JP6714251B2 - 極微量核酸の増幅方法 - Google Patents

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本発明は、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いた微量核酸増幅方法の改良技術に関する。更に詳しくは、DNA合成酵素とシリカ系ナノ空孔材料とを複合体化する過程で、積極的にDNA合成酵素とウシ血清アルブミン(BSA)との複合体化を促進させたDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の形成方法、及び当該DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いることによる、数分子レベルの鋳型DNAを対象とすることができる極微量DNAの増幅技術に関するものである。
DNA配列の解析に基づいた、環境試料、病気・健康、又、犯罪捜査などに向けた遺伝子診断では、対象となる試料が希少な試料であることから、極めて微量のDNA、究極的には1分子レベルのDNAを対象とした、迅速かつ簡便な解析法が求められており、そのような解析を可能とする極微量の核酸増幅技術の開発が必要である。
すなわち、簡便な手法により、非特異的DNA増幅反応を抑制でき、その結果、極微量の基質DNAの特異的かつ高感度の増幅を可能にし、更に、反応溶液中のDNA増幅産物を容易に回収可能である、新しい技術の提案・開発が切望されている。
迅速かつ簡便な核酸増幅法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)などDNA合成酵素を用いたDNA増幅法が考えられるが、従来のPCR法等の核酸の増幅技術では、反応系外から偶然に混入した標的DNAとは異なる微量のDNA、又は、プライマー等に由来した非特異的DNA増幅、といった問題点があったため、数分子レベルの極微量DNAの特異的かつ高感度の増幅は困難であった。一般に、PCR法の場合、50μLの反応系での基質DNA量は1ng(10の7乗分子)のオーダーが必要であるとされ、検出限界値は10pg(10の5乗分子)のオーダー程度といわれている。
1分子レベルからのDNA増幅における先行技術として、微量遺伝子の正確な定量を可能にするとされる、デジタルPCR法が提案されている。本法は、具体的には、タイタープレートのウェル内で核酸試料を1分子レベルまで限界希釈した後にPCRを行い、蛍光検出によりDNA増幅産物の絶対量を評価する技術である(非特許文献1)。更に近年では、微小液滴(エマルジョン)を利用したデジタルPCR装置の開発が進展している(非特許文献2)。
しかしながら、前記デジタルPCR法によっても、反応系外から偶然に混入した標的DNAとは異なる微量のDNA、又は、プライマー等に由来した非特異的DNA増幅の問題が指摘されている。また、本法は元来、主として、遺伝子の発現量を評価するための技術であり、液滴などからDNA増幅産物を容易に回収する技術は確立されていない。
一方、従来から、MCM、SBA、FSM型などのシリカ系ナノ空孔材料の細孔内部に蛋白質を吸着させ、活性を保持させる人工的な蛋白質複合体に関するタンパク質固定化技術を酵素に適用して、酵素をこれらシリカ系ナノ空孔材料の細孔内部に固定化し、基質と反応させる方法が知られていた(特許文献1、2、非特許文献3)。本発明者らは、最近、微量のDNAを選択的に増幅するために、当該シリカ系ナノ空孔材料を用い、DNA合成酵素をシリカ系ナノ空孔材料に固定化して複合体化したDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を製造し、標的の微量DNAを増幅する方法を開発し、特許出願した(特許文献3、非特許文献4)。しかし、当該手法を用いることで、1ngレベルの微量DNAの増幅までは選択的に行えることが確認できたが、さらに極微量のDNA試料に適用することは困難であった。
また、DNA合成酵素の固定化に関する従来技術としては、他に、多孔性チタニア膜や金表面処理ガラス基板などにDNA合成酵素を固定化し、酵素活性を高効率に発現させることなどの特徴を有する固定化酵素の開発が行われている(非特許文献5、6、7)が、当該技術を、微量DNAを対象としたDNA増幅反応に適用した報告例は存在しない。
そのため、従来のDNA合成酵素を用いたDNA増幅法において、さらにDNA増幅反応中の副反応を極力抑制し、かつDNA増幅反応環境を至適化する技術を開発することで、DNA増幅反応の特異性及び感度を高め、数分子レベルの極微量DNAにも適用できる高精度のDNA増幅法の提供が強く要請されていた。
ところで、近年、特に特異性が重要視される診断技術などの分野で、等温で鎖置換活性を有するDNA合成酵素の一種類のみで増幅反応させるLAMP法が、核酸の迅速、簡易、精確な増幅・検出方法として注目されている(非特許文献8)。
しかし、LAMP法は、PCR法と比較してより深刻な鋳型汚染(コンタミネーション)によって、陰性コントロール実験における非特異的DNA増幅が起こる場合が多々あり、増幅された標的遺伝子配列の有無の正確な判定が困難となる場合がある(非特許文献9)。
そのため、LAMP法によるDNA増幅反応において、コンタミネーションによる副反応を抑制し、かつDNA増幅反応環境を至適化するための技術開発が切望されていた。
特許第4785174号公報 特開2000−139459号公報 特開2014−103924号公報(平成26年6月9日公開) 特許第4963117号公報
B.Vogelstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.96,pp.9236−9241(1999) M.Baker,Nat.Methods,vol.9,pp.541−544(2012) 豊田研究所R&Dレビュー Vol.36,No.2(2001.6)第57−62 松浦俊一ら、ナノ空孔反応場を利用した高効率DNA増幅システムの構築、分子生物学会講演要旨集(2012年12月11日) M.G.Bellino et al.,Small,vol.6,pp.1221−1225(2012) G.Lim et al.,Anal.Biochem.,vol.419,pp.205−210(2011) G.Lim et al.,Anal.Biochem.,vol.432,pp.139−141(2013) ウイルス Vol.54,No.1,pp.107−112(2004) モダンメディア Vol.54,No.10,pp.283−301(2008) 豊田研究所R&Dレビュー Vol.29,No.2(1994.6)第11−22頁 T.Kimura et al.,Adv.Funct.Mater.,vol.19,pp.511−527(2009) S.Inagaki et al.,J.Chem.Soc.Chem.Commun.,pp.680−682(1993) D.Zhao et al.,Science,vol.279,pp.548−552(1998) N.Wang et al.,Microporous Mesoporous Mater.,vol.91,pp.156−160(2006)
本発明は、本発明者らが以前に開発したDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いた微量DNAを増幅させる手法(特許文献3、非特許文献4)を改良して、より極微量の基質DNAを標的として、高精度に増幅させる手法を提供するものである。具体的には、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体のDNA合成反応環境を整え、DNA増幅反応中にDNA合成酵素と相互作用する各種反応基質(DNA、プライマー、dNTPs)に影響を与えることなく、過剰量のプライマーなどに起因する非特異的DNA増幅反応を極力抑制し、酵素周辺における前記の反応基質濃度の至適化を極限まで高める極微量DNA増幅に適用可能なDNA増幅方法、及び当該方法に用いる、改良されたDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法を提供することにある。
また、LAMP法におけるコンタミネーションを防ぎ、かつより効率的に高精度なDNA増幅反応を行わせるための技術を提供することも目的とする。
本発明者らは、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いた微量DNAの増幅方法(特許文献3、非特許文献4)のDNA増幅反応中の副反応を抑制するために、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体から、固定化操作などで混入したDNA夾雑物などを、緩衝液による洗浄工程によって除去しようと想起した。その際、一般の固定化酵素の洗浄法に従えば、通常のリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などの緩衝液を用いることになるが、本発明者らは、DNA増幅反応においてDNA合成酵素の安定化及びプラスチック容器内壁への付着防止等を促すことで知られている、血清アルブミンによる酵素の安定化とシリカ系ナノ空孔材料の規則性細孔表面へのDNA吸着抑制効果を期待して、ウシ血清アルブミン(BSA)を含有させた緩衝液を用いることを思いついた。しかし、BSAは、確かに酵素の安定化とDNA吸着抑制効果も高いが、シリカ系ナノ空孔材料の疎水性表面へ吸着してしまう特性のために、せっかくシリカ系ナノ空孔材料に吸着させたDNA合成酵素までをも競合吸着によって系外に排除してしまうことが懸念される。そればかりか、BSA精製品に含まれている微量の核酸に由来した非特異的DNA増幅が、数分子レベルの極微量DNAの選択的な増幅を阻害する可能性もあった。
そのような重大な懸念材料があったにもかかわらず、本発明者らはあえて、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体に対して、ウシ血清アルブミン(BSA)を含有させた緩衝液による洗浄工程を行い、回収してDNA増幅反応に供してみたところ、驚くべきことに、副反応が抑制され、かつ増幅反応の効率も高まる、という実験結果を得ることができた。
そこで、さらに増幅反応の精度を高めるために、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体とBSAとの複合体化を促進すべく、DNA合成酵素のシリカ系ナノ空孔材料への固定化操作時においても、積極的にBSA含有緩衝液中での固定化を行った。また、固定化後のBSA含有緩衝液による洗浄及び回収工程を複数回繰り返した。このように、確実に「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体」を形成させた後に、典型的なPCR法による基質DNAの増幅反応を行ったところ、pgレベル、さらには数分子レベルという極微量の基質DNAの場合も特異的で感度の良い増幅に成功した。
基質DNAとして、100塩基対の二本鎖及び一本鎖の直鎖DNAと共に、環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20)に挿入した4種類の長鎖DNA(616、1272、2566、5027塩基対)を用いてDNA増幅実験を行ったところ、これらの特異的、高感度のDNA増幅効果は、基質DNAが環状でも一本鎖もしくは二本鎖の直鎖DNAでも、短鎖でも長鎖DNAであっても変わらない。さらに、反応系中に標的の基質DNAと共にバックグラウンドDNAを混入させた状態での極微量DNAの選択的な増幅にも成功した。
また、シリカ系ナノ空孔材料のFSM、SBA、及びSBA microsphereのそれぞれについての好ましい細孔径の範囲を見いだした。あわせて、各シリカ系ナノ空孔材料の種類に応じたBSA含有洗浄液中に含有される塩の最適な組成を検討し、シリカ系ナノ空孔材料ごとに、反応系中のバックグラウンドDNAの反応系外への排除能の高い最適な塩組成を確定することができた。
本発明者らは、以前、リパーゼをシリカ系ナノ空孔材料に固定化してマイクロ流体デバイスに担持させたマイクロリアクターを開発した(特許文献4)。当該リパーゼ−シリカ系ナノ空孔材料複合体担持マイクロリアクターの系では、酵素反応生成物が速やかに系外に排出されるので、副反応も抑えられ反応効率が高まる。その上、当該マイクロリアクターは繰り返し使用が可能となる。
本発明者らは、LAMP法によるDNA増幅法におけるコンタミネーション抑制のために、このマイクロリアクター技術を適用することを着想した。そこで、LAMP法用のDNA合成酵素(Bst DNAポリメラーゼ)を、シリカ系ナノ空孔材料を担持したマイクロ流体デバイスに固定化して、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体担持マイクロリアクターを調製した。
具体的には、シリカ系ナノ空孔材料を担持したマイクロ流路内部に、LAMP法用のDNA合成酵素と共に標的DNAと蛍光試薬を含む緩衝液を充填してDNA合成酵素を固定化した。マイクロ流路内部を65℃に加温して、標的鋳型DNA及びプライマーセットを含むLAMP法試薬反応液を連続的に送液し、DNA増幅産物含有溶液を25μLずつ9回回収したところ、増幅反応中のコンタミネーションを抑制することができ、かつ標的DNAの増幅感度を向上できた。そして、9回目の回収溶液でもDNA増幅効果の低下は見られなかった。これはマイクロ流路内の酵素複合体にとっては、連続して9回分の新たな試薬反応液と接触し相互作用を行ったことであり、酵素複合体の9回繰り返し使用ということもできる。すなわち前記マイクロリアクターに適用したLAMP法用酵素複合体は9回もの繰り返し使用によっても、その増幅効果が低下しないという優れた性能を確認した。
以上のように、本発明は、DNA合成酵素を当該シリカ系ナノ空孔材料担体に固定化する際に、BSA含有溶液中での固定化を行い、次いで、BSA含有洗浄液により1回以上の洗浄工程及び遠心分離による回収工程を施すことにより、シリカ系ナノ空孔材料担体と結合するDNA合成酵素に対して積極的にBSAとの複合体を形成させるというDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法を提供する。そのことにより、DNA増幅反応中での副反応を極力抑え、かつDNA増幅反応の特異性及び感度を高めることができたことで、はじめて数分子レベルという極微量のDNA試料を、特異的かつ高感度に増幅させることに成功した。
また、DNA合成酵素と相互作用させるシリカ系ナノ空孔材料をその種類に合わせた最適な細孔サイズに調製して、DNA酵素周辺環境を整えることで、特異性及び感度が高められることを見いだし、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造工程においてBSA含有洗浄液として用いる緩衝液における最適な塩組成を確定することができた。
さらに、LAMP法用のDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を担持させたマイクロリアクターを用いることで、コンタミネーションによるDNA増幅反応中の副反応を極力抑制でき、かつ至適DNA増幅反応条件を設定することで、DNA増幅反応の特異性及び感度を高めることができるようになった。また、当該マイクロリアクターに担持された複合体は複数回繰り返し使用しても、感度が低下しないという優れた性能を発揮することも見いだされた。
