JP6339787B2 - 核酸の分析方法 - Google Patents

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本発明は、核酸の塩基配列を決定するための分析方法に関する。より詳しくは、平面基板等の上に鋳型となる核酸(例えば、DNAライブラリー、トランスクリプトーム、又はゲノムの各配列)を提供し、核酸の塩基配列を決定することができる分析方法に関する。
一般に核酸を分析する各種方法及び装置は、試薬分注・精製・抽出・酵素反応・蛍光標識・温度調整・撹拌・遠心・検出等といった数多くの手順を踏む。これらの手順が実施されることにより、複雑に制御されている生物を理解することや解析や診断が実施される。
例えば、一つの解析として核酸配列決定方法が挙げられる。一般に核酸配列決定は、核酸増幅技術を用いてDNAシーケンサ(非特許文献1)によって核酸配列決定がなされる。従来のDNAシーケンサはガラスキャピラリ管内において蛍光修飾した核酸を電気泳動し、光照射によって得られる蛍光を読み取り解析してきた。
近年、平面基板上で酵素(DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼ等)を用いて核酸を合成し、蛍光・発光等をCCDカメラ等の画像素子によって光検出を行い、超並列的に塩基配列を決定する技術をもとにした核酸配列決定法が登場してきている(Life Technologies社製5500 SOLiDTMシステム、illumina社製HiSeq 2000システム、Roche社製454シークエンシングシステム等)。
これらのDNAシーケンサは蛍光や発光を読み取ることによって核酸配列決定を行うが、DNAポリメラーゼ反応における反応副産物である水素イオンを検出するDNAシーケンサも登場してきた。このDNAシーケンサも上記と同様にシーケンシング反応用の半導体(CMOS)チップ上に超並列的に無数のウェルが並べられ、ビーズ上で増幅した1本鎖DNAの鋳型とDNAポリメラーゼをその無数の各ウェルに入れた後、A、C、G、Tの各塩基を各々に添加することにより、水素イオンを検知し配列決定を行う。1回の反応が終わると、次の塩基が入ることにより、DNA合成は逐次的に実行されていく。DNAポリメラーゼ反応で生成した水素イオンは、ウェルの底にあるイオン感受性レイヤーに電荷を与え、その直下にある半導体センサであるイオンセンサがその電荷を電圧に変える。電圧変化はCMOSチップ内での計算により信号へと変換され、出力される(特許文献1)。
これらの超並列的に塩基配列を決定する方法では、高感度に検出するために、以下の二つの方法のどちらかを用いて、事前にサンプルを増幅するのが一般的である。一つは、油中水滴エマルジョンを利用し、油中の各水滴中にサンプルとなる鋳型核酸、プライマー、プライマーを固定したビーズ、酵素や基質等を閉じ込めた状態でPCR反応を行うことにより、単一ビーズ上に単一鋳型核酸の増幅産物が生成される。このエマルジョンPCRと呼ばれる増幅により、単一ビーズから増幅された鋳型分の光が放たれるため、光検出の感度が改善される(特許文献2)。
もう一方の方法はブリッジPCRと呼ばれ、サンプルとなる鋳型核酸の両末端に2種類のアダプター配列を付加させる。この1本鎖鋳型核酸を平面基板上に結合させ、平面基板上でPCRを繰り返すことにより、局所的にDNA増幅産物のクラスターを作製する方法である。この平面基板上には、プライマーとして2種のアダプター配列の相補鎖が固定されているため、鋳型核酸は固定化されているプライマーに相補的に結合する(特許文献3)。
特表2010−513869号公報 特表2007−535892号公報 米国特許第8,143,008号明細書
Nature, 361, 565-566(1993)
一般にサンプルの増幅工程においては、ビーズや平面基板上に固定したプライマーの数に相当する鋳型核酸配列が合成増幅される。核酸配列決定においては、合成増幅された鋳型核酸を元に信号が得られるが、鋳型核酸から発せられる蛍光・発光や水素イオンによる電荷は、合成増幅される鋳型量に依存する。つまり、核酸増幅反応により増幅される鋳型配列はビーズや平面基板に固定されるプライマーに対応する鋳型配列に限られ、核酸配列決定時にプライマー数以上の鋳型信号を得ることはできないという限界がある。
例えば、サンプルから得られる信号がバックグラウンドとされる様々なノイズに対して強ければ高性能な解析が可能になることは明白である。ノイズの一例として、増幅された鋳型核酸を元に、酵素(DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼ等)を用いて逐次的に反応を進め、蛍光・発光シグナルや水素イオンによる電荷シグナルを得るが、一つのビーズもしくは平面基板上で増幅した鋳型クラスターにおける全ての鋳型核酸が正しく逐次的に反応しないことに起因するノイズが挙げられる。例えば、一塩基ずつ逐次的に核酸配列読取反応を進めていく際、ある一定の割合で本来合成されるべき時に塩基が取り込まれない事象がある一定の割合で発生する。それは、本来得られるべき信号が得られず、弱いシグナルとして検出される。さらに次の反応として、さらに一塩基伸長を繰り返すと塩基が取り込まれなかった鋳型核酸から得られるシグナルは、一塩基分遅れて得られるため本来のシグナルではなく、ノイズとして得られる。その結果、シグナルとノイズの比が悪化し、解析精度が低下する。このような反応ミスは一塩基伸長を繰り返す毎に積み上げられ、最終的にはシグナルとノイズが同等レベルになると、その塩基配列を特定できなくなる。この例に限らず、背景から得られるノイズ、電気的な回路から得られるノイズ等様々なノイズがあるがこれらが積み上がり、結果としてノイズに対しシグナルが弱くなることにより、読取塩基長が短く限定される。
これらを改善するために例えば、ビーズを大きくしビーズ当たりのプライマー数を増やすことや、平面基板上に添加する鋳型核酸の量を少なくし、ブリッジPCRにより生成されるクラスターを大きくすることも可能ではある。しかし、検出時に用いる画像素子やCMOSチップ単位当たりに得られるデータ量が損なわれることを意味しており、超並列的に読み取ることにより多くのデータを算出することが最大のメリットを持つこれらのDNAシーケンサの特徴が失われ、スループットの低下を招く。
単純に固定するプライマーの濃度を高めることも可能であるが、合成により生成されるプライマー分のコストが余計にかかるという課題を抱える。
核酸配列を決定する方法は、複数存在するがいずれも読取塩基長に限界がある。読取塩基長以上の鋳型核酸を用意し、増幅等を行い両末端から配列を読み取ることにより、一つの鋳型核酸で両末端分の配列情報を効率的に得ることが可能であるが、ビーズによるエマルジョンPCRを用いた方法では、増幅されビーズに付与される鋳型DNAは片鎖の配列のみであるため、5’末端から配列を読み取ることは可能であるが3’末端から配列を読み取ることは一般にDNAポリメラーゼが伸長しないため困難である。また、ブリッジPCRのように平面基板上に鋳型核酸の両末端の配列を持つプライマーを固定化し、エマルジョンPCRを用いることも可能である。しかし、このような方法は単位面積当たりに5’末端からの解析用の鋳型と3’末端からの解析用の鋳型を用意することを意味しており、固定化したプライマー当りに1つの鋳型核酸が合成増幅されないため、単位面積当たりから得られるシグナルが半減し、限定されるという課題を抱えている。
上記に示した増幅法のうち、ビーズを用いる方法は一般にエマルジョンPCRを用いるため、増幅後のビーズを精製する工程が必要であり煩雑な工程が必要である。そのため、増幅工程を含んだ装置を提供する場合、ビーズを精製するための複雑な機構を用いる必要がある。ビーズではなく、平板基板上で増幅可能であることがより好ましい。
これらの解決策として、鋳型の増幅法としてLAMP法(特許第3313358号公報)を適用することもアイデアとして考えることができる。LAMP法を用い、増幅後の反応生成物をDNAチップ上に固定化し、高いシグナルを期待する方法が知られている。しかし、鋳型の増幅法としてLAMP法を用いて鋳型を増幅した後、固相上に固定化する方法では、固定化する工程が増え、解析時間の増加や増幅物の固定化効率が求められ、増幅産物を失う問題もある。また、単一ビーズ上もしくは平面基板上に重複せずに単一鋳型を敷き詰める工程も求められ、さらに時間と効率が課せられるという問題もある。
