JP6152781B2 - 車両のボンネット構造 - Google Patents
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Description
ボンネットの車幅方向中央前端部分には、ロック機構のストライカを装着するための空間部が形成されているため、ボンネットアウタパネルの張り剛性が低くなり、車両の商品性の観点から、ボンネットアウタパネルの車幅方向中央前端部分の裏面に当接する補強部材(スティフナ又はデントレインフォースメント)を設けて耐デント性を確保している。
歩行者頭部保護基準では、歩行者の頭部を模擬したインパクタを車両の検証部位に衝突させ、発生する衝撃値から算出された基準評価値としてのHIC(Head Injury Criteria)値にて評価したとき、試験エリアの2/3以上の部分でHIC≦1000,それ以外の部分でもHIC≦2000の遵守が要求されている。
図10に示すように、HICはインパクタ衝突時の変位量が増加する程減少する傾向があるため、検証部位の変形スペース(衝撃吸収ストローク)が大きい程HICを低減することができる。そこで、ボンネットアウタパネルの耐デント性確保と衝撃吸収ストローク確保とを両立する技術が提案されている。
図11に、ばねマス計算によって求めた頭部衝撃エネルギーを効率的に吸収可能な目標特性L1と、従来技術としてスティフナが省略されたボンネットの変形特性L2と、別の従来技術として折れビード付き脚部を備えた略コ字状のスティフナを設けたボンネットの変形特性L3との潰れ線図を示す。
また、図10に示すように、HICとボンネットの変位量とは相関関係があるため、例えばAIS4の発生率が約20%以下に相当するHIC値(1000)を達成するには所定の衝撃吸収ストロークを要する。それ故、第1の変形挙動の後において、所定の衝撃吸収ストローク値に到達するまで一定減速度で変形する第2の変形挙動が必要である。
即ち、衝撃荷重入力初期における第1の変形挙動(衝撃吸収挙動)と、この第1の変形挙動とこれに連続する第2の変形挙動との総変位量(衝撃吸収ストローク)との2つの要件を満たさなければ、脳損傷を含む重度の傷害を防止することができない。
変形特性L3では、スティフナが装着されているため、ボンネットアウタパネルの張り剛性を確保することができる。また、衝撃荷重入力中期において減速度の方向を反転する変形挙動が実行されている。しかし、この変形挙動は、減速度の方向を反転する時期が遅く、衝撃荷重入力初期に減速度の方向を反転する第1の変形挙動ではないため、歩行者の脳損傷を確実に防止できない。しかも、減速度の反転後、再度減速度が上昇してしまうため、十分な衝撃吸収ストロークを確保することができない。
しかし、変形特性L3の変形挙動が高加速度側且つ低変位量側に全体的に移行するに過ぎないため、衝撃吸収ストロークが更に小さくなり、依然として十分な衝撃吸収ストロークを確保することができない。尚、スティフナの剛性を低くした場合には、変形特性L3の全体挙動が低加速度側且つ高変位量側に移行し、減速度の方向を反転する衝撃吸収挙動は更に遅くなり、衝撃荷重入力後期に実行される。
つまり、変形特性L3のスティフナは、その一体形成されている構造上、衝撃荷重入力初期から衝撃荷重入力後期に亙って連続的に変形するため、スティフナの屈曲した部分が変形を抑制するために変形抑制部材として機能するものの、屈曲変形の前後で略同じ変形挙動を行うものと推測される。それ故、衝撃荷重入力初期と衝撃荷重入力中後期とで変形挙動を異なるものにするためには、屈曲変形の前後で別の変形特性を有するスティフナ構造を採用することが必要である。
しかし、前述のように、各々のスティフナが衝撃荷重入力初期から衝撃荷重入力後期に亙って連続的に変形するため、図11に示す変形特性L3の検証結果と同様の変形挙動になるものと推測される。それ故、特許文献1,2の技術は、衝撃荷重入力初期に減速度の方向を反転する第1の変形挙動を実行することができないため、歩行者の頭部傷害保護を十分に図ることができない虞があり、また、十分な衝撃吸収ストロークを確保できない虞がある。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記分離機構が、前記前後方向に隣り合う板状体のうち前側板状体の後端部と、前記前後方向に隣り合う板状体のうち後側板状体の前端部と、前記後端部と前端部とを接着材で接着した接着部とを備えたことを特徴としている。
