JP2008307019A - 酵素活性を維持する核酸配列の増幅反応機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】迅速検出のために、一連の核酸増幅反応における鋳型核酸の熱変性温度を従来よりも高温に設定する事が可能な手段を見出す事、製造コストを下げるために、核酸ポリメラーゼの低温領域に保持するポリメラーゼが移動可能で、後ほど容器に入れられる形態にする事が可能な手段を見出す事、検査コストを下げるためにポリメラーゼ量を多くしても回収、再利用が可能な手段を見出す事である。
【解決手段】反応容器中で核酸増幅を行う核酸増幅方法であって、前記反応容器内に高温領域と低温領域を設定し、該核酸ポリメラーゼを低温領域側に保持させる事に加え、該核酸ポリメラーゼは移動可能な核酸ポリメラーゼである事を特徴とする核酸増幅方法。
【選択図】図1
【解決手段】反応容器中で核酸増幅を行う核酸増幅方法であって、前記反応容器内に高温領域と低温領域を設定し、該核酸ポリメラーゼを低温領域側に保持させる事に加え、該核酸ポリメラーゼは移動可能な核酸ポリメラーゼである事を特徴とする核酸増幅方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、標的核酸配列を増幅する反応機構に関するものであり、該増幅反応にて利用される酵素(核酸ポリメラーゼ)の熱耐久性における欠点の改善を目的とした、酵素活性を維持する核酸配列の増幅反応機構に関する。
生体試料における微量な核酸サンプルの標的核酸配列を効果的に増幅する手法として、PCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれる核酸増幅技術が知られている。PCRの原理は、3段階から成るDNA合成反応を繰り返して行う。まず、1.鋳型となるDNA2本鎖を加熱して変性し、一本鎖にする(変性;denature)。次に、2.増幅したい特定部位のDNA鎖の両端に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを反応系に過剰に加えた状態で温度を下げると、プライマーがDNA鎖の相補的な部位と2本鎖を形成する(アニーリング;annealing)。3.この状態でDNA合成基質のデオキシヌクレオシド三リン酸とDNAポリメラーゼを作用させると、ポリメラーゼはプライマー部位からDNA相補鎖を合成していく(伸長反応または重合反応;extension)。この反応において1回の合成反応で生成したDNAは次の反応の鋳型になるため、この3段階の反応を繰り返す事により、莫大な数の標的核酸配列が得られる事になる。この反応はクレノー酵素のようなポリメラーゼを用いても可能なはずであるが、PCRが実用化されるには、高温に暴露されるこの反応の特性上、耐熱性ポリメラーゼの利用が不可欠である。
従来PCRにおいて使用されるDNAポリメラーゼ等の核酸増幅酵素は、核酸を一本鎖に変性させる温度(90〜98℃)において熱耐久性を有する耐熱性ポリメラーゼが使用されている。耐熱性ポリメラーゼは各社開発が進んでおり、様々なバリエーションの耐熱性ポリメラーゼが販売されている。
しかし、各社にて販売されている耐熱性核酸ポリメラーゼは、耐熱性を有するとされながらも、実際には、長時間継続的に加熱されると失活してしまう事が知られている。一般的に耐熱性核酸ポリメラーゼの酵素活性半減期は、95℃では30〜45分、98℃では5〜10分とされている。このような理由によりPCRにおける熱サイクル数は制限されてしまう。一方、二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離するために水素結合を切るエネルギーを高く(温度を高く)する方が解離効率は良く、熱サイクル周期を早くできるはずだが、実際には耐熱性核酸ポリメラーゼは上述したように98℃では5分までしか活性維持できない。したがって、大抵のPCRにおける核酸変性温度はせいぜい95℃までしか設定できない。