また、LAMP増幅した鋳型に対し、DNAポリメラーゼやライゲース等の酵素と核酸配列決定用のプライマーを用いて反応を行った場合、核酸配列決定用のプライマーから伸長した塩基からの信号以外に、増幅時に使用したLAMP法よって形成された鋳型の3’末端も同時に伸長するためにノイズとして得られる信号も存在するという問題がある。
さらに、鋳型増幅法としてLAMP法を実施した場合、増幅した産物は様々な長さになる。この様々な長さの増幅産物は、核酸配列読取のための光検出や水素検出時にある一定の範囲で検出を行う場合に、信号が強い箇所と弱い箇所においてバックグラウンドが異なるため、バックグランドを算出する領域の範囲を小さくする必要がある。これは情報処理の演算を複雑にし、解析時間を長くしてしまう問題を生ずる。また、過剰に伸長した核酸が隣り合う増幅産物領域にかぶさる場合は検出の際のノイズとなり誤検出の要因の一つとなる問題もある。
上記の問題点に鑑み、本発明は、単位面積当たりに得られるシグナルを増やすことができる核酸の分析方法を提供することを目的とする。
この課題は、ビーズや平面基板を用いた核酸配列決定技術に限定されるものではない。単位面積当たりのシグナル量を必要とする分析法において共通する課題である。
なお、本明細書において核酸とは、DNA、RNA又はこれらを構成するヌクレオチドが誘導体等に置換されているもの、あるいは各種修飾されたDNAやRNAであって、合成増幅のための鋳型として機能するものをいう。これらは、動物、植物、微生物、ウイルス、血液、血清、血漿、唾液、組織、細胞等から抽出されるか化学的に合成されるものである。
上記課題を解決するため、本発明の核酸の分析方法では、以下の4つの成分(1)〜(4)を混合し、インキュベートを行い、鋳型核酸を増幅させた後もしくは増幅中に、増幅産物の3’末端の不活化処理を行い、その後に核酸配列を決定する。
(1)以下の特徴(a)〜(d)を有する鋳型核酸、
(a)少なくとも一対の相補的な塩基配列からなる標的塩基配列を有している。
(b)前記(a)の相補的な塩基配列がハイブリダイズしたときに、ループ構造を形成することができる。
(c)3’末端が自身にアニールしてループ構造を形成することができる。
(d)自身にアニールした3’末端は自身を鋳型とする相補鎖合成の起点になることができる。
(2)鋳型核酸のループ構造において、相補鎖合成の起点を与えることができる少なくとも2種類のプライマーであって、そのうち少なくとも1種は固相に固定化されている前記プライマー、
(3)鎖置換を伴う相補鎖合成をするためのDNAポリメラーゼ、及び
(4)相補鎖合成のための基質。
本発明によれば、核酸配列決定における鋳型核酸の単位面積当たりの量を多くすることが可能であるため、核酸配列読取において強い信号が得ることができ、読取塩基長の増大及び読取精度が改善されるという効果がある。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
核酸に核酸アダプターを付加する工程を示す図である。 鋳型核酸の生成工程及び増幅工程を示す図である。 鋳型核酸の生成工程及び増幅工程を示す図である。 鋳型核酸の生成工程及び増幅工程を示す図である。 鋳型核酸の生成工程及び増幅工程を示す図である。 鋳型核酸の生成工程及び増幅工程を示す図である。 鋳型核酸の生成工程及び増幅工程を示す図である。 増幅産物に核酸配列決定用プライマーが結合する状態を示す図である。 クラスターが形成される状態を示す図である。 フローセル容器を示す図である。 核酸配列を決定する工程を説明するための図である。 鋳型核酸を増幅する工程から核酸配列を決定する工程への手順を示すフローチャートである。 増幅産物を固相から解離させる方法の一例を示す図である。
発明の実施の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
(分析方法の概要)
本発明は、特定の構造をもつ鋳型核酸と、この核酸の特定の領域に相補鎖合成の起点を与えることができる、5’末端を固相に固定したプライマーを組み合わせることによって、迅速な相補鎖合成を可能とするとともに、固定したプライマー当りに増幅される鋳型核酸及び相補鎖配列を少なくとも1つ以上とすることにより、核酸配列決定時における単位面積当たりの光もしくは水素イオン等の信号を増やすことを可能とした。
(鋳型核酸の用意)
図1に合成増幅に用いる鋳型核酸を生成するための前処理工程の一例を示す。生体試料等から抽出された核酸101を、超音波による切断、細孔を通すことによる物理的切断、制限酵素による切断等を用いて好ましい長さに断片化する。核酸の断片化の手段は、上記に限定されるものではなく公知のいずれかの手段を使用しても良い。アガロースゲル等を用いた電気泳動によって、断片化された核酸102の断片長を揃えても良い。断片化された核酸102の両末端構造は断片毎に不揃いであるため、平滑化しても良い。例えば、T4 DNAポリメラーゼの5’末端→3’末端のポリメラーゼ活性と3’末端→5’末端のエクソヌクレアーゼ活性を利用して平滑化することができる。また、制限酵素Eco RI、Bam HI、Hind III等を用いて断片化を行った場合は、3’末端の突出が生じるため、突出部分の相補鎖を酵素Klenow fragmentを用いて埋めることにより平滑化しても良い。平滑化した核酸103と、本発明における増幅法に適した配列を持つ核酸アダプター104とにより、ライゲーション等の反応を行い合成増幅に用いる核酸105を得る。核酸アダプター104は本発明の増幅法を成し得る配列を有する必要がある。ここでは、両末端を揃える例として平滑化を示したが、これに限定されるものではない。核酸アダプターをライゲーションする構造であれば良い。同様に核酸アダプターも核酸断片とライゲーション可能である構造であれば良い。例えば、各種制限酵素による断片化構造に対する相補的な塩基配列を持つ突出末端を核酸アダプターに持たせても良い。また、両端に異なる配列の核酸アダプターを結合させたい場合は、上記等のライゲーション反応の後に、各々の両端の配列を持つPCRプライマーを用いて、PCRにて増幅した産物を用いても良い。この場合、両端に同じ配列を持つ核酸アダプターが結合したものは増幅されないので、目的の核酸のみを得ることができる。
(鋳型核酸の説明)
本発明において、合成増幅の対象とする特定構造の鋳型核酸は、1本鎖上に互いに相補的な塩基配列を有している。これらの相補的な塩基配列の間にはループ構造が形成される。本発明においては、この配列をループ形成配列と呼ぶ。そして、本発明によって合成増幅される核酸は、前記ループ形成配列によって同一の1本鎖上に互いに相補的な塩基配列が合成増幅される。相補的な塩基配列を持つことにより、同一1本鎖上で塩基対結合を形成することが一つの特徴である。1本鎖上に相補的な塩基配列が交互に連結した核酸が、同一鎖上で塩基対結合させることによって得られる分子内塩基対結合生成物は、見かけ上2本鎖を構成する領域と、塩基対結合を伴わないループ構造の領域とを有する。すなわち、本発明における1本鎖上に相補的な塩基配列が交互に連結した核酸とは、同一鎖上でアニールすることが可能な相補的な塩基配列を含み、そのアニール生成物は折れ曲がった部分に塩基対結合を伴わないループ構造を構成する1本鎖核酸と定義することができる。そして塩基対結合を伴わないループ構造には、相補的な塩基配列を持つプライマーがアニールすることができる。
(ループ構造の説明)
また、合成増幅物である鋳型核酸は、他分子との間のアニールではなく自己アニールを優先的に行うことが好ましく、相補的な配列である両領域の距離が不必要に離れないほうが望ましい。例えば、両領域の位置関係は、0から500塩基分の距離を介して連続することが望ましい。その反面、両領域があまりにも接近している場合には望ましい状態のループの形成を行うには不利となるケースも想定されるため、適宜設定される。
図2−3(8)に示すループ構造を詳細に説明する。ループ構造は、新たなプライマー配列とのアニールと、それを合成起点とする鎖置換を伴う合成増幅反応が容易である構造であることが求められる。したがって、領域F2c又はR2cと、その5’側に位置する領域F1c又はR1cとの距離が、0から100塩基、望ましくは10から70塩基となるように設計することが好ましい。上記特定の塩基配列を持つ核酸に対して、プライマーを構成する領域F2とF1c又はR2とR1cは、通常は重複することなく連続して配置される。あるいは、もし両者の塩基配列に共通の部分があるのであれば、部分的に両者を重ねて配置しても良い。F2又はR2は鋳型核酸に結合する機能を有する必要があるため、これらの領域はプライマーにおいて常に3’末端となるようにしなければならない。一方F1c又はR1cは、後に述べるように、これを鋳型として合成された相補鎖の3’末端にプライマーとしての機能を与える必要があるため、5’末端に配置する。このプライマーを合成起点として得られる相補鎖は、次のステップにおいては逆向きからの相補鎖合成の鋳型となり、最終的には本発明によるプライマー部分も鋳型として相補鎖に写し取られる。写し取られることによって生じる3’末端は塩基配列F1又はR1を備えており、同一鎖上のF1c又はR1cにアニールするとともに、ループ構造を形成する。このループ構造は常に一本鎖の状態でもたらされるため、このループ構造に塩基対結合可能なプライマーを添加することにより増幅を加速しても良い。
