手順について、以下に説明する。
イネ科の植物原料として、ここでは籾殻を使用する。なお、この他に、例えば、稲藁,そば殻,竹,葦,薄、あるいはこれらと籾殻を混合したものを植物原料として使用することも可能である。
植物原料となる籾殻は、あらかじめ十分に乾燥させておく。この籾殻全体の含水率は、例えば10〜35重量%にすることが望ましく、最適値は15〜25重量%である。
このように、植物原料全体の含水率を10〜35重量%とするのは、10%重量未満では燻液原液の回収量が少なくなるおそれがあり、35重量%を超過すると、含有水分によって燻し焼きが鎮火中断するおそれがあるからである。
なお、植物原料として、稲藁など、主として植物稈部分を使用する場合には、燻し焼き時の空気の流通性を確保するために、上記植物稈部分をあらかじめ例えば3cm以下に切断しておくことが望ましい。また、植物原料の含水率を調整するために、植物原料に、おが屑や落葉を混合することも可能である。
まず、植物原料を燻し焼き窯100の燻し焼き室102内に集積充填する。つまり、作業者は、本体円錐台部120を本体円筒部110に載置したまま本体天蓋部130を本体円錐台部120から取りはずすか、あるいは本体天蓋部130および本体円錐台部120を本体円筒部110から取りはずす(図2(a)参照)。そして、グリッド部140を底面として仕切られた燻し焼き室102内に、植物原料である籾殻を集積充填する。
なお、この植物原料の充填作業の際に、作業者は、支持機構200によって中空支持されている燻し焼き窯100の本体円筒部110を、必要に応じて揺動させて傾斜させることによって、容易に植物原料の充填作業をすることができる。この場合、植物原料の充填を終えたら、本体円筒部110の中心軸が略鉛直となるように、燻し焼き窯100を支持機構200に静止支持させる。
次に、作業者は、本体天蓋部130および本体円錐台部120を取りはずしている場合には、本体円錐台部120を本体円筒部110の天側周縁部上に載置したあと、さらに本体天蓋部130を本体円錐台部120の天側周縁部上に載置する(図2(b)参照)。なお、このとき、フック150は、ロック解除位置からロック位置に操作されるが、フック160はこの次の点火作業に備えて解放位置に保持される。
また、作業者は、本体天蓋部130のみを取りはずしている場合には、この本体天蓋部130を本体円錐台部120の天側周縁部上に載置する(図2(b)参照)。なお、このとき、フック150はロック位置に保持されており、フック160はこの次の点火作業に備えて解放位置に保持される。
このような作業によって、植物原料Mが、本体円筒部110,本体円錐台部120,本体天蓋部130によって構成された燻し焼き窯本体内の燻し焼き室102に集積充填される(図2(c1),(c2)参照)。
この場合、植物原料Mの底面(下面)位置は、グリッド部140の張設位置で固定されるが、植物原料Mの天面(上面)位置は、その充填量によって、本体円筒部110に留まる場合(図2(c1)参照)と、本体円筒部110を超えて本体円錐台部120の途中まで達する場合(図2(c2)参照)とがある。
これとともに、作業者は、空気導入口300の開閉蓋部330を開成支持部340によって静止支持させ、燻し焼き窯100の空気導入室101に空気が自然送気されるように、開閉蓋部330をフード部320の左右端辺および底側端辺から離間させて空気導入口300を開成固定する(図2(b)参照)。
例えば、開成支持部340は、その一端で開閉蓋部330を支持するとともに、その他端または中間の部位がグリッド部140の近傍において可燃物質を介して支持されるように配設される。
