JP6152554B2 - Dna合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法及び用途 - Google Patents

Dna合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法及び用途 Download PDF

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本発明は、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体に関するものであり、更に詳しくは、DNA合成酵素を繰り返し利用可能な形態で安定に固定化した、新規DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法、及びその高耐久性部材などとしての用途に関するものである。
本発明は、より具体的には、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に固定化されたDNA合成酵素を反応基質の核酸(DNA)の増幅反応に適用する手法を中核とする技術であり、本手法では、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔にDNA分子の非特異的吸着を抑制しながらDNA合成酵素を選択的に固定化することができ、更に、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによって、各種DNA合成酵素の固定化状態の適正化と、並びに該DNA合成酵素のDNA増幅活性を高度に制御可能にするものである。
本発明は、環境微生物並びに生体の遺伝子診断、及び各種病原因子の検出などに向けた、微量の基質DNA、例えば、難培養性微生物の一細胞ゲノムDNA、を対象とした、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)、等温DNA増幅(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、又は、Multiple Displacement Amplification(MDA法)などの分野における高効率のDNA増幅手法に関する新技術を提供するものである。
地球環境レベルでは、未知の生物種による生態系の存在、特に目に見えない微生物レベルで、人工的な培養条件下では増殖不能な難培養性微生物の解析の必要性が示唆されている。例えば、微生物のゲノム解析では、究極的には一細胞から人工的にゲノムDNAを増幅させた後にDNA情報を解析する必要がある。
しかしながら、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)などDNA合成酵素を用いたDNA増幅法では、精製酵素試料に付随的に含有されている微量のDNA不純物が目的の遺伝子のみの特異的な増幅を阻害する場合が多い。また、一般に使用されているDNA合成酵素は、再利用における耐久性が低いために、極微量の基質DNAを対象とした多段階のDNA増幅反応プロセスでは、安定的かつ確実的な増幅が困難である。
このような問題を克服するためには、簡便な手法により、微量のDNA不純物を排除でき、更に、DNA合成酵素の酵素活性を安定的に持続させるための耐久性機能を付与できる新しい技術の提案・開発が不可欠であると考えられる。
酵素及び蛋白質の耐久性向上における先行技術として、シリカ系ナノ空孔材料、例えば、MCM、SBA、FSM型などのシリカ系ナノ空孔材料の細孔内部に蛋白質を吸着させ、活性を保持させる人工的な蛋白質複合体に関する報告が存在する(特許文献1)。しかしながら、既往の研究では、シリカ系ナノ空孔材料の細孔内部にDNA合成酵素を固定化するという、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体に関する研究成果については未だ報告がない。
DNA合成酵素の固定化に関する従来技術では、例えば、多孔性チタニア膜や金表面処理ガラス基板などにDNA合成酵素を固定化し、酵素活性を高効率に発現させることなどの特徴を有する固定化酵素の開発が行われている(非特許文献1、2)。しかしながら、当該技術では高温下での繰り返し使用による酵素の失活が問題視されている。更に、どちらの技術も反応基質に一本鎖DNAを適用しており、二本鎖DNAを出発材料としたDNA増幅反応に関する研究成果については未だ報告がない。
そのため、当技術分野においては、DNA合成酵素に耐久性機能を付与し、また、繰り返し使用可能な形態で安定的に固定化でき、更に、これと同時に、DNA不純物の系外排除機能、すなわち、DNA分子の非特異的吸着を抑制できる、DNA合成酵素の固定化担体の提案・開発が強く要請されていた。
特許第4785174号公報
M.G.Bellino et al.,Small,vol.6,pp.1221−1225(2012) G.Lim et al.,Anal.Biochem.,vol.419,pp.205−210(2011)
従来の酵素の固定化手法では、DNA合成酵素と固定化担体との相互作用により酵素活性が低下する、あるいは、反応基質が非特異的に担体表面に吸着することで反応が阻害される、といった問題点があった。従って、極微量の基質DNAを高精度に増幅させる場合には、DNAを吸着せずに、DNA合成酵素のみを選択的かつ安定的に固定化できる担体が必要である。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて創出されたものであり、DNA合成酵素の固定化とDNA分子の非特異的吸着の抑制を同時に達成可能な酵素の固定化担体として、シリカ系ナノ空孔材料を適用し、酵素反応における繰り返し使用においてもシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔にDNA合成酵素を安定に吸着、固定化、保持でき、かつ、DNA合成能を安定に発現できる、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法、及び、その用途を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に酵素反応により反応基質である核酸(DNA)を増幅させるDNA増幅活性を有するDNA合成酵素の全体あるいは一部分を備える酵素内包複合体であって、