以上の知見を得たことで、本発明を完成した。
すなわち、上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
〔1〕 DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法であって、
(1)シリカ系ナノ空孔材料に対してDNA合成酵素を含む緩衝液を接触させ、シリカ細孔内にDNA合成酵素を吸着させる工程、
(2)得られた沈殿物を、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝溶液に1回以上再懸濁し、遠心分離により回収する工程を設けることを特徴とする、製造方法。
〔2〕 工程(1)で用いる緩衝液が、BSAを含む緩衝溶液である、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 シリカ系ナノ空孔材料が、FSM、SBA、及びSBA microsphereのいずれかから選択される、前記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 選択されたFSMの中心細孔直径が2〜4nmであるか、選択されたSBAの中心細孔直径が4〜9nmであるか、又は選択されたSBA microsphereの中心細孔直径が10〜20nmである、前記〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 シリカ系ナノ空孔材料がFSMであって、少なくとも工程(2)で用いるBSAを含む緩衝溶液が、さらにマグネシウム塩及び界面活性剤を含有している、前記〔3〕又は〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕 工程(1)で用いるDNA合成酵素を含む緩衝液が、BSAと共に、マグネシウム塩及び界面活性剤を含有している緩衝液である前記〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕 シリカ系ナノ空孔材料がSBA又はSBA microsphereであって、少なくとも工程(2)で用いるBSAを含む緩衝溶液が、マグネシウム塩を含有せず、界面活性剤を含有している、前記〔3〕又は〔4〕に記載の製造方法。
〔8〕 工程(1)で用いるDNA合成酵素を含む緩衝液が、BSAを含み、かつマグネシウム塩を含有せず、界面活性剤を含有している緩衝液である前記〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕 前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法によって製造されたDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
〔10〕 標的DNAを、BSAを含有する緩衝液内で、標的DNAの増幅用プライマー及びdNTPsと共に、前記〔9〕に記載のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を作用させることで増幅させることを特徴とする、標的DNAの増幅方法。
〔11〕 被検試料中の標的DNAの検出又は同定する方法であって、下記の(1)〜(3)からなる方法;
(1)被検試料をBSAを含有する緩衝液で希釈する工程、
(2)前記〔9〕に記載のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を標的DNAの増幅用プライマー及びdNTPsと共に作用させて、標的DNAを増幅する工程、
(3)標的DNAを検出する工程。
〔12〕 被検試料中の標的DNAの含有量が、0.01fg/ml〜1.0μg/mlである、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕 DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体がマイクロ流路内部に担持されたマイクロリアクターであって、
前記DNA合成酵素が、LAMP法によるDNA増幅反応に用いるためのDNA合成酵素であり、かつ当該酵素がシリカ系ナノ空孔材料の細孔内部に固定化されてDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を形成していることを特徴とするマイクロリアクター。
〔14〕 マイクロ流路内部に担持された前記DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体に対してさらにBSAが吸着されており、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を形成していることを特徴とする前記〔13〕に記載のマイクロリアクター。
〔15〕 シリカ系ナノ空孔材料が、FSM、SBA、及びSBA microsphereのいずれかから選択される、前記〔13〕又は〔14〕に記載のマイクロリアクター。
〔16〕 LAMP法を用いた核酸の増幅方法であって、下記の(1)〜(5)の工程を含む方法;
(1)前記〔13〕又は〔14〕に記載のマイクロリアクターのマイクロ流路内を緩衝液で洗浄する工程、
(2)流路内部が65℃になるように加温する工程、
(3)標的核酸を含むか又は含む可能性のある核酸試料及び標的核酸増幅用プライマーセットを含む反応溶液を送液する工程、
(4)流路内部で標的核酸を等温核酸増幅させる工程、
(5)得られた核酸増幅産物を含有する溶液を順次連続的に回収する工程。
〔17〕 核酸増幅産物を回収後、さらに(1)〜(5)の工程を繰り返す、前記〔16〕に記載の方法。
本発明は、DNA合成酵素を当該シリカ系ナノ空孔材料担体に固定化する際、及び/又は洗浄工程において、BSAを含有させた緩衝液を積極的に使用することで、シリカ系ナノ空孔材料担体と結合するDNA合成酵素に対して積極的にBSAとの複合体を形成させ、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を提供するものである。そのことにより、DNA増幅反応中での副反応を極力抑え、かつDNA増幅反応の特異性及び感度を高めることができ、はじめて数分子レベルという極微量のDNA試料を、特異的かつ高感度に増幅させることに成功した。これらの特異的、高感度のDNA増幅効果は、基質DNAが環状でも一本鎖もしくは二本鎖の直鎖DNAでも、短鎖でも長鎖DNAであっても変わらず、かつ反応系中にバックグラウンドDNAが混入していても選択的な増幅が可能であることを実証した。
また、DNA合成酵素と相互作用させるシリカ系ナノ空孔材料の種類ごとに、DNA増幅反応の特異性及び感度を高めるための最適な細孔サイズ、BSA含有洗浄液中の最適な塩組成を確定することができた。
また、LAMP法用のDNA合成酵素を、シリカ系ナノ空孔材料複合体を担持させたマイクロリアクターに固定化して用いることで、LAMP法におけるコンタミネーションによるDNA増幅反応中の副反応を極力抑制でき、DNA増幅反応の特異性及び感度を高めることができた。しかも当該マイクロリアクターに担持された複合体は複数回繰り返し使用しても、LAMP法によるDNA増幅能が低下しないという優れた性能を発揮する。
シリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)の規則性細孔(シリカ細孔)表面への反応基質DNA、プライマー、dNTPsの吸着抑制により、シリカ細孔に固定化したDNA合成酵素及びBSAを備えたDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体と適量の反応基質(DNA、プライマー、dNTPs)が相互作用し、更に、酵素反応環境の至適化により非特異的DNA増幅を抑制できるようになった結果、微量DNAが特異的かつ高感度に増幅される様子を模式的に示す説明図である。 DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の調製方法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)の開始までの手順を模式的に示す説明図である。 遊離のDNA合成酵素及び7種類のシリカ系ナノ空孔材料に固定化したDNA合成酵素を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)後のDNA増幅産物(分子サイズ:100塩基対)をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、100塩基対の二本鎖DNAを基質DNAとした用いた場合、また、(b)は、100塩基の一本鎖DNAを基質DNAとした用いた場合、である。 反応溶液50μL中の基質DNA(100塩基対の二本鎖DNA)量を5ngから0.05fgの範囲で段階的に希釈し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:100塩基対)をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、遊離のDNA合成酵素を利用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−FSM型メソポーラスシリカ(細孔径:2.6nm)複合体を利用した場合、である。 100塩基対の二本鎖DNA(5fg)を基質DNAとした、異なるサイクル数でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:100塩基対)をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、遊離のDNA合成酵素及びDNA合成酵素−FSM型メソポーラスシリカ(細孔径:2.6nm)複合体を用いた場合、また、(b)は、基質DNAのみを含まない遊離のDNA合成酵素反応溶液を用いた場合、である。 環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20、2736塩基対)に挿入した4種類の長鎖DNA(616、1272、2566、5027塩基対)を遊離のDNA合成酵素を用いて増幅し、各々のDNA増幅産物をアガロースゲル電気泳動で解析した結果である。 DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)後のDNA増幅産物をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)−(d)は、環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20、2736塩基対)に挿入した4種類の長鎖DNA(616、1272、2566、5027塩基対)を対象に増幅した場合、(a):約800塩基対、(b):約1500塩基対、(c):約2800塩基対、(d):約5200塩基対、の場合である。また、図中、(e)は、(a)−(d)におけるDNA増幅効率の違いを示す図である。 反応溶液50μL中の基質DNA(616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20))量を1ngから0.01fgの範囲で段階的に希釈し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約800塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、遊離のDNA合成酵素を利用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−FSM型メソポーラスシリカ(細孔径:2.6nm)複合体を利用した場合、である。 616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20、0.01fg)を基質DNAとした、遊離のDNA合成酵素及び7種類のシリカ系ナノ空孔材料に固定化したDNA合成酵素を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約800塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。 DNA合成酵素(1unit)を含んだ、反応組成の異なる8種類のPCR用緩衝溶液を用いて、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、次に、バックグラウンドDNAとして、616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対、1ng)を添加し、続いて、同PCR用緩衝溶液100μLを用いて前記複合体を洗浄した後、1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対、1ng)を含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによってポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、(b)は、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、である。 616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対、0.1pg)をバックグラウンドDNAとして含んだDNA合成酵素(1unit)を含んだ、反応組成の異なる8種類のPCR用緩衝溶液を用いて、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、続いて、同PCR用緩衝溶液100μLを用いて前記複合体を洗浄した後、1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対、0.1pg)を含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによってポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、(b)は、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、また、(c)は、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、である。 DNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体をガラス製流路に担持したマイクロ流体デバイスを示す説明図である。図中、(a)は、マイクロ流体デバイスの上面図及びマイクロ流路の寸法を示す図であり、(b)は、該マイクロ流体デバイスを上面から見た時の写真であり、また、(c)は、マイクロ流路を加温した場合の赤外線サーモグラフ画像、である。 