上記核酸ポリメラーゼ酵素活性における問題点を解決する試みとして、例えば特許文献1にその手段が記載されている。それは、核酸を変性させる容器(高温)と核酸を重合させる容器(酵素活性温度)をチューブ等で連結した核酸増幅装置において、核酸ポリメラーゼを核酸の重合を行う容器内に固定化された形態で存在させる手段である。高温にさらされること無く酵素活性温度に保たれるため、核酸ポリメラーゼの酵素活性を維持することができる。しかし、容器に固定化する際、容器壁面形状に沿って固定化する製造方法では、容器壁面のような非平面を表面処理して核酸ポリメラーゼを固定化するのは困難であるので、製造コストが上がってしまい問題となる。また、容器に固定化すると、容器壁面にプライマーがアニーリングした鋳型核酸が、壁面に到達し循環する確率が低くなり、つまりプライマーがアニーリングした鋳型核酸と固定化された核酸ポリメラーゼが出会い反応する確率が低くなり、感度低下の原因となる。プライマーがアニーリングした鋳型核酸と固定化された核酸ポリメラーゼが出会う確率を向上させるためには、核酸ポリメラーゼの固定量を多くする手段が考えられる。ところが、核酸ポリメラーゼは周知のとおり高価であるので、回収再利用が可能でないと検査コストが上がってしまう。
一方、PCRで検出するアプリケーションとして、近年、感染症の起炎菌検査を、起炎菌が有する遺伝子をPCR等の核酸増幅反応により検出する試みが見られる。特に敗血症における起炎菌を検出する場合、上記核酸増幅反応は培養検査等に比べ迅速且つ高感度な検出法として期待されている。ところが、感染初期症状における感染患者血液1ml中に含まれる起炎菌濃度は、数個から数百コピーと極めて微量である事が知られている。このような数個といった極めて低コピーであっても理論上増幅可能であることが核酸増幅反応の特徴である。しかし、実際には患者血液から抽出されるゲノムは、患者血液の白血球由来のヒトゲノムが多量に含まれており、これがバックグラウンド核酸として阻害剤様に働くので、該起炎菌の増幅反応効率を低下させ、つまり感度を低下させてしまう問題がある。
特許第2685260号明細書
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、迅速検出のために、一連の核酸増幅反応における鋳型核酸の熱変性温度を従来よりも高温に設定する事が可能な手段を見出す事である。また、製造コストを下げるために、核酸ポリメラーゼの低温領域に保持するポリメラーゼが移動可能で、容器から独立して出し入れが可能である形態にする事が可能な手段を見出す事である。加えて、検査コストを下げるために上記核酸ポリメラーゼを回収、再利用が可能な手段を見出す事である。さらには、標的核酸配列以外のバックグランド核酸が多量に存在する反応系においても、従来よりもサイクル周期を多くし検出感度を高めるために核酸ポリメラーゼ酵素活性を継続的に維持する事である。
本発明者等は鋭意検討した結果、下記(1)〜(8)の方法により上記課題が解決される事を見出した。
(1)増幅しようとする鋳型核酸、核酸ポリメラーゼ、該核酸ポリメラーゼにより反応される核酸合成基質、及び核酸プライマーを含む反応容器中で核酸増幅を行う核酸増幅方法であって、前記反応容器内に高温領域と低温領域を設定し、該核酸ポリメラーゼを低温領域側に保持させ、さらに該核酸ポリメラーゼは該反応容器と独立して移動可能である事を特徴とする核酸増幅方法。
(2)前記移動可能な核酸ポリメラーゼが移動可能な担体に担持させた核酸ポリメラーゼである事を特徴とする(1)に記載の核酸増幅方法。
(3)前記担体が、粒子状、網目状、繊維状、板状、または多孔質体である事を特徴とする(2)に記載の核酸増幅方法。
(4)前記担体が磁性体である事を特徴とする(2)または(3)に記載の核酸増幅方法。
(5)前記磁性体担体に担持された核酸ポリメラーゼが低温領域側に設けた磁石により低温領域に保持させる事を特徴とする(4)に記載の核酸増幅方法。
(6)前記磁性体担体に担持された核酸ポリメラーゼが磁石を用いて回収される事を特徴とする(4)に記載の核酸増幅方法。
(7)前記核酸増幅方法における反応容器が基板上に流路またはチャンバーとして形成されているものである事を特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の核酸増幅方法