前記シリカ系ナノ空孔材料が、(1)FSM又はSBA型メソポーラスシリカであり、(2)その中心細孔直径が2〜50nmであり、(3)全細孔容積が0.1〜2.0mL/gであり、(4)比表面積が200〜1500m /gであり、
前記酵素反応が、環状及び直鎖状、又は、一本鎖及び二本鎖の基質DNAを対象とした、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)、等温DNA増幅(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、又は、Multiple Displacement Amplification(MDA法)、であり、
酵素反応前後において、前記DNA合成酵素の全体あるいは一部分酵素活性部位を露出させた形態で、前記シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に吸着、固定されていて、上記酵素内包複合体が反応基質である核酸(DNA)と相互作用を示し、酵素活性を発現できる複合化状態にある構造を有することを特徴とするDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
(2)前記シリカ系ナノ空孔材料が、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、SBA−15(中心細孔直径:18.5nm)、SBA−15(中心細孔直径:24.5nm)、である、前記(1)に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
(3)前記シリカ系ナノ空孔材料が、該材料に固定化したDNA合成酵素と反応基質(DNA)を溶液中で相互作用させた場合、該材料へのDNA分子の非特異的吸着を抑制することができ、かつ、DNA合成酵素を選択的に固定化することができる、前記(1)又は(2)に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
(4)前記酵素が、耐性を有するDNA合成酵素である、前記(1)に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
前記(1)から(4)のいずれか一項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を製造する方法であって、
シリカ系ナノ空孔材料のFSM又はSBA型メソポーラスシリカ細孔にDNA合成酵素の全体あるいは一部分を吸着させ、該シリカ細孔に固定させることにより反応基質である核酸(DNAと相互作用を示し、酵素活性を発現できる複合化状態にある構造を有する酵素内包複合体を作製することを特徴とするDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法。
)シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いにより、分子サイズの異なる各種DNA合成酵素の固定化状態の適正化を行い、かつ、DNA合成酵素の活性発現によるDNA増幅活性の程度を制御する、前記()に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法。
)前記(1)から()のいずれか一項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体からなるDNA増幅活性を有するDNA増幅用部材であって、
DNA合成反応における繰り返し使用においても、酵素がシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に吸着、固定、保持され、かつ、DNA合成能を持続して発現する耐久性を有することを特徴とするDNA合成酵素内包耐久性部材。
)前記(1)から()のいずれか一項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いて、前記()に記載の酵素反応のいずれかにより反応基質である核酸(DNAを増幅させることを特徴とする、DNAの増幅方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、規則性細孔を有するシリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)のシリカ細孔にDNA合成酵素を固定化して複合化することにより、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔のナノ空孔を反応場とした高効率・長寿命のDNA増幅システムを構築し、提供するものである。本発明では、分子サイズの異なる種々のDNA合成酵素を、各々に対応したサイズのシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔のナノ空孔に内包化することでDNA合成酵素を安定に配列化でき、それにより、耐熱性や耐久性など酵素機能を向上させることを可能とするものである。