さらに、作業者は、煙突400の煙突本体接続部420を煙突嵌合部430に挿嵌し、煙突本体長筒部410を煙突支柱部440によって支持して、煙突400を傾斜配置する。そして、煙突本体長筒部410の底端部位(燻液原液滴下孔の直下)に、燻液原液収容器500を釣下配置する。
次に、燻し焼き窯本体の燻し焼き室102内に充填された植物原料Mの天面に点火する。つまり、作業者は、本体天蓋部130を天側に僅かにずらす操作をして、本体円錐台部120との間に幅の狭い略円環型の隙間を作り、この隙間から植物原料の天面に点火のための種火を投入し、上記隙間から供給される空気との協働によって炎焼(炎を伴った燃焼)部位が広がり、植物原料の全天面表層が炎焼するに至るまで、上記隙間を保持する。
そして、作業者は、植物原料の天面表層の炎焼の様子を上記隙間から目視確認し、植物原料の全天面表層が炎焼したことを確認したら、本体天蓋部130をもとの位置に戻す操作、つまり本体天蓋部130の全周縁部を本体円錐台部120の天側周縁部に載置する操作をして、上記隙間を閉成する。そして、フック160をロック解除位置からロック位置に操作して、本体天蓋部130を本体円錐台部120の天側に当接固定する。
例えば、円盤にテーパ型突起を凸設した補助具をあらかじめ用意しておき、上面視において回転角約0°の本体天蓋部130の周端部位を持ち上げ、その本体天蓋部130の周端部位と本体円錐台部120の天側周縁部位の間に、上記テーパ型突起を挟み込んで、上記隙間を確保する。このとき、略円環型の隙間の最大幅は、例えば3cm〜5cmである。そして、挟み込んだ上記テーパ型突起を、本体天蓋部130と本体円錐台部120の間から引き抜くことによって、上記隙間を閉成する。
植物原料の天面表層の炎焼は、本体円錐台部120の天面開口が本体天蓋部130によって閉成されたあとも、しばらくの間、本体天蓋部130と植物原料の天面との間の閉空間に介在する空気中の酸素を消費しながら継続する。
そして、上記介在空気中の酸素を消費すると、炎焼を終了し、燻し焼きが開始される。なお、燻し焼きが開始されると、煙突400の排煙の色が黒色から白色に変化する。つまり、上記炎焼の間は煙突400から黒色の煙が排出されるが、本体天蓋部130によって本体円錐台部120の天面開口が閉成されたあとの5〜10分間は、上記炎焼が継続し、この間は白色の排煙であるが、燻し焼きが開始されると、黒色の排煙(燻煙)となる。
燻し焼き窯本体を略円筒型とした従来の燻し焼き装置では、植物原料の点火の不完全性に起因して、燻し焼き炭化の終了時に、燻し焼き室の天側周端部位に植物原料が未炭化のまま残ってしまうことがあった。
植物原料を余すことなく燻炭とするためには、燻し焼き室内に充填された植物原料の全天面表層を確実に炎焼させ、充填されている全ての植物原料において余すことなく層順次に燻し焼き炭化を継続できるようにする必要がある。
本実施の形態の燻し焼き装置では、燻し焼き窯本体を、本体円筒部110と本体天蓋部130の間に本体円錐台部120を設けた構成としており、燻し焼き室102において、本体天蓋部130と植物原料Mの天面の間に閉成空間を確保できるようにして、本体円筒部110を超えて本体円錐台部110の途中に達するまで植物原料Mを充填すれば(図2(c2)参照)、点火する植物原料Mの天面の表面積を狭くすることができる。
そして、植物原料Mの天面の表面積が狭くなれば、投入した種火による炎焼部位を広げなければならない部分も狭くなるので、従来よりも容易かつ確実に植物原料Mの全天面表層を炎焼させることができるようになり、未炎焼の部分あるいは炎焼しても鎮火してしまう部分の発生を防止して、充填した全ての植物原料Mを従来よりも確実に燻炭とすることができるようになる。