本発明において、増幅反応容器内を恒常的に高温領域と低温領域を維持し、移動可能な核酸ポリメラーゼを低温領域のみに保持させる事により、核酸ポリメラーゼは酵素活性を維持する事が可能となる。さらに、変性温度を従来よりも高温に設定する事ができ、変性効率を上げる事ができるので、迅速検出に寄与する事が可能である。また、該核酸ポリメラーゼは移動可能な形態であるので、容器の製造後、キットの形態などで該核酸ポリメラーゼを容器に入れる事ができ、製造コストを下げる事が出来る。また、該核酸ポリメラーゼは移動可能、さらには回収・再利用が可能であるので、多量に反応容器に入れても検査コストの上昇を抑える事が出来る。また、本発明により核酸ポリメラーゼの活性を維持する事が可能であるので、従来よりも増幅サイクル数を増やす事が可能になる。したがって、敗血症患者血液からの抽出病原菌ゲノム検出のように、標的核酸以外のバックグランドとなり得るヒトゲノムが多量に存在する反応系においても、標的核酸の検出感度を向上する事が可能となる。
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照にしながら詳細に説明する。本発明の概念図を図1に示す。移動可能な核酸ポリメラーゼとは、移動可能な担体に担持させた核酸ポリメラーゼである。移動可能な担体とは、容器に直接結合されるものではなく、容器内で遊離している状態で存在する担体である。本発明における核酸増幅反応装置において、移動可能な担体に核酸ポリメラーゼを担持する事により、容器とは別に試薬キットの一部として提供する事が可能である。実施形態として具体的に述べると、まず、核酸増幅反応装置に反応容器をセッティングする。次に、増幅しようとする鋳型核酸、核酸ポリメラーゼ(ここでの核酸ポリメラーゼは、反応容器内で移動可能である)、該核酸ポリメラーゼにより反応される核酸合成基質、及び核酸プライマーを含む反応溶液を前記反応容器に供給する。続いて、核酸ポリメラーゼを適宜担体の特性に合わせた手段により、低温領域に集積し保持する。次に、ヒーターを入力して、高温領域と低温領域を形成し、高温領域と低温領域を行き来させることが可能である流体移送手段により核酸ポリメラーゼ以外の反応溶液を移送し、核酸増幅反応を行う。そして、反応終了後、核酸増幅産物を含む核酸ポリメラーゼ以外の反応溶液を取り出す。さらに適宜必要あれば、残った核酸ポリメラーゼ(反応溶液も付着している)を緩衝液、もしくは核酸分解酵素(DNAase等)を含む緩衝液等で洗浄した後、さらに緩衝液等で後洗浄し、続いて核酸ポリメラーゼを回収して再利用してもよい。これら一連の工程は、自動化により有用性の向上を図ってもよい。なお、本発明において、高温領域とは、PCRにおいて変性が効率よく起こる温度に設定された領域を意味する。一方、低温領域とは、反応において用いられる核酸増幅酵素の活性が維持される温度で、プライマーが標的核酸と特異的にアニーリングできる温度に設定された領域を意味する。具体的には、用いる核酸および酵素にもよるが、高温領域は90〜99℃、低温領域では45〜75℃に設定することができる。
移動可能な担体は、核酸増幅反応効率を上げるために、増幅反応に必要な核酸ポリメラーゼ以外の物質を含む溶液と、担体担持核酸ポリメラーゼとが接液される表面積が大きくなるように、その形状は、粒子状、網目状、繊維状、板状または多孔質体が好ましい。
形状が粒子の場合は、0.1〜100μmの粒子径が望ましい。網目状、繊維状の場合は、網目または繊維間を、増幅反応に必要な核酸ポリメラーゼ以外の物質を含む溶液が連通する事が可能な隙間を有していればよい。
担体の材料は、不溶性材料が望ましく、フェライト、酸化鉄、酸化クロム、コバルトなどの磁性体、およびラテックス、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の高分子材料が挙げられる。
磁性体の場合は、低温領域のみに設けた外部磁場を使用してその磁場領域に磁性担体を保持する事が出来るので、低温領域のみに核酸ポリメラーゼ担持担体を保持する事が可能である。さらに、核酸ポリメラーゼ担持担体の回収時にはその磁場を利用して回収する事も可能となる。すなわち、移動可能な担体として磁性体を用いる場合には、外部磁場として磁石などを用いて、核酸ポリメラーゼ担持担体を保持及び回収をすることが容易に可能である。
高分子材料の場合は、内部に空胞を有する担体を使用することができる。内部に空胞を有していれば担体の比重が1より小さくなり、浮力によりその担体を水溶液に浮かせる事が出来る。この場合、液面側に低温ヒーターまたは冷却ヒーター(核酸ポリメラーゼ温度)を設置すると、高分子材料の担体即ち担体担持核酸ポリメラーゼを低温領域に保持することができるので、本発明の一実施例が達成され得る。さらに、核酸ポリメラーゼ担持担体を回収する場合にはフィルター等で濾し取る事が可能である。