本発明では、これらDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の繰り返し使用による連続的なDNA増幅を実現し、例えば、難培養性微生物のゲノム解析に代表されるような、一細胞の微量ゲノムDNAからの安定なDNA増幅法を確立することを可能とするものである。
本発明は、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔にDNA合成能を有する酵素(DNA合成酵素)の全体あるいは一部分を備える酵素内包複合体であって、酵素反応前後においてDNA合成酵素が前記シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に安定に固定されており、上記酵素内包複合体が反応基質である核酸(DNA)と相互作用を示し、酵素活性を安定に発現できるような複合化状態にあることを特徴とするものである。
本発明において、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔にDNA合成酵素の全体あるいは一部分を備える酵素内包複合体とは、多様な分子サイズ・形状のDNA合成酵素を対象とした固定化において、シリカ系ナノ空孔材料の細孔径すなわち中心細孔直径の違いによって、各種DNA合成酵素の固定化状態を制御できるものを意味し、また、この固定化状態を適正化することにより、DNA合成酵素のDNA増幅活性を制御可能にするものであることを意味する。
また、本発明において、上記酵素内包複合体が反応基質である核酸(DNA)と相互作用を示し、酵素活性を安定に発現できるような複合化状態にあるとは、酵素反応の前後においてDNA合成酵素が前記シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に安定にかつ持続的に固定されており、更に、繰り返し使用が可能に複合化されていることを意味する。
本発明のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体は、固定化されているDNA合成酵素部分が反応基質であるDNA分子と相互作用することが可能である一方、pH値が4から8の範囲にある反応溶液において、該シリカ系ナノ空孔材料へのDNA分子の非特異的吸着を完全に抑制することが可能である。
一般に、シリカ系ナノ空孔材料とは、MCM、SBA、FSM、KIT、また、HOM型などのシリカ系ナノ空孔材料のことを意味する。本発明においては、上記シリカ系ナノ空孔材料として、例えば、ケイ素原子と酸素原子を必須成分として含む化合物の多孔体であり、細孔サイズがメソ孔であり、その中心細孔直径が2〜50nmであり、全細孔容積が0.1〜2.0mL/gであり、比表面積が200〜1500m/gであること、で特徴付けられる特定のシリカ系ナノ空孔材料が用いられるが、その他にも、ヘキサゴナル、又は、キュービックなどの規則的細孔配列構造を有するシリカ系ナノ空孔材料が好適なものとして例示される。
次に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)用の高耐熱性DNA合成酵素を代表例として、本発明を更に詳細に説明する。DNA合成酵素は、PCR用の酵素に限定されるものではなく、任意のDNA配列、又は、特定の遺伝子配列を合成、増幅する能力を有する酵素であれば、その種類に制限されることなく、本発明を適用することが可能である。また、後記の実施例では、長さが100塩基対(bp)の二本鎖DNAを基質DNAとして用いているが、本発明における反応基質のDNAとは、この長さに限定されるものではなく、また、環状及び直鎖状、又は、一本鎖及び二本鎖などの適宜のDNAが適用可能である。
次に、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造について説明する。本発明では、例えば、一例を示して説明すると、DNA合成酵素、二本鎖DNA、また、dNTPsを含んだ緩衝溶液42.5μLと、シリカ系ナノ空孔材料の粉末0.5mgとを混合し、遠心分離を行うことにより、沈殿物として、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を製造することができる。
ここで、シリカ系ナノ空孔材料として、好適には、例えば、中心細孔直径の異なる7種類のシリカ系ナノ空孔材料の、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、を用いることができる。後記する酵素反応中及び反応後において、DNA合成酵素はシリカ系ナノ空孔材料から脱離せずに強固に固定化状態を保持することができ、その固定化率は、ナノ空孔材料の中心細孔直径に依存せず、酵素の全量を吸着させることが可能である。
次に、上記DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)は、例えば、上記DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の溶液に、更に、2種類のプライマーDNAを含んだ水溶液7.5μLを添加することによって開始させることができる。上記全ての種類のナノ空孔材料について、反応後にDNA増幅産物の存在が認められるが、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによって、該DNA合成酵素の固定化状態、及び、DNA増幅活性を制御することが可能である。
また、本発明は、上記一度目の酵素反応後に、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を回収し、繰り返し使用したとしても、DNA合成酵素をシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に安定に吸着、保持でき、この際、DNA合成酵素のDNA合成能を安定的かつ持続的に発現できることを特徴とする、DNA合成酵素内包高耐久性部材を提供するものである。