本実施形態においては便宜上FやRと記載しているが、以下R及びF双方に共通していえる点に関しては、Xとして説明する。
(反応要素の説明)
上記の増幅反応工程は、合成増幅に用いる核酸に対して、少なくともFAプライマー、RAプライマー、アウトサイドプライマーF3、及びアウトサイドプライマーR3、鎖置換型の相補鎖合成を行うDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチドを加え、FAプライマー及びRAプライマーを構成する塩基配列と相補的な塩基配列との間に塩基対結合を形成させ、かつ酵素活性を維持しうる温度でインキュベートするだけで合成反応がなされる。
これらの増幅反応は、酵素として例えば鎖置換型の相補鎖合成を行うDNAポリメラーゼを用いることにより、PCRのような温度変化を行う必要はない。したがって加温機構も簡便なシステムで済むという特徴がある。又は、プライマーのアニール効率を調整するために温度を変化させても良い。ここで各所の塩基対結合をもたらす条件は、例えば融解温度以下に設定することが一般的である。一般に融解温度は、互いに相補的な塩基配列を持つ核酸の50%が塩基対結合した状態となる温度とされている。鋳型とすべき核酸が2本鎖である場合には、プライマーがアニールすることが可能な状態とすることが好ましい。一般に加熱変性が行われるが、これは反応開始前の前処理として行っても良い。この増幅反応は、酵素に適したpHを与える緩衝剤や酵素の触媒活性の維持やアニールのために用いる塩成分、酵素の保護剤、さらには必要に応じて融解温度の調整剤等を共存させた条件下で実施する。pH緩衝剤の一例として、Tris−HCl等の中性から弱アルカリ性に緩衝作用を持つものを用いても良い。pHは用いる酵素(DNAポリメラーゼ)の特性に応じて調整する。塩成分としてはKCl、NaCl、(NHSO等を、酵素の活性維持と核酸の融解温度調整のために適宜添加しても良い。酵素の保護のために、糖類やウシ血清アルブミンを用いても良い。さらに融解温度の調整には、ジメチルスルホキシド(DMSO)やホルムアミドが一般に利用される。これらを融解温度の調整剤として利用することによって、各プライマーのアニールを限られた温度条件の下で調整することが可能になる。さらに、天然の浸透性保護剤としてベタイン(N,N,N−トリメチルグリシン)を利用することができる。これにより、G+Cの塩基配列を多く含んだ領域の溶融温度を、A+Tの塩基配列を多く含んだ領域と同じ溶融温度に下げることができる。その他の融解温度調整剤として、プロリン、トリメチルアミン−N−オキシド等が知られている。2本鎖DNAの不安定化をもたらすことによって鎖置換効率の向上にも有効である。ベタインの添加量は、反応液中0.2M〜3.0M、好ましくは0.5M〜1.5M程度である。これにより、本発明の核酸増幅反応の促進作用が期待できる。これらの融解温度の調整剤は、融解温度を下げる方向に作用するため、塩濃度や反応温度等のその他の反応条件を考慮して、適切な反応を与える条件を経験的に設定し実施する。また、図7に示すように、DNAポリメラーゼの基質となるdNTP(デオキシヌクレオシド三リン酸)の他に伸長反応阻害物質としてddNTP(ジデオキシヌクレオシド三リン酸)をある一定の濃度で含めても良い。含有するddNTPの濃度によって、増幅される鋳型の長さを制限することができる。例えば、高濃度のddNTPを含有することにより、増幅反応の初期にddNTPが取り込まれ伸長反応が停止する。ddNTPの濃度が薄い場合は、dNTPが優先してポリメラーゼに取り込まれるため、ある程度増幅伸長してから伸長反応が停止される。必要な増幅産物長に応じて、ddNTPの濃度を調整することができる。
(プライマーの説明)
本発明におけるプライマーとは、相補的な塩基対結合を形成できること、そしてその3’末端において合成増幅反応の起点となる水酸基を与えること、の2つの条件を満たすものを意味する。合成増幅酵素によって反応し相補的な塩基結合を形成可能である形態であれば、ペプチド核酸や類似体であっても良い。本発明におけるプライマーは、反応の起点となるだけでなく、相補鎖合成の鋳型として機能するものであることが望ましい。
本発明におけるプライマーの種類は、アニール時の各プライマーの3’末端の領域が相互に異なっている少なくとも3種以上のプライマーを用いることができる。
したがって、アニールに必要な塩基配列を部分的に重複させることもできる。しかしながら、アニールに必要な領域が重複する場合にはプライマーの間で競合を生じるため、できるだけ相互に独立した領域に対してアニールできるようにプライマーの塩基配列を設計することが望ましい。さらに、核酸におけるアニールの対象となる領域についても、できるだけ重複しないようにプライマーの塩基配列を設計することにより、より迅速な合成反応を期待することができる。したがって、例えば鋳型核酸と、その鋳型核酸を鋳型として生成する増幅産物とを形成するには、少なくとも3種類以上のプライマーの組み合わせが必要である。
(固定プライマーの説明)
本発明によるプライマーを固定化させる場合、それ自身を固相に固定させておく。あるいは、プライマーの任意の部分をビオチンのような結合性のリガンドで標識しておき、これを固相化アビジンのような結合対象によって間接的に固相化しても良い。
固相として、例えばガラス基板、樹脂基板、不溶性アガロース、セルロース、不溶性デキストラン等の天然高分子担体、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等の合成高分子担体、その他、金属コロイド、磁性粒子等の機能性粒子等が挙げられる。
プライマーの固定化手段は、上記に限定されるものではなく、公知のいずれかの手段を使用して良い。例えば、スポッティング法及び光固相化法等を使用しても良い。基板等には、プライマー等の核酸を固定化するために適切な表面処理、例えば、ポリLリジン処理、アミノシラン処理及び酸化膜処理等の表面処理を行うことが可能である。所望の核酸プローブを固定化するための手段は、固相の材質により、公知のいずれかの手段を使用することができる。
ビーズ状の粒子を平面基板に固定化する場合には、それ自体公知のいずれの手段を使用しても良い。例えば、ビーズが磁性粒子であることが好ましく、あらかじめ所望の位置に磁石を固定化しておくことにより、磁力でビーズを固定することも可能である。また、ビーズ表面は、プローブを結合させた後、不活性化処理を行うことにより非特異的な結合を防止しておくことができる。この不活性化処理はサケ精子DNA部分分解物、ランダムオリゴヌクレオチド、牛血清アルブミン等で処理する方法や、未反応の官能基をエタノールアミン等の公知の方法で処理することにより達成しても良い。
固定させるプライマーは、1種類以上のプライマーもしくは合成増幅反応を構成する全てのプライマーを固定しても良い。固定したプライマーと同じプライマーを、一部固定化せずに浮遊させた状態で反応を実施しても良い。固定化するプライマーは、目的によって使い分けても良い。少なくとも2つの領域X2及びX1cとで構成され、X2の5’側にX1cが連結されたオリゴヌクレオチドからなるプライマーを固定化すると、プライマーの延長線上には、一つ以上の核酸配列が増幅される。また、各種プライマーの一部を固定化しても良い。例えば、第1プライマーの一部を固定化し、さらに固定化しない第1プライマーを含んだ状態で増幅反応を実施しても良い。
(プライマーの詳細説明)