コイヘルペスウイルス(KHV)ゲノムDNAを基質DNAとした、遊離のDNA合成酵素及びDNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体を用いた等温DNA増幅(LAMP法)を実施した後に、蛍光標識されたDNA増幅産物の蛍光強度を測定し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、バッチ式反応にて、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)に固定化したDNA合成酵素を繰り返し使用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体を流路に担持したマイクロ流体デバイスを用いて、流通式の連続反応を行った場合、である。 BSAを0.001%含有する反応溶液50μL中の基質DNA(1272塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20))量を1ngから0.01fgの範囲で段階的に希釈し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、遊離のDNA合成酵素を利用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−FSM型メソポーラスシリカ(細孔径:2.6nm)複合体を利用した場合、である。 1272塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20、0.1fg)を基質DNAとした、遊離のDNA合成酵素及び7種類のシリカ系ナノ空孔材料に固定化したDNA合成酵素を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。 616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対、0.1fg)をバックグラウンドDNAとして含んだDNA合成酵素(1unit)を含んだ、反応組成の異なる4種類のPCR用緩衝溶液(図11のレーン(1)、(3)、(5)、(7)の反応組成)を用いて、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、続いて、同PCR用緩衝溶液100μLを用いて前記複合体を洗浄した後、1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対、0.1fg)を含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによってポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後にDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)をアガロースゲル電気泳動で解析し、酵素活性を評価した結果である。図中、(a)は、電気泳動像、また、(b)は、バックグラウンドDNAと標的DNAの増幅の有無を+、−で表示し、図11の実験結果と共にまとめた表、である。
1.本発明において用いる「シリカ系ナノ空孔材料」について
(1−1)シリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)の種類
本発明で固定化酵素担体として用いるシリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)は、二酸化ケイ素(シリカ)を材質とする、均一な細孔を持つ多孔質材料であって、細孔の中心細孔直径が2〜50nm(メソ孔:IUPAC)であり、一般的には、全細孔容積が0.1〜2.0ml/gで、比表面積が200〜1500m/gである(非特許文献12など)。メソポーラスシリカ内の細孔を規則的に形成させるための一般的合成方法には、(a)液晶の鋳型法と(b)シート変形法の2種類あり、(a)では、界面活性剤をシリカ又はケイ酸ソーダと混和して縮合による自己組織化させ、焼成により界面活性剤を除去するのに対して、(b)では界面活性剤を層状のカネマイト(NaHSi・3HO)に添加してイオン交換によりシート変形を起こさせてハニカム構造を形成させ界面活性剤を焼成除去する方法(非特許文献11)がある。(a)の方法で得られる典型的なものとして、「MCM(MCM−41など)」、「SBA(SBA−15)」などがあり、(b)の方法で得られる典型的なものとして、「FSM(FSM−16など)」などがある。両法で得られる「シリカ系ナノ空孔材料」は、いずれも通常ハニカム構造の「ヘキサゴナル」型結晶構造を有している。(a)の方法で得られる「MCM」及び「SBA」などでは、「キュービック」型の結晶構造を採ることもある。
本発明において用いられる「シリカ系ナノ空孔材料」は、上記いずれかの手法で合成された規則的な細孔構造を有する「シリカ系ナノ空孔材料」であり、より好ましくは、「FSM」「SBA」又は「MCM」であり、特に好ましくは「FSM」、「SBA」又は「SBA」の合成過程で界面活性剤と共に膨張剤を混和して細孔径を拡大させた「SBA−microsphere」である。
(1−2)本発明で用いたシリカ系ナノ空孔材料の合成方法
本発明の実施例では、典型的な規則的な細孔構造を有する「シリカ系ナノ空孔材料」のうち、上記(b)のタイプの典型的な「FSM(FSM−16、22)」及び上記(a)のタイプの典型的な「SBA(SBA−15)」と共に、細孔径を拡大させた「SBA(SBA−15) microsphere」を用い、「FSM」は、稲垣らの方法(非特許文献12)、「SBA」は、Zhaoらの方法(非特許文献13)、「SBA microsphere」は、Wangらの方法(非特許文献14)の記載をそれぞれ参考にして合成した。
具体的には、「FSM」は、カチオン性界面活性剤を鋳型として用い、層状ケイ酸塩であるカネマイトをシリカ源とした、弱アルカリ性溶液でのシリカの脱水重縮合反応を行い、焼成により界面活性剤を除去する方法により得、「SBA(SBA−15)」は、非イオン性界面活性剤を鋳型として用い、オルトケイ酸テトラエチルをシリカ源とした、酸性溶液でのシリカの脱水重縮合反応を行い、焼成により界面活性剤を除去する方法により得、また、「SBA(SBA−15) microsphere」は、非イオン性界面活性剤を鋳型として用い、オルトケイ酸テトラエチルをシリカ源とした膨張剤(メシチレン)存在下及び酸性溶液でのシリカの脱水重縮合反応を行い、焼成により界面活性剤を除去する方法により得た。
(1−3)シリカ系ナノ空孔材料の細孔径について
シリカ系ナノ空孔材料の一般的な細孔径は、中心細孔直径で2〜50nm(メソ孔)である。そのうち、好ましい細孔径の数値範囲はそれぞれで異なっており、例えば、FSMの場合、中心細孔直径は2〜4nm、好ましくは2〜3nmの範囲であり、特にFSM−16(中心細孔直径:2.6nm)が好適である。SBAの場合は、中心細孔直径は4〜11nm、好ましくは4〜9nm、より好ましくは5〜8nmの範囲であり、特にSBA−15(中心細孔直径:5.4nm)及びSBA−15(中心細孔直径:7.1nm)が好適である。SBA microsphereの場合は、中心細孔直径は10〜20nm、好ましくは13〜19nm、より好ましくは15〜19nmの範囲であり、特にSBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)が好適である。
2.本発明の「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料」複合体の製造方法
次に、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料と共にウシ血清アルブミン(BSA)を備える、本発明のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造について説明する。
(2−1)DNA合成酵素のシリカ系ナノ空孔材料への固定化
本発明において、DNA合成酵素のシリカ系ナノ空孔材料への固定化方法は、通常の酵素固定化方法が適用でき、DNA合成酵素及び緩衝溶液を、シリカ系ナノ空孔材料粉末とを混合することで、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の前駆体を沈殿物として得ることができる。その際、本発明においては、固定化用の緩衝液として、ウシ血清アルブミン(BSA)を含有させた緩衝液を用いることが好ましい。例えば、DNA合成酵素を、BSAを0.001%含んだ緩衝溶液50μL中に溶解又は懸濁させた後、シリカ系ナノ空孔材料の粉末0.5mgと混合して1秒程度室温で攪拌し、5〜10分間氷上で静置した後、5秒程度室温で攪拌し、遠心分離を行うことにより、沈殿物として、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の前駆体を得ることができる。
固定化用の緩衝液として用いるBSA含有緩衝液は、BSAが0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%配合されている緩衝液が好ましく、固定化後の沈殿物に対して行う洗浄工程で用いるBSA含有洗浄用緩衝液と同一の組成であることがより好ましい。また、DNA増幅工程で用いる反応媒体用のBSA含有緩衝液と同一の組成であってもよい。
そのような緩衝液は、一般的なリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液など無機塩緩衝液、又はトリス塩酸緩衝液などの有機物含有緩衝液、生理食塩水に、BSAを0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%配合することで調製できる。また、市販のDNA合成用反応液(東洋紡社製など)として市販されているBSA含有緩衝液を利用して用いることもできる。特に、シリカ系ナノ空孔材料としてFSMを用いる場合には、塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩及び界面活性剤が存在していることが好ましいので、DNA増幅開始のために必須のマグネシウム塩及び界面活性剤が含まれている市販DNA合成用反応液をそのまま用いることができる。しかし、シリカ系ナノ空孔材料としてSBA又はSBA microsphereを用いる場合には、界面活性剤は含まれている方がよいが、マグネシウム塩を含有していない方が良いため、市販DNA合成用反応液は用いずに、BSAと共に必要な塩類を配合して調製することが好ましい。
ここで、本発明のBSA含有緩衝液中に配合される界面活性剤としては、Triton X−100、Nonidet P−40、Brij35及びTween20など、エーテル型及びエステルエーテル型非イオン性界面活性剤が好ましく、特にTriton X−100が好ましく用いられる。配合割合としては、緩衝液全量に対して0.01〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.1質量%配合されることが好ましく、単独もしくは2種類の以上の界面活性剤を併用することができる。
なお、本発明では、最も入手しやすい血清アルブミンとしてBSAを用いているが、様々な物質に対する吸着特性は、哺乳類由来のアルブミンであればほぼ同等の特性を示すことから、BSAに代えてヒト血清アルブミン(HSA)など、他の哺乳類由来の血清アルブミンを用いることもできる。
(2−2)DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造
本発明においては、次いで、沈殿物として得られたDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の前駆体を、BSAを含んだ緩衝溶液で再懸濁する工程を含む洗浄処理を施し、上清を除去してDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を製造する。当該洗浄工程は1回でも良いが、BSAの濃度が低い場合などは2回以上行うことが好ましい。例えば、BSAを0.001%含有する緩衝溶液100μLで該沈殿物を再懸濁することにより洗浄を行い、遠心分離後に上清を完全に除去する。必要に応じ、これらの工程を繰り返す。
ここで、洗浄に用いるBSA含有緩衝液は、DNA合成酵素をシリカ系ナノ空孔材料に固定化する際に用いるBSA含有緩衝液と、同一の組成であることが好ましいが、異なっていても良い。両者ともDNA合成酵素反応の際に用いるBSA含有反応液と同一組成の緩衝液を用いることもできる。
本発明の洗浄工程で用いるBSA含有緩衝液は、一般的なリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液など無機塩緩衝液、又はトリス塩酸緩衝液などの有機物含有緩衝液、生理食塩水に、BSAを0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%又はさらに界面活性剤を0.01〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.1質量%配合することで調製できる。また、市販のDNA合成用反応液(東洋紡社製など)として市販されているBSA含有緩衝液を用いることもできるが、これら緩衝液中の最適な塩組成は、シリカ系ナノ空孔材料の種類によって異なるため、BSAと共に緩衝作用のある塩類を配合して調製することが好ましい。ここで、用いられる界面活性剤の種類及び好ましい配合割合は、(2−1)で述べたと同様である。
具体的には、FSMの場合は、BSAと共に界面活性剤の他、さらに塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩が1〜5mM、好ましくは1〜3.5mM存在することが好ましいため、DNA増幅用に市販されているDNA合成用反応液をそのまま用いることができる。例えば、120mM Tris−HCl(pH8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、1mM 塩化マグネシウムの組成の緩衝液を用いることができる。
一方、SBAの場合は、界面活性剤の配合は好ましいが、マグネシウム塩の存在は好ましくないため、BSA及び他の緩衝液成分により調製することが好ましい。例えば、0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%のBSA及び0.01〜0.5% Triton X−100に対して、10〜150mMのTris−HCl(pH7〜9)、2〜10mMの硫酸アンモニウム、5〜15mMの塩化カリウムなどの塩類を組み合わせて調製した緩衝液を用いることができる。
同様に、SBA microsphereの場合もマグネシウム塩の存在は好ましくないため、SBAの場合と同様に、BSA及び他の緩衝液成分により調製することが好ましい。
洗浄後の沈殿物は、1000〜1500G、25秒間などの遠心分離処理を行い、上清と分離し、「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体」として回収する。
必要に応じて、上記洗浄工程、及び遠心分離工程を繰り返す。
(2−3)本発明で用いるDNA合成酵素について
本発明において対象とするDNA増幅方法は、典型的には汎用的でかつ最も簡便なポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)であるが、等温DNA増幅法(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、及びMultiple Displacement Amplification(MDA法)などにも適用可能である。