ここで、本体円錐台部120の底角θが鋭角過ぎると、本体円錐台部120と本体円筒部110の境界部位に未炭化部分を生じてしまうおそれがある。逆に、本体円錐台部120の底角θが大き過ぎると、植物原料Mの天面の表面積を狭めるためには本体円錐台部120の高さ寸法を大きくする必要があるので、植物原料Mの充填容量が少なくなってしまう。このため、本体円錐台部120の底角θは、40°〜50°の範囲内に設定することが望ましい。
次に、燻し焼き窯本体の燻し焼き室102内において、植物原料の燻し焼きを層順次に移動継続させて、この植物原料を燻炭化する。
つまり、植物原料の燻し焼きは、この植物原料の天面表層(最上層)の炎焼が完了することによって最上層から開始され、植物原料の内の燻し焼きされている部分(植物原料燻し焼き層)が、最上層から下層に向けて順次進んでいく。そして、この植物原料燻し焼き層がグリッド部140の天面直上に位置する底面表層(最下層)まで到達すると、燻炭化を終了する。
植物原料の燻し焼きが開始されると、植物原料燻し焼き層は、その底側からの空気供給に応じて、植物原料の上層から下層に移動していく。酸素を含んだ空気は、空気導入口300から燻し焼き窯100の空気導入室101内に自然送気され、グリッド部140のグリッドを介して、まだ燻し焼きされていない下層の植物原料の間を通過し、植物原料燻し焼き層に供給される。
そして、植物原料燻し焼き層の熱と、底側から供給される空気との相互作用によって、植物原料燻し焼き層直下の植物原料層の燻し焼き炭化(燻炭化)が開始され、このサイクルの繰り返しによって、植物原料燻し焼き層の下層移動がなされる。
このように、燻し焼き層を植物原料の上層から下層に移動させながら継続させ、植物原料の最下層まで中断することなく到達させることにより、燻し焼き室102内に充填された植物原料は、層順次に全て燻し焼きされ、燻炭となる。
この植物原料の燻し焼き炭化(燻炭化)は、500℃以下の低温での燻し焼き炭化(低温燻炭化)となる。なお、この燻炭化の際に、燻し焼き窯100は静止しており、植物原料を流動させることはしないので、上記燻炭は、植物原料の容姿が略そのまま残ったものとなる。本実施の形態の籾殻を植物原料とした燻炭(籾殻燻炭)では、籾殻の容姿が略そのまま残ったものとなる。
上記植物原料の燻炭化では、空気導入口300の開閉蓋部330の開成位置(開成角度)は開成支持部340によってあらかじめ固定されており、開口量を固定された空気導入口300から燻し焼き窯本体100の空気導入室102内に空気が自然送気され、グリッド部140を介して燻し焼き室102に送り込まれるようになっている。従って、空気導入口300による送気条件は、燻炭化の開始から終了まで固定されたままである。
また、上記植物原料の燻炭化において、煙突400の煙突本体長筒部410は、煙突支持部440によってあらかじめ固定傾斜配置されており、燻し焼き窯100の燻し焼き室102内から傾斜角および開口量を固定された煙突400を通過して燻煙(炭化時燻煙)が自然排気されるようになっている。従って、煙突400による排気条件も、燻炭化の開始から終了まで固定されたままである。
上記植物原料の燻炭化の際、空気導入口300から自然送気された空気は、植物原料燻し焼き層よりも下層の植物原料層の間を通過して植物原料燻し焼き層まで到達し、主にこの植物原料燻し焼き層で消費される。
植物原料燻し焼き層において生じた燻煙は、そこよりも上層のすでに燻炭となった層(炭化時燻炭層)の間を上昇し、燻し焼き窯100の本体円錐台部120を通過して煙突400内に誘導され、煙突400から自然排気される。
上記植物原料の燻炭化において、炭化時燻炭層は、下層の植物原料燻し焼き層からの上記燻煙の保護作用によって灰化が防止されるので、燻炭のまま留まることとなる。