本発明に使用するプライマーの一例を、図2を用いて説明する。以下の説明では、仮にR2及びR1cからなる第1のプライマー(RA)、並びにF2及びF1cからなる第2のプライマー(FA)を用いて、本発明における鋳型ポリヌクレオチドを合成増幅する工程を例示する。以下の説明においては、第1のプライマー及び第2のプライマーを、それぞれ仮にRA及びFAと名づける。第1のプライマーRAは、その3’末端において標的塩基配列を構成する一方の鎖の3’側を規定する領域に相補鎖合成の起点を与えることができ、かつ第1のプライマーRAの5’側には、このプライマーを起点とする相補鎖合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を備え、且つ固相に固定される。RAの3’側の領域をR2、5’側の領域をR1cとする。一方、第2のプライマーFAは、その3’末端において前記第1のプライマーRAを起点とする伸長生成物における標的塩基配列の3’側を規定する領域に相補鎖合成の起点を与えることができる塩基配列を備え、かつ第2のプライマーFAの5’側には、このプライマーを起点とする相補鎖合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を備える。FAの3’側をF2とし、5’側をF1cとする。さらにRAとFAの3’側と5’側を構成する各領域は、それぞれ次のような領域に対して相補的な塩基配列から構成される。
RAの3’側(R2): R2c
RAの5’側(R1c): R1
FAの3’側(F2): F2c
FAの5’側(F1c): F1
すなわち、RAプライマーは標的塩基配列のR2cとR1によって、またFAは標的塩基配列におけるF2cとF1によってそのプライマー構造が決定される。
したがって、本発明においては、標的塩基配列は、少なくともその一部の塩基配列が明らかとなっているか、あるいは推測が可能な状態にある塩基配列であることが求められる。
塩基配列を明らかにすべき部分とは、RAとFAの構造を決定する各領域、あるいはその相補的な塩基配列からなる領域である。例えば、核酸配列決定時には、増幅させたい標的配列に対し両端にRA及びFAプライマーがアニール可能な塩基配列(例えば核酸アダプター104)を、ライゲーション反応等を用いて結合させることにより効率良く合成増幅反応を進めることが可能である。R2cとR1c(又はF2cとF1c)は、連続して存在しても良いし、離れて存在しても良い。両者の相対的な位置関係により、合成増幅物であるポリヌクレオチドが自己アニールしたときに形成されるループ部分の状態が決定される。ここで示す自己アニールとは、1本鎖ポリヌクレオチドの3’末端を含む領域が、そのポリヌクレオチド自身の相補的な塩基配列に対し塩基対結合を形成し、自身を鋳型とする合成増幅の起点となることを意味する。
ループ構造は、新たなプライマーとのアニールと、それを合成起点とする鎖置換を伴う相補鎖合成反応が容易に開始できる構造であることが望ましい。上記標的塩基配列に対してRA及びFAを構成する領域R2とR1c(又はF2とF1c)は、通常は重複することなく連続して配置される。あるいはもしも両者の塩基配列に共通の部分があるのであれば、部分的に両者を重ねて配置しても良い。R2(又はF2)はプライマーとして機能する必要があることから、常に3’末端となるようにしなければならない。一方、R1c(又はF1c)は、後に述べるように、これを鋳型として合成された相補鎖の3’末端にプライマーとしての機能を与える必要があることから、5’末端に配置する。このオリゴヌクレオチドを合成起点として得られる相補鎖は、次のステップにおいては逆向きからの相補鎖合成の鋳型となり、最終的にはRAとFAも鋳型として相補鎖に写し取られる。写し取られることによって生じる3’末端は塩基配列R1(又はF1)を備えており、同一鎖上のR1c(又はF1c)にアニールするとともに、ループを形成する。
本発明に有用なプライマーには、前記2つの領域だけではなく、機能的な領域を付加しても良い。例えばF2とF1cとがそれぞれ3’末端と5’末端に配置され、その両者の間に任意の配列を付加させる。例えば、蛍光プローブを認識する配列を付加することにより、増幅後の工程に有利な機能をもたらしても良い。蛍光プローブを認識する配列を配置することにより、増幅反応完了後、核酸配列決定工程に移る前に蛍光プローブをハイブリダイズさせることにより、ハイブリダイズした蛍光プローブの数(検出としては、蛍光検知)によって増幅の度合いを確認することが可能になる。
(工程の詳細説明)
図2−1(1)
図1に示すような工程を実施し、合成増幅に用いる核酸を用意する。
図2−1(2)
まず、1本鎖とされた標的塩基配列におけるX2cに対し、固定化されたRAプライマーやFAプライマーのX2がアニールし、相補鎖合成が行われる。例えば85〜100℃程度に一旦加熱した後に、プライマーをアニールさせても良い。
図2−1(3)
RAやFAプライマーを起点とする伸長生成物から、例えばアウトサイドプライマーR3やF3を使用して鎖置換伸長反応を行うことによってRAやFAプライマーを起点とする1本鎖を作製する。
図2−2(4)
そのRAやFAプライマーを起点とする1本鎖のX2cに、第1及び第2のプライマーであるR2やF2をアニールさせて相補鎖合成を行う。
図2−2(5)
相補鎖合成は、図2−1(3)で合成したRAやFAプライマーを起点とする伸長生成物の5’末端に達したところで終了する。図2−2(5)において合成される伸長生成物は、その3’末端にR1又はF1を備えている。この図2−2(5)において合成される伸長生成物から、例えばアウトサイドプライマーR3やF3を使用して鎖置換伸長反応を行うことによって1本鎖を作製する。
図2−3(6)
鎖置換伸長反応によって、両端にループ構造を形成可能な一本鎖核酸が得られる。
図2−3(7)
両端にループ構造を形成可能な一本鎖核酸は、3’末端において自身にアニールして相補鎖合成の起点となり、自身を鋳型とする相補鎖合成が行われる。
図2−3(8)
自身を鋳型に相補鎖合成がなされることにより、核酸配列読取の標的塩基配列とその相補鎖からなる1組の相補的な塩基配列を備え、それがハイブリダイズしたときには塩基対結合が可能なループを形成する。これらの構造において、その3’末端には、自身のR1cもしくはF1cに相補的な塩基配列からなるR1及びF1を備えている。R1及びF1は、図2−2(4)においてアニールしたプライマーのR1c及びF1cを鋳型として合成された領域である。図2−3(8)の生成物が本発明における鋳型核酸である。ここで、固定化したRAプライマーの延長線上には、核酸配列読取対象となる相補的な配列1組が生成されている。
図2−4(9)
これら生成物のループには、固定化された第1のプライマーRAのR2や第2のプライマーFAのF2がアニールし、鎖置換反応による相補鎖合成が行われる。
図2−4(10)
FA及びRAプライマーがアニールした生成物は、鎖置換によって1本鎖とされ、3’末端のR1及びF1は自身に自己アニールしてループ構造を形成する。そのループは相補鎖合成の起点となり、自身を鋳型とする相補鎖合成が行われる。元の生成物と固定化プライマーの延長上の生成物は上記相補鎖合成により解離する。
図2−5(11)
解離後、自身を鋳型に相補鎖合成がなされる。その結果、図2−3(8)に示す2つの生成物と同じ生成物が合成される。さらに、核酸配列読取の標的塩基配列とその相補鎖からなる2組の相補的な塩基配列を備え、それがハイブリダイズしたときには塩基対結合を形成可能なループ構造をもつ生成物が、固定RAプライマー上に1つと浮遊生成物として1つ合成される。
ここで、図2−3(8)と同じ生成物が得られることから、この生成物を元に再度合成反応が進む。このサイクルが繰り返されることにより標的塩基配列は増幅される。本実施形態においては、増幅される場合に、固定プライマーの延長線上には最大、標的塩基配列とその相補鎖からなる2組の相補的な塩基配列が得られる。この効果により、一つの標的塩基配列を元に増幅を実施した場合、増幅される単位面積当たりに得られる信号には上限が課せられ均一化される。また、ブリッジPCRを行った場合、単位面積として固定化したプライマー4本に付き標的塩基配列が2つ、相補的な配列が2つ増幅される。本手法では、多くの固定化したプライマー上の生成物は図2−3(8)の左図、図2−5(11)の右図に示す生成物が増幅される。したがって、標的塩基配列が4もしくは8本、相補的な配列が4もしくは8本に増幅される。例えば、図3に示すようにこれらに核酸配列決定用プライマー301をアニールし、伸長反応を行い光検出や水素イオン検知等を行う場合には2〜4倍の信号を得ることができる。また、得られる信号量の幅も2〜4倍に抑えることが可能である。
上記までに示した工程は、固定化するプライマーが1つでそのプライマー全てが固定されている例を示した。固定化するプライマーをRA及びFAの2つのプライマーとし、RAを全て固定化しFAは一部を固定化すると、固定プライマーの延長線上には反応要素の枯渇や失活しない限り制限なく複数組の相補的な塩基配列を得ることが可能である。これは、単位面積当たりにより多くの信号を得たい場合に有効である。その例を図2−5(12)を用いて説明する。