したがって、本発明で用いることのできるDNA合成酵素としては、PCR用の酵素に限定されるものではなく、任意のDNA配列、又は、特定の遺伝子配列を合成、増幅する能力を有する酵素であれば、その種類に制限されることなく、本発明を適用することが可能である。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)用のDNA合成酵素としては、本発明の実施例で用いた高耐熱性DNA合成酵素であるKOD DNAポリメラーゼの他、Taq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを用いることができる。他に、MDA法、RCA法、LAMP法には、phi29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼなどを用いることができる。
3.本発明における極微量DNAの増幅方法
本発明における「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体」は、従来のDNA増幅方法(PCR法、LAMP法、RCA法、又はMDA法など)で用いるDNA合成酵素に対してシリカ系ナノ空孔材料への特有な固定化処理により「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体」の状態で固定化された「固定化DNA合成酵素」であるといえるから、本発明の「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体」は、通常の固定化DNA合成酵素の場合と同様に、一般的なDNA増幅方法で用いるDNA合成酵素に適宜代替して用いることができる。
したがって、本発明のDNA増幅の増幅手段自体は、基本的には従来からのDNA増幅方法、特に固定化DNA合成酵素を用いたDNA増幅方法での増幅手段をそのまま適用することができ、増幅の対象となる標的DNAの種類も同様である。
本発明における極微量DNAの増幅方法においては、DNA増幅に際し、当該「DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体」を用い、かつDNA合成用反応液として、BSA含有緩衝液を用いることを特徴としており、そのことにより標的DNAの量が極微量、特に被検試料中のDNA含有量が極微量の場合であっても副反応を抑制し、標的DNAを特異的、かつ高感度で増幅できる。
すなわち、本発明の対象とするDNA増幅方法は、PCR法に限られるものではないが、以下の説明では、主に典型的なKOD DNAポリメラーゼを用いたPCR法を用いた場合について、詳細に説明する。
(3−1)標的DNAについて
本発明における反応基質のDNAとしては、その塩基長さが限定されるものではなく、また、環状及び直鎖状、又は、一本鎖及び二本鎖などの適宜のDNAが適用可能である。
二本鎖DNAの場合、既知のDNA増幅用プラスミドのクローニングサイトに標的DNAを挿入してPCR増幅法を用いて増幅することが好ましい。
また、下記(3−3)において詳細に述べるが、本発明では数分子レベルの極微量の基質DNAであっても増幅可能であり、夾雑物の多い環境試料、血液など生体由来試料、病原微生物など細胞由来試料中の極微量の標的DNAの増幅も可能である。例えば、試料1ml中に0.01fg〜0.1pg含まれている極微量DNAの増幅を対象とすることができ、この値は、環境試料、生体試料中の1ml中に1〜10個レベルという極微量含まれる病原菌由来DNAが検出できることを意味する。
したがって、本発明の標的DNAというとき、一般的にDNA増幅の対象とする基質DNAの他、被検試料中に極微量含まれている検出又は同定の対象となるDNAを指す。
(3−2)本発明における極微量DNAの増幅方法
本発明は、標的DNA又は標的DNAを含む各種試料に対して、BSAを含有する緩衝液内で、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体と接触した状態でDNA増幅反応を行わせることを特徴とする。例えば、上記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)は、上記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の沈殿物に、反応基質DNA、2種類のプライマー、dNTPs、BSAを含んだ酵素反応溶液50μLを添加した後、該沈殿物を再懸濁することによって開始させることができる。本発明では、前記の洗浄工程により、遺伝子組換えDNA合成酵素の精製品に含有されることがある宿主由来の夾雑DNAや、反応系外から偶然に混入した標的DNAとは異なる核酸が極力取り除かれているため、微量の標的DNAを特異的に増幅することができる。
ここで用いるBSAを含んだ酵素反応溶液は、BSAを0.0001〜0.1質量%含有していることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.01質量%含有する。上述のごとく、洗浄液として用いたBSA含有緩衝液又は固定化に用いたBSA含有緩衝液と同一の組成の緩衝液を用いることができる場合があるが、DNA増幅開始のために二価の陽イオンは必須なので、洗浄液でマグネシウム塩が配合されなかった場合でも、ここではマグネシウム塩を少なくとも1〜5mMは配合する。DNA増幅効率を考えれば、市販のDNA合成用反応液のうちでBSAを含有している反応液がある(例えば東洋紡社製KOD DNAポリメラーゼ用反応液)ので、このようなBSA含有反応液が、最もDNA増幅効率が高いと考えられ、本発明の反応液として好ましく用いることができる。
そのような調製例としては、0.0001〜0.1質量%好ましくは0.001〜0.01質量%のBSAと共に、塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩が1〜5mM、好ましくは1〜3.5mM 及び0.01〜0.5%などのTriton X−100などの界面活性剤が存在することが好ましい。例えば、10〜150mMのTris−HCl(pH7〜9)、2〜10mM 硫酸アンモニウム、5〜15mM 塩化カリウム、0.01〜0.5% Triton X−100、0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%のBSA、5〜15mMの塩化マグネシウムなどが配合されたBSA含有緩衝液が例示できる。
(3−3)試料中の極微量DNAの検出及び同定方法
本発明の極微量DNAの増幅方法は、特異性及び感度の高い増幅が可能なため、血液生体試料中に混入しているウイルス、病原菌由来のDNA検出、環境試料中にわずかに含まれる標的DNAの検出、難培養性微生物の一細胞ゲノムDNA等を対象とした未知の塩基配列解析のためのDNA増幅、又、犯罪捜査などのDNA鑑定など多くの夾雑物中の極微量DNAの検出、同定においてきわめて有効である。
本発明における極微量DNAの検出及び同定方法において、対象とする被検試料中のDNA含有量は、1.0μg/ml以下であり、標的DNAの検出限界量は0.01fg/mlである。好ましくは0.05fg/ml〜0.2μg/mlであり、より好ましくは、0.1fg〜0.5pg/ml、特に好ましくは、0.2fg〜0.1pg/mlである。
また、具体的な被検試料中の標的DNAの検出及び同定する方法は、以下の通りである。
(1)被検試料をBSAを含有する緩衝液で希釈する工程、
被検試料をそのままDNA増幅工程に供することもできるが、BSAを含有する緩衝液で希釈することが好ましい。
ここで、BSAを含有する緩衝液としては、市販のDNA合成用反応液のうちのBSAを含有している反応液(例えば東洋紡社製KOD DNAポリメラーゼ用反応液)を用いることができる。市販DNA合成用反応液をそのまま使用することが好ましい。または、0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%のBSA及び0.01〜0.5% Triton X−100に対して、DNA増幅開始のためのマグネシウム塩1〜5mMと共に、10〜150mMのTris−HCl(pH7〜9)、2〜10mMの硫酸アンモニウム、5〜15mMの塩化カリウムなどの塩類を組み合わせて調製した緩衝液により希釈する。その際の希釈率は、10分の1から100分の1が好ましい。
(2)本発明の前述のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を標的DNAの増幅用プライマー及びdNTPsと共に作用させて、標的DNAを増幅する工程、
具体的には、本発明のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔複合体と共に、標的DNA増幅用のプライマーDNA、dNTPsを、前記被検試料のPCR用緩衝溶液希釈液(例えば50μL)に対して添加した後、Vortex Mixer等を用いて約5秒間室温で攪拌し、反応を開始させることができる。
(3)標的DNAを検出する工程
ここで、本発明のDNA増幅法を適用して、特異的に増幅されたDNAが、標的DNAであることを確認するための方法としては、一般的なDNA同定方法が適用できるが、例えば以下の方法を例示することができる。
(a)配列特異的なプライマーDNAを適用することにより得られる、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)及び等温DNA増幅法(LAMP法)等における標的DNAの特異的増幅産物を電気泳動、濁度及び蛍光測定等で解析する方法
(b)リアルタイムPCR法等において、DNAを染色するための蛍光物質にインターカレーターを使用する方法及びTaqManプローブ等を用いたプローブ法により検出する方法
(c)DNAシーケンサー等を用いて、PCR、Rolling Circle Amplification(RCA法)、及びMultiple Displacement Amplification(MDA法)で増幅されたDNAの塩基配列を解析する方法
(d)PCR―制限酵素断片長多型法(PCR―Restriction Fragment Length Polymophism(RFLP法))及びDNAマイクロアレイ法等により、標的DNAを検出する方法
(3−4)DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の繰り返し使用について
本発明のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体は、上述の洗浄工程および回収方法によっても、酵素をシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に安定に吸着、固定、保持でき、任意の緩衝溶液、又は、環状及び直鎖状、一本鎖及び二本鎖など適宜の基質DNAを含んだ反応溶液に容易に交換可能であるため、微量DNAの増幅反応における該複合体の複数回の繰り返し使用ができる。
該複合体の繰り返し使用の対象となるDNA増幅方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)の他、等温DNA増幅法(LAMP法)、Rolling Circle Amplification(RCA法)、及びMultiple Displacement Amplification(MDA法)などである。また、従来のバッチ式反応に加え、マイクロ流体デバイス等を利用した流通式反応において該複合体を繰り返し使用することができる。
4.LAMP法用DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体担持マイクロリアクター
本発明者らが以前開発した、シリカ系ナノ空孔材料を担持させたマイクロ流体デバイス(特許文献4)を用い、LAMP法用のDNA合成酵素(Bst DNAポリメラーゼ;非特許文献8など)を固定化して、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体担持マイクロリアクターを調製する。
ここで、マイクロ流体デバイス内に担持させるシリカ系ナノ空孔材料としては、前記(1−1)で示した二酸化ケイ素(シリカ)を材質とする、中心細孔直径が2〜50nm(メソ孔:IUPAC)の均一な細孔を持つ多孔質材料であって、「FSM」「SBA」又は「SBA」の合成過程で界面活性剤と共に膨張剤を混和して細孔径を拡大させた「SBA−microsphere」が好ましい。
シリカ系ナノ空孔材料をマイクロ流路内に担持させる方法としては、特許文献4に記載された通りであり、SBA粒子などのシリカ系材料粒子を、ガラス又はプラスチック基板に設けられたマイクロ流路表面を形成するポリジメチルシロキサン(PDMS)層上で硬化させることで、直接均一な細孔を形成させながら、PDMS層表面と共有結合させる。
例えば、厚みが約1mm程度のガラス基板の一部にマスクを施し、フッ酸によるエッチングにより形成した溝に取り付けられたPDMS層表面を有するガラス基板表面にナノ空孔材料(SBA)粒子を堆積させ、これを約85℃程度の温度で数時間静置して硬化させることで、ガラス基板表面にナノ空孔材料SBAを担持させる。圧縮空気を吹き付けて、非特異的に吸着したナノ空孔材料SBA粒子を除去後、PDMS膜を上から貼りシールする。
本発明のLAMP法用DNA合成酵素−ナノ空孔材料複合体担持マイクロリアクターは、以下の様に調製される。
シリカ系ナノ空孔材料を担持したマイクロ流路内部に、Bst DNAポリメラーゼと共に蛍光試薬を含む緩衝液、あるいは、Bst DNAポリメラーゼと共に標的DNAと蛍光試薬を含む緩衝液を充填することで固定化できる。次いで、マイクロ流路内部をLAMP法での反応温度(65℃)に加温し、標的DNA及びプライマーセットを含むLAMP法試薬反応液を送液し、流路内で等温での核酸増幅(LAMP法)を行い、得られた増幅DNA産物含有溶液を連続的に回収する。
なお、DNA合成酵素−ナノ空孔材料複合体を担持させたマイクロリアクターは、使用に際してまず緩衝液で流路内を洗浄してから用いる。その際の緩衝液中には、0.001%程度のBSAを含有させておくことが好ましい。複数回の洗浄工程を設けることで、DNA合成酵素−ナノ空孔材料複合体がDNA合成酵素−BSA−ナノ空孔材料複合体となり、当該複合体が担持されたマイクロリアクターが提供される。
当該マイクロリアクターをLAMP法に適用した場合の効果は極めて大きく、増幅反応中のコンタミネーションを抑制し、標的DNAの増幅感度を大幅に向上できるばかりでなく、当該マイクロリアクターに担持された複合体は、連続的な試薬反応液との相互作用において、9回目の接触後の回収溶液でも比活性の低下は全くないという驚くべき性能を有する(図13b)。これはマイクロ流路内の酵素複合体にとっては、連続して9回分の新たな試薬反応液と接触し相互作用を行うことができることであるから、LAMP法用酵素複合体の9回繰り返し使用と表現することができる。当該9回の繰り返し使用に亘るDNA増幅活性の維持効果からみて、仮に試薬反応液の連続的な送液を中断し、緩衝液での洗浄を挿んで新たな連続的送液を行うマイクロリアクターの繰り返し使用に際しても、その効果に変わりがないことが十分に示唆される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(合成例)シリカ系ナノ空孔材料の合成