本実施の形態の燻し焼き装置では、燻炭化に必要かつ適量の空気を空気導入口300から植物原料燻し焼き層の底側に自然送気するとともに、炭化時燻煙を、植物原料燻し焼き層の天側に設けた本体円錐台部120を経由させたあとに煙突400から自然排気する構成とすることによって、植物原料を最上層から下層に向けて層順次に炭化させるようにしているので、燻炭化時において、燻し焼き室102内を従来よりも高い安定性(再現性)をもって確実に500℃以下の低温燻炭化の環境とすることができる。
つまり、送気に関しては、高温炭化を生じるような過剰な空気供給がなされることなく、植物原料の燻し焼きをゆっくりじっくりと継続するのに適量な空気の自然送気がなされる構成とするとともに、排気に関しては、高温炭化を生じるような過剰な高速排気がなされることなく、植物原料の燻し焼きをゆっくりじっくりと継続できるように本体円錐台部120において排気通路を徐々に狭めたあとに自然排気がなされる構成とすることによって、同時に燻し焼きされる植物原料層を薄くして燻し焼き層全体の時間当たりの発熱量の増加を抑制し、かつ燻し焼きが途中で途絶えることのない送気と排気の循環をさせることができるので、燻炭化時の燻し焼き温度を従来よりも低温にかつ安定して保持したまま継続させることができる。
そして、このような低温燻炭化によって、燻液成分およびタール成分が適度に揮発除去されるとともに、ケイ酸成分が非晶質構造のまま豊富に残留するとともに、有機成分が豊富に残留した燻炭が得られる。
なお、上記低温燻炭化の環境を確実に確保しつつ、層順次の燻炭化を確実に継続させるために、本体円錐台部120の底角θは、40°〜50°の範囲内に設定することが望ましい。本実施の形態では、本体円錐台部120の底角θを約45°とする。
本実施の形態によって得られる燻炭は、アルカリ性ではなく弱酸性〜略中性であって、PH値のばらつきの少ない(再現安定性の高い)ものである。このような燻炭は、その特性条件が厳しい用途にも、容易に使用が可能である。従って、本実施の形態による燻炭は、植物成長調整剤や土壌改良剤としての用途を含め、様々な用途に使用可能な価値が高いものである。
ここで、本実施の形態の燻し焼き装置では、燻し焼き窯本体を構成する本体円錐台部120が、従来よりも燻炭化温度のばらつきを少なくする(再現安定性を高くする)作用をすると推測される。
このため、本実施の形態の燻し焼き装置では、燻し焼き窯本体が略円筒型である従来の燻し焼き装置よりも、PH値の再現安定性が高い燻炭を得ることができる。
なお、本実施の形態の燻し焼き装置では、燻し焼き窯100を静止配置して、空気導入口300による自然送気および煙突400による自然排気をする構成としていることによって、燻炭化時に、植物原料を流動および風動させることもないので、植物原料の容姿が略そのまま残った燻炭が得られる。従って、本実施の形態によって得られた燻灰を目視した者は、それがいかなる植物原料の燻炭であるかを容易に判別可能である。
燻し焼きによって熱せられて植物原料中から揮発した燻液原液成分(燻液成分とともにタール成分等も含むもの)は、燻煙(炭化時燻煙)に混合されて上昇し、煙突400内に誘導され、この煙突400内で冷却されて結露し、燻液原液収容器500内に滴下貯集される。この燻液原液収容器500内に貯集された燻液原液(炭化時燻液原液)からは、必要に応じてタール成分等が除去分離され、燻液(炭化時燻液)が抽出される。
煙突400を傾斜配置することによって燻煙の冷却結露効果を高めることができるのは周知であるが、本実施の形態の燻し焼き装置では、さらに燻し焼き窯100に本体円錐台部120を設けて従来よりも低温での燻炭化を可能とすることによって、煙突400内に誘導される炭化時燻煙を従来よりも低温化することができので、上記炭化時燻煙の冷却結露効果を従来よりもさらに高めることができる。