図2−5(12)
固定化するプライマーをRA及びFAの2つのプライマーとし、RAを全て固定化しFAは一部を固定化し合成反応を進めると、図2−1(1)から図2−5(11)までと同様の反応が進む。固定化したFAプライマーの延長線上にも同様の生成物が合成されるのは明らかである。ここで、図2−5(11)で生成される合成浮遊物にはF2cもしくはR2cのループ構造を有しているため、固定化されたFAもしくはRAプライマーがアニールする。図2−5(12)には固定化したFAプライマーがアニールした状態を示すがFAプライマーのみに限定される訳ではなく、固定化したRAプライマーにおいても同様である。
図2−6(13)
FAプライマーがアニールした生成物は、鎖置換合成によって部分的に1本鎖となる。生成物とアニールしたFAプライマー自身は、生成物に対し相補的な配列を生成し延長上に二本鎖を形成する。この二本鎖の部分は、部分的に1本鎖となった3’末端を起点とする相補鎖合成により解離される。
図2−6(14)
相補鎖合成により解離され、伸長反応が進んだ結果、浮遊する標的塩基配列とその相補鎖からなる4組の相補的な塩基配列と、固定したFAプライマーの延長線上に標的塩基配列とその相補鎖からなる2組の相補的な塩基配列が得られる。これら2つの生成物は、FAプライマーによるさらなる鎖置換合成によって、標的塩基配列とその相補鎖からなる複数組の相補的な塩基配列が合成され、増幅が繰り返される。
固定化されたRAプライマーのR2がアニールし、相補鎖合成が行われることを図2−5(11)まで示したが、逆鎖側のFAプライマーを固定化し、F2がアニールし、相補鎖合成が行われる工程も同様に実施される。したがって同様に、鎖置換伸長反応によって、ループを有する鎖伸長生成物が得られるとともに、前記ループにアニールした固定化した第2及び第1のプライマーを起点とする伸長生成物が置換されて、これらを元にさらに鋳型は増幅が繰り返される。
図4に、平面基板上に核酸が上記工程により増幅し、増幅産物が二次元的にクラスターを形成する態様を示す。図4(1)は、増幅反応を実施する平面基板401の一部を示す。平面基板401の表面には固定化プライマーが一面に敷き詰められている。そこへ鋳型核酸402やその他のプライマー、DNAポリメラーゼが添加され合成増幅反応が開始される。図4(2)に示す矢印は、鋳型核酸が添加され合成増幅を開始する位置から増幅核酸が四方八方に拡散する向きを示す。図4(3)は、適切にコントロールされた温度下に合成増幅反応が行われ、平面的に核酸が広がっている態様を示す。増幅した核酸が形成するクラスター403は、鋳型核酸の配列と相補的な配列を含んでいる。図4(4)では、異なる鋳型核酸由来により合成増幅により広がったクラスター403が接触している態様を示す。接触している状態では、固定化プライマーには既に合成増幅された核酸が付与されているため、異なる鋳型を元に増幅した領域と交わる位置から広がることができない。よって、各反応成分が合成増幅反応によって枯渇するか、反応副産物によって反応が阻害されたり、酵素の失活等がない限り、敷き詰められた固定化プライマー上に増幅反応が広がる。
(増幅産物の説明)
本発明によって、固定プライマーの延長線上に増幅される核酸を構成する相補的な塩基配列の数は、少なくとも1つであり整数倍となることもある。この場合、本増幅法のループ形成配列により、理論的には、核酸を構成する相補的な塩基配列のペアの数に上限なく増幅することも可能である。
本発明によって、固定プライマーの延長線上に増幅される1本鎖上に相補的な塩基配列が交互に連結した核酸は、天然の核酸と同じ構造に限定されない。核酸合成酵素によって核酸を合成するときに、基質として核酸誘導体を利用することにより、核酸の誘導体の合成が可能であることは公知である。このような核酸誘導体の例として、放射性同位体で標識したヌクレオチドや、ビオチンやジゴキシンのような結合性リガンドで標識したヌクレオチド誘導体等が挙げられる。これらの核酸誘導体を用いることにより、生成物である核酸誘導体の標識が達成される。又は、蛍光性のヌクレオチドを基質として用いることによって、生成物である核酸を蛍光性の誘導体とすることもできる。この増幅産物は、DNA又はRNAでも良い。
(アウトサイドプライマーの説明)
次に、鋳型ポリヌクレオチドを合成するための反応における図2−1(3)の工程、すなわち図2−1(2)の工程で合成された、第1のプライマーRA及び第2のプライマーFAを起点とする伸長生成物について、図2−2(4)におけるプライマーがアニールすべき領域を塩基対結合が可能な状態とするための工程を行うには、アウトサイドプライマーの利用が望ましい。図2−1(3)におけるF3及びR3を指し、アウトサイドプライマーとは、標的塩基配列に対してアニールする第1のプライマー及び第2のプライマーより上流に対して相補的な塩基配列からなるプライマーである。上流とは、鋳型における3’側を意味する。したがって、アウトサイドプライマーがアニールするのは、第1のプライマー及び第2のプライマーから見れば5’側の領域が上流となる。
アウトサイドプライマーは、任意の数でも良い。本発明において、一般的なアウトサイドプライマーは、第1のプライマー及び第2のプライマーのそれぞれに対して上流に相補鎖合成の起点を与えることができる2つのアウトサイドプライマーから構成される。しかし、いずれかの第1のプライマー及び第2のプライマーに対してのみアウトサイドプライマーを配置して、本発明の方法を実施することも可能である。あるいは、第1のプライマー及び第2のプライマーのそれぞれ、あるいは一方に対して、複数のアウトサイドプライマーを組み合わせることもできる。いずれにせよ、より上流からの相補鎖合成を伴う場合に、第1のプライマー及び第2のプライマーを合成増幅の起点とする反応の生成物を効率良く得ることが可能になる。
アウトサイドプライマーからの合成増幅は、第1のプライマー及び第2のプライマーを複製起点とする合成増幅よりも後に開始されることが好ましい。例えば、第1のプライマー及び第2のプライマーの濃度をアウトサイドプライマーの濃度よりも高くすることにより第1及び第2プライマーからの合成が優先される。例えば、2〜50倍、望ましくは4〜10倍の濃度差で各プライマーを用いることにより、第1のプライマー及び第2のプライマーからの相補鎖合成を優先的に行わせることができる。また、アウトサイドプライマーの融解温度を第1のプライマー及び第2のプライマーの融解温度より低く設定することによって合成のタイミングをコントロールしても良い。同様に自己アニールする箇所においても同様に考慮すべき点である。さらに、アウトサイドプライマーのアニールするタイミングについてcontiguous stackingと呼ばれる現象を応用しても良い(Chiara Borghesi-Nicoletti et al., Bio Techniques, 12, 474-477, 1992)。具体的には、アウトサイドプライマーを第1のプライマー及び第2のプライマーに隣接させる。そして、アウトサイドプライマー単独ではインキュベーションの条件下ではアニールできないように設計しておく。こうすれば、第1のプライマー及び第2のプライマーがアニールしたときに初めてアウトサイドプライマーのアニールが可能となるため、必然的に第1のプライマー及び第2のプライマーのアニールが優先される。上記の点を考慮することにより、確率的に理想的な反応条件を達成することが可能である。融解温度は、他の条件が一定であればアニールする相補鎖の長さと塩基対結合を構成する塩基の組み合わせによって算出することも可能である。したがって当業者は、本明細書の開示に基づいて望ましい条件を導くことができる。
(鎖置換型DNAポリメラーゼの説明)
上記反応に最も望ましい酵素は、鎖置換型の相補鎖合成反応を触媒するDNAポリメラーゼである。反応工程中には、必ずしも鎖置換型のポリメラーゼを必要としない反応ステップも含まれてはいる。しかし、合成増幅反応を行う試薬構成を簡素化するには、1種類のDNAポリメラーゼを用いるのが最も好ましい。鎖置換型の相補鎖合成反応を触媒するDNAポリメラーゼとして、BstDNAポリメラーゼ、Bca(exo−)DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント、Φ29ファージDNAポリメラーゼ、VentDNAポリメラーゼ、Vent(Exo−)DNAポリメラーゼ(VentDNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、DeepVentDNAポリメラーゼ、DeepVent(Exo−)DNAポリメラーゼ(DeepVentDNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、MS−2ファージDNAポリメラーゼ、Z−TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績社製)等が一般的に知られている。