本発明では、シリカ系ナノ空孔材料と耐熱性を有するDNA合成酵素との複合材料を用いたバッチ式PCRにおいて、一例として、100塩基対のDNAを鋳型としたDNA増幅反応を試みた。具体的には、細孔径の異なる7種類のシリカ系ナノ空孔材料の、FSM及びSBA型メソポーラスシリカ(細孔径:2.6nm、4.2nm、5.4nm、7.1nm、10.6nm、18.5nm、24.5nm)、を合成し、これらシリカ材料に対するPCR用DNA合成酵素(Taq DNAポリメラーゼ)の吸着挙動を解析するとともに、固定化酵素によるDNA増幅反応を評価した。
その結果、DNA合成酵素はいずれのシリカ系ナノ空孔材料に対しても強固に吸着しており、また、FSM及びSBA型メソポーラスシリカどちらの場合も、シリカ系ナノ空孔材料の細孔径が小さいほどDNAの増幅活性が増大することが分かった。次に、DNA合成酵素をシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に固定化した当該固定化酵素の繰り返し使用による耐久性試験を実施した結果、DNAの増幅効率は徐々に低下したものの、4度の繰り返し反応において耐久性を示した。また、1本鎖DNAよりも2本鎖DNAを鋳型とした場合に、より良好なDNAの増幅が検出された。
以上の結果から、シリカ系ナノ空孔材料の細孔径が小さいほどDNAの増幅活性が増大することから、DNA合成酵素の反応活性はシリカ系ナノ空孔材料の細孔径の違いによってDNA増幅の程度を制御することが可能であり、また、本DNA合成酵素が繰り返し利用可能な状態でシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に安定に固定化されていることが示された。
本発明は、DNA合成酵素を繰り返し利用可能な状態でシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に安定に固定化した、新規なDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法及び用途を提供するものである。本発明は、より具体的には、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に固定化されたDNA合成酵素を二本鎖DNAの増幅反応に適用することが可能な手法を中核とする技術であり(図1)、本手法では、DNA分子の非特異的吸着を抑制しながら酵素を選択的に固定化することができ、更に、シリカ系ナノ空孔材料の細孔径の違いによってDNA合成酵素のDNAの増幅活性を高度に制御することを可能にするものである(図2)。
本発明の応用分野としては、例えば、環境及び健康の診断などを対象とした、微量サンプル、例えば、難培養性微生物の一細胞ゲノムDNA、からの高効率のDNA増幅手法が挙げられ、更に、本発明は、環境微生物並びに生体の遺伝子診断、及び各種病原因子の検出などに向けた、微量の基質DNAを対象とした、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)、等温DNA増幅(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、又は、Multiple Displacement Amplification(MDA法)などにおける高効率のDNA増幅手法として適用可能である。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)酵素反応前後において、シリカ系ナノ空孔材料の細孔内部にDNA合成酵素の全体あるいは一部分を、酵素活性部位を露出させた形態で安定に吸着させ、固定化したDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を提供することができる。
(2)該固定化酵素は、反応基質の核酸(基質DNA)と相互作用を示し、酵素活性を安定に発現できるような複合化形態を有している。
(3)シリカ系ナノ空孔材料に固定化したDNA合成酵素と反応基質(DNA)を溶液中で相互作用させた場合、該シリカ系ナノ空孔材料へのDNA分子の非特異的吸着を抑制でき、また、DNA合成酵素を選択的に固定化することができる。
(4)シリカ系ナノ空孔材料による、前記DNAの非特異的吸着の抑制効果により、精製酵素試料に付随的に含有される微量のDNA不純物を排除することが可能となり、その結果、極微量の反応基質、例えば、難培養性微生物の一細胞ゲノムDNA、を対象とした、高精度のDNA増幅手法を提供することができる。
(5)シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによって、分子サイズの異なる各種DNA合成酵素の固定化適正行うことができ、更に、該DNA合成酵素のDNA増幅活性を高度に制御することができる。
(6)酵素反応後の遠心分離操作により、DNA増幅産物とDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を容易に分離、回収することが可能となる。
(7)前記遠心分離操作の際に、任意の緩衝溶液、又は反応溶液に容易に交換可能であり、更に、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の繰り返し使用における、安定的な酵素固定化状態の保持と、高い反応性を持続させる高い耐久性を有するDNA合成酵素内包耐久部材を提供することができる。
シリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)の規則性細孔(シリカ細孔)に固定化したDNA合成酵素を備えたDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体と反応基質(DNA)が相互作用し、DNAが増幅される様子を模式的に示す説明図である。 DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)後のDNA増幅産物(分子サイズ:100bp)をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。 DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体におけるポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)後のDNA合成酵素(分子量:約94kD)の存在をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析し、DNA合成酵素の固定化残存率を評価した結果である。図中、(a)は、反応後の上清を電気泳動した場合、また、(b)は、反応後、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体からDNA合成酵素を脱離させた後の上清を電気泳動した場合、である。 DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)後のDNA増幅産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析し、酵素活性における耐久性を評価した結果である。図中、(a)−(d)は、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を繰り返し使用した場合、(a):一度目、(b):二度目、(c):三度目、(d):四度目である。 表面化学修飾及び未修飾のシリカ系ナノ空孔材料(SBA−15)に対する反応基質DNA(λ−DNA)の吸着挙動を評価した結果である。図中、(A)は、細孔内壁にアミノ基を修飾したSBA−15(中心細孔直径:6.2nm)に濃度の異なる基質DNAを相互作用させた場合、また、(B)は、未修飾のSBA−15(中心細孔直径:7.1nm)に濃度の異なる基質DNAを相互作用させた場合、である。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していて、細孔径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の合成を行った。
(1)合成例1
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(3.2g)、或いは、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(4.24g)を、70℃の水100ミリリットルに添加し、溶解後、カネマイト5gを更に添加し、70℃に加熱しながら、ホモミキサーで3時間撹拌した。これに、2規定塩酸を約1時間かけて添加し、pH8.5の状態で、約3時間撹拌した。
これを、吸引濾過した後、70℃の熱水に再分散して濾過する工程を4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより、中心細孔直径の異なるシリカ系ナノ空孔材料(FSM;界面活性剤の種類が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、また、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライドの場合)を得た。中心細孔直径は、各々2.6nm(FSM−16)、また、4.2nm(FSM−22)、であった。
(2)合成例2
Pluronic P123[BASF社製](10g)を、水300ミリリットルに添加し、35℃で一晩撹拌し溶解させた後、これに、塩酸21.87g及びオルトケイ酸テトラエチル21.32gを更に添加し、ホットスターラーを用いて35℃に加熱しながら、約20時間撹拌した。これを、異なる合成温度(a:35℃、b:80℃、又は、c:130℃)で24時間静置した。
これを、吸引濾過した後、70℃の熱水に再分散して濾過する工程を4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、時間あたり105℃の速度で550℃まで昇温させ、更に、これを、550℃で10時間焼成することにより、中心細孔直径の異なるシリカ系ナノ空孔材料(SBA−15)を得た。合成温度がa、b、cの場合、中心細孔直径は、各々a:5.4nm、b:7.1nm、また、c:10.6nm、であった。
(3)合成例3
Pluronic P123(4g)を、水120ミリリットルに添加し、更に、これに塩化カリウム6.08gを添加し、常温で1時間撹拌し溶解させた後、これに、塩酸23.6g及びメシチレン3gを更に添加し、常温で2時間撹拌した。これに、オルトケイ酸テトラエチル8.5gを更に添加し、10分間激しく撹拌した後、35℃で24時間静置した。これを、異なる合成温度(a:100℃、また、b:130℃)で24時間静置した。
これを、吸引濾過した後、70℃の熱水に再分散して濾過する工程を4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、時間あたり105℃の速度で550℃まで昇温させ、更に、これを、550℃で10時間焼成することにより、中心細孔直径の異なるシリカ系ナノ空孔材料(SBA−15 microsphere)を得た。合成温度がa、bの場合、中心細孔直径は、各々a:18.5nm、また、b:24.5nm、であった。