本実施例で用いる、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していて、細孔径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料(「FSM」、「SBA」、及び「SBA microsphere」)を、それぞれ複数種類合成した。
(合成例1)FSM−16、−22の合成
稲垣らの方法(非特許文献12)を参考にして、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(3.2g、東京化成工業社製)、或いは、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(4.24g、ライオン・アクゾ社製)を、70℃の水100ミリリットルに添加し、溶解後、カネマイト(トクヤマシルテック社製)5gを更に添加し、70℃に加熱しながら、ホモミキサーで3時間撹拌した。これに、2規定塩酸を約1時間かけて添加し、pH8.5の状態で、約3時間撹拌した。
これを、吸引濾過した後、70℃の熱水に再分散して濾過する工程を4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより、中心細孔直径の異なるシリカ系ナノ空孔材料(FSM;界面活性剤の種類が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、また、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライドの場合)を得た。中心細孔直径は、各々2.6nm(FSM−16)、また、4.2nm(FSM−22)、であった。
(合成例2)SBA−15の合成
Zhaoらの方法(非特許文献13)を参考にして、Pluronic P123(ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール[BASF社製])(10g)を、水300ミリリットルに添加し、35℃で一晩撹拌し溶解させた後、これに、塩酸21.87g及びオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬工業社製)21.32gを更に添加し、ホットスターラーを用いて35℃に加熱しながら、約20時間撹拌した。これを、異なる合成温度(a:35℃、b:80℃、又は、c:130℃)で24時間静置した。
これを、吸引濾過した後、70℃の熱水に再分散して濾過する工程を4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、時間あたり105℃の速度で550℃まで昇温させ、更に、これを、550℃で10時間焼成することにより、中心細孔直径の異なるシリカ系ナノ空孔材料(SBA−15)を得た。合成温度がa、b、cの場合、中心細孔直径は、各々a:5.4nm、b:7.1nm、また、c:10.6nm、であった。
(合成例3)SBA−15 microsphereの合成
Wangらの方法(非特許文献14)を参考にして、Pluronic P123(4g)を、水120ミリリットルに添加し、更に、これに塩化カリウム(和光純薬工業社製)6.08gを添加し、常温で1時間撹拌し溶解させた後、これに、塩酸(和光純薬工業社製)23.6g及びメシチレン(和光純薬工業社製)3gを更に添加し、常温で2時間撹拌した。これに、オルトケイ酸テトラエチル8.5gを更に添加し、10分間激しく撹拌した後、35℃で24時間静置した。これを、異なる合成温度(a:100℃、また、b:130℃)で24時間静置した。
これを、吸引濾過した後、70℃の熱水に再分散して濾過する工程を4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、時間あたり60℃の速度で500℃まで昇温させ、更に、これを、500℃で6時間焼成することにより、中心細孔直径の異なるシリカ系ナノ空孔材料(SBA−15 microsphere)を得た。合成温度がa、bの場合、中心細孔直径は、各々a:18.5nm、また、b:24.5nm、であった。
(実施例1)DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造及び酵素反応
本実施例では、前記合成例で作製した各種シリカ系ナノ空孔材料に対するDNA合成酵素の固定化と酵素活性の評価を行った。図1に、シリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)の規則性細孔(シリカ細孔)表面への反応基質DNA、プライマー、dNTPsの吸着抑制により、シリカ細孔に固定化したDNA合成酵素及びBSAを備えたDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体と適量の反応基質(DNA、プライマー、dNTPs)が相互作用し、更に、酵素反応環境の至適化により非特異的DNA増幅を抑制できるようになった結果、微量DNAが特異的かつ高感度に増幅される様子を模式的に表した説明図を示す。
(1−1)DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造
シリカ系ナノ空孔材料には、中心細孔直径の異なる7種類のシリカ系ナノ空孔材料:1)FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2)FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3)SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4)SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5)SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6)SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7)SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、を使用し、また、DNA合成酵素には、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、分子量:約86〜92kD)を用いた。
図2に、DNA合成酵素及びBSAを固定化したシリカ系ナノ空孔材料粒子の製造法を示す。基本的な実験操作としては、DNA合成酵素(1〜2.5units)を含んだPCR用緩衝溶液(120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100、0.001% BSA、1mM 塩化マグネシウム)50μLと、シリカ系ナノ空孔材料粉末0.5mgとを、Vortex Mixerを用いて約1秒間室温で混合し、5〜10分間氷上で静置した後、再び、Vortex Mixerを用いて約5秒間室温で攪拌し、遠心分離を行い、上清を全て除去することによって、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得た。続いて、前記PCR用緩衝溶液100μLを添加し、Vortex Mixerを用いて約5秒間室温で攪拌し、前記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を再懸濁した後、遠心分離を行い、上清を全て除去し、最終的にDNA合成酵素及びBSAをシリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に固定化した複合体である、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を得た。
(1−2)DNA合成活性の評価(基質DNAが100塩基対の直鎖状DNAの場合)
基質DNAとして100塩基対の直鎖状二本鎖DNA及び100塩基の直鎖状一本鎖DNAを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)における、上記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体のDNA合成活性について調べた。酵素反応は、上記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の沈殿物(酵素:2.5units)に、pcDNA3プラスミドベクターのポリリンカー部位の一部配列である直鎖状DNA(二本鎖DNAの場合:5ng、一本鎖DNAの場合:2.5ng、100塩基対(bp)、5’−TAATACGACTCACTATAGGGAGACCCAAGCTTGGTACCGAGCTCGGATCCACTAGTAACGGCCGCCAGTGTGCTGGAATTCCTATAGTGTCACCTAAATC:配列番号1)、また、dNTPs(各々20nmol)、各々20pmolの2種類のプライマーDNA(T7 Promoter Primer、20mer、5’−TAATACGACTCACTATAGGG:配列番号2、及び、SP6 Promoter Primer、19mer、5’−GATTTAGGTGACACTATAG:配列番号3)、また、dNTPs(各々20nmol)、を含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによって開始した。また、前記直鎖状二本鎖DNAを用いた実験操作において、段階的に希釈した基質DNA量(5ng、0.5ng、0.05ng、5pg、0.5pg、0.05pg、5fg、0.5fg、0.05fg)を用い、微量DNAを鋳型とした活性評価を行った。
反応条件は、94℃で1分間の加熱の後、98℃で10秒間、50℃で30秒間、74℃で30秒間の温度サイクルを15〜55回繰り返すこととし、本反応には、PCR装置(バイオラッド社製、iCycler)を使用した。また、反応後のDNA増幅産物は、15% TBE−ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、蛍光色素SYBR Green Iによるゲル染色後に、蛍光イメージアナライザー(FUJIFILM社製、FLA−5100)を用いて解析した。
(1−3)DNA合成活性の評価(基質DNAが環状プラスミドDNAの場合)
基質DNAとしてλ−ファージDNA由来のアデニン(A)を末端に1塩基付加された長さの異なるPCR増幅産物(配列番号4(616bp)、配列番号5(1272bp)、配列番号6(2566bp)、配列番号7(5027bp))をT−Vector pMD20(配列番号8(2736bp、タカラバイオ社製))に挿入した4種類の環状プラスミドDNA(3354bp、4010bp、5304bp、7765bp)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)における、上記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体のDNA合成活性について調べた。酵素反応は、上記DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の沈殿物(酵素:1unit)に、上記の環状プラスミドDNA(1ng)、また、dNTPs(各々10nmol)、各々10pmolの2種類のプライマーDNA(M13 Forward Primer、24mer、5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC:配列番号9、及び、M13 Reverse Primer、24mer、5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGA:配列番号10)、また、dNTPs(各々20nmol)を含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによって開始した。また、前記環状プラスミドDNAを用いた実験操作において、段階的に希釈した基質DNA量(1ng、0.1ng、0.01ng、1pg、0.1pg、0.01pg、1fg、0.1fg、0.01fg)を用い、微量DNAを鋳型とした活性評価を行った。更に、前記環状プラスミドDNA(バックグラウンドDNA)1ngあるいは0.1pg及びDNA合成酵素(1unit)を含んだ、反応組成の異なる8種類の緩衝溶液を用いて、DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、続いて、同緩衝溶液100μLを用いて前記複合体を洗浄した後、前記環状プラスミドDNA(4010塩基対)1ngあるいは0.1pgを含んだ前記BSA含有PCR用緩衝溶液50μLを添加することによって酵素反応を開始し、バックグラウンドDNAの洗浄及び標的DNAの増幅評価を行った。
反応条件は、95℃で1分間の加熱の後、98℃で15秒間、65℃で5秒間、74℃で30秒間の温度サイクルを25回、又は、35回繰り返し、最後に74℃で1分間の加熱反応とし、本反応には、PCR装置(バイオラッド社製、iCycler)を使用した。また、反応後のDNA増幅産物は、1〜2% アガロースゲルを用いて電気泳動し、蛍光色素SYBR Green Iによるゲル染色後に、蛍光イメージアナライザー(FUJIFILM製、FLA−5100)を用いて解析した。
(実施例2)直鎖状DNAを対象としたDNA増幅(副反応抑制効果の検証)
図3の左図(a)及び右図(b)に、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、100塩基対(配列番号1)の直鎖状二本鎖DNA及び100塩基(配列番号1)の直鎖状一本鎖DNAを基質DNAとして用い、温度サイクルを15回繰り返した場合のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、PCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素の場合、NCは、遊離のDNA合成酵素に基質DNAを添加せず、プライマーDNAを添加した場合、である。
また、図中、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
図3(a)(b)より、全ての種類のシリカ系ナノ空孔材料について、DNA増幅産物の存在が認められ、これは、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体がDNA合成活性を有していることを示している。また、直鎖状の鋳型DNAの種類が一本鎖、二本鎖、どちらの場合においても、固定化していない遊離のDNA合成酵素を利用した場合では、目的のDNA増幅産物以外に非特異的DNA増幅産物であるプライマーダイマーの増幅が認められたが、固定化DNA合成酵素では、7種類全てのシリカ系ナノ空孔材料において、目的のDNA増幅産物が同程度に合成され、更に、プライマーダイマーの著しい増幅抑制が示された。
(実施例3)直鎖状DNAを対象としたDNA増幅(微量DNAの増幅反応の評価)