上記の鎖置換型の相補鎖合成反応を触媒するDNAポリメラーゼの必要とする触媒活性を持ち、構造等一部機能のみを取り出したものや、アミノ酸の変異等によって触媒活性、安定性、あるいは耐熱性を改変した各種変異体を用いても良い。各種変異体が配列依存型の相補鎖合成活性と鎖置換活性を有する限り、本発明に利用することが可能である。
これらの酵素の中で最も本合成増幅に好ましい酵素としては、BstDNAポリメラーゼやBca(exo−)DNAポリメラーゼ等が挙げられる。これらの酵素は、ある程度の耐熱性を持ち、触媒活性も高いという特徴がある。合成増幅反応は、好ましい態様においては等温で実施可能だが、融解温度の調整等のために必ずしも酵素が安定な温度条件で反応を実施するとは限らない。したがって、酵素が耐熱性であることは好ましい条件の一つである。また、等温反応が可能ではあるが、鋳型となる核酸の形態(例えば二本鎖DNA)によって加熱変性が行われることが望ましく、その点においても耐熱性酵素の利用は反応条件の選択の幅を広げる。例えば、Vent(Exo−)DNAポリメラーゼは、鎖置換活性と共に高度な耐熱性を備えた酵素として知られている。また、このようなDNAポリメラーゼによる鎖置換を伴う相補鎖合成反応は、1本鎖結合タンパク質を添加することによって促進されることが知られている(Paul M. Lizardi et al., Nature Genetics, 19, 225-232, July, 1998)。この効果を本発明に応用し、1本鎖結合タンパク質を添加することによって合成増幅の促進を実施しても良い。例えば、Vent(Exo−)DNAポリメラーゼに対しては、1本鎖結合タンパク質としてT4 gene 32が有効であることが知られている。
これらのDNAポリメラーゼのうち、3’−5’エクソヌクレアーゼ活性を持たない酵素等は、合成産物の5’末端に達した部分で停止せず、1塩基突出させた状態まで合成が進むことは公知である。これは本増幅法において、合成が末端に至ったときの3’末端の配列を次の合成の開始点とするため、このような現象は好ましくない。しかし、DNAポリメラーゼによる3’末端への塩基の付加は、高い確率でアデニンを付加する。したがって、dATPが1塩基付加することを考慮し、予め3’末端からの合成がアデニンで開始するように塩基配列を設計することが好ましい。また、相補鎖合成時に3’末端がたとえ突出しても、突出部を消化して平滑末端とする3’→5’エクソヌクレアーゼ活性を利用しても良い。例えば、天然型のVent DNAポリメラーゼはこのような活性を持つことが知られており、Vent(Exo−)DNAポリメラーゼと混合して反応することにより、この問題を回避しても良い。
(増幅反応後の洗浄工程)
上記に示す合成増幅反応によって得られる、固定化されたプライマー上に鋳型核酸の相補的な塩基配列が交互に連結された核酸には、例えば次のような有用性がある。第一には、増幅後に平面基板、もしくはビーズの洗浄を行った後に、固相上に増幅した核酸のみを用いる核酸配列決定における面積当たりの信号の強化である。
従来の並列化したサンプルの核酸配列決定方法では、固定化されたプライマー上において、鋳型核酸の相補的な配列のみ合成増幅されるが、本発明による増幅法では図2−1〜図2−6に示すように、相補的な配列のみならず、鋳型と同じ配列も合成増幅する。さらに、これらの合成増幅される配列は原理上、上限なく増幅されることもある。増幅工程終了後に、核酸配列決定工程に用いることも可能である。
増幅工程後に、核酸決定工程に必要な固定化されたプライマーの延長線上にある核酸以外の浮遊する合成生成物を取り除くため、洗浄を行う。増幅を行う平面基板の一例として図5を示す。平面基板は、試薬の置換が容易なフローセル容器501であることが好ましい。洗浄は、フローセル入口502より核酸配列決定工程に行われる反応を阻害しない溶液を流し込み、フローセル出口503から排出することが好ましい。洗浄液の一例を下記に示す。このような洗浄溶液で洗浄した後、核酸配列決定反応に用いる緩衝液で再度洗浄しても良い。
洗浄液の組成
10×トリス塩酸緩衝液(pH8.0) 5.0mL
20%SDS 5.0mL
5M NaCl 0.5mL
ヌクレアーゼフリー水 39.5mL
これらの洗浄液は、図6に示す試薬分注ノズル601等により注ぎ込まれて洗浄が行われる。ここで、固定プライマーを搭載した容器例として図5に示す容器を示したが、これに限定されるものではない。反応容器のレーンは複数あってもかまわない。また、水素イオンを検出する核酸配列決定においては、容器底面が半導体チップ上の半導体センサになっている。例えば、半導体チップとしてLife technologies社314、316、318チップ等が知られ、一塩基伸長時の反応副産物である水素イオンを検知することができる。半導体センサ上には、ビーズを半導体チップ上に捕捉したり半導体センサ上の固定化プライマーの面積を増やすことを目的として立体的なウェル構造を形成しても良い。
(3’末端の不活化及び蛍光プローブによる増幅状態の確認)
フローセル容器内で本発明の合成増幅反応を実施した後、固定化されたプライマーの延長線上の増幅産物3’末端からの再度の合成増幅反応が起きないように、不活化の処理として3’末端を加工することができる。例えば、図7の(2)に示すように、反応直後に伸長反応阻害物質としてddNTPを添加し、再度酵素反応を行うことにより増幅産物3’末端にddNTPを取り込み、伸長反応を停止する。又は、図7の(1)に示すように、増幅反応溶液にddNTPを初めから添加し、増幅反応実施中にddNTPを取り込むことにより伸長反応を停止させても良い。その他の例として、増幅反応後に3’末端にポリメラーゼが伸長反応を進めることのできない物質を付加しても良い。3’末端の不活化後に、核酸配列決定反応が実施される。
洗浄後もしくは3’末端不活化後に、合成増幅産物に対し相補的な塩基配列をもつ蛍光プローブをハイブリダイズさせ、合成増幅された産物量等を検出して望ましく反応が実施されたか否かを評価してから次の核酸配列読取工程に進んでも良い。例えば、合成増幅後に浮遊する増幅産物を一度洗浄し、合成増幅産物のループ構造に対して相補的な塩基配列をもつ蛍光プローブをハイブリダイズさせた後、図6に示す核酸配列読取時に用いる検出系を用いて光検出を行い、ある一定以上の信号が得られるか否かによって合成増幅反応工程が正しく実施されたか否かを確認する。合成増幅工程が不十分である場合は再度、増幅工程を実施しても良い。
(核酸配列決定工程)
フローセル容器内の鋳型となる固定化されたプライマー延長線上の増幅産物に対して、少なくとも核酸配列決定用プライマー、DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチドを加え、最適な温度でインキュベートし、合成反応と、光検出もしくは水素イオン等の検出を繰り返して核酸配列決定がなされる。核酸配列決定用プライマーのみ事前に添加し、加熱冷却を行ってアニールしても良い。例えば、2分間95℃で加熱した後、2分間37℃に冷却及び静置する。又は、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅法を応用しても良い(特許文献U.S.S.N.60/358,563、特許第4340543号公報、特許第5089466号公報)。例えば、核酸配列決定用プライマーとリコンビナーゼ因子とを接触させ、増幅産物に核酸配列決定用プライマーをアニールさせた後、DNAポリメラーゼを用いて鎖置換合成を行うことにより核酸配列を決定しても良い。リコンビナーゼ因子を用いて核酸配列決定用プライマーをアニールすることは、高温(例えば95℃)に加熱することが不要であるため、そのような装備を備える必要がなくなるという利点を持つ。通常、増幅産物内に相補的な配列を有するがゆえに、コンパクトに折りたたまれる構造を持つ。しかし、加熱及び冷却による核酸配列決定用プライマーのアニールは、隣り合う増幅産物同士の絡み合いや、反応効率を低下させる可能性がある。リコンビナーゼ因子によりアニールの操作は部分的な解離のみ行われ、上記問題が回避される。