核酸ポリメラーゼを担体に担持させる手段としては、化学結合、静電結合、吸着、抗原抗体結合、ビオチン−アビジン結合等が挙げられるが、核酸ポリメラーゼが担持されれば良く、例示した手段に限定されるものではない。
本発明における鋳型核酸とは、例えば、ヒトの血液、膿汁、痰、髄液、精液、唾液、胃液、膣分泌物、口腔内粘液等の体液、尿及び糞便のような排出物等細菌が存在すると思われるあらゆる物、または生体組織から抽出された核酸集団を挙げることができる。抽出方法としては、従来公知の核酸抽出方法をいずれも好ましく使用できる。
核酸ポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素などが挙げられる。本発明においてこれらは、熱耐久性の有無に関わらず導入する事が可能である。
本発明における反応容器は、マイクロ流体デバイスが好適に用いられる。近年、マイクロスケール・トータル・アナリシス・システムズ(μTAS)又はラブ・オン・チップ(Lab-on-Chip)などの名称で知られる技術がある。これは、基板上にマイクロチャネルや反応容器及びポートなどの微細構造を設け、該微細構造内で物質の化学反応、合成、精製、抽出、生成および/または分析など各種の操作を行うように構成されたマイクロデバイスが提案されている。このような目的のために製作された、基板内にマイクロチャネル、ポート及び反応容器などの微細構造を有する構造物は総称して「マイクロ流体デバイス」又は「マイクロチップ」と呼ばれる。マイクロ流体デバイスは(1)サンプル及び試薬の使用量が著しく少ない、(2)分析時間が短い、(3)感度が高い、(4)現場に携帯し、その場で分析できる、及び(5)使い捨てできるなどの利点を有する。
本発明における核酸合成基質は、主にデオキシヌクレオシド三リン酸を含む混合物である。具体的には、dATP、dGTP、dCTP、dTTPまたはdUTPを含み、さらにそれらの誘導体および前記誘導体を含むそれらの化合物に標識した標識体を含むことが可能である混合物である。標識体としては、例えば、ビオチン標識されたデオキシヌクレオシド三リン酸、蛍光標識されたデオキシヌクレオシド三リン酸等が市販されており、本発明において適宜これらを好適に使用する事が可能である。
本発明における増幅反応機構の実施形態を例示する。下記実施例は一実施形態であり、本発明はこれに限定されるものではない。
<マイクロ流体デバイスを使用した核酸増幅反応系>
マイクロ流体デバイスの利点を本発明に活かした実施例を、図2〜4を参照にしつつ以下に説明する。
マイクロ流体デバイスの利点を本発明に活かした実施例を、図2〜4を参照にしつつ以下に説明する。
(i)マイクロ流体デバイスの作製
本実施例におけるマイクロ流体デバイスの作製方法を図2に示す。
本実施例におけるマイクロ流体デバイスの作製方法を図2に示す。
赤外線吸収剤を混合したポリアクリレートを材料として図示した形状の回転板と支持板を射出成型機にて作製した。回転板には軸穴があり、円周側面部位に液体を移動させるための歯車がついている。該歯車は回転体側面上部のみに付いている。また、回転板の上表面に磁性体を塗布した。支持板には回転板をはめ込むための窪みがあり、その中心に回転軸がある。支持板に回転板をはめ込むと、支持体の窪み円周側面と回転板の円周側面との間に微小な隙間が出来る。これをサンプルが入る微細流路として使用する。また、回転板の軸穴、上平面と下平面には核酸増幅用のワックス(商品名;AmpliWax(登録商標) PCR Gem)を塗布した。このワックスは、55〜58℃以上で融解する特性がある。
透明なポリアクリレートを材料とした図示した形状の封止板を準備した。この封止板には、封止したときにちょうど流路の上側に来るようにサンプル注入口を開けた。支持板と封止板の接合はレーザー溶着装置(レーザー波長808nm)にて行い、封止板を支持板に載せた状態で、支持板の窪み円周部にそって、点レーザーを上から照射し封止した。以上により本マイクロ流体デバイスを完成させた。
本マイクロ流体デバイスは、デバイス上部に磁石を設置し、その磁石を回転させる事で、その回転方向に沿って、回転板に塗布した磁性体も同期して回転する。つまり、外部磁石により回転板を回転させる事が本デバイスの液体移送手段である。
(ii)DNAポリメラーゼ担持担体の作製