本実施例では、実施例1で作製した各種シリカ系ナノ空孔材料に対するDNA合成酵素の固定化と酵素活性の評価を行った。図1に、シリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)の規則性細孔(シリカ細孔)に固定化したDNA合成酵素を備えたDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体と反応基質(DNA)が相互作用して、DNAが増幅される様子を模式的に示した説明図を示す。
(1)DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造
シリカ系ナノ空孔材料には、中心細孔直径の異なる7種類のシリカ系ナノ空孔材料:1)FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2)FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3)SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4)SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5)SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6)SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7)SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、を使用し、また、DNA合成酵素には、TaKaRa ExTaq(タカラバイオ製、分子量:約94kD)を用いた。
DNA合成酵素を固定化したシリカ系ナノ空孔材料粒子の製造には、DNA合成酵素(5units)、二本鎖DNA(5ng、100塩基対(bp)、5’−TAATACGACTCACTATAGGGAGACCCAAGCTTGGTACCGAGCTCGGATCCACTAGTAACGGCCGCCAGTGTGCTGGAATTCCTATAGTGTCACCTAAATC)、また、dNTPs(各々20nmol)、を含んだ緩衝溶液42.5μLと、シリカ系ナノ空孔材料粉末0.5mgとを混合し、遠心分離を行い、最終的にDNA合成酵素をシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に固定化した複合体である、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を得た。
(2)DNA合成活性の評価
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)における、上記DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体のDNA合成活性について調べた。酵素反応は、上記DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の溶液に、更に、各々37.5pmolの2種類のプライマーDNA(T7 Promoter Primer、20mer、5’−TAATACGACTCACTATAGGG、及び、SP6 Promoter Primer、19mer、5’−GATTTAGGTGACACTATAG)を含んだ水溶液7.5μLを添加することによって開始した。
反応条件は、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、50℃で60秒間、72℃で30秒間の温度サイクルを30回繰り返し、最後に72℃で5分間の加熱反応とし、本反応には、PCR装置(バイオラッド製、iCycler)を使用した。また、反応後のDNA増幅産物は、15% TBE−ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、蛍光色素SYBR Green Iによるゲル染色後に、蛍光イメージアナライザー(FUJIFILM製、FLA−5100)を用いて解析した。
図2に、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体によるDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、PCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素の場合、NCは、未固定DNA合成酵素にプライマーDNAを添加していない場合、である。
また、図中、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
図より、全ての種類のシリカ系ナノ空孔材料について、DNA増幅産物の存在が認められ、これは、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体がDNA合成活性を有していることを示している。また、シリカ系ナノ空孔材料がFSM、SBA型どちらの場合にも、該シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径が小さくなる程、DNA増幅活性が増大した。このことは、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによって、該DNA合成酵素のDNA増幅活性を制御できることを示唆している。
本実施例では、実施例2で使用したDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体におけるDNA合成酵素の固定化挙動について評価を行った。図3の左図(a)及び右図(b)に、DNA増幅反応後の上清と、反応後のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の沈殿物にSDS−サンプルBufferを添加し、95℃で10分間加熱した後の上清とを、各々、SDS−ポリアクリルアミドゲル(4−15% TGX−ポリアクリルアミドゲル)を用いて電気泳動し、蛍光色素Orioleによるゲル染色後に、蛍光イメージアナライザー(FUJIFILM製、FLA−5100)で解析した結果を示す。