このため、本実施の形態の燻し焼き装置による上記低温燻炭化では、炭化時燻液原液成分の冷却結露効果、従って炭化時燻液原液の収集効果が極めて高い。本実施の形態の燻し焼き装置による炭化時燻液原液の回収量は、例えば、燻し焼き室本体が略円筒型である従来の燻し焼き装置による炭化時燻液原液の回収量のおよそ1.5〜2.5倍である。
燻炭を製造する場合には、植物原料燻し焼き層が最下層に到達した時点で、燻し焼き窯本体の空気導入室101に空気が自然送気されなくなるように、空気導入口300の開成支持部340による開閉蓋部330の支持を解除して開閉蓋部330をフード部320の左右端辺および底側端辺に当接させ、空気導入口300を閉成する(図2(a)参照)。この空気導入口300の閉成によって、燻し焼き窯100を消壺のように動作させ、燻炭を消火することができる。
例えば、あらかじめ、その一端で開閉蓋部330を支持するとともに、その他端または中間の部位がグリッド部140の近傍において可燃物質を介して支持された開成支持部340を配設しておくことによって、植物原料燻し焼き層が最下層に到達したときに上記可燃物質が焼けて、開成支持部340は、その他端または中間の部位を支持するものがなくなり、これによって開閉蓋部330を支持できなくなる。従って、空気導入口300は、植物原料燻し焼き層が最下層に到達したことを自動検知して、自動閉成することとなる。
なお、燻炭の消火の際には、上記空気導入口300の閉成とともに、作業者は、煙突400を本体天蓋部130の煙突嵌合部430から取りはずし、この煙突嵌合部430も閉成することが望ましい。これによって、消火にかかる時間を短縮することができる。
燻灰を製造する場合には、植物原料燻し焼き層が最下層に到達して植物原料を燻炭としたあとに消火せずに、この燻炭の燻し焼きを層順次に移動継続させて、この燻炭を燻灰化する。
つまり、燻炭の燻し焼きは、植物原料の燻し焼きのときとは逆に、直近での植物原料燻し焼き層であった燻炭の最下層から開始され、燻炭の内の燻し焼きされている部分(燻炭燻し焼き層)が、最下層から上層に向けて順次進んでいく。そして、この燻炭燻し焼き層が燻炭の天面表層(最上層)の直下まで到達すると、この天面表層の燻炭を未灰化で残したまま、燻灰化を終了する。
燻炭の燻し焼きが開始されると、燻炭燻し焼き層は、その底側からの空気の供給に応じて、燻炭の下層から上層に移動していく。酸素を含んだ空気は、空気導入口300から燻し焼き窯100の空気導入室101内に自然送気され、グリッド部140のグリッドを介して、すでに燻し焼きされて灰化した下層の燻灰の間を通過し、燻炭燻し焼き層に供給される。
そして、燻灰の余熱と、底側から供給される空気との相互作用によって、燻灰直上の燻炭層の燻し焼き灰化(燻灰化)が開始され、このサイクルの繰り返しによって、燻炭燻し焼き層の上層移動がなされる。
このように、燻し焼き層を燻炭の下層から上層に移動させながら継続させ、燻炭の上層まで到達させることにより、燻し焼き室102内に生成された燻炭は、層順次に燻し焼きされ、燻灰となる。
なお、上記燻灰化の終了時には、燻炭の天面表層に未灰化の薄い燻炭層が残る。例えば、籾殻を植物原料として使用した場合には、籾殻1層〜数層分の薄い籾殻燻炭層が未灰化のまま残る。
この燻炭の燻し焼き灰化(燻灰化)は、800℃以下の低温での燻し焼き灰化(低温燻灰化)となる。なお、この燻灰化の際にも、燻し焼き窯100は静止しており、燻炭を流動させることはしないので、上記燻灰は、燻炭の容姿が略そのまま残ったものとなる。本実施の形態の籾殻を植物原料とした燻灰(籾殻燻灰)では、籾殻燻炭の容姿、つまり植物電量である籾殻の容姿が略そのまま残ったものとなる。
上記燻炭の燻灰化では、空気導入口300の開閉蓋部330の開成位置(開成角度)はあらかじめ固定されており、開口量を固定された空気導入口300から燻し焼き窯本体100の空気導入室102内に空気が自然送気され、グリッド部140を介して燻し焼き室102に送り込まれるようになっている。従って、空気導入口300による送気条件は、燻灰化の開始から終了まで固定されたままである。