図4の左図(a)及び右図(b)に、反応溶液50μL中の基質DNA(100塩基対の二本鎖DNA)量を5ngから0.05fgの範囲で段階的に希釈し、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、温度サイクル15回のポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、NCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素に基質DNAを添加せず、プライマーDNAを添加した場合、である。図中、(a)は、遊離のDNA合成酵素を利用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−BSA−FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)複合体を利用した場合、である。
また、図中、マル1から9は、反応溶液50μL中の基質DNA量を、1:5ng、2:0.5ng、3:0.05ng、4:5pg、5:0.5pg、6:0.05pg、7:5fg、8:0.5fg、9:0.05fg、に段階的に希釈し、DNA増幅活性の評価を行った場合、である。
図4(a)(b)より、遊離のDNA合成酵素を利用した場合では5pgまでの増幅が示され、固定化DNA合成酵素の場合ではプライマーダイマー形成の抑制が認められたと共に0.05pgまでの増幅が示された。これらの実験結果は、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体が副反応抑制能を有している結果、DNA増幅活性が向上した可能性を示している。
また、図5の左図(a)及び右図(b)に、図4(b)で増幅が認められなかった5fgの基質DNAからの増幅において、PCRのサイクル数を更に10サイクルずつ55サイクルまで追加した場合のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、図中、(a)のPCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素の場合、FSM−16は、DNA合成酵素−BSA−FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)複合体を利用した場合、また、(b)のNCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素に基質DNAを添加せず、プライマーDNAを添加した場合、である。また、図中の数字は、PCRのサイクル数を示している。
図5(a)(b)より、PC及びNCでは、全ての温度サイクルにおいて非特異的DNA増幅が示された。一方、DNA合成酵素−BSA−FSM−16複合体では、PCRのサイクル数を更に20サイクル追加した35サイクルで、非特異的DNA増幅の少ない標的DNAの選択的な増幅が認められたことより、5fgの微量DNAからの増幅が可能であることが示された。
以上の結果から、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体には、DNA増幅反応におけるプライマーダイマー等の非特異的DNA増幅産物の形成を抑制する効果が有り、この効果によって、従来の遊離酵素を用いたDNA増幅反応で必要とされる基質DNA量よりも更に微量の基質DNAから増幅できることが分かった。すなわち、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔は、DNA増幅反応における副反応抑制場として好適であることが判明した。
図6に、DNA増幅対象となる配列番号4〜7に示される長さの異なるDNA(616、1272、2566、5027塩基対)をT−Vector pMD20(配列番号8)に挿入した4種類の環状プラスミドDNA(3354、4010、5304、7765塩基対)1ngを用いた、シリカ系ナノ空孔材料複合体に固定化していない遊離のDNA合成酵素(1unit)によるポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、Aは、616塩基対を挿入した環状プラスミドDNA(3354塩基対)を鋳型にしたDNA増幅産物(約800塩基対)、Bは、1272塩基対を挿入した環状プラスミドDNA(4010塩基対)を鋳型にしたDNA増幅産物(約1500塩基対)、Cは、2566塩基対を挿入した環状プラスミドDNA(5304塩基対)を鋳型にしたDNA増幅産物(約2800塩基対)、Dは、5027塩基対を挿入した環状プラスミドDNA(7765塩基対)を鋳型にしたDNA増幅産物(約5200塩基対)、である。
図7の(a)−(d)に、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20、配列番号8)に挿入した配列番号4〜7に示される4種類の長鎖DNA(616、1272、2566、5027塩基対)を基質DNAとして用い、温度サイクルを25回繰り返した場合のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、PCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素の場合、である。図中、(a)は、約800塩基対のDNAを増幅した場合、(b)は、約1500塩基対のDNAを増幅した場合、(c)は、約2800塩基対のDNAを増幅した場合、また、(d)は、約5200塩基対のDNAを増幅した場合、である。また、図中、(e)は、各種DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体におけるDNA増幅効率の程度を、◎(増幅:大)、○(増幅:中)、▲(増幅:小)、×(増幅:無し)、を用いた表示した表である。
また、図中、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
図7(a)−(e)より、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)以外の6種類のシリカ系ナノ空孔材料について、DNA増幅産物の存在が認められた。しかし、2566塩基対が挿入された環状プラスミドDNAの場合、SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)に固定化したDNA合成酵素で増幅が認められず、また、5027塩基対が挿入された環状プラスミドDNAの場合、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)及びSBA−15(中心細孔直径:10.6nm)に固定化したDNA合成酵素で増幅が認められなかった。また、シリカ系ナノ空孔材料がFSM、SBA型どちらの場合にも、該シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径が小さくなる程、DNA増幅活性が増大する傾向が認められ、FSMの場合、特にFSM−16(中心細孔直径:2.6nm)が好適であり、SBAの場合は、特にSBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、次いで、SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)が好適であり、また、SBA microsphereの場合は、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)が好適であった。以上の結果は、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体が、環状プラスミドDNAの600〜5000塩基対の長さの異なる挿入DNAを対象とした増幅活性を有しており、また、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによって、該DNA合成酵素のDNA増幅活性を制御できることを示唆している。
(実施例4)環状DNAを対象としたDNA増幅(極微量DNAの増幅反応の評価)
図8の左図(a)及び右図(b)に、反応溶液50μL中の基質DNA(配列番号4の616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20))量を1ngから0.01fgの範囲で段階的に希釈し、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、温度サイクル25回のポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した後のDNA増幅産物(分子サイズ:約800塩基対)の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、NCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素に基質DNAを添加せず、プライマーDNAを添加した場合、である。図中、(a)は、遊離のDNA合成酵素を利用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−BSA−FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)複合体を利用した場合、である。
また、図中、マル1から9は、反応溶液50μL中の基質DNA量を、1:1ng、2:0.1ng、3:0.01ng、4:1pg、5:0.1pg、6:0.01pg、7:1fg、8:0.1fg、9:0.01fg、に段階的に希釈し、DNA増幅活性の評価を行った場合、である。
図8(a)より、遊離のDNA合成酵素を利用した場合では0.01ngまでの増幅が示され、それ以降、1pg以下の基質DNA量では、非特異的DNA増幅が顕著に進行するようになった。一方、図8(b)より、固定化DNA合成酵素の場合では非特異的DNA増幅の著しい抑制効果が認められたと共に、0.1〜0.01fgの極微量DNAの増幅が示された。これらの実験結果は、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体が副反応抑制能を有している結果、極めて微量の基質DNA(0.01fg=2.7分子)、すなわち、数分子のDNAからの増幅活性が向上した可能性を示している。
(実施例5)環状DNAを対象としたDNA増幅(極微量DNAの増幅反応における細孔径の影響)
また、図9に、図8(b)のマル9の反応条件(基質DNA量:0.01fg)を用いた、遊離のDNA合成酵素及び7種類のシリカ系ナノ空孔材料に固定化したDNA合成酵素を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)において、PCRのサイクル数を更に10サイクル追加し、35サイクルとした場合のDNA増幅産物(分子サイズ:約800塩基対)の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、PCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素の場合、また、NCは、遊離のDNA合成酵素に基質DNAを添加せず、プライマーDNAを添加した場合、である。
また、図中、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
図9より、PC及びNCでは、どちらも非特異的DNA増幅が示され、標的DNAの増幅が認められなかった。一方、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体では、7種類のシリカ系ナノ空孔材料のうち、4種類において、数分子レベルの極微量DNA(0.01fg=2.7分子)からの特異的な増幅が認められた。具体的には、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、また、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)に固定化したDNA合成酵素では、非特異的DNA増幅が示されなかったものの、標的のDNA増幅産物を得ることができず、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、また、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)に固定化したDNA合成酵素では、特異的なDNA増幅産物が明瞭に示された。SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)では、標的DNAの増幅が示されたものの、標的DNAより下流に非特異的DNA増幅が示された。
以上の結果から、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体には、環状プラスミドDNAを鋳型とした長鎖DNAの増幅反応において、非特異的DNA増幅を著しく抑制する効果が有り、この効果によって、従来の遊離酵素を用いたDNA増幅反応で必要とされる基質DNA量よりも更に100万分の1の微量の基質DNA、すなわち、数分子レベルの基質DNAから増幅できることが分かり、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔は、DNA増幅反応における副反応抑制場として好適であることが判明した。また、各々のタイプのシリカ系ナノ空孔材料において、微量DNA増幅に最適な細孔径が異なったことから、極微量DNAの増幅における固定化DNA合成酵素の反応活性はシリカ系ナノ空孔材料の細孔径の違いによって制御できる可能性が示唆された。
(実施例6)環状DNAを対象としたDNA増幅(バックグラウンドDNAの反応系外への排除能の検証)
図10の左図(a)及び右図(b)に、DNA合成酵素(1unit)を含んだ、反応組成の異なる8種類のPCR用緩衝溶液を用いて、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、次に、バックグラウンドDNAとして、配列番号4に示される616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対、1ng)を添加し、続いて、同PCR用緩衝溶液100μLを用いて前記複合体を洗浄した後、1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対、1ng)を含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによって酵素反応を開始し、温度サイクルを25回繰り返した場合のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、(a)は、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、(b)は、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