また、分離前後でスティフナの変形挙動を異ならせることができるため、衝撃荷重入力初期において減速度の方向を反転させる衝撃吸収挙動を実行でき、衝撃吸収挙動後、再度減速度を上昇させることなく所定の衝撃吸収ストロークに到達するまで一定減速度で変形させることができる。これにより、ボンネットアウタパネルの張り剛性確保と歩行者の頭部傷害保護とを両立することができる。
また、衝撃荷重入力初期において衝撃吸収挙動を制御することができ、衝撃吸収挙動後、確実に一定減速度で変形させることができる。
請求項3の発明によれば、部品点数を減少することができ、構造の簡単化を図ることができる。
請求項4の発明によれば、スリット部の長さ調節により、隣り合う板状体の分離タイミングを容易に設定することができる。
図1に示すように、車両Vには、エンジンルーム2を開閉可能に覆うボンネット1が配設されている。このボンネット1の後端部には車幅方向に延びる軸心を備えたヒンジ(図示略)が装着され、ボンネット1がヒンジの軸心回りに回転可能に構成されている。
ボンネット1の先端部の下方にはラジエータ(図示略)を支持する略矩形状のシュラウド3が設けられ、その前方にはバンパビーム及びフロントバンパ等が配設されている(何れも図示略)。
図1に示すように、ボンネットインナ12は、車幅方向中央部で且つ前端部分が緩湾曲状のボンネットアウタ11に対して離隔するように下方へ突出形成され、周縁部分がボンネットアウタ11に挟み込まれた前端部12aと、この前端部12aの後端部から後方下がり傾斜状に延びる前側傾斜部12bと、この前側傾斜部12bの後端部から後方に略水平状に延びる底部12cと、この底部12cの後端部から後方上がり傾斜状に延びる後側傾斜部12dと、後側傾斜部12dの後端部から後方に略水平状に延びる水平部12eとを備えている。このボンネットインナ12は、車幅方向中央部で且つ前端部分にボンネットアウタ11と協働して略直方体状の空間部Sを構成している。
ストライカレイン13は、ストライカ4の基端部に接合され且つ空間部S内に配置されている。このストライカレイン13は、前側傾斜部12bと底部12cとの上面に配設されて溶接により接合されている。
図1,図2に示すように、スティフナ20は、空間部Sの内部に配設されている。このスティフナ20は、アルミニウム合金板にて形成され、ボンネットアウタ11の裏面に当接してボンネットアウタ11の張り剛性を確保するように構成されている。
スティフナ20は、前端部12aに支持され且つ車幅方向に延びた前側支持板状体21と、水平部12eに支持され且つ車幅方向に延びた後側支持板状体22と、前側支持板状体21と後側支持板状体21との間を前後方向に並設された複数、例えば3つの第1〜第3中間板状体23〜25と、分離機構26を備えている。
前側支持板状体21と後側支持板状体21と第1〜第3中間板状体23〜25は、何れもアルミニウム合金板をプレス成形することにより一体形成されている。
後側支持板状体22は、第3中間板状体25に連結された前端部22aと、この前端部22aの後端部から後方上り傾斜状に延びる前側傾斜部22bと、この前側傾斜部22bの後端部から後方へ略平坦状に延びる本体部22cと、この本体部22cの後端部から後方下り傾斜状に延びる後側傾斜部22dと、この後側傾斜部22dの後端部から後方へ延びて水平部12eの上面に溶接によって接合された接合フランジ部22eとを備えている。
第2,第3中間板状体24,25は、第1中間板状体23と同じ構造に形成され、前端部24a,25aと、前側傾斜部24b,25bと、本体部24c,25cとを夫々備えている。
本体部23cと本体部25cの上面は、接着材5(例えばマスチック)によってボンネットアウタ11の裏面に夫々接着されている。