ただし、燻灰化時の空気導入口300による送気条件は、時間当たりの空気の量が燻炭化時のそれよりも少なくなるように設定される。つまり、空気導入口300の実質の送気開口量を、例えば燻炭化時のおよそ1/15〜3/4に狭くする。
例えば、本体円筒部110に設けた開口部310とは別に、開閉蓋部330にも開閉可能な開口を設けておけば、植物原料燻し焼き層が最下層に到達したことを開成支持部340によって自動検知し、開成支持部340による支持が解除されて開閉蓋部330がフード部320の左右端辺および底側端辺に当接しても、空気導入口300は上記燻炭の消火時のように完全閉成されず、開閉蓋部330の開口および開口部310を介して自然送気が継続されることとなるので、燻灰化に遷移したあとの実質の送気開口量を遷移前よりも狭くできる。
また例えば、フード部320の左右端辺の一部あるいは底側端辺の一部に取りはずし可能な凸部を設けておけば、植物原料燻し焼き層が最下層に到達したことを開成支持部340によって自動検知し、開成支持部340による支持が解除されても、開閉蓋部330は上記凸部に当接することとなって、開閉蓋部330とフード部320の間に隙間を確保することができ、空気導入口300は上記燻炭の消火時のように完全閉成されず、上記隙間および開口部310を介して自然送気が継続されることとなるので、燻灰化に遷移したあとの実質の送気開口量を遷移前よりも狭くすることができる。
また、上記燻炭の燻灰化において、煙突の煙突本体長筒部410は、煙突支持部440によってあらかじめ固定傾斜配置されており、燻し焼き窯100の燻し焼き室101内から傾斜角および開口量を固定された煙突400を通過して燻煙(灰化時燻煙)が自然排気されるようになっている。従って、煙突400による排気条件も、燻灰化の開始から終了まで固定されたままである。
なお、燻灰化時の煙突400による排気条件は、例えば燻炭化時の排気条件と同じに設定される。
上記燻炭の燻灰化の際、空気導入口300から自然送気された空気は、燻炭燻し焼き層よりも下層の燻灰の間を通過して燻炭燻し焼き層まで到達し、主にこの燻炭燻し焼き層で消費される。
燻炭燻し焼き層において生じた燻煙は、そこよりも上層の未灰化の燻炭層(灰化時燻炭層)の間を上昇し、燻し焼き窯100の本体円錐台部120を通過して煙突400内に誘導され、煙突400から自然排気される。
本実施の形態の燻し焼き装置では、燻灰化に必要かつ適量な空気を空気導入口300から燻炭燻し焼き層の底側に自然送気するとともに、灰化時燻煙を、燻炭燻し焼き層の天側に設けた本体円錐台部120を経由させたあとに煙突400から自然排気する構成とすることによって、燻炭を最下層から上層に向けて層順次に灰化させるようにしているので、燻灰化時において、燻し焼き室102内を従来よりも高い安定性(再現性)をもって確実に800℃以下の低温燻灰化の環境とすることができる。
つまり、送気に関しては、高温灰化を生じるような過剰な空気供給がなされることなく、燻炭の燻し焼きをゆっくりじっくりと継続するのに適量な空気供給がなされる構成とするとともに、排気に関しては、燻炭の高温灰化を生じるような過剰な高速排気がなされることなく、燻炭の燻し焼きをゆっくりじっくりと継続できるように本体円錐台部120において排気通路を徐々に狭めたあとに自然排気がなされる構成とすることによって、同時に燻し焼きされる燻炭層を薄くして燻し焼き層全体の時間当たりの発熱量の増加を抑制し、かつ燻し焼きが途中で途絶えることのない送気と排気の循環をさせることができるので、燻灰化時の燻し焼き温度を従来よりも低温にかつ安定して保持したまま燻し焼きを継続させることができる。