DNAポリメラーゼとして耐熱酵素であるExTaq(タカラバイオ株式会社製)を選択した。また、担体としてストレプトアビジン化磁性ビーズ(MAGNOTEX−SA;タカラバイオ株式会社製)を選択した。担持方法であるが、Sulfo−NHS−LC−LC−Biotin(ピアース社製)
DNAポリメラーゼとして耐熱酵素であるExTaq(タカラバイオ株式会社製)を選択した。また、担体としてストレプトアビジン化磁性ビーズ(MAGNOTEX−SA;タカラバイオ株式会社製)を選択した。担持方法であるが、Sulfo−NHS−LC−LC−Biotin(ピアース社製)
をExTaqに溶解して(保存バッファーに直接溶解)、ExTaqが有しているアミノ基と反応させ、ExTaqのビオチン標識体を得た。続いて、ストレプトアビジン化ビーズを上記ExTaqのビオチン標識体を含む保存バッファーと混合し、DNAポリメラーゼ担持磁性ビーズを得た。
(iii)オリゴ核酸プライマーの準備
起炎菌検出用の為の16s rRNA遺伝子(標的遺伝子)増幅用PCR Primerとして表1に示す核酸配列を設計した。具体的には、16s rRNAをコーディングしているゲノム部分を特異的に増幅するプローブセット、つまり約1500塩基長の16s rRNAコーディング領域の両端部分で、特異的な融解温度をできるだけ揃えたプライマーを設計した。なお、変異株や、ゲノム上に複数存在する16s rRNAコーディング領域も同時に増幅できるように複数種類のプライマーを設計した。
起炎菌検出用の為の16s rRNA遺伝子(標的遺伝子)増幅用PCR Primerとして表1に示す核酸配列を設計した。具体的には、16s rRNAをコーディングしているゲノム部分を特異的に増幅するプローブセット、つまり約1500塩基長の16s rRNAコーディング領域の両端部分で、特異的な融解温度をできるだけ揃えたプライマーを設計した。なお、変異株や、ゲノム上に複数存在する16s rRNAコーディング領域も同時に増幅できるように複数種類のプライマーを設計した。
表中示したプライマーは、合成後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、Forward Primer 3種(配列番号:1〜3)、Reverse Primer 3種(配列番号:4〜6)を混合し、それぞれのプライマー濃度が、最終濃度10 pmol/μlとなるようにTE緩衝液に溶解した。
(iv)Pseudomonas aeruginosa DNAの抽出
(微生物の培養& Genome DNA抽出の前処理)
まず、Pseudomonas aeruginosa標準株(ATCC 10145)を、定法に従って培養した。この微生物培養液を1.5ml容量のマイクロチューブに1コロニー108を菌体数として5個/μLまで段階希釈を行なった菌液1μLにTE999μLを加えて遠心分離を行なった(8500rpm、5min、4℃)。上精を捨てた後、Enzyme Buffer(50mM Tris−HCl:p.H.8.0、25mM EDTA)300μlを加え、ミキサーを用いて再縣濁した。上精を捨てた後、回収された菌体に以下の酵素溶液を加え、ミキサーを用いて再縣濁した。
(微生物の培養& Genome DNA抽出の前処理)
まず、Pseudomonas aeruginosa標準株(ATCC 10145)を、定法に従って培養した。この微生物培養液を1.5ml容量のマイクロチューブに1コロニー108を菌体数として5個/μLまで段階希釈を行なった菌液1μLにTE999μLを加えて遠心分離を行なった(8500rpm、5min、4℃)。上精を捨てた後、Enzyme Buffer(50mM Tris−HCl:p.H.8.0、25mM EDTA)300μlを加え、ミキサーを用いて再縣濁した。上精を捨てた後、回収された菌体に以下の酵素溶液を加え、ミキサーを用いて再縣濁した。
Lysozyme:50 μl (20 mg/ml in Enzyme Buffer)
N-Acetylmuramidase SG:50 μl (0.2 mg/ml in Enzyme Buffer)。
N-Acetylmuramidase SG:50 μl (0.2 mg/ml in Enzyme Buffer)。
次に、酵素溶液を加え再縣濁した菌液を、37℃のインキュベーター内で30分間静置し、細胞壁の溶解処理を行った。
(Genome抽出)