また、図中、Mは、タンパク質分子量マーカー、また、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
図3の左図(a)より、全ての種類のシリカ系ナノ空孔材料について、DNA合成酵素の存在は認められなかった。一方、図3の右図(b)より、全ての種類のシリカ系ナノ空孔材料について、DNA合成酵素(分子量:約94kD)の存在が認められた。
以上の結果より、酵素反応中及び反応後において、DNA合成酵素はシリカ系ナノ空孔材料から脱離せずに強固に固定化状態を保持しており、その固定化率は、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径に依存せず、酵素の全量が吸着していることが判明した。
本実施例では、実施例2と同様の反応において、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の4度の繰り返し使用における耐久性について評価を行った。DNA合成酵素を固定化したシリカ系ナノ空孔材料粒子は、一度目の反応後に遠心分離によって回収すると共に上清を除去し、そこに、DNA合成酵素を含んでいない、実施例2に記載の反応溶液を添加することによって、二度目の反応を開始した。三度目、及び、四度目の実験操作も同様の手順で行った。実験結果を図4に示す。
図中、(a)−(d)は、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を繰り返し使用した場合、(a):一度目、(b):二度目、(c):三度目、(d):四度目である。また、図中、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である
図より、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の繰り返し使用における、一から四度目の使用時、全てにおいて、どの種類のシリカ系ナノ空孔材料に関しても、DNA増幅産物の存在が認められた。このことは、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体が、繰り返し使用においても、酵素をシリカ系ナノ空孔材料の細孔内に安定に吸着、保持でき、この際、酵素のDNA合成能を安定的かつ持続的に発現できることを示している。
本実施例では、表面化学修飾及び未修飾のシリカ系ナノ空孔材料(SBA−15)に対する反応基質DNA(λ−DNA)の吸着挙動の評価を行った。SBA−15に対するλ−DNAの吸着量は、紫外可視分光光度計(モレキュラーデバイス製、SpectraMax M2e)を用いて、吸着操作後の上清におけるDNAの吸光度(吸収ピーク波長:260nm)を測定することによって評価した。
図5の左図(A)及び右図(B)に、細孔内壁にアミノ基を修飾したSBA−15(中心細孔直径:6.2nm)、及び、未修飾のSBA−15(中心細孔直径:7.1nm)に濃度の異なるλ−DNA(0.1、0.05、また、0.01mg/mL)をpHの異なる3種類の緩衝溶液:20mM Tris−HCl(pH 8)、20mM MES(pH 6)、20mM 酢酸ナトリウム(pH4)、の中で相互作用させた場合のλ−DNAの吸着量を示す。
図中、(A)は、細孔内壁にアミノ基を修飾したSBA−15(中心細孔直径:6.2nm)に濃度の異なる基質DNA(c:0.1mg/mL、d:0.05mg/mL、e:0.01mg/mL)を相互作用させた場合、また、(B)は、未修飾のSBA−15(中心細孔直径:7.1nm)に濃度の異なる基質DNA(f:0.1mg/mL、g:0.05mg/mL、h:0.01mg/mL)を相互作用させた場合、である。
図5の縦軸は、10mgのSBA−15に対するλ−DNAの吸着量(mg)を、横軸は、λ−DNAを分散している緩衝溶液(20mM Tris−HCl(pH 8)、20mM MES(pH 6)、また、20mM 酢酸ナトリウム(pH4))、のpHを示している。
図5の左図(A)より、どのpH値においても、DNA濃度に依存して、SBA−15に対するλ−DNAの吸着量は増大した。一方、図5の右図(B)より、どのpH値、どのDNA濃度においても、SBA−15に対するλ−DNAの吸着は全く認められなかった。
以上の結果より、未修飾のシリカ系ナノ空孔材料には、DNA分子の非特異的吸着を抑制する効果が認められ、また、これと実施例3における実験結果と併せると、DNA分子を吸着させず、DNA合成酵素を選択的に固定化できる効果があることが判明した。
以上詳述したように、本発明は、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法及び用途に係るものであり、本発明によれば、酵素反応前後において、シリカ系ナノ空孔材料へのDNA分子の非特異的吸着を抑制しながら、シリカ系ナノ空孔材料の細孔内部にDNA合成酵素を選択的かつ安定的に固定させることができ、更に、該固定化酵素が反応基質の核酸(基質DNA)と相互作用を示し、DNA増幅反応における酵素活性を安定に発現できるような複合化形態にある、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を提供することができる。
シリカ系ナノ空孔材料による、前記DNAの非特異的吸着の抑制効果により、精製酵素試料に付随的に含有される微量のDNA不純物を排除することが可能となり、その結果、極微量の基質DNA、例えば、難培養性微生物の一細胞ゲノムDNA、を対象とした、新規の高精度DNA増幅手法として利用することを可能とする。