また、図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、マル1と5は、酵素固定化用及びバックグラウンドDNAの洗浄用の緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100、0.001% BSAであり、マル2と6は、緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)であり、マル3と7は、緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100であり、また、マル4と8は、緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.001% BSAである、場合である。また、図中、マル1から4は、前記緩衝溶液に1mM 塩化マグネシウムを含んでいる場合、マル5から8は、前記緩衝溶液に1mM 塩化マグネシウムを含んでいない場合、である。
図10(a)より、DNA合成酵素−BSA−FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)複合体の場合には、マル1の緩衝溶液を用いた場合においてのみDNA増幅反応の進行が認められ、マル2から8の緩衝溶液を用いた場合には、標的DNA及びバックグラウンドDNAの両方のDNA増幅が示されなかった。一方、図10(b)より、DNA合成酵素−BSA−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体の場合には、マル1、3、5、7の緩衝溶液を用いた場合には、標的DNAと共にバックグラウンドDNAに由来する非特異的DNA増幅が示され、マル2、4、6、8の緩衝溶液を用いた場合には、バックグラウンドDNAが示されず、標的DNAのみの選択的な増幅が認められ、そのうちでもMg塩を含まずBSAを含有させた場合(マル8)が、最も増幅効率が高まった(DNA増幅効率は、マル4のPCR産物のバンド強度を基準(1倍)とした場合、マル8が4.6倍、マル2が3.2倍、また、マル6が2.4倍であった)が、マル8の場合はバックグラウンドDNAが出ている。以上の結果より、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)の場合には、BSAと共に、Mg塩及びTriton X−100等を含んだ通常のPCR用緩衝溶液が好適であるのに対して、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)の場合には、Mg塩を含まずBSAを含む緩衝溶液が好適であることが分かった。
しかし、この実験ではDNAの添加量が微量でない(1ng)ことと、バックグラウンドDNAを酵素固定化後に添加しているため、正確なバックグラウンドDNAの反応系外への排除能の検証とはいえない可能性があるため、極微量(0.1pg)の標的DNAを対象として、引き続き以下の実験を行った。
(実施例7)極微量の環状DNAを対象としたDNA増幅(バックグラウンドDNAの反応系外への排除能の検証)
図11の(a)−(c)に、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、前記の配列番号4に示される616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対、バックグラウンドDNA)0.1pg及びDNA合成酵素(1unit)を含んだ、反応組成の異なる8種類のPCR用緩衝溶液を用いて、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、続いて、同PCR用緩衝溶液100μLを用いて前記複合体を洗浄した後、1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対)0.1pgを含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによって酵素反応を開始し、温度サイクルを25回繰り返した場合のDNA増幅産物の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、P1は、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素を用いて616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対、バックグラウンドDNA)を増幅した場合、P2は、遊離のDNA合成酵素を用いて1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対)を増幅した場合、である。図中、(a)は、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、(b)は、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、また、(c)は、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
また、図中、マル1と5は、酵素固定化用及びバックグラウンドDNAの洗浄用の緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100、0.001% BSAであり、マル2と6は、緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)であり、マル3と7は、緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100であり、また、マル4と8は、緩衝溶液の組成として、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.001% BSAである、場合である。また、図中、マル1から4は、前記緩衝溶液に1mM 塩化マグネシウムを含んでいる場合、マル5から8は、前記緩衝溶液に1mM 塩化マグネシウムを含んでいない場合、である。
図11(a)より、DNA合成酵素−BSA−FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)複合体の場合には、マル5の緩衝溶液を用いた場合にDNA増幅反応の進行がほとんど認められず、マル2、3、6、8の緩衝溶液を用いた場合に標的DNA及びバックグラウンドDNAの両方のDNA増幅が認められ、マル1、4、7の3種類の緩衝溶液を用いた場合にバックグラウンドDNAが示されず、標的DNAのみの選択的な増幅が認められた。特に、マル1と4の緩衝溶液を用いた場合に標的DNAの増幅効率が高く、これより、Triton X−100の存在非存在はあまり影響せず、BSAと共にMg塩を含んだ緩衝溶液を利用した時に、バックグラウンドDNAの洗浄及び標的DNAの増幅が効率良く進行することが分かった(DNA増幅効率は、遊離のDNA合成酵素によるPCR産物(P2)のバンド強度を基準(1倍)とした場合、マル1が1.11倍、マル4が1.01倍、また、マル7が0.25倍であった)。
図11(b)より、DNA合成酵素−BSA−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体の場合には、マル1から8の全ての種類の緩衝溶液において、標的DNAの高効率の増幅が示された。マル1から4の緩衝溶液では、極微量のバックグラウンドDNAの増幅が示されたものの、マル5から8の緩衝溶液では、バックグラウンドDNAの際だった増幅は殆ど無く、特にマル5の緩衝溶液を用いた場合に最もバックグラウンドDNAの増幅が示されず、標的DNAのみの選択的な増幅が認められた。これより、塩化マグネシウムを含んでおらず、BSAと共にTriton X−100を含んでいる緩衝溶液を利用した時に、バックグラウンドDNAの洗浄及び標的DNAの増幅が効率良く進行することが分かった。
図11(c)より、DNA合成酵素−BSA−SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)複合体の場合には、マル2及び6のTris−HCl(pH 8)のみの他の添加物を含んでいない緩衝溶液を用いた場合にDNA増幅反応の進行がほとんど認められず、マル1、3、4、7、8の緩衝溶液を用いた場合では極微量のバックグラウンドDNAの増幅が示されたものの、高効率の標的DNAの増幅が認められ、また、マル5の緩衝溶液を用いた場合にバックグラウンドDNAの増幅が殆ど示されず、標的DNAのみの選択的な増幅が認められた。これより、塩化マグネシウムを含んでおらず、BSAとTriton X−100を含んでいる緩衝溶液を利用した時に、バックグラウンドDNAの洗浄及び標的DNAの増幅が効率良く進行することが分かった。
以上の結果から、反応系中のバックグラウンドDNAの反応系外への排除能が高く、また、微量の標的DNAの選択的な増幅に最適な固定化用液及び洗浄液の組成は、シリカ系ナノ空孔材料ごとに異なることが分かった。
(実施例8)DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体のLAMP法への応用
本実施例では、DNA合成酵素(Bst DNAポリメラーゼ)−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体を用いた、バッチ式及びマイクロ流体デバイスを利用した流通式での等温DNA増幅(LAMP法)の評価を行った。LAMP法によるDNA増幅反応及び増幅評価には、DNA増幅試薬キット、プライマーセットKHV、また、蛍光・目視検出試薬(いずれも栄研化学社製)を用いた。反応条件としては、反応容量を25μLとし、65℃で50〜60分間の加温の後、蛍光検出により、DNA増幅の評価を行った。本酵素反応には、アルミブロック恒温槽(タイテック社製、Cool Thermo Unit)を使用し、また、蛍光プレートリーダー(モレキュラーデバイス社製、SpectraMax M2e)を用い、基質DNAを添加した場合(PC)と添加しなかった場合(NC)におけるDNA増幅産物の蛍光強度(励起波長:320nm、蛍光波長:515nm)を測定し、PC/NC比を指標とすることによって、酵素活性を評価した。
図13(a)に、コイヘルペスウイルス(KHV)ゲノムDNAを基質DNAとした、シリカ系ナノ空孔材料に固定していない遊離のDNA合成酵素及びDNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体を用いた、バッチ式反応における等温DNA増幅(LAMP法)(65℃、60分間)を実施し、酵素活性を評価した結果を示す。DNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体の場合には、1度目の反応後に、遠心分離し、上清を除去した後、新たな反応溶液を添加することによって、3度までの固定化酵素の繰り返し使用を行った。
図13(a)より、DNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体の場合には、3度の繰り返し使用によっても、遊離の酵素と同等のDNA増幅活性を示した。これより、LAMP法におけるDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の繰り返し使用の実行可能性が示唆された。
図13(b)に、DNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体を流路に担持したマイクロ流体デバイス(反応容積:約125μL、図12)を用いた流通式の連続反応において、等温DNA増幅(LAMP法)(65℃、50分間(滞留時間))を行い、酵素活性を評価した結果を示す。実験操作としては、まず、コイヘルペスウイルス(KHV)ゲノムDNA、DNA合成酵素、また、蛍光・目視検出試薬等を含んだ反応溶液(50μL)をマイクロ流路内部に充填した後、酵素を含まない反応液(PC: 基質DNA有り、NC: 基質DNA無し)を300μL送液(流速:2.5μL/分)し、25μLずつ順次、サンプルを回収した。また、送液中の反応溶液の温度を一定に保持するために、マイクロ流体デバイスの背面に設置した透明導電膜(ブラスト社製)への電圧印加により、マイクロ流路内部を65℃に加温した。
図13(b)より、DNA合成酵素−SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)複合体を固定化したマイクロ流体デバイスは、9度の繰り返し使用によっても、遊離の酵素の2倍以上のDNA増幅活性を保持した。これより、マイクロ流体デバイスを利用した流通式での等温DNA増幅(LAMP法)におけるDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体の繰り返し使用の実行可能性が示唆された。
(実施例9)環状DNAを対象としたDNA増幅(極微量DNAの増幅反応の評価)−2
本実施例は、基質DNAとして、配列番号5(1272塩基対)のDNAを環状プラスミドDNA(T−Vector pMD20)に挿入して用い、PCRサイクル数を35回に増やした以外は、(実施例4)と同様の方法を適用した。具体的には、BSAを0.001重量%含有する反応溶液50μL中の基質DNA量を1ngから0.01fgの範囲で段階的に希釈し、BSA含有緩衝液で洗浄したDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、温度サイクル35回のポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した。図14(a)及び(b)に、後のDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカーである。図14の(a)は、遊離のDNA合成酵素を利用した場合、また、(b)は、DNA合成酵素−BSA−FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)複合体を利用した場合、である。
なお、図中、マル1から9は、反応溶液50μL中の基質DNA量を、1:1ng、2:0.1ng、3:0.01ng、4:1pg、5:0.1pg、6:0.01pg、7:1fg、8:0.1fg、9:0.01fg、に段階的に希釈し、DNA増幅活性の評価を行った場合、である。
図14(a)によれば、遊離のDNA合成酵素の場合ではマル3の1pgまでの基質DNA量において目的DNAの増幅が示され、マル4の0.1pg以下の基質DNA量では、顕著な非特異的なDNAの増幅反応が示された。一方、図14(b)によれば、固定化DNA合成酵素の場合では非特異的なDNAの増幅反応が抑制され、マル9の0.01fgの極微量DNAまで目的DNAの増幅が示された。これらの実験結果は、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体が非特異的なDNAの増幅反応の抑制能を有している結果、遊離のDNA合成酵素の場合の10万分の1の極めて微量の基質DNA(マル9の0.01fg=2.3分子に相当)、すなわち、数分子の基質DNAからの特異的かつ安定的な増幅を示している。
なお、反応溶液中にBSAを添加しなかった場合の同様の実験によると、PCR反応の安定性が低下し、非特異的反応量が増加する。特に遊離のDNA合成酵素の場合に、基質DNAが0.01ng量以下で増幅できなかった(図示せず。)。
(実施例10)環状DNAを対象としたDNA増幅(極微量DNAの増幅反応における細孔径の影響)−2