以下に示す微生物のGenome DNA抽出は、核酸精製キット(MagExtractor −Genome-:TOYOBO社製)を用いて行った。具体的には、まず、前処理した微生物縣濁液に溶解・吸着液750μlと磁性ビーズ40μlを加え、チューブミキサーを用いて、10分間激しく攪拌した。(ステップ1)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。(ステップ2)
次に、洗浄液900μlを加え、ミキサーで5秒間程度攪拌して再縣濁を行った。(ステップ3)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。(ステップ4)
ステップ3、4を繰り返して2度目の洗浄(ステップ5)を行った後、70%エタノール900μlを加え、ミキサーで5秒間程度攪拌して再縣濁した。(ステップ6)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。(ステップ7)
ステップ6、7を繰り返して70%エタノールによる2度目の洗浄(ステップ8)を行った後、回収された磁性粒子に純水100μlを加え、チューブミキサーで10分間攪拌を行った。
以下に示す微生物のGenome DNA抽出は、核酸精製キット(MagExtractor −Genome-:TOYOBO社製)を用いて行った。具体的には、まず、前処理した微生物縣濁液に溶解・吸着液750μlと磁性ビーズ40μlを加え、チューブミキサーを用いて、10分間激しく攪拌した。(ステップ1)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。(ステップ2)
次に、洗浄液900μlを加え、ミキサーで5秒間程度攪拌して再縣濁を行った。(ステップ3)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。(ステップ4)
ステップ3、4を繰り返して2度目の洗浄(ステップ5)を行った後、70%エタノール900μlを加え、ミキサーで5秒間程度攪拌して再縣濁した。(ステップ6)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。(ステップ7)
ステップ6、7を繰り返して70%エタノールによる2度目の洗浄(ステップ8)を行った後、回収された磁性粒子に純水100μlを加え、チューブミキサーで10分間攪拌を行った。
次に分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブ壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を新しいチューブに抽出核酸を回収した。
(v)マイクロ流体デバイスを使用した増幅反応
続いて、本マイクロ流体デバイスを使用した核酸増幅を、図3を参照にしつつ説明する。図3は本マイクロ流体デバイスを上から見た図である。
続いて、本マイクロ流体デバイスを使用した核酸増幅を、図3を参照にしつつ説明する。図3は本マイクロ流体デバイスを上から見た図である。
上記作製したマイクロ流体デバイスを図示した平面形状のヒーターユニットに乗せた。ヒーターユニットは低温ヒーターと高温ヒーターに分かれている。さらに、低温ヒーター領域にスパッタリング法により製作された数μmの厚さの薄膜磁石を形成した。
続いて、下記組成の核酸増幅反応溶液を調製した。
・10×ExTaq Buffer 5μl、
・鋳型核酸〔(iv)のPseudomonas aeruginosaの抽出ゲノム〕20μl、
・オリゴ核酸プライマー
Forward Primer mix:2μl (20 pmol/tube each:表1)
Reverse Primer mix:2μl (20 pmol/tube each:表1)、
・dNTP Mixture(各2.5mM);タカラバイオ社製)4μl、
・H2O 17μlを混合して
・最後に、(ii)で作成したDNAポリメラーゼ担持担体1mgを混合して核酸増幅反応溶液を調整した。
・10×ExTaq Buffer 5μl、
・鋳型核酸〔(iv)のPseudomonas aeruginosaの抽出ゲノム〕20μl、
・オリゴ核酸プライマー
Forward Primer mix:2μl (20 pmol/tube each:表1)
Reverse Primer mix:2μl (20 pmol/tube each:表1)、