本発明のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法によれば、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによって、分子サイズの異なる各種DNA合成酵素の固定化状態の適正化を行うことができ、更に、該酵素のDNA増幅活性を高度に制御することができる。この効果を利用することで、例えば、サブユニット構造を有する巨大なDNA合成酵素を対象とした固定化酵素の調製が可能となる。
また、本発明のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体は、繰り返し使用における、安定的な酵素固定化状態の保持及び高い反応持続性を有するため、例えば、安定性の低いDNA合成酵素の再利用など、高耐久性部材としての用途に関する新技術を提供することができる。
更に、本発明は、環境微生物並びに生体の遺伝子診断、及び各種病原因子の検出などに向けた、微量の基質DNAを対象とした、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)、等温DNA増幅(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、又は、Multiple Displacement Amplification(MDA法)などにおける高効率のDNA増幅手法として適用可能である。

Claims (8)

  1. シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に酵素反応により反応基質である核酸(DNA)を増幅させるDNA増幅活性を有するDNA合成酵素の全体あるいは一部分を備える酵素内包複合体であって、
    前記シリカ系ナノ空孔材料が、(1)FSM又はSBA型メソポーラスシリカであり、(2)その中心細孔直径が2〜50nmであり、(3)全細孔容積が0.1〜2.0mL/gであり、(4)比表面積が200〜1500m /gであり、
    前記酵素反応が、環状及び直鎖状、又は、一本鎖及び二本鎖の基質DNAを対象とした、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)、等温DNA増幅(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、又は、Multiple Displacement Amplification(MDA法)、であり、
    酵素反応前後において、前記DNA合成酵素の全体あるいは一部分酵素活性部位を露出させた形態で、前記シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に吸着、固定されていて、上記酵素内包複合体が反応基質である核酸(DNA)と相互作用を示し、酵素活性を発現できる複合化状態にある構造を有することを特徴とするDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
  2. 前記シリカ系ナノ空孔材料が、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、SBA−15(中心細孔直径:18.5nm)、SBA−15(中心細孔直径:24.5nm)、である、請求項1に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
  3. 前記シリカ系ナノ空孔材料が、該材料に固定化したDNA合成酵素と反応基質(DNA)を溶液中で相互作用させた場合、該材料へのDNA分子の非特異的吸着を抑制することができ、かつ、DNA合成酵素を選択的に固定化することができる、請求項1又は2に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
  4. 前記酵素が、耐性を有するDNA合成酵素である、請求項1に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を製造する方法であって、
    シリカ系ナノ空孔材料のFSM又はSBA型メソポーラスシリカ細孔にDNA合成酵素の全体あるいは一部分を吸着させ、該シリカ細孔に固定させることにより反応基質である核酸(DNAと相互作用を示し、酵素活性を発現できる複合化状態にある構造を有する酵素内包複合体を作製することを特徴とするDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法。
  6. シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いにより、分子サイズの異なる各種DNA合成酵素の固定化状態の適正化を行い、かつ、DNA合成酵素の活性発現によるDNA増幅活性の程度を制御する、請求項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体からなるDNA増幅活性を有するDNA増幅用部材であって、
    DNA合成反応における繰り返し使用においても、酵素がシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に吸着、固定、保持され、かつ、DNA合成能を持続して発現する耐久性を有することを特徴とするDNA合成酵素内包耐久性部材。
  8. 請求項1からのいずれか一項に記載のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いて、請求項に記載の酵素反応のいずれかにより反応基質である核酸(DNAを増幅させることを特徴とする、DNAの増幅方法。
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