そして、このような低温燻灰化によって、燻炭中のケイ酸成分の結晶化を抑制して、有機質成分をじっくりと完全燃焼させることができるので、ケイ酸成分が非晶質構造のまま高濃度に含有された燻灰が得られる。
なお、上記低温燻灰化の環境を確実に確保しつつ、層順次の燻灰化を確実に継続させるために、本体円錐台部120の底角θは、40°〜50°の範囲内に設定することが望ましい。本実施の形態では、本体円錐台部120の底角θを約45°とする。
本実施の形態によって得られる燻灰中に主成分として高濃度に含有されるケイ酸は、低温燻灰化によって溶解性の高い非晶質のものである。このような燻灰を農作物肥料として使用すれば、農作物が必要量のケイ酸成分を容易に摂取することができる。従って、本実施の形態による燻灰は、ケイ酸質肥料として価値の高い農作物肥料である。
特に、本実施の形態の植物原料である籾殻は、ケイ酸成分を極めて高濃度に含有しているので、得られた籾殻燻灰は、上記低温燻炭化および上記低温燻灰化によって、水等の溶解性の極めて高いケイ酸成分を極めて高濃度に含有した肥料(籾殻燻灰肥料)となる。
燻し焼き窯本体が略円筒型である従来の燻し焼き装置も含め、空気を燻炭の底側から自然送気し、燻煙を燻炭の天側から自然排気して、燻し焼き窯本体内の燻炭を流動させることなく燻し焼きして低温で燻灰化させると、燻炭の天面表層に未灰化の薄い燻炭層が残留し、この天面表層の直下までが燻灰化される。
従って、燻し焼き装置の空気の送気条件および燻煙の排気条件が、燻灰化の際に、上記のように天面表層に未灰化の薄い燻炭層を残してその直下までで燻灰化が終了するような条件になっていることが、800℃を超える高温灰化を抑制して低温燻灰化を実現するための必要条件であると推測される。
ここで、本実施の形態の燻し焼き装置では、燻炭の天面表層に未灰化の薄い燻炭層が残留してその直下までが燻灰化される空気の送気条件および燻煙の排気条件を満たして燻炭を低温燻灰化させる際に、燻し焼き窯本体を構成する本体円錐台部120が、従来よりも燻灰化温度を低温にする作用をすると推測される。
このため、本実施の形態の燻し焼き装置では、従来よりも含有ケイ酸成分の溶解性が高い燻灰を得ることができる。上記の低温燻灰化によって得られた籾殻燻炭のケイ酸成分含有率は、90%以上であるため、本実施の形態による籾殻燻灰は、ケイ酸質肥料としての価値が極めて高いものである。
燻し焼き室本体が略円筒型である従来の燻し焼き装置による籾殻燻灰の含有ケイ酸成分のNaOH変則法による溶解度は、およそ60〜70%であるが、本実施の形態の燻し焼き装置による籾殻燻灰の含有ケイ酸成分のNaOH変則法による溶解度は、80%以上、例えば80数%である。このように、本実施の形態による籾殻燻灰は、従来の籾殻燻灰よりも含有ケイ酸成分の溶解度が極めて高いので、本実施の形態による籾殻燻灰肥料は、農作物のケイ酸質肥料としての極めて価値が高いものである。なお、本実施の形態の燻し焼き装置による籾殻燻炭の含有ケイ酸成分のNaOH変則法による溶解度は、およそ40〜50%である。
ここで、上記のNaOH変則法は、一般にシリカゲル含有肥料等に含有されているケイ酸成分(SiO2)のNaOH可溶性を分析するために使用される肥料評価法であって、肥料に含有されているケイ酸成分(SiO2)の0.5モルNaOH水溶液においての溶解度(NaOH可溶性)を分析して数値とするものである。このNaOH変則法による溶解度の数値は、肥料に含有されているケイ酸成分の水溶性等の指標とされるものである。
なお、本実施の形態の燻し焼き装置では、燻し焼き窯100を静止配置して、空気導入口300による自然送気および煙突400による自然排気をする構成としていることによって、燻灰化時に、燻炭を流動および風動させることもないので、燻炭の容姿が略そのまま残った燻灰が得られる。従って、本実施の形態によって得られた燻灰を目視した者は、それがいかなる植物原料の燻灰であるかを容易に判別可能である。