光検出の例を図6に示すと、光源602によって励起され、DNAポリメラーゼを用いた核酸配列決定反応によりサンプルから発せられる蛍光等を対物レンズ603、ダイクロイックミラー604、フィルタ605、レンズ606等を経由し、例えばCCDカメラ等の画像素子といった検出器607を用いて検出する。試薬溶液は試薬分注ノズル601を用いて、フローセル容器に注入される。核酸配列決定に適したプライマーとDNAポリメラーゼ等を各レーンに注入し、酵素反応に適した温度でインキュベートし、合成増幅を行った鋳型に核酸配列決定用のプライマー及びDNAポリメラーゼを結合させ、標識したA、C、G、Tの各塩基の注入、蛍光検出等、標識部の削除、洗浄等を繰り返し行い、核酸配列決定反応を行う。核酸配列は、1塩基取り込みの反応が終わると、次の塩基が入ることにより取り込む順序が検出され、DNA合成が逐次的に実行されることによって認識される。
一方、水素イオンの検出は、核酸配列決定反応用の半導体(CMOS)チップに無数のウェルが並べられ、ビーズ上で増幅した1本鎖DNAの鋳型とDNAポリメラーゼを各ウェルに入れた後、A、C、G、Tの各塩基を順番に入れることにより、核酸配列決定反応を行う。初めの塩基取り込みの反応が終わると、次の塩基が入ることにより取り込む順序が管理され、DNA合成が逐次的に実行されていく。DNAポリメラーゼ反応で生成した水素イオンが、ウェルの底にあるイオン感受性レイヤーに電荷を与え、その直下にある半導体センサであるイオンセンサがその電荷を電圧に変える。電圧変化はCMOSチップ内での計算により信号へと変換され出力されることによって配列が決定される(参考文献:特表2010−513869号公報)。
上記で取り上げた半導体センサであるイオンセンサとしてはしばしば、イオン感受性の電界効果トランジスタであるISFET(又はpHFET)が用いられる。ISFETは、慣用的には、(通常は「pH」として示される)溶液の水素イオン濃度の測定を容易とするが、イオンセンサとして以外に、温度センサ等も含まれる。また、いくつかの態様においては、無機ピロリン酸(PPi)を直接測定しても良い。いくつかの態様において、PPiは、PPi受容体の非存在下で測定しても良い。あるいは、反応副産物である無機リン酸(Pi)を測定しても良い。さらに、他の態様において、本明細書に示されるように、半導体センサは、副生成物のあらゆる組み合わせの変化、任意に他のパラメータを伴う組み合わせの変化を検出するものを含む。
これらの方式で標的核酸配列の読取が完了した後、その配列の相補的な核酸配列を読み取る場合は、核酸配列決定用プライマー301から伸長した核酸を加熱やホルムアミドといった変性剤を用いて解離させた後、相補的核酸配列決定用プライマー302を再度アニールさせ配列させる。
上記に示す核酸配列決定方法に本発明は限定されるものではない。核酸配列決定に使用する酵素は、鎖置換型のDNAポリメラーゼに限定されない。増幅後のDNAポリメラーゼによる伸長反応に限定されず、ライゲーション酵素を用いたライゲーション反応やハイブリダイゼーション等を用い、光検出もしくは水素イオンの検出といった増幅産物や反応副産物を検出する塩基配列決定方法を用いても良い。
図3は、配列決定反応において増幅産物に核酸配列決定用プライマー301が結合し、DNAポリメラーゼによる伸長反応が進行する状態を示す図である。従来は、固定化されたプライマー1つに対し、核酸配列決定用プライマーが1つのみアニールし、一塩基伸長と共に信号を得ていた。しかしながら、本増幅法においては図3に示すように、固定化されたプライマー1つに対し、核酸配列決定用プライマーが2つアニールするため、図3に示す態様では理論上、従来の倍の信号を得ることが可能である。また、従来手法であるブリッジPCRによる増幅では、固定化されたプライマー上には鋳型の相補的な配列もしくは同じ配列が1つのみ合成されるため、理論上固定化されたプライマー2つに鋳型の相補的な配列が1つと同じ配列が1つのみ合成増幅される。しかし、本増幅法では、理論上固定化されたプライマー2つには、鋳型の相補的な配列が1つ以上と、同じ配列が1つ以上合成増幅される。したがって、従来法に比べ、単位面積当たりに検出される信号がより強くなる。
このような特徴のある増幅産物は他の分析法にも有効である。例えば、ナノポアと呼ばれる、ナノメートルサイズの細孔を用いて、核酸や蛋白質等の高分子ポリマーを分析する方法である(Kasianowicz J.J.; Brandin E.; Branton D.; Deamer D.W.: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1996, 93, 13770-13773)。検出の方式としては、封鎖電流方式、トンネル電流方式、キャパシタンス方式等が知られている。さらに、ナノポア入口に微小金属構造体を備え、表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering)効果を利用し、塩基配列の読取等を行う検出方法も用いることができる。
本発明を用いて得られる図3に示すような増幅した核酸を固相から切り離したものを試料として用いることにより、標的核酸の配列の2回分、相補鎖配列の2回分の信号を、一つの試料がナノポアを一度通過することで得ることができる。つまり、同じ配列を4回分析することによって精度の高い分析を可能とする。
本発明によって作製した解析対象は、既知の配列である各種プライマー配列と標的核酸配列もしくは相補的な配列が繰り返されて配置されている。つまり、解析したい配列の前後等に既知の配列が配置されるため、この配列を標準物質として扱っても良い。例えば、既知の塩基配列がACGTである場合、そこから得られる電気信号の時間、変化量から各種の塩基を認識しても良い。
検出がラマン光スペクトルにより行われる場合は、各塩基のラマン光スペクトルのピークの波数情報等から各塩基を認識しても良い。ラマン光スペクトルで検出する場合、この既知塩基配列のラマンスペクトルもしくは一つ以上のピークから波数校正を行っても良い。波数校正とは、通常ラマン光スペクトルを分析する場合に、標準物質としてシリコン単結晶を測定し、シリコン単結晶の特徴であるラマン波長のピークを用いて、検出器のどの素子にどの波長の信号が得られるかを認識させることである。つまり、既知配列を有することにより、標準物質としてシリコン単結晶の測定を行わなくとも波数校正が可能になる。さらに、検出する前には、核酸を抽出する工程や増幅する工程に使用した試薬が混入することにより、得られる電流やキャパシタ、ラマン光といった信号にノイズとして影響がある。そこで、既知の配列の信号にかぶさってくるノイズの影響を把握し、ノイズ信号の除去を行うこと等により塩基配列のみから得られる信号を高精度に分析することも可能である。また、既知の配列によって得られる信号から、単一核酸配列によって得られる信号量や一塩基当たりのピーク形状、ピーク本数等の信号態様や通過速度の情報に基づいて演算処理を行い、標的配列を分析しても良い。ここで、既知配列の通過速度を知ることは大きな意味を持つ。例えば、同じ塩基配列が連なる時は同じ電気信号やラマンスペクトルが連続し、何塩基連続したかを判断する際に、各塩基の通過速度を用いることによって何塩基連続したかを解析することができる。既知配列による波数校正は、本手順に限定されるものではない。測定対象に既知の配列や物質を付加し、既知の配列や物質のラマン光スペクトルもしくは一つ以上のピークから波数校正を行うことができる。例えば、既知の配列をライゲーション反応によって付加しても良い。
さらに、本発明によって作製した解析対象は、一つの標的核酸配列を元に一本鎖上に「標的配列の相補鎖配列」と「標的配列」とを複製する。つまり、検出時には、間違いなく単一由来の配列を繰り返し検出することが可能であるため、繰り返し読み取った信号を各々照合して精度良く信号を演算処理し分析することが可能である。ここで、既知配列の通過速度を知ることは大きな意味を持つ。例えば、同じ塩基配列が連なる時は同じ電気信号やラマン光スペクトルが連続し、何塩基連続したかを判断する際に、各塩基の通過速度を用いることにより何塩基連続したかを解析することができる。