この分離機構26は、ボンネットアウタ11に作用した下方へ向かう衝撃荷重により本体部21c〜25cが所定量下方へ変位したとき、前側支持板状体21と第1中間板状体23の連結状態、第1中間板状体23と第2中間板状体24の連結状態、第2中間板状体24と第3中間板状体25の連結状態、第3中間板状体25と後側支持板状体22の連結状態を夫々解除することで、連結解除によって各々の板状体23〜25の下方移動を許容し、板状体23〜25を個別に独立して分離可能に構成されている。
分離機構26は、各本体部21c,23c〜25cの後端部と、各前端部22a〜25aと、接着部20a〜20dからなり、図3のボンネット1のインパクタ試験における潰れ線図に示す目標特性Lを実行可能に構成されている。
図4(a)に示すように、インパクタ6からの衝撃荷重がボンネットアウタ11に対して下方に作用してスティフナ20が変形を開始するまで、各本体部21c〜25cは略同一面上に配設され、前後方向に並設されている。それ故、空間部Sの上壁に相当するボンネットアウタ11の一部分が接着材5を介してスティフナ20により展張されているため、張り剛性を確保できる。
このとき、図3に示す変位量Xから変位量Yの期間に相当している。この期間では、第1〜第3中間板状体23〜25の支持が存在しないため、インパクタ6の進出変位が促進され、変位量が大きくなる程減速度が小さくなっている。
尚、接着材27の接着力は、変位量Xの時点で衝撃荷重よりも小さくなり、接着部20a〜20dの少なくとも1つが分断されるように予め設定されている。
尚、狙いとする所定の一定減速度と衝撃吸収ストローク(変位量Z)に基づいて第1〜第3中間板状体23〜25の材質、剛性、板厚、形状等が予め設定されている。また、変位量Zは、例えば、HIC値が1000を達成可能な衝撃吸収ストローク長である。
このボンネット構造によれば、各板状体21〜25によってボンネットアウタ11を裏面から支持すると共に展張するため、ボンネットアウタ11の張り剛性を増加することができる。また、第1〜第3中間板状体23〜25の分離により分離前後でスティフナ20の変形挙動を異ならせることができるため、衝撃荷重入力初期において減速度の方向を反転させる衝撃吸収挙動を実行でき、衝撃吸収挙動後、再度減速度を上昇させることなく所定の衝撃吸収ストロークに到達するまで一定減速度で変形させることができる。これにより、ボンネットアウタ11の張り剛性確保と歩行者の頭部傷害保護とを両立することができる。
実施例1の分離機構26では、各板状体21〜25を接着材27を用いて連結したが、参考技術の分離機構26Aでは、各板状体21A,22Aをシェアピン機構を用いて連結している。
後側支持板状体32は、後端部31eの下面側から連結された前端部32aと、この前端部32aの後端部から後方上り傾斜状に延びる前側傾斜部32bと、この前側傾斜部32bの後端部から後方へ略平坦状に延びる本体部32cと、この本体部32cの後端部から後方下り傾斜状に延びる後側傾斜部32dと、この後側傾斜部32dの後端部から後方へ延びて水平部12eの上面に溶接によって接合された接合フランジ部32eとを備えている。
3つのピン部33は、車幅方向に隣り合うように前端部32aに夫々固定されている。これらピン部33は、頭部33aと、この頭部33aよりも小径に形成された軸部33bとを夫々備えている。3つのピン部33は、前端部32aを貫通するように装着され、頭部33aが前端部32aから上方に突出するように固着されている。
図7に示すように、変形が更に増大して図3に示す変位量Xに到達したとき、軸部33bがスリット部34bから開放されるため、前側支持板状体31(後端部31e)と後側支持板状体32(前端部32a)とが分離される。
尚、スリット部34bの上下長とスリット幅は、変位量Xの時点で軸部33bがスリット部34bから開放されるように予め設定されている。
このスティフナ20Aによれば、スリット部34bの上下長の調節により、前側支持板状体31と後側支持板状体32との分離タイミングを容易に設定することができる。
実施例2のスティフナ20Bは、衝撃荷重入力中後期において衝撃吸収挙動を安定させるため、減速度調整用の脚部35を備えている。
これにより、前側支持板状体31の裏面から下方へ延び且つボンネットインナ11との間に所定の間隔を空けて配設された潰れ量調整用の脚部35を設けたため、衝撃荷重入力初期において衝撃吸収挙動を制御することができ、衝撃吸収挙動後、確実に一定減速度で変形させることができる。