・dNTP Mixture(各2.5mM);タカラバイオ社製)4μl、
・H2O 17μlを混合して
・最後に、(ii)で作成したDNAポリメラーゼ担持担体1mgを混合して核酸増幅反応溶液を調整した。
続いてこの核酸増幅反応溶液を、本マイクロ流体デバイスの注入口に注入した。次に、回転体を磁石により回転させて、磁性ビーズの動きを観察して、薄膜磁石部分に集積されたのを確認した。次に、回転体の回転は継続したままで、ヒーターの入力を開始した。低温ヒーターは酵素活性温度である72℃に、高温ヒーターは変性温度である98℃に恒常的に維持した。その状態で回転体を100回転(100サイクル)させ、増幅反応を行った。
また、参照実験として、同じ構成のマイクロ流体デバイスを使用して、磁性ビーズに担持しないExTaqを使用して増幅反応を行った(核酸ポリメラーゼは環状流路を周回する。つまり周回ごとに98℃にさらされる)。
反応終了後、サンプル注入口よりサンプルを取り出し、アジレント社製電気泳動検出装置(アジレント2100バイオアナライザ;Agilent 2100 Bio Analyzet)により増幅された標的核酸を検出した。
(vi)結果
本実施例の実験結果を図4に示す。DNAポリメラーゼ担持磁性ビーズを使用したサンプルからはバンドが検出されたが、磁性ビーズに担持させていないDNAポリメラーゼを使用したサンプルからはバンドがわずかにしか検出されなかった。
本実施例の実験結果を図4に示す。DNAポリメラーゼ担持磁性ビーズを使用したサンプルからはバンドが検出されたが、磁性ビーズに担持させていないDNAポリメラーゼを使用したサンプルからはバンドがわずかにしか検出されなかった。
この結果により、本発明の特徴である、核酸ポリメラーゼ担持担体を低温領域に保持する増幅反応機構の効果(熱サイクルを100回行っても酵素活性が維持される)が実証された。
Claims (7)
- 増幅しようとする鋳型核酸、核酸ポリメラーゼ、該核酸ポリメラーゼにより反応される核酸合成基質、及び核酸プライマーを含む反応容器の中で核酸増幅を行う核酸増幅方法であって、
前記反応容器内に高温領域と低温領域を設定し、該核酸ポリメラーゼを低温領域の側に保持させ、さらに該核酸ポリメラーゼは該反応容器と独立して移動可能である事を特徴とする核酸増幅方法。 - 前記移動可能な核酸ポリメラーゼが移動可能な担体に担持させた核酸ポリメラーゼである事を特徴とする請求項1に記載の核酸増幅方法。
- 前記担体が、粒子状、網目状、繊維状、板状、または多孔質体である事を特徴とする請求項2に記載の核酸増幅方法。
- 前記担体が磁性体である事を特徴とする請求項2または3に記載の核酸増幅方法。
- 前記磁性体の担体に担持された核酸ポリメラーゼが低温領域の側に設けた磁石により低温領域に保持させる事を特徴とする請求項4に記載の核酸増幅方法。
- 前記磁性体の担体に担持された核酸ポリメラーゼが磁石を用いて回収される事を特徴とする請求項4に記載の核酸増幅方法。
- 前記核酸増幅方法における反応容器が基板に流路またはチャンバーとして形成されているものである請求項1から6のいずれかに記載の核酸増幅方法。
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JP2007160162A JP2008307019A (ja) | 2007-06-18 | 2007-06-18 | 酵素活性を維持する核酸配列の増幅反応機構 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014103924A (ja) * | 2012-11-28 | 2014-06-09 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | Dna合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体、その製造方法及び用途 |
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2007
- 2007-06-18 JP JP2007160162A patent/JP2008307019A/ja not_active Withdrawn
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