図3の増幅した核酸をそのまま分析に用いるには、増幅した核酸に適したナノポアを用意する必要がある。そこで、増幅した核酸を固相から解離させることが望ましい。解離させる方法の一例を図8に示す。核酸802に、固相801に固定化したRAもしくはFAのプライマー803を光架橋で結合させる。光反応によって架橋を生じるDNAの光架橋剤(光クロスリンク剤)としてソラレンが古くから用いられている。ソラレンの光架橋反応は、核酸二本鎖中の5’−TA−3’配列に対して優先的に起こる。ソラレンは、光連結波長として350nm、光開裂波長として250nmの光を照射することにより光架橋剤として使用することができる。又は、カルバゾール構造にビニル基が付加された特徴的な構造を光反応性の人工核酸塩基として有する核酸類(光架橋性核酸類)を使用する方法も知られている。核酸類は相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズして二重らせんを形成することができ、形成した二重らせんに光照射を行うと、光架橋性核酸類の相補鎖における、本発明に係る光反応性の人工核酸塩基と対応して塩基対となるべき塩基から1塩基分だけ3’末端側にある塩基と光架橋を形成する。また、同様に光照射により解離する。なお、光架橋剤は上記の説明に限定されるものではない。
また、メチル化DNA特異的制限酵素を用いても良い。例えば、メチル化したプライマーを固相に固定化させ、本発明による増幅を行った後に、メチル化DNA特異的制限酵素を用いて固相から増幅した核酸配列を解離させる。メチル化DNA特異的制限酵素の例としては、アルスロバクター・オキシダンス25K由来のAox IやGlacial ice bacterium GL24由来のGlu IやKocurea rosea 307由来のKro I等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。このように、メチル化DNAプライマーを固相に配置し、解離される側の配列にメチル化DNAを付加した状態にした場合、既知の配列の信号検出の時にメチル化されたDNAの信号も得ることが可能であり、それらを演算処理し高精度に塩基配列決定することも可能である。
その他の解離の方法として、アダプターに制限酵素の認識配列を用意し、制限酵素で切断しても良い。例えば、FAプライマーのF2の配列に制限酵素認識配列を用意し切断する。その場合は、得られる信号は標的核酸の配列を1回分、相補鎖配列を1回分の信号が得られる。これは、全てのプライマーを固定せずに増幅を行った後に実施しても良い。
また、本発明による増幅産物は二本鎖を形成しやすいため、二本鎖を解離する条件として温度、pH、イオン強度の条件を設定するか、もしくはホルムアミド等の変性剤を用いてナノポアを通過させても良い。一本鎖に変性するための方法は、これらに限定されるものではない。
このようにプライマーを固定し、増幅反応、制限酵素や光照射による増幅産物の解離、ナノポア等を用いた検出により、同じ配列を複数回検出することができ、塩基の誤検出、塩基検出の見落としを防ぎ、精度の高い分析を可能とする。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
101 核酸
102 断片化された核酸
103 平滑化した核酸
104 核酸アダプター
105 合成増幅に用いる核酸
301 核酸配列決定用プライマー
302 相補的核酸配列決定用プライマー
401 平面基板
402 鋳型核酸
403 クラスター
501 フローセル容器
502 フローセル入口
503 フローセル出口
601 試薬分注ノズル
602 光源
603 対物レンズ
604 ダイクロイックミラー
605 フィルタ
606 レンズ
607 検出器
801 固相
802 核酸
803 プライマー

Claims (14)

  1. 以下の4つの成分(1)〜(4)を混合し、インキュベートを行い、鋳型核酸を増幅させた後もしくは増幅中に、増幅産物の3’末端の不活化処理を行い、その後に、前記増幅産物に対し酵素を用いて伸長反応を行い、光検出又は水素イオン検出により核酸配列を決定する核酸の分析方法。
    (1)以下の特徴(a)〜(d)を有する鋳型核酸、
    (a)少なくとも一対の相補的な塩基配列からなる標的塩基配列を有している。
    (b)前記(a)の相補的な塩基配列がハイブリダイズしたときに、ループ構造を形成することができる。
    (c)3’末端が自身にアニールしてループ構造を形成することができる。
    (d)自身にアニールした3’末端は自身を鋳型とする相補鎖合成の起点になることができる。
    (2)鋳型核酸のループ構造において、相補鎖合成の起点を与えることができる少なくとも2種類のプライマーであって、そのうち少なくとも1種は固相に固定化されており、少なくとも1種は固相に固定化されていない前記プライマー、
    (3)鎖置換を伴う相補鎖合成をするためのDNAポリメラーゼ、及び
    (4)相補鎖合成のための基質。
  2. 前記固相が、天然高分子担体、合成高分子担体、金属コロイド、磁性粒子、ガラス基板又は樹脂基板である請求項1に記載の核酸の分析方法。
  3. 前記鋳型核酸が、自身の塩基配列の任意の領域に対して相補的な塩基配列をその5’末端に備えている請求項1に記載の核酸の分析方法。
  4. 前記鋳型核酸が、以下に示す工程によって生成される請求項1に記載の核酸の分析方法。
    a)標的塩基配列に、第1のプライマーをアニールし、そのアニールした前記第1のプライマーを起点として相補鎖を合成する工程であって、前記第1のプライマーは、その3’末端において標的塩基配列を構成する鎖の3’側を規定する領域に相補鎖合成の起点を与えることができ、前記第1のプライマーの5’側には、このプライマーを起点として相補鎖を合成する反応によって生成される伸長生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を備える、前記工程、
    b)前記工程a)において合成された第1のプライマーを起点とする伸長生成物における第2のプライマーがアニールすべき領域を、塩基対結合が可能な状態とする工程であって、前記第2のプライマーは、その3’末端において前記第1のプライマーを起点とする伸長生成物における標的塩基配列の3’側を規定する領域に相補鎖合成の起点を与えることができる塩基配列を備え、前記第2のプライマーの5’側には、このプライマーを起点として相補鎖を合成する反応によって生成される伸長生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を備える、前記工程、
    c)前記工程b)において塩基対結合が可能となった領域に第2のプライマーをアニールし、そのアニールした前記第2のプライマーを起点として相補鎖を合成する工程、及び
    d)前記工程c)によって合成された第2のプライマーを起点とする伸長生成物の3’末端を自身にアニールさせ、自身を鋳型とする相補鎖を合成する工程。
  5. 前記工程b)及び/又は工程c)において、第1のプライマー及び/又は第2のプライマーの上流に相補鎖合成の起点を与えるアウトサイドプライマーからの相補鎖合成によって、第1のプライマー及び/又は第2のプライマーを起点とする伸長生成物を置換して1本鎖とする請求項4に記載の核酸の分析方法。
  6. 前記工程a)が、ベタイン、プロリン、ジメチルスルホキシド及びトリメチルアミン−N−オキシドよりなる群から選択される少なくとも1種の融解温度調整剤の存在下で行われる請求項4に記載の核酸の分析方法。
  7. 前記鋳型核酸を増幅させた後、浮遊物を洗浄除去し、増幅した前記鋳型核酸を起点として再度増幅反応を行う請求項1に記載の核酸の分析方法。
  8. 前記増幅産物の3’末端の不活化処理が、増幅後に伸長反応阻害物質を結合させることにより行われる請求項1に記載の核酸の分析方法。
  9. 前記伸長反応阻害物質が、ジデオキシヌクレオシド三リン酸である請求項8に記載の核酸の分析方法。
  10. 前記増幅産物の3’末端の不活化処理が、増幅中に伸長反応阻害物質を取り込ませ反応を停止させることにより行われる請求項1に記載の核酸の分析方法。
  11. 前記伸長反応阻害物質が、ジデオキシヌクレオシド三リン酸である請求項10に記載の核酸の分析方法。
  12. 前記増幅産物を標識することによって、増幅工程を管理する請求項1に記載の核酸の分析方法。
  13. 前記酵素を用いた伸長反応が、リコンビナーゼ因子の存在下で行われる請求項に記載の核酸の分析方法。
  14. 前記核酸配列の決定において、既知の配列から得られる信号を元にノイズ除去及び/又は演算処理が行われる請求項1に記載の核酸の分析方法。
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