燻し焼きによって熱せられて燻炭中から揮発した残留燻液原液成分(残留燻液成分とともに残留タール成分等も含むもの)は、燻煙(灰化時燻煙)に混合されて上昇し、煙突400内に誘導され、この煙突400内で冷却されて結露し、燻液原液収容器500内に滴下貯集される。この燻液原液収容器500内に貯集された燻液原液(灰化時燻液原液)からは、必要に応じてタール成分等が除去分離され、燻液成分(灰化時燻液成分)が抽出される。
煙突400を傾斜配置することによって燻煙の冷却結露効果を高めることができるのは周知であるが、本実施の形態の燻し焼き装置では、さらに燻し焼き窯100に本体円錐台部120を設けて従来よりも低温での燻灰化を可能とすることによって、煙突400内に誘導される灰化時燻煙を従来よりも低温化することができ、これによって、従来よりも上記灰化時燻煙の冷却結露効果を高めることができる。
このため、本実施の形態の燻し焼き装置による上記低温燻灰化では、灰化時燻液原液成分の冷却結露効果、従って灰化時燻液原液の収集効果が極めて高い。本実施の形態の燻し焼き装置による灰化時燻液原液の回収量は、例えば、燻し焼き室本体が略円筒型である従来の燻し焼き装置による灰化時燻液原液の回収量のおよそ1.5〜2.5倍である。
ただし、本実施の形態の燻し焼き装置においては、灰化時燻液原液の回収量は、炭化時燻液原液の回収量よりも少なくなり、灰化時燻液原液の透明度は、炭化時燻液原液よりも高いものとなり、灰化時燻液原液から採取される燻液成分のPH値は、炭化時燻液原液から採取される燻液成分のPH値よりも高いものとなる。
なお、本実施の形態の燻し焼き装置では、燻し焼き窯本体の全容量は、例えば、およそ20〜800リットルであり、植物原料の充填量は、例えば、およそ15〜750リットルである。また、本体円錐台部120の底側周縁部から天側周縁部までの高さ寸法は、例えば、本体円筒部100のグリッド部140から天側周縁部までの高さ寸法の1/7〜1/3である。
そして、燻し焼き室102に充填した植物原料のおよそ6〜8割の容量の燻炭が得られ、燻し焼き室102に充填した植物原料のおよそ3〜5割の容量の燻灰が得られる。
以上のように本発明の実施の形態によれば、燻し焼き窯本体を本体円筒部110と本体天蓋部130の間に本体円錐台部120を設けた構成としたことにより、燻し焼き温度の検知制御をしなくとも、従来の略円筒型の燻し焼き窯本体を使用した場合よりも、燻し焼き温度を低温にかつ安定した温度に保持して燻炭化、あるいは燻炭化および燻灰化を継続できるので、従来よりもPH値のばらつきが少ない燻炭を得ることができ、従来よりも含有ケイ酸成分の溶解性が極めて高い燻灰を得ることができ、従来よりも大量の燻液を得ることができる。
図3は本発明の他の実施の形態の燻し焼き装置においての燻し焼き窯の構成を説明する側面図である。なお、図3において、図1と同様ものあるいは相当するものには同じ符号を付してある。
上記本発明の実施の形態では、燻し焼き窯本体を構成する本体円錐台部120を略直円錐台型とした(図1等参照)。しかし、本体円錐台部120は、図3(a)のように略斜円錐台型とすることも可能であり、図3(b)のように略ドームタイプの円錐台型とすることも可能である。
なお、図3(a)では、側面視において、(θ1+θ2)/2を本体円錐台部120の底角θとする。また、図3(b)では、側面視において、本体円錐台部120の底側周縁端と天側周縁端のなす角を本体円錐台部120の底角θとする。
以上、本発明を実施するための形態について詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。