本実施例は、(実施例5)と同様の7種類のシリカ系ナノ空孔材料を用いて、(実施例9)の図14のマル8の反応条件(基質DNA量:0.1fg)を、PCRサイクル数を35回に増やして追試した。具体的には、配列番号5(1272塩基対)のDNAを含む0.1fgの基質DNAに対し、遊離のDNA合成酵素及び7種類のシリカ系ナノ空孔材料に固定化したDNA合成酵素を用いた、温度サイクル35回のポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を実施した。
図15に、得られたDNA増幅産物(分子サイズ:約1500塩基対)の解析結果を示す。図中、Mは、DNA分子サイズマーカー、PCは、シリカ系ナノ空孔材料に固定化していない遊離のDNA合成酵素の場合、また、NCは、遊離のDNA合成酵素に基質DNAを添加せず、プライマーDNAを添加した場合、である。
また、図中、マル1から7は、中心細孔直径の異なる各種シリカ系ナノ空孔材料の、1:FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、2:FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、3:SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、4:SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、5:SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、6:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)、7:SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)、に固定化したDNA合成酵素の場合、である。
図15によれば、PC及びNCでは、どちらも非特異的DNA増幅が示され、標的DNAの増幅が認められなかった。一方、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体では、7種類のシリカ系ナノ空孔材料のうち、4種類において、数十分子レベルの極微量DNA(0.1fg=23分子)からの特異的な増幅が認められた。具体的には、FSM−22(中心細孔直径:4.2nm)、SBA−15(中心細孔直径:10.6nm)、また、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:24.5nm)に固定化したDNA合成酵素では、非特異的DNA増幅が示されなかったものの、標的のDNA増幅産物を得ることができず、FSM−16(中心細孔直径:2.6nm)、SBA−15(中心細孔直径:5.4nm)、SBA−15(中心細孔直径:7.1nm)、また、SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)に固定化したDNA合成酵素では、特異的なDNA増幅産物が明瞭に示された。
以上の結果は、標的DNAの増幅産物の長さが0.8kbであった実施例5(図9)の結果とほぼ一致している。すなわち、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体は、標的DNAの増幅産物がさらに2倍近い1.5kbもの長さの長鎖DNAであっても、非特異的DNA増幅を著しく抑制し、数十分子レベルの基質DNAを増幅する効果が有ることが確認された。また、各々のタイプのシリカ系ナノ空孔材料ごとの微量DNA増幅に最適な細孔径についても、増幅産物の長さが変わっても同様の傾向が示された。
(実施例11)極微量の環状DNAを対象としたDNA増幅(バックグラウンドDNAの反応系外への排除能の検証)
本実施例は、(実施例6)と同様の方法を、0.1fgという数十分子レベルの極微量標的DNAに適用した実験である。
具体的には、(実施例6)で用いたと同様の配列番号5に示される1272塩基対のDNAが挿入された標的となる環状プラスミドDNA(4010塩基対)を基質DNAとし、配列番号4に示される616塩基対のDNAが挿入された環状プラスミドDNA(3354塩基対)をバックグラウンドDNAとし、それぞれ0.1fgずつ用いた。(実施例6)と同様に、バックグラウンドDNA0.1fgとDNA合成酵素(1unit)とを含んだ、反応組成の異なる4種類のPCR用緩衝溶液(図11のレーン(1)、(3)、(5)、(7)の反応組成)を用いて、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体前駆体を得、BSAを含む又は含まないPCR用緩衝溶液100μLで前記複合体を洗浄した後、1272塩基対の標的DNAを含む基質DNA0.1fgを含んだ前記PCR用緩衝溶液50μLを添加することによって酵素反応を開始し、温度サイクルを35回繰り返した。得られたDNA増幅産物の解析結果を図16に示す。(a)は電気泳動図であり、(b)は、(a)の結果を図11の実験結果と共に表にまとめた。
ここで、酵素固定化用反応溶液及びバックグラウンドDNAの洗浄用の緩衝溶液は同一であり、図中で示した4種類の溶液は、120mM Tris−HCl(pH 8)、6mM 硫酸アンモニウム、10mM 塩化カリウム、0.1% Triton X−100を共通の組成とする。
図16(a)中、Mは、DNA分子サイズマーカーである。また、図中、前記緩衝溶液に対する0.001% BSAの添加の有無を+、−で示しており、また、1mM 塩化マグネシウムの添加の有無を(+)、(−)で示している。
図16(b)中、前記緩衝溶液に対する0.001% BSAおよび1mM 塩化マグネシウムの添加の有無を+、−で表示し、また、バックグラウンドDNAと標的DNAの増幅の有無を+、−で表示した。太枠は、図11において得られた良好な特異性効果と一致した場合を示し、効果は弱いが同様の傾向を示した場合を点線枠で示している。
シリカ系ナノ空孔材料としてFSM−16(中心細孔直径:2.6nm)を用いた場合、及びSBA−15(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合では、BSAが添加された条件で非特異性DNAとの反応抑制効果が抑えられる効果が、0.1fgにおいても再現性があったことが実証できた。
SBA−15 microsphere(中心細孔直径:18.5nm)をシリカ系ナノ空孔材料として用いた場合では、1回目のDNA増幅実験結果では0.1fgでの再現性が認められなかったが、2回目のDNA増幅実験の結果によると、BSAが0.001%含まれると、MgClの有無にかかわらず標的DNA(+)、バックグラウンド(−)であり、BSAを含まないとMgClの有無にかかわらず標的DNA(+)、バックグラウンド(+)という結果が得られた(図示せず)。この2回目の結果も勘案すれば、0.1fgにおいても概ね実施例7(図11)でのBSA添加による効果が追認されたといえる。
すなわち、以上の結果から、バックグラウンドDNA及び標的DNAの鋳型量が0.1fgと極微量である場合においても、全体的には、BSAを添加した場合にバックラウンドDNAの洗浄による排除効果が実証された。
また、極微量の標的DNAの選択的な増幅にとって最適な固定化用液及び洗浄液中のMgClなどの組成成分割合を、シリカ系ナノ空孔材料ごとに検討することで、さらに標的DNAへの特異性の高いDNA増幅が可能となることも示唆された。
以上詳述したように、本発明は、極微量DNAの増幅可能なDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体に関するものであり、更に詳しくは、上記複合体が反応基質である核酸(DNA)と相互作用を示し、かつDNA合成能を安定に発現できる複合化状態にある構造を有することを特徴とするDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体による、非特異的DNA増幅を抑制できるDNAの増幅方法、及び数分子の鋳型DNAを対象とした極微量DNAの増幅方法などを提供することができる。
本発明は、より具体的には、シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔に固定化されたDNA合成酵素を反応基質の核酸(DNA)の増幅反応に適用する手法を中核とする技術であり、本手法では、シリカ系ナノ空孔材料の規則性細孔(シリカ細孔)の表面への反応基質DNA、プライマー、dNTPsの吸着を極限まで抑制することができ、更に、シリカ系ナノ空孔材料の中心細孔直径の違いによる、各種DNA合成酵素の固定化状態の適正化と、固定化したDNA合成酵素と相互作用できる各種反応基質(DNA、プライマー、dNTPs)の供給量及び反応環境の至適化によって、該DNA合成酵素による非特異的DNA増幅の抑制及び数分子の極微量DNAの特異的かつ高感度の増幅を可能にするものである。
更に、本発明は、クローニング、遺伝子発現の解析など分子生物学的手法における、汎用のポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)や、環境微生物並びに生体の遺伝子診断、及び各種病原因子の検出などに向けた、等温DNA増幅(LAMP法)などにおける、極微量の基質DNAを対象としたDNA増幅手法、並びに、極微量の核酸試料、例えば、難培養性微生物の一細胞ゲノムDNAを対象とした、Rolling Circle Amplification(RCA法)、又は、Multiple Displacement Amplification(MDA法)などの分野における新規の高精度DNA増幅手法として適用可能である。
また、LAMP法用のDNA合成酵素とシリカ系ナノ空孔材料の複合体、さらにはBSAも含む複合体をマイクロ流路内に担持させたマイクロリアクターは、より効率的かつ高精度なDNA増幅反応を行わせることができるので、信頼性の高い迅速、簡便なDNA診断法、食品検査法が提供できる。

Claims (18)

  1. DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体の製造方法であって、
    (1)シリカ系ナノ空孔材料に対してDNA合成酵素を含む緩衝液を接触させ、シリカ細孔内にDNA合成酵素を吸着させる工程、
    (2)得られた沈殿物を、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝溶液に1回以上再懸濁し、遠心分離により回収する工程を設けることを特徴とする、製造方法。
  2. 工程(1)で用いる緩衝液が、BSAを含む緩衝溶液である、請求項1に記載の製造方法。
  3. シリカ系ナノ空孔材料が、FSM、SBA、及びSBA microsphereのいずれかから選択される、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 選択されたFSMの中心細孔直径が2〜4nmであるか、選択されたSBAの中心細孔直径が4〜9nmであるか、又は選択されたSBA microsphereの中心細孔直径が10〜20nmである、請求項3に記載の製造方法。
  5. シリカ系ナノ空孔材料がFSMであって、少なくとも工程(2)で用いるBSAを含む緩衝溶液が、さらにマグネシウム塩及び界面活性剤を含有している、請求項3又は4に記載の製造方法。
  6. 工程(1)で用いるDNA合成酵素を含む緩衝液が、BSAと共に、マグネシウム塩及び界面活性剤を含有している緩衝液である請求項5に記載の製造方法。
  7. シリカ系ナノ空孔材料がSBA又はSBA microsphereであって、少なくとも工程(2)で用いるBSAを含む緩衝溶液が、マグネシウム塩を含有せず、界面活性剤を含有している、請求項3又は4に記載の製造方法。
  8. 工程(1)で用いるDNA合成酵素を含む緩衝液が、BSAを含み、かつマグネシウム塩を含有せず、界面活性剤を含有している緩衝液である請求項7に記載の製造方法。
  9. シリカ系ナノ空孔材料のシリカ細孔内にDNA合成酵素及びBSAが固定化されて複合体を形成している、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
  10. シリカ系ナノ空孔材料が、FSM、SBA、及びSBA microsphereのいずれかから選択される、請求項9に記載のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体。
  11. 標的DNAを、BSAを含有する緩衝液内で、標的DNAの増幅用プライマー及びdNTPsと共に、請求項9又は10に記載のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を作用させることで増幅させることを特徴とする、標的DNAの増幅方法。
  12. 被検試料中の標的DNAの検出又は同定する方法であって、下記の(1)〜(3)からなる方法;
    (1)被検試料をBSAを含有する緩衝液で希釈する工程、
    (2)請求項9又は10に記載のDNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を標的DNAの増幅用プライマー及びdNTPsと共に作用させて、標的DNAを増幅する工程
    (3)標的DNAを検出する工程。
  13. 被検試料中の標的DNAの含有量が、0.01fg/ml〜1.0μg/mlである、請求項12に記載の方法。
  14. DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体がマイクロ流路内部に担持されたマイクロリアクターであって、
    前記DNA合成酵素が、LAMP法によるDNA増幅反応に用いるためのDNA合成酵素であり、かつ当該酵素がシリカ系ナノ空孔材料の細孔内部に固定化されてDNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体を形成していることを特徴とするマイクロリアクター。
  15. マイクロ流路内部に担持された前記DNA合成酵素−シリカ系ナノ空孔材料複合体に対してさらにBSAが吸着されており、DNA合成酵素−BSA−シリカ系ナノ空孔材料複合体を形成していることを特徴とする請求項14に記載のマイクロリアクター。
  16. シリカ系ナノ空孔材料が、FSM、SBA、及びSBA microsphereのいずれかから選択される、請求項14又は15に記載のマイクロリアクター。
  17. LAMP法を用いた核酸の増幅方法であって、下記の(1)〜(5)の工程を含む方法;
    (1)請求項15又は16に記載のマイクロリアクターのマイクロ流路内を緩衝液で洗浄する工程、
    (2)流路内部が65℃になるように加温する工程、
    (3)標的核酸を含むか又は含む可能性のある核酸試料及び標的核酸増幅用プライマーセットを含む反応溶液を送液する工程、
    (4)流路内部で標的核酸を等温核酸増幅させる工程、
    (5)得られた核酸増幅産物を含有する溶液を順次連続的に回収する工程。
  18. 核酸増幅産物を回収後、さらに(1)〜(5)の工程を繰り返す、請求項17に記載の方法。
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