1〕前記実施例1においては、前側支持板状体と後側支持板状体と第1〜第3中間板状体を備えたスティフナの例を説明したが、第1〜第3中間板状体を省略しても良い。この場合、実施例2のように、一方の支持板状体の下面に脚部を設けることも可能である。
また、仕様に応じて中間板状体2つ、或いは4つ以上で構成しても良い。
2 エンジンルーム
11 ボンネットアウタ(ボンネットアウタパネル)
12 ボンネットインナ(ボンネットインナパネル)
20,20A,20B スティフナ
20a〜20d 接着部
21,31 前側支持板状体
21c 本体部
22,32 後側支持板状体
22a 前端部
23〜25 第1〜第3中間板状体
26,26A 分離機構
27 接着材
33 ピン部
34a 係合穴
34b スリット部
35 脚部
S 空間部
V 車両
Claims (4)
- エンジンルームを開閉可能に覆うボンネットの外板を構成するボンネットアウタパネルと、このボンネットアウタパネルに対して下側に配置され且つボンネットアウタパネルと協働して車幅方向中央部に空間部を構成するボンネットインナパネルと、このボンネットインナパネルに支持されたロック機構とを備えた車両のボンネット構造において、
前記ボンネットアウタパネルの裏面に当接してボンネットアウタパネルの張り剛性を確保するためのスティフナを備え、
前記スティフナが、各々が車幅方向に延び且つ前後方向に並設された複数の板状体と、
これら複数の板状体のうち前後方向に隣り合う板状体を分離可能に連結する分離機構であって、このスティフナが衝撃荷重により所定量下方へ変位したとき、前記前後方向に隣り合う板状体の連結を解除してこれら隣り合う板状体を分離し且つ前記ボンネットインナパネル上に堆積された複数の板状体を圧潰させることにより一定減速度で変形させる分離機構とを備えたことを特徴とする車両のボンネット構造。 - エンジンルームを開閉可能に覆うボンネットの外板を構成するボンネットアウタパネルと、このボンネットアウタパネルに対して下側に配置され且つボンネットアウタパネルと協働して車幅方向中央部に空間部を構成するボンネットインナパネルと、このボンネットインナパネルに支持されたロック機構とを備えた車両のボンネット構造において、
前記ボンネットアウタパネルの裏面に当接してボンネットアウタパネルの張り剛性を確保するためのスティフナを備え、
前記スティフナが、各々が車幅方向に延び且つ前後方向に並設された複数の板状体と、
前記少なくとも1つの板状体の裏面から下方へ延び且つボンネットインナパネルとの間に所定の間隔を空けて配設された潰れ量調整用の脚部と、
これら複数の板状体のうち前後方向に隣り合う板状体を分離可能に連結する分離機構であって、このスティフナが衝撃荷重により所定量下方へ変位したとき、前記前後方向に隣り合う板状体の連結を解除してこれら隣り合う板状体を下方へ変位させ且つ前記ボンネットインナパネルに接地した前記脚部を圧潰させることにより一定減速度で変形させる分離機構とを備えたことを特徴とする車両のボンネット構造。 - 前記分離機構が、前記前後方向に隣り合う板状体のうち前側板状体の後端部と、
前記前後方向に隣り合う板状体のうち後側板状体の前端部と、
前記後端部と前端部とを接着材で接着した接着部とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のボンネット構造。 - 前記分離機構が、前記前後方向に隣り合う板状体のうち一方の板状体の他方の板状体側端部に上下方向に突出するように固定された複数のピン部と、前記他方の板状体の一方の板状体側端部に前記複数のピン部が夫々係合する複数の係合穴及び前記複数の係合穴から延び前記ピン部よりも狭い幅の前後方向に延びる複数のスリット部とを備え、
前記複数のスリット部は、前記ピン部に衝撃荷重が作用したとき、拡開して前記ピン部の通過を夫々許容することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のボンネット構造。
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